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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】断熱材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
C04B38/00 301Z
C04B38/00 302Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022526850
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 CZ2020000018
(87)【国際公開番号】W WO2021004555
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】PV2019-445
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】522006650
【氏名又は名称】ファースト ポイント エー.エス.
【氏名又は名称原語表記】FIRST POINT A.S.
【住所又は居所原語表記】Brnenska 4404/65a, 69501 Hodonin (CZ)
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】チャンドヴァ,ガブリエラ
(72)【発明者】
【氏名】スパニエル,ペトル
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-521350(JP,A)
【文献】特開昭59-141454(JP,A)
【文献】特開2001-019733(JP,A)
【文献】特表2009-506150(JP,A)
【文献】特表2010-528167(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109796682(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~32.4重量%の発泡ポリスチレンと、57.5~96.0重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、2~6重量%の水酸化アルミニウムと、0.8~2.6重量%の水ガラス硬化剤と、0.1~0.5重量%の水ガラス安定剤とを含有する硬化性混合物からなり、前記発泡ポリスチレンの表面には全重量の0.1~1重量%を構成するカーボンブラックが直接設けられることを特徴とする、水ガラスおよびポリスチレンを含む、断熱材料、特に透過性耐火性断熱材料。
【請求項2】
前記発泡ポリスチレンは、直径3~6mmの球体であることを特徴とする請求項1に記載の断熱材料。
【請求項3】
前記水ガラス安定剤が親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱材料。
【請求項4】
前記ケイ酸ナトリウム水溶液の密度が1370~1400kg/mの範囲内であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の断熱材料。
【請求項5】
前記ケイ酸ナトリウム水溶液は、NaOに対するSiOのモル比が3.2~3.4の範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の断熱材料。
【請求項6】
まず、ポリスチレンビーズをカーボンブラックの水溶液と混合してその全体表面を被覆し、次に、水酸化アルミニウムを添加して全体を混合して断熱混合物を形成し、次いで、水ガラス安定剤を前記ケイ酸ナトリウム水溶液に添加し、次いで、この溶液に水ガラス硬化剤を混合し、この溶液をさらに1~10分間撹拌してバインダー溶液を形成し、前記断熱混合物を前記バインダー溶液に絶えず撹拌しながら添加し、全体を混合し、次いで、得られた混合物を用部位に注ぐことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の断熱材料の製造方法、特に水ガラスおよびポリスチレンを含む透過性耐火性断熱材料の製造方法。
【請求項7】
得られた混合物を型である用部位に注ぎ、さらに得られた混合物から、望の比率の断熱混合物とバインダー溶液が得られるように、このような量のバインダー溶液をプレス手段によって押し出すことを特徴とする請求項6に記載の断熱材料の製造方法。
【請求項8】
最終的に、得られた混合物を乱さずに残して硬化させることを特徴とする請求項6又は7に記載の断熱材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材料、特に水ガラスおよびポリスチレンを含有する透過性耐火性断熱材料、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の技術から、様々な種類の建築物の断熱材料として発泡ポリスチレンを使用することが知られている。その欠点は、耐火性が低いことである。
【0003】
水平面の断熱には、PUR発泡体製の近代的な吹付け断熱材のほか、ポリスチレンパネルが使用されている。この発泡体の欠点は、耐火性が低く、エージングが速いことである。
【0004】
水平面と垂直面を断熱する別の公知の方法は、ミネラルウール断熱材である。ミネラルウールはより高い耐火性を有するが、吸収性である。そのため、その断熱特性を失い、その中にカビが発生する。
【0005】
特許出願CZ PV2017-127から、構造物に使用する防音及び断熱材が知られている。これは、300kg/m未満の比体積質量を有する5~76重量%のバルク断熱材料と、9~36重量%の0.001~1mmブリックダストフラクションと、6~30重量%の水ガラスと、7~30重量%の水と、最大5重量%までの洗剤とを含む気硬性混合物のスラリからなる。この材料の欠点は、断熱特性が低く、引火性が高く、凝集性が低いことである。
【0006】
実用新案CZ 31095からは、透過性耐火性軽量ポリスチレン断熱システム用の混合物が知られている。この混合物は、10重量%の直径3~6mmの発泡ポリスチレンビーズと、88重量%のケイ酸ナトリウム水ガラスと、1重量%のカーボンブラックと、1重量%の水ガラス安定剤-親水性アルコキシアルキル-アンモニウム塩とを含有する。この混合物の欠点は、カーボンブラックがボールの表面上にある保護材となっておらず、断熱材料中に自由に分散されていることであり、これは、断熱材料のより高い熱伝導率および低い熱安定性を引き起こし、従って、耐火特性を制限し、UV照射に対する抵抗をより低くし、従って、非常に速く劣化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】チェコ共和国特許出願明細書第CZ PV2017-127号公報
【文献】チェコ共和国実用新案第CZ 31095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の現在の技術から、現在の技術の主な欠点は、既知の材料の断熱特性が低いことと、その劣化速度が速いことであることは明らかである。
【0009】
本発明の目的は高い耐火性を有すると同時に、可撓性および柔軟性を有し、また劣化耐性がある、軽量断熱材料の構造物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の欠点は大幅に取り除かれ、本発明の目的は、断熱材料、特に、水ガラスおよびポリスチレンを含有する透過性耐火性断熱材料によって達成される。本発明によれば材料は、1~32.4重量%の発泡ポリスチレンと、57.5~96.0重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、2~6重量%の水酸化アルミニウムと、0.8~2.6重量%の水ガラス硬化剤と、0.1~0.5重量%の水ガラス安定剤とを含有する硬化性混合物からなり、一方、発泡ポリスチレンの表面には全重量の0.1~1重量%を構成するカーボンブラックが直接設けられていることを特徴とする。この断熱材料の利点は、耐火特性が著しく改良されているとともに、熱安定性が著しく高く、UV照射に対する耐性がより高く、劣化の程度が著しく低いことである。利点はまた、非常に良好な透過性である。難燃性を改善するために、混合物は水酸化アルミニウムを含有する。発泡ポリスチレンの表面にカーボンブラックを設ける利点は、このようにして設けられるカーボンブラックが熱伝導性を低下させ、カーボンブラックがポリスチレンビーズにある程度吸収され、それによって得られる混合物中のポリスチレンビーズとのそれらの結合を安定化させるという利点を有することである。さらなる利点は、カーボンブラックが難燃補助剤(flame co-retardant)として作用することである。断熱材料はさらに有利には硬化剤を含み、硬化剤は、グリセロールモノアセテート~トリアセテートまたはこれらの混合物であってもよい。
【0011】
有利には、発泡ポリスチレンビーズが3~6mmの直径を有する。その利点は、最適な配置に関して材料の構造を最適化する可能性である。
【0012】
水ガラス安定剤が親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩であることも有利である。
【0013】
この場合、ケイ酸ナトリウム水溶液が1370~1400kg/mの範囲内の密度を有し、SiOとNaOのモル比が3.2~3.4の範囲内であることが非常に有利である。酸化ナトリウムに対するシリカのモル質量比ならびに関連する溶液密度および溶液濃度は、ポリマー混合物としての水ガラスのレオロジー特性、電解質における電気的特性、圧縮性および接着強度、さらには硬度、強度などに有意な影響を及ぼす。上述のパラメータの利点は、得られる断熱材料が硬化後に部分的に可撓性と柔軟性とを備えることである。
【0014】
上記の欠点は大幅に取り除かれ、本発明の目的は、断熱材料を製造する方法、特に、水ガラスおよびポリスチレンを含有する透過性耐火性断熱材料を製造する方法によって達成される。本発明によれば方法はまず、ポリスチレンビーズを、それらの表面全体が被覆されるようにカーボンブラック水溶液と混合し、次いで、水酸化アルミニウムを添加し、全体を混合して断熱混合物を形成し、次いで、水ガラス安定剤をケイ酸ナトリウム水溶液に添加し、次いで、水ガラス硬化剤を溶液中に混合して、この溶液を1~10分間撹拌してバインダー溶液を形成し、次いで、断熱混合物を絶えず撹拌しながらバインダー溶液中に注ぎ、さらに全体を混合し、次いで、得られた混合物を適用部位上に注ぐことを特徴とする。その利点は、断熱パネルや建具などの固形製品の両方を生産することが可能で、その液状の状態でも断熱材料を塗布できることである。
【発明の効果】
【0015】
得られた混合物を型である適用部位に注ぎ、さらに、得られた混合物から、所望の比率の断熱混合物およびバインダー溶液を生成するように、プレスの手段によって、ある量のバインダー溶液を押し出すことが好都合である。この利点は、正確なパラメータを有する製品を容易に製造することが可能であることである。
【0016】
得られた混合物を硬化するまで最終的に放置することも有利である。その利点は得られた断熱材が断熱空間の形状パラメータに関して正確に作成できることである。硬化長さを規制できるという事実のために、断熱材料は所望の形状に正確に成形できるという事実がある。
【0017】
本発明による断熱材料およびその製造方法の主たる利点は、これまで使用されてきたポリスチレン製品と同等の断熱特性を有することであり、一方、既存の材料とは異なり、不燃性、蒸気透過性、雨水および湿気に対する耐性、抗真菌性、強固、可撓性、紫外線放射などの外部影響に対する耐性を有することである。別の利点は、塗布の単純な方法である。断熱材料から被覆板と建具の両方を作成することができ、延伸、鋳造、スプレーにより液体混合物として容易に塗布できる。したがって断熱材料は、床および天井、水平でわずかに傾斜した屋根に適しており、ミネラルウール、ポリスチレンコンクリートまたはポリウレタンフォームに取って代わる。ミネラルウールやポリスチレンボードによる断熱とは異なり、手の届きにくい場所や表面に凹凸のあるエッジにうまく適用される。それは、通常屋根上にある台形及び折り畳まれたシート、エターニット又はアスファルトを含む種々の基材に対する良好な接着性を有する。同時に、断熱材料は十分に強く、歩行可能でもありうる。既存の材料よりも優れた本発明による断熱材料の大きな利点は、ボードと液体混合物とを組み合わせることができることでもある。従来のポリスチレンボードの固着に付随する問題の一つは、ボードとダボ周辺の穴との間の接合部の充填である。これらの間隙および開口部を液体状の断熱材料で充填する可能性のおかげで、熱の逃げ道のない均一な表面が非常に簡単かつ迅速に作成される。大きな利点はまた、液体混合物の形態の半仕上げ断熱材料を、産業、例えば、家電製品、電気技術、自動車などの断熱ライニングとして適用できることである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例1
【0019】
透過性耐火性断熱材料は、直径3~6mmの球体である10重量%の発泡ポリスチレンと、83.0重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、4重量%の水酸化アルミニウムと、0.3重量%の水ガラス安定剤と、2.3重量%の硬化剤とを含有する気硬性混合物からなる。
【0020】
発泡ポリスチレンの表面にはカーボンブラックが設けられ、カーボンブラックは全重量の0.4重量%を構成する。
【0021】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0022】
ケイ酸ナトリウム水溶液の密度は1390kg/mの範囲内であり、NaOに対するSiOのモル比は3.3である。
【0023】
水ガラス硬化剤は、純粋な水ガラスに対して2.8重量%の濃度を有する、7:3体積部の比の純粋なグリセロールジアセテート/トリアセテートの混合物である。
【0024】
この断熱材料の製造方法によれば、まず、ポリスチレンビーズをカーボンブラック25重量%の濃度の水溶液と混合し、その全体表面をカーボンブラックで被覆した後、水酸化アルミニウムを添加し、全体を混合して断熱混合物を形成し、次に、ケイ酸ナトリウムの水溶液に水ガラス安定剤を添加し、この溶液に水ガラス硬化剤を添加し、この溶液を5分間混合してバインダー溶液を形成し、次いで、この断熱混合物をバインダー溶液に絶えず攪拌しながら添加し、全体を混合し、得られた混合物をシリコーン型である適用部位に注ぎ、さらに、得られた混合物から、断熱混合物とバインダー溶液との所望の比率が得られるようにプレスの手段によってこのような量のバインダー溶液を押し出す。
【0025】
最後に、得られた混合物は、硬化するまで静置される。得られた製品は断熱ボード、またはOSBボード上に、より正確には2つのOSBボード間に配置された断熱層である
【0026】
実施例2
【0027】
透過性耐火性断熱材料は、直径3~6mmの球体である1重量%の発泡ポリスチレンと、96.0重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、2重量%の水酸化アルミニウムと、0.1重量%の水ガラス安定剤と、0.8重量%の硬化剤とを含有する気硬性混合物からなる。
【0028】
発泡ポリスチレンの表面にはカーボンブラックが設けられ、カーボンブラックは全重量の0.1重量%を構成する。
【0029】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0030】
密度が1370kg/mの範囲内であり、NaOに対するSiOのモル比が3.2の範囲内であるケイ酸ナトリウム水溶液。
【0031】
水ガラス硬化剤は、純粋な水ガラスに対して0.8重量%の濃度を有する、7:3体積部の比の純粋なグリセロールジアセテート/トリアセテートの混合物である。
【0032】
この断熱材料の製造方法によれば、まず、ポリスチレンビーズをカーボンブラック25重量%の濃度の水溶液と混合し、その全体表面をカーボンブラックで被覆した後、水酸化アルミニウムを添加し、全体を混合して断熱混合物を形成し、次に、ケイ酸ナトリウムの水溶液に水ガラス安定剤を添加し、この溶液に水ガラス硬化剤を添加し、この溶液を1分間混合してバインダー溶液を形成し、次いで、この断熱混合物をバインダー溶液に絶えず撹拌しながら添加し、全体を混合し、得られた混合物を平坦な分割屋根裏空間に注ぎ、広げ、表面処理し、静置して硬化させる。
【0033】
実施例3
【0034】
透過性耐火性断熱材料は、直径3~6mmの球体である32.4重量%の発泡ポリスチレンと、57.5重量%のケイ酸ナトリウム水溶液と、6重量%の水酸化アルミニウムと、0.5重量%の水ガラス安定剤と、2.6重量%の硬化剤とを含有する気硬性混合物からなる。
【0035】
発泡ポリスチレンの表面にはカーボンブラックが設けられ、カーボンブラックは全重量の1重量%を構成する。
【0036】
水ガラス安定剤は、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの98%水溶液の形態の親水性アルコキシアルキルーアンモニウム塩である。
【0037】
密度が1400kg/mの範囲内であり、NaOに対するSiOのモル比が3.4の範囲内であるケイ酸ナトリウム水溶液。
【0038】
水ガラス硬化剤は、純粋な水ガラスに対して4.5重量%の濃度を有する、7:3体積部の比の純粋なグリセロールジアセテート/トリアセテートの混合物である。
【0039】
この断熱材料の製造方法によれば、まず、ポリスチレンビーズをカーボンブラック25重量%の濃度の水溶液と混合し、その全体表面をカーボンブラックで被覆した後、水酸化アルミニウムを添加し、全体を混合して断熱混合物を形成し、次に、ケイ酸ナトリウムの水溶液に水ガラス安定剤を添加し、次いでこの溶液に水ガラス硬化剤を添加し、この溶液を10分間混合してバインダー溶液を形成し、次いで、断熱混合物をバインダー溶液に絶えず撹拌しながら添加し、全体を混合し、次いで、得られた混合物を、シリコーン表面を有する型枠を備えた建築物の外壁に注ぎ、最後に、得られた混合物を静置して硬化させ、その後、型枠を取り除く。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明による断熱材料は特に、建築産業において透過性耐火性断熱システムを作製するために使用することができる。