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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】エアーバッグ付き防塵服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/015 20060101AFI20241226BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A41D13/015 105
A41D13/00 105
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024509129
(86)(22)【出願日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2023029970
【審査請求日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2023027751
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】321009166
【氏名又は名称】シャープセンシングテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅行
(72)【発明者】
【氏名】石田 隆久
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-236523(JP,A)
【文献】特開2001-303314(JP,A)
【文献】特開2021-46625(JP,A)
【文献】特開2011-84839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0330628(US,A1)
【文献】特開平10-168617(JP,A)
【文献】特開平10-168618(JP,A)
【文献】特開平5-171501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防塵服本体と、
前記防塵服本体の外表面の取付部に取り付けられたエアーバッグと、を備え、
前記取付部に囲まれた領域には、前記防塵服本体の内側と前記エアーバッグの内部とを連通する少なくとも1つの開口部が設けられており、
前記エアーバッグは、前記防塵服本体の胸部に取り付けられている
ことを特徴とする防塵服。
【請求項2】
前記エアーバッグにファスナーが取り付けられていることを特徴とする、請求項に記載の防塵服。
【請求項3】
前記ファスナーは前記エアーバッグの下部に取り付けられていることを特徴とする、請求項に記載の防塵服。
【請求項4】
前記エアーバッグの容量は、0.5Lから3.0Lであることを特徴とする、請求項に記載の防塵服。
【請求項5】
前記開口部の総面積は、前記取付部に囲まれた領域の面積の10%から60%であることを特徴とする、請求項に記載の防塵服。
【請求項6】
前記防塵服本体の首部に、首周りに沿ったシールを設けていることを特徴とする、請求項に記載の防塵服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器、医薬品、食品、半導体、電子機器などの製造工程において、クリーンルームなど無塵性を要求される空間内で作業する際に着用される防塵服に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームなど無塵性が要求される作業空間内にあっては、作業者の皮膚又は着衣などに由来する塵埃は、作業の対象物(製品など)を損傷又は汚染する虞がある。そのため、クリーンルームで作業する者は防塵服を着用している。従来から、このようの防塵服では、通気性の低い素材を用い、防塵服の内部と外部が連通する襟元、袖口及び裾口の密閉度を高めるための様々な工夫がなされている。
【0003】
しかしながら、上記のように、防塵服の素地そのものの通気性が低いため、作業中の動作によって防塵服内の圧力が高くなると、ポンピング効果により連通部分の密閉状態が解除されてしまい、この際、構造上密閉状態を保つための締付力が最も弱くならざるを得ない襟元開口に集中して空気の流出が生じやすい。しかも、空気の流出が襟元開口に集中してしまうと、空気の流出強度がより強くなるため、防塵服内の塵埃もより多く放出される結果となり、高さ位置の関係と相俟って塵埃の拡散範囲がより広範囲に渡るという課題があった。
【0004】
この課題を解決するために、以下のような技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された技術は、フードの内外側何れかの周方向に、防塵服本体の襟閉塞部に対応する位置に帯状のクッション部材を設けることで襟元から防塵服内空気の外部(クリーンルーム)への流出を防いでいる。
【0005】
また、特許文献2に記載された技術は、防塵服を上着とズボンを一体形成し繋ぎ構造とし、かつ、防塵服の足元に排出部を設けることで襟元からの防塵服内空気の外部への流出(発塵)を防いでいる。
【0006】
また、特許文献3に記載された技術は、防塵服に防塵服内部の圧力を外部と比して減圧するための吸引装置が付けられているため、頭部からのクリーンルームへの発塵を抑制することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2008-202177号公報
【文献】日本国特開平11-189904号公報
【文献】日本国特許第5112894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、防塵服を着用した作業者が着座した場合や、作業のために姿勢低く屈伸した場合、防塵服内の空気の圧力が高まり、ポンピング効果により結果としてクッション部材では外部(クリーンルーム)への空気の流出を防ぐ効果が少ないという課題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載された技術は、排出部から防塵服内の塵埃を多く含んだ空気をクリーンルームに放出するため、クリーンルームの清浄度が悪くなる虞がある。また、防塵服を着用した作業者が着座した場合や、作業のために姿勢低く屈伸した場合、腰部で防塵服と体が接触し空気の流れを遮断するため、腰部から上部の防塵服内空気は襟元からクリーンルームに放出されやすいという課題がある。つまり、特許文献1や2に記載された技術は、防塵服内部からの発塵を抑制する工夫はされているものの、結局はクリーンルームに塵埃が放出される虞がある。
【0010】
また、特許文献3に記載された技術は、吸引装置が付帯されているため、防塵服が高価になるという課題がある。
【0011】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、クリーンルームへの塵埃の漏出を従来技術よりも低減可能でかつ高価とならない防塵服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る防塵服は、前記の課題を解決するために、防塵服本体と、前記防塵服本体の外表面の取付部に取り付けられたエアーバッグと、を備え、前記取付部に囲まれた領域には、前記防塵服本体の内側と前記エアーバッグの内部とを連通する少なくとも1つの開口部が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、防塵服を着用した作業者が着座した場合や、作業のために姿勢を低く屈伸した場合においても、クリーンルームへの塵埃の漏出を従来技術よりも低減可能で、吸引装置を付帯するよりも安価な防塵服を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係るエアーバッグ付き防塵服を示す模式図である。
図2】第2の実施の形態に係るエアーバッグの構造を示す概略図である。
図3】第3の実施の形態に係る防塵服内の空気の外部放出を低減するシールを示す部分図である。
図4】第4の実施の形態に係るエアーバッグとシール付き防塵服を示す模式図である。
図5】本開示の効果を検証した実施例の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態1〕
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
本実施の形態に係るエアーバッグ付き防塵服について、図1を用いて従来技術と比較しつつ説明する。本実施形態に係るエアーバッグは、自動車に搭載される、衝撃を吸収するエアーバッグではなく、防塵服に取り付けて空気を一時的に貯留するものである。図1は、エアーバッグ付き防塵服がどのような構成になっているか、また、従来技術の防塵服との差異を分かりやすく説明するために、図1001から図1004を示している。図1001は、従来技術の防塵服Aの全体図である。図1002は、本実施形態に係るエアーバッグ付き防塵服Bの全体図である。図1003は、エアーバッグの構造の説明図である。図1004は、防塵服本体内の空気をエアーバッグへ流すための防塵服本体に設けた穴の説明図である。
【0017】
従来技術の防塵服はいろいろな種類があるが、図1001に示す防塵服Aは、作業者の顔を含む頭部を覆うフード102、作業者の首から手首、足首までを覆う防塵服本体101、および作業者の足部に着用するブーツ103を含んで構成されている。フード102の前面には、作業者の視界を確保するための開口が設けられている。防塵服本体101は、前面、側面又は背面などにファスナーが設けられており、作業者はファスナーを開閉して防塵服本体101を着用する。そして、防塵服本体101の首部108にフード102の下部を収容した状態で、首周りを締めてマジックテープ(登録商標)又は面ファスナー等で留める。さらに、足部にブーツ103を着用して防塵服Aの装着が完了する。
【0018】
防塵服Aは、人の皮膚片や服の繊維などに由来する塵埃がクリーンルーム内に漏出することを低減し、結果として製品の不良を低減するために使われている。しかし、完全に人を密閉することは出来ないため、塵埃の一部が防塵服Aから発塵(漏出)している。この発塵する部位としては、頭部105(視界を確保する開口)、袖口部106、ブーツ上部107、首部108である。しかし、袖口部106やブーツ上部107はゴムで遮蔽しているため、これらの部位からの発塵は殆ど無い。そのため、頭部105と首部108が主な発塵部位となる。
【0019】
なお、防塵服Aの種類は、図1001に示す例に限られない。例えば、防塵服には、防塵服本体101とフード102とが一体になったもの、防塵服本体101が上半身部と下半身部とに分けられているもの、ブーツ103を含まないもの、ブーツ103と防塵服本体101の全体又は下半身部分とが一体になったもの、あるいはフード102、防塵服本体101及びブーツ103が一体になったものなど、多くの種類がある。以下に説明する本開示に係る防塵服Bから防塵服B2の構成は、少なくとも防塵服本体101の上半身部分、つまり、首から下であって、両手首までと腰部までを覆う部分を含む防塵服であれば、どの種類の防塵服にも適用することができ、本開示を適用した防塵服は本開示の範囲に含まれる。
【0020】
上記のような従来技術の防塵服Aと比較して、本実施の形態に係るエアーバッグ付き防塵服B(以下、単に「防塵服B」という。)は、図1002図1003図1004に示すように、エアーバッグ104が防塵服本体101の外表面の取付部110に取り付けられている。「防塵服本体101の外表面」とは、防塵服本体101の、作業者の体とは反対側の表面ということである。つまり、エアーバッグ104は、防塵服本体101の外側に設けられている。本実施形態では、エアーバッグ104は防塵服本体101の胸部に取り付けられている。取付部110は、図1004の2つの点線で挟まれた、斜線を付した領域であり、図1003では、分かりやすくするためにエアーバッグ104で隠れた部分にも斜線を付して示している。取付部110は、エアーバッグ104が防塵服本体101に取り付けられている領域であり、エアーバッグ104を取り付けるためにある程度の幅を持っている。図1003に示すように、エアーバッグ104は、袋状であればその形状を問わない。エアーバッグ104は、防塵服Bの内部(内側)の空気を一時的に溜める役割を有する。エアーバッグ104は、袋状のエアーバッグ104の開口端部104aが図1004に斜線で示す取付部110に、縫製、接着、溶着などの手段を用いて取り付けられている。あるいは、エアーバッグ104は、貼ったりはがしたりを繰り返すことが可能な接着剤又は面ファスナーなどの手段を用いて取り付けられていてもよい。なお、後述するように、エアーバッグ104を取り付ける位置は胸部に限られない。作業の邪魔にならない位置であれば、エアーバッグ104を取り付ける位置は任意である。
【0021】
エアーバッグ104は防塵服Bと同じ、又は異なる素材で作られている。エアーバッグ104は、防塵服Bと同程度の気密性を有することが好ましい。それにより、防塵服Bからの発塵を低減する効果が高まる。また、エアーバッグ104は、従来技術の吸引装置よりも簡素な構成であるので、吸引装置を付帯するよりも安価に作ることができる。また、エアーバッグ104が防塵服Bと同じ素材であれば、高価な素材を用いるより安価に作ることができる。
【0022】
取付部110に囲まれた領域(図1004において内側の点線よりも内側の領域)には、防塵服本体101の内側とエアーバッグ104の内部とを連通する少なくとも1つの本体穴(開口部)109が設けられている。本実施形態では、図1004に示すように、防塵服本体101の胸部に、防塵服B内部の空気をエアーバッグ104に流すための本体穴109が4つ設けられている。防塵服本体の内部の空気が本体穴109からエアーバッグ104に流れ込む空気抵抗は、防塵服Bの内部の空気が頭部105又は首部108の隙間から外部に出る空気抵抗よりも小さいため、頭部105と首部108から発塵する前に防塵服B内部の空気がエアーバッグ104に流れ、外部(クリーンルーム)への発塵を低減することが出来る。
【0023】
エアーバッグ104の容量は0.5Lから3.0Lであることが望ましい。0.5L未満の場合は、防塵服B内の空気が捕獲されず外部(クリーンルーム)へ放出されやすくなる。また、3.0Lより大きい場合は、エアーバッグ104が邪魔になり効率的な作業を阻害する虞があるためである。
【0024】
本体穴109の総面積は、エアーバッグ104と防塵服本体101が接している取付部110に囲まれた面積に対して10%から60%であることが望ましい。10%未満の場合は、空気がエアーバッグ104に流れるスピードが遅くなるため、頭部105と首部108から発塵しやすくなる虞がある。また、60%より大きい場合は、取付部110に囲まれた領域の強度が弱くなり、防塵服本体101が破損しやすくなる。本実施の形態においては、取付部110に囲まれた領域の面積に対する本体穴109の総面積の比は約35%である。また、本体穴109にメッシュを施し強度を高めている。このように、本体穴109に、空気の流通を妨げないように、例えばメッシュ状の補強部材を設けて防塵服本体101の強度を高めてもよい。
【0025】
〔実施形態2〕
本実施の形態に係るファスナー201付きエアーバッグ104について図2を用いて説明する。図2001は、ファスナー201を取付けたエアーバッグ104の概略図である。図2002は、作業者が立っている状態のファスナー201付きエアーバッグ104を側面から見た模式図である。図2003は、作業者が座ろうとしている状態のファスナー201付きエアーバッグ104を側面から見た模式図である。
【0026】
本実施の形態に係るエアーバッグ104には、図示するようにファスナー201が取り付けられている。このため、構造が複雑なエアーバッグ104の中に溜まった塵埃を、ファスナー201を開けた状態で通常の洗濯をすることにより、除去することが出来る。ファスナー201が無い場合は、洗濯してもエアーバッグ104内に塵埃が残留し、繰り返し使うと発塵源になってしまう。しかし、ファスナー201を設けることでこのようなことを防止することができる。
【0027】
また、ファスナー201は、エアーバッグ104の下部に設けられていてもよい。ファスナー201の位置は特に限定されないが、エアーバッグ104の下部に設けることにより、作業者が立っているときは、ファスナー201の重さでエアーバッグ104が萎む(図2002参照)。このため、作業者が座るなど動いた時にエアーバッグ104が広がり、空気を十分にエアーバッグ104に流すことが出来る(図2003参照)。さらに、作業者が座るとき、すなわち前かがみになるときファスナー201の重さでエアーバッグ104が広がりやすくなり、結果として円滑に空気を流し込むことが出来る。
【0028】
〔実施形態3〕
本実施の形態に係る防塵服本体101にシール301を取り付けたエアーバッグ付き防塵服B1について、図3を参照して説明する。
【0029】
図3に示すように、防塵服B1は、防塵服本体101の首部108に、首周りに沿ったシール301を設けている。首周りとは、防塵服本体101のうち、作業者の首部分を囲む領域である。シール301は、作業者の首と防塵服本体101の首部108との隙間を減少させて、防塵服本体101の内部から外部への空気の漏出量を低減する役割を有する。このように、エアーバッグ104に流れなかった空気をシール301でブロックするため、クリーンルームへの塵埃の漏出を低減することができる。シール301の材質は、防塵服本体101と同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。シール301の厚み(幅)は特に限定されないが、例えば0.5cmから3cm程度であってもよい。シール301は、作業者に不快感を与えず、かつシール性を高めるために、クッション性を備えていてもよい。クッション性を備えるため、シール301は、内部に発泡性樹脂、綿又は合成繊維などの繊維等のクッション材を含んでいてもよい。
【0030】
〔実施形態4〕
本実施の形態に係るシールとエアーバッグ付き防塵服B2について図4を参照して説明する。図4は、防塵服B2がどのような構成になっているか説明するために、図4001図4002を示している。図4001は、シールとエアーバッグ付き防塵服B2の構成の概略図である。図4002は、シールとエアーバッグ付き防塵服B2のA-A’断面構造の模式図である。図4002に示すように、防塵服本体101は、フード102の下部102aを覆うように構成されている。そのため、防塵服本体101の内部の空気は、防塵服本体101とフード102の下部102aとの隙間から外部に漏出する可能性がある。本実施形態に係る防塵服B2は、この隙間からの空気の漏出を低減することができる。
【0031】
図4001に示すように、本実施の形態に係るシールとエアーバッグ付き防塵服B2は、エアーバッグ401が防塵服本体101の首部108の周りに取り付けられている。シール301はエアーバッグ401の上部に、首周りに沿って取り付けられている。これにより、作業者が座るなどの動作をしたときに、下の方から上がってくる空気を満遍なくエアーバッグ401に捕獲することが出来る。また、エアーバッグ401に捕獲できなかった空気をシール301で遮断することが出来る。
【0032】
本実施形態では、エアーバッグ401が防塵服本体101の首部108の周りだけに取り付けられているが、エアーバッグ401がさらに胸部にも取り付けられていてもよい。また、これらのエアーバッグ401には、ファスナー201が設けられていてもよく、ファスナー201が設けられていなくてもよい。このように、上述したそれぞれの構成要素は、条件に応じて適宜選択的に付加することができる。
【0033】
〔まとめ〕
本開示の態様1に係る防塵服BからB2は、防塵服本体101と、前記防塵服本体101の外表面の取付部110に取り付けられたエアーバッグ104,401と、を備え、前記取付部110に囲まれた領域には、前記防塵服本体101の内側と前記エアーバッグ104,401の内部とを連通する少なくとも1つの開口部(本体穴109)が設けられている。
【0034】
上記の構成によれば、クリーンルームへの塵埃の漏出を従来技術よりも低減可能で、吸引装置を付帯するよりも安価な防塵服を提供することができる。
【0035】
本開示の態様2に係る防塵服は、上記態様1において、前記エアーバッグが、前記防塵服本体の胸部に取り付けられていてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、作業者の動きによって生じるポンピング効果が大きい上半身からの空気の漏出を低減することができる。
【0037】
本開示の態様3に係る防塵服は、上記態様1または2において、前記エアーバッグが、前記防塵服本体の首部の周りに取り付けられていてもよい。
【0038】
上記の構成によれば、作業者の首周りから漏出する空気の量を低減することができる。
【0039】
本開示の態様4に係る防塵服は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記エアーバッグにファスナーが取り付けられていてもよい。
【0040】
上記の構成によれば、ファスナーを開けて洗濯することにより、エアーバッグ内に溜まった塵埃を除去することができる。
【0041】
本開示の態様5に係る防塵服は、上記態様4において、前記ファスナーは前記エアーバッグの下部に取り付けられていてもよい。
【0042】
上記の構成によれば、作業者が立っているときはエアーバッグが萎みやすく、作業者がかがんだり座ったりしたときにエアーバッグが広がりやすくなる。
【0043】
本開示の態様6に係る防塵服は、上記態様1から5のいずれかにおいて、前記エアーバッグの容量は、0.5Lから3.0Lであってもよい。
【0044】
上記の構成によれば、エアーバッグの容量がポンピング効果による空気の漏出量に合わせた容量になるため、空気の漏出を適切に低減することができる。
【0045】
本開示の態様7に係る防塵服は、上記態様1から6のいずれかにおいて、前記開口部の総面積は、前記取付部に囲まれた領域の面積の10%から60%であってもよい。
【0046】
上記の構成によれば、エアーバッグに空気が流入しやすくなるとともに、防塵服本体の強度を保つことができる。
【0047】
本開示の態様8に係る防塵服は、上記態様1から7のいずれかにおいて、前記防塵服本体の首部に、首周りに沿ったシールを設けていてもよい。
【0048】
上記の構成によれば、防塵服本体の首部から路輸出する空気の量を低減することができる。
【0049】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例
【0050】
本開示の一実施例について以下に説明する。本開示の発明者らによって実施したパーティクル測定により、従来の防塵服と比して本開示のエアーバッグ付き防塵服は極めて高い防塵性を有していることが実証された。以下にパーティクル測定結果を、図5を参照して説明する。
【0051】
測定対象は、従来の防塵服(従来技術)、胸部にエアーバッグを取り付けたエアーバッグ付き防塵服(実施形態1に対応)、胸部に取り付けたエアーバッグと首部のシール付き防塵服(実施形態1と実施形態3に対応)、首部に取り付けたエアーバッグとシール付き防塵服(実施形態4に対応)である。クラス100のクリーンルーム内において、静止時(立っている状態)と着座時の、頭部付近の1立方フィート(約30cm四方)の空気中に含まれるパーティクル数をそれぞれの条件毎に5回測定した。パーティクル数はパーティクルカウンターにより測定し、0.5μm以上のものを計数した。図5に示すように、何れの実施例も従来技術の防塵服と比して、極めて高い防塵性能を有することが実証された。
【符号の説明】
【0052】
101:防塵服本体
102:フード
103:ブーツ
104:第1の実施の形態に係るエアーバッグ
105:頭部
106:袖口部
107:ブーツ上部
108:首部
109:本体穴(開口部)
110:取付部(エアーバッグと防塵服本体が接触している領域)
201:ファスナー
301:シール
401:第4の実施の形態に係るエアーバッグ
【要約】
クリーンルームへの塵埃の漏出を従来技術よりも低減可能で、吸引装置を付帯するよりも安価な防塵服を提供する。防塵服(B~B2)は、防塵服本体(101)と、防塵服本体(101)の外表面の取付部(110)に取り付けられたエアーバッグ(104,401)と、を備え、取付部(110)に囲まれた領域には、防塵服本体(101)の内側とエアーバッグ(104,401)の内部とを連通する少なくとも1つの開口部(109)が設けられている。
図1
図2
図3
図4
図5