IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブの特許一覧

特許7611460側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ
<>
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図1
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図2
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図3
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図4
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図5
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図6
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図7
  • 特許-側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】側孔を有する管楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20241226BHJP
   G10H 1/32 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G10H1/00 A
G10H1/32 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024532783
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022082654
(87)【国際公開番号】W WO2023099266
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-07-30
(31)【優先権主張番号】2112923
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルツマッハー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ゲレイ,アレクシ
(72)【発明者】
【氏名】ラミー,シルビー
(72)【発明者】
【氏名】オレフィス,ピエール-アンリ
(72)【発明者】
【氏名】サン-アルメ,ケビン
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518698(JP,A)
【文献】特開平07-146678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気柱(103)を画定する管状本体(101)を含む、側孔を有する管楽器(100)と組み合わされるように構成された空中音波伝達アセンブリ(60)であって、前記管状本体(101)は、実質的に第1の軸(X)に沿って局所的に延在し、前記伝達アセンブリは、前記楽器(100)の前記管状本体(101)の内部に取り外し可能に配置されるように意図される、空中音波伝達アセンブリ(60)において、
- 前記気柱(103)内に空中音波を発信するための発信デバイス(E)であって、
〇前記楽器の前記管状本体に固定するための第1の固定構造体(10)、
〇電気信号を空中音波に変換することができるアクチュエータ(11)、
〇前記アクチュエータ(11)を前記管状本体から分離するように構成される、前記アクチュエータ(11)を前記第1の固定構造体(10)に固定するための中間要素(12)
を含むデバイス(E)、
- 空中音波受信デバイス(R)であって、
〇前記楽器の前記管状本体に固定するための第2の固定構造体(20)、
〇前記第2の固定構造体(20)に連結されたマイクロホン(21)であって、前記アクチュエータ(11)によって発信された前記空中音波を、前記気柱内でのその伝播後に受信することができ、前記第1の軸(X)に対して好ましくは中心から外れて位置決めされるマイクロホン(21)、
〇前記第2の固定構造体(20)に連結され、且つ前記マイクロホン(21)によって受信された前記空中音波を、前記楽器の前記側孔の塞ぎの構成に特徴的な電気信号に変換することができる変換デバイス(30)
を含む空中音波受信デバイス(R)
を含み、
- 前記管状本体(101)は、止め具(102)を含み、前記第1の固定構造体(10)は、案内路(14)を含み、前記案内路(14)は、前記管状本体(101)に沿って前記発信デバイス(E)を前記止め具(102)まで案内するように意図されることを特徴とする空中音波伝達アセンブリ(60)。
【請求項2】
前記アクチュエータ(11)を前記第1の固定構造体(10)に固定するための前記中間要素(12)は、前記アクチュエータ(11)から前記管状本体(101)への音響機械波の伝達を防止するための絶縁膜であり、前記中間要素(12)は、好ましくは、発泡体、ゴム又はプラスチックから作製される、請求項1に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項3】
前記受信デバイス(R)は、前記管状本体(101)に対して前記第2の固定構造体(20)を位置決めするためのデバイス(22)を含む、請求項1又は2に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項4】
前記第2の固定構造体(20)を位置決めするための前記デバイス(22)は、前記第1の軸(X)を中心とする前記受信デバイス(R)の回転を阻止するように構成される、前記第2の固定構造体(20)と前記管状本体(101)との間の少なくとも3つの点接触部(23)を含む、請求項3に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項5】
前記アクチュエータ(11)は、圧電アクチュエータ、圧電パッド、スピーカ又は動電型加振器である、請求項1又は2に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項6】
前記マイクロホン(21)は、広帯域マイクロホンである、請求項1又は2に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項7】
前記変換デバイス(30)に連結された前記楽器(100)のキーの位置を検出するためのデバイス(51)、好ましくは少なくとも2つの磁力計(52)及び1つの磁場発生器(53)をさらに含む、請求項1又は2に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項8】
前記空中音波受信デバイス(R)は、前記変換デバイス(30)に連結されたスピーカ(40)をさらに含み、前記スピーカ(40)は、前記楽器の前記側孔の塞ぎの構成に特徴的な前記電気信号を可聴楽音としてレンダリングするように構成される、請求項1又は2に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項9】
前記空中音波受信デバイス(R)は、前記変換デバイスに温度情報を供給するための、前記変換デバイス(30)に連結された温度センサをさらに含み、前記変換デバイスは、前記マイクロホンによって受信された前記空中音波を電気信号に変換するときに温度を考慮するように構成される、請求項1又は2に記載の伝達アセンブリ(60)。
【請求項10】
アコースティック音と電気音とを選択的に生成するように意図される、側孔を有する管楽器(100)であって、請求項1又は2に記載の伝達アセンブリ(60)を含む管楽器(100)。
【請求項11】
サクソフォン、又はクラリネット、又はフルート、又はオーボエ、又はバスーンである、請求項10に記載の側孔を有する管楽器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド管楽器、すなわち第1のアコースティックモード及び第2のデジタルモードに従って交互に動作し得る管楽器の技術分野に属する。本発明は、すべてを列挙するわけではないが、クラリネット、サクソフォン、フルート、オーボエ、コーラングレ又はバスーンを含む、側孔を有するあらゆるタイプの管楽器に適用される。本発明は、上述したような楽器と組み合わされ得る、空中音波を伝達するためのアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
アコースティック動作モードは、管楽器の本来の動作モードである。このモードでは、音は、奏者の吹奏によってトリガされる楽器の気柱の振動によって生成される。
【0003】
デジタル動作モードは、管楽器に電子部品を装備し、その電子部品によって生成される1つ又は複数の電気信号に音響合成技術を適用することによって得られるデジタル音の生成を可能にするものである。
【0004】
管楽器のデジタル動作モードは、デジタル化された音を、特にヘッドセットを通して演奏者にレンダリングすることにより、楽器を無音にすることを可能にする。実際、アコースティックでの楽器の練習は、騒音源になることがあり、演奏者は、特定の時間帯にのみ演奏することを余儀なくされ、さらにこの楽器を練習する気持ちがそがれる可能性がある。
【0005】
デジタル動作モードの別の利点は、音響合成技術によって音色の幅が広がることである。
【0006】
これに関して解決すべき1つの問題は、アコースティックの管楽器と組み合わされ得、使用者がデジタル動作モードからアコースティック動作モードに切り替えることができるように容易に可逆的であり得る装置をどのように設計するかである。
【0007】
解決すべき別の問題は、異なる製造業者の同じ楽器に適応させることができる、すなわち楽器の寸法を決して変更することなく、製造業者ごとの幾何学的誤差に関係なく適応可能である装置をどのように設計するかである。
【0008】
楽器を無音にする第1の手法は、楽器によって生成される音を減衰させることである。そのために、発泡材タイプの吸音材の使用に基づく方法又は覆うことによる減衰に基づく方法が知られている。これらの方法は、煩わしくなく、コストもほとんどかからないが、考慮される音響スペクトル全体にわたって十分な効果があるとは言えない。一般に、側孔を有する管楽器によって生成される音は、他の楽器、例えば金管楽器によって生成される音よりも減衰させるのが困難である。
【0009】
騒音を制限する別の方法は、楽器のアコースティックな動作に置き換わる装置、換言すれば、完全にデジタルな楽器を使用することによる。このタイプの楽器では、吹奏パラメータ(強さ及び唇での挟み方)と、楽器上の指の位置とを同時に測定することができる。キーは、静的である場合もあれば、機械的である場合もある。このタイプの楽器は、シンセサイザと連結したとき、幅広い音色を有することが可能となり、使いやすいことが分かっている。その必要最低限の技術的設計により、コストに関して比較的手頃な製品となる。一方で、こうした装置の持ち方は、キー及びマウスピースの構成及び機械的挙動により、クラリネット又はサクソフォンと異なる。したがって、この楽器には、追加の共有されない学習が必要であり、こうした学習は、演奏者が自らのアコースティック楽器の能力を高めることを望む場合に不満となる。
【0010】
先行技術による1つの解決策は、楽器の2つの上方の部品間、例えばサクソフォンのマウスピースとクルークとの間に、波が検出されることを可能にするデバイスを挿入することによる。この解決策は、楽器のサイズが長くなり、したがって使用者の姿勢(特に腕の位置に対する頭部の後退)が変化するため、満足のいくものではない。さらに、このタイプの解決策に対して提示される応答時間は、100msを超える。この桁の応答時間は、管楽器の練習にとって満足のいくものではなく、はるかに短くする必要があり、理想的には10ms未満である。
【0011】
先行技術の別の解決策は、楽器の上部に配置されたアクチュエータによる振動に続いて気柱内に生じる定在波を測定する。この定在波を励起するのに必要な時間は、数十ミリ秒程度である。それは、管楽器の練習にとって満足のいくものではない。理想的には、応答時間は、約10msである。
【0012】
別の解決策は、キーの位置を検出するために、楽器の本体内を伝播する超音波弾性機械波を利用する。この構成では、楽器の本体に接する上部に発信器が配置され、下部に受信器が配置される。この構成により、迅速且つ流動的な楽音の検出が可能になる。しかしながら、この解決策は、楽器に及ぼされる物理的接触に影響されやすく、検出のロバスト性が低くなる。
【0013】
最後に、1つの最後の既知の解決策は、管状構造を導波路(頂部の発信器及び底部の受信器)として使用することにより、数メガヘルツの電磁波を使用する。この解決策も接触、発信器及び受信器の位置並びに外乱(電磁波)に影響されやすい。導波路には、信号の良好な完全性を保つために抵抗率の低い材料が必要である。非導電性材料は、波の伝播距離を制限する。したがって、この解決策は、満足のいくものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、楽器の気柱内で空中音波を発生させ、且つ受信することができる、適応性があり、取り外し可能であり、且つ種々の楽器に汎用性があるとともに、管楽器の練習に適合性がある、迅速且つ流動的な楽音の検出を可能にする数ミリ秒の応答時間を示すアセンブリを提案することにより、上記で引用した問題のすべて又は一部を軽減することを目的とする。さらに、本発明の主題であるアセンブリは、楽器に及ぼされる物理的接触又は外乱(楽器への接触、周囲温度の変化)に対して影響されにくい。その結果、適応性があり、取り外し可能であり、且つ汎用性があるとともに、楽器が受ける外乱に関係なく強力な楽音検出のロバスト性を示すアセンブリが得られる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明の主題は、気柱を画定する管状本体を含む、側孔を有する管楽器と組み合わされるように構成された空中音波伝達アセンブリであり、管状本体は、実質的に第1の軸に沿って局所的に延在し、伝達アセンブリは、楽器の管状本体の内部に取り外し可能に配置されるように意図され、伝達アセンブリは、
- 気柱内に空中音波を発信するためのデバイスであって、
〇楽器の管状本体に固定するための第1の構造体、
〇電気信号を空中音波に変換することができるアクチュエータ、
〇アクチュエータを管状本体から分離するように構成される、アクチュエータを第1の固定構造体に固定するための中間要素
を含むデバイス、
- 空中音波受信デバイスであって、
〇楽器の管状本体に固定するための第2の構造体、
〇第2の固定構造体に連結されたマイクロホンであって、アクチュエータによって発信された空中音波を、気柱内でのその伝播後に受信することができ、第1の軸に対して好ましくは中心から外れて位置決めされるマイクロホン、
〇第2の固定構造体に連結され、且つマイクロホンによって受信された空中音波を、楽器の側孔の塞ぎの構成に特徴的な電気信号に変換することができる変換デバイス
を含む空中音波受信デバイス
を含み、
- 管状本体は、止め具を含み、第1の固定構造体は、案内路を含み、案内路は、管状本体に沿って発信デバイスを止め具まで案内するように意図されることを特徴とする。
【0016】
有利には、アクチュエータを第1の固定構造体に固定するための中間要素は、アクチュエータから管状本体への音響機械波の伝達を防止するための絶縁膜であり、中間要素は、好ましくは、発泡体、ゴム又はプラスチックから作製される。
【0017】
有利には、受信デバイスは、管状本体に対して第2の固定構造体を位置決めするためのデバイスを含む。
【0018】
有利には、第2の固定構造体を位置決めするためのデバイスは、第1の軸を中心とする受信デバイスの回転を阻止するように構成される、第2の固定構造体と管状本体との間の少なくとも3つの点接触部を含む。
【0019】
有利には、アクチュエータは、圧電アクチュエータ、圧電パッド、スピーカ又は動電型加振器である。
【0020】
有利には、マイクロホンは、広帯域マイクロホンである。
【0021】
有利には、本発明による伝達アセンブリは、変換デバイスに連結された楽器のキーの位置を検出するためのデバイス、好ましくは少なくとも2つの磁力計及び1つの磁場発生器をさらに含む。
【0022】
有利には、空中音波受信デバイスは、変換デバイスに連結されたスピーカをさらに含み、前記スピーカは、楽器の側孔の塞ぎの構成に特徴的な電気信号を可聴楽音としてレンダリングするように構成される。
【0023】
有利には、空中音波受信デバイスは、変換デバイスに温度情報を供給するための、変換デバイスに連結された温度センサをさらに含み、変換デバイスは、マイクロホンによって受信された空中音波を電気信号に変換するときに温度を考慮するように構成される。
【0024】
本発明は、アコースティック音と電気音とを選択的に生成するように意図される、側孔を有する管楽器であって、こうした伝達アセンブリを含む管楽器にも関する。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、楽器は、サクソフォン、又はクラリネット、又はフルート、又はオーボエ、又はバスーンである。
【0026】
添付の図面によって示す、例として提供される実施形態の詳細な説明を読むことにより、本発明がよりよく理解され、他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の原理の可能な適用の一例を概略的に示す。
図2】本発明による伝達アセンブリの、楽器内における可能な位置決めの一例を概略的に表す。
図3】楽器のマウスピースに位置決めされた、本発明による空中音波伝達アセンブリの発信デバイスを概略的に表す。
図4】本発明による発信デバイスを概略的に表す。
図5】本発明による発信デバイスの第1の固定構造体の、管状本体内における当接を概略的に表す。
図6】本発明による発信デバイスの第1の固定構造体へのアクチュエータの固定の実施形態を概略的に表す。
図7】楽器のベルに位置決めされた、本発明による空中音波伝達アセンブリの受信デバイスを概略的に表す。
図8】アルトサクソフォンで演奏される楽音の音響シグネチャを概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、電子デバイスに連結された少なくとも1つの音波発信器及び少なくとも1つの音波受信器から構成されたシステムを通して、媒質の外乱を検出し、その位置を特定するのを可能にする方法であって、電子デバイスは、音波受信器によって生成された信号を受信及び分析して、そこから外乱の位置を推測する、方法の応用のために実装されるように意図される。こうした方法は、先行技術、例えば国際公開第2016/173879号パンフレットから知られている。
【0029】
本明細書において、以下では、空中音波という表現は、超音波が一部を形成すると考えられる本出願の適合性のある波をより広く示すために使用する。波の周波数範囲は、好ましくは、20~40kHz、又は20~60kHz、又は20~80kHz以上である。
【0030】
さらに、本発明について、サクソフォンの例に用いて説明するが、本発明は、すべてを列挙するわけではないが、クラリネット、サクソフォン、フルート、オーボエ、コーラングレ又はバスーンを含む、側孔を有するあらゆるタイプの管楽器に適用される。
【0031】
より一般的には、本発明について管楽器の分野で説明する。しかしながら、本発明の原理は、特に、音響活動の検出を伴う非破壊検査に適用される、例えば可変又は不変の形状を有するチャネリング内のように、中空体内で位置決めされるように適応性があり、取り外し可能である任意の装置に適用することができる。
【0032】
本発明は、側孔を有する管楽器と組み合わされるように構成される、楽器の管状本体の内部に取り外し可能に配置されるように意図される空中音波伝達アセンブリに関する。楽器の管状本体の内部は、気柱を形成する。本発明により、楽器のバルブの開閉を介して気柱内に発生する音響シグネチャから、楽器で演奏される楽音を特定することができる。本発明の原理は、クルークにおいて超音波スペクトルで、アクチュエータ、例えば圧電素子を介して気柱を励振させることに依拠し、音響シグネチャは、ベルにおいて、マイクロホン、例えば広帯域マイクロホンを介して測定される。この配置により、楽器に対する物理的な接触又は周囲の雑音等の環境外乱にロバストであることにより、演奏された楽音をわずか数ミリ秒で検出することが可能になる。楽音の認識は、(相関又は分類による)専用のアルゴリズムを介して実行される。伝達アセンブリは、以下に説明する図を用いて説明するように音波発信デバイス及び音波受信デバイスを含む。
【0033】
図1は、本発明の原理の可能な適用の一例を概略的に示す。
【0034】
図1の左側部分は、アコースティック演奏用の構成のクラリネット100、すなわち本来のクラリネットを示す。図1の右側部分は、楽器の2つの取り外し可能な部品、すなわちマウスピース105及びベル106を特定する。これらの2つの部品は、楽器をデジタルモードで構成するために取り外すことができる。そのために、本来のマウスピース105は、取り外され、本発明による発信デバイスを楽器のクルーク又はバレルに(又はクルーク若しくは取り外し可能なバレルの代わりに楽器に直接)配置することができる。同様に、本来のベル106の中に、本発明による受信デバイスを位置決めすることができる。伝達アセンブリは、(好ましくは受信デバイスにおいて)楽器の外側に連結された、変換デバイスを含み、変換デバイスは、発信器及び受信器に連結されて、楽器の孔の塞ぎの状態を検出及び特定する方法を実施する、例えば、音波受信器によって生成された信号を受信及び分析して、そこから外乱の位置を推測することができる、コンピューティングデバイス又は電子デバイスに対応する。変換デバイスは、後に詳述する動作を実施するように設計される。変換デバイスは、コンピュータプログラムの命令を実行してこれらの動作を実施する処理装置を含む。しかしながら、同じ動作を実行する(コンピュータプログラミングなしの)電子回路のみから構成された電子デバイスで置き換えることも可能である。概して、管楽器の側孔の塞ぎの状態を検出及び特定する方法は、楽器の孔の塞ぎの状態の可能なすべての状態の1つの状態が起動され、楽器の上に(好ましくはマウスピース又はクルーク/バレルに)位置する発信デバイスから、空中音波が楽器内を伝播するようにされ、この空中音波は、本発明の伝達アセンブリの受信デバイスによって捕捉され、捕捉された信号のいくつかの特性がライブラリに保存される、初期学習段階であって、この第1の段階は、クロマチックのタブ譜に対応する楽器の孔の塞ぎの状態のすべてにわたって反復される、初期学習段階と、演奏者が楽器の孔の塞ぎの状態を有効化して対応する楽音を引き起こし、発信デバイスによって受信デバイスに伝達された空中音波が再び捕捉され、捕捉された信号のいくつかの特性がライブラリ内の対応する特性と比較されて、そこから、有効化された孔の塞ぎの状態が推測され、次いで、そこから対応する楽音が推測される、第2の検出段階とを含む。当業者であれば、弾性機械波の1つ又は複数の受信器によって生成された信号を処理する方法の1つ又は複数の変形を実施するために、先行技術の種々の文献を参照することができよう。
【0035】
マウスピースは、ベルに組み込まれたコンピューティングデバイスと連結され得、演奏者の吹奏を検出するデバイスを含む変更されたマウスピースでもあり得る。このように、楽音のデジタルレンダリングを演奏者の吹奏と同期させ得る。
【0036】
コンピューティングデバイスは、検出された孔の塞ぎの状態に関連する楽音をコンピュータに供給する。コンピュータは、音響合成法を実行して、ヘッドセット202によって使用者に楽音をデジタルにレンダリングする。コンピュータは、コンピュータ200若しくはスマートフォン201又は他の均等な電子デバイスに組み込むことができる。
【0037】
楽器の側孔の塞ぎの構成の検出及び特定に関する詳細は、先行技術、例えば国際公開第2016/173879号パンフレットに記載されている。本発明は、こうした検出に関連して使用することができる発信器デバイス及び受信器デバイスに関する。
【0038】
図2は、本発明による伝達アセンブリ60の可能な位置決めの一例を概略的に表す。空中音波伝達アセンブリ60は、気柱103を画定する管状本体101を含む、側孔を有する管楽器100と組み合わされるように構成される。管状本体101は、実質的に第1の軸Xに沿って局所的に延在し、前記伝達アセンブリは、楽器100の管状本体101の内部に取り外し可能に配置されるように意図される。伝達アセンブリ60は、音波発信デバイスEと音波受信デバイスRとを含む。発信器と呼ばれる発信デバイスEは、好ましくは、楽器100のクルークに位置決めされ、受信器と呼ばれる受信デバイスRは、好ましくは、楽器100のベルに位置決めされる。したがって、本発明は、気柱を介する音響信号の伝達、受信器とコンピュータ(受信デバイスR)との間のデータの伝送及びコンピュータ(受信デバイスR)と発信器(発信デバイスE)との間のデータの伝送に依拠する。
【0039】
後に詳述するように、伝達アセンブリを楽器の本体内に位置決めすることにより、楽器の初期形状を保存することが可能になる。加えて、こうした伝達アセンブリは、楽器の本体内に位置決めされるため、楽器の取扱いにいかなる支障もきたすことはない。
【0040】
発信器と呼ばれる発信デバイスE及び受信器と呼ばれる受信デバイスRと、それらの間の通信デバイス(通信は、有線であり得るが、好ましくは無線である)とが伝達アセンブリ60を構成する。
【0041】
図3は、楽器のマウスピースに位置決めされた本発明による空中音波伝達アセンブリ60の発信デバイスEを概略的に表す。気柱103内の空中音波発信デバイスEは、
- 楽器の管状本体に固定するための第1の構造体10、
- 電気信号を空中音波に変換することができるアクチュエータ11、
- アクチュエータ11を管状本体から分離するように構成される、アクチュエータ11を第1の固定構造体10に固定するための中間要素12
を含む。
【0042】
アクチュエータ11は、空中音波を発生させることができる任意のタイプのアクチュエータである。一例として、アクチュエータは、圧電アクチュエータ、圧電パッド、スピーカ又は動電型加振器であり得る。
【0043】
アクチュエータ11を第1の固定構造体10に固定するための中間要素12は、アクチュエータ11から管状本体101への音響機械波の伝達を防止するための絶縁膜であり、中間要素12は、好ましくは、発泡体、ゴム又はプラスチックから作製される。
【0044】
演奏者は、マウスピース8の従来のコネクタに、備え付けられたマウスピースを介して吹奏する。演奏者は、楽器に息を吹き込むことなく、連続モードで演奏することもできることに留意することができる。吹奏を検出するためのセンサ及び電子素子のセット9は、吹奏を電気信号に再変換する。この電気信号はアクチュエータ11に電力を供給し、アクチュエータ11は、空中音波を発生させる。代わりに、楽音の認識に時間が遅れないために、音響信号は、好ましくは連続的に生成され、これは、演奏者の吹奏によって起動される音響合成である。そして、これらの音波は気柱103内でのみ変位する。換言すれば、管状本体101を介して音波が循環することはない。中間要素12は絶縁体として作用する。中間要素12は、アクチュエータを第1の構造体10に取り付けるための手段としての役割を果たす一方で、アクチュエータを管状本体101から分離するのを可能にする。したがって、アクチュエータ11は、管状本体から隔離される。音波を発生させることを目的とするアクチュエータ11の動きは、中間要素12の音波吸収作用により、管状本体には伝わらない。アクチュエータ11はシンバルの形状を有することができ、これにより、発信される信号の振幅を増大させることができる。
【0045】
図4は、本発明による発信デバイスEを概略的に表す。この図において、発信デバイスEの要素の可能な位置決めを詳細に見ることができる。第1の構造体10は、楽器の管状本体の上部に位置決めされる。この第1の構造体10上で、アクチュエータ11は、気柱103の方に向けられる。アクチュエータ11は、中間固定要素12によって第1の構造体10に連結される。中間要素12は、アクチュエータを第1の構造体10及び管状本体101から完全に隔離する。
【0046】
管状本体101は、止め具102を含む。第1の固定構造体10は、案内路14を含み、案内路14は、発信デバイスEを管状本体101に沿って止め具102まで案内するように意図される。案内路14により、発信デバイスEは、楽器の本体内で並進及び回転が阻止される。したがって、第1の構造体10は、固定して且つ同じ楽器に対して常に同じに、楽器のクルークに位置決めされる。
【0047】
図5は、本発明による発信デバイスEの第1の固定構造体10の、管状本体101内における当接を概略的に表す。サクソフォンの管状本体101は、止め具102を含む。この止め具は、すべてのサクソフォンに存在する。案内路14は、管状本体101に沿って発信デバイスを止め具102まで案内するように意図される。換言すれば、発信デバイスは、まず(図の左側部分に実線で表される)管状本体101の上部に位置決めされ、その後、管状本体101の中を、案内路14の入口が止め具102に突き当たるまで摺動する。案内路14と止め具102とが協働し、それにより、管状本体101内における発信デバイスEの角度位置決めが確実になる。案内路14は、管状本体101内において、発信デバイスEが止め具102に当接するまで発信デバイスEを案内するようにも作用する。発信デバイスEは、その後、使用のための(図の右側部分において点線で表す)その最終的な固定位置にある。
【0048】
図6は、本発明による発信デバイスEの第1の固定構造体10上へのアクチュエータ11の固定の実施形態を概略的に表す。中央の図は、第1の構造体の中空部分において、リングの形態をとる中間要素12内にアクチュエータ11を位置決めすることができることを示す。左側の図は、同じ構成を示し、楽器に対して発信デバイスを正確に位置決めするために先に考察した当接を明らかにする。右側の図は、管状本体と接触する中間要素12を考慮する可能性を示す。この構成は、中間要素が強力な絶縁の役割を有し、アクチュエータ11から管状本体への音波の伝達を遮断するという事実により、可能となる。本発明は、楽器の管状本体内の気柱を介する空中音波の伝達に依拠し、弾性機械波は楽器の管状本体を介して伝達されるべきではないことを想起することが重要である。
【0049】
図7は、楽器のベルに位置決めされた本発明による空中音波伝達アセンブリ60の受信デバイスRを概略的に表す。ここでは、管状本体101は、図7に表すように、ベルにおいて、実質的に第1の軸Xに沿って局所的に延在すると考えられる。空中音波受信デバイスRは、
- 楽器の管状本体に固定するための第2の構造体20、
- 第2の固定構造体20に連結されたマイクロホン21であって、アクチュエータ11によって発信された空中音波を、気柱内で伝播した後に受信することができ、好ましくは、第1の軸Xに対して中心から外れて位置決めされる(変形例では、マイクロホンは、第1の軸Xに対して中心に位置決めすることができる)、マイクロホン21、
- 第2の固定構造体20に連結され、且つマイクロホン21によって受信された空中音波を、楽器の側孔の塞ぎの構成に特徴的な電気信号に変換することができる変換デバイス30
を含む。
【0050】
マイクロホン21は、必須ではないが、好ましくは広帯域マイクロホンである。
【0051】
受信デバイスRは、有利には、管状本体101に対して第2の固定構造体20を位置決めするためのデバイス22を含む。したがって、受信デバイスRは、ベル内で並進及び回転が阻止される。第2の構造体20は、楽器のベル内に、固定して且つ同じ楽器に対して常に同じに位置決めされる。
【0052】
1つの実施形態では、第2の固定構造体20の位置決めデバイス22は、受信デバイスRが第1の軸Xを中心として回転するのを阻止するように構成される、第2の固定構造体20と管状本体101との間の少なくとも3つの点接触部23を含む。点接触部の1つは、回されると管状本体の一部に固定されるねじを含むことができる。代わりに、中央ねじシステムが、回転したとき、第2の構造体から管状本体に向かって薄い板を展開させて、受信デバイスRの自由度を阻止するために点接触部を構成することができる。
【0053】
したがって、本発明の受信デバイスRは、先に説明したように、異なるサイズの楽器に対する適合要素を有する、楽器のベルに固定された剛性要素(第2の構造体20)を含む。受信デバイスRは、超音波を測定することができる広帯域マイクロホンタイプのセンサを含み、このセンサは、音波の対称性を破り、各楽音に、したがってバルブの各位置に特有の音響シグネチャの豊かさを増大させるために、好ましくは第1の軸Xに対して中心から外れて配置される。マイクロホン21を第1の軸Xに対してオフセットすることにより、破壊的な波の干渉を回避することができる。この構成により、音波の良好な検出が保証される。
【0054】
制御電子機器及び電池は、第2の構造体に関連付けられた中空円筒体の内部に配置することができる。任意選択的に、楽器に対する受信デバイスRの正確な角度配置を示すために、ベルに固定された第2の構造体20に、基準ロッドを配置することができる。それにより、このロッドは、使用者が選択した位置で楽器に接触し、配置ガイドとしての役割を果たす。このロッドは、収納可能であり得る。
【0055】
変換デバイス30は、例えば、第2の構造体20の中空体内に位置決めされる。変換デバイス30は、マイクロホンに連結されて、マイクロホンによって受信される空中音波を気柱内でのその伝播後に処理して、楽器の側孔の塞ぎの構成に特徴的な電気信号を発生させるように処理されるようにする。伝達アセンブリ(発信又は受信)に、コンピューティングデバイスを接続することができる。そして、コンピューティングデバイスは、制御信号を発信器伝達アセンブリに供給することができ、発信器伝達アセンブリは音波を発信し、受信側伝達デバイスはこれらの音波を受信し、受信側伝達デバイスのマイクロホンは、これらの音波を、受信した音波から受信信号に変換するために、受信側伝達デバイスの変換デバイスに送信する。変形例として、コンピューティングデバイスは、変換デバイスの一部を形成する。このように、変換デバイスは、受信した音波に、すなわち発信器デバイスEによって発信され、楽器の気柱内を伝播する音波に対応する受信信号から、塞ぎの状態の音響シグネチャを検出及び認識するように設計される。したがって、実装する検出方法では、管状本体101内に伝達アセンブリを正確に位置決めする必要がある。
【0056】
より具体的には、変換デバイス30は、
- 楽器の側孔の塞ぎの状態の構成を可能なすべての構成の中から変化させ、各構成について、受信信号の少なくとも1つの基準特性を記録する、第1の学習段階を実行すること、
- 使用者が前記楽器を演奏している間、使用者によって演奏される各楽音について、前記基準特性に等価の受信信号の少なくとも1つの現特性を記録することと、そこから演奏者によって作動させられた楽器の孔の塞ぎの構成を推測するために、現特性を、記録された基準特性のすべてと比較することとによる、第2の監視(又は使用)段階を実行すること
を行うように構成される。
【0057】
本発明による伝達アセンブリ60は、楽器の練習に適合する応答時間を確保しながら、管状本体内の気柱を介して空中音波を伝達することに依拠する。
【0058】
本発明は、楽器の上部で発信器デバイスを使用し、楽器の下部で受信器デバイスを使用するという事実に依拠する。本発明は、発信器デバイスと受信器デバイスとを逆にすることにより、すなわち発信器デバイスを楽器の下部に、受信器デバイスを楽器の上部にすることでも適用可能であることが留意されるべきである。20kHz~80kHzの超音波スペクトルにわたる周波数スキャンにより、圧電アクチュエータ又は動電型アクチュエータを介して音波が発生する。これらの音波は、楽器の気柱内で変位する。バルブの位置により、これらの音波の伝播が変化し、演奏される楽音ごとに特定のシグネチャが発生する。この超音波音響シグネチャは、楽器の下部でマイクロホン等の受信器デバイスを用いて測定される。分類アルゴリズムを使用して、演奏された楽音が認識され、音響合成を介して、人工的な等価の楽音が作成される。分類は、ハイブリッド楽器の使用の開始時の較正又は学習段階中に確立された基準を使用して行われる。
【0059】
本発明は、楽器の本体を通過し、2つの影響が楽音の正確な分類を妨げる、先行技術の解決策と異なる。第1に、楽器の外側に対する物理的な接触(腕、脚、固定ストラップ、ヘッドセットケーブル等)を外乱とみなし、閉じたバルブに例える可能性がある。したがって、認識される楽音は、正確ではない。音波の伝播に本体を使用する先行技術の解決策における第2の外乱要因は、学習段階と分類段階との間の温度の変動である。温度が高くなるか又は低くなることにより、構造体の共鳴の位置がずれ、したがって音響シグネチャが変化する。その結果、分類が不可能になる。
【0060】
本発明では、超音波の伝播の手段として気柱を使用することにより、伝達アセンブリは、可聴ノイズ及び物理的接触に影響されにくい。温度の影響は、弾性機械波の場合よりも先験的に小さい。楽器の上部の発信器と下部の受信器とを対にすることにより、音波の伝播時間がわずか数ミリ秒(アルトサクソフォンでは2.5ms)であるため、キー/楽音の検出の良好な応答性を維持することができる。空中音波を優先させるために、アクチュエータは、楽器の本体から切り離される(したがってアクチュエータの楽器の本体への結合がない)。空中音波を測定するセンサは、好ましくは、楽器の管状本体の中心軸の外側に配置される。これにより音波の対称性が破られ、音響シグネチャがより豊かになる。それにより、異なる楽音を区別することがより可能になる。
【0061】
有利には(図2に見えるように)、1つの可能な実施形態において、発信デバイスEは、変換デバイス30に連結された楽器100のキーの位置を検出するためのデバイス51、好ましくは少なくとも2つの磁力計52及び1つの磁場発生器53、例えば磁石を含み得る。このデバイスは、図2では概略的に表されている。オクターブキーの位置を検出するために、磁場発生器53をオクターブキーに近接してスナップフィットさせることができる。少なくとも2つ、有利には3つの磁力計52が、異なる角度に従って、発信デバイスEの変形可能な構造体10の内部に位置決めされる。実際には、これらの異なる位置から、使用されるサクソフォンに関係なく、オクターブキーを検出することが可能である。変換デバイス30は、磁力計の値を読み取り、信号の各最大変動範囲に対して記録するように構成される。信号は、オクターブキーの変位だけでなく、ノイズに起因する極値も含む。最も大きい変動を有する磁力計が選択される。次に、この信号範囲のある特定の割合で、ヒステリシス閾値が選択される。このように、測定値が選択された閾値を上回るか下回るかに応じて、オクターブキーが起動されているか否かが読み取られる。
【0062】
本発明による伝達アセンブリは、異なる多様なベル形状を有する種々の楽器に適合させることができる。
【0063】
別の実施形態では、空中音波受信デバイスRは、変換デバイス30に連結された(例えば、楽器の外側の、第2の構造体上に配置された)スピーカをさらに含み得、前記スピーカは、楽器の側孔の塞ぎの構成に特徴的な電気信号を可聴楽音としてレンダリングするように構成される。
【0064】
本発明による伝達アセンブリは、(発信器デバイスで)アクチュエータによって生成された信号の、気柱を介する伝達と、位置決め及び(回転が停止した状態での)位置の保持のみを確保する、接触部による伝達アセンブリの機械的ロックと、例えば、例示的に磁気測定と識別アルゴリズムとを関連付ける、オクターブキーの起動を検出するシステムとを可能にする。
【0065】
さらに、本発明による伝達アセンブリは、楽器の気柱を通して送信された波の(受信器デバイスにおける)受信と、異なる楽器に適合する固定構造体による楽器の変更又は楽器の使用の妨害なしに、楽器の管状本体内の伝達アセンブリの位置決め及び位置の保持と、伝達デバイス間の通信と、変換デバイスを使用する情報の処理と、最後に伝達アセンブリ内の(嵩の理由から好ましくは受信デバイス内の)電池の設置によるエネルギーの自律性とを可能にする。
【0066】
図8は、アルトサクソフォンで演奏される楽音の音響シグネチャを概略的に表す。これは、ここでは、波の伝播時間及び受信時間の桁を表す一例である。瞬間t0は、発信の開始を表す。t0+2.25msで受信の開始が発生する。2.25msの時間は、クルークとベルとの間の空気中の信号の伝播時間に対応する。受信の終了は、t0+2.25ms+5msで発生する。
【0067】
良好な応答性を有するために、超音波スペクトルでの励振が優先される。それにより、可聴スペクトルよりも迅速に準定在状態を有することが可能になる。一例として、442Hzの「ラ」という楽音は、2.26msの周期を有する。約10の周期の後に、準定在状態を考慮することができる。それにより、可聴スペクトルを使用することによりこうした楽音を検出するために、22.6msの遅延が生じる。30kHzの周波数を使用することにより、周期は0.033msに短縮される。したがって、それにより、10の周期で0.33msの遅延が生じる。この場合、最小の検出遅延をもたらすのは、音速(したがって、音が受信器に到達するのにかかる時間)である。
【0068】
典型的には、圧電アクチュエータによって発信されるアルトサクソフォンに対する20kHz~40kHzの周波数スキャンにより、気柱内で変位する超音波が発生する。この信号がクルーク(発信デバイス)とベル(受信デバイス)との間で空気中を伝播する、約2msという時間の後、(図8に表すような)受信モジュールによって音が記録される。発信信号は、気柱とバルブの位置とによって変化する。受信時、この信号は、固有の音響シグネチャを有する。このシグネチャを、サポートベクターマシンの略であるSVMタイプのアルゴリズム(又はより広範には機械学習アルゴリズム)又は決定論的アルゴリズムにより、演奏された楽音を認識するために較正の音響シグネチャと比較することができる。
【0069】
1つの実施形態では、空中音波受信デバイスRは、変換デバイス30に連結された温度センサをさらに含む。このセンサは、好ましくは、第2の構造体の中空体内に配置される。この温度センサにより、気柱内の空気の温度を測定することが可能となる。
【0070】
周囲の温度は、温度変動範囲に従って楽音の検出に影響を与える可能性があることが分かっている。実際に、楽器の孔の塞ぎの状態を検出及び特定する方法は、ある一定の温度範囲に対して、例えば較正中の周囲温度に対応する20℃の周囲温度で、最適に動作する。したがって、楽器の孔の塞ぎの状態を検出及び特定する方法により、この温度でこの方法が行われる場合、楽音の完璧なレンダリングが確実になる。(例えば、日光にさらされた車のトランクに保管された後に)楽器が異なる温度で使用された場合、楽音の検出は、それによって影響を受ける。本出願人は、サクソフォンを高温にさらした後、20℃の室内で、孔の塞ぎの状態を検知及び特定する方法を使用することにより、テストを行った。いくつかの楽音は正確に特定されず、正常な状態に戻るには1時間半かかる。それは、再較正が必要であることを意味する。本発明の伝達アセンブリに温度センサが存在することにより、検出方法の使用段階における温度に関する情報を有することが可能になる。温度の上昇により周波数スペクトルが変化することが分かっている。したがって、温度センサが存在することにより、周波数スペクトルを20℃(又は学習段階における楽器の温度に対応する他の任意の基準温度)でのスペクトルと一致させることが可能である。周波数スペクトルの変換係数は、学習段階で一度のみ事前に調べることができる。与えられた楽器に対して各温度に対する係数がある。次いで、この係数は、使用の段階でリアルタイムに適用される。したがって、温度が変化するたびに本方法を再較正する必要はなくなる。
【0071】
上記に提示した態様により、伝達アセンブリを可能な限りロバストにすることができることが留意されるである。しかしながら、それには、楽器ごとに少なくとも1回の所定の較正が必要である。したがって、楽器の改造又はへこみ等のわずかな欠陥により、気柱を介する音波の伝達が影響を受けるため、新たな較正が必要となる。可聴音、この特定の場合には基準としての役割を果たす真の楽音を基準とする、再較正手順を導入することができる。代わりに又は加えて、超音波スペクトルのみを使用することによって行われる従来の較正を進めることも可能である。それにより、超音波スペクトルにおいて関連する伝達関数を再較正することが可能になる。この再調整のためには、可聴スペクトル及び超音波スペクトルにわたる周波数スキャンを実行しなければならない。
【0072】
本発明は、アコースティック音と電気音とを選択的に生成するように意図される、側孔を有する管楽器100であって、前述したような伝達アセンブリ60を含む管楽器100にも関する。
【0073】
側孔を有する管楽器100は、サクソフォン、又はクラリネット、又はフルート、又はオーボエ、又はバスーンであり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8