(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】可撓管保護具
(51)【国際特許分類】
F16L 57/00 20060101AFI20241227BHJP
F16L 57/02 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
F16L57/00 Z
F16L57/00 A
F16L57/02
(21)【出願番号】P 2023064193
(22)【出願日】2023-04-11
【審査請求日】2024-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 修司
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-011990(JP,U)
【文献】特開2010-249245(JP,A)
【文献】実開昭50-138631(JP,U)
【文献】実公昭51-004339(JP,Y1)
【文献】特開2005-121125(JP,A)
【文献】登録実用新案第3094370(JP,U)
【文献】中国実用新案第204942841(CN,U)
【文献】中国実用新案第217503065(CN,U)
【文献】独国実用新案第202014001893(DE,U1)
【文献】独国実用新案第202013002690(DE,U1)
【文献】中国実用新案第210069257(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第102278567(CN,A)
【文献】中国実用新案第208546639(CN,U)
【文献】特開2002-022066(JP,A)
【文献】実開昭51-034019(JP,U)
【文献】特開2002-213658(JP,A)
【文献】実公昭44-008687(JP,Y1)
【文献】実開昭51-157944(JP,U)
【文献】中国実用新案第2840849(CN,Y)
【文献】特開2002-005372(JP,A)
【文献】米国特許第6032700(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0059059(US,A1)
【文献】特開2020-043645(JP,A)
【文献】特開2021-099138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルスプリングと持ち手を備え、
前記コイルスプリングは、内径が可撓管の外径と同径または外径よりも大きい被覆コイルと、内径が可撓管の外径よりも小さい小径ループと、を有し、
前記小径ループは、前記コイルスプリングの少なくとも一方の端部近傍に配設されて可撓管を押圧しており、
前記持ち手は、前記小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部を
前記一方の端部近傍に配設される前記小径ループに対して1つのみ有し、かつ、前記コイルスプリングの螺旋の向きに反して前記径方向延長部を周方向に移動させることにより、前記小径ループを拡径させるように機能するものであり、
前記被覆コイルと前記小径ループは、連続した線状体から成る
ことを特徴とする可撓管保護具。
【請求項2】
前記小径ループは、前記コイルスプリングの両端の端部近傍に配設される
ことを特徴とする請求項1に記載の可撓管保護具。
【請求項3】
前記小径ループと前記持ち手は、何れも前記コイルスプリングの端部に配設されるものであり、
前記被覆コイルと前記小径ループと前記持ち手は、連続した線状体から成る
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の可撓管保護具。
【請求項4】
前記小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部は、径方向に直線的に延びる形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の可撓管保護具。
【請求項5】
前記小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部は、非直線状の形状であって、当該形状の全体が径方向に延びる形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の可撓管保護具。
【請求項6】
前記持ち手は、その先端部が保護部材で被覆されている
ことを特徴とする請求項1に記載の可撓管保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その内部を流体や粒体が通るホースやチューブなどの可撓管において、可撓管の折れや潰れを防止するために用いられる可撓管保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部を流体や粒体が通るホースやチューブなどの可撓管については、サイズや性質の異なる各種の可撓管に対応させた管継手が用意されており、流体の漏れや抜けを防止できるようにされている。しかし、可撓管の折れや潰れを防止することについては十分な対策がされていなかった。可撓管に折れや潰れが発生すると、搬送効率の低下や搬送物の詰りや残留が起こり、また、内圧上昇での可撓管の破裂や接続部からの水漏れ、可撓管の剥離や切れによる品質低下を招いてしまう。この問題は認識されながらも、可撓管の使用者が市販のスプリングを購入し、折れが発生し易い継手部分に固定する等して独自に対応するというのが現状であった。一方、専用部品を提供しようとの試みも、一応、見られることはあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のものは、スプリングとは別に、ホースクランプや留金式バンド等の締付具を別に用意する必要があり、コスト高となり、操作性も十分ではなく、そうであるならば、自身で製作した方が良いと考え、使用者ごとの対応となっているというのが実情である。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、簡単な構成でありながら、操作性が良く、使い勝手の良い可撓管保護具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コイルスプリングと持ち手を備え、前記コイルスプリングは、内径が可撓管の外径と同径または外径よりも大きい被覆コイルと、内径が可撓管の外径よりも小さい小径ループと、を有し、前記小径ループは、前記コイルスプリングの少なくとも一方の端部近傍に配設されて可撓管を押圧しており、前記持ち手は、前記小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部を前記一方の端部近傍に配設される前記小径ループに対して1つのみ有し、かつ、前記コイルスプリングの螺旋の向きに反して前記径方向延長部を周方向に移動させることにより、前記小径ループを拡径させるように機能するものであり、前記被覆コイルと前記小径ループは、連続した線状体から成ることを特徴とする可撓管保護具により、前述の課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
前述した特徴を有する本発明によれば、簡単な構成でありながら、操作性が良く、使い勝手の良い可撓管保護具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る可撓管保護具が管継手及び可撓管と共に組み付けられた全体構成を示す説明図であり、
図1(a)が正面図、
図1(b)が右側面図、
図1(c)が
図1(b)におけるA-A線断面図、
図1(d)が
図1(c)におけるB部分拡大図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る可撓管保護具の斜視図であり、
図2(a)が可撓管保護具のみを示しており、
図2(b)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態を示している。
【
図3】本発明の実施形態に係る可撓管保護具を可撓管に取付け/取り外しする際の操作態様を説明する図であり、
図3(a)が通常の状態を示しており、
図3(b)が小径ループを拡径させている状態を示している。
【
図4】本発明の実施形態に係る可撓管保護具を可撓管の中間位置とする場合の使用態様を説明する図であり、
図4(a)が正面図、
図4(b)が断面図、
図4(c)が斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る可撓管保護具を伸長させて使用する場合の使用態様を説明する図であり、
図5(a)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の正面図、
図5(b)が可撓管保護具のみの正面図、
図5(c)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の斜視図、
図5(d)が参考としての標準状態での可撓管保護具のみの正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る可撓管保護具を圧縮させて使用する場合の使用態様を説明する図であり、
図6(a)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の正面図、
図6(b)が可撓管保護具のみの正面図、
図6(c)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の斜視図、
図6(d)が参考としての標準状態での可撓管保護具のみの正面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る可撓管保護具を、専用の管継手と共に使用する場合の使用態様を説明する図であり、
図7(a)が上面図、
図7(b)が正面図、
図7(c)が斜視図、
図7(d)が
図7(b)を断面図化した一部拡大図である。
【
図8】本発明の別の実施形態(第二実施形態)に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図8(a)が上面図、
図8(b)が正面図、
図8(c)が斜視図である。
【
図9】本発明の別の実施形態(第三実施形態)に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図9(a)が上面図、
図9(b)が正面図、
図9(c)が斜視図、
図9(d)が右側面図である。
【
図10】本発明の別の実施形態(第四実施形態)に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図10(a)が上面図、
図10(b)が正面図、
図10(c)が斜視図、
図10(d)が
図10(b)を断面図化した一部拡大図である。
【
図11】
参考実施形態に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図11(a)が正面図、
図11(b)が右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る可撓管保護具が保護対象とする可撓管は、少なくとも1箇所を曲げて使用し得る可撓性を有する軟質のゴム製又は合成樹脂製のホースであり、小麦、大豆、調味料などの食品粉粒体又は粉体や液体、その他の分野の流体を輸送するものであって、管継手を介して供給管等に接続される。
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明するが、以下の図面は説明を目的に作成されたもので、分かりやすくするため、説明に不要な部材を意図的に図示していない場合がある。また、説明のため部材を意図的に大きくまたは小さく図示している場合があり、正確な縮尺を示す図面ではない。
<第一実施形態>
(可撓管保護具の具体的構成)
図1は、本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具が管継手及び可撓管と共に組み付けられた全体構成を示す説明図であり、
図1(a)が正面図、
図1(b)が右側面図、
図1(c)が
図1(b)におけるA-A線断面図、
図1(d)が
図1(c)におけるB部分拡大図である。
図2は、本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具の斜視図であり、
図2(a)が可撓管保護具のみを示しており、
図2(b)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態を示している。
本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具は、
図1(a)~
図1(d)及び
図2(a)~
図2(b)に示すように、コイルスプリング1と持ち手2を備え、コイルスプリング1は、内径が可撓管3の外径と略同径の被覆コイル11と、内径が可撓管3の外径よりも小さい小径ループ12と、を有し、小径ループ12は、コイルスプリング1の両端に配設されており、持ち手2は、小径ループ12から屈曲して径方向に延長する径方向延長部21と、これに連接する長手方向延長部22と、さらにこれに連接する径方向戻り部23を有している。被覆コイル11、小径ループ12及び(径方向延長部21、長手方向延長部22、径方向戻り部23から成る)持ち手2は、連続した線状体から構成されている。
小径ループ12は、常態において可撓管3を押圧している一方で、コイルスプリング1の螺旋の向きに反して持ち手2の径方向延長部21が周方向に移動させられた場合には、拡径されて、可撓管3の押圧が解除される。
【0011】
図1(c)と
図1(d)によって、明確に示されているように、コイルスプリング1の中間の大部分を成す被覆コイル11の内径は、可撓管3の外径と同程度であるのに対して、コイルスプリング1の両端に位置する小径ループ12の内径は、可撓管3を押圧保持するため、可撓管3の外径よりも小さいものとされている。なお、被覆コイル11の内径は、可撓管3の外径よりも若干大きくされていてもよい。また、
図1(d)に示されるように、径方向戻り部23の先端は、操作者の手を傷つけることがないように、保護部材24で被覆されている。図示においては、キャップ状の別部材で覆われている態様が示されているが、ディップなどの塗布の態様も、保護部材で被覆される態様の範疇に含まれる。また、端部のエッジを研磨処理することで安全上の問題がないのであれば、保護部材を特に設けない態様とすることも可能である。
【0012】
第一実施形態の可撓管保護具は、先述したように、コイルスプリング1から持ち手2まで連続した線状体から構成されている。加工の容易さという観点からのことであるが、別の要求仕様に応じて、持ち手部分は溶接等により接続されるようにしてもよい。このことについては、後記する。線状体としてのコイルスプリング1は、金属製、合成樹脂製を採用することができ、具体的材料として、金属製の場合は、鋼線をコイル状に成形加工し、且つ亜鉛メッキやニッケルメッキなど施した鋼線、ステンレス鋼線などであり、ばね用鋼線が適している。合成樹脂製の場合は、ポリプロピレン製、ポリアセタール製、ナイロン、塩化ビニルなどでこれをコイル状に成形加工したものであるが、飽くまで、例示するものであって、コイルスプリング1が可撓管の折れや潰れを防止するという所期の機能を発揮する限り、適宜の材料を採用し得る。
【0013】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、小径ループ12は、コイルスプリング1の両端に位置している。しかし、状況によっては、コイルスプリング1の一端にのみ小径ループ12が配置され、他端は配置しない変形例とすることも可能である。この状況としては、例えば、曲げの原因が移動流体の重量にのみ起因し、特に、曲げ配管とすることが要求されていない場合など、可撓管3にかかる応力が小さい場合である。管継手4の反対側にのみ小径ループ12を設けるようにしても、コイルスプリング1を長手方向に圧縮させれば、その他端は、管継手4に突き当る格好となるため、位置ズレが生じることもない。また、位置ズレの心配が然程にないのであれば、管継手4側にのみ小径ループ12を設けるようにしても良い。一方、配管される設備の状況に応じて、大きな曲率での曲げ配管が要求される場合には、当然ながら、小径ループ12をコイルスプリング1の両端に配置して、しっかりと位置を固定することが必要となる。
【0014】
本発明の構成要素ではないので、詳細な説明は割愛するが、第一実施形態と共に示されている管継手4についても簡単に説明しておく。
図1(a)~
図1(c)及び
図2(b)に示される管継手4は、ニップルと径方向へ変形可能なスリーブ(何れも不図示)の間に、可撓管3を差し込み、スリーブの外側に図面において上下に複数の分割ホルダを被せ、分割ホルダ同士を締め付け部材で締め付けて径方向へ互いに接近移動させて円筒状に連結させて管接続を行うものであって、分割ホルダ式の管継手ということができる。
もっとも、本発明は可撓管保護具であるから、これと共に用いられる管継手は分割ホルダ式管継手に限られることなく、任意のものとすることができる。例えば、管体を差し込むだけで接続できるワンタッチ式管継手や、スパナやレンチ等の締め付け工具で締め付けを行う袋ナット式の管継手と共に用いることも可能である。ただし、既設の配管設備に本発明の可撓管保護具を後付けで設置するのであれば、可撓管を抜いて、再度、差し込むことが可能な管継手の構造が必要とはなる。
【0015】
(可撓管保護具の取り付け方法)
既設配管に本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具を取り付ける際の取り付け方法について説明する。
まず、管継手4による可撓管3の接続を必要な手順に従って解除し、可撓管3を管継手4から取り外す。
次に、本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具の小径ループ12の一方をスプリング螺旋向きに反し持ち手2を移動する操作(以下、単に「操作」ということや「拡径操作」ということがある。)により拡径させつつ、可撓管3の端部をコイルスプリング1に差し入れ、拡径状態を維持させたままコイルスプリング1を適正箇所まで移動させる。移動が進行して、他方の小径ループ12が可撓管3に差し掛かる際には、他方の小径ループ12も同様の操作により拡径させる。
最後に、管継手4を再度接続させることのできる可撓管3の位置までコイルスプリング1が移動したならば、拡径操作を終了してばね弾性力による復元により小径ループ12が可撓管3を押圧するようにして、コイルスプリング1が適正位置に保持されるようにする。その後、管継手4を必要な手順に従って、再度取り付ける。
【0016】
図3は、本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具を可撓管に取付け/取り外しする際の操作態様を説明する図であり、
図3(a)が通常の状態を示しており、
図3(b)が小径ループ12を拡径させている状態を示している。
図3(a)から
図3(b)へ移行する過程での操作態様として、親指以外の4つの指で被覆コイル11を支えつつ、親指の腹で持ち手2を押すようにして、小径ループ12を拡径させる様子が描かれている。しかし、この操作態様は、可撓管3のサイズやばね弾性力の大きさに応じて、適宜別の操作態様が採用される。例えば、大きなサイズの可撓管3であれば、被覆コイル11の全体を片手で持ち、もう一方の手で、持ち手2をしっかりと把持して拡径操作をすることになる。また、両側の持ち手2を両手の指で同時に拡径操作するようにしてもよい。
【0017】
先述した管継手4と対向する側の反対側にのみ小径ループ12を設ける変形例であれば(なお、この態様は、
図3とは異なるものとなり、図示はしていない。)、可撓管3の端部をコイルスプリング1に差し入れる際に被覆コイル11を片手で持ちながら拡径操作をし、拡径状態を維持させたまま、両端に小径ループ12が配置される通常の可撓管保護具よりは、短い移動距離となる位置まで移動させ、拡径操作を終了する。この時点では、コイルスプリング1の他端まで可撓管3は入りきっていない。その後、コイルスプリング1の他端をコイルスプリング1が圧縮されるような位置まで押し込み、その状態を保ったままで、必要な手順に従って、管継手4を取付ける。コイルスプリング1の他端は管継手4の分割ホルダに突き当る格好となる。対抗すべき曲げ応力が小さいと想定される場合であれば、これで十分である。
【0018】
従前は、局所での曲げ配管、ホースの着脱時の取り回し、装置の稼働による振動、流体温度によるホースの軟化などによって、管継手との接続部付近でホースの折れや潰れが発生することがあったのであるが、第一実施形態の可撓管保護具が取り付けられた配管は、管継手4の接続部分付近での可撓管3の折れや潰れを十分に防止できる。従前でも、市販のスプリングを用いての対応がされることはあったが、スプリングを一定の位置に固定することができないため、装置が稼働する際の振動などで、スプリングの位置が変ってしまい、十分な折れや潰れ防止効果が得られなかったが、第一実施形態の可撓管保護具が取り付けられた配管は、配管の取り回しや装置稼働による振動などでも、被覆コイル11の位置が変わらず、管継手4の接続部分付近での折れ・潰れ防止効果を十分に維持することが可能である。また、市販のスプリングでの対応を行う際には、スプリング径の選定作業やスプリングを途中で切断する作業が必要となり、切断したスプリングの端部で手を切るなどの危険がある等、作業性が悪かったが、第一実施形態は可撓管3のサイズ等に応じた専用品が用意されているため、作業性は良好であり、また、端部となる持ち手2も、作業者の手と触れるに際して十分に配慮した仕様とされているため、作業時の安全も確保されている。
【0019】
(可撓管保護具の別の使用態様1)
可撓管3の位置が完全に固定されている管継手4の接続部分付近は、折れや潰れが最も発生し易い箇所ではある。しかし、壁や床との接近度合いや狭所に配置される場合等の配管設備が設置される場所のスペース的な要因によっては、接続部分付近以外の箇所で、折れや潰れが発生する原因が生じる場合もある。例えば、周囲環境によって、接続部分から離れた中間位置で、可撓管3を曲げて配管しなければならない状況が余儀なくされることもある。
図4は、本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具を可撓管の中間位置とする場合の使用態様を説明する図であり、
図4(a)が正面図、
図4(b)が断面図、
図4(c)が斜視図である。
【0020】
図4(b)に示されるように、コイルスプリング1の中間の大部分を成す被覆コイル11の内径は、可撓管3の外径と同程度であるのに対して、コイルスプリング1の両端に位置する小径ループ12の内径は、可撓管3を押圧保持するため、可撓管3の外径よりも小さいものとされている。この点は、コイルスプリング1が管継手4の接続部分付近に設置される場合と何ら変わるものではない。ただし、接続部付近に設置する場合の変形例として採用することが可能であったコイルスプリング1の一端にのみ小径ループ12が配置される変形例を採用することはできない。何の支えも無いため、振動などに対抗して、コイルスプリング1の両端でしっかりと適正位置を保つ必要があるからである。
【0021】
(可撓管保護具の別の使用態様2)
スペース的な要因によっては、別の要求仕様が生じることもある。例えば、曲率は小さくて構わないのであるが、広い範囲に亘ってホースを緩やかに曲げる必要のある場合がある。このような場合には、コイルスプリング1を伸長させて使用するのが有効である。
【0022】
図5は、本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具を伸長させて使用する場合の使用態様を説明する図であり、
図5(a)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の正面図、
図5(b)が可撓管保護具のみの正面図、
図5(c)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の斜視図、
図5(d)が参考としての標準状態での可撓管保護具のみの正面図である。
【0023】
図5(b)と
図5(d)を比較すると良く分かるように、使用態様2では、コイルスプリング1の両端に位置する小径ループ12が、標準の使用態様より、大きく離れている。勿論、コイルスプリング1のサイズが異なることによるのではなく、コイルスプリング1を伸長させているためである。この状態は、次に説明するように、可撓管保護具を取り付ける際の取り付け手法によって創出されるものである。
すなわち、可撓管保護具の小径ループ12の一方を操作により拡径させつつ、可撓管3の端部をコイルスプリング1に差し入れ、拡径状態を維持させたままコイルスプリング1を適正箇所まで移動させる。移動が進行して、他方の小径ループ12が可撓管3に差し掛かる際には、他方の小径ループ12も操作により拡径させる。両端の小径ループ12が拡径されている状態を保ちつつ、さらに、小径ループ12の一方の移動を継続してコイルスプリング1を必要な長さまで伸長させる。コイルスプリング1が適正な位置において必要な長さを有して配置されたならば、拡径操作を終了する。
【0024】
このようにして、曲げが緩やかな状態で可撓管3が広い範囲で可撓管保護具により覆われることになる。可撓管保護具が主眼としているのは、曲げや潰れに対抗することであるが、可撓管3の外部との干渉を防ぐ機能も、可撓管保護具は奏するため、広範囲で可撓管3が覆われることは有効である。
【0025】
(可撓管保護具の別の使用態様3)
先述した使用態様2とは、逆に、大きな曲率での使用を余儀なくされることもある。狭所において曲げ許容範囲を超える強引な曲げが必要な場面である。このような場合には、コイルスプリング1を圧縮させて使用するのが有効である。
【0026】
図6は、本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具を圧縮させて使用する場合の使用態様を説明する図であり、
図6(a)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の正面図、
図6(b)が可撓管保護具のみの正面図、
図6(c)が管継手及び可撓管と共に組み付けられた状態の斜視図、
図6(d)が参考としての標準状態での可撓管保護具のみの正面図である。
【0027】
図6(b)と
図6(d)を比較すると良く分かるように、使用態様3では、コイルスプリング1の両端に位置する小径ループ12が、標準の使用態様よりも接近している。勿論、コイルスプリング1のサイズが異なることによるのではなく、コイルスプリング1を圧縮させているためである。この状態は、次に説明するように、可撓管保護具を取り付ける際の取り付け手法によって創出されるものである。
すなわち、可撓管保護具の小径ループ12の一方を操作により拡径させつつ、可撓管3の端部をコイルスプリング1に差し入れ、拡径状態を維持させたまま、通常の使用態様よりは、短い移動距離となる位置まで移動させ、拡径操作を終了する。この時点では、コイルスプリング1の他端まで可撓管3は入りきっていない。その後、他方の小径ループ12も操作により拡径させ、両端の小径ループ12が拡径されている状態を保ちつつ、コイルスプリング1の他端をコイルスプリング1が圧縮されるような位置まで押し込み、コイルスプリング1が適正な位置において必要な長さに圧縮されて配置されたならば、拡径操作を終了する。
【0028】
曲げがきつい状態であっても、スプリングが密集していれば、強引に曲げても外径変化を抑えることができる。また、硬度のあるホースの曲げでの折れ防止にも有効である。このように、狭い箇所での曲げ許容範囲を超える強引な曲げが必要な場面や、硬度のあるホースを曲げる必要のある場面で、折れ潰れなく配管出来るメリットは大きいものである。
【0029】
(可撓管保護具と共に用いるのに適した管継手の構成)
本発明の第一実施形態に係る可撓管保護具と共に用いるのが有効な管継手につき、説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る可撓管保護具を、専用の管継手と共に使用する場合の使用態様を説明する図であり、
図7(a)が上面図、
図7(b)が正面図、
図7(c)が斜視図、
図7(d)が
図7(b)を断面図化した一部拡大図である。なお、
図7(d)の視点は、
図1(d)において説明した視点と同様である。
管継手4’は、第一実施形態の可撓管保護具と共に用いられることが想定された専用品であって、上側の分割ホルダに小孔が穿設されたホルダ延長部41’が設けられている。ホルダ延長部41’は、管継手4’と一体的に製造することも可能であるし、後加工で板材を溶接等して一体化するようにして製造することも可能である。
組み付け方としては、可撓管3に可撓管保護具を差し込んでから、ホルダ延長部41’の裏側から、可撓管保護具の持ち手2を小孔に通し、管継手4’を組み付けできる。小孔に通し易くするため、可撓管保護具の持ち手2の一方は、径方向延長部21と長手方向延長部22のみとしており、径方向戻り部23を省いた構成の変形例とされている。
【0030】
第一実施形態の可撓管保護具が適正位置に保持されるための作用機序は、小径ループ12が可撓管3を押圧することによるものであるが、使用状況によって押圧保持力が不足するような場合に、ホルダ延長部41’の小孔が可撓管保護具のズレ防止に寄与することが期待される。特に、コイルスプリング1を伸長させて使用する場合に有効である。その際、管継手4’と逆側に位置する小径ループ12については、バネによる押圧保持力を高めるため、より小径とするように構成することが有効である。
なお、ホルダ延長部41’の小孔については、ホルダ延長部41’の側方から持ち手2を通せるような切り欠きとしても良い。その際には、ズレ防止の機能を十分に果たせるように切り欠きに向きをつけるようにする。ホルダ延長部41’の裏側からでなく、側方から、持ち手2を通すことが可能なため、径方向戻り部23を省いた構成とせずに済む。
【0031】
本発明の別の実施形態である第二実施形態~第五実施形態について、説明する。
<第二実施形態>
図8は、本発明の第二実施形態に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図8(a)が上面図、
図8(b)が正面図、
図8(c)が斜視図である。
コイルスプリングと持ち手を備え、コイルスプリングが被覆コイルと小径ループとを有し、小径ループがコイルスプリングの両端に配設されており、持ち手2Aが小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部21Aを有している点は、第一実施形態と同じである。第一実施形態と異なる点は、径方向延長部21Aに連接する長手方向延長部22Aがコイルスプリング長手方向の外向きに延びていることである。長手方向延長部22Aに対しては、第一実施形態と同様に、これに連接する径方向戻り部23Aが連接されている。被覆コイル、小径ループ及び持ち手2Aが連続した線状体から構成されている点も第一実施形態と同様である。
使用態様1として先述した、接続部分から離れた中間位置に可撓管保護具を配置する状況であれば、必ずしも持ち手を長手方向の内向きとする必要はない。コイル径や全長サイズが小さい場合であれば、持ち手が長手方向の外側を向いていた方が、操作性に優れることもある。第二実施形態は、このような場面で有効である。ただし、径方向戻り部23Aの先端が、作業者の手に触れる可能性が高まるので、端部のエッジを研磨処理する等、安全面に十分に配慮する必要がある。
【0032】
<第三実施形態>
図9は、本発明の第三実施形態に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図9(a)が上面図、
図9(b)が正面図、
図9(c)が斜視図、
図9(d)が右側面図である。
コイルスプリングと持ち手を備え、コイルスプリングが被覆コイルと小径ループとを有し、小径ループがコイルスプリングの両端に配設されており、持ち手2Bが小径ループから屈曲して径方向に延長されている点は、第一実施形態や第二実施形態と同じである。ただし、小径ループから屈曲して延びる持ち手2Bは、円形状であって、該円形状の全体が径方向に延びる態様とされている。このことから、「小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部」というものは、必ずしも、直線形状には限定されないことが理解できよう。そして、この形状は、円形状でなくとも、例えば、楕円形状など、他の形状であってもよい。
第三実施形態は、持ち手2Bの先端が、作業者の手に触れる可能性が殆どないので、安全面で有利である。
【0033】
<第四実施形態>
図10は、本発明の第四実施形態に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図10(a)が上面図、
図10(b)が正面図、
図10(c)が斜視図、
図10(d)が
図10(b)を断面図化した一部拡大図である。
コイルスプリングと持ち手2Cを備え、コイルスプリングが被覆コイルと小径ループ12Cとを有し、持ち手2Cが小径ループ12Cから屈曲して径方向に延長する径方向延長部21Cと、これに連接する長手方向延長部22Cと、さらにこれに連接する径方向戻り部23Cを有している点は、第一実施形態と同じである。第一実施形態と異なる点は、小径ループ12Cが配設される位置である。すなわち、第一実施形態では、小径ループがコイルスプリングの両端に配設されているのに対して、第四実施形態では、小径ループ12Cがコイルスプリングの両端からみて、長手方向のやや内側の位置(図示では、コイル2巻き分内側に入った位置)に配設されている。製造方法として、持ち手2Cは、後加工で溶接等により、小径ループ12Cに取り付ければよい。
第四実施形態の構成によれば、小径ループ12Cによる押圧保持に加えて、その外側にあるコイルと管継手との接触による押圧力も利用できるため、保持する力を強めることができるという効果がある。
【0034】
<
参考実施形態>
図11は、
参考実施形態に係る可撓管保護具を示す説明図であり、
図11(a)が正面図、
図11(b)が右側面図である。
参考実施形態の特徴的構成は、持ち手2Dがコイルスプリングの両端にそれぞれ二つあることである。一つは、小径リングから延長されるように構成されており、もう一つは、小径リングの長手方向の内側に位置する被覆コイルに溶接等により取り付けられている。
参考実施形態の構成は、比較的小さなサイズの可撓管を保護する、小さいサイズの可撓管保護具に適用するのが好適である。二つの持ち手2Dを挟むようにすることによって、片手で、簡単に操作することが可能となる。
【0035】
<付記1>
本発明である可撓管保護具の多様な組み合わせにつき、技術的思想として纏めた形で記しておく。
(1)コイルスプリングと持ち手を備え、前記コイルスプリングは、内径が可撓管の外径と同径または外径よりも大きい被覆コイルと、内径が可撓管の外径よりも小さい小径ループと、を有し、前記小径ループは、前記コイルスプリングの少なくとも一方の端部近傍に配設されて可撓管を押圧しており、前記持ち手は、前記小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部を有し、かつ、前記コイルスプリングの螺旋の向きに反して前記径方向延長部を周方向に移動させることにより、前記小径ループを拡径させるように機能するものであり、前記被覆コイルと前記小径ループは、連続した線状体から成ることを特徴とする可撓管保護具。
(2)上記(1)に記載の可撓管保護具であって、前記小径ループは、前記コイルスプリングの両端の端部近傍に配設されることを特徴とする可撓管保護具。
(3)上記(1)又は(2)に記載の可撓管保護具であって、前記小径ループと前記持ち手は、何れも前記コイルスプリングの端部に配設されるものであり、前記被覆コイルと前記小径ループと前記持ち手は、連続した線状体から成ることを特徴とする可撓管保護具。
(4)上記(1)ないし(3)の何れか一に記載の可撓管保護具であって、前記小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部は、径方向に直線的に延びる形状であることを特徴とする可撓管保護具。
(5)上記(1)ないし(3)の何れか一に記載の可撓管保護具であって、前記小径ループから屈曲して径方向に延長する径方向延長部は、非直線状の形状であって、当該形状の全体が径方向に延びる形状であることを特徴とする可撓管保護具。
(6)上記(1)ないし(5)の何れか一に記載の可撓管保護具であって、前記持ち手は、その先端部が保護部材で被覆されていることを特徴とする可撓管保護具。
【0036】
<付記2>
本明細書には、これまで説明した可撓管保護具に係る発明と共に、当該可撓管保護具と共に用いるのに好適な管継手の態様も開示されているので、参考まで、これら態様を技術的思想として纏めた形で記しておく。
(1)可撓管を覆う被覆コイルと可撓管を押圧保持する小径ループと小径ループから屈曲して径方向に延長する持ち手を有する可撓管保護具と共に用いられる管継手であって、
前記管継手は、ニップルと径方向へ変形可能なスリーブの間に、可撓管を差し込み、押圧部材を締め付け部材で締め付けて径方向へ互いに接近移動させて円筒状に連結させて管接続を行うものであり、
前記分割ホルダの少なくとも一方には、前記持ち手に係り合う係合部を備えたホルダ延長部が設けられていることを特徴とする管継手。
(2)上記(1)に記載の管継手であって、前記係合部は、前記ホルダ延長部の裏側から前記持ち手を通すことが可能な小孔であることを特徴とする管継手。
(3)上記(1)に記載の管継手であって、前記係合部は、前記ホルダ延長部の側方から前記持ち手を通すことが可能な切り欠きであることを特徴とする管継手。
(4)上記(1)ないし(3)の何れか一に記載の管継手であって、前記ホルダ延長部は、前記管継手と一体的に製造されていることを特徴とする管継手。
(5)上記(1)ないし(3)の何れか一に記載の管継手であって、前記ホルダ延長部は、後加工によって、前記管継手と一体化されるようにして製造されていることを特徴とする管継手。
【0037】
以上、本発明の実施形態に係る可撓管保護具について、図面を参照して詳述し、その構造について説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、コイルスプリングの一方の端部近傍や両端の端部近傍に配置される小径ループについて、さらに、中間部にも配置して、三箇所で可撓管を押圧するようにして、保持力を高めるようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 コイルスプリング
11 被覆コイル
12 小径ループ
2 持ち手
21 径方向延長部
22 長手方向延長部
23 径方向戻り部
24 保護部材
3 可撓管
4 管継手