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特許7611462画像解析装置および方法ならびにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】画像解析装置および方法ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A63B69/00 512
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024555400
(86)(22)【出願日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2024022306
【審査請求日】2024-09-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502385045
【氏名又は名称】野村 昇
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 昇
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】島田 良 ほか,AIを用いたサーファーの利用状況のデータ化と砕波点や海底地形の変化に関する考察,土木学会論文集B2(海岸工学),2022年,78巻,2号,1015-1020頁,https://www.jstage.jst.go.jp/article/kaigan/78/2/78_I_1015/_pdf
【文献】GOMES, Diana et al.,Detection and characterization of surfing events with smartphones’ embedded sensors,2018 12th International Conference on Sensing Technology (ICST),2018年,132 - 138 頁,https://ieeexplore.ieee.org/document/8603656
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得部と、
前記映像取得部が取得した前記映像に基づいて、前記波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出部と、
を備え、
前記検出部は、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、前記ライドサーファーとして検出する
ことを特徴とする画像解析装置。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、前記第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:前記第1の速度の時の前記被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、前記第2の速度の時の前記被写体の前記外接枠の形状が略縦長長方形である。
【請求項2】
請求項1に記載の画像解析装置であって、
第2の所定時間において前記検出部が前記ライドサーファーを検出した回数に基づいて、前記波のコンディションを判定する判定部と、
をさらに備えることを特徴とする画像解析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像解析装置であって、
前記判定部は、さらに前記ライドサーファーのライド時間に基づいて、前記波のコンディションを判定する
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像解析装置であって、
前記判定部は、さらに前記ライドサーファーの移動方向に基づいて、前記波のコンディションを判定する
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項5】
請求項2に記載の画像解析装置であって、
前記検出部は、前記映像取得部が取得した前記映像に基づいて、さらにサーファーを検出し、
前記判定部は、前記第2の所定時間において前記検出部が検出した前記サーファーの数、および前記第2の所定時間において前記検出部が前記ライドサーファーを検出した回数に基づいて前記波のコンディションを判定する
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項6】
波に乗るサーファーを検出する画像解析方法であって、
前記波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得ステップと、
前記映像取得ステップが取得した前記映像に基づいて、前記波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出ステップと、
を含み、
前記検出ステップは、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、前記ライドサーファーとして検出する
ことを特徴とする画像解析方法。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、前記第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:前記第1の速度の時の前記被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、前記第2の速度の時の前記被写体の前記外接枠の形状が略縦長長方形である。
【請求項7】
入出力装置と情報を授受可能なコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、
波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得ステップと、
前記映像取得ステップが取得した前記映像に基づいて、前記波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出ステップと、
を含み、
前記検出ステップは、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、前記ライドサーファーとして検出する
ことを特徴とする、
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、前記第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:前記第1の速度の時の前記被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、前記第2の速度の時の前記被写体の前記外接枠の形状が略縦長長方形である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置および方法ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
破砕を利用するマリンアクティビティは多く、その代表格がサーフィンである。サーフィンは、波のコンディションに大きく影響を受ける。したがって、サーファーのための波のコンディションに関するデータの提供が望まれている。従来は、現地で目視で波を認識し、波のコンディションに関するデータを収集していた。しかし、人の負担を軽減するため、映像から波のコンディションを自動で判定することが望まれている。
【0003】
特許文献1では、水面に浮かべたブイを用いて自動で波高を計測する技術が開示されている。この特許文献1に開示された技術は、水面に追従するブイの上下変位を計測することにより、波高を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-4528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、波高を計測することができるが、その他の波のデータを計測する手法は開示されていない。また、サーフィンに適した波のコンディションには、様々な要素が複雑に関係しているため、波高のデータだけでは十分でない。波高データのみで波のコンディションを判定すると、実際のサーファーが体感する波のコンディションとは異なる場合があるという課題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サーファーのニーズに合致した波のコンディションを判定する画像解析装置および方法ならびにプログラムを提供しよう、とするものである。
【0007】
また、実際のサーファーが体感する波のコンディションを判定するために、実際に波に乗っているサーファーの反応を解析することが望ましい。また、自動で、反応を解析するためには、実際に波に乗っているサーファーを映像から検出し、波に乗っているサーファーの様子を解析することが望ましい。しかし、映像から波に乗っているサーファーのみを検出する技術はまだない。
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、映像から波に乗るサーファーを自動で検出する画像解析装置および方法ならびにプログラムを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面の画像解析装置は、波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得部と、映像取得部が取得した映像に基づいて、波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出部と、を備え、検出部は、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、ライドサーファーとして検出する。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:第1の速度の時の被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、第2の速度の時の被写体の外接枠の形状が略縦長長方形である。
【0010】
本発明の一側面の画像解析方法は、波に乗るサーファーを検出する画像解析方法であって、波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得ステップと、映像取得ステップが取得した映像に基づいて、波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出ステップと、を含み、検出ステップは、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、ライドサーファーとして検出する。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:第1の速度の時の被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、第2の速度の時の被写体の外接枠の形状が略縦長長方形である。
【0011】
本発明の一側面のプログラムは、入出力装置と情報を授受可能なコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得ステップと、映像取得ステップが取得した映像に基づいて、波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出ステップと、を含み、検出ステップは、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、ライドサーファーとして検出することを特徴とする、処理をコンピュータに実行させる。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:第1の速度の時の被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、第2の速度の時の被写体の外接枠の形状が略縦長長方形である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、波に乗るサーファーを検出することができる。
【0013】
本発明によれば、波のコンディションを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施の形態にかかる波判定システム1の構成を示す図である。
図2図2は、映像からライドサーファーを検出した例を示した図である。
図3図3は、映像に写ったサーファーの姿勢を示す図である。
図4図4は、コンテンツ提供部34が作成したコンテンツを示す図である。
図5図5は、波判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[一実施の形態]
図1は、本実施の形態にかかる波判定システム1の構成を示す図である。波判定システム1は、カメラ11、画像解析装置としての波判定装置12、ユーザ端末を含んで構成されている。
【0016】
カメラ11は、例えば、海岸に設置され、サーファーを含む波が発生可能な水上の風景を撮像する。カメラ11は、取得した映像を波判定装置12に供給する。ここで、水上とは、海上、河川上、湖上、プール上等を含む。
【0017】
サーファーとは、サーフィンを行っている者である。サーファーは、サーフボードにまたがって波を待機する波待ちの姿勢や、波の進行に合わせてサーフボードに寝そべった姿勢で手で水をかく姿勢(パドリング)からタイミングを見計らってボード上に立つ。そして、サーファーは、波の力を利用して進行し、波に乗る(ライドする)。ライド中のサーファーを、以下ライドサーファーと称する。
【0018】
波判定装置12は、クラウドサーバ、PC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、タブレットなどの画像解析装置である。波判定装置12は、カメラ11により撮像された映像に基づいて、撮像範囲内にいるサーファーの解析を行い、波のコンディションを判定する。波判定装置12は、判定内容に基づいてコンテンツを作成し、ユーザ装置に供給する。波判定装置12は、独立した装置であってもよいし、カメラ11などに組み込んでもよい。
【0019】
ユーザ端末は、例えば、スマートフォンであり、波判定装置12からネットワークを介して受信した波の判定内容を表示させることができる。
【0020】
カメラ11で撮像された映像は、波判定装置12に供給されて解析される。なお、カメラ11で撮像された映像を外部のサーバやPCにいったん記憶して、それを波判定装置12で解析するようにしてもよい。例えば、ライブストリーミングで配信された映像を記憶して、それを波判定装置12で解析するようにしてもよい。撮像した映像を波判定装置12で同時に解析しなければならないものではない。
【0021】
(波判定装置12の機能構成)
波判定装置12は、図1に示すように、通信部21、記憶部22、制御部23を含んで構成されている。
【0022】
通信部21は、カメラ11、ユーザ端末と通信する。通信部21は、各種情報を、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)などの近距離無線通信で実現してよい。さらに、広域無線通信により、図示せぬネットワーク等を経由して外部サーバや各種サービスとの情報をやりとりしてもよい。
【0023】
記憶部22は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリを有する。記憶部22は、上述した制御用アプリケーションプログラムと、その実行のために必要な各種データや、処理により生成された情報を記憶する。
【0024】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)、ハードウェアを含む、その他の要素から構成される。制御部23は、記憶部22に記憶された図示せぬ制御用アプリケーションプログラムを実行することで、波判定装置12全体を制御するとともに、映像取得部31、検出部32、判定部33、コンテンツ提供部34として機能する。
【0025】
((映像取得部31))
映像取得部31は、カメラ11で撮像した映像のデータを取得し、記憶部22に記憶する。カメラ11による映像は、時系列で所定時間の継続する画像として撮像されている。このため、映像取得部31が取得した映像は、時系列的に連続する動画画像、あるいは、所定の時間間隔の静止画像として記憶される。映像取得部31が取得した映像は、検出部32、判定部33においてリアルタイムの情報処理により波判定が行われる。
【0026】
また、必ずしもリアルタイムの情報処理により波判定を行うものでなく、外部サーバや記憶部22に一端映像を記憶しておいて、波判定処理を行うときに、外部サーバや記憶部22から映像を取り出して波判定処理を行うこともできる。
【0027】
((検出部32))
検出部32は、映像取得部31が取得した映像からライドサーファーを検出する。
【0028】
図2は、ひとつの映像から複数のライドサーファーを検出した例を示した図である。図2が示す映像には、サーファーが被写体a~jとして写っている。検出部32は、被写体a~jのうち、被写体a,bをライドサーファーとして検出する。
【0029】
具体的には、検出部32は、下記の要件r1、要件r2のすべてを満たした被写体をライドサーファーとして検出する。
【0030】
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:第1の速度の時の被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、第2の速度の時の被写体の外接枠の形状が略縦長長方形である。
【0031】
要件r1について説明する。要件r1は、波待ち状態またはパドリングを経てライドを開始したサーファーをライドサーファーとして検出するための要件である。
【0032】
サーファーは、上述したように、第1の所定時間の波待ちまたはパドリングを経てライドを開始する。
【0033】
波のサイズや条件によって変わるが、波待ち中のサーファーの移動速度は、例えば、約0km/hであり、パドリング中のサーファーの移動速度は、例えば、約5km/h未満である。一方、ライド中のサーファーの移動速度は、例えば、約10km/h以上であり、ライド中の方が速い。したがって、第1の速度が波待ち状態またはパドリング中の移動速度程度に相当し、第2の速度がライド中の移動速度程度に相当し、第2の速度は、第1の速度よりも速い。第1の所定時間は、適宜設定されることができる。
【0034】
以上より、移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、第1の速度よりも速い第2の速度に変化する被写体は、ライドサーファーである可能性が高いといえる。
【0035】
例えば、検出部32は、被写体の移動速度を算出するために、被写体の位置を3次元座標で特定し、被写体が移動したピクセル数を測定し、そのピクセル数、映像の解像度、フレームレートに基づいて、被写体が1秒間に移動するピクセル数(ピクセル毎秒)を算出してもよい。
【0036】
検出部32は、被写体の三次元座標の特定をするために、公知の方法を用いることができる。例えば、検出部32は、キャリブレーションした複数台のカメラ11を用いて、特徴点を検出し、三角測量により、被写体の三次元座標を特定することができる。また、潮汐の影響を受ける海の波の位置を予報データに基づいてピクセル座標で取得し、波の位置の座標を用いて、被写体の疑似的な深度情報を取得してもよい。
【0037】
要件r2について説明する。要件r2も同様に、波待ち状態またはパドリングを経てライドを開始したサーファーをライドサーファーとして検出するための要件である。要件r1のみの場合、他のマリンスポーツの遊技者も混ざって検出される可能性があるため、ライドサーファーを正確に検出するべく要件r2を設けた。
【0038】
図3は、映像に写ったサーファーの姿勢を示す図である。図3Aに示すように、サーファーは、パドリング中において、サーフボードに寝そべった姿勢をしている。したがって、映像に写ったサーファーの外接枠Oの形状は略横長長方形となる。また、サーファーは、波待ち状態において、サーフボードに跨り座った姿勢をしている。したがって、映像に写ったサーファーの外接枠の形状は略正方形となる。
【0039】
一方、図3Bに示すように、サーファーは、ライドを開始すると、サーフボードに立ち上がった姿勢をしている。したがって、映像に写ったサーファーの外接枠Pの形状は略縦長長方形となる。
【0040】
以上より、波待ち状態またはパドリング中に相当する第1の速度の時の被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、ライド中に相当する第2の速度の時の被写体の外接枠の形状が略縦長長方形である被写体は、ライドサーファーである可能性が高いといえる。
【0041】
なお、要件r1,r2と条件とした場合、ライドサーファーの他に、例えば、ウインドサーフィンやジェットスキー等の遊技者、漁船等も混ざって検出されることが考えられる。そのため、ライドサーファー以外の移動速度、画角に対する面積、映像内の位置の特性に基づいて検出対象から除外する設定をしてもよい。
【0042】
なお、検出部32は、ライドサーファーの外接枠の形状や画角に対する面積などの要素を、AI(Artificial Intelligence)を用いて機械学習することにより、ライドサーファーを検出してもよい。
【0043】
((判定部33))
判定部33は、第2の所定時間において検出部32がライドサーファーを検出した回数に基づいて、波のコンディションを判定する。
【0044】
(((ライド回数による波のコンディション判定)))
まず、判定部33は、第2の所定時間(例えば、10分間や1時間)において検出部32がライドサーファーを検出した回数を判定する。第2の所定時間において検出部32がライドサーファーを検出した回数は、サーファーがライドすることができた回数である。第2の所定時間において検出部32がライドサーファーを検出した回数を、以下、ライド回数と称する。
【0045】
判定部33は、第2の所定時間において、ライド回数が多いほど、サーフィンに適した波のコンディションであると判定する。例えば、判定部33は、判定結果を数値化すべく、ライド指数を算出することにより、波のコンディションを判定する。例えば、ライド指数は、100点満点の点数である。例えば、判定部33は、10分間において、ライド回数が150回以上であれば、多くライドすることができる波であり、サーフィンに適した波であるとして、ライド指数を70点とする。一方、例えば、ライド回数が50回であれば、多くライドすることができない波であり、あまりサーフィンに適さない波であるとして、ライド指数20点とする。
【0046】
(((補正ライド回数)))
判定部33が判定に用いるライド回数は、サーファーの全体の人数に基づいて補正したライド回数であることが好ましい。以下、補正したライド回数を、補正ライド回数と称する。以下、ライド回数と補正ライド回数を区別する必要がない場合は、ライド回数と統一して称する。
【0047】
第2の所定時間の映像に写りこんだサーファーの全体の人数は、ライド回数に大きく影響する。具体的には、ライド回数は、サーファーの人数が多いほど、多くなる傾向があり、サーファーの人数が少ないほど、少なくなる傾向がある。しかし、サーファーの人数が所定数以上となると、ライドに必要な砕波の取り合いが生じるため、サーファーの人数が多いほどライド回数が多くなるという傾向は弱くなる。
【0048】
判定部33は、ライド回数を用いて波のコンディションを判定する。この場合、ライド回数から上述のサーファーの人数の影響を排除することが望ましい。そこで、判定部33は、サーファーの人数に基づいて、ライド回数を補正してもよい。
【0049】
ライド回数を補正する処理について説明する。
【0050】
まず、判定部33は、第2の時間においてライドサーファーが検出された回数に基づいて、ライド中でないサーファーを含む、サーファー全体の数を判定する。例えば、検出部32は、検出したライドサーファーごとにラベリングを行い、第2の時間において追跡をする。そして、判定部33は、検出部32が付与したラベルの数を判定し、そのラベルの数をサーファーの数と判定する。
【0051】
判定部33は、第2の所定時間におけるサーファーの数に基づいて、人数対比係数を設定する。人数対比係数は、ライド回数を補正する際に用いる係数である。例えば、人数対比係数は、第2の所定時間におけるライドサーファーが10人未満である場合に、1よりも大きい値とする。一方、例えば、20人以上である場合は、1よりも小さい値とし、人数が増えるほど段階的に値を小さくする。
【0052】
上述の通り、サーファーの人数が所定数以上となると、サーファーの人数が多いほどライド回数が多くなるという傾向は弱くなるため、人数対比係数に下限値を設けてもよい。例えば、サーファーが100人以上である場合は、人数対比係数を0.6とし、サーファーが120人である場合も、人数対比係数を0.6のままとする。
【0053】
そして、判定部33は、判定したライド回数に人数対比係数を乗算することで、ライド回数を補正する。例えば、第2の所定時間におけるサーファーの数が30人である場合に、入水者人数対比係数を0.8とすると、ライド回数が100回の場合、補正ライド回数は、80回となる。
【0054】
これにより、サーファーの人数が多いほどライド回数は多くなるという、サーファーの人数がライド回数に与える影響を排除することができ、ライド回数をより公平な値とすることができる。
【0055】
上述では、判定部33は、第2の時間においてライドサーファーが検出された回数に基づいて、サーファー全体の数を判定したが、他の手法を用いてサーファーの数を判定してもよい。例えば、検出部32は、人間の腕、人間の頭部、サーフボード等の複合的なパーツ、またはそれらの複合的な動きを認識することによって、サーファーを検出してもよい。そして、判定部33は、第2の時間において検出部32が検出したサーファーの数を判定してもよい。
【0056】
((コンテンツ提供部34))
コンテンツ提供部34は、判定部33が判定した内容に基づいて、サーファーに提供するコンテンツを作成する。図4は、コンテンツ提供部34が作成したコンテンツを示す図である。コンテンツ提供部34は、例えば、枠Qに示すように、判定部33が設定したライド指数を表示する。
【0057】
コンテンツ提供部34は、作成したコンテンツを、通信部21を介してユーザ端末に送信し、ユーザ端末の図示せぬ表示部に表示させる。
【0058】
これにより、サーファーはコンテンツを閲覧することができ、波のコンディションを把握することができる。
【0059】
なお、説明を簡略化するためにライド指数をそのままコンテンツに表示することとしたが、ライド指数を他の評価基準に基づいて変換し、変換した内容を表示してもよい。また、コンテンツ提供部34は、ライド指数およびライド指数以外の要素を考慮し、新たに点数付けをして、コンテンツに表示してもよい。また、コンテンツ提供部34は、ライド指数に基づいて、ユーザに報知すべきコメントをコンテンツに表示してもよい。また、判定部33が判定した第2の所定時間におけるサーファーの人数、混雑情報、天候予報を用いた風向情報、イラストを追加してもよい。
【0060】
(波判定処理)
次に、波判定装置12が行う波判定処理について説明する。初めに、図5のフローチャートを参照して、処理の流れを説明する。
【0061】
波判定処理は、例えば、波判定装置12の図示せぬスタートボタンが操作されることにより、開始する。
【0062】
ステップS1において、映像取得部31は、記憶部22から、カメラ11により撮影されて映像を取得する。
【0063】
ステップS2において、検出部32は、映像取得部31が取得した映像からライドサーファーを検出する。
【0064】
ステップS3において、判定部33は、第2の所定時間において検出部32がライドサーファーを検出した回数(ライド回数)を判定する。
【0065】
ステップS4において、判定部33は、ライド回数に基づいて、波のコンディションとしてライド指数を算出する。
【0066】
ステップS5において、コンテンツ提供部34は、判定部33が算出したライド指数に基づいて、コンテンツを作成し、通信部21を介してユーザ端末13に提供する。既に、コンテンツが提供されている場合は、コンテンツ提供部34は、コンテンツを更新する。
【0067】
その後、処理は終了する。
【0068】
[他の実施例]
【0069】
(ライド時間による波のコンディション判定)
上述では、判定部33は、ライド回数を判定したが、さらにライドサーファーのライド開始時から終了時までの時間(以下、ライド時間と称する。)を測定してもよい。
【0070】
ライド開始時は、例えば、検出したライドサーファーの移動速度が第2の速度になった時であり、ライド終了時は、検出したライドサーファーの移動速度が遅くなり、第1の速度となった時である。
【0071】
判定部33は、上記のライド時間の測定を各ライドサーファーに対して行い、所定時間における平均値を算出してもよい。例えば、所定時間が10分であれば、判定部33は、10分間に判定されたライドサーファーのライド時間の平均を算出する。
【0072】
上述では、判定部33は、ライド回数に基づいて波のコンディションを判定したが、さらにライド時間に基づいて判定してもよい。具体的には、判定部33は、ライド時間が長いほど、サーフィンに適した波のコンディションであると判定する。例えば、判定部33は、ライド時間が10秒以上であれば、ライド時間が長く、ライドしやすい波であり、サーフィンに適している波であるとして、ライド指数を70点とする。一方、例えば、ライド時間が3秒未満であれば、ライド時間が短く、ライドしにくい波であり、あまりサーフィンに適さない波であるとして、ライド指数20点とする。
【0073】
判定部33は、ライド回数に基づいて算出したライド指数と、ライド時間に基づいて算出したライド指数の両方を考慮して、波のコンディションを判定する。例えば、判定部33は、2つのライド指数を平均する。また、コンテンツ提供部34は、判定部33が算出したライド指数の平均値を表示する。
【0074】
なお、判定部33は、所定時間における各ライドサーファーのライド時間を全て合計し、その値に基づいて、波のコンディションを判定してもよい。
【0075】
(ライド時間による波のコンディション判定の他の例)
判定部33は、ライドサーファーが検出された場合であっても、所定場合にライド時間を測定しないようにしてもよい。または、判定部33は、ライド時間の平均値または合計値を算出する際に、所定のライドサーファーのライド時間を計算に入れないようにしてもよい。
【0076】
例えば、検出部32は、公知技術を用いてライドサーファーがライドしている波の部分を検出する。そして、判定部33は、ライドサーファーがライドしている波が所定の部分である場合、そのライドサーファーのライド時間を測定しない。
【0077】
波は、波の斜面であるフェイス部分と、砕けた波の白い部分であるスープ部分等から構成されている。サーフィンに適した波は、波が砕ける前のフェイス部分であり、スープ部分は、サーフィンに適していない。そこで、判定部33は、ライドサーファーがライドしている波がスープ部分である場合、そのライドサーファーのライド時間を測定しないようにしてもよい。これにより、判定部33は、サーフィンに適していないスープ部分のライドを除外して波のコンディションを判定することができるため、判定の精度を上げることができる。
【0078】
(移動方向)
上述では、判定部33は、ライド回数を判定したが、ライドサーファーの移動方向を判定してもよい。判定部33は、映像に写るライドサーファーが時間経過に伴い、ライトまたはレフトのどちらに移動するかを判定する。判定部33は、所定時間において移動方向の判定を行い、より多く判定された方向を特定する。
【0079】
コンテンツ提供部34は、コンテンツの作成に当たり、特定したライドサーファーの移動方向を波の移動方向であるとして、波の移動方向情報をコンテンツに追加する。
【0080】
サーファーには右利きおよび左利きが存在しており、波の方向によってライドしやすさが異なる。すなわち右利きのサーファーに適した方向の波の場合、その波に対応する方向に移動するライドサーファーが多い。また左利きのサーファーに適した方向の波の場合、その波に対応する方向に移動するライドサーファーが多い。したがって、判定部33は、ライドサーファーの移動方向に基づいて、水上の波のコンディションを判定するようにしたので、右利きに適した波であるか否か、または左利きに適した波であるか否かを判定することができる。
【0081】
(ライドサーファーの動作による波のコンディション判定)
上述では、判定部33は、ライド回数に基づいて波のコンディションを判定したが、さらにライドサーファーの動作に基づいて波のコンディションを判定してもよい。
【0082】
例えば、検出部32は、ライドサーファーに加え、公知の画像解析技術によりライドサーファーの動作を検出し、判定部33は、ライドサーファーが所定の動作をしている場合、サーフィンに適している波であると判定する。所定の動作は、例えば、ライドサーファーが進行方向を急激に変える動作、波しぶきを大きく飛ばす動作等である。例えば、判定部33は、ライドサーファーが所定の動作をした場合、ライドしやすい波であり、サーフィンに適している波であるとして、ライド指数に加点をする。
【0083】
(情報の活用)
上述のコンテンツ提供部は、主にサーファーへ向けて波のコンディションに関する情報を提供した。しかし、波のコンディションに関する情報は、サーファーだけでなく、サーファー以外に提供してもよい。
【0084】
[付記]
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0085】
上述の画像解析装置は、
波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得部31と、
映像取得部31が取得した映像に基づいて、波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出部32と、
を備え、
検出部32は、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、ライドサーファーとして検出する。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:第1の速度の時の被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、第2の速度の時の被写体の外接枠の形状が略縦長長方形である。
【0086】
このような構成を有するので、画像解析装置は、移動速度の変化および被写体の形状の変化に基づいてライドサーファーを検出することができる。これにより、ライド中でないサーファーを検出せず、ライド中のサーファーのみを検出することができる。
【0087】
また、第2の所定時間において検出部32がライドサーファーを検出した回数に基づいて、波のコンディションを判定する判定部33と、
をさらに備える。
【0088】
第2の所定時間において検出部32がライドサーファーを検出した回数は、サーファーが波に乗ることができた回数に相当する。通常、サーフィンに適した波である場合、サーファーが波に乗ることができた回数は多く、サーフィンに適していない波である場合、サーファーが波に乗ることができた回数は少ない。したがって、画像解析装置は、サーファーが波に乗ることができた回数に基づいて、波のコンディションを判定するようにしたので、より実態に沿った状況に基づいて、波のコンディションを判定することができる。
【0089】
また、判定部33は、ライドサーファーのライド時間に基づいて、水上の波のコンディションを判定する。
【0090】
通常、サーフィンに適した波である場合、サーファーのライド時間は長く、サーフィンに適していない波である場合、サーファーのライド時間は短い。したがって、画像解析装置は、さらにサーファーのライド時間に基づいて、波のコンディションを判定するようにしたので、実態に沿ってより正確に波のコンディションを判定することができる。
【0091】
また、判定部33は、さらにライドサーファーの移動方向に基づいて、水上の波のコンディションを判定する。
【0092】
サーファーには右利きおよび左利きが存在しており、波の方向によってライドしやすさが異なる。すなわち右利きのサーファーに適した方向の波の場合、その波に対応する方向に移動するライドサーファーが多い。また左利きのサーファーに適した方向の波の場合、その波に対応する方向に移動するライドサーファーが多い。したがって、画像解析装置は、ライドサーファーの移動方向に基づいて、水上の波のコンディションを判定するようにしたので、右利きに適した波であるか否か、または左利きに適した波であるか否かを判定することができる。
【0093】
また、検出部32は、映像取得部31が取得した映像に基づいて、さらにサーファーを検出し、
判定部33は、第2の所定時間において検出部32が検出したサーファーの数、および検出部32がライドサーファーを検出した回数に基づいて波のコンディションを判定する。
【0094】
サーファーの全体の人数は、検出部32がライドサーファーを検出した数に大きく影響する。具体的には、サーファーの人数が多いほど、検出部32がライドサーファーを検出した数は多くなる。一方、サーファーの人数が少ないほど、検出部32がライドサーファーを検出した数は少なくなる。
【0095】
上述の構成を有することにより、例えば、判定部33は、サーファーの全体の数が多い場合に、ライドサーファーを検出した数を少なくするよう補正することができ、補正されたライドサーファーを検出した数に基づいて、波のコンディションを判定することができる。これにより、サーファーの人数が多いほどライドサーファーを検出した数は多くなるという、サーファーの人数がライドサーファーを検出した数に与える影響を排除することができ、判定部33は、より公平な値を用いて波のコンディションを判定することができる。
[実施形態の補足説明]
【0096】
上述した実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態の順序、フローチャートにおける処理の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0097】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0098】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【符号の説明】
【0099】
1 波判定システム
11 カメラ
12 波判定装置
13 ユーザ端末
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
31 映像取得部
32 検出部
33 判定部
34 コンテンツ提供部
【要約】
映像から波に乗るサーファーを自動で検出する画像解析装置および方法ならびにプログラムを提供する。
画像解析装置は、波が発生可能な水上を撮像した映像を取得する映像取得部31と、映像取得部31が取得した映像に基づいて、波に乗っているサーファーであるライドサーファーを検出する検出部32と、を備え、検出部32は、下記の要件r1および要件r2を満たす被写体を、ライドサーファーとして検出する。
要件r1:移動速度が第1の所定時間内に第1の速度から、第1の速度よりも速い第2の速度に変化する。
要件r2:第1の速度の時の被写体の外接枠の形状が略正方形または略横長長方形であって、第2の速度の時の被写体の外接枠の形状が略縦長長方形である。

図1
図2
図3
図4
図5