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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】がんの免疫学的処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241227BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20241227BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241227BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20241227BHJP
   A61N 1/32 20060101ALI20241227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241227BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241227BHJP
   C07K 14/53 20060101ALN20241227BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20241227BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K38/19
A61K48/00
A61N1/04
A61N1/32
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
C07K14/53
C12N15/19
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018555838
(86)(22)【出願日】2017-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 US2017013486
(87)【国際公開番号】W WO2017123981
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2020-01-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】62/279,579
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518252373
【氏名又は名称】アールエフイーエムビー ホールディングス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】オーニック ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ミーソウ ジェイムズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボストウィック デビッド
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】岡山 太一郎
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/085162(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/125159(WO,A1)
【文献】特表2015-038492(JP,A)
【文献】Int J Hyperthermia.,2009,Vol.25 No.5,p.374-382
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せであって、各々が組成物中に治療有効量で存在している、組合せ、および薬学的に許容される担体を含む、患者の腫瘍を処置する方法に用いるための薬学的組成物であって、
該少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4阻害剤およびPD-1阻害剤であり、かつ該サイトカインがGM-CSFであり、
該CTLA-4阻害剤が、イピリムマブまたはトレメリムマブであり、かつ、該PD-1阻害剤が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、MK-3475およびMED 14736からなる群より選択され、
該方法が、該組成物を、腫瘍を処置するのに充分な量で患者に腫瘍内投与する段階、および
該腫瘍の少なくとも一部分をアブレーションする段階であって、それにより障害ゾーンを作る、段階を含み
該アブレーションする段階が、RF-EMBおよび/またはRF-EMB型アブレーションと、冷凍アブレーションとの組み合わせを用いて行われ
該アブレーションが、腫瘍の細胞の細胞膜の即時破壊、ならびに非変性細胞内成分および抗原の細胞外空間への流出を引き起こす
薬学的組成物。
【請求項2】
冷凍アブレーションが少なくとも1回の凍結を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
腫瘍をアブレーションした後に治療有効量の第2のサイトカインを前記患者に皮下投与する段階をさらに含み、任意で、該第2のサイトカインが第1のサイトカインと同じまたは異なる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項4】
単回用量で注射される、または1回より多くの用量で注射される、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
およそ0.5~10 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、およそ0.5~20 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤、およびおよそ10~500μg/mlの濃度のGM-CSFを含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項6】
方法が、治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与する段階をさらに含み、該核酸薬物がDNAプラスミドであり、任意で該DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよびその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項7】
アブレーションする段階が、前記組成物の投与の前に、投与と並行して、および/または投与後に行われる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項8】
方法が、前記組成物の投与の前に、投与と並行して、および/または投与後に、一連の電気パルスを傷害部に施す段階をさらに含み、それにより、傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
方法が、治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与する段階をさらに含み、該核酸薬物がDNAプラスミドであり、任意で該DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαまたはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
アブレーションする段階が、冷凍アブレーション、熱アブレーション、IRE、超音波アブレーション、高密度焦点式超音波アブレーション、光線力学療法を使用するアブレーション、非加熱衝撃波を使用するアブレーション、キャビテーション、他の機械的物理的細胞破壊、またはその任意の組合せをさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項11】
RF-EMBがプローブを用いて行われる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項12】
プローブによって一連の電気パルスを施し、それにより、該プローブに直に隣接しているかまたは該プローブと関連している傷害ゾーンを作り、該傷害ゾーンに隣接しているかまたは該傷害ゾーンと関連している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
一連の電気パルスが、およそ1~1000パルスを含み、任意で、一連の電気パルスが、およそ1~4000パルスを含む、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項14】
電気パルスが100~500 kHzの周波数を含む、または電気パルスがバイポーラである、または電気パルスが即時電荷反転を有する、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項15】
腫瘍の一部分が、がん細胞を含み、
該細胞の細胞膜を破壊しかつ該細胞の細胞内成分および膜抗原を露出させる条件下で、アブレーションする段階が行われる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項16】
細胞の細胞内成分および膜抗原がアブレーションによって変性しないように、アブレーションが行われる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項17】
細胞の露出した細胞内成分および膜抗原の量が免疫系を賦活するのに充分な量であるように、アブレーションが行われる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項18】
細胞の露出した細胞内成分および膜抗原の量が免疫寛容を生じさせない量であるように、アブレーションが行われる、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項19】
転移がんを処置する方法に用いるための、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せを含む薬学的組成物であって、
該少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4阻害剤およびPD-1阻害剤であり、かつ該サイトカインがGM-CSFであり、
該CTLA-4阻害剤が、イピリムマブまたはトレメリムマブであり、かつ該PD-1阻害剤が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、MK-3475およびMED 14736からなる群より選択され、
該方法が、
腫瘍を処置するのに充分な量で該組成物を患者に腫瘍内投与する段階;および
腫瘍の少なくとも一部分をアブレーションする段階であって、それにより、傷害ゾーンを作る、段階
を含み、
アブレーションする段階がRF-EMBおよび/またはRF-EMB型アブレーションと、冷凍アブレーションとの組み合わせを用いて行わ
該アブレーションが、腫瘍の細胞の細胞膜の即時破壊、ならびに非変性細胞内成分および抗原の細胞外空間への流出を引き起こす、
薬学的組成物。
【請求項20】
冷凍アブレーションが少なくとも1回の凍結を含む、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項21】
腫瘍をアブレーションした後に治療有効量の第2のサイトカインを前記患者に皮下投与する段階をさらに含み、任意で、該第2のサイトカインが第1のサイトカインと同じまたは異なる、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項22】
単回用量で注射される、または1回より多くの用量で注射される、請求項19記載の薬学的組成物。
【請求項23】
およそ0.5~10 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、およそ0.5~20 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤、およびおよそ10~500μg/mlの濃度のGM-CSFを含む、請求項19記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年1月15日に出願された米国特許仮出願第62/279,579号の恩典を主張する。この仮出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、がんの免疫学的処置のための方法、組成物およびデバイスに関する。より詳しくは、本発明は、がんの免疫学的剤の腫瘍内投与および最適ながん免疫応答をもたらすための処置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
がんは、米国において2番目に多くみられる死因であり、毎年580,000名、1日あたり1,500名より多くのアメリカ人の命が奪われている。米国立衛生研究所(NIH)により、直接医療費の890億ドルを含めた全体の年間がん治療費は2270億ドルより多いと推計された(2007年)。がんの処置の全保健医療費の多くは放射線および慣用的な化学療法の有害な副作用のマネージメントによるものである。免疫学的がん処置が癌腫瘍治療学の様相を完全に変える態勢になっている。チェックポイント阻害剤、例えばCTLA-4およびPD-1は既に、転移性黒色腫および非小細胞肺がんの処置において大きな衝撃を与えている。これらの薬物は現在、その有効性を改善しようとして組み合わせて使用されている。これらの薬物の送達は最も一般的には静脈内で行われているが、これは、がん細胞と正常細胞の両方を死滅させて処置レジメンおよび患者の転帰にマイナスの影響を及ぼし得るこれらの細胞致死剤の体内での非特異的分布の結果、重篤な、場合によっては致死性の全身毒性を有する場合があり得る。
【0004】
アブレーションは、細胞、器官または異常な増殖物(がんなど)を破壊するために使用される外科的手法である。冷凍アブレーションは、固有の一連の腫瘍関連抗原を患者の抗原提示細胞および樹状細胞に提示することによって患者において免疫応答を惹起することが知られている。しかしながら、この「凍結免疫学的効果」は、ばらつきがあり、一部の場合では有害でさえあることが知られている。本開示は、従来の全身性がん処置と関連する毒性を低減させる新規な方法を提供し、腫瘍標的化免疫応答をもたらす、がんに対する免疫系の賦活を提供する。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、少なくとも一部において、腫瘍指向型免疫学的がん処置とアブレーション手法との併用によってがん免疫応答を惹起するための新しい組成物および方法の開発に基づく。このような処置および施術を腫瘍内へ施すことは、抗がん薬物の従来の全身性送達と比べて大きな利点を有し得る。本明細書に開示の組成物および方法により、従来よりも少量の用量の対象への投与(例えば、組成物が腫瘍内に直接投与される態様において)、腫瘍抗原に対する免疫系の賦活、ならびに薬物が腫瘍抗原および免疫炎症過程に直接的に近接して配されることによる結果の改善が可能となり得る。
【0006】
一局面において、本開示により、
少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せであって、各々が組成物中に治療有効量で存在している、組合せ、および
薬学的に許容される担体
を含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる、薬学的組成物を提供する。少なくとも2種類のチェックポイント阻害剤薬は、CD137、CD134、PD-1、KIR、LAG-3、PD-L1、CTLA-4、B7.1、B7H3、CCRY、OX-40および/またはCD40の阻害剤などの阻害剤を含み得る。一部の態様では、組成物は2種類のチェックポイント阻害剤を含み、2種類のチェックポイント阻害剤はCTLA-4阻害剤およびPD-1阻害剤である。例えば、CTLA-4阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブまたはその組合せであり得、PD-1阻害剤は、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、MK-3475、MED 14736およびその組合せからなる群より選択され得る。一部の態様では、CTLA-4阻害剤はイピリムマブであり、PD-1阻害剤はペンブロリズマブである。一部の態様では、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤および少なくとも1種類のサイトカインが、腫瘍内投与のために製剤化される。2種類のチェックポイント阻害剤とサイトカインとの組合せにより、有害な副作用および/または免疫関連有害事象が、2種類のチェックポイント阻害剤の組合せ(サイトカインなし)より少なくなる。
【0007】
少なくとも1種類のサイトカインは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよび/またはその組合せからなる群より選択され得る。一部の態様では、サイトカインは組換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(例えば、サルグラモスチム)であり得る。一部の態様では、組成物は、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインを含み得る。一部の場合では、第1および第2のサイトカインは同じものであり、他の場合では、これらは異なるものである。
【0008】
一部の場合では、組成物は、約0.5~10 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、約0.5~20 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤、およびおよそ10~500μg/mlの濃度のサイトカインを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる。一部の場合では、組成物は、約1~2 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、約1~10 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤および約250μg/mlの濃度のサイトカインを含む。例えば、組成物は、約3.3 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、約6.6 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤、およびおよそ16.6μg/mlの濃度のサイトカインを含み得る。一部の場合では、組成物は、少なくとも、またはおよそ15 mlの体積である。一部の場合では、組成物は、およそ15 ml未満の体積である。一部の場合では、組成物は、100 kgの対象に対して約10~300 mgのCTLA-4阻害剤、約10~200 mgのPD-1阻害剤および約250~500μgのサイトカインを含む。例えば、組成物は、約50 mgのCTLA-4阻害剤、約100 mgのPD-1阻害剤および約250μgのサイトカインを含み得る。
【0009】
一部の場合では、薬学的組成物は、
少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せであって、各々が組成物中に治療有効量で存在している、組合せ、
薬学的に許容される担体、および
治療有効量の核酸薬物
を含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる。核酸薬物は、例えば、DNA、DNAプラスミド、nDNA、mtDNA、gDNA、RNA、siRNA、miRNA、mRNA、piRNA、アンチセンスRNA、snRNA、snoRNA、vRNAなどであり得る。例えば、核酸薬物はDNAプラスミドであり得る。一部の場合では、DNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよび/またはその組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含み得る、本質的に該ヌクレオチド配列からなり得る、または該ヌクレオチド配列からなり得る。核酸薬物は、例えば、細胞の治療効果の向上または患者への治療用剤の供給において臨床的有用性を有し得る。別の場合では、核酸薬物はマーカーまたは耐性遺伝子としての機能を果たし得る。ヌクレオチド配列は、細胞から分泌され得る遺伝子をコードしても、細胞から分泌され得ない遺伝子をコードしてもよい。核酸薬物は、遺伝子と、該遺伝子の発現を高めるためのプロモーター配列とをコードしてもよい。
【0010】
また別の局面では、本明細書により、患者の腫瘍を処置する方法を提供する。例えば、方法は、患者に、
少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せであって、各々が組成物中に治療有効量で存在している、組合せ、および
薬学的に許容される担体
を含む組成物を、腫瘍を処置するのに充分な量で腫瘍内投与することを含み得る、本質的に該投与からなり得る、または該投与からなり得る。例えば、投与される組成物は本明細書に記載の組成物であり得る。一部の場合では、方法は、患者に、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、および少なくとも1種類のサイトカインの組合せを含む組成物を、腫瘍を処置するのに充分な量で腫瘍内投与することを含む、本質的に該投与からなる、または該投与からなる。一部の場合では、サイトカインはGM-CSFである。一部の場合では、方法は、治療有効量の核酸薬物を腫瘍または病変部に投与することをさらに含む。2種類のチェックポイント阻害剤とサイトカインとの組合せの投与により、副作用および/または免疫関連有害事象が、2種類のチェックポイント阻害剤の組合せ(例えば、サイトカインなし)の投与より少なくなる。本明細書に記載の組合せの腫瘍内投与により、副作用および/または免疫関連有害事象が、慣用的なIV投与と比べると少なくなる。
【0011】
一部の場合では、投与は、組成物を患者の腫瘍に、複数の分枝を備えた注射デバイスを用いて投与することを含む。一部の場合では、投与は、組成物を患者の腫瘍に、単一の分枝を備えた注射デバイスを用いて投与することを含む。組成物は、単回用量で投与してもよく、1回より多くの用量で投与してもよい。組成物は、本明細書に記載のプローブを用いて投与され得る。組成物は、本明細書に記載の濃度のものを含み得る。一部の態様では、組成物は、およそ0.5~10 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、およそ0.5~20 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤、およびおよそ10~500μg/mlの濃度のサイトカインを含む。一部の態様では、組成物は、およそ15 ml未満の体積である。一部の態様では、組成物は、およそ15 mlの体積である。一部の態様では、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤および少なくとも1種類のサイトカインが、腫瘍内投与のために製剤化される。
【0012】
本明細書に記載の方法の一部の態様では、組成物の腫瘍内投与により、有害な副作用および/または免疫関連有害事象が、慣用的な該組成物のIV投与と比べると少なくなる。慣用的なIV投与の有害な副作用および免疫関連有害事象としては、胃腸、呼吸器、神経系、内分泌、皮膚科系、疲労感、腎臓および肝臓への影響が挙げられる。本明細書に記載の方法の一部の場合では、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとを含む組成物の投与により、インビボでの有害な副作用および/または免疫関連有害事象が、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤を含みかつサイトカインを含んでいない組成物の投与と比べると少なくなる。一部の場合では、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとを含む組成物により、インビボでの有害な副作用および/または免疫関連有害事象が、少なくとも1種類のサイトカインなしの少なくとも2種類のチェックポイント阻害剤を含む組成物と比べると少なくなる。一部の場合では、方法は、腫瘍の少なくとも一部分にアブレーションすることを含む、本質的にこれからなる、またはこれからなり、それにより傷害ゾーンを作る。アブレーションは、例えば、本明細書に記載の組成物の投与の前、該投与と並行して、および/または該投与の後に行われ得る。アブレーションは、例えば、当技術分野において公知のアブレーション法、例えば、冷凍アブレーション、熱アブレーション、IRE、ラジオ波電気的膜破壊(radiofrequency electrical membrane breakdown)(RF-EMB)、RF-EMB型アブレーション、超音波アブレーション、高密度焦点式超音波アブレーション、光線力学療法を使用するアブレーション、非加熱衝撃波を使用するアブレーション、キャビテーション、他の機械的物理的細胞破壊など、またはその任意の組合せのうちの1つまたは複数の組合せを用いて行われ得る。
【0013】
一部の場合では、本明細書に記載の方法は、腫瘍の少なくとも一部分をアブレーションすることをさらに含み、それにより傷害ゾーンを作る。一部の場合では、腫瘍の第1の部分または全部が第1のアブレーション法を用いてアブレーションされ、該腫瘍の第2の部分または全部が第2のアブレーション法を用いてアブレーションされる。第1および第2のアブレーション法は異なっていてもよい。腫瘍の第1および第2の部分は、該腫瘍の同じ部分であっても異なる部分であってもよい。一部の場合では、アブレーションは組成物の投与の前に行われる。一部の場合では、アブレーションは組成物の投与と並行して行われるか、または組成物の投与後に行われる。一部の場合では、アブレーションは、組成物の投与と並行して、および該投与後に行われる。一部の場合では、アブレーションは、冷凍アブレーション、熱アブレーション、IRE、RF-EMB、RF-EMB型アブレーション、超音波アブレーション、高密度焦点式超音波アブレーション、光線力学療法を使用するアブレーション、非加熱衝撃波を使用するアブレーション、キャビテーション、他の機械的物理的細胞破壊、またはその任意の組合せを用いて行われる。一部の態様では、少なくとも一部分のアブレーションは、RF-EMBと冷凍アブレーションの両方を用いて行われる。
【0014】
一部の場合では、アブレーションは、少なくとも一部において、冷凍アブレーションを用いて、例えばクライオプローブを用いて行われる。冷凍アブレーションを1つより多くのクライオプローブを用いて行ってもよい。また、冷凍アブレーションは、本明細書に記載の任意のプローブを用いて行われ得る。一部の場合では、アブレーションは、冷凍アブレーション(cyroablation)とRF-EMBの両方を用いて行われる。
【0015】
一部の場合では、冷凍アブレーション工程は、少なくとも1回の凍結-解凍サイクルを含み得る、本質的に少なくとも1回の凍結-解凍サイクルからなり得る、または少なくとも1回の凍結-解凍サイクルからなり得る。例えば、冷凍アブレーションは1~4回の凍結-解凍サイクルを含み得る。凍結-解凍サイクルの凍結部分は、例えば少なくとも、または約30秒間の長さであり得る。凍結-解凍サイクルの凍結部分は、例えば約30秒間~15分間の長さであり得る。凍結-解凍サイクルの凍結部分は、例えば約-30℃~-196℃の温度で行われ得る。凍結-解凍サイクルの解凍部分は積極的解凍プロセス(すなわち、加熱を伴う)および/または消極的解凍プロセス(すなわち、加熱を伴わない)であり得る。
【0016】
一部の場合では、方法は、一連の電気パルスを施すことをさらに含む、本質的にこれからなる、またはこれからなり、それにより、傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする。一部の場合では、電気パルスを施すことは、アブレーションと並行して行われる。一部の場合では、電気パルスを施すことは、アブレーションの前に行われる。一部の場合では、電気パルスを施すことは、アブレーションの後に行われる。電気パルスをクライオプローブから施してもよい。一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~1000パルスを含む、および/または100~500 kHzの周波数を含む。一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~4000パルスを含む、および/または100~500 kHzの周波数を含む。一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~4000パルスを含む。一部の場合では、一連の電気パルスは、100~500 kHzの周波数を含む。電気パルスは例えば、バイポーラであり得る、および/または即時電荷反転を有し得る。
【0017】
一部の場合では、方法は、治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与することをさらに含む、本質的に該投与からなる、または該投与からなる。一部の場合では、方法は、治療有効量の核酸薬物を病変部に投与することをさらに含む、本質的に該投与からなる、または該投与からなる。核酸薬物の投与は、例えば、電気パルスを施す前および/または電気パルスを施すことと並行して行われ得る。一部の場合では、核酸薬物が、本明細書に開示の治療用核酸である。一部の場合では、核酸薬物はDNAプラスミドである。例えば、DNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよび/またはその組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含み得る。
【0018】
少なくとも一部分のアブレーションはRF-EMBを用いて、例えばプローブを用いて行われ得る。プローブは本明細書に開示の任意のプローブであり得る。一部の場合では、プローブによって一連の電気パルスを施し、それにより、該プローブに直に隣接しているか、または該プローブと関連している傷害ゾーンを作り、該傷害ゾーンに隣接しているか、または該傷害ゾーンと関連している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする。
【0019】
一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~1000パルスを含む。一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~4000パルスを含む。一部の場合では、電気パルスは、100~500 kHzの周波数を含む。電気パルスはバイポーラであってもよい。また、電気パルスは即時電荷反転を有してもよい。
【0020】
一部の場合では、方法は、治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与することをさらに含む。核酸薬物は、本明細書に記載の任意の治療用核酸であり得る。一部の場合では、核酸薬物はDNAプラスミドである。例えば、DNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよび/またはその組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含み得る。
【0021】
本明細書に記載の方法の一部の場合では、腫瘍の一部分はがん細胞を含み、該細胞の細胞膜を破壊しかつ該細胞の細胞内成分および膜抗原を露出させる条件下で、アブレーションすることが行われる。
【0022】
一部の場合では、RF-EMBアブレーション法により、細胞膜の破壊を特徴とする固有の組織壊死がもたらされる。細胞膜が破壊されると細胞内成分および細胞膜構成部分が細胞外空間内に分散し、それによって、免疫学的同定および応答が向上する。肝臓組織でのRF-EMBアブレーションによって作った傷害部の画像診断では、細胞膜の破壊およびミトコンドリアなどの内部の細胞小器官の減少を伴う固有の細胞損傷形態が示される。これは、細胞膜がインタクトなままであり、細胞がアポトーシス死により死滅し、細胞に細胞性抗原を露出させない、他の型のアブレーション法(例えば、IREなど)とは異なる。一部の場合では、細胞膜の破壊の度合は、アブレーションポイントからの距離が大きくなるにつれて低下する。
【0023】
本明細書で用いる場合、用語「RF-EMB型アブレーション」は、実施するとRF-EMBアブレーションと本質的に同じ結果をもたらす任意のアブレーション手法または手法の組合せをいう。本明細書に記載のように、RF-EMBアブレーションおよびRF-EMB型アブレーションは、以下の特徴:細胞膜の破壊、非変性細胞内タンパク質、非変性膜抗原、抗原提示の向上、免疫系の補助賦活能、および傷害部のすぐ周囲の部分が免疫学的有能細胞およびシグナル伝達分子を輸送できることのうちの任意の1つまたは複数を有する傷害部を形成する。
【0024】
一部の場合では、アブレーションされる腫瘍の一部分はがん細胞を含み、該細胞の細胞膜を破壊しかつ該細胞の細胞内成分および膜抗原を例えば体の免疫系に露出させる条件下で、アブレーションが行われる。アブレーションは、例えば、細胞の細胞内成分および膜抗原がアブレーションによって変性しないように、および/または腫瘍のアブレーション部分のすぐ周囲の部分が、免疫学的有能細胞およびシグナル伝達分子をアブレーション組織の内外に輸送し得るように行われ得る。一部の場合では、アブレーションは、抗原によって免疫系が賦活されるように行われる。例えば、アブレーションは、例えば、細胞の、露出した細胞内成分および膜抗原の量が、免疫系を賦活するのに充分な量であるように、および/または細胞の、露出した細胞内成分および膜抗原の量が免疫寛容を生じさせない量であるように行われ得る。
【0025】
一部の場合では、本明細書に開示の方法は、治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与することをさらに含む。核酸薬物は本明細書に記載の治療用核酸であり得る。一部の場合では、核酸薬物はDNAプラスミドである。一部の場合では、DNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよびその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む。一部の場合では、本明細書に開示の方法は、腫瘍のアブレーション部分のすぐ周囲の細胞に可逆的にエレクトロポレーションすることをさらに含む。
【0026】
また別の局面では、本開示により、患者の腫瘍を処置する方法であって、腫瘍の少なくとも一部分にアブレーションすること、および治療有効量の核酸薬物を該腫瘍に投与することを含む、本質的にこれらからなる、またはこれらからなる方法を提供する。アブレーションは、例えばRF-EMBを用いて、例えばプローブを用いて行われ得る。RF-EMBは、一連の電気パルスを施すことを含み得、それにより、プローブに直に隣接している傷害ゾーンを作り、該傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする。
【0027】
一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~1000パルスを含む。一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~4000パルスを含む。一部の場合では、電気パルスは、100~500 kHzの周波数を含む。一部の場合では、電気パルスは、バイポーラである、および/または即時電荷反転を有する。
【0028】
一部の場合では、核酸薬物はDNAプラスミドである。DNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含み得る。
【0029】
一部の場合では、アブレーションは、例えば冷凍アブレーションを用いて、例えばプローブを用いて行われる。一部の場合では、方法は、一連の電気パルスを施すことをさらに含み、それにより、プローブに直に隣接している傷害ゾーンを作り、該傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする。一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~1000パルスを含む、および/または100~500 kHzの周波数を含む。一部の場合では、一連の電気パルスは、およそ1~4000パルスを含む、および/または100~500 kHzの周波数を含む。一部の場合では、電気パルスは、バイポーラである、および/または即時電荷反転を有する。一部の場合では、核酸はDNAであり、一部の場合では、DNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0030】
一部の場合では、本開示により、組成物を投与することが、注射デバイスを備えたアブレーションプローブを用いて該組成物を投与することを含む、方法を提供する。一部の例では、アブレーションプローブは、組成物が投与される速度を制御するためのポンプをさらに備え得る。
【0031】
一部の場合では、本開示により、少なくとも1種類のサイトカインは第1のサイトカインであり、治療効果量の第2のサイトカインを投与することをさらに含む、方法を提供する。一部の例では、第2のサイトカインは、第1のサイトカインと同じであっても異なっていてもよい。第2のサイトカインは腫瘍内に注射され得る。例えば、第2のサイトカインは腫瘍内に、該腫瘍のアブレーション後に注射され得る。第2のサイトカインは、静脈内、筋肉内、皮下および/またはその組合せで投与され得る。
【0032】
一部の場合では、本開示により、組成物の投与前にプローブの位置確認テストを行う工程をさらに含む方法を提供する。プローブの位置確認テストは、該プローブによるテスト注射を腫瘍内に施すこと、およびテスト注射を施している間に腫瘍内圧を測定することを含み得る。一部の場合では、方法は、テスト注射中に、周囲の腫瘍組織の圧力と比べて腫瘍内圧の上昇または低下が検出された場合、再度プローブの位置確認を行うことを含む。例えば、圧力の上昇はプローブが瘢痕組織内にあることを示すものであり得、圧力の低下はプローブが血管内にあることを示すものであり得る。
【0033】
別の局面では、本開示により、患者の転移がんを処置する方法を提供し、該方法は以下を含むか、本質的に以下からなるか、または以下からなる:
患者に、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せを含む組成物を、腫瘍を処置するのに充分な量で腫瘍内投与すること;および
腫瘍の少なくとも一部分にアブレーションすることであって、それにより傷害ゾーンを作ること、ここで、細胞の細胞膜を破壊しかつ細胞の細胞内成分および膜抗原を露出させ、該抗原によって免疫系が賦活されるような条件下で、アブレーションが行われる。一部の場合では、細胞の細胞内成分および膜抗原が該アブレーションによって変性しないように、アブレーションが行われる。一部の場合では、腫瘍のアブレーション部分のすぐ周囲の部分が、免疫学的有能細胞およびシグナル伝達分子をアブレーション組織の内外に輸送し得るように、アブレーションが行われる。
【0034】
一部の場合では、方法は、治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与すること;および一連の電気パルスを施すことであって、それにより、傷害ゾーンに隣接している細胞にエレクトロポレーションすること、をさらに含み得る。核酸薬物はDNAプラスミドであり得る。例えば、DNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含むもの、本質的に該ヌクレオチド配列からなるもの、または該ヌクレオチド配列からなり得る。
【0035】
処置の際、当業者は、システム、例えば、コンピュータシステム、計算ユニット、ソフトウェアおよび/またはアルゴリズムを使用し;計画、標的化、位置決め、送達、モニタリング、調整、イメージングおよび/または処置プロトコルの試験を行うことができる。当業者であれば、RF-EMBは、いくつかのパラメータおよび可変量、例えば、電界強度、周波数、極性、形状持続時間(shape duration)、数およびスペーシングなどを伴うことが理解されよう。一部の態様では、当業者は、アブレーションを制御および設計するためにアルゴリズムを使用し得る。当技術分野において公知の任意のアルゴリズムが本明細書に記載の方法において使用され得る。アブレーション手法における使用のためのコンピュータシステム、計算ユニット、ソフトウェアおよび/またはアルゴリズムの例は当技術分野において公知である。アブレーションの手法およびシステムは当技術分野において、例えば、少なくとも米国特許出願US20150150618、PCT出願PCT/US14/68774、PCT出願PCT/US2016/015944、PCT出願PCT/US16/16955、PCT出願PCT/US16/16501、PCT出願PCT/US16/16300およびPCT出願PCT/US2016/016352などにおいて公知であり、これらは、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0036】
別の局面では、プローブを提供する。別の局面では、クライオプローブツールを提供する。プローブは、ツール本体部、腫瘍内に挿入可能な第1端部、ガス源と電源とに接続可能な第2端部、第1端部に取り付けられた冷却ヘッド、および第1端部に取り付けられた少なくとも1つの電極を含み、ここで、該少なくとも1つの電極は、腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されており、冷却ヘッドは、ツールの第1端部が該腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第2の部分を凍結させるように構成されている。さらなる局面では、少なくとも1つの電極は、電源とプローブの第1端部とに接続されたワイヤである。少なくとも1つの電極は、ツール本体部から伸縮可能である。少なくとも1つの電極は、プローブの本体部である。また、ツールの第1端部から伸縮可能であり、該ツールの第2端部に取り付けられた流体リザーバに流体接続されている、少なくとも1本の針を、プローブは含む。少なくとも1本の針は、流体を流体リザーバから腫瘍の一部分に送達するように構成されている。流体リザーバはプラスミドである。少なくとも1本の針は複数の分枝で終結している。冷却ヘッドはツール本体部から伸縮可能である。少なくとも1つの電極はツール本体部から伸縮可能である。プローブは、ツールの本体部を覆う断熱部を有する。プローブは、ツールの本体部を覆う電気絶縁部を有する。腫瘍の第1の部分は該腫瘍の第2の部分と重複している。
【0037】
他の局面では、プローブは、中央ツール本体部、中央ツール本体部に接続されている第1端部(第1端部は腫瘍内に挿入可能であり、冷却ヘッドを有する)、ツール本体部に接続されている第2端部(第2端部はガス源に接続可能である)、および中央ツール本体部の一部分を封入するように構成されている鞘部を有する。取り外し可能な鞘部は、電気的に絶縁された本体部、電源に取り付けられるように構成されたコネクタ、および中央ツール本体部の導電性部分と接続されるように構成された電気接点を有しており、ここで、取り外し可能な鞘部は、電源から中央ツール本体部を通して第1端部に電気インパルスを伝送することにより腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されており、冷却ヘッドは、ツールの第1端部が腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第2の部分を凍結させるように構成されている。
【0038】
さらなる局面では、鞘部は中央ツール本体部から取り外し可能である。プローブは不関電極に取り付け可能である。
【0039】
さらなる態様としては電気パルスとの併用での凍結療法を施すためのシステムが挙げられ、該システムは、ツール本体部、腫瘍内に挿入可能な第1端部、および第2端部、第1端部に取り付けられた冷却ヘッド、ならびに第1端部に取り付けられた少なくとも1つの電極(少なくとも1つの電極は、腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されており、冷却ヘッドは、ツールの第1端部が腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第2の部分を凍結させるように構成されている)を含む、ツールと、ツールの第2端部から該ツールにガスを供給するための凍結機と、ツールの第2端部から該ツールに電気パルスを供給するための電気パルス発生器とを含む。
【0040】
なおさらなる局面では、システムは第2のツールを有しており、該第2のツールは、第2のツール本体部、腫瘍内に挿入可能な第2のツールの第1端部、凍結機および電気パルス発生器に接続可能な第2のツールの第2端部、第2のツールの第1端部に取り付けられた冷却ヘッド、および第2のツールの第1端部に取り付けられた第2電極を有する。システムでは、第2電極および少なくとも1つの電極が、該第2電極と該少なくとも1つの電極の間に広がる腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されており、第2のツールの冷却ヘッドは、ツールの第1端部と第2のツールの第1端部が該腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第3の部分を凍結させるように構成されている。システムは第2のツールを有し得、該第2のツールは、ツール本体部、腫瘍内に挿入可能な第1端部、電源に接続可能な第2端部、第1端部に取り付けられた第2電極を有しており、ここで、腫瘍の第1の部分は、該少なくとも1つの電極と該第2電極の間に広がっている。システムは、電源に電気的に接続される不関電極を有し得る。
【0041】
本明細書で用いる場合、用語「核酸薬物」または「治療用核酸」は、所望の治療効果を得るために使用されるヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいう。例示的な核酸薬物としては、例えば、DNA、nDNA、mtDNA、gDNA、RNA、siRNA、miRNA、mRNA、piRNA、アンチセンスRNA、snRNA、snoRNA、vRNAなどが挙げられる。例えば、核酸薬物はDNAプラスミドであり得る。
【0042】
用語「対象」は、本明細書全体を通して、本発明の方法による処置を施す対象の動物、ヒトまたは非ヒトを示すために用いている。獣医学的適用は、本発明によって明白に予想される。この用語には、非限定的に、鳥類、爬虫類、両生類、ならびに哺乳動物、例えば、ヒト、他の霊長類、ブタ、齧歯類、例えばマウスおよびラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジならびにヤギが包含される。好ましい対象はヒト、飼養動物ならびに飼育用愛玩動物(ネコおよびイヌなど)である。用語「処置する(処置)」は、本明細書において、病状、例えばがんの発症を遅延させること、これを抑止すること、その影響を緩和すること、またはこれに苦しんでいる患者の寿命を延ばすことを表すために用いている。
【0043】
「有効量」は、有益な結果または所望の結果がもたらされるのに充分な量である。例えば、治療有効量は、所望の治療効果が得られる量である。本発明における使用のための本明細書に記載の組成物の有効量としては、例えば、腫瘍および/または腫瘍細胞に対する免疫応答を向上させる量、がんに苦しんでいるか、またはがんのリスクがある患者の転帰が改善される量、ならびに他のがん処置の転帰が改善される量が挙げられる。有効量は、1回または複数回の投与、適用または投薬量で投与され得る。薬学的組成物の治療有効量(すなわち、有効投薬量)は、選択される薬学的組成物に依存する。薬学的組成物の治療有効量は、選択される投与方法に依存する。一部の場合では、組成物の腫瘍内投与では静脈内投与(例えば、慣用的なIV投与)と比べて、組成物の治療有効量は少ない。当業者には、一部の特定の要素、例えば非限定的に、疾患または障害の重症度、処置歴、対象の一般健康状態および/または年齢ならびに他の疾患の存在が、対象を有効に処置するために必要とされる投薬量およびタイミングに影響を及ぼすことがあり得ることが認識されよう。さらに、治療有効量の本明細書に記載の薬学的組成物での対象の処置は、単回処置を含んでも一連の処置を含んでもよい。
【0044】
[本発明1001]
以下を含む、薬学的組成物:
少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せであって、各々が組成物中に治療有効量で存在している、組合せ、および
薬学的に許容される担体。
[本発明1002]
少なくとも2種類のチェックポイント阻害剤が、CD137、CD134、PD-1、KIR、LAG-3、PD-Ll、CTLA-4、B7.1、B7H3、CCRY、OX-40およびCD40の阻害剤からなる群より選択される少なくとも2種類の異なる阻害剤を含む、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1003]
少なくとも2種類のチェックポイント阻害剤が、CTLA-4阻害剤およびPD-1阻害剤である、本発明1002の薬学的組成物。
[本発明1004]
CTLA-4阻害剤が、イピリムマブまたはトレメリムマブである、本発明1003の薬学的組成物。
[本発明1005]
PD-1阻害剤が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、MK-3475およびMED 14736からなる群より選択される、本発明1003の薬学的組成物。
[本発明1006]
CTLA-4阻害剤がイピリムマブであり、PD-1阻害剤がペンブロリズマブである、本発明1003の薬学的組成物。
[本発明1007]
少なくとも1種類のサイトカインが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγおよびIFNαからなる群より選択される、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1008]
少なくとも1種類のサイトカインがGM-CSFである、本発明1007の薬学的組成物。
[本発明1009]
およそ0.5~10 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、およそ0.5~20 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤、およびおよそ10~500μg/mlの濃度のサイトカインを含む、本発明1003の薬学的組成物。
[本発明1010]
治療有効量の核酸薬物をさらに含む、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1011]
核酸薬物がDNAプラスミドである、本発明1010の薬学的組成物。
[本発明1012]
DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよびその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、本発明1011の薬学的組成物。
[本発明1013]
およそ15 ml未満の体積である、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1014]
少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤および少なくとも1種類のサイトカインが、腫瘍内投与のために製剤化されている、本発明1001の薬学的組成物。
[本発明1015]
以下の段階を含む、患者の腫瘍を処置する方法:
患者に、
少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せであって、各々が組成物中に治療有効量で存在している、組合せ、および
薬学的に許容される担体
を含む組成物を、腫瘍を処置するのに充分な量で腫瘍内投与する段階。
[本発明1016]
少なくとも2種類のチェックポイント阻害剤が、CTLA-4阻害剤およびPD-1阻害剤である、本発明1015の方法。
[本発明1017]
サイトカインがGM-CSFである、本発明1016の方法。
[本発明1018]
治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与する段階をさらに含む、本発明1015の方法。
[本発明1019]
前記投与する段階が、組成物を患者の腫瘍に、複数の分枝を備えた注射デバイスを用いて投与することを含む、本発明1016の方法。
[本発明1020]
前記投与する段階が、組成物を患者の腫瘍に、単一の分枝を備えた注射デバイスを用いて投与することを含む、本発明1016の方法。
[本発明1021]
組成物が単回用量で注射される、本発明1016の方法。
[本発明1022]
組成物が1回より多くの用量で注射される、本発明1016の方法。
[本発明1023]
混合物が、およそ0.5~10 mg/mlの濃度のCTLA-4阻害剤、およそ0.5~20 mg/mlの濃度のPD-1阻害剤、およびおよそ10~500μg/mlの濃度のサイトカインを含む、本発明1016の方法。
[本発明1024]
組成物がおよそ15 mlの体積である、本発明1016の方法。
[本発明1025]
組成物がおよそ15 ml未満の体積である、本発明1016の方法。
[本発明1026]
腫瘍の少なくとも一部分をアブレーションする段階をさらに含み、それにより、傷害ゾーンを作る、本発明1015の方法。
[本発明1027]
アブレーションする段階が組成物の投与の前に行われる、本発明1026の方法。
[本発明1028]
アブレーションする段階が組成物の投与と並行して行われる、本発明1026の方法。
[本発明1029]
アブレーションする段階が組成物の投与後に行われる、本発明1026の方法。
[本発明1030]
アブレーションする段階が、組成物の投与と並行して、および該投与後に行われる、本発明1026の方法。
[本発明1031]
アブレーションする段階が、冷凍アブレーション、熱アブレーション、IRE、RF-EMB、RF-EMB型アブレーション、超音波アブレーション、高密度焦点式超音波アブレーション、光線力学療法を使用するアブレーション、非加熱衝撃波を使用するアブレーション、キャビテーション、他の機械的物理的細胞破壊、またはその任意の組合せを用いて行われる、本発明1026の方法。
[本発明1032]
少なくとも一部分をアブレーションする段階が、RF-EMBと冷凍アブレーションの両方を用いて行われる、本発明1031の方法。
[本発明1033]
少なくとも一部分をアブレーションする段階が、冷凍アブレーションを用いて行われる、本発明1031の方法。
[本発明1034]
冷凍アブレーションが、少なくとも1つのクライオプローブを用いて行われる、本発明1033の方法。
[本発明1035]
冷凍アブレーションが、少なくとも1回の凍結-解凍サイクルを含む、本発明1033の方法。
[本発明1036]
冷凍アブレーションが、1~4回の凍結-解凍サイクルを含む、本発明1033の方法。
[本発明1037]
凍結-解凍サイクルの凍結部分が、少なくとも30秒間の長さである、本発明1035の方法。
[本発明1038]
凍結-解凍サイクルの凍結部分が、およそ30秒間~15分間の長さである、本発明1035の方法。
[本発明1039]
凍結-解凍サイクルの凍結部分が、およそ-30℃~-196℃の温度で行われる、本発明1035の方法。
[本発明1040]
凍結-解凍サイクルの解凍部分が積極的解凍プロセスである、本発明1035の方法。
[本発明1041]
凍結-解凍サイクルの解凍部分が消極的解凍プロセスである、本発明1035の方法。
[本発明1042]
一連の電気パルスを傷害部に施す段階をさらに含み、それにより、傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする、本発明1032の方法。
[本発明1043]
電気パルスを施すことがアブレーションと並行して行われる、本発明1042の方法。
[本発明1044]
電気パルスを施すことがアブレーションの前に行われる、本発明1042の方法。
[本発明1045]
電気パルスを施すことがアブレーションの後に行われる、本発明1042の方法。
[本発明1046]
電気パルスがクライオプローブによって施される、本発明1042の方法。
[本発明1047]
一連の電気パルスが、およそ1~1000パルスを含む、本発明1042の方法。
[本発明1048]
一連の電気パルスが、およそ1~4000パルスを含む、本発明1042の方法。
[本発明1049]
電気パルスが100~500 kHzの周波数を含む、本発明1042の方法。
[本発明1050]
電気パルスがバイポーラである、本発明1042の方法。
[本発明1051]
電気パルスが即時電荷反転を有する、本発明1042の方法。
[本発明1052]
治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与する段階をさらに含む、本発明1042の方法。
[本発明1053]
治療有効量の核酸薬物を傷害部に投与する段階をさらに含む、本発明1042の方法。
[本発明1054]
核酸薬物の投与が、電気パルスを施すことの前に行われる、本発明1052の方法。
[本発明1055]
核酸薬物の投与が、電気パルスを施すことと並行して行われる、本発明1052の方法。
[本発明1056]
核酸薬物がDNAプラスミドである、本発明1052の方法。
[本発明1057]
DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、本発明1056の方法。
[本発明1058]
少なくとも一部分をアブレーションする段階が、RF-EMBを用いて行われる、本発明1031の方法。
[本発明1059]
RF-EMBがプローブを用いて行われる、本発明1058の方法。
[本発明1060]
プローブによって一連の電気パルスを施し、それにより、該プローブに直に隣接しているかまたは該プローブと関連している傷害ゾーンを作り、該傷害ゾーンに隣接しているかまたは該傷害ゾーンと関連している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする、本発明1059の方法。
[本発明1061]
一連の電気パルスが、およそ1~1000パルスを含む、本発明1060の方法。
[本発明1062]
一連の電気パルスが、およそ1~4000パルスを含む、本発明1061の方法。
[本発明1063]
電気パルスが100~500 kHzの周波数を含む、本発明1060の方法。
[本発明1064]
電気パルスがバイポーラである、本発明1060の方法。
[本発明1065]
電気パルスが即時電荷反転を有する、本発明1060の方法。
[本発明1066]
治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与する段階をさらに含む、本発明1060の方法。
[本発明1067]
核酸薬物がDNAプラスミドである、本発明1066の方法。
[本発明1068]
DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、本発明1067の方法。
[本発明1069]
腫瘍の一部分が、がん細胞を含み、
該細胞の細胞膜を破壊しかつ該細胞の細胞内成分および膜抗原を露出させる条件下で、アブレーションする段階が行われる、本発明1026の方法。
[本発明1070]
細胞の細胞内成分および膜抗原がアブレーションによって変性しないように、アブレーションが行われる、本発明1069の方法。
[本発明1071]
腫瘍のアブレーション部分の周囲の組織が免疫学的有能細胞およびシグナル伝達分子をアブレーション組織の内外に輸送し得るように、アブレーションが行われる、本発明1069の方法。
[本発明1072]
細胞の露出した細胞内成分および膜抗原の量が免疫系を賦活するのに充分な量であるように、アブレーションが行われる、本発明1070の方法。
[本発明1073]
細胞の露出した細胞内成分および膜抗原の量が免疫寛容を生じさせない量であるように、アブレーションが行われる、本発明1070の方法。
[本発明1074]
治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与する段階をさらに含む、本発明1026の方法。
[本発明1075]
核酸薬物がDNAプラスミドである、本発明1074の方法。
[本発明1076]
腫瘍のアブレーション部分のすぐ周囲の細胞に可逆的にエレクトロポレーションする段階をさらに含む、本発明1074の方法。
[本発明1077]
DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよびその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、本発明1075の方法。
[本発明1078]
腫瘍の少なくとも一部分にアブレーションする段階、および治療有効量の核酸薬物を該腫瘍に投与する段階を含む、患者の腫瘍を処置する方法。
[本発明1079]
アブレーションする段階が、RF-EMBと冷凍アブレーションを用いて行われる、本発明1078の方法。
[本発明1080]
アブレーションする段階が、RF-EMBを用いて行われる、本発明1078の方法。
[本発明1081]
RF-EMBがプローブを用いて行われる、本発明1079の方法。
[本発明1082]
RF-EMBが、一連の電気パルスを施す段階を含み、それにより、プローブに直に隣接している傷害ゾーンを作り、該傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする、本発明1081の方法。
[本発明1083]
一連の電気パルスが、およそ1~1000パルスを含む、本発明1082の方法。
[本発明1084]
電気パルスが100~500 kHzの周波数を含む、本発明1082の方法。
[本発明1085]
電気パルスがバイポーラである、本発明1082の方法。
[本発明1086]
電気パルスが即時電荷反転を有する、本発明1082の方法。
[本発明1087]
核酸薬物がDNAプラスミドである、本発明1080の方法。
[本発明1088]
DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、本発明1087の方法。
[本発明1089]
アブレーションする段階が、冷凍アブレーションを用いて行われる、本発明1078の方法。
[本発明1090]
冷凍アブレーションがプローブを用いて行われる、本発明1089の方法。
[本発明1091]
一連の電気パルスを施す段階をさらに含み、それにより、プローブに直に隣接している傷害ゾーンを作り、該傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする、本発明1090の方法。
[本発明1092]
一連の電気パルスが、およそ1~1000パルスを含む、本発明1091の方法。
[本発明1093]
電気パルスが100~500 kHzの周波数を含む、本発明1091の方法。
[本発明1094]
電気パルスがバイポーラである、本発明1091の方法。
[本発明1095]
電気パルスが即時電荷反転を有する、本発明1091の方法。
[本発明1096]
核酸薬物がDNAプラスミドである、本発明1089の方法。
[本発明1097]
DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、本発明1096の方法。
[本発明1098]
組成物を投与する段階が、注射デバイスを備えたアブレーションプローブを用いて該組成物を投与することを含む、本発明1001~1077のいずれかの方法。
[本発明1099]
アブレーションプローブが、組成物が投与される速度を制御するためのポンプをさらに備える、本発明1098の方法。
[本発明1100]
少なくとも1種類のサイトカインが第1のサイトカインであり、治療有効量の第2のサイトカインを投与する段階をさらに含む、本発明1001~1077のいずれかの方法。
[本発明1101]
第2のサイトカインが第1のサイトカインと同じであっても異なっていてもよい、本発明1100の方法。
[本発明1102]
第2のサイトカインが腫瘍内に注射される、本発明1100の方法。
[本発明1103]
第2のサイトカインが腫瘍内に、該腫瘍をアブレーションする段階の後に注射される、本発明1102の方法。
[本発明1104]
第2のサイトカインが、静脈内、筋肉内、皮下またはその任意の組合せで投与される、本発明1101の方法。
[本発明1105]
組成物の投与前にプローブの位置確認テストを行う工程をさらに含む、本発明1001~1077のいずれかの方法。
[本発明1106]
プローブの位置確認テストを行う工程が、該プローブによるテスト注射を腫瘍内に施すこと、およびテスト注射を施している間に腫瘍内圧を測定することを含む、本発明1105の方法。
[本発明1107]
テスト注射を施している間に、周囲の腫瘍組織と比べて腫瘍内圧の上昇または低下が測定された場合、再度プローブの位置確認を行う工程、あるいは
腫瘍内圧が周囲の腫瘍組織の圧力と変わらない場合、組成物を投与する工程
をさらに含む、本発明1106の方法。
[本発明1108]
患者に、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとの組合せを含む組成物を、腫瘍を処置するのに充分な量で腫瘍内投与する段階;および
腫瘍の少なくとも一部分をアブレーションする段階であって、それにより、傷害ゾーンを作る、段階
を含み、
細胞の細胞膜を破壊しかつ該細胞の細胞内成分および膜抗原を露出させ、該抗原によって免疫系が賦活されるような条件下で、アブレーションする段階が行われる、
転移がんを処置する方法。
[本発明1109]
細胞の細胞内成分および膜抗原がアブレーションによって変性しないように、アブレーションが行われる、本発明1108の方法。
[本発明1110]
腫瘍のアブレーション部分のすぐ周囲の部分が、免疫学的有能細胞およびシグナル伝達分子をアブレーション組織の内外に輸送し得るように、アブレーションが行われる、本発明1108の方法。
[本発明1111]
治療有効量の核酸薬物を腫瘍に投与する段階;および
一連の電気パルスを施す段階であって、それにより、傷害ゾーンに隣接している細胞に可逆的にエレクトロポレーションする、段階
をさらに含む、本発明1108の方法。
[本発明1112]
核酸薬物がDNAプラスミドである、本発明1111の方法。
[本発明1113]
DNAプラスミドが、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNα、またはその任意の組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含む、本発明1112の方法。
[本発明1114]
ツール本体部;
腫瘍内に挿入可能な第1端部;
ガス源と電源とに接続可能な第2端部;
該第1端部に取り付けられた冷却ヘッド;および
該第1端部に取り付けられた少なくとも1つの電極であって、該少なくとも1つの電極が、該腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されており、該冷却ヘッドが、該ツールの第1端部が該腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第2の部分を凍結させるように構成されている、電極
を備える、プローブ。
[本発明1115]
少なくとも1つの電極が、電源とプローブの第1端部とに接続されたワイヤである、本発明1114のプローブ。
[本発明1116]
少なくとも1つの電極が、ツール本体部から伸縮可能である、本発明1114のプローブ。
[本発明1117]
少なくとも1つの電極が、プローブの本体部である、本発明1114のプローブ。
[本発明1118]
ツールの第1端部から伸縮可能であり、該ツールの第2端部に取り付けられた流体リザーバに流体接続されている、少なくとも1本の針
をさらに備える、本発明1114のプローブ。
[本発明1119]
少なくとも1本の針が、流体を流体リザーバから腫瘍の一部分に送達するように構成されている、本発明1118のプローブ。
[本発明1120]
流体リザーバがプラスミドを含む、本発明1119のプローブ。
[本発明1121]
少なくとも1本の針が、複数の分枝で終結している、本発明1119のプローブ。
[本発明1122]
冷却ヘッドがツール本体部から伸縮可能である、本発明1114のプローブ。
[本発明1123]
少なくとも1つの電極がツール本体部から伸縮可能である、本発明1114のプローブ。
[本発明1124]
ツールの本体部を覆う断熱部を備える、本発明1114のプローブ。
[本発明1125]
ツールの本体部を覆う電気絶縁部を備える、本発明1114のプローブ。
[本発明1126]
腫瘍の第1の部分が該腫瘍の第2の部分と重複している、本発明1114のプローブ。
[本発明1127]
中央ツール本体部;
該中央ツール本体部に接続されている第1端部であって、腫瘍内に挿入可能であり、冷却ヘッドを有する、第1端部;
該ツール本体部に接続されている第2端部であって、ガス源に接続可能である、第2端部;ならびに
該中央ツール本体部の一部分を封入するように構成されている鞘部であって、取り外し可能な該鞘部が:
電気的に絶縁された本体部、
電源に取り付けられるように構成されたコネクタ、および
該中央ツール本体部の導電性部分と接続されるように構成された電気接点
を備え、
取り外し可能な該鞘部が、電源から中央ツール本体部を通して第1端部に電気インパルスを伝送することにより該腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されている、鞘部
を備え、
該冷却ヘッドが、該ツールの第1端部が該腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第2の部分を凍結させるように構成されている、
プローブ。
[本発明1128]
鞘部が中央ツール本体部から取り外し可能である、本発明1127のプローブ。
[本発明1129]
不関電極に取り付け可能である、本発明1127のプローブ。
[本発明1130]
ツール本体部と、
腫瘍内に挿入可能な第1端部、および第2端部と、
該第1端部に取り付けられた冷却ヘッドと、
該第1端部に取り付けられた少なくとも1つの電極であって、該少なくとも1つの電極が、該腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されており、該冷却ヘッドが、該ツールの第1端部が該腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第2の部分を凍結させるように構成されている、電極と
を備える、ツール;
該ツールの第2端部から該ツールにガスを供給するための凍結機;ならびに
該ツールの第2端部から該ツールに電気パルスを供給するための電気パルス発生器
を備える、電気パルスとの併用で凍結療法を施すためのシステム。
[本発明1131]
第2のツール本体部;
腫瘍内に挿入可能な該第2のツールの第1端部;
凍結機および電気パルス発生器に接続可能な該第2のツールの第2端部;
該第2のツールの第1端部に取り付けられた冷却ヘッド;ならびに
該第2のツールの第1端部に取り付けられた第2電極
を備える第2のツールを備える、本発明1130のシステム。
[本発明1132]
第2電極および少なくとも1つの電極が、該第2電極と該少なくとも1つの電極の間に広がる腫瘍の第1の部分をアブレーションするように構成されており、第2のクール(cool)の冷却ヘッドが、該ツールの第1端部と該第2のツールの第1端部が該腫瘍内に挿入されると該腫瘍の第3の部分を凍結させるように構成されている、本発明1131のシステム。
[本発明1133]
ツール本体部;
腫瘍内に挿入可能な第1端部;
電源に接続可能な第2端部;および
該第1端部に取り付けられた第2電極であって、腫瘍の第1の部分が、前記少なくとも1つの電極と該第2電極の間に広がっている、第2電極
を備える第2のツールを備える、本発明1130のシステム。
[本発明1134]
電源に電気的に接続された不関電極を備える、本発明1130のシステム。
本発明の1つまたは複数の態様の詳細を、添付の図面および以下の説明に示す。特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本発明における使用のための方法および材料を本明細書に記載している;当技術分野において公知の他の適切な方法および材料もまた使用することができる。材料、方法および実施例は実例にすぎず、限定を意図するものではない。本明細書において挙げた刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリーおよび他の参考文献はすべて、参照によりその全体が組み入れられる。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)に支配される。
【0045】
本発明の他の特徴、目的および利点は、本説明および図面ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1A~Bは、RF-EMB型アブレーションに加えてCTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤およびサイトカインでの処置の前および後での患者Aの骨盤領域のCTスキャンの画像である。矢印は、処置前(図1A)および処置後(図1B)の初期腫瘍構造の位置を示す。図1Aは、処置前の患者Aの骨盤領域のCTスキャンである。図1Bは、処置後の患者Aの骨盤領域のCTスキャンである。
図2】実施例1に記載の処置後の前立腺特異抗原(PSA)の血中レベルの低下を示すグラフである。
図3図3A~Bは、アブレーションに加えてCTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤およびサイトカインでの処置の前および後での患者Bの骨盤領域のCTスキャンの画像である。矢印は、処置前(図3A)および処置後(図3B)の初期腫瘍構造の位置を示す。図3Aは、処置前の患者Bの骨盤領域のCTスキャンである。図3Bは、処置後の患者Bの骨盤領域のCTスキャンである。
図4】処置後の患者BにおけるPSAの血中レベルの低下を示すグラフである。
図5】2つのクライオプローブ電極を有し、電気パルスを送達して可逆的エレクトロポレーションをもたらすことができるデバイスである。
図6】1つのクライオプローブ電極と1つの非クライオプローブ電極を有するデバイスの一態様である。
図7】1つのクライオプローブと2つの格納式電極針を有するデバイスの一態様である。
図8A】1つのクライオプローブと、プラスミドを注射するために構成された2つの格納式電極針とを有するデバイスの一態様である。
図8B】1つのクライオプローブと、プラスミドを注射するために構成された格納式電極針とを有するデバイスの一態様である。
図9】1つのクライオプローブと、この1つのクライオプローブ上に2つの電極とを有するデバイスの一態様である。
図10】1つのクライオプローブ電極と1つの不関電極を有するデバイスの一態様である。
図11】電気療法送達部分から着脱可能なクライオプローブ処置部分を有するデバイスの一態様である。
【0047】
種々の図面における同様の参照符号は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の詳細な説明
本開示は、少なくとも一部において、がん処置のための新しい組成物に基づいており、該組成物は、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとを含み、各々は治療有効量での組合せで、薬学的に許容される担体中に存在している。この組合せは、一部の場合では、核酸薬物をさらに含み得る。また、本開示は、少なくとも一部において、がんの処置のための新しい方法の開発に基づいており、該方法は、患者に、本明細書に開示の組成物を腫瘍内投与することを含む。さらに、本明細書に記載の一部の特定の方法を行うために構成されたデバイスを記載する。
【0049】
本明細書に記載の組成物、方法およびデバイスは、対象のがんの処置に特に有用である。用語「がん」は、自律的増殖能を有する細胞をいう。かかる細胞の例としては、急速増殖性細胞の増殖を特徴とする異常な状態(“state”または“condition”)を有する細胞が挙げられる。この用語は、組織病理学的型または浸潤性段階に関係なく、がん性増殖物、例えば腫瘍;転移性組織および悪性に形質転換された細胞、組織または器官を包含していることを意図する。また、種々の器官系、例えば呼吸器系、心血管系、腎系、生殖器系、造血系、神経系、肝系、胃腸系および内分泌系の悪性腫瘍;ならびに腺癌も包含しており、ほとんどの結腸がん、腎細胞癌、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸のがん、および食道がんなどの悪性腫瘍が包含される。
【0050】
本明細書に記載の組成物、方法およびデバイスは、対象の自然に発生するがんを処置するために使用され得る。「自然に発生する」がんとしては、対象へのがん細胞の移植によって実験的に誘導したものでない任意のがんが挙げられ、例えば、自発的に発生するがん、患者が発癌物質(1種類または複数種)に曝露されることによって引き起こされるがん、導入癌遺伝子の挿入または腫瘍抑制遺伝子のノックアウトに起因するがん、および感染、例えばウイルス感染によって引き起こされるがんが挙げられる。
【0051】
癌、腺癌および肉腫の処置は本発明の範囲内である。用語「癌」は当技術分野で認知されており、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍をいう。また、この用語は癌肉腫も包含しており、これには、癌性組織と肉腫性組織で構成された悪性腫瘍が包含される。「腺癌」は、腺組織から生じた癌または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成している癌をいう。用語「肉腫」は当技術分野で認知されており、間葉から生じた悪性腫瘍をいう。
【0052】
本発明の方法、組成物およびデバイスを用いて処置され得るがんとしては、例えば、胃、結腸、直腸、口/咽頭、食道、喉頭、肝臓、膵臓、肺、乳房、子宮頚部、子宮体、卵巣、前立腺、精巣、膀胱、皮膚、骨、腎臓、脳/中枢神経系、頭部、頸部および喉のがん、例えば腫瘍;とりわけ、肉腫、絨毛癌およびリンパ腫が挙げられる。
【0053】
転移性腫瘍は、本明細書に記載の方法を用いて処置され得る。例えば、本明細書に記載の処置方法を、対象の身体内のある部位に存在する腫瘍(例えば、原発腫瘍)に対して行うことにより、腫瘍に対する対象の免疫防御が刺激され、対象の身体内の別の部位(1つまたは複数)の同じ、またはさらには異なる型の腫瘍(例えば、転移性腫瘍)に対する免疫攻撃が引き起こされ得る。転移性腫瘍は、多数の原発腫瘍型、例えば非限定的に、前立腺、結腸、肺、乳房、骨および肝臓起源のものから生じる場合もあり得る。転移は、例えば、原発腫瘍から流れてきた腫瘍細胞が血管内皮に付着し、周囲組織内に進入し、原発腫瘍とは別個の部位で増殖して独立した腫瘍を形成した場合に生じる。
【0054】
当業者には、本明細書に記載の組成物、方法およびデバイスがまた、非がん性増殖物、例えば非がん性腫瘍を処置するためにも使用され得ることが認識されよう。例示的な非がん性増殖物としては、例えば、良性腫瘍、腺腫、腺筋上皮腫(adenomyoepthelioma)、導管もしくは小葉の過形成、線維腺腫、線維腫、線維症ならびに単純嚢胞、腺症腫瘍、血腫、過誤腫、管内乳頭腫、乳頭腫、顆粒細胞腫、血管腫、脂肪腫、髄膜腫、筋腫、母斑、骨軟骨腫、葉状腫瘍、神経腫(例えば、聴神経腫、神経線維腫、および化膿性肉芽腫)、または疣(例えば、足底疣贅、生殖器疣、扁平疣贅、爪周囲の疣および糸状疣贅)が挙げられる。
【0055】
当業者には、対象が、医師(または診断対象の対象に適切な場合は獣医)により、当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、患者の病歴を評価すること、診断用検査を行うこと、および/またはイメージング手法を使用することによって、本明細書に記載の病状、例えばがんに苦しんでいる、またはそのリスクがあると診断され得ることが認識されよう。
【0056】
本明細書に記載のように、例示的な患者の腫瘍の処置方法の一例は:(i)任意で、方法の実施の前に、患者の腫瘍の位置を特定する工程;(ii)本明細書に記載の薬学的組成物を該腫瘍に腫瘍内投与する工程(例えば、少なくとも2種類の免疫チェックポイント阻害剤と少なくとも1種類のサイトカインとを含む薬学的組成物);(iii)任意で、該腫瘍の少なくとも一部分にアブレーションする工程;(iv)任意で、治療有効量の核酸薬物を該腫瘍に投与する工程;および(v)任意で、一連の電気パルスを該腫瘍に、傷害部の周囲領域が可逆的にエレクトロポレーションされるように施す工程を含む。腫瘍の位置の特定は、当技術分野において公知の手法(例えば、X線撮影、磁気共鳴画像法、医療用超音波検査または超音波、内視鏡検査、エラストグラフィ、触覚イメージング、サーモグラフィ、医療用写真撮影、核医学イメージング手法、例えば陽電子放出断層撮影および単一光子放射コンピュータ断層撮影、光音響イメージング、サーモグラフィ、断層撮影、例えばコンピュータ支援断層撮影、心エコー検査ならびに近赤外分光分析法など)によって行われ得る。腫瘍をアブレーションする任意の工程(iii)は、薬学的組成物の投与(ii)の前に行っても、該投与と並行して行っても、該投与の後に行ってもよく、アブレーションにより、腫瘍の細胞内成分および膜抗原が露出した傷害領域がもたらされ得る。アブレーションは、本明細書に記載の手法を用いて、腫瘍の一部分または全部に対して行われ得る。任意で、治療有効量の核酸薬物を該腫瘍に投与すること(iv)が、工程(ii)および(iii)の前、該工程と並行して、または該工程の後に行われ得る。任意で、腫瘍へ一連の電気パルスを施すこと(v)は、核酸薬物の投与(iv)と並行して、または該投与の後に;あるいは工程(ii)および(iii)の前、該工程と並行して、および/または該工程の後に行われ得る。
【0057】
したがって、本明細書において、チェックポイント阻害剤とサイトカイン(1種類または複数種)の混合物を含む、薬学的組成物を提供する。チェックポイント阻害剤は、免疫系を賦活して腫瘍を攻撃し、免疫系の下方調節を担う免疫応答タンパク質を阻害する機能を果たす。チェックポイント阻害剤は、例えば、CD137、CD134、PD-1、KIR、LAG-3、PD-L1、CTLA-4、B7.1、B7H3、CCRY、OX-40および/またはCD40の阻害剤であり得る。薬学的組成物は、任意の組合せのチェックポイント阻害剤を含み得る。例えば、特に有用なのはPD-1阻害剤とCTLA-4阻害剤の組合せである。当業者であれば、多くの他の組合せも有用であることが認識され得よう。非限定的な組合せリストとしては、CD137阻害剤とCD134阻害剤;PD-1阻害剤とKIR阻害剤;LAD-3阻害剤とPD-L1阻害剤;CTLA-4阻害剤とCD40阻害剤;CD 134阻害剤とPD-1阻害剤;KIR阻害剤とLAG-3阻害剤;PD-L1阻害剤とCTLA-4阻害剤;CD40阻害剤とCD 137阻害剤;CTLA-4阻害剤とPD-L1阻害剤;PD-1阻害剤とCD40阻害剤、または当技術分野において公知の2種類以上のチェックポイント阻害剤の任意の組合せが挙げられる。また、薬学的組成物には少なくともサイトカインも含められ得る。少なくとも1種類のサイトカインは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよび/またはその組合せを含み得る。該組成物は第1のサイトカインと第2のサイトカインを含み得る。当業者であれば、一部の場合において、第1および第2のサイトカインは異なっていてもよいことが認識されよう。
【0058】
従来、チェックポイント阻害剤は静脈内投与されており、これにより、体内におけるこの細胞致死剤の非特異的分布の結果、重篤な、場合によっては致死性の全身毒性がもたらされる場合があり得る。これらの剤の非特異的分布によってがん細胞と正常細胞の両方が死滅し、処置レジメンおよび患者の転帰にマイナスの影響を及ぼし得る。本発明の腫瘍内法では、薬物を腫瘍の微小環境内に閉じ込め、正常な細胞および組織を薬物の毒性から離すことにより、全身毒性が低減され得、生じる副作用が少なくなり得る(Intratumoral Immunization: A New Paradigm for Cancer Therapy. Clin Cancer Res. 2014 April 1; 20(7): 1747-1756. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-13-2116)。また、本発明の腫瘍内法では、治療上有効であるのに必要な投与組成物の量が少なくなることによっても全身毒性が低減され得、生じる副作用が少なくなり得る。さらに、がん細胞と免疫系の両方を標的化する手法を併用することにより、薬学的組成物が、がんの抑止においてだけでなく有効な抗腫瘍免疫応答の誘発においても、より有効となり得る。この抗腫瘍免疫応答は、次いで転移部位を標的指向し、対象内の至る所のがんを消失させ得る。
【0059】
組成物に、当技術分野においてがんの処置に有効であることが既知の1種類または複数種の治療用剤および/または生物製剤、すなわち抗がん剤、あるいは当技術分野において免疫系の賦活に有効であることが既知の1種類または複数種の治療用剤および/または生物製剤、すなわち、免疫賦活薬または免疫調節薬をさらに含めてもよい。かかる薬学的組成物は、上記のようながんを処置するために使用され得る。
【0060】
一部の場合では、薬学的組成物は、治療有効量の核酸薬物をさらに含む。核酸薬物は、例えば、DNA、nDNA、mtDNA、gDNA、RNA、siRNA、miRNA、mRNA、piRNA、アンチセンスRNA、snRNA、snoRNA、vRNAなどであり得る。例えば、核酸薬物はDNAプラスミドであり得る。かかるDNAプラスミドは、GM-CSF、IL-12、IL-6、IL-4、IL-2、TNF、IFNγ、IFNαおよび/またはその組合せからなる群より選択される遺伝子をコードしているヌクレオチド配列を含み得る、本質的に該ヌクレオチド配列からなり得る、または該ヌクレオチド配列からなり得る。核酸薬物は、臨床的有用性、例えば、細胞の治療効果の向上または患者への治療用剤の供給を有し得る。他の場合では、核酸薬物はマーカーまたは耐性遺伝子としての機能を果たし得る。ヌクレオチド配列は、細胞から分泌され得る遺伝子をコードしても、細胞から分泌され得ない遺伝子をコードしてもよい。核酸薬物は、遺伝子と、該遺伝子の発現を高めるためのプロモーター配列とをコードしてもよい。
【0061】
当業者であれば、本記載の組成物を、がんおよび/または対象の個々の局面、例えば、腫瘍サイズ、腫瘍の位置、対象、薬物応答の臨床証拠などに応じて適合させ得ることが認識され得よう。
【0062】
本明細書において提供する薬学的組成物は、送達用剤または薬学的に許容される担体を含み得る。本明細書で用いる場合、用語「薬学的に許容される担体」には、医薬の投与に適合性の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが包含される。また、補助活性化合物を、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片を含む薬学的製剤に組み込んでもよい。
【0063】
好適な薬学的組成物を製剤化する方法は当技術分野において公知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005; およびDrugs and the Pharmaceutical Sciences: a Series of Textbooks and Monographs(Dekker, NY)シリーズの書籍を参照のこと。例えば、非経口、皮内または皮下適用に使用される液剤または懸濁剤は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;バッファー、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および張度の調整のための剤、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースを含み得る。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調整され得る。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは反復用量バイアル内に封入され得る。
【0064】
本明細書に記載の薬学的組成物(例えば、チェックポイント阻害剤、サイトカイン、核酸薬物および/またはその組合せ)を注射デバイスによって腫瘍内送達してもよく、ここで、注射デバイスはプローブの一部であってもよい。本明細書に記載のプローブは、種々のアブレーション法のために構成され得る。さらに、プローブはまた、本明細書に記載の方法を併用するために構成され得、例えば、クライオプローブは、電気パルス、冷凍剤および/または薬物組成物を投与するために構成され得る。
【0065】
注射に適した薬学的組成物としては、滅菌水性液剤(水溶性の場合)、分散剤、および滅菌注射用液剤または分散剤の即時調製のための滅菌粉末剤が挙げられ得る。静脈内投与のためには、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は滅菌されていなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流体であるのがよい。これは、製造条件および保存条件下で安定であるのがよく、微生物、例えば細菌および真菌の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコールなど)ならびにその適切な混合物を含有している溶媒または分散媒であり得る。適正な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0066】
微生物の作用の抑制は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって行われ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、および塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0067】
滅菌注射用液剤は、活性化合物を必要とされる量で適切な溶媒中に、必要に応じて、上記に列挙した成分のうちの1種類または組合せとともに組み込んだ後、濾過滅菌することにより調製され得る。一般的に、分散剤は、活性化合物を滅菌ビヒクル(これは、ベースの分散媒および上記に列挙したもののうちの必要とされる他の成分を含有する)に組み込むことにより調製される。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌粉末剤の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、先に滅菌濾過した液剤から活性成分+任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。
【0068】
一部の態様では、治療用化合物は、治療用化合物を身体からの急速な排出から保護する担体を用いて調製され得る(例えば、制御放出製剤、例えば、埋入物およびマイクロカプセル封入送達系)。
【0069】
薬学的組成物は、容器、パック、カートリッジまたはディスペンサー内に、投与のための使用説明書と一緒に封入され得る。
【0070】
治療用剤および/または生物製剤は有効量にて、所望の結果が得られるのに必要な投薬量および期間で投与され得る。有効量は、1つまたは複数の投与、適用または投薬量で投与してもよい。薬学的組成物の治療有効量(すなわち、有効投薬量)は、選択される薬学的組成物に依存する。組成物は、1日1回または複数回から、週に1回または複数回まで、例えば、1日おきに1回で投与され得る。当業者には、一部の特定の要素、例えば非限定的に、疾患または障害の重症度、処置歴、対象の一般健康状態および/または年齢ならびに他の疾患の存在が、対象を有効に処置するために必要とされる投薬量およびタイミングに影響を及ぼすことがあり得ることが認識されよう。さらに、治療有効量の本明細書に記載の薬学的組成物での対象の処置は、単回処置を含んでも、一連の処置を含んでもよい。
【0071】
本明細書に記載の方法の一部の態様では、本明細書に記載の組成物は、1回または複数回の投与で投与され得る。このような1回または複数回の投与は同じ投与方法であっても異なる投与方法であってもよく、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、腫瘍内またはその任意の組合せが挙げられる。一部の場合では、例えば、第1の組成物が腫瘍内投与され、第2の組成物が皮下投与される。一部の場合では、第1および第2の組成物が同時に、順に、または一連の処置で投与される。一部の場合では、第1および第2の組成物は、同じである、異なる、または一部同じである。一部の場合では、本明細書に記載の方法は、2回以上の投与を含む。一部の場合では、第1の投与は、少なくとも2種類のチェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤とCTLA-4阻害剤)および少なくとも1種類のサイトカイン(例えば、GM-CSF)の腫瘍内投与である。
【0072】
投薬量レジメンは、最適な治療応答がもたらされるように調整され得る。例えば、数回の分割用量を毎日投与してもよく、用量を、治療状況の緊急性に示されるとおりに比例的に減らしてもよい。当業者は、本明細書に開示の新しいモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を対象に投与するのに適した投薬量および投与レジメンを承知している。例えば、Physicians' Desk Reference, 63rd edition, Thomson Reuters, November 30, 2008を参照のこと。例えば、治療用化合物の投薬量、毒性および治療有効性は、標準的な薬学的手順により細胞培養物または実験動物において、例えば、LD50(集団の50%が致死する用量)およびED50(集団の50%において治療有効な用量)を求めるために測定され得る。毒性効果と治療効果の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50の比で表示され得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を使用してもよいが、非感染細胞に対する損傷の可能性を最小限にし、それにより副作用を少なくするために、かかる化合物が罹病組織部位に標的化される送達系が設計されるように注意すべきである。
【0073】
細胞培養物のアッセイおよび動物試験で得られたデータは、ヒトにおける使用のための一連の投薬量の設定に使用され得る。かかる化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くない、ED50を含む循環濃度の範囲内である。投薬量は、この範囲内で、使用される投薬形態および使用される投与経路に応じて異なり得る。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養物のアッセイで推定され得る。動物モデルでは、細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の最大の半分の抑止が得られる試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲が得られる用量が設定され得る。かかる情報は、ヒトにおいて有用な用量をより厳密に決定するために使用され得る。血漿レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0074】
本明細書に開示のがんの処置方法では、任意で、腫瘍の少なくとも一部分のアブレーションが使用される。外科的除去と比べたときのアブレーションの固有の局面の1つは、腫瘍を除去するための身体の防御機構および治癒機構のために腫瘍をインサイチュで残せることである。これにより、死滅した腫瘍を認識し、患者に自身のがんに対する本質的に自己免疫性を付与するために身体の免疫防御機構を利用する機会がもたらされる。さらに、がん細胞の抗原に対する免疫系が賦活されることにより、本明細書に開示の方法では、(i)原発腫瘍が処置され;(ii)がん細胞の抗原に対する免疫応答が賦活され;(iii)転移性病変を標的化する免疫系が誘発され得る。
【0075】
本明細書に記載のように、アブレーションの方法は、アブレーションされた腫瘍の免疫学的応答に影響を及ぼすことがわかっている少なくとも2つの要素に影響を及ぼす。1つは、タンパク質の構造に対する、したがって腫瘍タンパク質の抗原性に対するアブレーションプロセスの効果である。第2の要素は、アブレーションモダリティに関連する細胞死の機構である。一部の特定の条件下では、ネクローシスによって細胞が破裂し、さまざまな細胞内内容物が細胞外環境に流れ出し、樹状細胞の共刺激が引き起こされ、T細胞の増殖および活性化がもたらされる。アポトーシスは細胞をインタクトなままにし、細胞の内容物は封じ込められており、共刺激が妨げられる。この細胞内のものの露出の欠如と共刺激の欠如により、T細胞の活性化および増殖が抑制されることによって免疫学的効果が弱まる。
【0076】
当技術分野において多くのアブレーションプロセスが知られており、冷凍アブレーション、熱アブレーション、IRE、RF-EMB、RF-EMB型アブレーション、超音波アブレーション、高密度焦点式超音波アブレーション、光線力学療法を使用するアブレーション、非加熱衝撃波を使用するアブレーション、キャビテーション、他の機械的物理的細胞破壊、またはその任意の組合せが挙げられる。このような異なる型のアブレーション法は、タンパク質の構造および細胞死の機構に関して異なる転帰を有し得る。例えば、熱アブレーションでは、タンパク質の変性のため構造が破壊され、また、組織の下層のコラーゲンマトリックスも破壊される。タンパク質および組織のこの破壊により、ロバストな免疫学的応答が起こりにくくなる。低温、例えば、冷凍アブレーションでは、タンパク質が変性され得、タンパク質と組織の両方の構造が破壊され得る。不可逆的エレクトロポレーション(IRE)および非熱アブレーション用モダリティ、例えばRF-EMBなどでは、構造が確保され、したがって、膵臓、中心の肝臓および他の領域、例えば頭頸部のがんを処置するために使用され得る。IREは、細胞膜の透過性を高めるために細胞に電場を印加する手法である。高電圧でのIREによって標的細胞は破壊されるが、近隣細胞は影響を受けないままである。しかしながら、IREではアポトーシス細胞死が引き起こされ、上記のように、これは免疫反応のためには最適でない。ラジオ波電気的膜破壊(RF-EMB)は別の非熱的モダリティであり、これは、細胞膜を電気により完全破壊することによってネクローシスをもたらす(Onik PCT/US2014/068774参照、これは、その全体が本明細書に組み入れられる)。また、一部の特定の条件下では、RF-EMBがDNAプラスミドの送達に使用され得る。また、可逆的エレクトロポレーション(RE)をDNAプラスミドの送達に使用してもよい。REはIREと類似しているが、標的細胞に印加される電気は、標的細胞の電場閾値より小さい。したがって、細胞は、電場を取り除くと回復し、細胞膜が再構築され、細胞機能を継続することができる。REは、この可逆的要素によって生存細胞内への核酸(例えば、DNAプラスミド)の進入が可能になるため、遺伝子療法のためのツールとして使用され得る。
【0077】
本明細書に記載のアブレーション法は、単独で使用しても他のアブレーション法との組合せで使用してもよい。2つ以上のアブレーション法を組み合わせて使用してもよい。方法は、逐次適用しても並行して適用してもよい。一部の場合では、アブレーション法の組合せは、組織に対して相乗効果を有する。組合せの非限定的なリストには、例えば、熱アブレーションとRF-EMB、冷凍アブレーションとRF-EMB、IREとRF-EMB、REとRF-EMB、IREと冷凍アブレーション、熱アブレーションと冷凍アブレーション、熱アブレーションとIRE、REとIRE、熱アブレーションとRE、および2つ以上の方法を使用する任意の組合せが包含される。2つ以上のアブレーション法は、並行して使用しても逐次使用してもよい。
【0078】
一部の場合では、本明細書に記載の方法により、RF-EMBと冷凍アブレーション手法の組合せを用いてRF-EMB型傷害部を作る。このアブレーション法の組合せは、組織に対して相乗効果をもたらし得る。相乗効果は、他の手段よりも少ない必要エネルギー投入量でRF-EMB型傷害部を作ることであり得る。例えば肝臓組織における結果としては以下が挙げられる:非炎症性凝固性の無菌壊死部に隣接している領域において、肝臓の構造の改変、例えば胆管の小管の拡張がみられること、ならびに細胞質の細胞小器官の固有のびまん性の改変、例えばミトコンドリアのクリスタの変形および小胞体の空胞化。
【0079】
当業者であれば、組成物の投与または処置を施すことは、本明細書における方法において開示しているように、がんの個々の局面、例えば、腫瘍サイズ、腫瘍の位置、対象に応じて適合させ得ることが認識され得よう。当業者であれば、種々のアブレーション法の各々の変形型が当技術分野において知られており、報告されていることが認識され得よう(例えば、Percutaneous Prostate Cryoablation. Edited by Gary Onik, Boris Rubinsky, Graham Watson, and Richard Ablin. Quality Medical Publishing, St Louis, MO. 1995など、これは、その全体が本明細書に組み入れられる)。
【0080】
アブレーションパラメータの変動性および多様性の一例として、本明細書に記載のように、冷凍アブレーションプロセスは、調整可能な可変量、例えば、凍結-解凍サイクル数、凍結速度、サイクルの解凍部分などを含み、アブレーションの結果、例えば、傷害部の大きさ、周囲組織に対する損傷、および傷害部に対する免疫応答に影響を及ぼす。同様に、RF-EMBプロセスは、例えば電界強度、周波数、極性、形状持続時間、数およびスペーシングなどの可変量を含み、これらも同様に、アブレーションの結果に影響を及ぼし得る。電気パルスとの腫瘍細胞の近接性によって、任意の具体的な細胞に対するRF-EMBの強度および結果が決定される。例えば、電場強度は施される点(例えば、プローブ)から小さくなるため、施される点から最も遠い細胞は低強度の電場で処置され、そのため、アブレーションされるのではなく、可逆的にエレクトロポレーションされ得る。
【0081】
さらに、遺伝子療法の送達のための可逆的エレクトロポレーション(RE)の使用は、傷害部周囲のエレクトロポレーションの範囲、可逆性および送達が決定されるように修正され得る。当業者であれば、エレクトロポレーションの可変量が当技術分野において知られており、報告されていることが認識され得よう(Kee Stephen T, Gehl Julie, Lee Edward W. Clinical aspects of electroporation. New York: Springer; 2011. ISBN 978-1-4419-8362-6 # 256 pages、これは、その全体が本明細書に組み入れられる)。このような可変量としては、非限定的に、電気パルスの強度の変動、電気パルスのタイミング、パルス数、パルスの極性などが挙げられる。本明細書に記載のように、腫瘍のアブレーションは、薬学的混合物の投与と同時に行っても、該投与の前に行っても、該投与の後に行ってもよい。核酸薬物は、アブレーションプロセスの前に投与しても、該プロセスの後に投与しても、該プロセス中に投与してもよい。核酸薬物は、薬学的混合物の投与の前に投与しても、該投与後に投与しても、該投与中に投与してもよい。また、核酸薬物は、エレクトロポレーションプロセスの前に投与しても、該プロセス中に投与してもよい。
【0082】
方法は単独で使用しても、患者のがんを処置するための他の方法との組合せで使用してもよい。したがって、一部の場合では、本明細書に記載の方法は、外科処置(例えば、腫瘍の一部分を除去するため)、化学療法、免疫療法、遺伝子療法および/または放射線療法を用いて患者を処置することをさらに含み得る。本明細書に記載の組成物および方法は、患者に任意の時点で、例えば、外科処置、化学療法、免疫療法、遺伝子療法および/または放射線療法の前、これらの最中および/またはこれらの後に施され得る。
【0083】
また、1種類または複数種の本明細書に記載の薬学的組成物を含むキットを提供する。キットは、一般的に、以下の主要要素:包装材、上記の結合組成物を含む試薬、任意で、対照および使用説明書を含む。包装材は、前記結合組成物が入ったバイアル(もしくは、いくつかのバイアル)、対照が入ったバイアル(もしくは、いくつかのバイアル)、および/または本明細書に記載の方法における使用のための使用説明書を収容するための箱様構造であり得る。一部の場合では、包装材には、デジタルデバイスにより体系的な使用説明書に従って制御され得るカートリッジが内包される。当業者は、包装材を、個々の必要性に適するように容易に修正することができよう。
【0084】
一部の態様では、本明細書において提供するキットは、少なくとも1種類(例えば、1、2、3、4、5種類またはそれ以上)の本明細書に記載の組成物、および当技術分野においてがんの処置に有効であることが知られた治療用剤または生物製剤が入った別個のバイアル内の少なくとも1種類(例えば、1、2、3、4、5種類またはそれ以上)の他の組成物を含む少なくとも1種類(例えば、1、2、3、4、5種類またはそれ以上)の組成物を含み得る。
【0085】
本明細書において提供する組成物およびキットは、上記の任意の方法(例えば、処置方法)に従って使用され得る。例えば、組成物およびキットは、がんを処置するために使用され得る。当業者は、本明細書において提供する組成物およびキットの他の好適な用途を承知しており、かかる用途のために組成物およびキットを使用することができよう。
【0086】
デバイス
一部の態様では、注射デバイスは、電気パルスを放出することができかつプラスミドを送達することもできるクライオプローブである。
【0087】
図5を参照されたい。注射デバイス100は、極低温ならびに電気パルスの両方を組織および/または腫瘍に施すことができるシステム101の一部である。注射デバイス100は、正電荷を有するクライオプローブ110と負電荷を有するクライオプローブ130を含む2つの電極クライオプローブを有する。各クライオプローブ110、130は一般的には円筒型のプローブであり、これは、第1端部111、131において標的組織102内に挿入され、第2端部112、132においてユーザーによって把持される。各クライオプローブ110、130は、ユーザーによって個々に操作され得る。あるいはまた、ユーザーが両方のクライオプローブ110、130を標的組織102内に、互いから既知の間隔で同時に挿入することが可能である、より大きなハウジング(明瞭性重視のため図示せず)内に、両方のクライオプローブ110、130を収納してもよい。一部の態様では、ハウジング内に収納された2つのクライオプローブ110、130は、2つのクライオプローブ電極110、130を離す間隔をユーザーが増減できるように配置され得る。
【0088】
各クライオプローブ110、130は、クライオプローブ110、130の第1端部111、131から第2端部112、132まで通っている中央ガス供給カニューレ114、134を有する。各中央ガス供給カニューレ114、134は、各プローブの第2端部112、132で凍結機190に取り付けられる。凍結機190は冷却ガス源としての機能を果たし、冷却ガスは、ガス供給ライン192を通してポンプ輸送され、クライオプローブの第2端部112、132で中央ガス供給カニューレ114、134に入り、クライオプローブの第1端部111、131の冷却ヘッド116、136まで送達され、それにより組織102に送達される。冷却ヘッド116、136は、当技術分野において公知のように組織102を突き刺して内部に挿入されるように構成されており、形状は平坦であっても先が尖っていてもよい。冷却ヘッド116、136は一般的に、金属製であるか、または中央ガス供給カニューレ114、134を通して冷却ヘッド116、136内に入った冷ガスが組織102と熱的相互作用することが可能であるように高いコンダクタンスを有する他の材質製である。
【0089】
ガスリターンチャネル118、138は中央ガス供給カニューレ114、134を同心円状に囲み、冷却ガスが冷却ヘッド116、136に入り、次いでガスリターンチャネル118、138内を逆流し、ガスリターンライン194を通して凍結機190に戻るようにこのカニューレに流体接続されている。断熱層120、140は、クライオプローブ110、130を把持しているユーザーを、ガスリターンチャネル118、138内を通っている冷ガスから保護する。電気絶縁層122、142および断熱層120、140は、ガスリターンチャネル118、138の外表面を同心円状に囲む。電気絶縁層122、142は、電気パルス発生器180によって発生する電気パルスからユーザーを保護し、各クライオプローブ110、130の本体部を電気的に隔離する。電気絶縁層122、142、断熱層120、140およびガスリターンチャネル118、138の外表面の順序は、異なる順序で配置されてもよい。
【0090】
電気パルス発生器180は、ワイヤ182によってクライオプローブ110、130の第2端部112、132に、電気パルスが冷却ヘッド116、136に伝送されそれによって組織102に施されるように接続されている。したがって、冷却ヘッド116、136は、標的組織102へ電気インパルスだけでなく低温を施す二重の機能を果たす。電気パルスは、クライオプローブ110、130の長さ方向に沿って、電気絶縁層122、142と断熱層120、140の間の層状のワイヤを通して伝送され得る。一部の態様では、ガスリターンチャネル118、138の少なくとも一部分が導電性であり、電気パルスを、冷却ヘッド116、136を通して組織102に伝送する機能も果たす。
【0091】
電気パルス発生器180は、正電荷を有するクライオプローブ110から正電荷を、および負電荷を有するクライオプローブ130から負電荷を、生成するように配置される。したがって、注射デバイス100は、電気パルスならびに冷温を標的組織102に送達し得る。簡単にするため、正電荷を有するクライオプローブ110と負電荷を有するクライオプローブ130は構造が同一であり得る。
【0092】
2つのクライオプローブ110、130は標的組織102内に、互いに所望の間隔をあけて(例えば、2 mm、5 mm、10 mm)挿入され、それにより、クライオプローブ110、130の先端周囲に存在しかつ両先端間に広がる凍結傷害ゾーン104を作る。また、2つのクライオプローブ110、130のこの配置により、凍結傷害ゾーン104と関連するRE(可逆的エレクトロポレーション)ゾーン106も作る。
【0093】
凍結傷害ゾーン104の構造は、ユーザーによって変更することが可能である。一部の場合では、冷却ヘッド116、136はクライオプローブ110、130の本体部内に格納式であり、例えば、断熱層120、140の端部から延びる冷却ヘッド116、136の長さは、冷却ヘッド116、136を、より多くまたは全部の表面積が断熱層120、140で覆われるように格納することによって短くなり得る。同様に、断熱層120、140の端部から延びる冷却ヘッド116、136の長さは、冷却ヘッド116、136を、より少ない表面積が断熱層120、140で覆われるように伸ばすことにより長くなり得る。断熱層120、140および電気絶縁層122、144は、注射デバイス100の使用中に配置変更可能である。また、ユーザーは、凍結機190から出て、組織102に入るガスの温度を修正することができる。REゾーン106の構造は、ユーザーが電気パルス発生器180から出る電気パルスを調節することにより変更することができる。この可変量は、凍結傷害ゾーン104がREゾーン106より小さくなるように、同じサイズになるように、または大きくなるように改変され得る。
【0094】
図6を参照されたい。低温と電気パルスの両方を標的組織202に送達し得るさらなる一態様の注射デバイス200を示す。電極クライオプローブ200の要素の多くは、図5に示したものと同一である。正電荷を有するクライオプローブ210は、第1端部211と第2端部212、および第1端部211から第2端部212まで通っている中央ガス供給カニューレ214を有する。中央ガス供給カニューレ214は第2端部212で、冷却ガス源である凍結機290に取り付けられており、冷却ガスは、ガス供給ライン292を通してポンプ輸送され、中央ガス供給カニューレ214に入り、クライオプローブの第1端部211の冷却ヘッド216まで送達され、かくして組織202に送達される。冷却ヘッド216は、当技術分野において公知のように組織202を突き刺して内部に挿入されるように構成されており、形状は平坦であっても先が尖っていてもよく、一般的に、金属製または高いコンダクタンスを有する他の材質製である。
【0095】
ガスリターンチャネル218は中央ガス供給カニューレ214を同心円状に囲み、冷却ガスが冷却ヘッド216に入り、次いでガスリターンチャネル218内を逆流し、ガスリターンライン294を通して凍結機290に戻るように、カニューレ214に流体接続されている。断熱層220は、クライオプローブ210を把持しているユーザーを、ガスリターンチャネル218内を通っている冷ガスから保護する。電気絶縁層222はガスリターンチャネル218の外表面を同心円状に重層し、ガスリターンチャネル218はまた断熱層220によって同心円状に囲まれている。
【0096】
電気パルス発生器280は、ワイヤ282によってクライオプローブ210の第2端部212に、また、電気プローブ230の第2端部232にも接続されている。電気プローブ230は、クライオプローブ210と類似しており、組織202内に挿入可能な第1端部231と、電気パルス発生器280に接続される第2端部232を有する。しかしながら、電気プローブ230は凍結機290に接続されておらず、凍結療法を組織202に施すための構造(例えば、中央ガス供給カニューレ、ガスリターンチャネル、ガス供給およびリターンライン)を有していない。電気プローブ230は組織挿入ヘッド236を有し、これは組織202を冷却しないが電気療法を施す。電気パルス発生器280は電気パルスを冷却ヘッド216および組織挿入ヘッド236に伝送し、次いで組織202に伝送する。したがって、冷却ヘッド216は、標的組織202へ電気インパルスだけでなく低温を施す二重の機能を果たし、組織挿入ヘッド236は電気インパルスのみを施す。電気パルスは、クライオプローブ210および電気プローブ230の長さ方向に沿って、電気絶縁層222、242に取り付けられたワイヤを通して伝送され得る。一部の態様では、クライオプローブ210および電気プローブ230の本体部の少なくとも一部分が導電性であり、電気パルスを組織202に伝送する機能も果たす。電気パルス発生器280は、正電荷を有するクライオプローブ210から正電荷、および負電荷を有する電気プローブ230から負電荷を、生成するように配置される。
【0097】
クライオプローブ210および電気プローブ230は標的組織202内に、互いに所望の間隔をあけて(例えば、2 mm、5 mm、10 mm)挿入され、それにより、クライオプローブ210および電気プローブ230の周囲に存在しかつ両者間に広がるREゾーン206を作る。クライオプローブ210のみが低温を組織202に施すため、作られる凍結傷害ゾーン204は、2つのクライオプローブによって作られる凍結傷害ゾーン104より小さく、クライオプローブ210の第1端部211の周囲に存在する。
【0098】
凍結傷害ゾーン204の構造は、クライオプローブ注射デバイス200に関して、冷却ヘッド216をクライオプローブ210の本体部に格納式にしてアレンジすることにより、ユーザーが変更することができる。また、ユーザーは、凍結機から出て、組織202に入るガスの温度を修正することができる。REゾーン206のサイズは、電気パルス発生器180から出る電気パルスを調節することにより変更することができる。
【0099】
図7に、単一のクライオプローブ310を有する一態様の注射デバイス300を示す。注射デバイスの要素は先の態様と類似しているが、注射デバイス300は単一のクライオプローブ310を有する。クライオプローブ310は、低温と電気パルスの両方を標的組織302に送達し得、第1端部311、第2端部312、これらの間に通っており、凍結機390(図示せず)に取り付けられる中央ガス供給カニューレ314を有し、凍結機390は冷却ガス源であり、冷却ガスは、ガス供給ライン392を通してクライオプローブ310にポンプ輸送され、冷却ヘッド316まで送達され、中央ガス供給カニューレ314によって同心円状に囲まれかつ流体接続されているガスリターンチャネル318によって取り除かれる。断熱層320および電気絶縁層322も存在している。
【0100】
1つまたは2つの電気パルス発生器380(図7に図示のとおり)がワイヤ382によって、クライオプローブ310の第2端部312に接続されている。ワイヤ382は一対のワイヤ350、352に取り付けられ、一対のワイヤ350、352は、クライオプローブの本体部から出て冷却ヘッド316と並んで組織302に入る電極356、358で終結する。ワイヤ350、352は電気絶縁層322内に、例えば、電気絶縁層322に突き刺すことによって、または電気絶縁層322の長さ方向に通っているチャネル内に挿入することによって埋め込まれている。ワイヤ350、352および電極356、358を、それぞれ互いに取り付けてもよく、一部の態様では、正のワイヤ350と正の電極356を同じ連続ワイヤにし、負のワイヤ352と負の電極358を同じ連続ワイヤにしてもよい。
【0101】
電極356、358は、組織302内に伸ばされたとき、電極がクライオプローブ310の本体部から離れるように湾曲するような形状である。格納したとき、電極356、358は、クライオプローブの本体部とよりよく一直線になるように直線状の形状で保持される。電極356、358は、例えば、ニッケルチタン(ニチノールとしても知られている)で形成されたものであり得る。電極356、358の湾曲により、ユーザーが、得られるREゾーン306を凍結傷害ゾーン304から拡張することが可能になる。ユーザーが電極356、358を伸ばして電気パルス伝送するのは、凍結療法処置の前であっても該処置中であっても該処置後であってもよい。
【0102】
図8Aは、図7のものと類似した注射デバイス400を示す(参照標示は図7の場合と同じ要素を示すが、番号は100大きい)。しかしながら、注射デバイス400は、プラスミドを組織402内に注射するとともに、電気療法および凍結療法を施し得る。クライオプローブ410は針460、462を有し、これらは電極456、458とほぼ平行に延びており、組織402内に挿入される。クライオプローブの第2端部412では、針460、462が、流体リザーバ470からの流体を受容するチューブ472に流体接続されている。例えば、流体リザーバ470はシリンジであり得る。したがって、流体リザーバ470内部の流体、例えばプラスミドが組織402に投与され得る。針460、462は、全体または一部がクライオプローブ410の本体部に格納式であり、電極456、458もそうである。針460、462および電極456、458は、同時に格納することができてもよく、互いに独立していてもよい。また、針460、462は組織402内で配置変更可能である。一部の態様では、図8Bに示すように、針460、462は複数の分枝466を有し得る。複数の分枝466により、注射物質または投薬物の拡延および分布に対して、より速やかで厳密に制御可能なパターンでかつ中央プローブから特定の間隔で、ユーザーがより大きく制御することが可能になり得る。
【0103】
図9は、2つの電気絶縁層522、524を有するクライオプローブ500を示す。ワイヤまたは電線用導管550、552が2つの電気絶縁層522、524間に挟まれており、電気パルス発生器580からの正電荷を担持している。クライオプローブ500の本体部は冷却ヘッド516で終結し、電気パルス発生器580で発生した負電荷用の電線用導管としての機能を果たす。2つの電気絶縁層522、524は各々、独立して位置調整可能であり、格納式である。
【0104】
図10に、単一のクライオプローブ610を有する一態様の注射デバイス600を示す。注射デバイスの要素は先の態様と類似しているが、注射デバイス600は、不関電極696とともに機能を果たす単一のクライオプローブ610を有し、不関電極696は、1つの肢部上に配置されるか、または中央ターミナルに接続され、クライオプローブ610の探査電極とペアで使用されるか、のいずれかである遠隔電極である。クライオプローブ610は、低温と電気パルスの両方を標的組織602に送達し得る、第1端部611、第2端部612、およびこれらの間に通っており、凍結機690(図示せず)に取り付けられる中央ガス供給カニューレ614を有し、凍結機690は冷却ガス源であり、冷却ガスは、ガス供給ライン692を通してクライオプローブ610にポンプ輸送され、冷却ヘッド616まで送達され、中央ガス供給カニューレ614を同心円状に囲み流体接続されているガスリターンチャネル618によって取り除かれる。断熱層620および電気絶縁層622も存在している。1つまたは2つの電気パルス発生器680(図10に図示のとおり)がワイヤ682によってクライオプローブ610の第2端部612に接続され、また、不関電極696にも接続されている。
【0105】
図11を参照されたい。さらなる一態様の注射デバイス700を示す。注射デバイス700の要素は先の態様と類似している。注射デバイス700は、不関電極796とともに機能を果たすように構成され得る単一のプローブ710を有する。一部の態様では、注射デバイス700は、低温と電気パルスの両方を標的組織702に送達し得る第1端部711と第2端部712を有するクライオプローブを含む。
【0106】
プローブ710は、異なる2つの部分、中央部分770と同軸部分772で構成されている。中央部分は、プローブ710の第1端部と第2端部の間に通っている中央ガス供給カニューレ714を有し、冷却ガス源に取り付けられ、冷却ガスは、ガス供給ライン692を通して中央部分770にポンプ輸送され、冷却ヘッド716まで送達され、中央ガス供給カニューレ714を同心円状に囲み流体接続されているガスリターンチャネル718によって取り除かれる。断熱層720がガスチャネルを囲んでいる。
【0107】
同軸部分772は中央部分770を囲み、電気絶縁層722に囲まれている。1つまたは2つの電気パルス発生器780(図11には2つ示している)がワイヤ782によってプローブ710の第2端部712に、具体的には同軸部分772で接続され、また、不関電極796にも接続されている。同軸部分772は中央部分770に取り付け可能であり、中央部分770から取り外し可能である。同軸部分772は、内部の中央部分772を囲む鞘形態を有し、中央部分770の長さ方向の軸に対して同軸部分772を配置変更することにより、同軸部分772は中央部分770上を摺動可能であってもよく、中央部分770から離れて摺動可能であってもよい。
【0108】
電気接点774は同軸部分772上(例えば、その内側表面上)に含められる。電気接点774は、電気パルス発生器(1つまたは複数)780および不関電極796に取り付けられたワイヤ782を、中央部分770の電気伝導部と電気接触状態にする。中央部分770が金属製または他の導電材料製である場合、それにより、電気インパルスが中央部分の本体部に沿って冷却ヘッド716へと伝送され、電気療法が組織702に施される。あるいはまた、中央部分770は、パルス発生器(1つまたは複数)の電流を中央部分770の長さ方向に沿って伝送するように構成されたワイヤを有してもよい。
【0109】
図11に示す態様は特に好都合である。同軸部分772は中央部分770とは別個に製造され得る。例えば、中央部分770は、かかる治療において従来使用されている完全クライオプローブであり得る。同軸部分772を中央部分770の外側に取り付けることによってプローブの機能性が高まり、これまでの単独使用クライオプローブが、RF-EMB電気処置能をさらに備えることが可能になる。
【0110】
図11の態様では、ユーザーが、RF-EMB電気処置と凍結療法を併せて非常に厳密な様式で、高い柔軟性で行うことが可能になる。プローブ710は、所望のとおりに腫瘍内または標的組織702内に挿入され得る。同軸部分722、中央部分772のみ、または両方の部分が所望のとおりに位置決めされ得る。一態様では、ユーザーは手間をかけてプローブ710の内側部分と外側部分を挿入し、所望の治療プロトコルを行う。次いで、ユーザーは、中央部分770を組織702から、同軸部分772を所定の位置に残したまま同軸部分772から摺動させることにより取り出し得る。次いで、ユーザーは、取り出した中央部分を異なる中央部分(例えば、上記のようなプラスミド送達用の針、冷凍能も電気伝導能も有しないツール、例えば測定ツール、酸性度感知デバイスもしくは生体活性デバイス、組織採取ツール、生検ツール、または低温(hypothermia)プローブ)と置き換え得る。同軸部分772を所定の位置に残すことにより、ユーザーは、この新しい中央部分を高い精度で挿入し、中央部分772の第1端部の以前の位置に厳密に戻した後、組織702から取り除くことが可能になる。
【0111】
一部の態様では、プローブ710の同軸部分772は、同軸部分772内に挿入されるプローブ以外のツールとともに使用され得る。所定の位置に配置されたら、同軸部分772はガイドデバイスとしての機能を果たし、そのため異なるツールが厳密に同じ位置に挿入され、次のツールが前のツールと同じ位置に配置されるという有益性を伴う。置き換えられる内側ツールは、同軸部分772内にフィットする任意のツール(測定ツールなど)であり得る。置き換えられるツールは、同軸部分772の電気接点774からエネルギー供給され得る。
【0112】
一部の態様では、内側部分と置き換えられて同軸部分772とともに機能を果たすツールは、ツールの本体部に対応する電気接点を有し、中央プローブ部分772の電気接点774と対になるツールであり得る。かかる内側ツールは、かかる電気接点を有するように改良された既存のツールであってもよく、かかる接点を含むように設計されたツールであってもよい。さらに、各ツール機能は、組織702において所望の効果をもたらすために使用され得、置き換えられる内側ツールの特徴および使用されるパラメータに応じて、各ツールは、組織702の一部分のみにおいて効果をもたらし得る。
【0113】
一部の態様では、プローブ710は、同軸部分772と中央部分770の間にロック機構または整列機構(例えば、レバー、スプリング、クリップまたはルアー型ロック)を有する。中央部分770が同軸部分772内に挿入されたら、ロック機構により、内側部分と外側部分が互いに対して整列した静止状態で維持される。一部の態様では、プローブ710は、内側部分と外側部分間にロック機構が係合したときのみ機能する。例えば、ユーザーは、中央部分770を同軸機構のネジ山にねじ込んで係合させなければならず、この動作が終了すると中央部分の電気接点が同軸部分の電気接点774と接触状態になるということがあり得よう。
【0114】
本発明のいくつかの態様を説明してきたが、種々の修正が本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく行われ得ることは理解されよう。例えば、図5および6では2つのクライオプローブを示しているが、さらなるクライオプローブペアが同様に使用されてもよい。さらに、図7には1対のワイヤを示しているが、さらなるワイヤのペアが使用されてもよい。一部の態様では、針または分枝466は、標的組織内の局所圧力を測定するように構成される。したがって、他の態様は添付の特許請求の範囲に含まれる。
【実施例
【0115】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。この実施例は、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【0116】
実施例1:投薬とアブレーションの組合せを用いた患者Aの前立腺がんの処置
72歳の男性が前立腺がんと診断された(15年前)。根治的前立腺摘除術を行った後、二次的放射線療法を行った。
【0117】
再発瘤が骨盤内に視認可能であり(図1A)、リンパ節転移によって両方の尿管が塞がれ、これにより腎不全となり、正常な機能のために膀胱内に管が必要となっている。
【0118】
続いて、患者は、ベーシックおよび次世代のセカンドラインのがんの薬を用いたホルモン療法での処置を受けた。この処置は不奏功であり、このがんを去勢抵抗性前立腺がんCRPCにカテゴライズした。利用可能なさらに2種類の化学療法薬(タキソテールおよびカルベゼタキサル(Carbezetaxal))を投与したが不奏功であり、患者Aはホスピスケアが予定されるに至った。
【0119】
CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤およびサイトカインを含む組成物を患者Aに腫瘍内投与した。さらに、腫瘍をアブレーションし、RF-EMB型傷害部を作った。この薬物とアブレーションの処置の前では、患者Aは、前立腺特異抗原(PSA)およそ28を有していた(図2)。9ヶ月間の処置後、PSAは0のままであり、X線検査では疾患が完全消退した(図1B)。
【0120】
この領域の生検では、がんは示されなかったが、以前の腫瘍領域内への炎症細胞の浸潤が免疫学的応答を示している。
【0121】
実施例2:投薬とアブレーションの組合せを用いた患者Bの前立腺がんの処置
65歳の男性が前立腺がんと診断された。瘤が患者Bの骨盤内に視認可能であり(図3A)、これはPSAレベル130およびグリーソンスコア8を有した。リンパ節に転移が確認された。
【0122】
患者Bに、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤およびサイトカインを含む組成物を腫瘍内投与し;腫瘍をアブレーションし、RF-EMB型傷害部を作った。2ラウンドのこの処置の後、患者Bが有するPSAレベルは1.8になり、骨盤内の瘤の減少が視認可能である(図3B)。2回目の処置の8週間後、患者Bは、リンパ節が正常な大きさに戻ったことに加えて、正常な排尿機能および性機能を有していると報告されている(図4)。
【0123】
他の態様
本発明を、その詳細説明とともに説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲の範囲によって規定される本発明の範囲の実例を示すことを意図したものであって限定することを意図するものではないことが理解されよう。他の局面、利点および修正は以下の特許請求の範囲の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11