(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】電池駆動式可搬用具
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20241227BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241227BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20241227BHJP
H01M 10/6235 20140101ALI20241227BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20241227BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20241227BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20241227BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6235
H01M10/6551
H01M10/6571
H01M50/20
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2020095699
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-03-13
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2019111774
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】福本 匡章
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-170908(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212120(WO,A1)
【文献】特開平05-225460(JP,A)
【文献】特開2008-309762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/6235
H01M 10/6571
H01M 10/6551
H01M 50/20
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
少なくとも一部が前記電池パック内に配置されている電池温度計測回路を備えており、
その電池温度計測回路は、
高温領域では正確な計測結果を出力する一方において低温領域では正確性に劣る計測結果を出力する高温計測回路と、
低温領域では正確な計測結果を出力する一方において高温領域では正確性に劣る計測結果を出力する低温計測回路と、
前記高温計測回路の出力値が異常範囲になると前記低温計測回路の計測結果から電池温度を決定する値または電池温度を示す値を出力ないし採用し、前記低温計測回路の出力値が異常範囲になると前記高温計測回路の計測結果から電池温度を決定する値または電池温度を示す値を出力ないし採用する切換え装置と、
を備えている。
【請求項2】
請求項1の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温計測回路は、サーミスタと高温用分圧抵抗の直列回路を備えており、
前記低温計測回路は、前記サーミスタと低温用分圧抵抗の直列回路を備えている。
【請求項3】
請求項2の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温用分圧抵抗の抵抗値が、前記低温用分圧抵抗の抵抗値より低い。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記用具本体が、前記高温計測回路の一部と前記低温計測回路の一部を備えている。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが、前記高温計測回路と前記低温計測回路を備えている。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温計測回路が正確な計測結果を出力する下限温度が、前記低温計測回路が正確な計測結果を出力する上限温度よりも高い。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、 前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに前記用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータの-20℃における最高出力/+50℃における最高出力>0.5である。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに前記用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータが、環境温度が氷点下以下でも-30℃以上であれば動作する。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに前記用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータが、環境温度が+50℃でも電池温度が+100℃以下であれば動作する。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが、200Wh/kg以上の単位重量当たりの放電容量を備えている。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが、300Wh/L以上の単位体積当たりの放電容量を備えている。
【請求項12】
少なくとも1個の全固体電池セルと、電池温度計測回路を備えており、
その電池温度計測回路は、
高温領域では正確な計測結果を出力する一方において低温領域では正確性に劣る計測結果を出力する高温計測回路と、
低温領域では正確な計測結果を出力する一方において高温領域では正確性に劣る計測結果を出力する低温計測回路と、
前記高温計測回路の出力値が異常範囲になると前記低温計測回路の計測結果から電池温度を決定する値または電池温度を示す値を出力ないし採用し、前記低温計測回路の出力値が異常範囲になると前記高温計測回路の計測結果から電池温度を決定する値または電池温度を示す値を出力ないし採用する切換え装置を備えており、
用具本体に取り付けると請求項1~11のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具が完成する
電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電池駆動式(コードレス)の可搬用具、以下に限定するものではないが、例えば、使用者が支持した状態で使用する(ハンドヘルドの)コードレス電動用具に適用可能な技術を開示する。コードレスでハンドヘルドの電動用具には、例えば、電池で駆動するドリル、電池で駆動するネジ締め機(ドライバ)、電池で駆動するチェーンソー、電池で駆動する丸鋸、電池で駆動するハンドヘルドの真空掃除機、電池で駆動する照明器(懐中電灯)等が含まれる。本明細書に開示する技術は、また、使用者によって持ち運ばれ、持ち込まれた場所で使用する電池駆動式可搬用具、以下に限定するものではないが、例えば、電池で駆動するマイターソー、電池で駆動するテーブルソー、電池で駆動する芝刈機、床面等で支えた状態で使用する電池駆動式の真空掃除機等にも適用可能である。本明細書は、上記または後記するいずれかの電池駆動式可搬用具の用具本体に対して脱着可能であるとともに、少なくとも一個の全固体電池セルを備えている電池パックに関する技術をも開示する。
【背景技術】
【0002】
電池駆動式(コードレス)可搬用具は、その便利性と、多様な作業環境で使用できることから、広く普及している。過去には、そのような電池駆動式可搬用具は、ニッケル-カドミウム、ニッケル水素、およびリチウムイオンといった電池化学に基づいて再充電可能な電池によって駆動されてきた。例えば、特許文献1と2に、リチウムイオン電池を利用する電池駆動式可搬用具の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-129986号公報
【文献】特開2020-21657号公報
【0004】
電池駆動式可搬用具を駆動する電池には、単位重量あるいは単位体積当たりの放電容量(あるいは蓄電容量)が大きいこと、及び/又は、単位重量あるいは単位体積当たりの出力が高いことが好ましいために、最近ではリチウムイオン電池が多用されている。リチウムイオン電池は、正極と負極の間に電解液(電解ゲルである場合もある)が充填されており、充放電時にリチウムイオンが電解液または電解ゲルを介して正極と負極の間を移動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン電池は、液状の電解液または粘性液状の電解ゲルを使用することから、電解液または電解ゲルが凍結するような低温環境では良好に動作しない。実際には、電解液または電解ゲルの温度が低下すると、電池の内部抵抗が増大して電池出力が低下する。そのために、リチウムイオン電池で駆動する可搬用具は、電解液または電解ゲルが凍結するには至らないほどの低温環境でも使用できなくなることがある。逆に、電解液または電解ゲルの温度が高くなりすぎると、電解液または電解ゲルに起因するガスによってセル内圧力が上昇しすぎてセルが故障するといった問題が生じる。リチウムイオン電池で駆動する可搬用具は、高温環境下では電池出力を制限して電池が過熱しないように制御する必要がある。リチウムイオン電池で駆動する用具は、高温環境下で使用できなくなることがある。
【0006】
上記したように、電池駆動式可搬用具には、電池の内部抵抗が増大する低温環境では使用できないという問題が残され、セル内圧力が過大となる高温環境でも使用できないという問題が残されている。本明細書で開示する技術の一つの目的(それに制約するものではないが)は、電池駆動式可搬用具の使用可能な温度範囲を拡大することである。
【0007】
上記に加えて、あるいは上記に代えて、電池駆動式(コードレス)可搬用具の場合、環境温度によって最大出力が大きく変動するという問題がある。例えば、高温環境で十分な最大出力が得られるように設計することはできるが、そう設計した場合に、低温環境では最大出力が低下して(最大出力が不十分となって)作業効率が低下するという問題が生じることがある。従来の電池駆動式可搬用具には、温度による最大出力の変化幅が大きすぎるという問題が残されている。本明細書で開示する技術の一つの目的(それに制約するものでないが)は、温度変化による最大出力の変化幅が小さな電池駆動式可搬用具を提供することである。
【0008】
電池駆動式可搬用具の使用可能な温度範囲を広げるためには、正確に計測することができる温度範囲を広げる温度計測技術が必要となる。本明細書で開示する技術の一つの目的(それに制約するものでないが)は、電池駆動式可搬用具に搭載する温度計測回路によって正確に計測可能な温度範囲を拡大することである。その温度計測回路は、電池駆動式可搬用具の用具本体内に搭載される場合もあり、その用具本体に脱着可能な電池パック内に搭載される場合もあり、用具本体に電池パックが取り付けられたときに温度計測回路が完成することもある。本明細書で開示する温度計測技術は、電池温度の計測に適用することもできれば、電池駆動式可搬用具内の部品温度の計測に適用することもできれば、電池パックあるいはその電池パックを充電する充電装置内の部品温度の計測に適用することもできる。
【0009】
低温で使用可能な電池を使用することによって、低温時でもその電池から必要な電力が得られるようにすることができる。しかしながら、その電力で駆動する電子機器(電池駆動式可搬用具内の部品)が低温すぎてその電子機器が正常に動作しないという問題が生じることがある。この問題に対処するために、本明細書では、低温すぎて正常に動作しない電子機器を、その電子機器が正常に動作する温度にまで温める技術を開示する。電池駆動式可搬用具は、高温環境下で使用することもあり、高温環境では冷却を必要とする電気機器(電池駆動式可搬用具の部品)を備えており、その電気機器を冷却する放熱装置を必要することがある。放熱を要する部品は、低温時に加温を要する部品であることもあれば、加温を要する部品と放熱を要する部品が別部品である場合もある。本明細書で開示する技術は、電子機器が正常に動作する温度にまで温めるようにデザインされた技術と、電気機器が異常な高温とならないように放熱するようにデザインされた技術を提供する。本明細書で開示する加温技術と放熱技術は、別々に利用することもできれば、両技術が両立するように(一方が他方を邪魔しないように)に同じ電池駆動式可搬用具に組み込むことができる。なお低温時に加熱を要する電子機器と、高温時に冷却を要する電気機器は、同じ機器である場合もあり、異なる機器である場合もある。
【0010】
本教示の別の態様では、電解液も電解ゲルも使用しない代わりに、正極と負極の間に固体電解質または固体導電体を使用する全固体電池を利用して電池駆動式可搬用具に電力を供給する。全固体電池は、その全固体電池で駆動する電池駆動式可搬用具が使用される可能性のある全ての温度環境において、電解質または導電体が固体のままであるという事実によって、電池駆動式可搬用具を使用可能な温度範囲を広げる。また全固体電池の場合、電池の構造によって、他の種類の電池に比して、電池パック内の配線インダクタンスを低く抑えることができる。この利点を活用するためには、電池パックが脱着可能となっている用具本体内の配線インダクタンスもまた低く抑える必要がある。本明細書では、用具本体内の配線インダクタンスを低く抑える技術をも開示する。
【0011】
電解液も電解ゲルも使用しない全固体電池の場合、リチウムイオン電池と比べて、より大きな電流で安全に(電池・セルを損傷することなく)充電することができる。このような固体電池は、工具ビットまたは他の工具アクセサリが制動されているときに発生する回生電流(回生電力)を使用して、用具の動作中に充電することができる。すなわち、電池駆動式可搬用具のモータが発電機として動作して電流を発生している場合に、その電流で全固体電池を充電することができる。本教示は、電池駆動式可搬用具の運転中に、電池を損傷させることなく、回生電力を使用して全固体電池を充電するようにデザインされた技術をも提供する。
【0012】
電解液または電解ゲルを有する電池を利用する電池パックでは、高温環境で使用したときに過熱して損傷することを防止する必要があり、電池パック内に冷却風通路を確保する必要がある。そのために電池パックのハウジングの内部形状が複雑となり、電池パックが重くて大型であった。全固体電池によって電池パックを構成すると、電池パック内に冷却風を導入する必要がなくなり、電池パックを軽量・小型化することができる。本明細書に記載の技術によって、電池パックの単位重量あたり200Wh/kg以上の放電容量を持つ軽量・小型電池パックを実現することができた。200Wh/kg以上の放電容量は、従来技術では不可能な値であり、これによって作業者の負担を大幅に軽減する電池駆動式可搬用具を設計することが可能となった。なお、放電容量(ないし蓄電容量)は、電力量で示され、放電可能なワットと時間の乗数で示される。定格電圧が定まっている場合は、ワットに変えて電流値を利用することもできる。Whは、1ワットと1時間を乗じたものであり、3600ジュールに相当する。
【0013】
電池駆動式可搬用具のなかには、電池パックを作業者の腰に取り付け、作業者が手に持つ用具本体には電池パックを取り付けないものがある。この場合、作業者の腰に取り付けられている電池パックと作業者が手に持っている用具本体の間をコードで接続する。この形式によると、作業中に作業者が手で支える重量が軽量化され、作業者の疲労が軽減される。この形式の場合、特開2018-129986号公報や特開2020-21657号公報に開示されているように、コードを用具本体に接続するコネクタが必要となり、そのコネクタが250グラム程度の重量なる。上記した200Wh/kg以上の放電容量が確保できると、コネクタよりも軽量な電池パックによって50Whの放電容量が確保できる。50Whの放電容量が確保できれば、電池パックを交換することなく、電池駆動式可搬用具を使用する作業の大部分を完了することが可能となる。手に持つ重量を軽量化するために電池パックを腰につけて負担の軽減を図る使用者に対して、電池パックを腰に取り付ける必要をなくすことができる。
【0014】
また本明細書の技術によって、従来技術では不可能であった単位体積あたり300Wh/L 以上の放電容量を持つ小型電池パックを実現することができた。これによって前記した50Whの放電容量を持つ電池パックの体積を170mL程度に小型化ができた。電池パックの体積が170mL程度であれば、電池駆動式可搬用具のグリップ(ハンドル)内に電池パックを収容することが可能となる。
【0015】
全固体電池セルは充放電時に冷却する必要がない。全固体電池セルを利用する電池パックでは、電池パック内に冷却風を導入する必要がなく、電池パックのハウジングによって電池セルを外界から確実にシールドして防水することができる。電池セルを雨水や塵埃から強固に保護して対候性を向上することが可能となる。電池パックの軽量化と小型化が進み、電池セルの対候性を向上させることができる。これによって、野外で用いる電池駆動式可搬用具、例えば、送風機、芝刈り機、チェーンソー、剪定機、ヘッジトリマといった電池駆動式可搬用具の使用性と信頼性が大幅に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書に開示する第一実施形態では、電池駆動式可搬用具の使用可能な温度範囲を拡大する。それを可能とするために、電池駆動式可搬用具に搭載されている温度計測回路によって計測可能(正確に計測可能)な温度範囲を拡大する。
【0017】
第一実施形態の電池駆動式可搬用具は、温度計測回路を内蔵している。その温度計測回路は、工具本体内、及び/又は、電池パック内に含まれることがある。工具本体に電池パックを取り付けることによって、温度計測回路が完成することもある。その温度計測回路は、高温領域では正確な計測結果を出力する一方において低温領域では正確性に劣る計測結果を出力する高温計測回路と、低温領域では正確な計測結果を出力する一方において高温領域では正確性に劣る計測結果を出力する低温計測回路を備えている。温度計測回路がスイッチを備えており、そのスイッチを切り替えることによって、その温度計測回路が高温計測回路と低温計測回路の間で切り替わるものでもよい。すなわち、時間によって、高温計測回路と低温計測回路の一方が出現するものであってもよい。温度計測回路は、高温計測回路の出力値が異常範囲になると低温計測回路の出力を出力し、低温計測回路の出力値が異常範囲になると高温計測回路の出力を出力する。換言すると、温度計測回路は、高温計測回路の出力値が異常範囲になると低温計測回路の出力に基づいて(あるいは低温計測回路の出力を利用して)温度を決定し、低温計測回路の出力値が異常範囲になると高温計測回路の出力に基づいて(あるいは高温計測回路の出力を利用して)温度を決定する。高温計測回路の異常範囲と低温計測回路の異常範囲は、異なっていてもよいし、部分的に重複していてもよい。この温度計測回路は、電池温度計測回路に適用することもできれば、部品温度計測回路に適用することもできる。
【0018】
ここでいう異常範囲とは、用具本体、及び/又は、電池パックの運転状態を決定するのに使用するには、測定結果が不正確に過ぎる、又は、信頼できないと考えられる範囲を意味する。例えば、
図4を参照して後記する高温計測回路の場合、温度計測回路の出力電圧(マイクロコントローラが読み込む電圧)が1.8~4.0Vの範囲内にある場合、出力電圧とサーミスタ温度がリニアな関係にあり、出力電圧から換算した温度の精度が高い。これに対して、出力電圧が1.8V以下の場合、あるいは4.0V以上の場合、前記したリニアな関係が得られず、出力電圧から換算した温度は不正確で信頼できないものになりやすい。この例の場合は、1.8V以下と4.0V以上を異常範囲とする。詳細は後記する。
【0019】
本実施形態に係る電池駆動式可搬用具及び/又は電池パックによれば、広い温度範囲で使用可能な全固体電池を効果的に使うことが可能となり、広い温度範囲で使用可能な電池駆動式可搬用具を実現することができる。
【0020】
電池駆動式可搬用具には、用具本体内に電池セル又は電池パックを収容しているもの、すなわち、電池セルが用具本体内に常時(分解修理時といった例外時を除く)に収容されているものがある。この場合は、用具本体内に配置されている電池温度計測回路に本技術を適用することもできる。それに代えて、電池セルを内蔵している電池パックを用具本体に形成されている取り付け部に対して脱着可能なものがある。後者の場合、電池パックに内蔵されている電池温度計測回路に本技術を適用することもできれば、用具本体に内蔵されている電池温度計測回路に本技術を適用することもできれば、電池パックを用具本体に取り付けることによって電池温度計測回路が完成する方式に、本技術を適用することもできる。
【0021】
また本明細書でいう電池という用語は、バッテリと同意であり、セル、電池セルまたは電池パックを意味することがある。特に指摘しない限り、本教示は、電池パック(電池カートリッジ)または電池セルの一方に限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本教示に依る全固体電池セルを利用した電池パックの代表的で非限定的な一例と、本教示に依る用具本体の代表的で非限定的な一例を示す図。
【
図4】
図3の検出部が出力する電圧とサーミスタ温度の関係を示す図。
【
図5】本教示に依る全固体電池セルを利用した電池パックの充電電流と電池温度の関係を示す図。
【
図6】
図7の検出部が出力する電圧とサーミスタ温度の関係を示す図。
【
図7】本教示に依る第1実施例の温度計測回路の検出部を示す図。
【
図8】
図9の検出部が出力する電圧とサーミスタ温度の関係を示す図。
【
図9】本教示に依る温度計測回路の検出部の第2実施例を示す図。
【
図10】本教示に依る全固体電池セルを利用した電池パックの充電電流と電池温度の関係(
図5とは別例)を示す図。
【
図11】低温環境にあるときの第1実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図12】高温環境にあるときの第1実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図13】低温環境にあるときの第2実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図14】高温環境にあるときの第2実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図15】第3実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図16】第4実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図17】第5実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図18】第6実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図19】第7実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図20】第8実施例の部品レイアウト(相対的位置配置)を示す図。
【
図21】本教示に依る実施例の電池駆動式可搬用具の電気回路を示す図。
【
図25】電池セルと制御回路基板の双方を大気から遮断して防水する電池パックの構造の代表的で非限定的な一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に説明する実施例の主要で非限定的な特徴を最初に列記しておく。
【0024】
(特徴1)
作業者が支持した状態で使用する、あるいは作業者によって持ち込まれた場所に置いて使用する電池駆動式可搬用具であり、
全固体電池セル(少なくとも1個の全固体電池セル)を内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
前記電池パックが供給する電力によって動作し、前記用具本体内に収容されており、前記全固体電池に接続されている、あるいは接続可能なアクチュエータを備えている。
電池パックが用具本体に脱着可能という場合、他に説明されていない限り、電池パックが用具本体の外側の面に取り付けられる場合(電池パックの外面の大部分(取り付け部以外)が露出している場合)と、電池パックが用具本体の内側に収容される場合(電池パックの外面が工具本体から露出していない場合)と、電池パックの一部が用具本体の内側に収容されて電池パックの他の一部が工具本体から露出している場合を含む。
【0025】
他の種類の電池とは相違し、全固体電池には、電解液が凍結するような低温環境では使用できないという制約がなく、電解液に由来するガス圧が過剰に上昇して電池が回復不能に損傷するような高温環境では使用できないという制約もない。可搬用具のアクチュエータに電力を供給する(ドライブ)ために全固体電池を使用することによって、電池駆動式可搬用具を使用可能な温度範囲が大幅に拡大する。また前記したように、200Wh/kg以上の単位重量あたりの放電容量、及び/又は、300Wh/L以上の単位体積あたりの放電容量を実現することが可能であり、電池パックを小型軽量することができる。電池駆動式可搬用具の使用者の負担を軽減することができる。
【0026】
ここでいう全固体電池は、リチウムイオン電池の電解液またはゲルを固体電解質に置き換えたものを含む。すなわち、電池駆動式可搬用具が使用され得る温度範囲(通常はマイナス40℃からプラス60℃の間)のいずれにおいても固体である電解質に置き換えたものを含む。あるいは、電池セルを構成する正極と負極と正負極の間を接続する物質の全部が、マイナス30℃からプラス125℃の間の全温度において固体であるものをいう。例えば、国際公開公報WO2018/092370号、あるいは国際公開公報WO2018/092484号 あるいは特開2019-29317号公報に記載されている全固体電池等が利用可能である。特開201-299317号公報には、電解質が液体の電池、電解質がゲル状の電池、電解質が固体の電池が開示されており、固体電解質を用いる電池が本明細書でいう全固体電池の一例である。電解質を利用しない全固体電池も利用可能である。例えば、ITO基板を正極とし、その上にp型半導体層を形成し、その上に絶縁層を形成し、その上にn型半導体層を形成し、その上に負極を形成した積層構造によって全固体電池を得ることができる。その種の積層構造を利用するいわゆる全固体半導体電池も全固体電池の一種である。本実施例では、充電と放電のサイクルを繰り返して実施することができる全固体2次電池を使用する。
【0027】
ここでいうアクチュエータは、電池パックが供給する電力を運動(回転または直動)に変換するモータ等に限られない。電力を熱に変換するもの(抵抗で発熱するヒータやペリチェ素子)、冷却するもの(ペリチェ素子)、光に変換するもの(LED等)、音に変換するもの(スピーカ)、電波に変換するものもアクチュエータであり得る。
【0028】
(特徴2)
電池駆動式可搬用具であり、
電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータの「-20℃における最高出力/+50℃における最高出力>0.5」の関係にある。
-20℃という低温環境でも+50℃における最高出力の半分以上の最高出力を確保できれば、実際的には低温環境作業を実施できることが多い。電池駆動式可搬用具を使用可能な温度幅が増大する。
上記の電池パックが、200Wh/kg以上の単位重量あたりの放電容量、あるいは、300Wh/L以上の単位体積あたりの放電容量を備えていることが好ましい。全固体電池によると、上記の放電容量を確保し、しかも、「-20℃における最高出力/+50℃における最高出力>0.5」の関係を得ることができる。両要件を満たしている電池パックによると、低温環境で必要とされる可搬用具を用いた作業の大部分が作業可能となる。
上記の電池パックでは、密封されたハウジング(あるいはハウジング内に収容されている内部ハウジング)によって外界から密封された空間に電池セルが収容されていることが好ましい。全固体電池は、使用可能な温度が高く、電池パックのハウジング内に冷却風を導入する必要がない。密封されたハウジングを利用することで、電池パック内に雨水が侵入することを防止でき、塵埃等が侵入するのを防止できる。上記の放電容量と上記の出力の関係を備えており、密封されたハウジング内に電池セルが収容されている電池パックを利用すると、荒天時作業が可能となる。異物の侵入によって電池セルが短絡または故障するといった事故の発生を心配しなくても済む。
【0029】
(特徴3)
電池駆動式可搬用具であり、
電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータが、環境温度が氷点下以下でも-30℃以上であれば動作する。
全固体電池を使用すると、環境温度が氷点下以下であっても-30℃以上であれば使用可能な電池駆動式可搬用具を実現できる。
この場合も、電池パックが、200Wh/kg以上の単位重量あたりの放電容量、あるいは300W/L以上の単位体積あたりの出力を備えていることが好ましい。
【0030】
(特徴4)
電池駆動式可搬用具であり、
電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータが、環境温度が+50℃以上でも電池温度が+100℃以下であれば動作する。
従来の電池駆動式可搬用具の場合、電池温度が+80℃以上に昇温しないように制御する必要があり、環境温度が+50℃以上となると各種の制約が働き、作業効率の低下を招いていた。全固体電池を使用すると、電池に許容される温度が+100℃程度またはそれ以上にまで上昇し、電池温度が+80℃以上となっても制約をかけることなく運転を継続することが可能となる。全固体電池で駆動する可搬用具によると、電池の過熱防止のための各種制約が不要となる。
この場合も、電池パックが、200Wh/kg以上の単位重量あたりの放電容量、あるいは、300Wh/L以上の単位体積あたりの放電容量を備えていることが好ましい。
【0031】
(特徴5)
電池駆動式可搬用具であり、
全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
電池パック及び/または用具本体内に収容されている電池温度計測回路を備えており、
前記電池温度計測回路は、低温計測回路と高温計測回路を備えており、
低温時(所定の温度閾値以下)には低温計測回路の出力に基づいて電池温度を決定し、高温時(所定の温度閾値以上)には高温計測回路の出力に基づいて電池温度を決定する。
本技術は、電池パック内に電池温度計測回路を収容する場合に適用することもできれば、電池パックを用具本体に取り付けることによって電池温度計測回路が完成する場合に適用することもできる。後者の場合、電池温度計測回路の一部が電池パック内に収容されており、他の一部が用具本体内に収容されている。電池温度を伝熱する熱電度率が高い部材を用具品体内に配置することによって電池温度計測回路を用具本体内に収容することもできる。低温計測回路と高温計測回路を併用する技術は、電池温度の計測に限られず、充電回路(または充電回路内の部品)の温度計測に利用することもできる。
【0032】
(特徴6)
電池駆動式可搬用具であり、
全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
電池パックまたは用具本体内に収容されている電池温度計測回路を備えており、
その電池温度計測回路が、
高温領域では正確な計測結果を出力する一方において低温領域では正確性に劣る計測結果を出力する高温計測回路と、
低温領域では正確な計測結果を出力する一方において高温領域では正確性に劣る計測結果を出力する低温計測回路と、
前記高温計測回路の出力値が異常範囲になると前記低温計測回路を起動し(例えば、電池温度計測回路が低温計測回路の出力を出力するように切り替える)、前記低温計測回路の出力値が異常範囲になると前記高温計測回路を起動する(例えば、電池温度計測回路が高温計測回路の出力を出力するように切り替える)切換え装置と、
を備えている。
【0033】
高温計測回路には温度を正確に計測できる温度範囲があり、その温度範囲内にあれば高温計測回路の出力値は所定範囲内にある。ここでいう異常範囲は、前記した所定範囲外のことを言う。所定範囲外であれば、高温計測回路によって温度を正確に計測できる範囲外にあることが分かる。この場合は、低温計測回路に切換える。ここでいう正確とは、温度の計測結果が±5℃の誤差内に収まることをいい、好ましくは±3℃の誤差内に収まることをいう。その精度で温度を検出できれば、全固体電池を全固体電池の温度に依存して的確に制御することができる。
ここでいう温度は、電池温度、環境温度、充電回路を構成する素子の温度であり得る。どの温度であれ、本技術は有用な結果をもたらす。
【0034】
同様に、低温計測回路には温度を正確に計測できる温度範囲があり、その温度範囲内にあれば低温計測回路の出力値は所定範囲(高温計測回路の所定範囲とは一致しないことがある)内にある。ここでいう異常範囲は、低温計測回路の所定範囲外のことを言う。所定範囲外であれば、低温計測回路によって温度を正確に計測できる範囲外にあることが分かる。この場合は、高温計測回路に切換える。すなわち、温度計測が高温計測回路によって実行される。
【0035】
上記態様によると、計測範囲が広いけれども高価な温度センサを使用しなくても、必要な温度を必要な精度で計測することができる。
【0036】
本特徴は、少なくとも高温計測回路と低温計測回路を併用することにあり、その他に、例えば中間温度計測回路を設けることを排除しない。高温計測回路と低温計測回路の併用技術は、電池パック内の温度計測回路に適用することもできれば、用具本体内の温度計測回路に適用することもできれば、電池パックを用具本体に取り付けることによって完成する温度計測回路に適用することもできる。高温計測回路と中間温度計測回路と低温計測回路を併用する技術は、電池温度の計測、環境温度の計測、充電回路を構成する素子温度の計測に適用することができる。
【0037】
(特徴7)
特徴5または6の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温計測回路は、サーミスタと高温用の第1分圧抵抗の直列回路を備えており、
前記低温計測回路は、前記サーミスタ(高温計測回路のサーミスタと同じ)と低温用の第2分圧抵抗の直列回路を備えている。第1分圧抵抗と第2分圧抵抗の各々は、単一の抵抗で構成してもよいし、2個以上の抵抗を組み合わせて構成してもよい。
高温計測回路と低温計測回路が一つのサーミスタを共有し、一つのサーミスタで必要な温度を必要な精度で計測することができる。
【0038】
(特徴8)
特徴7の電池駆動式可搬用具であり、高温用の第1分圧抵抗の抵抗値が、低温用の第2分圧抵抗の抵抗値より低い。
上記によると、高温計測回路が出力する電圧範囲と低温計測回路が出力する電圧範囲が相互に近接または少なくとも部分的に重複する。高温計測回路が出力する電圧範囲と低温計測回路が出力する電圧範囲が近接または重複すると、高温計測回路の出力電圧と低温計測回路の出力電圧の処理回路を共通化できる。
【0039】
(特徴9)
特徴5または特徴6または特徴7または特徴8の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温計測回路が正確な計測結果を出力する下限温度が、前記低温計測回路が正確な計測結果を出力する上限温度よりも高い。
【0040】
例えば、温度計測回路に必要な計測範囲が、-30℃から+120℃の場合、-30℃から+120℃の範囲を高精度に計測する温度計測回路がなく、あっても非常に高価である。そこで、-30℃から+45℃程度までを計測範囲(計測幅75℃)とする低温計測回路と、+45℃程度から+120℃までを計測範囲(計測幅75℃)とする高温計測回路を使用して、計測範囲を2分する。ところが、この種の電池駆動式可搬用具の場合、例えば+20℃から+60℃の温度範囲にある間は、温度を計測する必要がないことがある。そこで、低温計測回路の計測範囲を-30℃から+20℃(計測幅50℃)とし、高温計測回路の計測範囲を+60℃から+120℃(計測幅60℃)とすることができる。計測幅を狭めれば、計測分解能を細かくして計測精度を高めることができる。上記例の場合、+20~+60℃に温度範囲ついては、その範囲内にあることがわかればよく、その範囲内の何度かまでは特定を要しないことがある。低温計測回路と高温計測回路の間に、温度を正確に計測することができない温度範囲が存在しても問題がないことがある。
【0041】
(特徴10)
電池駆動式可搬用具であり、
全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
電池パック 及び/または、用具本体内に収容されている複数部品を備えており、
前記複数部品が、低温時には低温時レイアウトで配置され、高温時には高温時レイアウトで配置される。低温時レイアウトと高温時レイアウトは相違する。
【0042】
低温時レイアウトと高温時レイアウトを切り換える技術は、電池パック内の部品群に適用することもできれば、用具本体内の部品群に適用することもできれば、電池パックを用具本体に取り付けることによって得られる部品群に適用することもできる。複数の構成要素は、高温用レイアウトから低温用レイアウトへ、またはその逆に、温度変化に呼応して自動的に切り替えるように設計されていること、例えばバイメタルまたはバイメタル片によって切換えられること、あるいは、温度計測回路によって(必要ならコントローラまたはマイクロプロセッサを介して)制御されるアクチュエータによって切換えられることが好ましい。レイアウトを変化させる温度は、例えばバイメタルまたはバイメタル片の材料特性によって決定される予め設定された値であってもよく、あるいは、例えば、温度計測回路またはコントローラ(例えばマイクロプロセッサ)内でプログラムまたは構成されている予め設定された値であってもよい。設定温度値は、例えば、-5~+50℃の範囲内の任意の温度から選択することができる。
【0043】
(特徴11)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
低温時(5℃以下、または0℃以下、または-5℃以下)には加温する必要がある要加温部品と、
高温時(50℃以上、または60℃以上、または70℃以上)には放熱する必要がある要放熱部品と、
要加温部品を加温するヒータと、
要加温部品と要放熱部品とヒータの少なくとも一個を実装している基板と、
放熱部材と、
バイメタルまたはバイメタル片を備えており、
前記バイメタルは、温度に依存して、第1形状と第2形状の間で形状を変化させ、
低温時時(5℃以下、または0℃以下、または-5℃以下)には、バイメタルが第1形状となって、要放熱部品と放熱部材を非接触とし、
高温時(50℃以上、または60℃以上、または70℃以上)には、バイメタルが第2形状となって、要放熱部品と放熱部材を接触させる。
【0044】
高温時には、要放熱部品と放熱部材が接触して要放熱部品から放熱される。一方、要放熱熱部品と放熱部材は、温度が低い場合には非接触である。このため、本特徴によれば、低温時には、ヒータの熱が、基板及び要放熱部品を介して放熱部材によって放熱されることを防止または禁止する。ヒータの熱が要加温部品に効率的に伝熱される。
【0045】
この特長は、用具本体に適用することもできれば、電池パックに適用することもできれば、両方に適用することもできる。すなわち、要加温部品と要放熱部品とヒータと基板と放熱部材とバイメタルを、電池パックに収容してもよいし、用具本体に収容してもよい。あるいは、電池パックと用具本体の双方が、本教示に従って、要加温部品と要放熱部品とヒータと基板と放熱部材とバイメタルを収容してもよい。この場合、電池駆動式可搬用具を低温環境で使用する場合、必要であれば、電池パックの要加温部品と用具本体内の要加温部品が自動的に加温される。また、高温時には、電池パックの要放熱部品と放熱部材が接触し、用具本体内の要放熱部品と放熱部材が接触する。
【0046】
(特徴12)
特徴11の電池駆動式可搬用具であり、
前記バイメタルは、要放熱部品の放熱を要しない状態と要放熱部品の放熱を要する状態の境界温度において、接触状態と非接触状態を切り換えるように変形する。その境界温度は、50~70℃の温度領域内にある。
要放熱部品が放熱を要する最低温度は、部品によって、50℃、52℃、54℃、56℃または58℃であり、許容される最高温度は、部品によって、70℃、68℃、66℃、64℃、62℃または60℃である。前記の切り換え温度は、部品によって、その部品の要放熱最低温度と許容最高温度の間に設定する。
【0047】
(特徴13)
特徴11の電池駆動式可搬用具であり、
前記バイメタルは、要加温部品の加温を要しない状態と要加温部品の加温を要する状態の境界温度において、接触状態と非接触状態を切り換えるように変形する。その境界温度は、-5~5℃の温度領域内にある。
要加温部品が加温を要する最低温度は、部品によって、-5℃、-4℃、-3℃、-2℃または-1℃であり、加温が不要となる最低温度は、部品によって、5℃、4℃、3℃、2℃、1℃または0℃である。バイメタルの切り換え温度は、部品によって、その部品の要加温最低温度と加温不要最低温度の間に設定する。
【0048】
(特徴14)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
低温時に加温する必要がある要加温部品と、
高温時に放熱する必要がある要放熱部品と、
要加温部品を加熱するヒータを備えており、
要加温部品とヒータ間の熱抵抗が、要放熱部品とヒータ間の熱抵抗より低い。
電池パックまたは用具本体のいずれかのみが、要加温部品と要放熱部品とヒータを備えていてもよい。
ヒータから要加温部品に伝熱する熱量が、ヒータから要放熱部品に伝熱する熱量以上であれば、要加温部品を効率的に加温でき、要加温部品が正常に動作する温度にまで温める時間を短縮できる。
【0049】
(特徴15)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
低温時に加温する必要がある要加温部品と、
高温時に放熱する必要がある要放熱部品と、
要加温部品を加温するヒータを備えており、
要加温部品とヒータ間の熱抵抗が、要加温部品と要放熱部品間の熱抵抗より低い。
電池パックまたは用具本体のいずれかのみが、要加温部品と要放熱部品とヒータを備えていてもよい。
この特長によると、ヒータから要加温部品に伝熱する熱量が、要加温部品から要放熱部品に伝熱しづらい。要加温部品を効率的に加温でき、正常に動作する温度にまで温める時間を短縮できる。
【0050】
(特徴16)
特徴14または15の電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも、要加温部品と、ヒータと、要加温部品とヒータとの間に介在している範囲の基板が、それらの部材を周囲の大気から遮断する固体の遮断材で覆われている。
この特長によると、遮断材によって、ヒータから大気への放熱、要加温部品から大気への放熱、要加温部品とヒータの間に介在している範囲の基板から大気への放熱が抑えられる。
【0051】
(特徴17)
電池駆動式可搬用具であり、
用具を低温(5℃以下、または0℃以下、または-5℃以下)環境で使用して電子部品が正常に動作することが保証されていないときに、その電子部品を加温する加温装置を備えている。
【0052】
(特徴18)
電池駆動式可搬用具であり、
用具本体内に全固体電池を収容している。
【0053】
(特徴19)
電池駆動式可搬用具であり、
全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体を備えている。
その電池パックは、200Wh/kg、及び/又は、300Wh/L以上の放電容量密度を備えており、外界からシールドされたハウジング内に電池セルが収容されている。そのハウジングは、電池との接続端子や信号端子が形成されている外側ハウジングであってもよい。あるいは、その外側ハウジング内に少なくとも一部(あるいは全部)が収容されている内側ハウジングであってもよい。
この明細書で外界からシールドされる、あるいは外界から封止されるという場合、水と異物の侵入を防止することを言う。典型的には、5nm, 2nm, 1nm, 8オングストローム, 6オングストローム,または5オングストローム以下の異物または水滴が外界から電池セルの収容空間に侵入するのを阻止するように閉じることを言う。従って、上記の異物または水滴の侵入を阻止するものであれば、外界と電池セルの収容空間の間でガスが出入りを許容するものであっても、ここでいう封止に含まれる。異物と水滴のみならず、ガスの侵入を防止するものも含まれる。シール自体には水滴の通過を許容するサイズの開口が形成されている場合がある。その開口を形成する部材の表面における接触角が大きく(例えば25℃で90度以上、好ましくは125度以上)、その表面に付着した水滴のサイズが大きなって、水滴がその開口を通過できなくするものも、ここでいうシールド又は封止の一つの形態である。
【0054】
(特徴20)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体を備えており、
前記用具本体は、電池パックを用具本体に取り付けたときに電池パックの正極に接触する正端子と、電池パックを用具本体に取り付けたときに電池パックの負極に接触する負端子と、前記正端子から延びている正配線と、前記負端子から延びている負配線と、前記正配線と前記負配線に接続されている制御機器を備えており、
前記正配線と前記負配線が相互に絶縁された状態で平行に延びている。
【0055】
(特徴21)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
前記用具本体内のモータを備えており、
前記電池パックは、前記モータが発生する回生電力で充電することを許容する状態にあるか否かを示す電気信号を用具本体に出力する。
一つの実施例では、電池パック内に状態検出回路を備えている。それは、例えばマイクロプロセッサを利用する制御装置であり、少なくとも一つの全固体電池の状態を検出し、検出された状態に基づいて前記の電気信号を生成する。
【0056】
(特徴22)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
全固体電池セルを内蔵している。
その電池パックは、200Wh/kgまたは300Wh/L以上の放電容量密度を備えており、外界からシールドされたハウジング内に電池セルが収容されている。
シールドの用語は特徴19と同じように解釈される。
【0057】
(特徴23)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
全固体電池セルを内蔵しており、
「電池温度が-20℃における出力/電池温度が+50℃における出力>0.5」の関係にあり、
200Wh/kgまたは300Wh/L以上の放電容量密度を備えており、
外界からシールドされたハウジング内に電池セルが収容されている。
シールドの用語は特徴19と同じように解釈される。
【0058】
(特徴24)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
全固体電池セルと電気回路を内蔵しており、
前記電気回路は、低温計測回路と高温計測回路を備えており、
低温時(少なくとも1個の全固体電池の温度が10℃以下、または20℃以下、または30℃以下)には全固体電池の温度を決定するのに低温計測回路の出力を使用し、高温時(少なくとも1個の全固体電池の温度が50℃以上、または60℃以上、または70℃以上)には全固体電池の温度を決定するのに高温計測回路の出力を使用する。
【0059】
(特徴25)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
少なくとも1個の全固体電池セルと電池温度計測回路を内蔵しており、
その電池温度計測回路が、
高温(50℃以上、または60℃以上、または70℃以上)領域では正確な計測結果を出力する一方において低温(10℃以下、または20℃以下、または30℃以下)領域では正確性に劣る計測結果を出力する高温計測回路と、
低温領域では正確な計測結果を出力する一方において高温領域では正確性に劣る計測結果を出力する低温計測回路と、
前記高温計測回路の出力値が異常範囲になると前記低温計測回路の出力に基づいて電池温度を検出し、前記低温計測回路の出力値が異常範囲になると前記高温計測回路の出力に基づいて電池温度を検出する切換え装置を備えている。
【0060】
(特徴26)
特徴25の電池温度計測回路が、特徴7~9のいずれかの特徴を備えている。
【0061】
(特徴27)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
全固体電池セルと複数部品を内蔵しており、
前記複数部品が、低温時(5℃以下、または0℃以下、または-5℃以下)には低温時レイアウトで配置され、高温時(50℃以上、または60℃以上、または70℃以上)には高温時レイアウトで配置される。高温時レイアウトは低温時レイアウトと相違する。
【0062】
(特徴28)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
用具を低温(5℃以下、または0℃以下、または-5℃以下)で使用して電子部品の正常動作が保証されない場合に、その電子部品を加温する加温装置を備えている。
【0063】
(特徴29)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、前記電池パックは、
低温時(5℃以下、または0℃以下、または-5℃以下)には加温する必要がある要加温部品と、
高温時(50℃以上、または60℃以上、または70℃以上)には放熱する必要がある要放熱部品と、
要加温部品を加温するヒータと、
要加温部品と要放熱部品とヒータを実装している基板と、
放熱部材と、
バイメタルを備えており、
前記バイメタルが温度に依存して変形し、高温時には要放熱部品と放熱部材を接触させ、低温時時には要放熱部品と放熱部材を非接触とする。
【0064】
(特徴30)
特徴29のバイメタルが、特徴12または13の特徴を備えている。
【0065】
(特徴31)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
低温時に加温する必要がある要加温部品と、
高温時に放熱する必要がある要放熱部品と、
要加温部品を加熱するヒータを備えており、
要加温部品とヒータ間の熱抵抗が、要放熱部品とヒータ間の熱抵抗より低い。
【0066】
(特徴32)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
低温時に加温する必要がある要加温部品と、
高温時に放熱する必要がある要放熱部品と、
要加温部品を加温するヒータを備えており、
要加温部品とヒータ間の熱抵抗が、要加温部品と要放熱部品間の熱抵抗より低い。
特徴32には特徴15の特徴が適用可能である。
【0067】
(特徴33)
特徴31または32の電池パックであり、
少なくとも、要加温部品と、ヒータと、要加温部品とヒータとの間に介在している範囲の基板が、それらの部材を周囲の大気から遮断する固体の遮断材で覆われている。
【0068】
(特徴34)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵し、
全固体電池セルが、損傷することなく放電可能な状態(すなわち電池セルから用具に電流を供給可能な状態)にあるか否かを示す信号を出力する端子を備えている。
【0069】
(特徴35)
電池駆動式可搬用具の用具本体に脱着可能な電池パックであり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵し、
全固体電池セルが再充電可能な状態にあるか否かを示す信号を出力する端子を備えている。
【0070】
特徴34または35において、 バッテリパックが、バッテリセルの状態/状況を評価して対応する信号を生成するように構成またはプログラムされた、例えばマイクロプロセッサなどのコントローラをさらに含むことができる。
例えば、特徴34を備えている一つの実施例では、電池パック内に状態検出回路を備えている。それは、例えば、少なくとも一つの全固体電池と信号出力端子に接続されているマイクロプロセッサを利用する制御装置であり、少なくとも一つの全固体電池の状態を検出し、検出された状態に基づいて放電可能な状態にあるか否かを検出し、それに応じた電気信号を生成する。
特徴35を備えている一つの実施例では、電池パック内に状態検出回路を備えている。それは、例えば、少なくとも一つの全固体電池と信号出力端子に接続されているマイクロプロセッサを利用する制御装置であり、少なくとも一つの全固体電池の状態を検出し、検出された状態に基づいて充電可能な状態にあるか否かを検出し、それに応じた電気信号を生成する。
【0071】
(特徴36)
電池駆動式可搬用具の用具本体であり、
全固体電池セルまたは全固体電池セル群を収納している電池パックが装着(電気的かつ機械的に接続すること)可能な部分(電池取付部)を備えており、
前記部分(電池取付部)は、全固体電池セルが放電可能な状態かどうかを示す信号を出力または入力する端子を備えている。
【0072】
(特徴37)
電池駆動式可搬用具の用具本体であり、
全固体電池セルまたは全固体電池セル群を収納している電池パックが装着(電気的かつ機械的に接続すること)可能な部分(電池取付部)を備えており、
前記部分(電池取付部)は、全固体電池セルが再充電可能な状態かどうかを示す信号を出力または入力する端子を備えている。
【0073】
特徴36または37では、用具本体が、電池セルの状態/状況を評価して対応する信号を生成するように構成またはプログラムされた例えばマイクロプロセッサなどのコントローラをさらに含むことがある。
例えば、特徴36を備えている一つの実施例では、用具本体が状態検出回路を備えている。それは、例えば、少なくとも一つの全固体電池に接続可能であるとともに信号出力端子に接続されているマイクロプロセッサを利用する制御装置であり、少なくとも一つの全固体電池の状態を検出し、検出された状態に基づいて放電可能な状態にあるか否かを検出し、それに応じた電気信号を生成する。
特徴37を備えている一つの実施例では、用具本体が状態検出回路を備えている。それは、例えば、少なくとも一つの全固体電池に接続可能であるとともに信号出力端子に接続されているマイクロプロセッサを利用する制御装置であり、少なくとも一つの全固体電池の状態を検出し、検出された状態に基づいて充電可能な状態にあるか否かを検出し、それに応じた電気信号を生成する。
【0074】
(特徴38)
特徴37の用具本体であり、
全固体電池が再充電不能な状態にあることを示す信号を出力または入力している間は、再生電力による充電を禁止する再生充電禁止装置を備えている。
再生充電禁止装置は、状態検出回路の一部であってもよい。マイクロプロセッサに記憶されているプログラムまたはアルゴリズムが再生充電を禁止することがありえる。再生充電禁止装置は、状態検出回路と別に設けることもできる。
【0075】
(特徴39)
上記したいずれかの用具本体または電池パックであり、
電池パックが、複数の全固体電池セルを含んでいる。その全固体電池セルは、正極と負極の間に100℃以上の温度で固体である導電体を備えており、その導電体は、半導体、導電性セラミック、導電性ガラス、導電性ポリマーまたは固体電解質であることがある。例えば、その導電体は、シリコンベースの半導体、またはITO、IZOまたはAZOなどのセラミックであってもよい。
【0076】
(特徴40)
電池パックであり、少なくとも1個の全固体電池セルと、少なくとも1個の回路基板と、少なくとも1個の端子と、ハウジングを備えており、
全固体電池セルと回路基板はハウジング内に収容されており、
端子はハウジングの内側から外側に亘って延びており、
端子はハウジングに対してインサート成形されており、
ハウジングはハウジング内の空間をハウジング外の空間から防水している。
上記によると、全固体電池セル(従って、その電極)が、水滴と異物の侵入を阻止する空間内に収容されており、電極同士の間に異物または水滴が侵入して電池セルが短絡することを防止できる。水滴と異物の侵入を阻止するハウジングは、電池パックのハウジングを兼用してもよいし、その内側に収容されるものであってもよい。電池パック内に冷却風通路を必要とする従来の技術では、電池セルを密封空間内に閉じ込めることができず、電池セルの電極に異物が付着して電極が早期に消耗したり、短絡することがあった。本特徴によると、その問題が解決される。
(特徴41)
特徴40の電池パックであり、
全固体電池セルはハウジング内で回路基板に接続されており、
端子の一端はハウジング内で回路基板に接続されており、
端子のハウジング外の端部に、用具本体に固定されている端子が接触する。
(特徴42)
特徴41の電池パックであり、ハウジングに固定されているカバーを備えており、
そのカバーには、用具本体に固定されている端子が通過する穴が形成されており、
端子のハウジング外の端部は、カバー内に留まっている。
(特徴43)
特徴40~42の電池パックであり、正極端子と負極端子と少なくもと1本の信号端子を備えている。
(特徴44)
特徴40~43の電池パックであり、
ハウジングは、下ハウジングと上ハウジングを備えており、端子は上ハウジングにインサート成形されている。
(特徴45)
特徴44の電池パックであり、
回路基板と上ハウジングの一方または双方に、両者の相対的位置関係を規定する位置決めが形成されている。
(特徴46)
特徴44または45の電池パックであり、
カバーと上ハウジングの間に、カバーを下ハウジングに固定すると、カバーと上ハウジングの間の隙間を水密に閉じるシール部材が配置されている。
【実施例】
【0077】
図1は、複数個の全固体電池セル(
図21のセルグループ171、または
図25の電池セル12,14,16,18)を内蔵している電池パック174の外観と、その電池パック174が脱着可能な用具本体180の外観を示している。ここでいう電池パックは、電動工具の分野において汎用されている他の用語、例えば、電池カートリッジ、再充電可能電池、あるいは単に電池またはバッテリといわれるものと同じであり、どの用語を用いてもよい。電池パック174は、用具本体180の外面に対して脱着可能でもよいし、電池パック174の全部または一部が用具本体180の内側に収容されるようにして脱着可能でもよい。電池パック174の外観(すなわちプラスチックハウジングと端子部分)は、通常の運転温度(0~50℃)において液状またはゲルである(固体でない)電解質を利用するリチウムイオン電池を利用する電池パックとほぼ同じである。全固体電池セルは、高温でも特性(内部抵抗、電圧、電流出力など)がそれほどに低下しないことから冷却の必要性が低く、セル同士を密着させて配置することができる。その結果、全固体電池を利用する電池パック174の体積は、それと同性能のリチウムイオン電池を利用する電池パックに比して小型である。また各電池セルを湿気からシールドするパッケージ材が簡略化または省略できることから、全固体電池を利用する電池パック174の重量は、それと同性能のリチウムイオン電池を利用する電池パックに比して軽量である。全固体電池セルを内蔵する電池パック174は、作業者が支持した状態で使用する用具本体、あるいは、地面、作業台、被加工材等が備えている面上に置いた状態で使用する用具本体など、種々の用具本体180(特に電池取り付け部)に対して脱着可能である。電池駆動式可搬用具1は、用具本体180に電池パック174を取り付けることによって完成する。この電池駆動式可搬用具1は、可搬式であり、使用者が必要な作業場所に持ち運ぶことができる。
【0078】
液状またはゲル状の電解質を利用するリチウムイオン電池は冷却する必要があり、電池パック内に冷却風通路を必要とする。電池パックのハウジングは、複雑な形状となる。それに対して、全固体電池は冷却する必要がなく、電池パック174内に冷却風通路を必要としない。電池パック174のハウジングによってセル12,14,16,18を外界から封止しやすい。実施例の電池パック174は、軽量・小型であり、優れた対候性を備えている。
【0079】
図2は、環境温度と、温度によって特性等が変化するために温度計測の必要がある部品の温度を示す。部品は、加温・発熱・放熱等の影響によって、環境温度と異なる温度となる。なお
図2は一例であり、図示の例に限られるものではない。
【0080】
図2の(1)は、実施例の電池駆動式可搬用具のメーカが正常動作を保証する環境温度範囲を示す。(0)に、従来の電池駆動式可搬用具の正常動作保証温度範囲(通常は0℃~+40℃程度)を示す。実施例の電池駆動式可搬用具の正常動作保証温度範囲は、低温側にも高温側にも拡大されている。
【0081】
図2の(2)は、(1)の環境温度で使用する場合の電池温度の変化幅を示す。(1)に示す正常動作保証温度範囲の低温側の温度は、電解液を使用していれば凍結する温度に相当する。電池(電池セル)は充放電時に発熱することから、環境温度以上に昇温することがある。電解液を使用している場合、電池温度が上昇すると電解液に由来するガスによってセル内圧力が上昇してセルが損傷する可能性がある。そこで、電解液を使用している場合、電解液に由来するガスの圧力が過剰に上昇することを防止する必要があり、電池温度が80℃以上に上昇しないように放電を抑える必要があった。実施例の電池駆動式可搬用具では、電池温度の上限が100℃程度にまで高められており、放電を抑えて過熱を防止する制御が必要な温度範囲が高温側にシフトしている。
【0082】
図2の(3)は、小電力で駆動する制御系電子部品、例えばマイクロプロセッサの温度を示す。制御系電子部品の発熱量は小さいことから、基本的には環境温度にほぼ等しい。
図2の(3a)は、制御系電子部品が正常に動作する温度範囲を示す。(1)に示した正常動作保証温度範囲の最低温度は、制御系電子部品が正常に動作する温度範囲の最低温度よりも低い。制御系電子部品が正常に動作する温度範囲の下限値よりもさらに低温となる環境下でも、電池駆動式可搬用具を正常に動作させる技術が必要とされる。
【0083】
図2の(4)は、動作すると発熱するパワー系電気部品(例えば、モータをインバータ制御するトランジスタ、あるいは電池パック内にあって充放電を禁止して電池を保護するトランジスタ)の温度を示し、発熱することで環境温度以上に昇温する。パワー系電気部品には、正常に動作する上限温度が存在することから、これらの電気部品を放熱することによって前記上限温度を超えないように保護する技術を必要とする。
【0084】
図3は、従来の温度計測回路の一例を示しており、プルアップ抵抗RとサーミスタTMの直列回路を利用する。プルアップ抵抗R側の端部は定電圧(例えば5V)に接続し、サーミスタTM側の端部は接地する。プルアップ抵抗RとサーミスタTMの接続点では、プルアップ抵抗Rの抵抗値とサーミスタTMの抵抗値で分圧した電圧となり、サーミスタ温度に依存して変化する。サーミスタTMの抵抗値は温度によって変化することから、前記した分圧電圧は温度に依存して変化する。分圧電圧をマイコンに取り込めば、サーミスタTMの温度を計測することができる。
【0085】
図4は、横軸にサーミスタ温度を取り、縦軸に前記した分圧電圧をとった場合の関係を示している。分圧電圧は、マイクロコントローラの読み込み電圧に等しい。サーミスタ温度が上昇するとサーミスタ抵抗値が小さくなることから、サーミスタ温度が上昇すると分圧電圧は下降する。
サーミスタTMの温度特性から、分圧電圧がサーミスタ温度に対してリニアに変化する温度幅は限られている。
図4の場合、+60℃から+120℃の間では前記したリニアな関係が成立する。しかしながら、サーミスタ温度が+60℃以下の温度範囲では、前記したリニアな関係が得られず、前記の分圧電圧から算出したサーミスタ温度は実際のサーミスタ温度から乖離してしまう。
【0086】
図5は、全固体電池(電池セル)の温度と、全固体電池に許容される充電電流の関係を示し、許容値以上の充電電流を全固体電池に通電すると、電池寿命が低下する等の問題が生じる。
図5からも明らかに、充電電流の許容値は、-30℃、0℃、+60℃、+80℃において切換わることから、-30℃、0℃、+60℃、+80℃の各々の近傍では電池温度を正確に計測する必要があることがわかる。例えば、-30℃近傍における温度計測精度が低いと、充電電流を流せる温度でありながら充電を禁止したり、逆に充電電流を流せない温度(その温度で充電すると電池セルが損傷する)でありながら充電したりする問題が生じる。
図4の特性の温度計測回路では、-30℃と0℃の近傍の温度を正確に計測できず、その温度領域では電池をうまく充電することができない。
【0087】
図6のカーブAでは、前記した+60℃~+120℃の間で前記したリニアな関係が成立し、カーブBでは、-30℃~+20℃の間でリニアな関係が成立している。
図7は、カーブAの分圧電圧を提供する回路と、カーブBの分圧電圧を提供する回路を併せ持った温度計測回路または温度検出回路を示している。二つのプルアップ抵抗61,62が並列に接続され、一方のプルアップ抵抗62と定電圧電源の間にトランジスタ63が挿入されている。トランジスタ63は、後記するマイコンによって、オン・オフが制御される。プルアップ抵抗61,62の並列回路に対してサーミスタ64が直列に接続されている。プルアップ抵抗とサーミスタで分圧された電圧が、マイコンに入力される。本実施例では、プルアップ抵抗61を82KΩ、プルアップ抵抗62を1.5KΩとしている。
【0088】
トランジスタ63がオンすると、実効的なプルアップ抵抗は、82KΩの抵抗61と1.5KΩの抵抗62を並列に接続して構成される1.47KΩとなり、分圧電圧が
図6のグラフAとなる。トランジスタ63がオフすると、実効的なプルアップ抵抗は82KΩの抵抗61となり、分圧電圧が
図6のグラフBとなる。
【0089】
前記した分圧電圧がマイコンに入力され、そのマイコンがトランジスタ63のオン・オフを制御する。トランジスタ63がオンしているときにマイコンに入力する電圧が4V以上であれば、サーミスタ温度が+60℃以下であることが分かり(マイコンがそう判断して)、マイコンはトランジスタ63をオフにしてグラフBの関係となるように切換える。
トランジスタ63をオフすることで得られる抵抗61とサーミスタ64の直列回路による分圧抵抗は、グラフBの関係となる。サーミスタ温度が-30℃から+20℃の範囲にあれば、グラフBが示すリニアな関係を利用してサーミスタ温度を正確に計測することができる。トランジスタ63がオフしているときにマイコンに入力する電圧が1.2V以下であれば、サーミスタ温度が+20℃以上であることが分かり(マイコンがそう判断して)、マイコンはトランジスタ63をオンにしてグラフAの関係となるように切換える。トランジスタ63をオンすると、抵抗61と抵抗62を並列に接続した抵抗にサーミスタ64を直列に接続した分圧回路が得られ、その分圧電圧はグラフAの関係となる。サーミスタ温度が+60℃から+120℃の範囲にあれば、グラフAが示すリニアな関係を利用してサーミスタ温度を正確に計測することができる。
【0090】
トランジスタ63がオンしているときの回路は、+60~+120℃の温度範囲を正確に計測する高温計測回路の一例である。高温計測回路は、電池温度が+60~+120℃の温度範囲にあれば、電池温度をプラスマイナス5℃以内(好ましくは3℃以内)の精度で正確に検出する。高温計測回路は、電池温度を正確に計測できる+60~+120℃の温度範囲にあれば、4V以下の電圧を検出する。トランジスタ63がオンしているときの高温計測回路の出力が4V以上になると、マイクロコントローラは、電池温度が高温計測回路によって正確に計測できる範囲外であると判断する。4V以上の電圧は、高温計測回路では異常値ということができる。高温計測回路が4V以上の電圧を計測する場合は異常値を計測しているということができ、この場合はトランジスタ63がオフして低温計測回路に切換える。
【0091】
トランジスタ63がオフしているときの回路は、-30~+20℃の温度範囲を正確に計測する低温計測回路の一例である。低温計測回路は、電池温度が-30~+20℃の温度範囲にあれば、電池温度をプラスマイナス5℃以内(好ましくは3℃以内)の精度で正確に検出する。低温計測回路は、電池温度を正確に計測できる-30~+20℃の温度範囲にあれば、1.2V以上の電圧を検出する。トランジスタ63がオフしているときの低温計測回路の出力が1.2V以下になると、マイクロコントローラは、電池温度が低温計測回路によって正確に計測できる範囲外であると判断する。1.2V以下の電圧は、低温計測回路では異常値ということができる。低温計測回路が1.2V以下の電圧を計測する場合は異常値を計測しているということができ、この場合はトランジスタ63をオンして高温計測回路に切換える。
【0092】
トランジスタ63がオンしているときにマイコンに入力する電圧が4V以上であり、トランジスタ63がオフしているときにマイコンに入力する電圧が1.2V以下であれば、サーミスタ温度が+20℃以上で+60℃以下であることがわかるが(マイコンはそう判断する)、それ以上には高精度で計測することができない。しかし、それが問題となることはない。その理由は、
図5に例示したように、例えば電池温度が+20℃~+60℃の範囲にある場合は、温度に依存する制御が不必要であり、温度計測する必要がないからである。低温領域にあれば低温に対処する加温制御をしたり、高温領域にあれば高温に対処する放熱制御をしたりする必要があるのに対し、中央領域にあれば温度に依存した制御が不要となるからである。
【0093】
-30~+120℃の範囲の温度計測を必要とする場合、通常なら計測範囲をほぼ2分し、-30℃から+45℃程度までを計測範囲(計測幅75℃)とする低温計測回路と、+45℃程度から+120℃までを計測範囲(計測幅75℃)とする高温計測回路を使用するのが普通であろう。本実施例では、20~60℃の範囲では温度を正確に計測する必要性がないことに着目し、-30℃から+20℃程度までを計測範囲(計測幅50℃)とする低温計測回路と、+60℃程度から+120℃までを計測範囲(計測幅60℃)とする高温計測回路を使用する。計測幅が75℃である計測回路と、計測幅50~60℃である計測回路を比較すると、前者よりも後者の方が高精度で温度を計測することができる。本実施例では、高温計測回路が正確な計測結果を出力する下限温度(+60℃)が、低温計測回路が正確な計測結果を出力する上限温度(+20℃)よりも高い関係とし、高温計測回路と低温計測回路のそれぞれで計測可能な温度幅を狭めて計測精度を高めている。
【0094】
本実施例の場合、環境温度と運転状態によって、電池温度が-30℃から+120℃の間で変動する可能性がある。
図4の特性となる
図3の温度計測回路では、温度を計測できる幅が足りない。これに対して
図6のグラフAとグラフBの間で特性を切換えることができる
図7の回路を利用すると、低温領域でも(-30~+20℃の範囲)でも高温領域(+60~+120℃の範囲)でも電池温度を正確に計測することができる。
【0095】
本実施例の場合、1個または複数個の制御系電子部品(パワー系電子部品の発熱の影響を受けて環境温度以上に昇温することがある)の温度が、パワー系の電気部品と同様に、-30℃から+120℃の間で変動することがあり得る。
【0096】
サーミスタ64を電池温度と等温度となる環境に置けば、本技術によって、電池が低温領域にあっても高温領域にあっても電池温度を正確に計測することができる。同様に、サーミスタ64を制御系電子部品と等温度となる環境に置けば、本技術によって、制御系電子部品が低温領域にあっても高温領域にあっても制御系電子部品の温度を正確に計測することができる。同様にサーミスタ64をパワー系電気部品と等温度となる環境に置けば、本技術によって、パワー系電気部品が低温領域にあっても高温領域にあってもパワー系電気部品の温度を正確に計測することができる。
図7の温度計測回路を利用することで、温度変化幅が大きき各部品の温度を正確に計測することができる。高温計測回路と低温計測回路を組み合わせて用いる技術は、電池温度の計測に限られず、用具本体内の電子部品や部品の温度計測に適用することができる。例えば、マイクロプロセッサや電流をコントロールするFET等のスイッチング素子の温度を計測するのに利用できる。
【0097】
図7の温度検出回路(温度計測回路)は、用具本体内に実装する場合もあれば、電池パック内に実装する場合もあれば、電池パックを用具本体に取り付けた段階で温度計測回路が完成することもある。
【0098】
本実施例では、温度計測回路に高温計測回路と低温計測回路を設けているが、高温用回路と低温用回路を用意し、いずれかを選択して活用する技術の有用性は、温度計測に限られない。例えば高温用保護回路と低温用保護回路を使い分ける技術が有用な場合もある。
【0099】
図7では、定抵抗側の端部を定電圧(例えば5V)に接続し、サーミスタ側の端部を接地するが、逆に、定抵抗側の端部を接地し、サーミスタ側の端部を定電圧に接続してもよい。すなわち、定抵抗をプルアップ抵抗にしてもよいし、プルダウン抵抗にしてもよい。
【0100】
図6と
図7の回路(温度計測回路)は、高温計測回路と低温計測回路を切り換えるものであり、電圧と温度の間にリニアな関係が成立しない中温計測時に計測精度が低下する。中温(室温)範囲をも高精度に計測するためには、例えば
図8に示すように、中温(室温)範囲において電圧と温度の間にリニアな関係が成立する特性Cを付加すればよい。
図9は、
図8の3つの特性A,B,Cを提供する温度検出回路(温度計測回路)を例示している。
第1抵抗65の抵抗値は75KΩ、第2抵抗66の抵抗値は8.2KΩ、第3抵抗67の抵抗値は1.5KΩである。第1抵抗65と第2抵抗66は直列に接続され、第3抵抗67は、第1抵抗65と第2抵抗66の直列回路に並列に接続されている。トランジスタスイッチQ1とQ2の双方をオフすれば、プルアップ(あるいはプルダウン抵抗)は、83KΩ程度となり、前記した低温計測回路に切換えられる。トランジスタスイッチQ1とQ2の双方をオンすれば、プルアップ(あるいはプルダウン抵抗)は、1.5KΩ程度となり、前記した高温計測回路に切換えられる。トランジスタスイッチQ1をオンしてトランジスタスイッチQ2をオフすれば、プルアップ(あるいはプルダウン抵抗)は、8.2KΩ程度となり、室温(中温)計測回路に切換えられる。
【0101】
図10は、
図5に示した「全固体電池の温度と全固体電池に許容される充電電流」の別例を示し、10℃前後と50℃前後において充電電流を変化させる場合を示す。
図6の特性となる
図7の回路では、50℃前後の計測精度が低下する。
図10の関係を実現するためには、
図8の特性を提供する
図9の回路を採用することが好ましい。
【0102】
図25は、全固体電池セル12,14,16,18と制御回路基板20を大気(外界)から遮断して防水する電池パック174’の一例を示している。下ハウジング50内には、4個の電池セル12,14,16,18が直列に接続された状態で収容されている。各電池セル12,14,16,18は、正極と負極の間に固体電解質が配置された構造を備えている。他のタイプの全固体電池を利用してもよい。正端子22は、基板20を貫通して基板20の上面に形成されている配線パターンにハンダ24で接続されている。負端子26は、基板20を貫通して基板20の上面に形成されている他の配線パターンにハンダ28で接続されている。参照番号30は、電池セル12,14,16,18と制御回路基板20を大気から遮断する上ハウジングであり、正極端子32と負極端子38が上ハウジング30にインサート成形されている。正極端子32と負極端子38は上ハウジング30を貫通している。参照番号34と40はインサート成形されている部分を示し、正極端子32と上ハウジング30の接触面と、負極端子38と上ハウジング30の接触面に沿って水が浸入することはない。正極端子32の下端側は、基板20を貫通して基板20の下面に形成されている配線パターンにハンダ36で接続されている。負極端子38の下端側は、基板20を貫通して基板20の下面に形成されている他の配線パターンにハンダ42で接続されている。正極端子32の上端は、上ハウジング30の上方に突出しており、端部33が形成されている。負極端子38の上端は、上ハウジング30の上方に突出しており、端部39が形成されている。上ハウジング30の上面には、周縁に沿って一巡する凸条31が形成されている。また上ハウジング30の下面には、上ハウジング30と制御回路基板20の相対的位置関係を規定するボス29が形成されている。ボス29によって上ハウジング30の下面と制御回路基板20の上面との間に、一定の距離が確保される。参照番号44はカバーを示し、穴46,48が形成されている。参照番号51は、用具本体側に固定されている正端子を示し、用具本体180に電池パック174’を取り付けると、正端子51は穴46を通過して正極端子32の端部33に挿入されて導通する。参照番号52は、用具本体側に固定されている負端子を示し、用具本体180に電池パック174’を取り付けると、負端子52は穴48を通過して負極端子38の端部39に挿入されて導通する。カバー44の下面には、周縁に沿って一巡する防水部材(シール)45が固定されている。カバー44と下ハウジング50はかみ合い、かみ合った状態で固定される。このとき、凸条31が防水部材45を圧縮し、カバー44と上ハウジング30間の隙間は水密に封じられる。またカバー44と下ハウジング50の接触部から水が浸入することはない。
【0103】
図25の構造によると、カバー44の穴46、48から侵入した水は、防水部材45と凸条31と上ハウジング30によって止められ、制御回路基板20と電池セル12,14,16,18の収容空間にまで侵入することはない。電池パック174’が用具本体180に取り付けられると、正極端子32の端部33と用具本体180側の正端子51(
図21の端子182と同等部材)が接触し、負極端子38の端部39と用具本体180側の負端子52(
図21の端子183と同等部材)が接触する。制御回路基板20と用具本体180との間の信号を伝達する導電体(
図21の端子182に対応する)が、正極端子32と負極端子38と同様に、上ハウジング30にインサート成形されていてもよい。
図25の実施例では、電池パック174’を上方に移動させて電池パックを用具本体180に取り付けるが、例えば
図1に示すように、電池パック174を左右方向にスライドさせて電池パック174を用具本体180に取り付ける形式にも適用可能である。この場合は、カバー44に設ける穴46、48を左右方向に長い(水平に長い)穴とする。
【0104】
図25の構造によると、下ハウジング50と上ハウジング30と、カバー44の一部によって内外を水密に分離するハウジングが形成され、その内部に全固体電池セル12,14,16,18と回路基板20が収容される。正極端子32と負極端子38は、そのハウジングの内側から外側に亘って延びている。端部33,39は、カバー44の内側にあり、使用者が誤って端部33,39に接触することを防止している。凸条31と防水部材45によって、カバー44と上ハウジング30間の隙間が水密に封じられ、ハウジングの内外が防水される。
【0105】
図2を参照して説明したように、制御系電子部品が正常に動作する下限値よりも低温環境で電池駆動式可搬用具1を使用することがあり、この場合は、制御系電子部品が正常に動作する温度範囲内にあるように制御系電子部品を加温する必要がある。また、
図2を参照して説明したように、パワー系電気部品は動作すると発熱するために、放熱して過熱を防止する必要がある。ここでは、前者を要加温部品といい、後者を要放熱部品という。要加温部品と要放熱部品が混在する場合、加温装置と放熱装置を両立させる(一方が他方の邪魔をすることがないようにする)技術が必要とされる。加温装置と放熱装置を不用意に併用すると、加温装置の熱が放熱装置に放熱されて要加温部品を加温できないといった問題が生じる。
【0106】
図11は、用具本体内に収容するモータ制御回路のレイアウト(部品群の相対的位置関係)を示している。参照番号71はバネ、参照番号79は基板、参照番号72はハウジング、参照番号81は放熱部材、参照番号82は放熱部材81をハウジング72に固定する螺子、参照番号73は要加温部品、参照番号74は加温用ヒータ、参照番号75は要放熱部品、参照番号76は熱伝導率が高い伝熱ブロック、参照番号77も熱伝導率が高い伝熱ブロック、参照番号78はバイメタルを示している。
図11は、バイメタル78が低温度(要加温部品が正常に動作する下限温度よりも低温)にある場合のレイアウト(部品の位置関係)を示している。
図12は、バイメタル78が高温度(要放熱部品から放熱して過熱を防ぐ必要がある温度にまで上昇した場合)にある場合のレイアウトを示している。
図11では、バネ71によって基板79が上昇しており、伝熱ブロック76と放熱部材81の間が遮断されている。
図12では、バイメタル78が伸びたために基板79が下降しており、伝熱ブロック76と放熱部材81が接触している。ハウジング72は熱伝導率が低い(約0.5W/mk以下、より好ましくは0.3W/mk以下)樹脂で形成されており、バイメタル78等を周囲から断熱している。放熱部材81は、熱伝導率が高い(約200W/mk以上、より好ましくは300W/mk以上)材料で形成されている。
図12のレイアウト時には、伝熱ブロック76の熱を放熱部材81を介して大気に放熱する。
【0107】
要加温部品73と加温用ヒータ74は基板79の表裏に貼付されており、加温用ヒータ74に通電すると、その熱は基板79を通過して要加温部品73に到達し、要加温部品73を加温する。ハウジング72は、要加温部品73と加温用ヒータ74の周囲を大気から遮断しており、ハウジング72は加温用ヒータ74の熱が大気によって奪われるのを防止する。基板79は、加温用ヒータ74の熱が要放熱部品75を介して伝熱ブロック76に伝熱する経路となる。加温用ヒータ74が動作して要加温部品73を加温している状態で
図12の位置関係となると、加温用ヒータ74の熱が要放熱部品75と伝熱ブロック76を介して放熱部材81に移動し、要加温部品73を十分に加温することができない。要加温部品73を加温する必要がある低温度では、要放熱部品75を放熱する必要がないことから、
図11のレイアウトになる。
図11のレイアウトにあれば、加温用ヒータ74の熱が要放熱部品75と伝熱ブロック76を介して放熱部材81に移動することがなく、要加温部品73を十分に加温することができる。
【0108】
加温用ヒータ74は、通電することによって要加温部品73の温度が+5℃以上に上昇したらオフし、オフすることによって要加温部品73の温度が0℃以下に冷却されたらオンする。
【0109】
要放熱部品75の温度が上昇して放熱を要する温度となると、バイメタル78が伸び、
図11のレイアウトから
図12のレイアウトに切換わる。すると、要放熱部品75が伝熱ブロック76を介して放熱部材81に接触する関係となる。要放熱部品75の熱は、伝熱ブロック76を介して放熱部材81に伝熱され、要放熱部品75が過熱することが防止される。伝熱ブロック77は、要放熱部材75の温度とバイメタル78の温度が連動するようにしている。ハウジング72の熱伝導率は低く、バイメタル78の熱を奪うことがない。
図11と
図12を切換えることによって、加温装置と放熱装置が両立する。一方が他方の動作を損ねることがない。
【0110】
要加温部品73の加熱を要する温度<要放熱部品75の放熱を要する温度の関係にあり、
図11と
図12の切換温度はその間にあればよい。すなわち、切換え温度=要加温部品73を加温する必要性の有無を分ける境界温度でもよいし、切換え温度=要放熱部品75を放熱する必要性の有無を分ける境界温度でもよい。要加温部品73を加温する必要性の有無を分ける境界温度<
図11と
図12の切換え温度<要放熱部品75を放熱する必要性の有無を分ける境界温度の関係にあればよい。
【0111】
回路基板のレイアウト上の制約から、要放熱部品75の温度がバイメタル78は伝熱しづらい場合がある。この場合は、
図13に示すように、バイメタル78を加熱して変形させるヒータ80を追加する構成を採用する。ヒータ80は下記のいずれかのように制御する。
(1)要加温部品73が加熱を要しない温度にまで昇温したらヒータ80に通電する。
(2)要放熱部品75が放熱を要する温度にまで昇温したらヒータ80に通電する。
(3)前記(1)と(2)の中間温度でヒータ80に通電する。
(1)~(3)のなかから選択すればよい。
図13はヒータ80に通電する前のレイアウトを示し、
図14はヒータ80に通電した状態でのレイアウトを示している。
【0112】
本技術は、
図21を参照して後記するインバータ195を構成するトランジスタを放熱し、マイコン193を加温するのに適用することができる。すなわち、用具本体180に適用することができる。
電池パック174が、放電電流が流れるのを禁止するトランジスタ(パワー系電子部品であって放熱を要する)と、そのトランジスタを制御するマイコン(バッテリコントローラ172であって加温を要する)を内蔵していることがある。この場合は、
図11~14に示した上記技術を電池パック174、174’に適用することができる。
【0113】
図15~17は、要加温部品73とヒータ74と要放熱部品75と基板79と放熱部材81の関係を示し、要放熱部品75の熱は放熱部材81に放熱される。本実施例では、「要加温部品73とヒータ74の間の熱抵抗」<「ヒータ74と要放熱部品75間の熱抵抗」の関係に置かれている。これによって、ヒータ74の熱は主として要加温部品73の加温に費やされ、要放熱部品75の加熱に消費されないようにしている。
【0114】
ヒータ74の熱が周囲の大気に放熱されると要加温部品73を加熱する能力が低下する。
図15では、ヒータ74と要加温部品73をハウジング120内に収容して大気への放熱を防ぐ。
図16ではハウジング120に代えて硬化した接着剤140で大気への放熱を防ぐ。
図17に示すように、樹脂モールド成型体160でハウジング83の内部を充填してもよい。
【0115】
図18~20では、「要加温部品73とヒータ74の間の熱抵抗」<「要加温部品73と要放熱部品75間の熱抵抗」の関係に置かれている。これによって、ヒータ74の熱が要加温部品73を介して要放熱部品75に伝熱する熱量を下げ、要加温部品73が効果的に加熱されるようにしている。
【0116】
図18では、ヒータ74と要加温部品73をハウジング130内に収容して大気への放熱を防ぐ。
図19ではハウジング130に代えて硬化した接着剤150で大気への放熱を防ぐ。
図20に示すように、樹脂モールド成型体170でハウジング83の内部を充填してもよい。
【0117】
図18~20では、「要加温部品73とヒータ74の間の熱抵抗」<「要加温部品73と要放熱部品75間の熱抵抗」の関係にあるだけでなく、「要加温部品73とヒータ74の間の熱抵抗」<「ヒータ74と要放熱部品75間の熱抵抗」の関係に置かれている。両関係を満たすことによって、ヒータ74によって要加温部品を加温する効率を高めている。
【0118】
図21は用具本体180に電池パック174(または174’)を取り付けた状態で完成する電気回路、すなわち完成した電池駆動式可搬用具1が内蔵している電気回路を示す。電池パック174は、全固体電池セルの複数個を接続したセル群171と、そのセル群の状態を計測して制御するバッテリコントローラ172を内蔵している。用具本体180に電池パック174(または174’)をとりつけると、電池パック174の正極と用具本体180内の正極線184が正極端子181で接触し、電池パック174の負極と用具本体180内の負極線185が負極端子183で接触し、バッテリコントローラ172とマイコン193が信号端子182を介して信号伝達可能となる。バッテリコントローラ172からマイコン193に向けて、電池温度を示す電圧(
図7または
図9で説明した分圧電圧)と、電池が回生電力で充電可能な状態にあるのかないのかを示す信号(CS)と、電池が放電可能な状態にあるのかないのかを示す信号(DS)が送られる。
【0119】
参照番号191はマイコン193等に供給する定電圧を生成する定電圧電源であり、192はサージキラーコンデンサ(サージ抑制またはサージ禁止コンデンサということもある)である。
【0120】
この用具本体180は、ブラシレスモータ196と、モータ196の動作状態を検出するセンサ回路197を内蔵し、その検出値がマイコン193に入力される。マイコン193は、電池パック174(または174’)からの信号やセンサ回路197等からの信号によって、インバータ195の動作を制御する。マイコン193はゲートドライバ194に制御信号を出力し、ゲートドライバ194はマイコン193からの制御信号に基づいてインバータ195が内蔵している6個のトランジスタのゲート電圧を制御し、6個のトランジスタのオン・オフを制御する。ブラシレスモータ196は、マイコン193によってインバータ制御される。
【0121】
参照番号198は、ブラシレスモータ196が慣性によって回転しづけること(モータの制動中)によって発電する電圧を整流する回路であり、199は回生ブレーキ(モータ制動中の回生電力で電池を充電する回路)であり、配線200を介してCS端子に接続されている。バッテリコントローラ172が回生電力による充電を許容している場合は、回生ブレーキ199の動作が許可され、ブラシレスモータ196の慣性による回転を減速しながら発電し、その発電で電池セル群171を充電する。バッテリコントローラ172が回生電力による充電を許容していない場合は、回生ブレーキ199の動作が禁止される。それによって電池セル12,14,16,18の群171が不用意に充電(例えば電池温度が充電に適さないほど高温であるにも拘わらずに充電する)されて電池寿命が低下するのを防止する。電池が放電できない状態にある(例えば電池温度が高温すぎるか、あるいは残存容量が低すぎる)ときには、バッテリコントローラ172がその信号を出力し、マイコン193はインバータ195の動作を停止し、電池寿命の低下等を防止する。
【0122】
インバータ制御では、インバータ195を構成しているトランジスタが、電池等に寄生して存在するインダクタンス成分に流れる電流を瞬間的にオン・オフすることから、サージ電圧が発生する。そのサージ電圧による悪影響の発生を防止するために、サージキラーコンデンサ192が用意されている。サージキラーコンデンサ192に必要な容量は、インダクタンスによって決まり、インダクタンスが大きいとサージキラーコンデンサ192に必要な容量も大きくなり、大型となってしまう。
【0123】
全固体電池の場合、リチウムイオン電池に比してインダクタンスを小さくすることができる。仮に用具本体内のインダクタンスが大きいと、全固体電池によってインダクタンスが小さくなる利点が活用できなくなる。本実施例では、用具本体180内のインダクタンスを小さく抑える技術を採用している。
図21に示すように、用具本体180は細長い。正極端子181とコントローラ190の正極をつなぐ配線184と、負極端子183とコントローラ190の負極をつなぐ配線185は、相互に対向している状態で平行に延びている。
図22は、配線184,185の断面図を示し、扁平な金属バー(平角線)184,185の扁平面同士が対向して延びていることを図示している。平行に延びている導体に対して反対方向に電流が流れることによってインダクタンスが打ち消し合い、実効的なインダクタンスが小さく抑えられる。
図23に示すように同軸線を利用してもよいし、
図24に示すように平行ビニール線を利用してもよい。
【0124】
全固体電池の場合、電極材料の種類によってセル電圧が変化する。電極材料の種類によって満充電時のセル電圧は3.6V~6.0V程度の範囲内で分布している。過放電を禁止するための最低セル電圧も電極材料の種類によって変化するが、その分布幅は小さく、概ね2.0V程度である。
満充電時のセル電圧が6.0V程度の全固体電池を使用する場合、電池駆動式可搬用具にはセル電圧が6.0V~2.0Vまで変化しても問題なく使用できるようにする対策が必要とされる。電池電圧の大小にかかわらず、運転スイッチ(多くトリガスイッチ)がオンしている間は定速回転または定トルク運転する回路、あるいはトリガスイッチの操作量が一定の間は定速回転または定トルク運転する回路が必要となる。定速回転または定トルク運転を維持する必要がある電池電圧の変動幅が従来よりも大幅に拡大されることから、それに対処する回路技術が必要となる。
また、満充電時の電池パック電圧が同じでも、過放電禁止電圧が異なる現象が生じる。例えば、セル電圧が6Vのセルを3個直列に接続することによって、あるいはセル電圧が4.5Vのセルを4個直列に接続することによって、あるいはセル電圧が3.6Vのセルを5個直列に接続することによって、満充電時の電圧が18Vの電池パックが得られる。
この場合、過放電を禁止する必要があるセル電圧が2Vであるとすると、6V×3個の電池パックを取り付ける用具には、18V~6Vにまで対応する技術が必要とされ、4.5V×4個の電池パックを取り付ける用具には、18V~8Vにまで対応する技術が必要とされ、3.6V×5個の電池パックを取り付ける用具には、18V~10Vにまで対応する技術が必要とされる。最大電圧が同じ用具でありながら、対応可能な最低電圧を個々に調整する技術が必要とされる。
【0125】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0126】
さらに、使用者が支持した状態 (ハンドヘルド)で使用する動力工具を主として説明してきたが、本教示は、マイターソー、摺動複合マイターソー、芝刈機、インフレータ、圧縮機等のような、表面上に置いた状態で使用する電池駆動式可搬工具にも等しく適用可能である。
【0127】
上述したように、固体電池は、主として、2個の電極間で電流を伝導する電解質(あるいは導電体、半導体)が固体であることを特徴とする。その電解質等は、100℃以上、150℃以上、200℃以上又は300℃以上の温度で固体であることが好ましい。電池セル内の電解質等は、100℃以上といった電動工具の高温度動作中でも固体のままである。
【0128】
固体電解質または固体の導電体等組成は、特に限定されるものではなく、導電性半導体材料、導電性セラミックス(例えば酸化物、硫化物、リン酸塩)、導電性ガラス又は導電性固体高分子であってもよい。一例では、固体電解質は、リチウムイオンを伝導する固体電解質である1つ以上の半導体材料または水素化物リチウム超イオン伝導体を含むか、またはそれらから構成されてもよい。別の例では、固体電解質は、インジウム錫酸化物(ITO)などの導電性セラミックを含むか、またはそれで構成することができる。IZO(酸化インジウム亜鉛)およびAZO(酸化アルミニウム亜鉛)も、本教示による可能な固体電解質である。 固体電池のアノード電極は、例えば、リチウム金属またはリチウム合金から構成されていてもよいし、リチウム金属またはリチウム合金を含んでいてもよい。固体電池のカソード電極は、例えば、リン酸鉄リチウム(LFP)またはITOから構成されていてもよいし、あるいはそれらを含んでいてもよい。
【0129】
本明細書に開示する技術は、以下に限定するものではないが、以下の実施例を含んでいる。
(実施例1)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体と、
前記電池パックと前記用具本体の少なくとも一方に配置されている電池温度計測回路を備えており、
その電池温度計測回路は、
高温領域では正確な計測結果を出力する一方において低温領域では正確性に劣る計測結果を出力する高温計測回路と、
低温領域では正確な計測結果を出力する一方において高温領域では正確性に劣る計測結果を出力する低温計測回路と、
前記高温計測回路の出力値が異常範囲になると、電池温度を示す信号(電池温度を決定するための信号)を、前記低温計測回路の出力に基づいて(出力から)出力し、前記低温計測回路の出力値が異常範囲になると、電池温度を示す信号(電池温度を決定するための信号)を、前記高温計測回路の出力に基づいて(出力から)出力する切換え装置と、
を備えている。
高温計測回路の出力の異常範囲と低温計測回路の出力の異常範囲は異なっていてもよいし、重複しなくてもよいが、重複していてもよい。
(実施例2)
実施例1の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温計測回路は、サーミスタと高温用分圧抵抗の直列回路を備えており、
前記低温計測回路は、前記サーミスタと低温用分圧抵抗の直列回路を備えている。
(実施例3)
実施例2の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温用分圧抵抗の抵抗値が、前記低温用分圧抵抗の抵抗値より低い。
(実施例4)
実施例1~3のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記用具本体が、前記高温計測回路と前記低温計測回路を備えている。
(実施例5)
実施例1~3のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが、前記高温計測回路と前記低温計測回路を備えている。
(実施例6)
実施例1~5のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記高温計測回路が正確な計測結果を出力する下限温度が、前記低温計測回路が正確な計測結果を出力する上限温度よりも高い。
(実施例7)
実施例1~6のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに前記用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータの-20℃における最高出力/+50℃における最高出力>0.5である。
(実施例8)
実施例1~7のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに前記用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータが、環境温度が氷点下以下でも-30℃以上であれば動作する。
(実施例9)
実施例1~8のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが供給する電力によって動作するとともに前記用具本体内に収容されているアクチュエータを備えており、
前記アクチュエータが、環境温度が+50℃以上でも電池温度が+100℃以下であれば動作する。
(実施例10)
実施例1~9のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが、200Wh/kg以上の単位重量当たりの放電容量を備えている。
(実施例11)
実施例1~10のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが、300Wh/L以上の単位体積当たりの放電容量を備えている。
(実施例12)
実施例1~11のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
電池温度計測回路は、切換え装置が選択した電池温度を示す信号に基づいて、少なくとも一個の電池セルの温度を決定する。
(実施例13)
実施例1~11のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
切換え装置が選択した電池温度を示す信号に基づいて、少なくとも一個の電池セルの温度を決定するコントローラを備えている。
(実施例14)
実施例13の電池駆動式可搬用具であり、
そのコントローラが電池パック内に配置されている。
(実施例15)
実施例13の電池駆動式可搬用具であり、
そのコントローラが用具本体内に配置されている。
(実施例16)
用具本体に取り付ける電池パックであり、
用具本体に取り付けると、請求項1~15のいずれかの1項に記載の電池駆動式可搬用具が完成する。
(実施例17)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体を備えており、
その電池パックは、全固体電池セルを収容している空間を外部から封止するハウジングを備えており、冷却風通路を持たず、200Wh/kg以上の単位重量当たりの放電容量を備えている。
その電池パックは、全固体電池セルを収容している空間を、外部から完全に水密に封止することが好ましい。
(実施例18)
実施例17に記載の電池駆動式可搬用具であり、
前記電池パックが、300Wh/L以上の単位体積当たりの放電容量を備えている。
(実施例19)
電池駆動式可搬用具であり、
少なくとも1個の全固体電池セルを内蔵している電池パックと、
前記電池パックが脱着可能な用具本体を備えており、
前記電池パックと前記用具本体の少なくとも一方が、要加温部品と、要加温部品を加温するヒータと、要放熱部品と、要放熱部品の熱を放熱する放熱部品を備えている。
(実施例20)
実施例19に記載の電池駆動式可搬用具であり、
要加温部品とヒータと要放熱部品と放熱部品が、低温時には低温時レイアウトで配置され、高温時には高温時レイアウトで配置される。
(実施例21)
実施例20に記載の電池駆動式可搬用具であり、
バイメタルによって、要加温部品とヒータと要放熱部品を、低温時レイアウトと高温時レイアウトの間で切り替えられる。
(実施例22)
実施例20または21に記載の電池駆動式可搬用具であり、
-5℃~70℃の温度領域内で、低温時レイアウトと高温時レイアウトの間で切り替えられる。
(実施例23)
実施例21または22に記載の電池駆動式可搬用具であり、
バイメタルが、50℃~70℃の温度領域内で、形状を変化させる。
(実施例24)
実施例20~23のいずれかの一項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
低温時レイアウトでは、要放熱部品と放熱部材を非接触とし、高温時レイアウトでは、前記要放熱部品と放熱部材を接触させる。
(実施例25)
実施例19~24のいずれかの一項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
要加温部品は低温時(たとえば5℃以下、あるいは0℃以下、あるいは-5℃以下の時)に加温を要する。
(実施例26)
実施例19~25のいずれかの一項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
要放熱部品は高温時(たとえば50℃以上、あるいは60℃以上、あるいは70℃以上の時)に放熱を要する。
(実施例27)
実施例19~26のいずれかの一項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
電池パックは、200Wh/kg以上の単位重量当たりの放電容量と、300Wh/L以上の単位体積当たりの放電容量を備えている。
(実施例28)
実施例19~27のいずれかの一項に記載の電池駆動式可搬用具であり、
電池セルが、電池パックのハウジングによって、隙間なく、外部から封止されている。
【符号の説明】
【0130】
1:電池駆動式可搬用具
12,14,16,18:電池セル
20:制御回路基板
22:正端子
24,28,36,42:ハンダ
26:負端子
29:位置決めボス
30:上ハウジング
31:凸条
32:正極端子
33:端部
38:負極端子
39:端部
34,40:インサート成形部
44:カバー
45:防水部材
46,48:穴
50:下ハウジング
51,52:用具本体側端部
61:分圧抵抗
62:分圧抵抗
63:トランジスタ
64:サーミスタ
71:バネ
72:ハウジング
73:要加温部品(制御系電子部品)
74:加温ヒータ
75:要放熱部品(パワー系電気部品)
76:伝熱ブロック
77:伝熱ブロック
78:バイメタル
79:基板
80:バイメタル用ヒータ
81;放熱部材
82: 放熱部材をハウジングに固定するネジ
171:全固体電池セル群
172:バッテリコントローラ
174、174’:電池パック
180:用具本体
181:正極端子
182:信号端子群
183:負極端子
184:正極配線
185:負極配線
190:用具本体のコントローラ
191:定電圧電源
192:サージキラーコンデンサ
193:マイコン
194:ゲートドライバ
195:インバータ
196:モータ
197:センサ回路
198:全波整流回路
199:回生ブレーキ/回生充電回路