IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェイ・アイ・サイエンス有限会社の特許一覧

<>
  • 特許-溶離液性の利用フラクションコレクター 図1
  • 特許-溶離液性の利用フラクションコレクター 図2
  • 特許-溶離液性の利用フラクションコレクター 図3
  • 特許-溶離液性の利用フラクションコレクター 図4
  • 特許-溶離液性の利用フラクションコレクター 図5
  • 特許-溶離液性の利用フラクションコレクター 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】溶離液性の利用フラクションコレクター
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/80 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
G01N30/80 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019187088
(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公開番号】P2021063670
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】596096825
【氏名又は名称】ジェイ・アイ・サイエンス有限会社
(72)【発明者】
【氏名】松下 至
【審査官】中村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517323(JP,A)
【文献】特開平06-138115(JP,A)
【文献】特開昭57-190001(JP,A)
【文献】米国特許第04460575(US,A)
【文献】小田宗宏,ヒト培養肝癌細胞の産出するHBs抗原の精製方法とその物理化学特性について,岡山医誌,日本,1989年,101,p687-698
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00-30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
試料がクロマトグラフによって、成分毎に分離された分離液をガラス管に滴下するステップと、前記滴下された分離液が相互に混ざり合うことなく、当該ガラス管内に積層するステップと、前記積層された各分離液が比重差によって、さらに分離が促進されるステップと、前記分離が促進された各分離液を分離された状態で分取するステップと、を有することを特徴とする分離液の分取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
計測装置、分析装置の中のクロマトグラフに関する新規の装置開発。
クロマトグラフが数多く市販されているが、本発明はその中の分取を主目的とするフラクションコレクターに関する装置の発明である。
【背景技術】
【0002】
精密用のクロマトグラフィーは専門メーカーにより数多く製品化され世界の研究機関に供給されている。近年はクロマトグラフの活用は精密分析のみならず、成分の分離精製にも及んでいる。その分離した成分のフラクションの方法として、新規のフラクションコレクター、技法はクロマトグラフィーに適した装置である。各研究機関では市販装置の利用がほとんどであり、自作したとしても、市販品のアレンジである。
現在のフラクションコレクター(市販品)は電動装置も含めたものであり、高価でもある。実験指導者や研究者には高価で購入する箇所は限られているのが現状である。それに、フラクションした成分の純度をさらに上げることは困難であるが、本装置技術ではフラクションした成分の純度を上げることが可能である。 分離メカニズムの特徴として溶離液の比重さをフラクション技法として活用していることである。
(なお、クロマトグラフは装置、クロマトグラフィーはその手法を全体、クロマトグラムは放出データーを記録したものを意味し分取装置をフラクションコレクターという)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のフラクションコレクターでは駆動のための電動式モーター類が必要であったが本装置、技術は分離溶液の比重差をのみを利用するためにその分離度が課題となった。
この分離度は液体装置付属の検出器とレコーダーにてクロマトグラムを得て判断できる。
そのクロマトグラムと今回発明の密度差の分離によるフラクションコレクター(ガラス管)の目視クロマトグラム(図1)とで比較する必要があった。
目視クロマトグラムをより明瞭にするために溶離液を緩衝液として濃度を変えて何回かにわたり、実験を行った。課題として次の事が上がった。
1.緩衝液の濃度を変えて分離度を上げて検出器とレコーダーにてクロマトグラム
と比較出来るようにする事。
2.成分分取の際、せっかく分離している成分が混ざり合わないようにする分取テクニックを取得する事。
3.より分離度を上げるためにグラジエント溶出法の溶離液の濃度影響調査。
4.従来のフラクションコレクターより純度を上げれる装置とするため、目視クロマトグラムを分離帯を三段階濃度に分取する必要がある。
5.従来のクロマトグラフィーのようにフラクションコレクターに比べて組立費用が格段に安いという特徴を証明するために、本装置を自作して費用を計算する事。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1.緩衝液の濃度を変えて分離度を上げて、検出器とレコーダーにてクロマトグラム
と比較出来るようにするための解決手段として、分取液の濃度変化時に成分ピークが現われるようにする事が大事で、その溶離液の濃度がある範囲で効果が認められるを実験した。
2.成分分取の際、せっかく分離している成分が混ざり合わないようにするテクニックを習得するために、分取技法を仕上げる。
3.より分離度を上げるためにグラジエント溶出法の活用が大切で2つ溶離液の濃度勾配を決める分析実験をした(UV検出器と目視ガラス管分離の比較をする)そして、従来のフラクションコレクターより純度を上げれる分取装置とするため、目視クロマトグラムを三段階濃度に分取する必要があり、その解決手段として、分離成分を分取し、上層、中層、下層に分け、HPLC-UV検出器で各層の濃度を測定する。
4.従来のフラクションコレクターよりも純度が上がった事を確認する計算法を作成するために本発明の分取用ガラス管内での分離帯を中央部を軸に上下同等の距離部を採取し、HPLC-UV検出器のクロマトグラムと比較計算をする。
5.従来のクロマトグラフィーのようにフラクションコレクターに比べて組立費用が格段に安いという特徴を証明するために、本装置の部品を調達し、弊社で自作して本装置の試作費用を計算した。分取用ガラス管は径を中小大と寸法を換えて試作してた。目視分離で再確認し、上述4、5の方法で判定した。
【発明の効果】
【0005】
1.溶離液に使用される濃度はリン酸緩衝液で0.020~0.040モルの範囲で分離が良い事を突き詰めた。この範囲を決める操作は通常の化学実験で行える簡単なものである。
2.フラクションされた部分について純度を上げるために必要部を抜き取れるために下部のガラスコックを細くして、滴下量を少なめにしていくと、分画液がほとんど混合されず分可能であった。この操作も複雑なものではない。
3.より分離度を上げるためにグラジエント溶出法の活用が大切で2つ溶離液の濃度勾配を決める分析実験をした結果、水溶性緩衝液と有機溶媒メタノールの混合比12%~58%の範囲で良好な結果を得た。緩衝液の濃度を上げ過ぎるとグラジエント溶出の際に沈殿を生じる。要因は溶解度に差があり過ぎるためである。今回は食品用の色素混合物で良き成果を得たが、他の成分例えばヌクレオチド類、ビタミン類でも溶離液を決めグラジエント溶出法を駆使すれば、同様な良き結果が得られることが推測される。(UV検出器のクロマトグラムと目視ガラス管比較をして判定出来る)
4.従来のフラクションコレクターより純度を上げれる分取装置とするため、目視クロマトグラムを三段階濃度に分取し実験上の計算法で判定した結果、本発明のフラクションコレクターはより純度が上がっていた。この成功によりより純度が必要な精密分析に試料作製に貢献する、例えばHPLC-M ASSによる分子構造解析等。純度が上がった事を確認する計算法を作成するために本発明の分取用ガラス管内での分離。
帯を中央部を軸に上下同等の距離部を採取し、HPLC-UV検出器との比較計算をした結果、明らかにピーク中央部で純度上がっていた。
5.高価なフラクションコレクター装置を付属しなくても、従来のフラクションコレクターよりも分離度と精度が上がる事が証明出来たので、現状のフラクションコレクターは駆動装置を稼働させるために電気エネルギーを必要とするが本装置はガラスカラムあるいは合成樹脂カラムのみの接続で良い。
従来装置に比べて廉価なので、各種研究機関に格段に普及していくと考えられる。
現状段階で32万円~35万円程度の装置が本発明による装置では格段と安く概略1~2万円程度で仕上がる。 また従来のフラクションコレクターはフラクションの量を決めるために分取のタイムの種類やポンプ流量を変化させる必要があったが、新方式では分取ガラス管のサイズや長さを換えれば自由に幅広く分取できる。そして各装置に持ち運べる携帯用フラクションコレクターの開発になった。またより純度を上げる分取技法としてカラムにセプタムを付ける管も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実際のフラクション中の写真
図2】新規のフラクションコレクターの接続模式図
図3】クロマトグラムとガラス管内の分離帯
図4】実施例1の分離帯の写真
図5】実施例3の分離帯
図6】セプタム付きガラス管の模式図実験の流れは通常の液体クロマトグラフの流路とほとんど変わりなく、検出器の後にフラクションコレクターへの配管をつなぐ。分取ガラス管は通常のクロマトガラス管を使用しても良いが、より精度上げるために、ガラス管上部にゴム栓をして空気穴を設ける、下部のコックは微細量が出来るものが良い。図1図2
【発明を実施するための形態】
【0007】
クロマトグラフは通常市販されている装置で良い、フラクションコレクター用の配管も通常の溶出液に使用する配管で十分である。
フラクションコレクター用のガラス管は汎用されているクロマト管でも良いが下部の付属フィルターは必要ないので、普通のガラス管下部にコックを付けて、流量が調節できる微細コックであればなお良い。上部にシリコンゴム栓をつけ、空気穴と配管穴を開けて使用するとなお良い。
具体的な図面、見取り図に示している器具を使用。いずれの器具も一般の化学実験室に備えられているもので特別なものではなく教育実験用として市販されている。
具体的な器具と操作について記す。
1、通常のクロマトグラフにグラジエント用の2溶離液(2種の溶離液は比重に違いのある溶離液を使用)をポンプに接続、検出器の出口にフラクションコレクターへの配管パイプを接続。そして実験を開始する。
2.ガラス管の下部コック閉めて、溶出液を順次、ガラス管に貯めてゆく、溶出が進むと成分が分離され分離層を生じる。分析終了後、送液ポンプをストップさせる。そして下部のコックを開けて順次、分離層を分取してゆく。
(分取作業は微量滴下するのが良い)
3.レコーダーのクロマトグラムと分取用ガラス管の分離層と比較し分離精度を確認する。
【実施例1】
【0008】
食品添加物用色素混合物の分取
「実験条件」
(1液)20mmolリン酸緩衝液,5%メタノール水溶液、pH6.25
(2液)1%酢酸,95%メタノール水溶液
リニアグラジェント溶出法1液から2液まで24分間とする
流速1.0ml
カラムODS系カラム
(器具・装置)
通常の液体クロマトグラフと分取ガラス管
(内径10mm,全長200mm)
「試料」
食添色素5種を使用
5つの色素の分離度(Rt)の表を作成した。
【表1】
検出器よりのクロマトグラムに比べて、本装置の成分分離度はほとんど差がなく、十分データを反映してし、同等で純分であるが、わずかに分離度向上も見られる。
分離帯においてほとんど分離どの向上がみられる。図3
【実施例2】
【0009】
リニアグラジエントの差による分離度の差
「実験条件」
(1液)20mmolリン酸緩衝液,5%メタノール水溶液、pH6.25
(2液)1%酢酸,95%メタノール水溶液
グラジェント溶出法A法1液5%→1液80%(25分)
グラジェント溶出法B法1液12%→1液95%(25分)
流速1.0ml
カラムODS系カラム
(器具・装置)
通常の液体クロマトグラフと分取ガラス管(内径10mm,全長200mm)
【表2】
グラジェント溶出法のII法の方が、多少分離度が向上している。B法では濃度勾配が本実験の成分には適していることを示している。他の成分についてもグラジェント溶出法の設定は大切で溶出条件の適したものを選ぶことにより分離度の良き層を得ることが出来、成分の精製度を上げることが出来る。図4
【実施例3】
【0010】
緩衝液濃度差による分離度
「実験条件」
1、低濃度
(1液)15mmolリン酸緩衝液,5%メタノール水溶液、pH6.25
(2液)1%酢酸,95%メタノール水溶液
グラジェント溶出法A法1液5%→1液80%(25分)
グラジェント溶出法B法1液12%→1液95%(25分)
2、高濃度
(1液)40mmolリン酸緩衝液,5%メタノール水溶液、pH6.25
(2液)1%酢酸,95%メタノール水溶液グラジェント溶出法A法
1液5%→1液80%(25分)グラジェント溶出法
流速1.0mlカラムODS系カラム
(器具・装置)
通常の液体クロマトグラフと分取ガラス管(内径10mm,全長200mm)
【表3】
グラジェント溶離液の濃度が高い方が明らかに分離度が向上している。
濃度勾配に差があり濃度も高い方が分離騒帯は分離向上している。本実験の技法には適していることを示している。BとC、CとDで大きな差がある。
他の成分についてもグラジェント溶出法の溶離液設定は大切で溶出条件の適したものを選ぶことにより分離度の良き層を得ることが出来る。図5
【産業上の利用可能性】
【0011】
液体クロマトグラフィーは科学研究には欠かせない重要な分析装置であり、世界の研究機関で活用されている。この装置の中で本発明のフラクションコレクターは有用な成分を混合物から取り出す技術として必要不可欠のものである。
有用な成分は分取後、次の研究に供される。例えば、生理活性測定や分子構造解析などへ。
図面でも示しましたが、従来の装置は電動式で価格も高い、今回の装置は価格が格段と安く、世界の各研究所に普及すると考えられる。その上に溶離液の密度差による分離なので、再分取可能で、従来装置では出来なかったより精密分取も可能にした。ゆえに本発明の溶解後式フラクションコレクターは、すぐにでも産業上有効に利用出来るものである。本装置、技術は精密分析や有用物質の分離精製に適している。
そして、各装置に持ち運べる携帯用フラクションコレクターとして使用出来。
ガラス管にセプタムを装着してより精度よく抜き取ることも出来、より精密分析法に有効である。図6
【符号の説明】
【0012】
A ・・・ 試料の分離帯
B ・・・ 試料の分離帯
C ・・・ 試料の分離帯
D ・・・ 試料の分離帯
E ・・・ 試料の分離帯
S ・・・ スタート
(1)・・・ シリンジ用セプタmu
図1
図2
図3
図4
図5
図6