(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】アリ類毒餌剤収納容器
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20241227BHJP
A01M 1/02 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A01M1/20 B
A01M1/02 A
(21)【出願番号】P 2021062074
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉目 康広
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-073253(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0207164(US,A1)
【文献】特表2015-533514(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0000644(KR,U)
【文献】特開2017-8015(JP,A)
【文献】特開2013-138669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00ー99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリ類毒餌剤収納部が設けられた下蓋と、
前記下蓋に対向するように配置されてなる上蓋とを備えたアリ類毒餌剤収納容器であって、
前記上蓋には、カーボンブラックが0.005~0.05重量%含有されていることを特徴とするアリ類毒餌剤収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリ類毒餌剤収納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
アリ類を防除する方法として、アリ類毒餌剤収納容器に収納された毒餌剤にアリ類を誘引し摂食させることで防除する方法がある。
【0003】
これまでアリ類の効率的な防除を目的に、誘引・防除性能が優れる毒餌剤の開発(例えば特許文献1)、アリ類毒餌剤収納容器の構造に関する開発(例えば特許文献2)などが行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-8015号
【文献】特開2013-138669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アリ類毒餌剤収納容器は、毒餌剤を収納して、庭や駐車場などアリ類を防除したい場所に設置して使用されるが、アリ類を効率よく防除することはもちろんのこと、使用者からはアリ類が収納容器に定着しているか、毒餌剤の摂食度合など容器の内部について確認できることも求められている。
本発明は、アリ類毒餌剤収納容器の組成に着目し検討を行い、アリ類の防除に適し、かつアリ類毒餌剤収納容器の内部をも視認できるアリ類毒餌剤収納容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に至った。すなわち本発明は、
アリ類毒餌剤収納部が設けられた下蓋と、前記下蓋に対向するように配置されてなる上蓋とを備えたアリ類毒餌剤収納容器であって、前記上蓋には、カーボンブラックが0.005~0.05重量%含有されていることを特徴とするアリ類毒餌剤収納容器。
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のアリ類毒餌剤収納容器に毒餌剤を収納すれば、優れたアリ類防除効果が得られる。また、アリ類毒餌剤収納容器の内部が視認できることから、アリ類の定着の有無、毒餌剤の摂食具合が容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】アリ類毒餌剤収納容器の例を示す斜視図である。
【
図2】アリ類毒餌剤収納容器の例を示す平面図である。
【
図3】アリ類毒餌剤収納容器の例を示す底面図である。
【
図4】アリ類毒餌剤収納容器の例を示す正面図である。
【
図7】アリ類毒餌剤収納容器を連結した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のアリ類毒餌剤収納容器の上蓋には、カーボンブラックが0.005~0.05重量%含有される。0.005%重量未満だと収納されるアリ類の誘引性能が落ちる。また0.05重量%を超えると、収納容器の内部の視認性が悪くなる。
【0010】
上蓋におけるカーボンブラック以外の成分は、通常、樹脂成分である。樹脂成分としては、スチレン系樹脂を使用することが好ましく、例えば汎用ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)などのスチレン系樹脂が使用できる。また、樹脂成分以外に帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などをさらに加えても良い
【0011】
上蓋は、通常カーボンブラックおよび樹脂成分等の原料を加圧ニーダーなど公知の混練機にて溶融混練し樹脂ペレットを得たのち、当該樹脂ペレットを射出成形機に投入して製造することができる。
【0012】
下蓋については、製造の容易さおよびコストの面から、通常、上蓋と同じ原料を用いて製造されるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更しても構わない。
【0013】
本発明のアリ類毒餌剤収納容器の形状としては、アリ類毒餌剤収納部が設けられた下蓋と、前記下蓋に対向するように配置される上蓋とを備えるものであれば特に限定されず、例えば、立方体型、直方体型、多角柱型、円柱型、多角錐型、円錐型などが挙げられる。 このうちアリ類毒餌剤収納容器の好ましい形状としては、
図1に示すアリ類毒餌剤収納容器(以下、容器1と称すことがある)である。
【0014】
アリ類毒餌剤収納容器の内部の形態として、例えば、
図1~6の形態を有する容器が挙げられる。以下、その詳細を説明する。
【0015】
容器1には、アリ類毒餌剤収納面12が設けられた下蓋10、下蓋に対向するように配置される上蓋20、下蓋と上蓋とを間隔を有した状態で連結する第1~第4連結部31~34および毒餌剤を容器内に固定するための第1~第4突出部41~44が備わる。
【0016】
下蓋10は、樹脂材からなり略平板状、かつ
図3に示すように容器1の底面から見て八角形の形状である。
【0017】
下蓋10における容器1内側に位置する内面10aには、シボ加工を全面に亘って形成してもよい。
【0018】
下蓋10の内面10aには、上蓋20に向けて突出して周方向に延びる突条部11が形成される。
図6に示すように、突条部11は円環を形成するように連続しており、その中心は下蓋10の中心と略一致している。
【0019】
当該突条部11の内側部分は、毒餌剤が収納されるための毒餌剤収納面12とされる。
【0020】
下蓋10の厚みは、0.5mm~3mmとすることが好ましい。
【0021】
図5に示すように下蓋10の内面10aには、前記第1~第4連結部を構成するための下蓋10と一体成形される第1~第4連結用受部31a~34aを備える。連結用受部31a~34aには夫々、連結用挿部31b~34bを挿入できるように凹部を有する。
【0022】
上蓋20は、樹脂材からなり
図2に示すように容器1の天面から見て八角形の形状である。
【0023】
上蓋20における容器1内側に位置する内面20aには、容器1に収納される毒餌剤を毒餌剤収納面12に固定するための第1~第4突出部41~44を備える。これら突出部の先端は、切り立った形状である。
【0024】
図5に示すように上蓋20と一体成形される第1~第4連結用挿部31b~34bを備える。連結用挿部31b~34bを連結用受部31a~34aに挿入することで連結部31~34が構成される。
【0025】
上蓋20には、平坦面20bとその外周側には外周縁に行くほど下蓋10に近づく傾斜面20cが設けられ、平坦面20bの中心は上蓋20の中心と略一致している。また傾斜面20cの外周縁に、下蓋と垂直となるように端面20dを設けることで、容器1内に雨水や埃の侵入を抑制することができる。
【0026】
前記下蓋10および前記上蓋20の外形寸法W1は、30mm~50mm、前記平坦面20bの外形寸法W2は、10~20mmとすることが好ましい。また、
図4に示す傾斜面20cの傾斜角度θは、3~7°とすることが好ましい。前記端面20dの外形寸法W3は、1~3mmとすることが好ましい。
【0027】
下蓋10と上蓋20の離間方向の寸法hは、毒餌剤が収納されるように設計される。
【0028】
図7に示すように、使用前の容器1は例えば6個に連結された状態で一体化されていてもよい。容器1の下蓋10の外周縁には隣接する容器1の下蓋10の外周縁に連結する連結片60が形成され、上蓋20の傾斜面20cの外周縁にも同様に連結片61が形成される。連結片60および連結片61は、折り曲げ方向に力を加えることで割れて容器が分離することができる。
【0029】
容器1が6個に連結されるには、まず6枚の下蓋10を縦2枚、横3枚と並ぶように、かつ、連結片60により連結されるように一体成形される。また、6枚の上蓋20も同様に連結片61により連結されるように一体成形される。
【0030】
その後、下蓋10の上から上蓋20が被るように配置され、
図5に示すように下蓋10と上蓋20を勘合されることで、
図7に示すように容器1が6個連結された状態となる。
【0031】
毒餌剤は、フィプロニルなどの殺虫成分、動物性タンパク質粉、穀物粉、澱粉、糖類、植物性油などの誘引成分、カルボキシメチルセルロースなどの増粘剤、グリセリンなどの粘度調整剤、防腐剤、水などを混合することで製造される。
【0032】
本発明のアリ類毒餌剤収納容器は、毒餌剤を収納し、アルゼンチンアリ、トビイロケアリ、ルリアリ、イエヒメアリ等のアリ類を防除したい場所に設置して使用される。
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
汎用ポリスチレン100重量部、耐衝撃性ポリスチレン20重量部、カーボンブラック0.024重量部を加圧ニーダーで溶融混練し、混練物を射出成形機に投入して
図1に示す形態のアリ類毒餌剤収納部が設けられた下蓋と前記下蓋に対向するように配置される上蓋とを備えた本発明のアリ類防除用毒餌剤収納容器を得た。なお該容器の下蓋10および上蓋20の外形寸法は36mm、平坦面20bの外形寸法W1は15mm、傾斜面31cの傾斜角度31dは20°、端面31の外形寸法W2は2mm、下蓋10と上蓋20の離間方向の寸法hは4mmとした。
[実施例2]
実施例1において、カーボンブラックの配合量を0.036重量部に変更し、本発明のアリ類防除用毒餌剤収納容器を得た。
[実施例3]
実施例1において、カーボンブラックの配合量を0.012重量部に変更し、本発明のアリ類防除用毒餌剤収納容器を得た。
[実施例4]
実施例1において、カーボンブラックの配合量を0.006重量部に変更し、本発明のアリ類防除用毒餌剤収納容器を得た。
【比較例】
【0035】
[比較例1]
実施例3において、カーボンブラックを銅フタロシアニングリーンに変更し、比較用のアリ類防除用毒餌剤収納容器を得た。
[比較例2]
実施例1において、カーボンブラックの配合量を0.0012重量部に変更し、比較用のアリ類防除用毒餌剤収納容器を得た。
【0036】
[毒餌剤の作成]
毒餌剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学社製)2.5重量部、砂糖(三井製糖社製)20重量部、バレイショデンプン(関東化学社製)20重量部、サナギ粉(マルキュー社製)15重量部、チアベンダゾール(関東化学社製、以下TBZと称す)0.25重量部、落花生油(関東化学社製)5重量部、グリセリン(関東化学社製)10重量部、を混合して得た混合物に3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートが0.01重量部となるように加えて混合し、さらに防除成分としてフィプロニル(東京化成工業社製)を0.02重量部、ピリプロキシフェン(住友化学社製)を0.1重量部添加混練した後、混練物1gを球状に成形することで毒餌剤を作成した。その後、本発明のアリ類防除用毒餌剤収納容器および比較用のアリ類防除用毒餌剤収納容器の毒餌剤収納面に当該毒餌剤を収納した。(夫々、毒餌剤入容器-1~4、比較毒餌剤入容器1~2)
【0037】
[効力試験]
底面直径80mm、高さ40mmの円形ポリカップの底面にろ紙を敷き、該ろ紙の上に含水脱脂綿を置いた後、ポリカップの内側にはアリ逃亡防止用にフルオンを塗布したものを2つ準備した。夫々のポリカップに対し、毒餌剤を収納した本発明のアリ類防除用毒餌剤収納容器または比較用のアリ類防除用毒餌剤収納容器を設置し、住友化学(株)で累代飼育されたアルゼンチンアリ20頭を放した。
アルゼンチンアリを放虫してから24時間後、それぞれのポリカップのアルゼンチンアリの死虫数を数えた。
【0038】
以下の式により致死率を算出した。
致死率(%)=死虫数/20×100
【0039】
上記効力試験を2反復し、平均の致死率を表に示す。
【0040】
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上説明したように、本発明にかかるアリ類の毒餌剤容器は、アリを誘引、防除するのに適している。
【符号の説明】
【0042】
10 下蓋
11 突条部
12 毒餌剤収納面
20 上蓋
20b 平坦面
20c 傾斜面
20d 端面
31~34 連結部
41~44 突出部
60、61 連結片