(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】括り罠、括り罠用の踏み板片、及び、括り罠の組立方法
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
A01M23/34
(21)【出願番号】P 2023171606
(22)【出願日】2023-10-02
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】523372824
【氏名又は名称】日高 剛生
(74)【代理人】
【識別番号】100221198
【氏名又は名称】佐藤 寿
(72)【発明者】
【氏名】日高 剛生
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-300842(JP,A)
【文献】特開2001-112399(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220691(JP,U)
【文献】特開2017-169554(JP,A)
【文献】実開昭53-021974(JP,U)
【文献】特開2022-023270(JP,A)
【文献】特開2008-173016(JP,A)
【文献】特開2014-233221(JP,A)
【文献】特開2022-023630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0338487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒部材と、
前記筒部材に取り付けられると共に、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記筒部材の孔に重ねられる踏み板部、及び、前記筒部材の外側で前記踏み板部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する複数の踏み板片と、
前記筒部材の外周面において前記踏み板片の前記保持部の外周にかけられて前記踏み板片を前記筒部材の外周に締め付ける環状部を有するワイヤロープと、
を備える括り罠。
【請求項2】
前記踏み板片の前記踏み板部は、前記筒部材の中央側に向けられる先端に向けて平面視の幅が狭くなるように形成されている、請求項1に記載の括り罠。
【請求項3】
前記保持部には、前記ワイヤロープの抜け止めの段差部、凹部、又は、凸部が形成されている、請求項1又は2に記載の括り罠。
【請求項4】
前記踏み板片には前記筒部材に連結するための第1連結部が設けられると共に、前記筒部材には前記踏み板片に連結するための第2連結部が設けられている、請求項1又は2に記載の括り罠。
【請求項5】
請求項1に記載の括り罠の組立方法であって、
前記複数の踏み板片を、前記保持部が上向きで、前記筒部材の外側に位置するように配置し、
前記踏み板片の前記踏み板部上に前記筒部材を配置し、
前記筒部材の外周から前記踏み板片の前記保持部を前記ワイヤロープで締め付ける、括り罠の組立方法。
【請求項6】
括り罠用の筒部材に取り付けられる踏み板片であって、
前記筒部材に取り付けられた状態で、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記筒部材の孔に重ねられる踏み板部、及び、前記筒部材の外側で前記踏み板部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する括り罠用の踏み板片。
【請求項7】
筒部材と、
前記筒部材の孔よりも小さな外形を有する踏み板と、
前記筒部材に取り付けられると共に、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記踏み板を支持する支持部、及び、前記筒部材の外側で前記支持部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する複数の支持片と、
前記筒部材の外周に前記支持片の前記保持部の外周にかけられ前記支持片を前記筒部材の外周に締め付ける環状部を有するワイヤロープと、
を備える括り罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、害獣を捕獲するための括り罠、括り罠用の踏み板片、及び、括り罠の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、害獣を捕獲するために用いられる括り罠として、下記特許文献1に開示されるような害獣捕獲具が一般的に用いられる。特許文献1の害獣捕獲具では、周縁に側壁を立ち上げた筒基盤と、前記筒基盤の側壁に係合固定されるワイヤ保持体と、前記ワイヤ保持体の底部を成す踏板と、踏板の側壁に両端部をそれぞれ枢支し左右それぞれを起立付勢した半円弧状の左右ワイヤ保持体と、左右ワイヤ保持体の倒伏状態で左右ワイヤ保持体の半円弧外周面を囲繞した捕獲ワイヤのループ部と、左右ワイヤ保持体を囲繞したワイヤのループ部基部を引っ張ってループを縮径付勢するワイヤ縮径付勢機構とにより構成される。
【0003】
このように、上述した一般的な括り罠では、筒基盤内において踏板を上下動することによって捕獲ワイヤを左右ワイヤ保持体から外して害獣の脚部を緊締することで、害獣を捕獲することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の括り罠では踏板が上下動する距離が短くてよい反面、踏板の下に異物が挟まることで動作しなくなることがある。また、筒基盤の内周面と踏板の外周面との隙間が狭く構成されることから、このような構造を有する害獣捕獲具を冬期に使用すると、凍結によって筒基盤内で踏板が固定され動作しなくなってしまう。
【0006】
また、この種の括り罠では、上述した通り踏み板を動作させるために多くの部材を有していることから、高価になってしまう。
【0007】
そこで、本開示では、簡易な構成で確実に動作させることができる括り罠、括り罠用の踏み板片、及び、括り罠の組立方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、筒部材と、前記筒部材に取り付けられると共に、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記筒部材の孔に重ねられる踏み板部、及び、前記筒部材の外側で前記踏み板部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する複数の踏み板片と、前記筒部材の外周面において前記踏み板片の前記保持部の外周にかけられて前記踏み板片を前記筒部材の外周に締め付ける環状部を有するワイヤロープと、備える括り罠が提供される。
【0009】
上述した括り罠の組立方法であって、複数の踏み板片を、前記保持部が上向きで、前記筒部材の外側に位置するように配置し、前記踏み板片の前記踏み板部上に前記筒部材を配置し、
前記筒部材の外周から前記踏み板片の前記保持部を前記ワイヤロープで締め付ける、括り罠の組立方法としてもよい。
【0010】
括り罠用の筒部材に取り付けられる踏み板片であって、前記筒部材に取り付けられた状態で、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記筒部材の孔に重ねられる踏み板部、及び、前記筒部材の外側で前記踏み板部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する括り罠用の踏み板片としてもよい。
【0011】
筒部材と、前記筒部材の孔よりも小さな外形を有する踏み板と、前記筒部材に取り付けられると共に、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記踏み板を支持する支持部、及び、前記筒部材の外側で前記支持部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する複数の支持片と、前記筒部材の外周に前記支持片の前記保持部の外周にかけられ前記支持片を前記筒部材の外周に締め付ける環状部を有するワイヤロープと、
を備える括り罠としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本技術を適用した括り罠の一実施形態を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態の括り罠における踏み板片の詳細な構成を示す斜視図。
【
図3】括り罠の組立方法における工程を示す斜視図。
【
図4】
図3に続く括り罠の組立方法における工程を示す斜視図。
【
図8】筒部材の変形例とこれを用いた括り罠を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、括り罠、括り罠用の踏み板片、及び、括り罠の組立方法の実施形態について説明する。以下では、括り罠及び踏み板片の主要な構成部分を中心に説明するが、括り罠及び踏み板片には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0014】
≪第1実施形態≫
<括り罠の概要構成>
まず、第1実施形態における括り罠の構成の概要について説明する。
図1は、本技術を適用した括り罠の一実施形態を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態の括り罠における踏み板片の詳細な構成を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、括り罠1は、筒部材10と、複数の踏み板片20と、ワイヤ締付機構30とを主体に構成される。筒部材10は、例えばプラスチックや金属(鉄やアルミニウム)により外周直径D1の筒状に構成される。一例として、筒部材10は、配管用の安価なポリ塩化ビニル等の断面円形のパイプを所定の高さ(換言すれば、長さ方向において幅)に分割することで安価かつ簡易に製造することができる。このようなパイプは、上述したような従来型の括り罠にも広く用いられており、既に利用しているパイプを筒部材10として利用することができる。なお、筒部材10は、断面円形以外にも四角形や六角形といった他の多角形のパイプ等を用いて形成してもよい。
【0016】
筒部材10には、
図1に示すようにその一方の端部11に踏み板片20が重ねて取り付けられることで、踏み板片20の一部が外周面12に沿うように配置される。また、筒部材10には、その他方の端部13側において、後述するように踏み板片20と連結するための連結用孔12aが設けられていてもよい。連結用孔12aは、同図に示すように、外周面12から内周面に向けて筒部材10の厚み方向に貫通する貫通孔として形成される。
【0017】
踏み板片20は、プラスチックや金属で断面L字状に構成される。踏み板片20は、プラスチックを射出成形や3Dプリント成形などにより成形してもよいし、金属板を折り曲げて成形してもよい。踏み板片20は、
図2に示すように、踏み板部21と保持部22と接続部23とを有する。踏み板部21は、筒部材10の外側から筒部材10の中央側に伸びて筒部材10における一方の端部11側の孔に重ねられる。本実施形態では、
図1に示すように、6つの踏み板片20が筒部材10に等間隔で取り付けられることで、一方の端部11側の孔を6つの踏み板部21で覆い、それらの間に等間隔の隙間が空いた構成となっている。この隙間は捕獲したい害獣の足の大きさより小さくするのが好ましい。保持部22は、筒部材10の外側で踏み板部21の筒部材10の外周側から曲がるように接続される。接続部23は、踏み板部21と保持部22との間において断面湾曲形状でこれらを接続する。
【0018】
図1に示すように、ワイヤ締付機構30は、ワイヤロープ31、スプリング32、スプリングケース33、及び、キャップ34を主要な構成として構成される。なお、ワイヤ締付機構30は、図示しないスプリング用ストッパでワイヤロープ31における任意の位置にスプリングケース33を固定することで、スプリングケース33とキャップ34との間においてスプリング32を所定の圧縮状態にすることができる。
【0019】
ワイヤロープ31は、例えば直径が4~5mm以上の金属製のワイヤが用いられる。ワイヤロープ31は、その一端側において害獣の足を締め付けるための罠として機能する環状部31aを有する。環状部31aは、ワイヤロープ31の一端部をループにして他の部分をループに通した構成とすることで拡縮可能となっている。環状部31aに図示しない縮小防止ストッパを設けて所定径以下に縮小するのを防止してもよい。環状部31aは、括り罠1の組立状態で踏み板片20の保持部22の外周に巻き付けられ締め付けることで、踏み板片20を筒部材10に固定する。この場合、環状部31aは、筒部材10の外周面12において踏み板片20の保持部22の外周にかけられることで巻き付けられ、締め付けられる。これにより、環状部31aは、踏み板片20を筒部材10の外周に締め付ける。
【0020】
ワイヤロープ31には、環状部31aに隣接して、キャップ34、スプリング32、及び、スプリングケース33が順番に挿通されている。ワイヤロープ31の他端側には、木などの定着物に固定される固定可能な構造(図示せず)を有する。なお、ワイヤロープ31の中途において、回転可能に連結する図示しないスイベルを設けてもよい。
【0021】
スプリング32は、括り罠1の組立状態においてキャップ34とスプリングケース33との間に圧縮状態で収容される。これにより、括り罠1を動作した際にキャップ34を介してワイヤロープ31の環状部31aを縮めることができる。スプリングケース33は、プラスチックや金属によりスプリング32を収容できる内面形状の筒状に構成され、図示しないワイヤロープ31の他端側においてスプリング用ストッパ(図示せず)によりワイヤロープ31における任意の位置に固定できるように構成される。
【0022】
なお、このようなワイヤ締付機構30は、上述したような従来型の括り罠にも広く用いられており、既に利用しているワイヤ締付機構30を筒部材10と合わせて利用することができる。このように、括り罠1において特に新規な構成は踏み板片20であることから、既に使用している筒部材10及びワイヤ締付機構30を用いることで、踏み板片20を用意すれば括り罠1とすることができ、括り罠1を安価に利用することができる。
【0023】
以上のような構成により、本実施形態における括り罠1では、いずれかの踏み板片20が回転することで、踏み板片20の保持部22を介して筒部材10を締め付ける状態が解除される。これにより、ワイヤロープ31は、筒部材10の一方の端部11側(
図1における上側)に移動することで、筒部材10の外周の位置から
図1における上方位置に移動し、ワイヤロープ31を縮径させるように動作させることができる。これにより、ワイヤロープ31の環状部31aで害獣の足部を締め付け捕獲することができる。
【0024】
<踏み板片の構成>
次いで、
図2を用いて、踏み板片20の構成について詳細に説明する。踏み板片20を構成する踏み板部21は、同図に示すような長さL1及び厚みT1に形成される。この長さL1は、筒部材10の外周における直径D1の半分以下の長さとなっている。これにより、筒部材10に向かい合うように取り付けられた状態の踏み板片20同士が干渉することなく動作することが可能となっている。踏み板部21は、幅W1である基端部211と、先端側に向けて幅が狭まる縮径部212と、所定の面取りをされた先端部213とを有する。基端部211が筒部材10における一方の端部11に重ねられることで踏み板片20は筒部材10に支持される。これにより、基端部211は、踏み板片20が回転する際に端部11に支えられる支点となる。
【0025】
縮径部212は、基端部211の幅W1が先端部213側に向けて(換言すれば、筒部材10の中央側に向けられる先端に向けて)平面視の幅が狭くなるように形成されている。より具体的には、縮径部212は、幅を規定する2辺のなす角度が、使用する踏み板片20の個数で360度を割った角度よりも小さくなるように構成される。例えば、本実施形態では、6つの踏み板片20を使用しているため、縮径部212の幅を規定する2辺のなす角度が60度以下となるように構成されている。
【0026】
保持部22は、踏み板部21の基端部211側から接続部23を介して折れ曲がるように接続される。本実施形態において、保持部22は、踏み板部21に対して直角に折れ曲がるように配置される。踏み板片20には筒部材10に連結するための連結用孔221が形成される。これにより、括り罠1において、踏み板片20における第1連結部である連結用孔221と、筒部材10における第2連結部である連結用孔12aとが設けられることで、これらを紐状の連結具40(
図1において破線として図示)で接続することができる。このような構成とすることで、踏み板片20がワイヤロープ31の締め付け動作により飛散するのを防止することができ、踏み板片20の紛失を防止することができる。
【0027】
また、連結用孔221は連結具40と組み合わせることで、保持部22において連結具40を外側に向けた突起として機能させることができる。これにより、ワイヤロープ31が下方に抜けるのを防止する抜け止めの段差部として連結用孔221を機能させることもできる。保持部22は、その高さH1を一例として15~20mm程度とすることができる。これは、連結用孔221の位置を考慮した場合にワイヤロープ31をかけられる十分な高さH2を設けるためである。
【0028】
<括り罠の組立方法>
上述した構成を有する括り罠1の組立方法について説明する。
図3は、括り罠の組立方法における工程を示す斜視図である。
図4は、
図3に続く括り罠の組立方法における工程を示す斜視図である。本実施形態では、組立治具100を用いて括り罠1を組み立てる方法を説明するが、組立治具100を用いずに括り罠1を組み立ててもよい。
【0029】
まず、組立治具100の構成について説明する。
図3(A)に示すように、組立治具100は、6つの治具片110を平坦な治具プレート120に組み合わせ固定した構成となっている。6つの治具片110は、組み立てることで所定の円形状を構成して、6つの踏み板片20と筒部材10とを所定の組立状態で内側に収容可能な大きさに構成されている。なお、6つの治具片110と治具プレート120とを一体的に形成してもよい。このような構成により、組立治具100は、踏み板片20を筒部材10に組み立てるための所定の相対位置に配置することができる。
【0030】
具体的には、治具片110は、外周基部111と内周突起部112とを備えて全体として円弧形状に構成される。外周基部111には、内周突起部112の両端が切り欠かれた第1内周面111aと内周突起部112に重ねられる位置の第2内周面111bとが形成されている。第1内周面111aは、内周突起部112から外周側に凹んだ形状であることにより、隣接する2つの治具片110を組み立てた状態において、踏み板片20の保持部22側を所定の位置に位置決め部130として機能する平面形状に形成される。第2内周面111bは、6つの治具片110を組み立てた状態で、筒部材10を所定の位置に保持可能な曲面形状に形成される。
【0031】
内周突起部112は、円周方向の両端が切りかかれることで、外周基部111から内周側に突起した形状となっている。これにより、内周突起部112における側面部112aと、外周基部111における第1内周面111aとにより、踏み板片20を位置決めする位置決め部130が構成される。なお、位置決め部130の幅W2は、踏み板片20を配置して位置決めできるように、踏み板部21(より具体的には基端部211)の幅W1よりも若干大きくなるように構成される。
【0032】
一方、治具片110の厚みT2は、後述するように、ワイヤロープ31の環状部31aを踏み板片20にかけることができるように、踏み板部21から連結用孔221までの高さ以下とするのが好ましい。また、内周突起部112の厚みT3は、踏み板部21の厚みT1と同一かそれ以下の厚みとなるように構成される。これにより、踏み板部21を筒部材10に接触した状態で組み立てることができる。
【0033】
このような組立治具100を用いて括り罠1を組立てる方法において、まず、
図3(A)に示すように組立治具100を用意する。次いで、
図3(B)に示すように、複数の踏み板片20を、保持部22が上向きで、筒部材10の外側に位置するように配置する。この場合、6つの位置決め部130に6つの踏み板片20をそれぞれ位置合わせし、保持部22の外周面を治具片110の第1内周面111aに接触させる。これにより、6つの保持部22の内側に筒部材10を配置することができる。この際に、6つの踏み板片20は放射状に配置される。
【0034】
次いで、
図4(A)に示すように、筒部材10を、踏み板片20の踏み板部21上であって、保持部22の内側に配置する。この場合、筒部材10における一方の端部11を下に向けて踏み板片20の踏み板部21に接触させることで、6つの踏み板片20と筒部材10とを適切に配置することができる。
【0035】
最後に、
図4(B)に示すように、筒部材10の外周から踏み板片20の保持部22をワイヤロープ31の環状部31aで締め付ける。この場合、環状部31aを踏み板片20の保持部22の外周にかけた状態で、スプリングケース33を環状部31a側に押し込んで任意の締め付け状態となったら図示しないスプリング用ストッパでワイヤロープ31に対するスプリングケース33の位置を固定する。これにより括り罠1の組立が完了する。このように、本実施形態における括り罠1の組立方法によれば、組立治具100の上に括り罠1の構成部材を重ねるだけで組み立てることができるため、括り罠1を容易に組み立てることができ、容易に設置することができる。
【0036】
<括り罠の動作>
図5は、括り罠の動作を説明する断面図である。
図6は、括り罠の動作を説明する斜視図である。それぞれの図における(A)から(C)の動作状態は同一の状態を示す。ここでは、地面に設置された括り罠1に害獣がかかって、その足部300がワイヤロープ31で締め付けられて、捕獲される際の動作を説明する。
【0037】
まず、
図5(A)及び
図6(A)に示すように、山中などの任意の地面に掘られた落とし穴の中に括り罠1を配置することで設置される。この場合、踏み板片20が上に向くように括り罠1が設置される。なお、ワイヤロープ31の他端側は図示しない固定物(例えば樹木)などに固定される。また、括り罠1が害獣に見つからないように、括り罠1の上に落ち葉などの偽装材400を被せて隠してもよい。
【0038】
次いで、括り罠1の位置に来た害獣の足部300(具体的には蹄など)が踏み板片20の踏み板部21を踏み込み下向きの力を加えることで、例えば縮径部212に下向きの力が加わる。この際に、
図5(B)及び
図6(B)に示すように、踏み板片20は、筒部材10の一方の端部11と基端部211とを支点にして回転する。これにより、ワイヤロープ31の環状部31aがかけられた踏み板片20の保持部22が水平方向に近づくように回転する。
【0039】
最後に、踏み板片20を筒部材10に固定していたワイヤロープ31の環状部31aが締まることで環状部31aが踏み板片20の保持部22の外周から外れる。よって、
図5(C)及び
図6(C)に示すように、環状部31aが縮径することで害獣の足部300を締め付けその害獣を捕獲することができる。
【0040】
<本実施形態の作用効果>
以上説明した通り、本実施形態の括り罠1は、筒部材10と、複数の踏み板片20と、環状部31aを有するワイヤロープ31とを備えた構成を有する。これにより、簡易な構成の踏み板片20を用いて、筒部材10の一方の端部11を支点にして回転させることで、踏み板片20の回転によりワイヤロープ31の環状部31aが締付けさせることができ、簡易な構成で確実に罠を動作させることができる。これにより、凍結や異物の挟み込みなどの不具合が生じても従来の構成における動作不良を防止することができる。
【0041】
また、複数の踏み板片20を用いた構成としたことで、害獣の足部300でどの踏み板片20を踏んでも環状部31aを縮径する罠を動作させることができ、踏む力が小さくても罠を動作させて害獣を確実に捕獲することができる。また、筒部材10に踏み板片20を外側から組み立てる構成としたことで、筒部材10内で踏み板片20の摺動するような構成ではないことから、踏み板片20の動作が阻害されることがなく動作を安定させることができる。
【0042】
また、上述した従来の一般的な括り罠(特許文献1参照)では、踏板の側壁に両端部をそれぞれ枢支し左右それぞれを起立付勢した半円弧状の左右ワイヤ保持体と、左右ワイヤ保持体の倒伏状態で左右ワイヤ保持体の半円弧外周面を囲繞した捕獲ワイヤのループ部と、左右ワイヤ保持体を囲繞したワイヤのループ部基部を引っ張ってループを縮径付勢するワイヤ縮径付勢機構を有する構成となっている。このような構成により、半円弧状の左右ワイヤ保持体が跳ね上がらないように、従来の括り罠は最大に開いた状態(180度)よりも大きい角度に開いてセットさせる必要がある。このため、害獣が踏板に踏み込んだ際に、半円弧状の左右ワイヤ保持体を180度位置まで押し広げるための負荷(抵抗)が生じる。この負荷は普段歩行している際の地面から受ける感覚と異なるため、害獣が罠の存在に気付くきっかけになる。これに対し、括り罠1では半円弧状の左右ワイヤ保持体を用いない構成で、ワイヤロープ31の環状部31aが最大径の状態でセットされるので、踏み板部21を踏んだ害獣が気づく前に環状部31aの縮径動作を始めることができる。これにより、ワイヤロープ31の環状部31aで害獣の足部300を確実に締め付けることができ、害獣を確実に捕獲することができる。
【0043】
≪踏み板片の変形例≫
図7は、踏み板片の変形例を示す斜視図である。踏み板片20は、同図に示すように、上述した実施形態における形状以外の形状としてもよい。例えば、踏み板片20の保持部22には、ワイヤロープ31の抜け止めの段差部、凹部、又は、凸部が形成されていてもよい。一例として、
図7(A)に示すように、保持部22に平坦部222と凸部223とを設けて段差部とした踏み板片20Aとしてもよい。これにより、ワイヤロープ31の環状部31aが凸部223で動きを規制されて保持部22から外れるのを防止することができる。また、
図7(B)に示すように、幅方向に延在する溝224を設けた凹部を有する踏み板片20Bとしてもよい。これにより、ワイヤロープ31の環状部31aがその溝224にはまった状態とすることで保持部22から外れるのを防止することができる。これらの抜け止めの構成を用いることで、括り罠1を容易に組み立てることもできる。
【0044】
また、
図7(C)に示すように、踏み板部21の長さL2を可変にした踏み板片20Cとしてもよい。この場合、上述した構成における基端部211側に相当する固定部21aに対する、先端部213側に相当する可動部21bの位置を締結機構21cにより可変にすることで踏み板部21の長さL2を変更することができる。これを用いることで、異なる直径の筒部材10にも踏み板片20Cを用いることができる。
【0045】
≪筒部材の変形例とこれを用いた括り罠≫
また、上述した実施形態における筒部材10とは異なる形状の筒部材10Aを用いることで、括り罠1Aとしてもよい。
図8は、筒部材の変形例とこれを用いた括り罠を示す斜視図である。
図8(A)に示す筒部材10Aには、踏み板片20の基端部211の幅W1よりも若干広い幅W3で任意の深さの凹部11aが一方の端部11に設けられている。これにより、
図8(B)に示すように、踏み板片20の基端部211を凹部11aに差し込むことで位置決めをすることができ、括り罠1Aを簡易に組み立てることができる。
【0046】
≪変形例≫
また、
図9に示すような括り罠1Bとしてもよい。同図は、括り罠の他の変形例を示す斜視図である。同図に示すように、上述した実施形態の踏み板片20に替えて、踏み板500と支持片200とを用いた構成である。変形例である括り罠1Bは、踏み板500と複数の支持片200とを有する点で上述した実施形態と相違する。支持片200は、踏み板500を支持する支持部201、及び、筒部材10の外側で支持部201の筒部材10Aの外周側から曲がるように接続された保持部202を有する。また、支持部201は接続部203で保持部202に接続される。
【0047】
すなわち、括り罠1Bは、筒部材10Aと、筒部材10Aの孔(内径)よりも小さな外形を有する踏み板500と、筒部材10Aに取り付けられると共に、筒部材10Aの外側から筒部材10Aの中央側に伸びて踏み板500を支持する支持部201、及び、筒部材10Aの外側で支持部201の筒部材10Aの外周側から曲がるように接続された保持部202を有する複数の支持片200と、筒部材10の外周に支持片200の保持部202の外周にかけられ支持片200を筒部材10Aの外周に締め付ける環状部31aを有するワイヤロープ31と、主に備えた構成となっている。このような構成としても、害獣の足部300により踏み板500に下向きの力が加えられることで、支持片200を回転させることができる。これによれば、踏み板500を筒部材10Aに落下させることで罠として動作させることができる。
【0048】
また、上述した括り罠1において筒部材10と踏み板片20とを別体構造とする例について説明したが、筒部材10と踏み板片20とを一体化させた構成としてもよい。すなわち、筒部材10の一方の端部11に踏み板片20を上述したような方向に回転可能に取り付けた構成としてもよい。これによれば、踏み板片20の紛失を防止することができる。
【0049】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)筒部材と、
前記筒部材に取り付けられると共に、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記筒部材の孔に重ねられる踏み板部、及び、前記筒部材の外側で前記踏み板部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する複数の踏み板片と、
前記筒部材の外周面において前記踏み板片の前記保持部の外周にかけられて前記踏み板片を前記筒部材の外周に締め付ける環状部を有するワイヤロープと、
を備える括り罠。
(2)前記踏み板片の前記踏み板部は、前記筒部材の中央側に向けられる先端に向けて平面視の幅が狭くなるように形成されている、(1)に記載の括り罠。
(3)前記保持部には、前記ワイヤロープの抜け止めの段差部、凹部、又は、凸部が形成されている、(1)又は(2)に記載の括り罠。
(4)前記踏み板片には前記筒部材に連結するための第1連結部が設けられると共に、前記筒部材には前記踏み板片に連結するための第2連結部が設けられている、(1)乃至(3)に記載の括り罠。
(5)(1)乃至(4)に記載の括り罠の組立方法であって、
前記複数の踏み板片を、前記保持部が上向きで、前記筒部材の外側に位置するように配置し、
前記踏み板片の前記踏み板部上に前記筒部材を配置し、
前記筒部材の外周から前記踏み板片の前記保持部を前記ワイヤロープで締め付ける、括り罠の組立方法。
(6)括り罠用の筒部材に取り付けられる踏み板片であって、
前記筒部材に取り付けられた状態で、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記筒部材の孔に重ねられる踏み板部、及び、前記筒部材の外側で前記踏み板部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する括り罠用の踏み板片。
(7)筒部材と、
前記筒部材の孔よりも小さな外形を有する踏み板と、
前記筒部材に取り付けられると共に、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記踏み板を支持する支持部、及び、前記筒部材の外側で前記支持部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する複数の支持片と、
前記筒部材の外周に前記支持片の前記保持部の外周にかけられ前記支持片を前記筒部材の外周に締め付ける環状部を有するワイヤロープと、
を備える括り罠。
【0050】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1、1A、1B 括り罠
10、10A 筒部材
11 一方の端部
12 外周面
12a 連結用孔
13 他方の端部
20、20A、20B、20C 踏み板片
21 踏み板部
22、202 保持部
221 連結用孔
23、203 接続部
30 ワイヤ締付機構
31 ワイヤロープ
31a 環状部
32 スプリング
33 スプリングケース
34 キャップ
40 連結具
200 支持片
201 支持部
500 踏み板
【要約】
【課題】 簡易な構成で確実に動作させることができる括り罠、括り罠用の踏み板片、及び、括り罠の組立方法を提供する。
【解決手段】 筒部材と、前記筒部材に取り付けられると共に、前記筒部材の外側から前記筒部材の中央側に伸びて前記筒部材の孔に重ねられる踏み板部、及び、前記筒部材の外側で前記踏み板部の前記筒部材の外周側から曲がるように接続された保持部を有する複数の踏み板片と、前記筒部材の外周面において前記踏み板片の前記保持部の外周にかけられて前記踏み板片を前記筒部材の外周に締め付ける環状部を有するワイヤロープと、を備える括り罠を提供する。
【選択図】
図1