(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】教育用の音叉実験器
(51)【国際特許分類】
G10G 7/02 20060101AFI20241227BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
G10G7/02
G09B19/00 Z
(21)【出願番号】P 2021020584
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2024-01-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年2月15日開催 奈良県スプリング研修会支部会(主催:株式会社内田洋行、開催場所:大阪府大阪市中央区和泉町2丁目2番2号 株式会社内田洋行大阪支店) 令和2年4月1日発行 株式会社内田洋行 ウチダ理科実験機器セレクト品カタログ
(73)【特許権者】
【識別番号】000152228
【氏名又は名称】株式会社内田洋行
(73)【特許権者】
【識別番号】392012630
【氏名又は名称】大和精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107113
【氏名又は名称】大木 健一
(72)【発明者】
【氏名】足利 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】森川 将成
【審査官】土井 悠生
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203276668(CN,U)
【文献】登録実用新案第3093634(JP,U)
【文献】特開2004-286813(JP,A)
【文献】特開2018-133780(JP,A)
【文献】特開2004-343691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 1/00-7/02
G10H 1/00-7/12
G09B 19/00
G09B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状部を含む振動部と、前記振動部の振動に共鳴する共鳴部とを備える音叉実験器において、
前記U字状部の下方を棒状に形成し、
前記共鳴部を金属で構成するとともに上面に開口を設け、
前記棒状の部分を前記共鳴部の前記開口に挿入して固定したことを特徴とする教育用の音叉実験器。
【請求項2】
前記棒状の部分に雄ねじ部を形成するとともに、前記開口に雌ねじ部を形成し、
前記棒状の部分を受け入れる貫通孔を有する固定部と、前記雄ねじ部に係合する雌ねじ部を有する緊締部材とを備え、
前記緊締部材を前記雄ねじ部に係合させつつ前記U字状部まで移動させ、
前記棒状の部分を前記固定部の前記貫通孔に通し、
前記雄ねじ部を前記開口の前記雌ねじ部に係合させ、
前記U字状部の下方を前記共鳴部に向けた状態で前記緊締部材を前記固定部に向けて移動させることにより前記U字状部を固定することを特徴とする請求項1記載の教育用の音叉実験器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理科の学習において音の性質を実験を通じて学ぶための教育用の音叉実験器に関する。
【背景技術】
【0002】
理科の学習において実験を通じて音の性質を学ぶことがある。その実験では音叉が用いられ、音の伝わり方や他の物体との共鳴などについて学ぶ。音叉は、一本の細長い鋼をU字状に曲げたものと、その中央に同じく棒状の鋼からなる柄を一体に接合したものである。学習用途の他にも、音叉は楽器の調律等に於いて標準音源として使用される。音叉はU字状部を叩くことにより特定の周波数で振動するが、この状態では音が小さく耳で聞き取ることは困難であるため、音叉の棒状部の部分を楽器の共鳴胴や共鳴板に接触させ音を大きくさせて標準音源とするのが一般的である。理科実験などでは共鳴箱付音叉が用いられる。共鳴箱は、共鳴により大きな音を発生するために音叉の下(柄)に取り付ける箱で、この箱は1つの面が空いており、そこから音が出るようになっている。
【0003】
共鳴箱の上面には音叉取付部が取り付けられており、そこに設けられる比較的深い取付穴に音叉の柄を差し込むことで、音叉が共鳴箱に取り付けられる。取付状態において音叉の下端が共鳴箱の上面に接している。これにより音叉の振動が共鳴箱に伝達され、聴者に共鳴音が届く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録3093634号公報「音叉構造体」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の音叉の共鳴箱は木製であった。しかし、木製の共鳴箱にはコストが大きいという問題があった。加えて、その製造業者が減少しつつあり入手が困難であるという問題もあった。
【0006】
共鳴箱の材質を金属等に変更しようとする場合、音叉の取り付け方法を新規に開発しなければならない。従来は共鳴箱と音叉取付部いずれも木製であり両者を接合し、音叉取付部を取り付けた後にそれに音叉の柄を差し込むことにより共鳴箱付き音叉が完成した。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、金属製の共鳴部を備え、入手性が容易になり、かつコストが低く、しかも、組み立てが容易な教育用の音叉実験器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、U字状部を含む振動部と、前記振動部の振動に共鳴する共鳴部とを備える音叉実験器において、
前記U字状部の下方を棒状に形成し、
前記共鳴部を金属で構成するとともに上面に開口を設け、
前記棒状の部分を前記共鳴部の前記開口に挿入して固定したことを特徴とするものである。
【0009】
前記棒状の部分に雄ねじ部を形成するとともに、前記開口に雌ねじ部を形成し、
前記棒状の部分を受け入れる貫通孔を有する固定部と、前記雄ねじ部に係合する雌ねじ部を有する緊締部材とを備え、
前記緊締部材を前記雄ねじ部に係合させつつ前記U字状部まで移動させ、
前記棒状の部分を前記固定部の前記貫通孔に通し、
前記雄ねじ部を前記開口の前記雌ねじ部に係合させ、
前記U字状部の下方を前記共鳴部に向けた状態で前記緊締部材を前記固定部に向けて移動させることにより前記U字状部を固定するようにしてもよい。(前記開口に雌ねじ部を形成することは、前記共鳴部の内側にナットなどを固定することも含む)。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】発明の実施の形態に係る教育用の音叉実験器の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は発明の実施の形態に係る音叉実験器の断面図(共鳴部を長辺方向に切断した状態を示す。
図2(b)のA-A矢視断面図)、
図2(b)は左側面図である。
【
図3】
図3(a)は発明の実施の形態に係る音叉実験器の背面図、
図3(b)は断面図(共鳴部を短辺方向に切断した状態を示す。
図3(a)のB-B矢視断面図)である。
【
図4】発明の実施の形態に係る音叉実験器の正面図である。
【
図5】発明の実施の形態に係る音叉実験器の右側面図である。
【
図6】発明の実施の形態に係る音叉実験器の平面図である。
【
図7】発明の実施の形態に係る音叉実験器の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の実施の形態について、図面を参照して説明を加える。
【0012】
図1は、発明の実施の形態に係る教育用の音叉実験器の斜視図である。
図2(a)は、
図1の音叉実験器を共鳴部2の長手方向に沿い振動部1の中心を通る線で切断した状態を示す断面図である。
図3(b)は、
図2の切断線に直角に切断した状態を示す断面図である。
図2(b)及び
図3(a)と
図4乃至
図7は、音叉実験器の六面図である。なお、
図4乃至
図7においては符号の表示を省略している。
【0013】
この教育用の音叉実験器は、U字状部11を備える振動部1と、振動部1の下部に設けられその振動を共鳴させ音を大きくさせる共鳴部2と、振動部1と共鳴部2の間に設けられる円筒状の固定部3と、U字状部11と固定部3の間に設けられ、振動部1を任意の方向(例えば図示するようなU字が正面(背面)を向く方向)に固定するナット(緊締部材)4とを備える。共鳴部2は概ね角パイプ状をしており、その一端アは開放されているが、他端イは閉じられている。
【0014】
音を発する振動部1は、U字状部11と、U字状部11と雄ねじ部13の接合部12と、雄ねじ部(棒状の部分、柄の部分に相当する)13とからなる。これらは一体に生成されるか、または別個の部品を互いに接合して組み立てられる。U字状部11は一本の細長い鋼をU字状に曲げて作成される。接合部12には雄ねじ部13の上端が嵌入されている。雄ねじ部13はU字状部11の下部中央に下方に向けて取り付けられる。雄ねじ部13は接合部12の下部からU字状部11とは反対側に延びる棒状の部材であって、その表面には雄ねじが設けてある。振動部1を共鳴部2に取り付けるためのナット(緊締部材)4を雄ねじ部13の下端から入れて回しU字状部11の近くまで移動させる。図の例では、ナット(緊締部材)4を雄ねじ部13の上端付近、U字状部11の直近に位置させている。この状態で、雄ねじ部13は固定部3の中央に設けられた貫通孔31を通る。その先端は固定部3から出ている。雄ねじ部13は、固定部3の貫通孔31を通り抜けた状態で共鳴部2の上面開口(雌ねじ部)23に係合する。図の例では、雄ねじ部13の先端は共鳴部2の内面に突出している。ナット(緊締部材)4により固定部3を締め付ける。固定部3は、ナット4の下端と共鳴部2の上面で挟持される。これにより振動部1が固定される。この構成により、振動部1の取り付けを容易に行うことができる。
【0015】
共鳴部2は、角パイプ状の部分である金属製本体21と、閉鎖端イに取り付けられる金属製端面22とからなる。上面の中央には、雄ねじ部13を受け入れる上面開口23が設けられる。下面には4つのゴム足24が設けられる。金属製本体21は例えばアルミ角パイプから作成される。金属製端面22は金属製本体21と同種の金属板であり、例えばアルミ板である。固定部3は例えば木製の部材であり円筒などの回転体形状をしている。その中心には、雄ねじ部13の直径よりも大きい貫通孔31が設けられている。
【0016】
発明の実施の形態に係る教育用の音叉実験器は、共鳴部が金属製(アルミ製)であるため、木製より薄く硬い。共鳴部は固い素材のほうがより共鳴する時間が長い。また金属製で精度も出せることから、より共鳴する音叉実験器を実現できた。振動部1と共鳴部2の取り付けにナット(緊締部材)4を用い、振動部1を共鳴部2に固定したので金属同士の振動部1と共鳴部2が連結され、共鳴部を木製とした場合と比べ、より音叉の振動を共鳴部に伝えることができるようになった。
【0017】
さらに、木製の時と比べコストが低くなり、入手性が改善した。しかも、組み立てが容易になった。
【0018】
ナット(緊締部材)4により固定部3を締め付けるようにしたので、振動部1を任意の向きで固定することができようになった。
【0019】
振動部1を共鳴部2に固定する際、多くの場合、共鳴部2の長辺に対して振動部1が正面になるように(U字側が向くように)取り付ける必要がある。ナット(緊締部材)4を備えない場合、振動部1が所望の向きで固定されるとは限らない(後述)。これに対し、発明の実施の形態によれば、振動部1を上面開口23に差し込み所望の位置(U字が正面を向く位置)まで回し入れ、その後、ナット(緊締部材)4を回して固定することにより、所望の向きで固定することができる。
【0020】
振動部1の固定方法として、振動部1に固定されたひっかけを作っておき、ナットで共鳴部2の内側から固定する方法がある。この方法では、共鳴部2の内部が小さく、ナットを手で取り付けることができない。専用の工具が必要となるといった問題がある。発明の実施の形態によればそのような問題は生じない。
【0021】
また、共鳴部2の内側にナットを固定しておく、もしくは開口23に雌ねじをきっておくこともできるが、この場合、雄ねじ部13を、振動部1が強固に固定されるまで締め付けることになるが、これでは振動部1を任意の向きで固定することができない(締まった状態で振動部1が正面を向くとは限らない)。発明の実施の形態によればそのような問題は生じない。
【0022】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 振動部(音叉)
11 U字状部(腕)
12 U字状部と雄ねじ部の接合部
13 雄ねじ部(棒状の部分)
2 共鳴部
21 金属製本体
22 金属製端面
23 上面開口(雌ねじ部)
24 ゴム足
3 固定部
31 貫通孔
4 ナット(緊締部材)
ア 開放端
イ 閉鎖端