(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】腸吻合部をその場で洗浄するためのキット
(51)【国際特許分類】
A61M 3/02 20060101AFI20241227BHJP
A61F 2/856 20130101ALI20241227BHJP
【FI】
A61M3/02 100
A61F2/856
(21)【出願番号】P 2021576539
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 FR2020050889
(87)【国際公開番号】W WO2020260784
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-08
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520134201
【氏名又は名称】セーフヒール
【氏名又は名称原語表記】SAFEHEAL
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルボー-モリエ、セベリン
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0143722(US,A1)
【文献】特表2012-517255(JP,A)
【文献】特表2014-527854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/02
A61F 2/82
A61F 2/856
A61F 2/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その場での腸吻合部(2)の浣腸のための装置(1)と、吻合部保護装置とを含むキットであって、前記吻合部保護装置は、可撓性の外部シース(9)を備え、前記
外部シースは、ステント(7)の下流端に接続され、前記ステントは、吻合部の上流に固定されるように設計され、前記浣腸装置(1)は、浣腸組成物を前記吻合部の上流に分配することができる環状の形状の穿孔された管状要素(3)と、一端(4a)が前記管状要素内に現れ、一端(4b)が前記組成物を前記管状要素へと届けるように設計された注入手段(5)へと開口している供給管(4)と、前記吻合部の上流における前記管状要素のための保持手段(6)とを備え
、前記浣腸装置(1)の前記管状要素(3)は、前記管状要素の周方向に配置され、前記吻合部に向かう下流方向を向いた複数の穿孔(10)を備える、キット。
【請求項2】
前記浣腸装置(1)の前記保持手段(6)は、前記管状要素上に位置する、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記浣腸装置(1)の前記保持手段(6)は、前記吻合部保護装置の前記ステント(7)に取り付けられる、請求項1または2に記載のキット。
【請求項4】
前記浣腸装置(1)の前記供給管(4)は、1~8mmの間に含まれる内径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のキット。
【請求項5】
前記複数の穿孔(10)は、前記管状要素の円周に規則的な間隔で配置され
ている、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記浣腸装置(1)は、生体適合性材料からなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記浣腸装置(1)の前記注入手段(5)は、シリンジまたはポンプを備える、請求項1~6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
浣腸組成物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
前記浣腸装置(1)の前記管状要素(3)は、前記ステント(7)上に保持手段(6)によって取り付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記ステント(7)の内面を覆う内部シースであり、前記内部シースの長手方向の各端部が前記ステント(7)に水密状態で固定され、前記内部シースと
前記ステントの内面との間の真空チャンバー
を画定する内部シースと、
前記真空チャンバー内へ開口する開口端
と吸引装置に接続された自由端とを有する吸引管と、を備え、
前記吸引管は、
前記自由端から空気を吸引して、腸壁を吸引によって前記ステントの外面に対して引き寄せ、前記真空チャンバー内に真空を確立し、前記ステントを吻合部の上流に維持するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吻合部のケアの分野に関し、特に腸吻合部の浣腸をその場で(in situ)行うためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
吻合部は、縫合糸またはステープルによる2つの構造、器官、または空間の間の接続部である。例えば、腸吻合部は、とりわけ腸の一部分を切除した後に生じ得る腸の一部分の2つの端部の間の接合部である。とりわけ、いわゆる低吻合が行われる結腸直腸がんの場合の結腸の一部の切除の状況において行われる吻合を参照することができる。
【0003】
吻合部離開(瘻孔)が、特に腸吻合、とりわけ結腸直腸または結腸肛門の吻合の場合において、死亡率が約20%の重篤な合併症である。吻合部瘻孔は、一方の腔の内容物が他方の腔へと排出されることになる2つの腔の異常な連通である。
【0004】
吻合部瘻孔は、一般に、吻合部の縫合の不充分な治癒によって引き起こされ、一般に、手術の1週間後に生じる。症状には、発熱、腸管通過障害、程度の差はあるが激しい腸の痛み、あるいは患者の生命を脅かしかねない敗血症性ショックさえ含まれる可能性がある。他のケースでは、患者がいかなる症状も有さない可能性もある。
【0005】
吻合部瘻孔の重症度に応じて、あまり重篤でないケースでは抗生物質の投与や、最も重篤なケースでは内視鏡、または最初の手術より高リスクの新たな手術など、さまざまな処置が考えられる。
【0006】
特に、治癒困難または細菌感染、さらには最終的な吻合部の破れなど、腸吻合に関連し得る深刻な結果に鑑みて、吻合の実施に関する治療の成り行きを処置および/または予防する必要がある。
【0007】
吻合部瘻孔の発生を予防し、より一般的には吻合、とりわけ腸吻合の実施に関する治療の成り行きを防止するために、1つ以上の有効化合物を含むことができる組成物を吻合部に直接、かつ低侵襲なやり方で分配することを可能にする技術的解決策を提供できると、有利であると考えられる。
【0008】
そのようにするために、吻合部の治癒を促進すべく、吻合部の定期的な浣腸を繰り返し実施することが有利であり得る。
【0009】
腸吻合部の浣腸に関して現時点で利用することができる解決策は、一般に、肛門経路によって従来からのやり方で実施され、各々の浣腸の際に浣腸装置を導入し、したがって吻合部を繰り返し通過させる必要があり、あるいは浣腸バケット、カニューレ付きバルブ、または単純なペアを使用して吻合部の領域に液体の圧力を加える必要がある。
【0010】
浣腸を経皮的に行うことも可能である。例えば、浣腸液を入れるためのストーマを形成するための外科的処置を必要とするマロン法による順行性浣腸によることができ、あるいは浣腸流体の導入のために結腸の第一部分と皮膚との間に腸瘻の形成を必要とする経皮内視鏡的腸瘻造設術(PEC)によることができる。しかしながら、これらの経皮的浣腸は、患者にとって感染症および炎症などの医学的リスクを呈する侵襲的技術である。したがって、腸吻合部の浣腸のための種々の既存の解決策は、吻合部を傷め、吻合部の治癒を損ない、したがって吻合部瘻孔の発生を助長する危険性がある浣腸装置の反復導入を必要とし、あるいは肛門導入によらずに液体アクセスを可能にするための患者の腹部の開口部の形成を必要とするため、侵襲的である。これが、とりわけ反復的に行われる腸吻合部の浣腸のための手順が、腸吻合の実行に関連する治療の成り行きの処置および/または予防の状況において実際に決して使用されない理由である。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本発明は、腸吻合の実行に関連する治療的合併症の処置および/または予防を可能にし、特に吻合部瘻孔の予防を可能にする技術的解決策であって、侵襲が最小限であり、その場での反復的な浣腸の実行を可能にし、浣腸装置を体内に何度も再導入する必要がなく、効果的であり、使用の状況に適合させることが可能である技術的解決策を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、治癒困難、細菌感染、吻合部位の痛み、または吻合部瘻孔などの吻合の実行に関連する治療的合併症を広く対象とする。これらの治療的合併症のすべてを効果的かつ低侵襲的なやり方で処置および/または予防できるべきである。
【0013】
この目的のために、本発明は、その場での腸吻合部の浣腸のためのキットであって、反復的な浣腸の実行を可能にし、各々の浣腸の際に再導入する必要がないキットを提案する。
【0014】
本発明の1つの目的は、その場での腸吻合部(2)の浣腸のための装置(1)と、吻合部保護装置とを含むキットであって、吻合部保護装置は、可撓性の外部シース(9)を備え、シースは、シースの下流に位置するステント(7)に接続され、前記ステントは、吻合部の上流に固定されるように設計され、浣腸装置(1)は、浣腸組成物を吻合部の上流に分配することができる管状の形状の穿孔された管状要素(3)と、一端(4a)が管状要素内に現れ、一端(4b)が組成物を前記管状要素へと届けるように設計された注入手段(5)へと開口している供給管(4)と、吻合部の上流における管状要素のための保持手段(6)とを備える、キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明による腸吻合部の浣腸のための装置(1)を示しており、この装置は、環状の形状の穿孔された管状要素(3)と、一端(4a)が管状要素に現れ、一端(4b)が前記管状要素へと組成物をもたらすように設計された注入手段(5)へと開口している供給管(4)と、吻合部の上流における管状要素のための保持手段(6)とを備えている。
【
図2】
図2は、固定要素(7)と、固定要素(7)の下流端に配置された外部シース(9)とを備える吻合部保護装置に結合した本発明による浣腸装置(1)を概略的に示しており、浣腸装置の管状要素(3)が、保持手段(6)によって固定要素の下流部分に取り付けられている。
【
図3】
図3は、直腸(11)、肛門管(12)、左結腸(13)、横行結腸(14)、右結腸(15)、小腸(16)、胃(17)、および食道(18)を見て取ることができる消化器系の概略図を示しており、吻合部(2)が腸の切除部分の2つの端部(19aおよび19b)を接続している。
【
図4】
図4は、イントロデューサ管(20)によって吻合部の上流の位置へと導かれた吻合部保護装置に結合した本発明による浣腸装置(1)の概略図を示しており、管状要素(3)および固定要素(7)は、イントロデューサを離れるときの半径方向に収縮した状態にあり、外部シース(9)および供給管(4)は、依然としてイントロデューサ管の内側に収容されている。
【
図5】
図5は、吻合部の上流に部分的に配置された吻合部を保護するための装置に結合した本発明による浣腸装置(1)を概略的に示しており、管状要素(3)および管状要素(3)が取り付けられた固定要素(7)が、最大半径方向に拡大した位置で腸壁に保持されている。
【
図6】
図6は、吻合部保護装置に結合した本発明による浣腸装置(1)を概略的に示しており、浣腸装置の供給管(4)および吻合部保護装置の外部シース(9)が吻合部保護装置の固定要素(7)の下流に展開された状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本出願の出願人は、その場での腸吻合部の浣腸のための装置を開発した。この装置は、吻合の実行に関連する治療的合併症を処置および/または予防するために、1つ以上の有効化合物を含むことができるいわゆる浣腸組成物を、吻合部の上流に、反復的かつ侵襲が最小限なやり方で、直接分配できることが特に興味深い。
【0017】
本発明の第1の目的は、その場での腸吻合部(2)の浣腸のための装置(1)に関し、この装置は、浣腸組成物を吻合部の上流に分配することができる環状の形状の穿孔された管状要素(3)と、一端(4a)が管状要素に現れ、一端(4b)が前記管状要素へと組成物をもたらすように設計された注入手段(5)へと開口している供給管(4)と、吻合部の上流における管状要素のための保持手段(6)とを備える。
【0018】
特に、本発明による装置は、その場での腸吻合部の浣腸のための装置に関し、この装置を、吻合部の浣腸が行われる期間の間、その場に維持することができる。本発明の文脈において、本発明の目的は腸吻合部の浣腸であるため、装置のその場への配置および維持は、体内も意味する。
【0019】
このように、吻合部の浣腸の期間の間、本発明による装置をその場に設置および維持することで、好都合なことに、浣腸のたびごとの吻合部の通過を回避することができ、この吻合部、特に縫合の損傷および変化のリスクがなくなるため、吻合部の浣腸を反復的かつ侵襲が最小限なやり方で実行することが可能になる。
【0020】
実際に、この設置のために、新たに実行された吻合部を装置が何度も通過する必要がない。本発明による装置を、実際に、吻合の実施の前に、病的な腸部分の切除および本発明による装置の配置に必要な前記部分の管腔の開口部を使用して、配置することが可能である。また、吻合の実行後に肛門を介して配置することも可能であり、新たに実行された吻合を1回だけ通過すればよい。どちらの場合も、装置は、繰り返される浣腸が行われる期間の全体を通してその場に維持される。
【0021】
吻合部の上流の浣腸組成物の直接的な分配は、本装置によって実施される浣腸、とりわけ吻合の実行に関連する治療的合併症の処置および/または予防のために分配される浣腸組成物の有効性の局所的な改善を可能にする。より具体的には、本発明による装置は、腸吻合部の浣腸、すなわち腸内で行われる吻合、好ましくは、例えば結腸と直腸との間または結腸と肛門との間の接続にそれぞれ対応する結腸直腸または結腸肛門吻合などの結腸、直腸、または肛門管における吻合などのいわゆる下部消化管吻合に合わせて設計される。
【0022】
本発明の文脈において、「浣腸」とは、浣腸組成物を吻合部へと分配し、特に吻合部の上流において、この吻合部の方向に分配することを意味する。本発明の文脈における浣腸は、装置の使用の状況に応じて、さまざまな種類の浣腸組成物を含むことができる。
【0023】
本発明の文脈において、浣腸組成物は、吻合部の上流に分配されるように設計され、かつ1つ以上の有効化合物を含むことができる任意の組成物、好ましくは液体を意味する。浣腸組成物は、装置の使用の状況に従って選択される。
【0024】
本発明の意味において、「装置の使用の状況」とは、本発明による浣腸装置の実施の目的を意味し、より具体的には、この装置の実施中の吻合部の上流への浣腸組成物の分配が目標とする目的および適応を意味する。装置の使用の状況、すなわち装置の実施の目的は、吻合部の洗浄、治癒の補助、より一般的には吻合の実施に関連する治療的合併症の処置および/または予防など、さまざまであってよい。
【0025】
本発明の意味において、「治療的合併症」とは、吻合の実施に伴い、あるいは関連する可能性があり、この処置後の発生または病理学的性質が一般的かつ通常であり得る身体的および/または生理学的状態または障害を意味する。これらの状態および障害に、細菌および/またはウイルス感染、吻合部位の痛み、吻合の治癒困難、あるいは吻合部瘻孔さえも含まれる。
【0026】
「体内」(in vivo)とは、本明細書において、生体の内部を意味し、特に腸内を意味し、さらにより具体的には、吻合の上流に位置する腸部分を意味する。
【0027】
本発明において、「その場」(in situ)とは、浣腸が実行される期間の間、装置が設置および維持される体内の位置を指し、より正確には、浣腸の実行期間の間、装置が設置および維持される吻合の上流に位置する腸部分を指す。したがって、本発明による装置は、体内でその場に設置および維持される。
【0028】
「吻合部保護」とは、本明細書において、平均的には吻合の実行後3~5日で生じる腸管輸送の再開時に吻合部を保護することを意味する。この期間は、術後の麻痺期である。
【0029】
「吻合部の上流」とは、腸管の輸送方向に鑑みて吻合部位の前に位置する位置を指し、特に吻合部の前に位置し、本発明による装置が設置されるように設計されている位置を指す。いわゆる吻合部の上流の位置は、吻合部の上流1m~1cmの間、好ましくは50cm~15cmの間、より好ましくは30cm~15cmの間に含まれる。
【0030】
本発明の文脈における管状要素のための保持手段(6)は、吻合部の上流において、より正確には吻合部の上流に位置する腸部分の内壁に、管状要素を直接的または間接的に取り付けることを可能にする要素を含む。
【0031】
特に、本発明による装置の保持手段(6)は、管状要素上に配置される。
【0032】
保持手段(6)は、単独で使用され、あるいは組み合わせて使用されるループ、タブ、またはフックなどの取り付け要素であってよい。
【0033】
好ましくは、保持手段(6)は、本発明による装置の環状の形状の穿孔された管状要素について、吻合部(2)の上流に位置する腸部分の内壁への間接的な取り付け手段を備える。
【0034】
またさらに好ましくは、本発明による装置の保持手段は、ステントなどの一時的な取り付け要素(7)へと取り付けることが可能である。
【0035】
特に、本発明による装置の保持手段(6)は、ステント(7)に取り付けることが可能である。
【0036】
好ましくは、ステントは、腸吻合部のための保護装置に含まれる。
【0037】
さらにより好ましくは、本発明による保持手段(6)は、吻合部(2)の上流に位置する身体構造上の腸部分の内壁においてその場に挿入および保持されるように設計され、挿入および保護可能である腸吻合部保護装置のステント(7)に取り付けることが可能である。
【0038】
より具体的には、本発明による装置の保持手段(6)は、可撓性の外部シース(9)を備える腸吻合部保護装置のステント(7)に取り付け可能であり、外部シース(9)は、シースの下流に位置する前記ステントに接続され、前記ステントは、吻合部の上流に固定されるように設計されている。したがって、本発明の文脈において、保持手段(6)を、吻合部保護装置のステント(7)上の浣腸装置の管状要素(3)に取り付けることができる。
【0039】
本発明による装置は、浣腸装置の保持手段(6)が吻合部保護装置のステント上に取り付けられているとき、吻合部保護装置に結合していると呼ばれ、あるいは吻合部保護装置とペアになっていると呼ばれる。
【0040】
第1の実施形態によれば、保持手段は、本発明による装置の管状要素を吻合部保護装置のステントの内側部分に取り付ける。
【0041】
別の実施形態によれば、保持手段(6)は、本発明による装置の管状要素を吻合部保護装置のステント(7)の外側部分に取り付ける。
【0042】
好ましい実施形態によれば、保持手段(6)は、本発明による装置の管状要素(3)を吻合部保護装置のステント(7)の下流端へと、好ましくは前記ステントの外側部分に取り付ける。好ましくは、この実施形態において、保持手段(6)は、管状要素の内径の近くに配置され、あるいは管状要素の内径の周りに配置される。
【0043】
これらの実施形態の各々において、保持手段(6)は、浣腸組成物を吻合部の上流に直接分配できるように、本発明による装置の管状要素(3)を吻合部保護装置の外部シース(9)の外側に取り付ける。
【0044】
保持手段を取り付けることができる吻合部保護装置は、以下の特許文献、すなわち仏国特許第2 941 858号、欧州特許第2395942号、国際公開第2013/014353号、または特許出願の国際公開第2019/077218号に記載されているような吻合部保護装置である。
【0045】
保持手段(6)を取り付けることができる腸吻合部保護装置、すなわち本発明による装置が結合する腸吻合部保護装置は、可撓性の外部シース(9)で構成され、外部シース(9)は、外部シース(9)の下流のステント(7)と一体であり、前記ステントは、吻合部の上流に固定されるように設計されている。ステントは、腸壁に一時的に固定されてシースを所定の場所に保持する要素であり、シースは、糞便物質を吻合部位の腸壁に接触させることなく肛門へと導き、したがって吻合部を保護するように機能する。
【0046】
より詳しくは、保持手段(6)を取り付けることができる吻合部保護装置は、第1の壁と呼ばれる実質的に円形の断面の実質的に円筒形の多穿孔の本体部分を備える長手軸を中心とする回転の壁を定めているステント型の少なくとも1つの第1の長手方向の中空な半剛体要素を備えており、前記第1の中空な長手方向の要素は、収縮位置においては半径方向に圧縮され、半径方向の圧縮から解放された後にいわゆる半径方向最大拡大位置をとることができるように、半径方向の弾性特性を付与する材料で作られており、したがって前記第1の多穿孔の壁が、前記第1の壁の前記収縮した半径方向位置における第1の最小外径と前記第1の壁の前記半径方向最大拡大位置における第1の最大外径との間で制御された様相で変化させることができる第1の外径を有する一時的な固定要素(7)と、前記ステントに取り付けられ、前記ステントの下流端から延びている可撓性の外部シース(9)とを備える。吻合部保護装置の固定要素のこれらの弾性特性は、吻合部の上流のその場にこの装置を設置および保持することを可能にし、結果として、これに接続された本発明による装置、より具体的にはやはり弾性特性を有する本発明による装置の穿孔された管状要素(3)を、設置および保持することを可能にする。
【0047】
さらに、吻合部保護装置を、固定要素の内面の少なくとも一部、好ましくは全長において、内部シースを形成する独立した水密層で裏打ちすることができ、前記内部シースの長手方向における端部のみが、真空チャンバと呼ばれるチャンバを前記内部シースと固定要素の内面との間に画定するために、内部シースの長手方向における各々の端部においてエラストマー接着剤からなる環状シールなどの水密取り付け手段を使用して固定要素に水密なやり方で取り付けられ、固定要素は、前記固定要素の外側に延在する可撓性または半剛体の注入-吸引管に結合し、前記注入-吸引管の一方の開口端が真空チャンバへと開口する。注入-吸引管は、長手方向における端部において、好ましくは可逆的に、接続端ピースに接続され、接続端ピースは、シリンジまたはレドンなどの空気注入または吸引装置に可逆的に接続され、あるいは可逆的に接続可能であり、前記接続端ピースは、閉鎖装置、好ましくは逆流防止弁と、前記真空チャンバ内の真空含有量を示すことができる真空インジケータ装置とを備える。空気吸引チューブは、被験者の外部から、空気を自由端から吸引することによって、腸壁を吸引によってチャンバを画定する固定要素の外面に対して引き寄せ、前記チャンバ内に真空を確立させることで、吻合部の上流のその場への吻合部保護装置の維持を助ける。吻合部保護装置の固定要素の弾性特性と、前記固定要素内に存在する真空チャンバ内の空気吸引管との組み合わせは、吻合部保護装置、したがって吻合部保護装置に結合した本発明による装置の吻合部の上流のその場へのより強固な保持を保証する。
【0048】
本発明による装置は、好ましくは、本発明による装置の設置を容易かつ確実にするために、吻合部保護装置をその場に設置する前に吻合部保護装置に結合される。
【0049】
吻合部保護装置に結合した本発明による装置は、国際公開第2013/014353号に記載されているようなイントロデューサ装置によってその場に設置することができる。
【0050】
より正確には、本発明の文脈において有用なイントロデューサ装置は、一端にハンドルが設けられたカテーテル型のイントロデューサ管と呼ばれる半剛体のガイドチューブ(20)で既知のやり方で構成されてよく、ガイドチューブの内径および長さは、内部に収容された固定要素、したがって好ましくは収縮形態の吻合部保護装置のステント、および長手方向に展開された形態のシースを、保持することを可能にする。さらに、イントロデューサ装置は、本発明による装置の環状の形状の穿孔された管状要素を、収縮形態で前記ガイドチューブに収容しておくことができ、装置の供給管を長手方向に展開された形態で保持することができる。
【0051】
とりわけ腸の吻合の実行後に肛門から導入するために、イントロデューサ装置は、ケーシングであって、収縮形態に圧縮された固定要素および管状要素を前記ケーシングの遠位端に収容および保持し、さらに外部シースおよび供給管を長手方向に展開された形態で収容および保持することができる管状の外側ケーシングと、前記イントロデューサの遠位端を肛門から吻合部の上流へと導くための手段と、固定要素および管状要素を外側ケーシングから切り離すための手段とを備えるイントロデューサ器具をさらに備え、固定要素および管状要素を外側ケーシングから切り離すための手段は、前記固定要素の長手方向における端部に必要に応じて接触するストッパを遠位端に備えるストッパ管で構成されてよく、固定要素の下流に位置する保護装置の外部シースが、前記エンベロープの内側にストッパ管を取り囲む。
【0052】
イントロデューサの遠位端を肛門から吻合部の上流へと送るための手段は、プッシャであって、ガイドチューブの端部に接続されたハンドルから延在し、プッシャロッドと、プッシャロッドの遠位端のプッシャストッパとを備えるプッシャであってもよい。プッシャストッパは、半径方向の拡大を可能にし、腸壁に対する固定要素、とりわけステントの固定を可能にするために、ガイドチューブの遠位端の外側で本発明による浣腸装置に結合した保護装置を押すことができる。
【0053】
イントロデューサを引き抜いた後に、ステントなどの固定要素および固定要素に取り付けられた管状要素が、半径方向の拡大によって開いて腸壁に接触する一方で、シース、供給管、および吸引管は、吻合部の上流の固定部位から吻合部を横切ることによって肛門へと、腸の管腔内に展開される。
【0054】
本発明による装置は、浣腸組成物を環状の形状の穿孔された管状要素(3)へと届けるように設計された供給管(4)を備える。この目的のために、供給管の一端(4a)が管状要素内に現れ、一端(4b)が前記管状要素へと組成物を届けるように設計された注入手段(5)へと開口する。
【0055】
管状要素(3)内に現れる供給管の端部(4a)は、水密取り付け手段、好ましくは融着またはエラストマー接着剤からなる環状シールによって、前記要素に取り付けられる。前記管状要素へと組成物を届けるように設計された注入手段(5)へと開口する端部(4b)は、前記注入手段へと直接的または間接的に開口することができる。供給管の端部(4b)が注入手段(5)へと間接的に開口する場合、この端部は、接続ピースに可逆的に接続され、接続ピースは、シリンジまたはポンプなどの注入手段に可逆的に接続され、あるいは接続可能である。
【0056】
特に、注入手段(5)へと開口する供給管(4)の端部(4b)は、身体の外部に位置するように設計される。
【0057】
より正確には、注入手段へと開口する供給管の端部(4b)は、管状要素(3)が吻合部の上流に設置されたときに、身体の外部、すなわち体外に位置する。
【0058】
好ましい態様によれば、供給管(4)は、可撓性または半剛体の管である。
【0059】
本発明の文脈において、供給管(4)は、1~8mmの間、好ましくは2~5mmの間であってよい内径を有し、より好ましくは、管は5mm以下の内径を有する。管は、2~9mmの間、好ましくは3~6mmの間に含まれる外径を有する。5mm以下の内径を有する供給管は、好都合なことに、環状の形状の穿孔された管状要素への浣腸組成物の送達、とりわけ少量の前記組成物の送達を確実にすることを可能にする。
【0060】
本発明による供給管(4)は、組成物が挿入される管の端部を身体の外部において発見できる充分な長さを管が有するように、装置、特に管状要素をその場に設置した後に調整することができる初期長を有する。好ましい態様によれば、本発明による装置は、単一の供給管を備える。
【0061】
装置の環状の形状の穿孔された管状要素(3)は、吻合部の上流に浣腸組成物を分配することができ、したがって前記要素は、吻合部の上流に配置および設置される。吻合部の上流に穿孔された管状装置を配置することにより、組成物を吻合部に到達するまで吻合部の方向に流すことができる。好ましくは、本発明による装置は、環状の形状の単一の穿孔された管状要素(3)を備える。
【0062】
特に好ましい態様によれば、本発明による装置の管状要素(3)は、収縮位置において半径方向に圧縮され、半径方向の圧縮の解放後に最大半径方向拡大位置をとることができるように、半径方向の弾性特性をもたらす材料で作られる。これらの特性は、とりわけイントロデューサ装置のガイドチューブへの収容時に、管状要素が、管状要素が取り付けられた保護装置の固定要素の直径の変動に適応できることを、有利にできる。換言すると、穿孔された管状要素の半径方向の弾性特性は、この要素を、イントロデューサ装置のガイドチューブ内に収容しておき、その場への設置後に静止時の外径に戻すことができるように、収縮形態に保持することを可能にする。
【0063】
本発明による装置の環状の形状の穿孔された管状要素(3)は、少なくとも1つ、好ましくはいくつかの穿孔(10)を有し、前記穿孔は、前記要素の円周上に配置され、前記吻合部に面する。吻合部に面する穿孔(10)の配置は、浣腸組成物が吻合部の方向に容易に流れることを可能にする。
【0064】
本発明による装置の管状要素は、好ましくは5~50個の間、より好ましくは5~20個の間の穿孔を備える。
【0065】
管状要素に含まれる穿孔(10)は、0.1~5mmの間、好ましくは0.1~2mmの間、より好ましくは0.5~1mmの間に含まれる直径を有することができる。管状要素に存在する穿孔の数および/または直径は、穿孔の数または直径に応じ、あるいは所望の浣腸組成物の分配流量に応じて変動する。
【0066】
好ましくは、本発明による管状要素(3)は、0.1~1mmの範囲であってよい直径を有する5~10個の間の穿孔(10)を備える。
【0067】
特定の態様によれば、本発明による装置の管状要素(3)は、管状要素の円周に規則的な間隔で配置された複数の穿孔(10)を備える。この構成は、吻合部の上流および吻合部の方向の浣腸組成物の均一な分配を可能にする。
【0068】
その場へ設置する前の管状要素(3)の外径は、静止時の外径とも呼ばれるが、10~70mmの間、好ましくは20~50mmの間、より好ましくは20~40mmの間に含まれてよく、その場へ設置する前の管状要素の内径は、静止時の内径とも呼ばれるが、15~65mmの間、好ましくは25~45mmの間、好ましくは35~40mmの間に含まれてよい。
【0069】
管状要素(3)の外径は、前記要素の壁によって形成される最大直径に対応し、内径は、前記要素の壁によって形成される最小直径に対応する。
【0070】
好ましくは、管状要素(3)は、20~50mmの間に含まれる静止時の外径と、15~40mmの間に含まれる静止時の内径とを有する。
【0071】
装置の管状要素(3)が吻合部保護装置の固定要素(7)の外側部分に取り付けられるとき、管状要素の静止時の内径は、吻合部保護装置の固定要素の静止時の外径と同様である。好ましくは、管状要素の静止時の内径および吻合部保護装置の固定要素の静止時の外径は、それらを挿入すべき被験者の腸部分の直径に適合する。
【0072】
その場へ設置した後の管状要素(3)の外径および内径は、この要素が設置された腸部分の内壁の圧力およびこの要素を構成する材料の弾性特性ゆえに、静止時の外径および内径よりも実質的に小さい。
【0073】
特に、本発明による装置は、生体適合性材料からなる。
【0074】
より正確には、本発明による装置の穿孔された管状要素(3)、供給管(4)、および保持手段(6)は、生体適合性材料からなる。
【0075】
「生体適合性材料」または「生体材料」とは、人間または動物の身体の内部の組織および流体に直接的または間接的に、短時間または長時間接触しても、使用先の生物学的環境を妨害せず、あるいは劣化させない能力を有する材料を指す。本発明の文脈において使用することができる生体適合性材料の例として、これらに限定されるわけではないが、チタン、白金、およびニッケルなどの金属および金属合金、コラーゲン、アガロース、キトサン、カラギーナン、セルロースおよびその誘導体、キサンタン、およびアルギネートなどの天然起源のポリマー、あるいはポリエステル、ポリオレフィン、ポリ無水物、ビニルポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、およびポリエーテルアミドなどの合成起源のポリマー、好ましくは感熱性ポリウレタン(TSP)または感熱性ポリエーテルアミド(TSP-A)などの感熱性ポリマーが挙げられる。
【0076】
好ましくは、本発明の文脈において有用な生体適合性材料は、ニチノールという名称で知られるニッケル-チタン金属合金、感熱性ポリウレタン(TSP)、および感熱性ポリエーテルアミド(TSP-A)を含む1つ以上の材料の中から選択される。
【0077】
より好ましくは、管状要素を構成する生体適合性材料は、ニッケル-チタン金属合金または感熱性ポリエーテルアミド(TSP-A)、より好ましくは感熱性ポリエーテルアミド(TSP-A)の中から選択される。
【0078】
より好ましくは、供給管を構成する生体適合性材料は、感熱性ポリウレタン(TSP)である。
【0079】
より好ましくは、管状要素の保持手段を構成する生体適合性材料は、ニッケル-チタン金属合金または感熱性ポリエーテルアミド(TSP-A)、より好ましくは感熱性ポリエーテルアミド(TSP-A)の中から選択される。
【0080】
本発明による装置の管状要素および供給管を構成する生体適合性材料は、同一であっても、異なってもよい。
【0081】
特定の態様によれば、本発明による装置の注入手段(5)は、シリンジまたはポンプを備える。
【0082】
本発明による装置に含まれる注入手段(5)は、本発明による装置の浣腸組成物を、それが位置する容器または入れ物に、捕捉、穿刺、回収、および吸引することができる。
【0083】
浣腸組成物は、管状要素(3)へと届けられ、吻合部(2)の上流に分配されるように、注入手段(5)へと開口する供給管(4)の端部(4b)に挿入されるように設計される。組成物は、装置の使用の状況、すなわち吻合部の浣腸の目的に応じて選択される。
【0084】
本発明の文脈における浣腸組成物は、腸粘膜に適用されるように設計され、腸粘膜への適用に適した皮膚科学的組成物である。
【0085】
本発明の文脈において、浣腸組成物は、1つ以上の有効化合物および薬学的に許容される添加剤を含むことができる水性、アルコール性、もしくは含水アルコール性溶液、あるいは乳液であってよい。
【0086】
例えば、浣腸組成物は、水相への脂肪相の分散またはその逆によって得られる乳液であってよい。
【0087】
この組成物を、当業者にとって周知のあらゆる方法に従って調製することができる。
【0088】
特に、本発明による装置のための浣腸組成物は、1つ以上の有効化合物および薬学的に許容される賦形剤を含むことができる水性、アルコール性、または含水アルコール性組成物である。
【0089】
第1の実施形態によれば、本発明による装置のための浣腸組成物は、1つ以上の有効化合物および薬学的に許容される賦形剤を含むことができる水性、アルコール性、または含水アルコール性組成物である。好ましくは、浣腸組成物は、水性組成物である。
【0090】
浣腸組成物は、いくつかの異なる浣腸化合物または同一の浣腸化合物を含むことができる。
【0091】
本発明の文脈において、「有効化合物」とは、それを含む組成物が投与される被験者患者において薬理活性および/または生理学的効果を有することができる任意の化合物を指す。
【0092】
浣腸組成物に含まれる有効化合物を、防腐剤、抗菌剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗真菌剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、鎮痛剤、麻酔剤、血管新生阻害剤、抗増殖剤、抗炎症剤、創傷治癒剤、プロバイオティクス剤、またはこれらの混合物から選択することができる。
【0093】
より具体的には、本発明による浣腸組成物は、防腐剤、抗菌剤、抗炎症剤、鎮痛剤、および治癒剤から選択される1つ以上の有効化合物を含む。
【0094】
さらにより詳細には、有効化合物を、クロルヘキシジン、ヘキサミジン、ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、トリクロサン、ヨウ素などの防腐剤、酪酸塩、デメクロサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、フシジン酸、ムピロシン、ネオマイシンなどの抗菌剤、酪酸塩、ヒドロコルチゾンプレドニゾロンなどのコルチコステロイド、クロベタゾール、デソニド、トリアムシノロン、ケトプロフェン、ジクロフェナク、ベンジダミン、イブプロフェンなどの抗炎症剤、酪酸塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ブチレート、酪酸ナトリウム、デクスパンテノール、トロラミン、レチノールまたはビタミンA、カデキソマー、デキストラノマー、クリラノマー、エノキソロン、パントテン酸カルシウムなどの創傷治癒剤、ジクロフェナク、イブプロフェン、パラセタモール、またはケトプロフェンなどの非オピオイド性鎮痛薬、トラマドールまたはコデインなどの第II段階オピオイド鎮痛薬、あるいはフェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、またはスフェンタニルなどの第III段階オピオイド鎮痛薬などの鎮痛剤から選択することができる。
【0095】
この有効化合物のリストは、あくまでも例であり、当業者であれば、本発明の文脈において使用することができる有効化合物を決定する方法を承知しているであろう。
【0096】
浣腸組成物は、組成物の総重量に対して0.001~10重量%の間、好ましくは0.01~8重量%の間、優先的には0.1~5重量%の間、より優先的には0.1~3重量%の間、好ましくは0.1~2重量%の間、より好ましくは2重量%の有効化合物を含むことができる。
【0097】
好ましい態様によれば、本発明による浣腸組成物は、組成物の総重量に対して5重量%の有効化合物を含む。
【0098】
第2の実施形態によれば、本発明による装置のための浣腸組成物は、有効化合物を含まない水性、アルコール性、または含水アルコール性組成物であり、好ましくは、浣腸組成物は、特に浣腸の目的が吻合部の洗浄である場合に適した生理食塩水などの水性組成物である。
【0099】
本発明による組成物は、溶媒、湿潤剤、安定化剤、界面活性剤、防腐剤、pH調整剤、ビタミン、乳化剤、湿潤剤、保湿剤、無痛化剤、浸透剤、酸化防止剤、化粧品として有効な物質、電解質、従来からの酸または塩基、あるいは混合物など、不活性または薬力学的に活性な添加剤を、単独で、または組み合わせて含むことができる。
【0100】
当業者であれば、浣腸の目的および組成物の所望の形態に従って、有効化合物、添加剤、および医薬品賦形剤を選択するように注意するであろう。
【0101】
本発明の文脈において、薬学的に許容される賦形剤は、有効化合物以外の任意の化合物であって、組成物中に存在するあらゆる他の化合物に適合し、接触する装置の要素に適合し、皮膚および粘膜、特に腸粘膜に適合する化合物である。
【0102】
本発明の意味において、「被験者」または「患者」とは、任意の哺乳動物を意味し、特に人間、男性、女性、および子供を意味する。
【0103】
本発明による装置の浣腸組成物は、この組成物に適した入れ物に収容されるように設計され、この入れ物から注入手段によって収集することが可能である。
【0104】
浣腸の目的はすべて、直接的または間接的な成り行きとして、吻合の実施に関連する治療的合併症の処置および/または予防、特に解剖学的瘻孔の予防を有する。
【0105】
本発明の文脈において、「処置する」または「処置」とは、特定の疾患または障害あるいは少なくとも識別可能または識別不可能な症状の改善または逆転を意味する。さらに、「処置する」という用語は、疾患または障害の進行あるいはこの疾患または障害の症状の発生を減らし、あるいは遅らせることを指すことができる。例えば、本発明の文脈において、「処置する」という用語は、吻合部の細菌感染、吻合部位の痛み、治癒の困難さ、などの吻合の実施に関連する治療的合併症を減らし、もしくは遅らせ、かつ/または吻合部の瘻孔の発生を減らし、もしくは遅らせることに対応し得る。
【0106】
本発明の文脈において、「予防する」または「予防」とは、特定の疾患もしくは障害となるリスクを減らすこと、あるいはこの疾患の症状の発生を減らし、もしくは遅らせることを意味する。例えば、本発明の文脈において、「予防する」という用語は、吻合部の細菌感染、吻合部位の痛み、治癒の困難さ、などの吻合の実施に関連する合併症の発生のリスクを減らし、かつ/または吻合部の瘻孔の発生を減らし、もしくは遅らせることに対応し得る。
【0107】
さらに、本発明は、第1の目的による装置の使用、または被験者における吻合の実施に関連する1つ以上の治療的合併症を処置または予防するための方法に関する。
【0108】
より具体的には、本発明は、第1の目的による装置の使用、または被験者における吻合の実施に関連する1つ以上の治療的合併症を処置および/または予防するための方法に関し、被験者に、装置、特にこの装置の管状要素が、前記吻合部の上流のその場に設置され、浣腸組成物が、注入手段によって、この注入手段へと開口した装置の供給管の端部へと挿入され、前記管状要素によって吻合部の上流に分配される。浣腸組成物およびこの組成物の量は、標的とされる治療的合併症に応じて決定される。
【0109】
さらに、本発明は、被験者における吻合の実施に関連する1つ以上の治療的合併症を処置または予防するために使用される第1の目的による装置に関する。
【0110】
より具体的には、本発明は、被験者における吻合の実施に関連する1つ以上の治療的合併症を処置および/または予防するために使用される第1の目的による装置に関し、被験者に、装置、特にこの装置の管状要素が、前記吻合部の上流のその場に設置され、浣腸組成物が、注入手段によって、この注入手段へと開口した装置の供給管の端部へと挿入され、前記管状要素によって吻合部の上流に分配される。浣腸組成物およびこの組成物の量は、標的とされる治療的合併症に応じて決定される。
【0111】
上記の使用および方法の場合、本発明による装置の保持手段は、その場への設置の前に、吻合部保護装置の固定要素、特にステントに取り付けられる。換言すると、本発明による装置は、その場へ設置する前に吻合部保護装置に結合される。
【0112】
好ましくは、本発明による装置は、吻合の実行後に、本発明の第1の目的に関連して説明したようなイントロデューサ装置によって肛門を介して吻合部の上流に設置される。より正確には、イントロデューサ装置は、一端にハンドルが設けられたカテーテル型の半剛体のガイドチューブで構成されてよく、ガイドチューブの内径および長さは、吻合部保護装置の固定要素、したがって好ましくはステント、および本発明による装置の管状要素を、収縮した形態にて収容して保持するとともに、長手方向に展開された吻合部保護装置のシースおよび本発明による装置の供給管を収容して保持することを可能にする。
【0113】
好ましくは、本発明による装置は、吻合の実施の直後、すなわち外科手技の終了時に、吻合部の上流に設置される。
【0114】
上記の使用および方法の状況において、本発明による装置は、単独で使用可能であり、あるいは抗菌剤、鎮痛剤、または治癒剤などの他の医薬化合物の同時または逐次投与と組み合わせて使用可能であり、前記化合物は、経口または経肛門などの腸溶性的投与、静脈注射などによる非経口の投与、または他の投与が可能である。
【0115】
上述の使用または方法の状況において、装置、特にこの装置の管状要素は、吻合が行われなければならない領域の20~5cmの間、好ましくは15~10cmの間の距離で前記吻合部の上流に設置される。
【0116】
上記の使用または方法の状況において、浣腸組成物は、浣腸の目的のための適切な期間にわたって、1日に1回以上、好ましくは少なくとも1日に1回、吻合部の上流に繰り返し分配される。
【0117】
適切な浣腸期間は、1日~3週間の間、好ましくは1日~15日間の間に含まれてよく、より好ましくは9日間であってよい。好ましくは、上記の使用および方法の状況において、浣腸組成物は、吻合の実施後2日目から数えて9日間、1日に1回、吻合部の上流に分配される。
【0118】
上記の使用または方法の状況において、異なる浣腸組成物を、同時に、または各実施の間に遅延を伴って異なる時間に、吻合部の上流に分配することができる。
【0119】
当業者であれば、挿入すべき浣腸組成物の量、投与の頻度、組成物中に存在する有効化合物、各々の有効化合物の用量、および組成物の形態などの実施すべき処置および/または予防のパラメータを決定することを承知しているであろう。
【0120】
さらに、本発明は、吻合部の上流への設置のための方法であって、
・第1の目的による浣腸装置(1)を吻合部保護装置に結合させ、特に本発明による装置の管状要素(3)を吻合部保護装置の固定要素(7)に取り付け、
・本発明による装置の管状要素(3)および吻合部保護装置の固定要素(7)を、収縮させた形態で、一端にハンドルが設けられた半剛体のガイドチューブ(20)からなるイントロデューサ装置の前記ガイドチューブの遠位端に収容し、
・イントロデューサ装置のガイドチューブの遠位端を、適切な手段によって吻合部の上流に肛門から導入し、
・固定要素および管状要素を、適切な手段によってガイドチューブから解放する
方法に関する。
【0121】
固定要素および管状要素を肛門から吻合部の上流へと送るための手段は、プッシャであって、ガイドチューブの端部に接続されたハンドルから延在し、プッシャロッドと、プッシャロッドの遠位端のプッシャストッパとを備えるプッシャであってよい。プッシャストッパは、固定要素および管状要素をガイドチューブの遠位端の外へと押し出すことによって解放することができるため、固定要素、とりわけステントの半径方向の拡大および腸壁に対する固定を可能にすることができる。
【0122】
好ましくは、この設置方法は、吻合の実行の直後に、すなわち外科手技の終了時に実施される。
【0123】
本発明による浣腸装置は、内視鏡鉗子を使用する内視鏡技術によって選択される浣腸期間の終わりに除去される。より正確には、本発明による装置の管状要素(3)を結合させた吻合部保護装置の固定要素、すなわちステント(7)は、第1のステップにおいてステントの上流端によって腸壁から取り外され、次いでステントの下流端によって肛門を介して被験者の身体から除去される。
【0124】
さらに、本発明は、本発明の第1の目的による装置(1)を含むキットであって、注入手段(5)および吻合部保護装置を含むキットに関し、吻合部保護装置は、可撓性の外部シース(9)を備え、このシースは、このシースの下流に位置するステント(7)に接続され、このステントは、吻合部の上流に固定されるように設計されている。好ましくは、キットは、浣腸組成物をさらに含む。
【0125】
好ましくは、本発明によるキットは、吻合部の上流に浣腸組成物を分配することができる管状の形状の穿孔された管状要素を備える本発明の第1の目的による装置と、一端が管状要素内に現れ、他端が組成物を前記管状要素へと届けるように設計された注入手段へと開口している供給管と、吻合部の上流における管状要素のための保持手段と、浣腸組成物のための注入手段と、吻合部を保護するための装置とを含み、吻合部を保護するための装置は、外部シースを備え、このシースは、このシースの下流に位置するステントに接続され、このステントが、吻合部の上流に固定されるように設計される。
【0126】
注入手段(5)は、シリンジまたはポンプであってよく、好ましくはシリンジであってよい。
【0127】
特に、本発明によるキットは、第1の目的による装置のチューブの自由端をすぐに挿入できる状態で浣腸組成物を含んでいる入れ物をさらに含む。
【0128】
好ましい態様によれば、本発明によるキットは、吻合部保護装置に結合させた本発明の第1の目的による装置を含み、すなわち本発明による装置の管状要素(3)が、保持手段(5)によって吻合部保護装置の固定要素(7)に取り付けられている。
【0129】
好ましくは、本発明によるキットは、吻合部保護装置に結合した本発明による装置を吻合部の上流に挿入することができるイントロデューサ装置をさらに含む。イントロデューサ装置は、一端にハンドルが設けられたカテーテル型の半剛体のガイドチューブ(20)で構成されてよく、ガイドチューブの内径および長さは、吻合部保護装置の固定要素、したがって好ましくはステント、および本発明による装置の管状要素を、収縮した形態にて収容して保持するとともに、長手方向に展開された吻合部保護装置のシースおよび本発明による装置の供給管を収容して保持することを可能にする。
【0130】
本発明によるキットは、本発明による装置の管状要素(3)および吻合部保護装置の固定要素(7)を、収縮させた形態で、イントロデューサ装置のガイドチューブ(20)内に含む。
【0131】
本発明は以下の図によってさらに説明される。しかしながら、これらの図を、いかなる場合も、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。