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特許7611422測距装置、モデル生成装置、情報生成装置、情報生成方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】測距装置、モデル生成装置、情報生成装置、情報生成方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20241226BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20241226BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S7/497
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023562412
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2022042825
(87)【国際公開番号】W WO2023090414
(87)【国際公開日】2023-05-25
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2021187617
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】細井 研一郎
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-013135(JP,A)
【文献】特開2021-032563(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109541616(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部と、
前記受光部による前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成部とを備え
前記情報生成部は、前記内部反射光による前記受光部の飽和に関する時間の長さを用いて、前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置において、
当該測距装置は、複数の光を順に出射して測距を行い、
前記情報生成部は、光の出射毎の前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測距装置において、
前記情報生成部は、
光の出射方向毎の前記測距性に関する情報を生成し、
前記測距性に関する情報の分布を示す測距性マップを生成する
測距装置。
【請求項4】
請求項3に記載の測距装置において、
前記測距性に関する情報を用いて報知を行う報知部をさらに備え、
前記報知部は、
前記測距性マップにおける報知対象領域を示す情報を取得し、
報知において前記報知対象領域外の前記測距性に関する情報を加味しない
測距装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記測距性に関する情報を用いて制御を行う制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記測距性に関する情報に基づいて、前記光源の出力強度および前記受光部の増倍率の少なくとも一方を制御する
測距装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記情報生成部は、前記受光結果における前記内部反射光の強度を用いて、前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記情報生成部は、光の複数の出射方向における前記内部反射光の受光結果の分布を用いて、前記透過部材への付着物がある領域に対応するオブジェクト領域を特定し、
前記オブジェクト領域内での位置に基づいて前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記情報生成部は、機械学習による学習済みモデルを用いて前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記情報生成部は、前記内部反射光の受光結果を用いたルールベースで判定を行い、前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
【請求項10】
請求項に記載の測距装置において、
当該測距装置の光学系の構成毎に設けられた判定ルールを用いて前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記飽和に関する時間の長さは、前記受光部の出力波形において、受光信号が予め定められた基準値を超えている時間の長さである
測距装置。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか一項に記載の測距装置において、
前記飽和に関する時間の長さは、
前記受光部の出力波形において、飽和が始まった時点を始点とし、飽和の後に初めて傾きがゼロになる時点を終点とする時間の長さ、または
前記受光部の出力波形において、飽和が始まった時点を始点とし、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点とのうち早い方を終点とする時間の長さである
測距装置。
【請求項13】
光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置において、前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を受光部で受光した、受光結果と、当該測距装置の測距性に関する情報とが関連付けられた訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、前記内部反射光の受光結果を入力とし前記測距性に関する情報を出力とするモデルを生成するモデル生成部とを備え
前記内部反射光の受光結果は、前記内部反射光による前記受光部の飽和に関する時間の長さを含む、
モデル生成装置。
【請求項14】
光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成装置であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部による、前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成部を備え
前記情報生成部は、前記内部反射光による前記受光部の飽和に関する時間の長さを用いて、前記測距性に関する情報を生成する
情報生成装置。
【請求項15】
コンピュータによって実行され、光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象からの反射光を検出する測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成方法であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部による、前記内部反射光の受光結果として、前記内部反射光による前記受光部の飽和に関する時間の長さを用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成方法。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1に記載の情報生成装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置、モデル生成装置、情報生成装置、情報生成方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転等に用いることができる測距装置の開発が行われている。測距装置の一例としては、出射した光が物体に反射されて戻るまでの時間を測定して、周囲の物体との距離を測定するものが挙げられる。
【0003】
このような測距装置では、光を出射する出射窓に付着物が生じると測距に影響が生じる。
【0004】
特許文献1には、光の受光パワーをモニタし、窓部から汚れなどを取り除くことが必要なときに窓洗浄装置を動作させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-503486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
付着物による測距性への影響は、測距装置の構成によっても異なる。測距にどのような影響が生じているかを特定することにより、適切な対応を取ることができる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題としては、測距装置の出射窓に生じた付着物による、測距性への影響を特定することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部と、
前記受光部による前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成部とを備える測距装置である。
【0009】
請求項12に記載の発明は、
光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置において、前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を受光部で受光した、受光結果と、当該測距装置の測距性に関する情報とが関連付けられた訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、前記内部反射光の受光結果を入力とし前記測距性に関する情報を出力とするモデルを生成するモデル生成部とを備える、
モデル生成装置である。
【0010】
請求項13に記載の発明は、
光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成装置であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部による、前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成部を備える情報生成装置である。
【0011】
請求項14に記載の発明は、
コンピュータによって実行され、光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象からの反射光を検出する測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成方法であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部による、前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成方法である。
【0012】
請求項15に記載の発明は、
コンピュータを、請求項13に記載の情報生成装置として機能させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る測距装置の構成を例示する図である。
図2】第1の実施形態に係る測距装置を例示する図である。
図3】第1の実施形態に係る測距装置の構成を詳しく例示する図である。
図4】第1の実施形態に係る制御部および情報生成部のハードウエア構成を例示する図である。
図5】透過部材に付着物が生じている場合の、内部反射光の受光信号波形を例示する図である。
図6】透過部材に付着物が生じている場合の、内部反射光の受光信号波形を例示する図である。
図7】フレーム内における内部反射光強度の分布を模式的に示す図である。
図8】内部反射光の受光結果から測距性情報を生成するための判定ルールを例示するテーブルである。
図9図8の判定ルールを用いた場合の情報生成部の判定の流れを例示するフローチャートである。
図10】(a)は、望遠レンズが取り付けられていない測距装置の透過部材を模式的に示す図であり、(b)および(c)は、望遠レンズが取り付けられた測距装置の透過部材を模式的に示す図である。
図11】望遠レンズが取り付けられていない測距装置の透過部材に付着物を付けた状態で測定した結果を示す図である。
図12】望遠レンズが取り付けられている測距装置の透過部材に付着物を付けた状態で測定した結果を示す図である。
図13】測距性マップを表示させた画像を例示する図である。
図14】第1の実施形態に係る情報生成方法の流れを例示するフローチャートである。
図15】第2の実施形態に係る情報生成部が用いる学習済みモデルを例示する図である。
図16】モデルを生成する装置の機能構成を例示するブロック図である。
図17】第4の実施形態に係る測距装置の機能構成を例示するブロック図である。
図18】報知対象領域について説明するための図である。
図19】第5の実施形態に係る情報生成装置の構成を例示するブロック図である。
図20】第5実施形態に係る情報生成装置のハードウエア構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る測距装置10の構成を例示する図である。図2は、本実施形態に係る測距装置10を例示する図である。図1よび図2において、破線矢印は光の経路を模式的に示している。本実施形態に係る測距装置10は、光源14から出力された光を、透過部材20を介して出射し、対象物30からの反射光を検出する装置である。測距装置10は、受光部180、および情報生成部121を備える。受光部180は、透過部材20で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する。情報生成部121は、受光部180による内部反射光の受光結果を用いて、測距装置10の測距性に関する情報(以下、「測距性情報」と呼ぶ。)を生成する。以下に詳しく説明する。
【0016】
測距装置10において、光源14から出力された光は図2に示すように主に透過部材20を介して測距装置10の外部に出射される。しかし、光源14から出力された光の少なくとも一部は、図1に示すように測距装置10の内部で反射されて内部反射光となる。内部反射光は受光部180で受光される。この内部反射光には透過部材20で反射された光も含まれる。また、透過部材20への付着物が存在した場合、内部反射光にはその付着物に起因した反射光が含まれる。
【0017】
透過部材20は測距装置10の内側と外側を仕切っている、光を透過する部材である。透過部材20はたとえばガラスまたは樹脂からなる。透過部材20の少なくとも一つの面は測距装置10の外部の空間にさらされており、汚れや雨滴等が付着し得る。付着物に起因した反射光には、たとえば、透過部材20と付着物との界面で反射された光、付着物の内部で反射された光、付着物と空気との界面で反射された光を含む。情報生成部121はこのような内部反射光の受光結果を用いて測距性情報を生成することができる。測距性情報はたとえば測距性能を示す情報であり、対象物30からの反射光の受光強度や、測距限界距離に関連する情報である。具体的には測距性情報は、基準状態に対する測距性能の劣化度合いを示す劣化情報であり得る。ただし、測距性情報は、測距性能の高さを示す情報であっても良い。なお、対象物30は透過部材20への付着物ではないもの、すなわち透過部材20に接していないものとする。
【0018】
図3は、本実施形態に係る測距装置10の構成を詳しく例示する図である。本図において、破線矢印は光の経路を模式的に示している。本図を参照し、測距装置10の構成について詳しく説明する。
【0019】
測距装置10は、たとえばパルス光の出射タイミングと反射光(反射したパルス光)の受光タイミングとの差に基づいて、測距装置10から走査範囲160内にある物体(対象物30)までの距離を測定する装置である。パルス光はたとえば赤外光等の光である。また、パルス光はたとえばレーザパルスである。測距装置10に備えられた光源14から出力され、透過部材20を通って測距装置10の外部へ出射されたパルス光は、物体で反射されて少なくとも一部が測距装置10に向かって戻る。そして、反射光が再び透過部材20を通って測距装置10内に入射する。測距装置10に入射した反射光は受光部180で受光され、強度が検出される。受光部180は、受光素子18および検出回路181を含む。ここで、測距装置10では光源14からパルス光が出射されてから反射光が受光部180で検出されるまでの時間が測定される。そして、測距装置10に備えられた制御部120は、測定された時間とパルス光の伝搬速さを用いて測距装置10と物体との距離を算出する。測距装置10はたとえばライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging, Laser Illuminated Detection and Ranging またはLiDAR:Light Detection and Ranging)装置である。
【0020】
光源14はパルス光を出射する。光源14は、たとえばレーザーダイオードである。受光素子18は、測距装置10に入射したパルス光および上述した内部反射光を受光する。受光素子18は、たとえばアバランシェフォトダイオード(APD)等のフォトダイオードである。本実施形態では、受光素子18が、内部反射光を受光して測距性情報の生成に用いるための受光素子と対象物30からの反射光を受光して測距するための受光素子とを兼ねている例について説明している。ただし、内部反射光を受光して付着物の判定に用いるための受光素子と対象物30からの反射光を受光して測距するための受光素子とは別々に設けられていても良い。
【0021】
図3の例において、測距装置10は、可動ミラー16をさらに備える。可動ミラー16は、たとえば一軸可動または二軸可動のMEMSミラーである。可動ミラー16の反射面の向きを変えることにより、測距装置10から出射されるパルス光の出射方向を変化させることができる。可動ミラー16が二軸可動のMEMSミラーである場合、可動ミラー16を二軸駆動する事により、所定の範囲内をパルス光でラスタスキャンすることができる。
【0022】
制御部120は、複数のパルス光による測定結果を含む点群データを生成する。たとえば、走査範囲160内をラスタスキャンする場合、第1の方向161に光の出射方向を変化させる事によりライン状の走査を行う。そして、第2の方向162に光の出射方向を変化させながら複数のライン状走査を行う事により、走査範囲160内の複数の測定結果を含む点群データを生成する事ができる。本図の例において、第1の方向161と第2の方向162とは直交している。
【0023】
一度のラスタスキャンで生成される点群データの単位をフレームと呼ぶ。ひとつのフレームについて測定が終わると、光の出射方向は初期位置に戻り、次のフレームの測定が行われる。こうして、繰り返しフレームが生成される。点群データにおいては、パルス光で測定された距離と、そのパルス光の出射方向を示す情報とが関連付けられている。または、点群データは、パルス光の反射点を示す三次元座標を含んでもよい。制御部120は、算出された距離と、各パルス光を出射する時の可動ミラー16の角度を示す情報とを用いて点群データを生成する。生成された点群データは測距装置10の外部に出力されても良いし、制御部120からアクセス可能な記憶装置に保持されても良い。
【0024】
本図の例において、測距装置10は孔付きミラー15、および集光レンズ13をさらに備える。光源14から出力されたパルス光は孔付きミラー15の孔を通過し、可動ミラー16で反射された後に測距装置10から出射される。また、測距装置10に入射した反射光は可動ミラー16および孔付きミラー15で反射された後、集光レンズ13を介して受光部180に入射する。なお、測距装置10は、コリメートレンズやミラー等をさらに含んでもよい。
【0025】
制御部120は、発光部140、受光部180、および可動反射部164を制御することができる(図4参照)。発光部140は光源14および駆動回路141を含む。可動反射部164は可動ミラー16および駆動回路163を含む。駆動回路141は、集積回路80からの制御信号に基づき光源14を発光させるための回路であり、たとえばスイッチング回路や容量素子を含んで構成される。検出回路181は、I-Vコンバータや増幅器を含み、受光素子18による光の検出強度を示す信号を出力する。制御部120は、受光部180から受光信号を取得し、上述したように測距装置10から走査範囲160内の物体までの距離を算出する。また、情報生成部121も受光部180から受光信号を取得し、測距正情報の生成に用いる。
【0026】
図4は、本実施形態に係る制御部120および情報生成部121のハードウエア構成を例示する図である。制御部120および情報生成部121は、集積回路80を用いて実装されている。集積回路80は、例えば SoC(System On Chip)である。
【0027】
集積回路80は、バス802、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812を有する。バス802は、プロセッサ804、メモリ806、ストレージデバイス808、入出力インタフェース810、及びネットワークインタフェース812が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ804などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ804は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ806は、RAM(Random Access Memory)などを用
いて実現されるメモリである。ストレージデバイス808は、ROM(Read Only Memory)
やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0028】
入出力インタフェース810は、集積回路80を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。本図において、入出力インタフェース810には光源14の駆動回路141、受光素子18の検出回路181、および可動ミラー16の駆動回路163が接続されている。
【0029】
ネットワークインタフェース812は、集積回路80を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)、Ethernet、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)等の通信網である。なお、ネットワークイン
タフェース812が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0030】
ストレージデバイス808は、制御部120および情報生成部121の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、制御部120および情報生成部121の機能を実現する。
【0031】
集積回路80のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ806に格納されてもよい。この場合、集積回路80は、ストレージデバイス808を備えていなくてもよい。
【0032】
図5および図6は、透過部材20に付着物が生じている場合の、内部反射光の受光信号波形を例示する図である。情報生成部121はたとえば受光部180での受光信号のうち、光の出射から所定の時間内の波形を、内部反射光の波形として特定することができる。または、情報生成部121は、パルス光の出射後、最初に受光するパルス光を内部反射光であるとみなしてもよい。内部反射光は定まった近距離からの反射であるからである。付着物が水分であるか、油分であるか、チリやホコリであるか等、付着物の種類により内部反射光の受光信号波形は異なる。情報生成部121は、受光信号波形の特徴を用いて、測距性情報を生成する。また、上述したとおり、測距装置10は、複数の光を順に出射して測距を行う。そして情報生成部121は、光の出射毎の測距性情報を生成する。以下に、測距性情報の生成について詳しく説明する。
【0033】
<内部反射光強度>
情報生成部121は、例として、受光結果における内部反射光の強度を用いて、測距性情報を生成することができる。付着物がある場合、その付着物に反射することで内部反射光の強度が大きくなる。また、受光強度が特に大きい場合には、受光部180の検出レンジを越える事となり、図5図6に示す様に、受光信号が飽和する事がある。付着物がある位置では、対象物30からの反射光も減衰するため、測距性が低下する。したがって、内部反射光の強度が大きい程、測距性能が低下すると言える。情報生成部121は、各出射光ごとに、内部反射光の受光信号における最大強度を内部反射光の強度として特定し、測距性情報の生成に用いる。
【0034】
<飽和時間>
情報生成部121は、例として、内部反射光による受光部180の飽和に関する時間の長さを用いて、測距性情報を生成することができる。一例として付着物が水分である場合、波形が長時間にわたり飽和の影響を受ける。受光部180は、内部反射光の受光に続いて、対象物30からの反射光を受光する。しかし、受光部180が長時間にわたり飽和の影響を受けている場合、対象物30からの反射光の受光にも影響を与える可能性がある。たとえば、飽和後に受光信号が基準レベルまで戻る前に対象物30からの反射光が受光素子18に入射すると、そのピークを正確に検出できない場合がある。そうすると、対象物30までの距離が正しく算出できない。したがって、飽和に関する時間の長さが長いほど、測距性能が低下する傾向があると言える。
【0035】
判定に用いる事ができる、飽和に関する時間の長さとしては、たとえば図5および図6中に示した時間T1、T2、およびT3が挙げられる。なお、以下では飽和に関する時間の長さを単に「飽和時間」とも呼ぶ。飽和時間は時間T1、T2、およびT3の少なくともいずれである。情報生成部121は、時間T1、T2、およびT3のうち一つのみを用いても良いし、二つ以上を組み合わせて用いても良い。時間T1、T2、およびT3のそれぞれについて以下に詳しく説明する。
【0036】
時間T1は、受光部180が飽和している時間の長さである。情報生成部121は、受光部180が出力する受光信号が予め定められた基準値Sを超えている状態を、受光部180が飽和している状態であると判定して時間T1を測定する。基準値Sはたとえば受光素子の飽和レベルよりわずかに小さい。ここで、飽和レベルとは、受光部180が飽和せずに検出できる最大の受光量を意味する。
【0037】
時間T2は、受光部180の出力波形において、飽和が始まった時点を始点とし、飽和の後に初めて傾きがゼロになる時点を終点とする時間の長さである。情報生成部121は、パルス光の出射後、受光部180が出力する受光信号が上述した基準値Sを超えた時点を飽和が始まった時点とする。また、情報生成部121は、波形の各点における傾きを算出し、算出した傾きがゼロになる時点を検出して、時間T2を測定する。
【0038】
時間T3は、受光部180の出力波形において、飽和が始まった時点を始点とし、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点とのうち早い方を終点とする時間の長さである。情報生成部121は、パルス光の出射後、受光部180が出力する受光信号が上述した基準値Sを超えた時点を飽和が始まった時点とする。また、情報生成部121は、受光信号がゼロクロスする時点を検出して飽和後2度目にゼロクロスする時点を特定する。さらに情報生成部121は、信号値が予め定められた収束レベル範囲内である状態が所定の長さ続いた場合を収束している状態と判定する。そして、収束している状態が生じていると判定された場合、その状態が始まった時点、すなわち、信号値が収束レベル範囲外から収束レベル範囲内となった時点を飽和後初めて収束した時点として特定する。なお、収束レベル範囲はゼロを間に含む範囲であり、収束レベル範囲の上限はゼロよりわずかに大きく、収束レベル範囲の下限はゼロよりわずかに小さい。ただし、収束レベル範囲の上限とゼロとの差は収束レベル範囲の下限とゼロとの差よりも大きくすることができる。たとえば、外乱光が測距装置10に入射する場合、受光信号がその外乱光の分、ゼロより大きいレベルに収束することがあるからである。
【0039】
情報生成部121は、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点とのうち早い方を選択し、時間T3を測定する。なお、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点のいずれかが存在しなくてもよい。その場合、情報生成部121は、飽和後2度目にゼロクロスする時点と飽和後初めて収束する時点とのうち、特定できた方をT3の終点とする。図6の例において、T2とT3は同じである。
【0040】
また、時間T3の終点は、飽和状態の終了後、受光信号が収束レベル範囲内であり、かつ、受光信号の傾きがゼロを含む所定の範囲内となった初めの時点としても良い。
【0041】
なお、付着物が無い状態でもある程度の内部反射光が生じる。したがって、情報生成部121は内部反射光の強度および飽和時間について、初期値からの変化量を用い、測距性情報を生成することが好ましい。そうすることで、付着物の影響をより正確に特定することができる。初期値としては、透過部材20に付着物がない状態、たとえば出荷時の状態で測定した値を用いることができる。
【0042】
<オブジェクト内位置>
情報生成部121は、例として、光の複数の出射方向における内部反射光の受光結果の分布を用いて、透過部材20への付着物がある領域に対応するオブジェクト領域を特定し、オブジェクト領域内での位置に基づいて測距性情報を生成することができる。
【0043】
図7は、フレーム内における内部反射光強度の分布を模式的に示す図である。情報生成部121は、複数の出射方向に対応する内部反射光強度を用いて、このような内部反射光強度マップを生成することができる。なお、上述したとおり、ここで用いる内部反射光強度は、初期値からの変化量であることが好ましい。内部反射光強度マップからは、走査範囲において付着物が生じている領域を特定することができる。具体的には情報生成部121は、内部反射光強度マップにおいて内部反射光強度が所定の値以上である領域をオブジェクト領域として特定する。
【0044】
測距装置10の測距性は付着物の位置と出射方向との関係にも依存する。たとえば、付着物の中心の方向へ出射する光は付着物の縁近くの方向へ出射する光よりも、付着物の影響を大きく受ける。すなわち、測距性への影響も大きくなる。したがって、情報生成部121はオブジェクト領域内での位置に基づいて、測距性情報を生成できる。具体的には情報生成部121は、特定したオブジェクト領域内の各点(出射方向)について、オブジェクト領域の外縁からの最短距離を算出する。この最短距離が長い点ほど、オブジェクト領域の中心に近く、測距性が低下しやすいと言える。なお、オブジェクト領域外の点については、十分大きな既定値を最短距離として設定する。
【0045】
なお、情報生成部121は、内部反射光強度マップの代わりに、複数の出射方向に対応する飽和時間、または、飽和時間の初期値からの変化量を用いて飽和時間マップを生成し、オブジェクト領域の特定に用いても良い。
【0046】
本実施形態に係る情報生成部121は、内部反射光の受光結果を用いたルールベースで判定を行い、測距性情報を生成する。情報生成部121は、1フレームの測定が終わるごとに以下の処理を行い、そのフレーム内の各測定点について測距性情報を生成する。また、測距性情報の生成にオブジェクト領域の特定を必要としない場合には、情報生成部121は、光の出射ごとに測距性情報を生成してもよい。
【0047】
図8は、内部反射光の受光結果から測距性情報を生成するための判定ルールを例示するテーブルである。図9は、図8の判定ルールを用いた場合の情報生成部121の判定の流れを例示するフローチャートである。本図の例において、情報生成部121は、内部反射光強度と、飽和時間と、オブジェクト領域の外縁からの最短距離とを用いて測距性情報を生成する。また、本図の例において、情報生成部121は、測距性情報として劣化予測レベルを生成する。本図の例において、「劣化レベルC」、「劣化レベルB」、「劣化レベルA」の順に劣化の程度が大きい。すなわち、「劣化レベルA」、「劣化レベルB」、および「劣化レベルC」のうち、「劣化レベルC」が最も劣化の程度が大きく、「劣化レベルB」は「劣化レベルC」の次に劣化の程度が大きく、「劣化レベルA」は「劣化レベルB」の次に劣化の程度が大きいことを示している。また、「標準」は初期状態と同程度の測距性能を有することを示す。
【0048】
まず、情報生成部121は、判定対象の点の内部反射光強度が基準値S以上であるか否かを判定する(S101)。内部反射光強度が基準値S以上ではない場合(S101のNo)、情報生成部121は、その点の劣化予測レベルを「標準」と判定する(S102)。内部反射光強度が基準値S以上である場合(S101のYes)、情報生成部121は次いで、判定対象の点の飽和時間が基準値A以上であるか否かを判定する(S103)。飽和時間が基準値A以上ではない場合(S103のNo)、情報生成部121は、その点の劣化予測レベルを「劣化レベルA」と判定する(S104)。飽和時間が基準値A以上である場合(S103のYes)、情報生成部121は次いで、判定対象の点のオブジェクト領域の外縁からの最短距離が基準値B以上であるか否かを判定する(S105)。最短距離が基準値B以上ではない場合(S105のNo)、情報生成部121は、その点の劣化予測レベルを「劣化レベルB」と判定する(S106)。最短距離が基準値B以上ではない場合(S105のYes)、情報生成部121は、その点の劣化予測レベルを「劣化レベルC」と判定する(S107)。このように、情報生成部121はルールベースで劣化レベルを特定できる。
【0049】
また、情報生成部121は、測距装置10の光学系の構成毎に設けられた判定ルールを用いて測距性に関する情報を生成してもよい。光学系の構成により付着物による測距性への影響が異なることから、構成ごとに、適した判定ルールを用いることが好ましい。光学系の構成により測距性への影響が異なることについて、以下に説明する。
【0050】
図10(a)は、望遠レンズが取り付けられていない測距装置10の透過部材20を模式的に示す図であり、図10(b)および図10(c)は、望遠レンズが取り付けられた測距装置10の透過部材20を模式的に示す図である。図10(a)から図10(c)において、破線の長方形210は実効走査エリアを示し、実線の長方形211は、透過部材20における測距装置10からの出射光のスポット形状および大きさを示し、楕円212は透過部材20における受光スポットの形状および大きさを示す。実効走査エリアとは、1つのフレームを生成するための走査を行う際、透過部材20において出射光が通過し得る領域である。受光スポットとは、測距装置10から出射され対象物30で反射した後、測距装置10に入射する光を受光可能な領域である。図10(a)および図10(b)から分かるように、実効走査エリアに対する光のスポットの大きさは望遠レンズの有無に応じて大きく異なる。
【0051】
図11は、望遠レンズが取り付けられていない測距装置10の透過部材20に付着物を付けた状態で測定した結果を示す図である。図12は、望遠レンズが取り付けられている測距装置10の透過部材20に付着物を付けた状態で測定した結果を示す図である。図10(a)および図10(c)において、このときの付着物213の大きさおよび形状を示している。図11および図12にはそれぞれ、同一フレームで得られた内部反射光強度マップ、飽和時間マップ、測距強度マップ、距離マップを示している。内部反射光強度マップおよび飽和時間マップは上述した通りである。測距強度マップは、対象物30からの反射光を受光した際の受光信号のピーク強度の分布を示すマップである。距離マップは、対象物30からの反射光を受光して算出した対象物30までの距離の分布を示すマップである。各マップにおいて、破線の楕円の内側に付着物に相当する領域が存在する。透過部材20に付けた付着物の大きさは図11図12とで同じである。たとえば屋外で測距装置10を使用した際に想定される付着物としては雨滴、ホコリ、虫、雪等が想定されるが、それらの大きさは概ね数mmである。この大きさを想定して、図11図12の測定時に用いた付着物の大きさは、2mm×3mmとした。
【0052】
図11に示すように、望遠レンズが取り付けられていない測距装置10では、内部反射光強度マップおよび飽和時間マップにおいて実際の形状に近い形状で付着物の影響が現れている。また、測距強度マップおよび距離マップにおいては、付着物のある領域で測距が不能であったことが現れている。
【0053】
一方、図12に示すように、望遠レンズが取り付けられている測距装置10では、内部反射光強度マップにおいて、フレームに対して大きな領域で影響が現れている。これは、実効走査エリアに対する付着物の大きさが大きいことに起因する。飽和時間マップでは、オブジェクト領域の中心から外縁に向かって影響が小さくなっている。また、測距強度マップでは、オブジェクト領域の中心部で強い影響が見られるものの、距離マップには、その影響が現れていない部分が多く、フレームの全体にわたり測距ができていることが分かる。これは、光のスポットと付着物が同程度の大きさであることに起因すると思われる。
【0054】
このように、光学系の構成により付着物による測距性への影響が異なることから、構成ごとに異なる判定ルールを設定し、測距性情報の生成に用いることが好ましい。情報生成部121は、たとえば、予め10に対して入力された光学系の構成を示す情報を取得し、その構成に対応する判定ルールを記憶部から読み出して用いる。なお、図11および図12のように各マップでは、可動ミラー16の軌道と光学レンズの効果により像に歪が生じる。このような歪は既知であるので、予め定めた補正パラメータを用いて各マップを補正する処理が行われても良い。その場合、マップの外形は長方形ではなくてよい。または、マップの外形は長方形のままとし、投影される対象物等の歪を必要に応じて補正する処理が行われても良い。後述する劣化マップにおいても同様である。
【0055】
情報生成部121は、光の出射方向毎の測距性情報を生成すると、測距性情報の分布を示す測距性マップを生成してもよい。また、測距装置10は生成した測距性マップを画像表示するための表示データを生成して出力しても良い。測距装置10は、表示データをディスプレイに出力することで、測距性マップを表示させることができる。なお、測距装置10は、生成した測距性情報を測距装置10からアクセス可能な記憶部に保持させても良い。この記憶部は、測距装置10に含まれても良いし、含まれなくても良い。
【0056】
図13は、測距性マップを表示させた画像を例示する図である。本図の画像では、測距性マップとして測距性能の劣化マップが表示されている。また、各劣化レベルが、複数の条件下でどのような測距限界距離に対応するかを示す表が合わせて表示されている。このような表は事前の実験的な測定により準備し、記憶部に保持させておくことができる。たとえば、本例では、背景光が100kluxある状態で、反射率が100%のターゲット(対象物)を測定できる限界距離は、フレーム中の劣化レベルCの領域で30mであると分かる。このように測距性マップを表示させることにより、たとえば必要な測距性能を満たしているか確認したり、透過部材20の洗浄の要否を判断したりすることができる。
【0057】
図14は、本実施形態に係る情報生成方法の流れを例示するフローチャートである。本実施形態に係る情報生成方法は、コンピュータによって実行され、光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象からの反射光を検出する測距装置10の測距性情報を生成する情報生成方法である。本方法では、透過部材20で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部による、内部反射光の受光結果が取得される(S500)。そして、内部反射光の受光結果を用いて、測距装置10の測距性情報が生成される(S510)。
【0058】
以上、本実施形態によれば、情報生成部121は、受光部180による内部反射光の受光結果を用いて、測距装置10の測距性情報を生成する。したがって、測距装置の出射窓に生じた付着物による、測距性への影響を特定し、ユーザーが必要な測距性能を満たしているか確認したり、必要な対策を講じたりすることができる。
【0059】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る測距装置10は、情報生成部121が、機械学習による学習済みモデル40を用いて測距性情報を生成する点を除いて、第1の実施形態に係る測距装置10と同じである。以下に詳しく説明する。
【0060】
本実施形態において情報生成部121は、判定ルールを用いる代わりに、モデル40を用いて内部反射光の受光結果から測距性情報を生成する。モデル40は、たとえば内部反射光の受光結果を入力とし、測距性情報を出力とするモデルである。
【0061】
図15は、第2の実施形態に係る情報生成部121が用いる学習済みモデル40を例示する図である。本実施形態に係る情報生成部121は、学習済みモデル40を情報生成部121からアクセス可能な記憶部から読み出すことで取得する。情報生成部121はモデル40に入力データを入力し、モデル40の出力データを得る。モデル40に入力する入力データは内部反射光の受光波形でもよいし、内部反射光強度、飽和時間、オブジェクト領域の外縁からの最短距離といった数値や、それらを含むベクトルでもよい。また、モデル40の入力データはたとえば、内部反射強度マップや飽和時間マップを含んでも良い。モデル40の出力データは、たとえばフレーム内の各点の劣化予測レベルである。出力データは劣化マップのようなマップであっても良い。モデル40の入力データおよび出力データは、測定点単位であっても良いし、フレーム単位であっても良い。
【0062】
また、モデル40の入力データは受光結果を得たときの測距装置10の構成を示す情報をさらに含んでも良い。測距装置10の構成はたとえば光学系の構成を含む。または、モデル40は、測距装置10の構成毎に設けられていても良い。その場合、情報生成部121は測距装置10の構成を示す情報を取得し、その構成に対応するモデル40を記憶部から読み出して用いればよい。
【0063】
学習済みモデル40は、ニューラルネットワーク410を含む。学習済みモデル40は、複数の訓練データを用いて予め機械学習がされたモデルである。
【0064】
情報生成部121は、このようなモデル40を用いることにより、測距性情報の正確性を高めることができる。なお、情報生成部121は、第1の実施形態で説明したようなルールベースの判定と、モデル40を用いた判定とを組み合わせて、測距性情報を生成しても良い。
【0065】
<モデル生成装置>
図16は、モデルを生成する装置の機能構成を例示するブロック図である。モデル生成装置70は、訓練データ取得部710およびモデル生成部720を備える。訓練データ取得部710は、内部反射光の受光結果と、測距装置の測距性情報とが関連付けられた訓練データを取得する。内部反射光の受光結果は、光源14から出力された光を、透過部材20を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置において、透過部材20で反射した反射光を含む内部反射光の受光結果である。モデル生成部720は、訓練データを用いた機械学習を行うことにより、内部反射光の受光結果を入力とし測距性情報を出力とするモデル40を生成する。
【0066】
訓練データは、事前の実験的な測定により複数準備し、記憶部に保持させておくことができる。訓練データ取得部710はたとえば記憶部からこの訓練データを読み出すことにより取得する。
【0067】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果を得られる。
【0068】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る測距装置10は、制御部120が測距性情報を用いて制御を行う点を除いて第1および第2の実施形態の少なくともいずれかに係る測距装置10と同じである。本実施形態において制御部120は、測距性情報に基づいて、光源14の出力強度および受光部180の増倍率の少なくとも一方を制御する。以下に詳しく説明する。
【0069】
あるフレームに対して測距性マップが生成されると、制御部120は、それより後のフレームの測定を行う際に、その生成された測距性マップに基づく制御を行う。具体的には制御部120は、ある出射方向にて測定を行うとするとき、その出射方向の測距性情報を、測距性マップを参照して特定する。そして、特定された測距性情報に基づいて、光源14の出力強度および受光部180の増倍率の少なくとも一方を制御する。たとえば、情報生成部121は測距性情報に示される劣化の程度が高いほど、光源14の出力強度を高くする。そうすることで、付着物によって光が減衰しても、十分な強度の光を測距装置10から出力できる。または、情報生成部121は測距性情報に示される劣化の程度が高いほど、受光部180の増倍率を高くする。そうすることで、対象物30の反射光が弱い場合でも十分な強度の受光信号を得られる。たとえば制御部120は制御部120からアクセス可能な記憶部から参照情報を取得して制御に用いる。参照情報は、劣化レベルと光源14の出力強度とを関連付けた情報、または、劣化レベルと受光部180の増倍率とを関連付けた情報である。制御部120は、測距性情報に示される劣化レベルに対応する出力強度または増倍率を特定して、光源14または受光部180を制御する。
【0070】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果を得られる。くわえて、本実施形態によれば、制御部120は、測距性情報に基づいて、光源14の出力強度および受光部180の増倍率の少なくとも一方を制御する。したがって、付着物の影響がある場合でも良好な測距ができる。
【0071】
(第4の実施形態)
図17は、第4の実施形態に係る測距装置10の機能構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る測距装置10は、測距性情報を用いて報知を行う報知部123をさらに備える点を除いて、第1から第3の実施形態の少なくともいずれかに係る測距装置10と同じである。報知部123は、測距性マップにおける報知対象領域を示す情報を取得し、報知対象領域の測距性情報に基づいて報知を行う。以下に詳しく説明する。
【0072】
報知はたとえば測距性能が低下したことを示す警告である。このとき報知部123は、報知対象領域内の測距性能の低下について警告を行う一方、報知において報知対象領域外の測距性情報を加味しない。すなわち、報知対象領域外において測距性能が低下したような場合でも、報知部123は警告等の報知を行わない。
【0073】
図18は、報知対象領域61について説明するための図である。本実施形態に係る測距装置10に対して、ユーザは予めフレーム内の報知対象領域61を指定しておく。測距装置10は、ユーザからの報知対象領域61を指定する入力を受け付ける。報知部123は、測距装置10に入力された報知対象領域61を示す情報を取得する。また、報知部123は、測距性マップが生成されると、情報生成部121から測距性マップを取得する。そして、報知部123は、測距性マップのうち報知対象領域61内に測距性能の劣化が見られるか否かを判定する。報知対象領域61内に測距性能の劣化が見られる場合、報知部123は警告を出力する。一方、報知対象領域61内に測距性能の劣化が見られない場合、報知部123は警告を出力しない。測距性マップのうち報知対象領域61内に測距性能の劣化が見られる場合とは、たとえば、報知対象領域61内の少なくとも一部の劣化予測レベルが「標準」でない場合である。または、報知対象領域61内の少なくとも一部の劣化予測レベルが所定のレベルよりも悪化している場合である。また、報知部123は、図18のように報知対象領域61外に測距性能の劣化が見られた場合でも、警告を出力しない。
【0074】
警告の出力方法は特に限定されないが、報知部123はたとえば音声出力やディスプレイへの表示によって警告を出力できる。
【0075】
また、ユーザは、測距装置10に対して警告を出力する条件をさらに入力しても良い。報知部123はユーザに入力された条件を取得する。たとえば、ユーザは使用環境の情報として「背景光0lux」および「ターゲット反射率10%」を設定し、必要な性能の条件として、「測距限界距離30m以上」という条件を入力しておく。そして、報知部123は、「背景光0luxかつターゲット反射率10%の測定について、30m以上の測距限界距離を有すること」という条件を報知対象領域61内の少なくとも一部で満たさなくなった場合、警告を出力する。設定された条件を満たすか否かは、生成された測距性情報に加えて、たとえば図13で示したようなテーブルを用いて判定できる。
【0076】
なお、報知部123は、警告を出力する代わりに、または警告の出力に加えて、報知対象領域61内に測距性能の劣化が見られない場合に、測距性能が良好であることを示す報知を行っても良い。
【0077】
本実施形態においてストレージデバイス808は、報知部123の機能を実現するためのプログラムモジュールをさらに記憶している。プロセッサ804は、このプログラムモジュールをメモリ806に読み出して実行することで、報知部123の機能を実現する。
【0078】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果を得られる。くわえて、本実施形態によれば、測距装置10は、測距性情報を用いて報知を行う報知部123をさらに備える。したがって、ユーザが測距性能の劣化等を把握しやすい。
【0079】
(第5の実施形態)
図19は、第5の実施形態に係る情報生成装置50の構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る情報生成装置50は、光源14から出力された光を、透過部材20を介して出射し、対象物30からの反射光を検出する測距装置10の測距性情報を生成する情報生成装置である。情報生成装置50は、情報生成部510を備える。情報生成部510は、透過部材20で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部180による、内部反射光の受光結果を用いて、測距装置10の測距性情報を生成する。以下に詳しく説明する。
【0080】
本実施形態に係る測距装置10は、情報生成部121を備えていない点を除いて、第1から第3の実施形態の少なくともいずれかに係る測距装置10と同じである。または、本実施形態に係る測距装置10は、情報生成部121および報知部123を備えていない点を除いて、第4の実施形態に係る測距装置10と同じである。本実施形態に係る情報生成装置50は、測距装置10から、測距性情報の生成に必要な情報を取得して生成を行う。情報生成装置50は情報生成部510を備える。情報生成部510は、第1または第2の実施形態に係る情報生成部121と同じ処理を行う。また、情報生成装置50は第4の実施形態に係る報知部123と同様の報知部をさらに備えても良い。
【0081】
たとえば情報生成装置50は、測距装置10から内部反射光の受光結果を示す情報を取得する。そして、情報生成部510は、内部反射光の受光結果を示す情報に基づいて、測距装置10の測距性情報を生成する。生成された測距性情報は情報生成装置50から測距装置10へ出力され、制御部120による制御に用いられても良いし、情報生成装置50からディスプレイ等へ出力されても良い。また、生成された測距性情報は、情報生成装置50からアクセス可能な記憶部に保持されても良い。この記憶部は情報生成装置50に含まれた記憶部(たとえば後述するストレージデバイス908)であっても良いし、情報生成装置50の外部に設けられた記憶部であっても良い。
【0082】
図20は、本実施形態に係る情報生成装置50のハードウエア構成を例示する図である。情報生成装置50は、集積回路90を用いて実装されている。集積回路90は、例えば
SoC(System On Chip)である。
【0083】
集積回路90は、バス902、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912を有する。バス902は、プロセッサ904、メモリ906、ストレージデバイス908、入出力インタフェース910、及びネットワークインタフェース912が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ904などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ904は、マイクロプロセッサなどを用いて実現される演算処理装置である。メモリ906は、RAM(Random Access Memory)などを用
いて実現されるメモリである。ストレージデバイス908は、ROM(Read Only Memory)
やフラッシュメモリなどを用いて実現されるストレージデバイスである。
【0084】
入出力インタフェース910は、集積回路90を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース910には測距装置10が接続されている。
【0085】
ネットワークインタフェース912は、集積回路90を通信網に接続するためのインタフェースである。この通信網は、例えば CAN(Controller Area Network)通信網である
。なお、ネットワークインタフェース912が通信網に接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0086】
ストレージデバイス908は、情報生成部510の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ904は、このプログラムモジュールをメモリ906に読み出して実行することで、情報生成部510の機能を実現する。また、ストレージデバイス908は報知部を実現するためのプログラムモジュールをさらに記憶していても良い。
【0087】
集積回路90のハードウエア構成は本図に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ906に格納されてもよい。この場合、集積回路90は、ストレージデバイス908を備えていなくてもよい。
【0088】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0089】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0090】
この出願は、2021年11月18日に出願された日本出願特願2021-187617号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部と、
前記受光部による前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成部とを備える測距装置。
2. 1.に記載の測距装置において、
当該測距装置は、複数の光を順に出射して測距を行い、
前記情報生成部は、光の出射毎の前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
3. 2.に記載の測距装置において、
前記情報生成部は、
光の出射方向毎の前記測距性に関する情報を生成し、
前記測距性に関する情報の分布を示す測距性マップを生成する
測距装置。
4. 3.に記載の測距装置において、
前記測距性に関する情報を用いて報知を行う報知部をさらに備え、
前記報知部は、
前記測距性マップにおける報知対象領域を示す情報を取得し、
報知において前記報知対象領域外の前記測距性に関する情報を加味しない
測距装置。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載の測距装置において、
前記測距性に関する情報を用いて制御を行う制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記測距性に関する情報に基づいて、前記光源の出力強度および前記受光部の増倍率の少なくとも一方を制御する
測距装置。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載の測距装置において、
前記情報生成部は、前記受光結果における前記内部反射光の強度を用いて、前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
7. 1.~6.のいずれか一つに記載の測距装置において、
前記情報生成部は、前記内部反射光による前記受光部の飽和に関する時間の長さを用いて、前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載の測距装置において、
前記情報生成部は、光の複数の出射方向における前記内部反射光の受光結果の分布を用いて、前記透過部材への付着物がある領域に対応するオブジェクト領域を特定し、
前記オブジェクト領域内での位置に基づいて前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
9. 1.~8.のいずれか一つに記載の測距装置において、
前記情報生成部は、機械学習による学習済みモデルを用いて前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
10. 1.~8.のいずれか一つに記載の測距装置において、
前記情報生成部は、前記内部反射光の受光結果を用いたルールベースで判定を行い、前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
11. 10.に記載の測距装置において、
当該測距装置の光学系の構成毎に設けられた判定ルールを用いて前記測距性に関する情報を生成する
測距装置。
12. 光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置において、前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を受光部で受光した、受光結果と、当該測距装置の測距性に関する情報とが関連付けられた訓練データを取得する訓練データ取得部と、
前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、前記内部反射光の受光結果を入力とし前記測距性に関する情報を出力とするモデルを生成するモデル生成部とを備える、
モデル生成装置。
13. 光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象物からの反射光を検出する測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成装置であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部による、前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成部を備える情報生成装置。
14. コンピュータによって実行され、光源から出力された光を、透過部材を介して出射し、対象からの反射光を検出する測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成方法であって、
前記透過部材で反射した反射光を含む内部反射光を少なくとも受光する受光部による、前記内部反射光の受光結果を用いて、当該測距装置の測距性に関する情報を生成する情報生成方法。
15. コンピュータを、13.に記載の情報生成装置として機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0091】
10 測距装置
13 集光レンズ
14 光源
15 孔付きミラー
16 可動ミラー
18 受光素子
20 透過部材
30 対象物
40 モデル
50 情報生成装置
61 報知対象領域
70 モデル生成装置
80 集積回路
90 集積回路
120 制御部
121 情報生成部
123 報知部
140 発光部
164 可動反射部
180 受光部
410 ニューラルネットワーク
510 情報生成部
710 訓練データ取得部
720 モデル生成部
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