(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】太陽エネルギ利用システム
(51)【国際特許分類】
H02S 40/44 20140101AFI20241227BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20241227BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20241227BHJP
F24S 20/00 20180101ALI20241227BHJP
【FI】
H02S40/44
H10K30/50
H10K30/40
F24S20/00 010
(21)【出願番号】P 2024135529
(22)【出願日】2024-08-15
【審査請求日】2024-08-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521031305
【氏名又は名称】株式会社町おこしエネルギー
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】沼田 昭二
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/186161(WO,A1)
【文献】中国実用新案第219288074(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第117500296(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114499405(CN,A)
【文献】中国実用新案第219735641(CN,U)
【文献】特開2011-222824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/50-30/57
H02S 40/44
F24S 10/00-20/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光の光エネルギを電気エネルギに変換するペロブスカイト太陽電池部と、
前記ペロブスカイト太陽電池部の下方に配置され、前記ペロブスカイト太陽電池部を通過した前記太陽光から得られる熱を集熱し、黒色アルミニウムで構成される太陽熱温水器用集熱板と、
前記ペロブスカイト太陽電池部及び前記太陽熱温水器用集熱板を収容するためのケース体と、
前記ケース体内において
、前記ペロブスカイト太陽電池部を載置する強化ガラス部と前記太陽熱温水器用集熱板の間に設けられる空気層と、
前記ケース体内において前記太陽熱温水器用集熱板と接触するように設けられ、前記太陽熱温水器用集熱板が集めた熱を交換するために流体を流すための流通路部と、
を備え、
前記流通路部は、前記太陽熱温水器用集熱板の全域に張り巡らされる流路であり、平面視で大動脈として機能して左右に渡って伸びる大配管と、大きな網目の格子を構成するように縦横に伸びる中配管と、小さな網目の格子を構成するように縦横に伸びる小配管とを有しており、
前記大配管と前記中配管と前記小配管を流れる流体は、オイルであることを特徴とする太陽エネルギ利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽エネルギ利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽エネルギを使った技術として、太陽熱温水器と太陽光発電システムとが別々に設置されている。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、数本の熱交換管及びこれらの熱交換管を接続した温水マニホールドを有する温水器本体と、前記温水器本体の周囲に套設されたフレームと、それぞれ前記フレームの両側に設けられた対称になった第1 の反射板及び第2の反射板と、それぞれ前記第1の反射板及び前記第2の反射板の背面に設けられた2つの断熱層と、それぞれ前記2つの断熱層上に設けられた2つの防護カバーと、それぞれ前記フレームの両側に設けられ、且つそれぞれ前記第1の反射板及び前記第2の反射板の底端を接続し、それぞれ前記第1の反射板及び前記第2の反射板を駆動して回転作動させる2つの回転駆動器と、前記2つの回転駆動器を電気接続し、太陽光照射方向に応じてそれぞれ前記2つの回転駆動器を制御し、前記第1の反射板及び前記第2の反射板を駆動して回転させて受光反射面角度をなすようにした上、前記太陽光をこれらの熱交換管上に反射するようにし、その内部水源はこれらの熱交換管を流れて熱交換を行い、熱水になった後に前記温水マニホールド内に集流し、前記太陽光がない場合、前記2つの回転駆動器を制御し、前記第1の反射板及び前記第2の反射板を同時に駆動して回転させ、前記温水器本体上に積層して被覆させることによって、前記温水器本体の積層防護カバーとなる太陽光追尾制御器と、を含む、相乗効果型太陽熱温水器が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、通常の太陽熱温水器の床部を太陽電池パネルを敷きつめて形成し、上部水槽部をガラス等の透明体にて形成して水槽部の水が太陽電池パネルの黒色吸熱効果により、水槽内の水の温熱化を計ると共に本来の作用である発電を行う事を特徴とした太陽電池パネル床一体給湯構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-57052号公報
【文献】特開2000-64946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1,2には、太陽熱温水器と太陽電池とを併用するような構成は開示されているが、太陽電池と太陽熱温水器とを重ねることで相乗効果を生み出すような使い方はなされていない。
【0006】
本発明の目的は、太陽電池と太陽熱温水器の相乗効果により効率良く太陽エネルギを利用することを可能とする太陽エネルギ利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽エネルギ利用システムは、太陽光の光エネルギを電気エネルギに変換するペロブスカイト太陽電池部と、前記ペロブスカイト太陽電池部の下方に配置され、前記ペロブスカイト太陽電池部を通過した前記太陽光から得られる熱を集熱し、黒色アルミニウムで構成される太陽熱温水器用集熱板と、前記ペロブスカイト太陽電池部及び前記太陽熱温水器用集熱板を収容するためのケース体と、前記ケース体内において、前記ペロブスカイト太陽電池部を載置する強化ガラス部と前記太陽熱温水器用集熱板の間に設けられる空気層と、前記ケース体内において前記太陽熱温水器用集熱板と接触するように設けられ、前記太陽熱温水器用集熱板が集めた熱を交換するために流体を流すための流通路部と、を備え、前記流通路部は、前記太陽熱温水器用集熱板の全域に張り巡らされる流路であり、平面視で大動脈として機能して左右に渡って伸びる大配管と、大きな網目の格子を構成するように縦横に伸びる中配管と、小さな網目の格子を構成するように縦横に伸びる小配管とを有しており、前記大配管と前記中配管と前記小配管を流れる流体は、オイルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、太陽電池と太陽熱温水器の相乗効果により効率良く太陽エネルギを利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システムを示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システムのペロブスカイト太陽電池部及び太陽熱温水器用集熱板を収容するケース体を示す図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システムにおいて、ペロブスカイト太陽電池部を用いる利点を説明するための図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システムにおいて、ペロブスカイト太陽電池部を用いる利点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システム10を示す図である。
図2は、本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システム10のペロブスカイト太陽電池部12及び太陽熱温水器用集熱板14を収容するケース体20を示す図である。
【0015】
図3及び
図4は、本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システム10において、ペロブスカイト太陽電池部12を用いる利点を説明するための図である。
【0016】
太陽エネルギ利用システム10は、太陽エネルギを利用して熱エネルギを取得するとともに電気エネルギを取得するシステムである。太陽エネルギ利用システム10は、太陽光の光エネルギを電気エネルギに変換するペロブスカイト太陽電池部12と、太陽光の熱を集熱する太陽熱温水器用集熱板14と、強化ガラス部16と、流通路部18と、ケース体20と、ヒートポンプ22と、保温熱水タンク24と、接続箱26と、パワーコンディショナ28と、分電盤30と、蓄電池32とを備えている。
【0017】
ペロブスカイト太陽電池部12は、基板上のペロブスカイト結晶が光を吸収して電気を発生する。ペロブスカイト太陽電池部12は、薄い膜を重ねた構造をしており、ペンキを塗るように材料を基板の上に塗って作るため、フィルムなどの低コストの基板を利用できる。基板がフィルムなので、軽くて曲げることもできるという利点がある。
【0018】
ペロブスカイト太陽電池部12は、中心には光を吸収してプラスとマイナスの電荷を生じるペロブスカイト層があり、当該ペロブスカイト層がプラスの電荷を取り出すホール輸送層と、マイナスの電荷を取り出す電子輸送層とで挟まれ、さらに、2つの電極で挟まれている。
【0019】
ペロブスカイト太陽電池部12は、曲げたり折ったりできるため、さまざまな形状に対応可能であり、製造コストがシリコン型太陽光発電の1/3~1/5程度になると見込まれており、エネルギ変換効率が高く、弱い光でも発電可能ある。
【0020】
ペロブスカイト太陽電池部12は、
図3(b)のように可視光線領域(380~780nm)の太陽光を吸収し、赤外線領域はほぼ吸収しない。従来のシリコン型太陽光パネルでは一部の赤外線領域も太陽光を吸収していたため、太陽熱として吸収することは難しいが、ペロブスカイト太陽電池部12では赤外線領域で太陽光を通過させることができる。
【0021】
ペロブスカイト太陽電池部12は、可視光線領域(380~780nm)の太陽光を効率よく吸収するため、特に曇りや雨での発電も可能となる。
図4では、東京でのペロブスカイト太陽電池と従来のシリコン型太陽光発電の1日の各天候時の発電比較を示している。
【0022】
図4(a)に示される通常の晴れの日では従来のシリコン型太陽光発電の方が発電量は多いが、
図4(b)に示される曇りや雨の日ではペロブスカイト太陽電池部12の方が、発電量が3倍ほど従来のシリコン型太陽光発電より多くなる。年間の天候比較では、晴れの日と、晴れない日(曇り及び雨の日)が半々であるので年間を通しての総発電量はそれほど変わらないとのデータがある。
【0023】
太陽熱温水器用集熱板14は、ペロブスカイト太陽電池部12の下方に配置され、ペロブスカイト太陽電池部12を通過した太陽光から得られる熱を集熱する機能を有する。
【0024】
太陽熱温水器用集熱板14は、黒色アルミニウム板で構成されることが好ましい。アルミニウムは、比熱(J/kg℃)が900で、熱伝導率(W/mK)が204で、融点(℃)が660.2で、比重(g)が2.70である。
【0025】
比較のために記載すると、鉄は、比熱(J/kg℃)が444で、熱伝導率(W/mK)が80で、融点(℃)が1538で、比重(g)が7.87であり、亜鉛は、比熱(J/kg℃)が383で、熱伝導率(W/mK)が113で、融点(℃)が419.46で、比重(g)が7.14である。
【0026】
銅は、比熱(J/kg℃)が419で、熱伝導率(W/mK)が372で、融点(℃)が1083で、比重(g)が8.93であり、マグネシウムは、比熱(J/kg℃)が1013で、熱伝導率(W/mK)が54で、融点(℃)が650で、比重(g)が1.74である。
【0027】
ステンレスは、比熱(J/kg℃)が460で、熱伝導率(W/mK)が16で、融点(℃)が1400で、比重(g)が7.70であり、水(20℃)は、比熱(J/kg℃)が4182で、熱伝導率(W/mK)が0.602で、融点(℃)が0で、比重(g)が1.0である。これらを考慮すると、アルミニウムは、熱伝導率が高く、重さも軽く、低コストであるため、集熱板としても最適であると言える。
【0028】
強化ガラス部16は、ペロブスカイト太陽電池部12を載置するためのガラスである。 強化ガラス部16は、通常のガラス(フロートガラス)に熱処理を加えて急激に冷却したガラスで、フロートガラスに比べて、約3.5倍~4倍の耐風圧強度を持つ。見た目はフロートガラスとまったく同じで、見分けがつかない。また、通常のガラスは鋭く刃物のように割れるのに対し、強化ガラス部16は粉々に砕け散るという特徴がある。
【0029】
流通路部18は、強化ガラス部16との間に設けられる空気層13を介して設置される太陽熱温水器用集熱板14と接触し、太陽熱温水器用集熱板14が集めた熱を交換するために流体を流すための流路である。空気層13を設けるのは、太陽熱温水器用集熱板14が集めた熱を強化ガラス部16に奪われないようにするためである。
【0030】
流通路部18内には、工業用のオイルが流通する。工業用のオイルは、比熱(J/kg℃)が1796で、熱伝導率(W/mK)が0.148で、膨張率(×10-3/℃)が0.70で、比重(g)が0.8~0.9である。
【0031】
水は、0℃、20℃、80℃、100℃と温度が異なることで比熱、熱伝導率、膨張率、比重が異なる。0℃の時の比熱(J/kg℃)が4217で、熱伝導率(W/mK)が0.569で、膨張率(×10-3/℃)が-0.06で、比重(g)が1.0である。20℃の時の比熱(J/kg℃)が4182で、熱伝導率(W/mK)が0.602で、膨張率(×10-3/℃)が0.65で、比重(g)が1.0である。
【0032】
80℃の時の比熱(J/kg℃)が4196で、熱伝導率(W/mK)が0.672で、膨張率(×10-3/℃)が0.65で、比重(g)が1.0である。100℃の時の比熱(J/kg℃)が4215で、熱伝導率(W/mK)が0.682で、膨張率(×10-3/℃)が0.78で、比重(g)が1.0である。このように、オイルの比熱は、水に比べて半分以下であり、より早く熱を吸収し、水に比べて重量が軽くなる。
【0033】
流通路部18は、
図2に示されるように、太陽熱温熱用集熱板14の略全域をカバーするように、平面視で大動脈として機能して左右に渡って伸びる大配管18aと、大きな網目の格子を構成するように縦横に伸びる中配管18bと、小さな網目の格子を構成するように縦横に伸びる小配管18cとを備える。
【0034】
流通路部18は、適度な強度を有する素材で構成されていればよく、例えば、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムの混合材で構成することが出来るが、もちろん、その他の素材で構成してもよい。
【0035】
ケース体20は、ペロブスカイト太陽電池部12と、空気層13と、太陽熱温水器用集熱板14と、強化ガラス部16と、流通路部18とを収納するケースである。
【0036】
ケース体20は、上部が開口されたトレー型の形状を有している。
図2(b)の断面図に示されるように、強化ガラス部16及び太陽熱温水器用集熱板14がケース体20に直接固定されている。そして、強化ガラス部16の表面(上面)にペロブスカイト太陽電池部12が載置されて取り付けられており、太陽熱温水器用集熱板14の裏面(下面)に流通路部18が接触するように取り付けられている。
【0037】
ケース体20は、適度な強度を有する材料で構成されていることが好ましく、例えば、アルミニウム剛毅、ポリエチレン樹脂の複合板で構成することができるが、もちろん、その他の材料で構成されてもよい。
【0038】
ヒートポンプ22は、冷媒を圧縮して高温及び高圧のガスに変える圧縮機と、圧縮された冷媒が熱を放出して液体に変える凝縮器と、冷媒を急激に膨張させて低温及び低圧にする膨張弁と、冷媒が周囲の熱を吸収して再びガスに戻す蒸発器とを備える。
【0039】
ヒートポンプ22では、冷媒が蒸発器で周囲の熱を吸収して液体からガスに変わる蒸発工程と、ガス状の冷媒が圧縮機で圧縮されて高温及び高圧のガスになる圧縮工程と、高温及び高圧のガスが凝縮器で熱を放出して液体に変わる凝縮工程と、液体の冷媒が膨張弁を通過して急激に膨張して低温及び低圧の状態になる膨張行程を繰り返すことで効率的に熱を移動させることが出来る。
【0040】
保温熱水タンク24は、ヒートポンプ22で温められた温水を貯留するためのタンクである。保温熱水タンク24は、ステンレス鋼(例えば、SUS444)や樹脂ライニング鋼板で構成することが出来る。これにより、腐食に強く、清潔な温水を供給できる。
【0041】
ここで、太陽熱温水器用集熱板14、流通路部18、ヒートポンプ22及び保温熱水タンク22を備えた構成を太陽熱温水器6と呼ぶ。
【0042】
接続箱26は、太陽光発電システムの重要なコンポーネントの一つで、ペロブスカイト太陽電池部12とパワーコンディショナ28を接続するための機器である。接続箱26は、ペロブスカイト太陽電池部12から発生した直流電力を集め、パワーコンディショナ28に送る。これにより、直流電力が交流電力に変換される。
【0043】
接続箱26は、複数のペロブスカイト太陽電池部12からの電力をまとめる際に、電圧のバラつきを調整する機能を有する。接続箱26には、開閉器や避雷素子などの安全装置が組み込まれており、電気の流れを制御したり、落雷から機器を保護したりする機能を有する。
【0044】
パワーコンディショナ28は、ペロブスカイト太陽電池部12の発電量が最大になる電圧と電流の組み合わせを自動で見つけ出し、効率的な発電をサポートする。パワーコンディショナ28は、発電した電力を電力会社に売電する際に、適切な電圧で電力を送る機能を有する。これにより、電力の逆流を防ぎ、安定した電力供給を実現する。パワーコンディショナ28は、停電や異常時に出力を遮断して事故を防ぐ機能を有する。これにより、太陽光発電システムが安全に運用される。
【0045】
分電盤30は、ペロブスカイト太陽電池部12で作られた電気や電力会社から供給された電気を家庭内の各機器や部屋に分配する機能を有する。分電盤30には、漏電や過電流を検知して電気を遮断するブレーカーが組み込まれており、火災や感電事故を防ぐ機能を有する。分電盤30は、ペロブスカイト太陽電池部12で余った電力を電力会社に売電する際に、電力を逆流させる機能を有する。これにより、発電した電力を効率的に利用できる。
【0046】
蓄電池32は、ペロブスカイト太陽電池部12で作られた電力を蓄えておくことで、夜間や曇りの日など、太陽光発電ができない時間帯にも電力を利用できる。蓄電池32は、電力の供給を安定させる役割を果たす。これにより、電力の供給が不安定な地域でも安定した電力供給が可能になる。
【0047】
蓄電池32は、ペロブスカイト太陽電池部12で作られた電力を蓄えておくことで、電力会社からの電力購入を減らし、電気代を節約することができる。蓄電池32は、停電時に蓄えた電力を利用することで、一定期間電力を供給することができる。
【0048】
蓄電池32は、例えば、リチウムイオン二次電池を用いることができるが、もちろん、その他の二次電池であってもよく、例えば、ニッケル水素蓄電池でもよい。
【0049】
ここで、ペロブスカイト太陽電池部12、強化ガラス部16、接続箱26、パワーコンディショナ28、分電盤30及び蓄電池32を備えた構成を太陽光発電システム8と呼ぶ。
【0050】
続いて、上記構成の太陽エネルギ利用システム10の作用について説明する。最初に、シリコン型太陽光発電とペロブスカイト太陽電池部12との比較を行う。
図3(b)に示されるように、ペロブスカイト太陽電池部12は、可視光線領域(380~780nm)の太陽光を効率よく吸収するため、特に曇りや雨での発電も可能となる。
【0051】
図4は、東京でのペロブスカイト太陽電池部12と従来のシリコン型太陽光発電の1日の各天候時の発電比較である。上述したように、通常の晴れの日では従来のシリコン型太陽光発電の方が発電量は多いが、曇りまたは雨の日ではペロブスカイト太陽電池部12の方が、発電量が3倍ほど従来型より多くなる。年間の天候比較では、晴れの日と、晴れない日(曇り又は雨の日)が半々ぐらいであるため、年間を通しての総発電量はそれほど変わらない。
【0052】
図3は、従来のシリコン型太陽光発電が吸収する光の波長とスペクトルの関係図である。上述したように、
図3(a)及び
図3(c)に示されるように、シリコン型太陽光発電は、380~780nmの可視光線だけでなく赤外線も吸収する。
【0053】
上記のように、ペロブスカイト太陽電池部12は、可視光線領域(380~780nm)の太陽光を吸収し、赤外線領域はほぼ吸収しない。従来のシリコン型太陽光発電では一部の赤外線領域も太陽光を吸収していたため、太陽熱として吸収することは難しい。
【0054】
これに対し、本発明に係る実施形態の太陽エネルギ利用システム10によれば、ペロブスカイト太陽電池部12では赤外線領域で太陽光エネルギを通過させることができるため、太陽熱温水器用集熱板14では、効率的に熱エネルギを吸収することができ、シリコン型太陽光発電に比べ、約6倍もの熱量の吸収が可能となる。
【0055】
一般的に、太陽熱温水器6は、供給エネルギが熱であり、利用用途は給湯や暖房であり、エネルギ効率は40~60%であり、適用建物として病院、ホテル、福祉施設、学校などの給湯需要の多い施設であり、単位面積あたりの供給エネルギは600kW/m2である。これに対し、太陽光発電システム8は、供給エネルギが電気であり、利用用途は電化製品、電力会社への売電であり、エネルギ効率は7~18%であり、適用建物として様々な建物に設置可能であり、単位面積あたりの供給エネルギは130kW/m2である。
【0056】
このように、太陽熱温水器6のエネルギ効率は太陽光発電システム8よりも良いが、従来、太陽光から得られた熱を放熱させないように真空管が必須であった。しかしながら、真空管は高価で、壊れ易く弱いという問題点が有る。また、従来の太陽熱温水器は水を使用するため、耐久性の問題と重量過多(200~400kg)問題がある。また、水を用いているので不凍液を入れても、寒冷地では冬場の凍結があり、寒冷地には設置自体ができないという課題もある。
【0057】
このような課題に対して本発明に係る実施形態に係る太陽エネルギ利用システム10は顕著な効果を発揮する。具体的には、水をオイルに置き換えることで錆などの問題もなく、オイルは凍結しないため(約-60℃)寒冷地でも使用でき、また、少量のオイルが循環しているだけの為、重量過多の問題解決(重量:約20~50kg)にも成る。
【0058】
そして、太陽エネルギ利用システム10では、循環オイルが大配管18aを流通し、大きな網目を構成する中配管18bを流通しつつ、細やかな編目を構成する小配管18cにも流通することで、
図2に示されるように、太陽熱温水器用集熱板14の裏面の領域内に広がるように流れていく。これにより、機器内でオイルが循環しているので放熱の問題も殆ど無く、尚且つヒートポンプ22で低温からでも熱効率が良く、保温熱水タンク24に一定の高温温水を保つ事が出来る。
【0059】
このように、オイルを使った太陽熱温水器を用いることで、太陽光からのエネルギ効率が良い。熱変換で約40~60%ほどの高効率となる。水の場合、錆や水アカなどにより配管が劣化するため、耐久性は約10年程度であるが、オイルの場合は錆などの腐食に強く、約20~30年程の耐久性を持つ。
【0060】
寒冷地では水は凍結(約0℃)するが、オイル(約-60℃)は凍結するリスクが少ない。オイルの比熱は、水に比べ約半分ほどになり、より早く熱を吸収しヒートポンプ22で低温からでも熱交換効率がよく循環する。
【0061】
高温時(約100℃)で水は膨張するが、オイル(約400℃)は熱膨張がないため、事故などのリスクが少ない。少量のオイルでも、熱交換効率よく太陽熱温水器6を循環するため、屋根上設置時の機器総重量も軽くなる。
【0062】
以上のように、太陽エネルギ利用システム10によれば、可視光線領域(380~780nm)の太陽光はペロブスカイト太陽電池部12により従来のシリコン型太陽光発電よりも発電量を高めることができるとともに、赤外線領域を通過させることできるため、太陽熱温水器用集熱板14において熱を得ることが出来るため、従来のシリコン型太陽光発電に比べて約6倍もの熱量の吸収が可能となるという利点がある。
【0063】
また、太陽熱温水器6は、ヒートポンプ22にて吸水された水を温め、保温熱水タンク24へと送られて貯水される。この貯水されたお湯は、給湯や温水床暖房、お風呂の湯沸かしなどに使用される。さらに、ペロブスカイト太陽電池部12において発電された電力は、パワーコンディショナ28や分電盤30に送電されて、家庭内電気商品や蓄電池32に送られる。
【0064】
なお、上記太陽エネルギ利用システム10の各構成要素は一例であり、適宜変更することができる。例えば、太陽熱温水器6ではヒートポンプ22を用いるものとして説明したが、通常の熱交換器でもよい。
【符号の説明】
【0065】
6 太陽熱温水器、8 太陽光発電システム、10 太陽エネルギ利用システム、12 ペロブスカイト太陽電池部、13 空気層、14 太陽熱温水器用集熱板、16 強化ガラス部、18 流通路部、18a 大配管、18b 中配管、18c 小配管、20 ケース体、22 ヒートポンプ、24 保温熱水タンク、26 接続箱、28 パワーコンディショナ、30 分電盤、32 蓄電池。
【要約】 (修正有)
【課題】太陽電池パネルと太陽熱温水器の相乗効果により効率良く太陽エネルギを利用することを可能とする太陽エネルギ利用システムを提供する。
【解決手段】太陽エネルギ利用システムは、太陽光の光エネルギを電気エネルギに変換するペロブスカイト太陽電池部12と、ペロブスカイト太陽電池部12の下方に配置され、ペロブスカイト太陽電池部12を通過した前記太陽光から得られる熱を集熱する太陽熱温水器用集熱板14と、を備え、ペロブスカイト太陽電池部12及び太陽熱温水器用集熱板14を収容するためのケース体20と、ケース体20内に設けられ、ペロブスカイト太陽電池部12を載置するための強化ガラス部16と、ケース体20内に設けられ、太陽熱温水器用集熱板14と接触し、太陽熱温水器用集熱板14が集めた熱を交換するために流体を流すための流通路部18と、を備える。
【選択図】
図2