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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】電気ケトル
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/21 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
A47J27/21 101Z
A47J27/21 101S
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020129317
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026043
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391053984
【氏名又は名称】株式会社カリタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 一郎
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-131234(JP,A)
【文献】特開2020-048721(JP,A)
【文献】特表2014-505567(JP,A)
【文献】特開2012-245138(JP,A)
【文献】特開2013-141565(JP,A)
【文献】特開2013-236663(JP,A)
【文献】中国実用新案第210871061(CN,U)
【文献】中国実用新案第205649357(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電台と、
液体を収容するものであって、前記給電台に着脱自在に載置される容器と、
前記容器の前方の下部に基端側が設けられ、先端側が上方に延設されたノズルと、
前記容器の上部の開口を蓋する板状の蓋体と、を具備し、
前記蓋体は、
前記容器に貯留された湯の水蒸気を前記蓋体の内部に導入するために前記蓋体の裏側にあけられた第1導入口及び第2導入口と、
前記蓋体の内部に導入された水蒸気を前記蓋体の外部に排出するために前記蓋体の表側にあけられた排出口と、
前記第1導入口から導入された水蒸気を前記排出口に案内するために前記蓋体の内部に設けられる第1通路と、
前記第2導入口から導入された水蒸気を前記排出口に案内するために前記蓋体の内部に設けられる第2通路と、
を有し、
前記第1導入口及び前記第2導入口は、前記蓋体の前後中心線を挟んで左右両側にそれぞれ配置され、
前記第1通路は前記第1導入口から前記前後中心線を超えて前記第2導入口の側に延び、前記第2導入口の側において折り返され、前記前後中心線を再び超えて、前記第1導入口側に延び、前記第1導入口の側において折り返され、
前記第2通路は前記第2導入口から前記前後中心線を超えて前記第1導入口の側に延び、前記第1導入口の側において折り返され、前記前後中心線を再び超えて、前記第2導入口の側に延び、前記第2導入口の側において折り返される、電気ケトル。
【請求項2】
前記蓋体は上下方向に積層された少なくとも上層側部材及び下層側部材を有する複数の部材により構成され、
前記第1通路及び前記第2通路は、前記上層側部材及び前記下層側部材に渡って形成される、請求項1記載の電気ケトル。
【請求項3】
前記第1通路における前記下層側部材から前記上層側部材に前記水蒸気を通過させる第1通過口と前記第2通路における前記下層側部材から前記上層側部材に前記水蒸気を通過させる第2通過口とが前記蓋体の略中央に互いに近接して設けられる、請求項2記載の電気ケトル。
【請求項4】
前記第1通路における前記第1導入口から前記第1通過口までの第1下側通路と、前記第2通路における前記第2導入口から前記第2通過口までの第2下側通路とは、互いに前後左右の向きが逆に構成されている、請求項3記載の電気ケトル。
【請求項5】
前記排出口は、前記蓋体の前記前方に設けられる、請求項1記載の電気ケトル。
【請求項6】
前記第1通路及び前記第2通路それぞれは、その幅に比べて高さが低く形成されている、請求項1記載の電気ケトル。
【請求項7】
前記容器の後方には取っ手が設けられ、
前記容器は円筒形又は円筒台形の概形形状を有し、前記容器と前記ノズルと前記取っ手と前記蓋体とを有するケトル本体の重心は前記容器の中心軸よりも前記後方の側である、請求項1に記載の電気ケトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケトルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の食卓や台所等において用いられる電気ケトルが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。電気ケトルは、テーブル等に載置するのに適した台座状に形成される給電台と、この給電台に着脱自在に取り付けられるケトル本体から構成されている。ケトル本体は水(湯)を収容する容器を有し、この容器の下部にはノズルが取り付けられると共に、容器のノズルの反対側に取っ手が設けられている。容器上部は開口しており、開閉可能な蓋体が取り付けられている。ケトル本体を給電台に装着し、給電台から供給された電力により容器内部のヒータが駆動し、それにより、収容した水を沸騰させることができる。
【0003】
このような電気ケトルにおいては、沸騰時に高まった容器内の圧力を下げるため、あるいは、注ぐ際にケトル内部が負圧になってノズルから水(湯)が出にくくなることを防ぐために、蓋体には、容器内に発生した水蒸気を外部に排出するための水蒸気通路が形成されている(例えば、特許文献2参照)。また、水蒸気通路はケトル本体が横倒しになった際に、内部の水(湯)が大量に漏れることを防ぐため、蓋体内部で屈曲するようにして形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-505567号公報
【文献】特開2010-131234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電気ケトルにあっては次のような問題があった。すなわち、水蒸気通路が1つだけであると、沸騰時におけるケトル内の圧力を十分に逃がすことができず、内部の湯が水蒸気通路から噴出することがあった。一方、水蒸気の流路を十分に確保するため、水蒸気通路の内径寸法を大きく設計すると、沸騰時におけるケトル内の圧力は確実に逃がすことができるが、蓋体の厚さ寸法が大きくなると共に、ケトルが横倒しになった時に、水蒸気通路を通じて内部の水(湯)が大量に漏れてしまう虞があった。なお、沸騰時における容器内の圧力を確実に逃がすため、ケトル側面や蓋体に圧力逃がし孔を別途設けることもあるが、ケトルが横倒しになると、その圧力逃がし孔から内部の水(湯)が漏れてしまう虞があった。
【0006】
そこで、本発明は、沸騰時における電気ケトル内の内部の圧力を逃がすことができると共に、電気ケトルが横倒しになった時に、水蒸気通路から漏出する水(湯)の量を最小限に抑えることができる電気ケトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る電気ケトルにおいて、容器の上部開口を蓋する板状の蓋体は、容器に貯留された湯の水蒸気を蓋体の内部に導入するために蓋体の裏側にあけられた第1導入口及び第2導入口と、蓋体の内部に導入された水蒸気を蓋体の外部に排出するために蓋体の表側にあけられた排出口と、第1導入口から導入された水蒸気を排出口に案内するために蓋体の内部に設けられる第1通路と、第2導入口から導入された水蒸気を排出口に案内するために蓋体の内部に設けられる第2通路とを有する。第1導入口及び第2導入口は、蓋体の前後中心線を挟んで左右両側にそれぞれ配置される。第1通路は第1導入口から前後中心線を超えて第2導入口の側に延び、第2導入口の側において折り返される。第2通路は第2導入口から前後中心線を超えて第1導入口の側に延び、第1導入口の側において折り返される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水蒸気通路を2系統設けることで沸騰時における電気ケトル内の内部の圧力を確実に逃がすことができると共に、電気ケトルが横倒しになった時に、水蒸気通路から漏出する水(湯)の量を最小限に抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電気ケトルの概観を示す斜視図である。
図2図2は、図1の電気ケトルの蓋体を示す斜視図である。
図3図3は、図2の蓋体の分解斜視図である。
図4図4は、図2の蓋体の底面図である。
図5図5は、図3の内蓋を示す上面図である。
図6図6は、図3の第1封止板を示す上面図である。
図7図7は、図3の中蓋を第2封止板とともに示す上面図である。
図8図8は、図2のX-X線断面図である。
図9図9は、図2のY-Y線断面図である。
図10図10は、図1の電気ケトルのケトル本体が転倒したときの姿勢を示す図である。
図11図11は、図10に示す姿勢時のケトル本体の蓋体の内部を示す図である。
図12図12は、図1の電気ケトルのケトル本体が転倒したときの他の姿勢を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図12を参照して本実施形態に係る電気ケトルを説明する。なお、これらの図中Sa,Sbは水蒸気が流れる向き、Lは水(湯)の水位の高さを示している。また、図中一点鎖線Pは、蓋体の前後中心線を示している。
【0011】
図1に示すように、電気ケトル10は、テーブル上等に載置される給電台20と、この給電台20に着脱自在に取り付けられるケトル本体(貯湯容器)30とを備えている。ケトル本体30は、上部が開口された容器31を有する。この容器31の前方下部には、ノズル32の基端が設けられる。ノズル32の先端側は上方に延設される。容器31の後方(ノズル32の基端が設けられた側の反対側)には取っ手33が設けられる。容器31の上部には、容器31の上部の開口を覆う蓋体40が開閉可能に取り付けられている。容器31は、典型的には、上部に向かって先細の円筒台状の概形形状を有する。蓋体40は、容器31の上部開口に整合する円板形状を有する。ケトル本体30の重心を容器31の中心軸よりも後方に設定するために、取っ手33がノズル32よりも重くなるように構成されている。もちろん、ケトル本体30の重心を容器31の中心軸よりも後方に設定できるのであれば、例えば容器31の後方部分におもしなどを設けるようにしてもよい。なお、容器31の概形形状は円筒台形状に限定されることはなく、例えば、円筒形状であってもよい。
【0012】
蓋体40には、容器31の内部に発生した水蒸気を外部に排出するための機構が装備される。蓋体40の裏側には、水蒸気を蓋体40の内部に導入するための導入口が設けられ、蓋体40の表側には、蓋体40の内部に導入された水蒸気を外部に排出するための排出口が設けられる。
【0013】
具体的には、図2図3に示すように、蓋体40は複数の部品が積層されて構成されている。本実施形態では、蓋体40は、最下層に位置する内蓋(下層側部材)50と、中間層に位置する中蓋(上層側部材)90と、最上層に位置する化粧板としての外蓋120と、を有する。
【0014】
内蓋50の底面には、容器31内の水蒸気を蓋体40の内部に導入するための第1導入口53及び第2導入口54が設けられる。中蓋90の側面には、蓋体40の内部に導入された水蒸気を外部に排出するための排出口93が設けられる。内蓋50に設けられた第1導入口53と中蓋90に設けられた排出口93とを接続する第1通路が内蓋50及び中蓋90に渡って設けられる。同様に、内蓋50に設けられた第2導入口54と中蓋90に設けられた排出口93とを接続する第2通路が内蓋50及び中蓋90に渡って設けられる。
【0015】
以下、第1通路のうち、内蓋50に設けられた部分を第1下側通路51、中蓋90に設けられた部分を第1上側通路91として、それぞれを区別する。同様に、第2通路のうち、内蓋50に設けられた部分を第2下側通路52、中蓋90に設けられた部分を第2上側通路92として、それぞれを区別する。
【0016】
蓋体40は、上記以外の部品として、内蓋50に取り付けられ、容器31に係合するロック部材60と、内蓋50の周囲を覆い、蓋体40と容器31の上部開口との間の隙間からの水蒸気漏れ、水漏れを防止するためのゴムパッキン70と、内蓋50と中蓋90との間に挟み込まれ、第1下側通路51及び第2下側通路52の上部開口を覆う弾性樹脂製の第1封止板80と、中蓋90と外蓋120との間に挟み込まれ、第1上側通路91及び第2上側通路92の上部開口を覆う弾性樹脂製の第2封止板110と、を有する。中蓋90と内蓋50とは、それらの間に第1封止板80を挟んだ状態でボルト100により締結される。
【0017】
なお、説明を簡単にするために、蓋体40の上下方向(厚み方向)、前後方向(長さ方向)、左右方向(幅方向)を以下のように定義する。すなわち、蓋体40を構成する内蓋50、中蓋90及び外蓋120が積層された方向を蓋体40の上下方向(厚み方向)とする。内蓋50の側を蓋体40の下方、蓋体40の外蓋120の側を蓋体40の上方とする。蓋体40の前後中心線は、蓋体40の最前端と最後端とを結ぶ線である。平面視において、蓋体40の最前端は、容器31の上部開口を蓋した状態で、容器31のノズル32の基端側の位置に対応する。蓋体40の最後端は、容器31の上部開口を蓋した状態で、取っ手33の基端の取付位置に対応する。この前後中心線に平行な方向を蓋体40の前後方向(長さ方向)とする。容器31のノズル32が設けられた側を蓋体40の前方、取っ手33が設けられた側を蓋体40の後方とする。蓋体40の前後方向と上下方向とに直交する方向を蓋体40の左右方向(幅方向)とする。
【0018】
図4図9を参照して蓋体40を構成する部品について説明する。
図4図5に示すように、内蓋50は、上側が開口された皿状の内蓋本体59を有する。蓋体40の裏側に対応する内蓋本体59の底板には、第1導入口53及び第2導入口54があけられている。典型的には、第1導入口53及び第2導入口54は、蓋体40の長さ(前後)中央付近であって、前後中心線Pを挟んで左右両側の外縁に近接した位置にそれぞれ設けられている。
【0019】
図5に示すように、内蓋本体59の上面には、互いに独立した第1下側通路51及び第2下側通路52が形成されている。図8図9に示すように、第1下側通路51及び第2下側通路52は、内蓋本体59の底板、内蓋本体59の上面に垂直に設けられた仕切板58、内蓋50に積層される第1封止板80により区画される。
【0020】
第1下側通路51は、内蓋本体59の後方側に形成されている。第1下側通路51の一端は第1導入口53に接続され、他端は第1上側通路91に接続される。第1下側通路51は、前後中心線Pを挟んで2回折り返されている。具体的には、第1下側通路51は、第1導入口53から前後中心線Pを挟んで反対側(第2導入口54の側)に延びる第1通路部分51aと、この第1通路部分51aの端部に接続され、U字状に内側に折り返された第1折曲部分51bと、この第1折曲部分51bの端部に接続され、前後中心線Pを挟んで第1導入口53の側に延びる第2通路部分51cと、この第2通路部分51cの端部に接続され、U字状に内側に折り返された第2折曲部分51dと、この第2折曲部分51dの端部に接続され、蓋体40の幅中央に至る第3通路部分51eとを有する。第3通路部分51eは第1通過口81を介して第1上側通路91に連通している。
【0021】
典型的には、第1通路部分51a,第2通路部分51c及び第3通路部分51eは蓋体40の左右方向と平行な直線状に形成される。また、蓋体40の左右方向に関して、第1折曲部分52bの折り返し位置は、第2導入口54の最内側の位置よりも外縁側になるように形成される。
【0022】
第2下側通路52は、内蓋本体59の前方側に形成されている。第2下側通路52の一端は第2導入口54に接続され、他端は第2上側通路92に接続される。第2下側通路52は、前後中心線Pを挟んで2回折り返されている。具体的には、第2下側通路52は、第2導入口54から前後中心線Pを挟んで反対側(第1導入口53の側)に延びる第1通路部分52aと、この第1通路部分52aの端部に接続され、U字状に内側に折り返された第1折曲部分52bと、この第1折曲部分52bの端部に接続され、前後中心線Pを挟んで第2導入口54の側に延びる第2通路部分52cと、この第2通路部分52cの端部に接続され、U字状に内側に折り返された第2折曲部分52dと、この第2折曲部分52dの端部に接続され、蓋体40の幅中央に至る第3通路部分52eとを有する。第3通路部分52eは第2通過口82を介して第2上側通路92に連通している。
【0023】
典型的には、第1通路部分52a,第2通路部分52c及び第3通路部分52eは蓋体40の左右方向と平行な直線状に形成される。また、蓋体40の左右方向に関して、第1折曲部分52bの折り返し位置は、第1導入口53の最内側の位置よりも外縁側になるように形成される。
【0024】
図6に示すように、第1封止板80は、第1下側通路51及び第2下側通路52の上部開口を覆う大きさの第1板体89を有する。この第1板体89の中心位置には第1下側通路51及び第2下側通路52を通過した水蒸気を中蓋90に通すための第1通過口81及び第2通過口82があけられている。第1通過口81は、第1下側通路51の第3通路部分51eの末端の位置に対応する位置に設けられ、第2通過口82は、第2下側通路52の第3通路部分52eの末端の位置に対応する位置に設けられる。第1通過口81及び第2通過口82を、蓋体40の中央に互いに近接して設けることで、中蓋90における第1上側通路91及び第2上側通路92を形成しやすくする。
【0025】
図7に示すように、中蓋90は、略円板状の中蓋本体99と、容器31に着脱自在に取り付けられるブラケット98とを有する。中蓋本体99には、排出口93、第1上側通路91及び第2上側通路92が形成されている。排出口93は、中蓋本体99の前方の側面に設けられている。第1上側通路91は、その一端が第1通過口81に接続され、他端が排出口93に接続されている。第2上側通路92は、その一端が第2通過口82に接続され、他端が排出口93に接続されている。図8図9に示すように、本実施形態では、中蓋本体99の前方位置から中央位置にかけての部分が直線状に切り欠かれ、第1上側通路91、第2上側通路92及び排出口93は、中蓋本体99の底板、中蓋本体99の切り欠き部分の側縁面、中蓋90に積層される第2封止板110により区画される。
【0026】
ユーザは、ケトル本体30の蓋体40を開き、内部に水を注入する。蓋体40を閉じてロック部材60を容器31に係止する。次に、ケトル本体30を給電台20に取り付け、通電する。容器31の内部に設けられたヒータにより、容器31に貯留された水の温度が設定温度に到達するまで温められる。ユーザは、ケトル本体30を給電台20から外して、ノズル32の先端の抽出口を下方に傾けることで、容器31に貯留されたお湯をカップ等に注ぐ。
【0027】
図5図7に示すように、容器31に貯留された水を加熱中、容器31の内部に発生した水蒸気は、蓋体40の裏側に設けられた第1導入口53及び第2導入口54から蓋体40の内部に導入される。第1導入口53から蓋体40の内部に導入された水蒸気Saは、第1下側通路51、第1通過口81及び第1上側通路91を通過して、蓋体40の前方位置に設けられた排出口93から蓋体40の外部に排出される。同様に、蓋体40の裏側に設けられた第2導入口54から蓋体40の内部に導入された水蒸気Sbは、第2下側通路52、第2通過口82及び第2上側通路92を通過して、蓋体40の前方位置に設けられた排出口93から蓋体40の外部に排出される。
【0028】
蓋体40の後方側に取っ手33が設けられ、蓋体40の前方側には容器31からノズル32が延びているため、ユーザは、蓋体40の前方側に顔を近づけたり、手をかざすようなことをしない。このように、蓋体40の前方位置に排出口93を設けることは、蓋体40の排出口93から排出された水蒸気により、ユーザが火傷等をする可能性を低減させ、電気ケトル10の安全性の向上に寄与する。
【0029】
本実施形態に係る電気ケトル10では、ノズル32が容器31の下部に取り付けられているため、ある程度の水が貯留されているのであれば、ノズル32から水蒸気が排出されることはない。上記のように、電気ケトル10は、蓋体40に2系統の蒸気通路(第1、第2通路)を設けることで、容器31の内部に発生した水蒸気は、上記した2つの蒸気通路を辿って蓋体40の外部に排出されるが、沸騰に伴って発生する水蒸気が多くなっても、2系統の蒸気通路が設けられているため、十分な排出量を確保することができ、容器31の内部の圧力を逃がすことができる。
【0030】
図10図13を参照して、ケトル本体30の水漏れ防止機能を説明する。この水漏れ防止機能は、主に、ケトル本体30の転倒時に機能する。図10は、転倒時のケトル本体30を示している。図11は、図10に示すようにケトル本体30が転倒したときの蓋体40の内部の状態を示している。ここでは、第1導入口53が第2導入口54よりも下方に位置する向きにケトル本体30が倒れた場合を例に説明するが、ケトル本体30が反対向きに倒れた場合でも第1導入口53と第2導入口54とが入れ替わるだけで同じである。
【0031】
ケトル本体30の前方にはノズル32が設けられ、後方には取っ手33が設けられ、ケトル本体30の重心は、容器31の中心軸よりも後方の取っ手33側である。そのため、ケトル本体30は、図10に示すような、取っ手33の側がノズル32の側よりも下方となる姿勢で倒れる。この姿勢では、ノズル32の先端の注ぎ口は斜め上方を向くため、ノズル32の先端の注ぎ口からケトル本体30に収容された水(お湯)が漏れることはない。
【0032】
図10に示すように、ケトル本体30が転倒したときにおける容器31内の水位Lが第1導入口53の高さよりも高く第2導入口54の高さよりも低いとき、容器31に貯留された水は第1導入口53から蓋体40の内部に浸入する。しかしながら、図11に示すように、第1下側通路51の第1折曲部分51bの内側の仕切板58が堤防として機能するため、第1折曲部分51bよりも先に水が浸入することはなく、容器31の内部の水は排出口93に到達しない。もちろん、ケトル本体30の転倒直後には、容器31に貯留された水が揺れ、わずかな水が第2通路部分51cに浸入してしまうかもしれない。しかしながら、第2折曲部分51dが一時的な水の貯留部として機能し、第2通路部分51cに浸入した水は、第2折曲部分51dに貯留され、それ以上先に浸入することはなく、排出口93に到達しない。このように、第1下側通路51を前後中心線Pを挟んで逆向きに2回折り返すことにより、転倒直後の容器31の内部の水の揺れにも柔軟に対応し、排出口93から水が漏れ出ることを回避することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、第1下側通路51を前後中心線Pを挟んで逆向きに2回折り返しているが、3回以上折り返してもよい。もちろん、第1下側通路51は、1回折り返すだけでも、第1折曲部分51bよりも先に水が浸入しにくいため、水が排出口93から漏れることを防ぐ、又は水が排出口93から漏れる量を抑えられる。
【0034】
また、転倒後のケトル本体30を戻しても、転倒時に蓋体40の第1下側通路51に浸入した水は第1下側通路51に留まる可能性がある。しかしながら、第1通路を2層構造とすることで、転倒後のケトル本体30を傾けても、第1下側通路51に留まっている水が、第1上側通路91に浸入することはないため、転倒後のケトル本体30を使用しているときに、排出口93から水が漏れることはない。
【0035】
容器31の内部の水蒸気は第2導入口54から蓋体40の内部に導入され、第2下側通路52、第2通過口82、第2上側通路92及び排出口93を通って外部に排出され続けられる。それにより、容器31の内部に発生した水蒸気による容器31の内圧の上昇を抑えられ、ノズル32の先端の注ぎ口から水が噴き出すことを回避することができる。
【0036】
本実施形態において、蓋体40に設けられた2系統の第1、第2通路は、2層構造に構成され、第1層においては蛇行させている。それにより、限られたスペースにおいて最大限の通路長を確保した。容器31の内部のお湯の温度が高く、内圧が高い状態で、ケトル本体30が転倒した場合、容器31の内部の圧力を逃がすまでのわずかな時間、容器31の内部のお湯が勢いよく第1通路(第2通路)に浸入する。上記のように第1通路(第2通路)の通路長を長くすることで、容器31の内部のお湯が第1通路を通って排出口93に到達するまでの時間を長くすることができ、容器31の内部の圧力を逃がすまでのわずかな時間で容器31の内部のお湯が外部に漏れることを抑える、又は漏れる量を少なくすることができる。
【0037】
ケトル本体30は、図12に示すような、ノズル32の側が取っ手33の側よりも下方となる姿勢で倒れるかもしれない。しかしながら、ケトル本体30の重心は容器31の中心軸よりも後方の取っ手33側であり、且つ容器31の概形は円筒台状であるため、図12に示す姿勢でケトル本体30が倒れた場合でも、ケトル本体30はすぐさま転がって、図10に示す姿勢で止まる。このため、ノズル32の先端の注ぎ口が下方を向いている時間はわずかであり、図12に示す姿勢で倒れた場合でも、ノズル32の先端の注ぎ口から水が漏れる量を最小限に抑えられる。
【0038】
このように本実施形態に係る電気ケトル10によれば、沸騰時におけるケトル本体30の内圧を逃がすことができると共に、ケトル本体30を転倒させてしまった場合でも、ノズル32の先端の注ぎ口や水蒸気の排出口93から漏出する水(湯)の量を最小限に抑えることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、蓋体40に2つの通路を設けたが3つ以上設けても良い。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0041】
10…電気ケトル、20…給電台、30…ケトル本体、31…容器、32…ノズル、33…取っ手、40…蓋体、50…内蓋、51…第1下側通路、52…第2下側通路、51a、52a…第1通路部分、51b、52b…第1折曲部分、51c、52c…第2通路部分、51d、52d…第2折曲部分、51e、52e…第3通路部分、53…第1導入口、54…第2導入口、58…仕切板、59…内蓋本体、70…ゴムパッキン、80…第1封止板、81…第1通過口、82…第2通過口、Sa,Sb…水蒸気。
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