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特許7611655感光性ポリイミドにおける伸びの向上のための鎖延長剤及びその製剤
<図1>
  • 特許-感光性ポリイミドにおける伸びの向上のための鎖延長剤及びその製剤 図1
  • 特許-感光性ポリイミドにおける伸びの向上のための鎖延長剤及びその製剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】感光性ポリイミドにおける伸びの向上のための鎖延長剤及びその製剤
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/037 20060101AFI20241227BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20241227BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20241227BHJP
   C08K 5/092 20060101ALI20241227BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241227BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
G03F7/037 501
C08L79/08 A
C08K5/17
C08K5/092
C08G73/10
G03F7/038 504
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020110220
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2021008609
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】62/868,761
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/746,695
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508130890
【氏名又は名称】ハッチンソン テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON TECHNOLOGY INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー アール. ディック
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ディー. ヴェックヴェルト
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-259700(JP,A)
【文献】特開平05-247211(JP,A)
【文献】特開2007-286603(JP,A)
【文献】特開2004-240035(JP,A)
【文献】特開2005-010360(JP,A)
【文献】特開2003-330167(JP,A)
【文献】特開平06-298934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
C08G 73/10
C08L 79/08
C08K 5/17
C08K 5/092
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体としてのポリ(アミド酸)塩と、
潜伏性鎖延長剤としてのテトラカルボン酸の三級アミン塩と
を含む感光性ポリマー製剤であって、
前記ポリ(アミド酸)塩は、
(i)二無水物及びジアミンのベースポリマーと、
(ii)架橋剤としての二重結合を含む三級アミンと
を含み、
前記感光性ポリマー製剤において、前記二無水物のmol%対前記ジアミンのmol%は、0.900~0.999:1.000の範囲であり、
前記感光性ポリマー製剤において、前記二無水物及び前記潜伏性鎖延長剤のmol%と前記ジアミンのmol%との比は、1.000:1.000であり、
前記潜伏性鎖延長剤としてのテトラカルボン酸の三級アミン塩を構成する三級アミンは、二重結合を含み、
前記潜伏性鎖延長剤は、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の三級アミン塩で、該三級アミン塩を構成する三級アミンは、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEEM)であり、
前記架橋剤としての二重結合を含む三級アミンは、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート(DMPM)、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMEA)、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート(DEEA)、及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(DMPA)から選ばれる1つを含む、硬化前の感光性ポリマー製剤。
【請求項2】
前記ポリ(アミド酸)塩は、ポリ(アミド酸)三級アミン塩である、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項3】
前記二無水物は、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)である、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項4】
前記ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)である、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項5】
前記ベースポリマーの重量平均分子量は、40000以下である、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項6】
前記ベースポリマーの重量平均分子量は、25000~35000である、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項7】
光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項8】
増感剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項9】
溶解促進剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項10】
接着促進剤をさらに含む、請求項1に記載の感光性ポリマー製剤。
【請求項11】
請求項1に記載の感光性ポリマー製剤を供給すること、及び
感光性ポリマー製剤を硬化させることにより、前記潜伏性鎖延長剤を活性化させ、末端アミン基と反応して新しいイミド結合を形成する二無水物を再形成させて、ポリイミドポリマーを形成すること
を含む、ポリイミドポリマーを形成する方法。
【請求項12】
前記ジアミンのmol%を前記二無水物のmol%よりも高くなるように制御して、前記感光性ポリマー製剤における前記ポリ(アミド酸)塩の前記ベースポリマーの重量平均分子量を制御することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
金属層と、
前記金属層上に形成されたポリイミドポリマーと
を含むデバイスであって、
前記ポリイミドポリマーは、感光性ポリマー製剤の硬化物であり、
前記感光性ポリマー製剤は、
ポリイミド前駆体としてのポリ(アミド酸)塩と、
潜伏性鎖延長剤としてのテトラカルボン酸の三級アミン塩と
を含み、
前記ポリ(アミド酸)塩は、
(i)二無水物及びジアミンのベースポリマーと、
(ii)架橋剤としての二重結合を含む三級アミン
を含み、
前記感光性ポリマー製剤において、前記二無水物のmol%対前記ジアミンのmol%は、0.900~0.999:1.000の範囲であり、
前記感光性ポリマー製剤において、前記二無水物及び前記潜伏性鎖延長剤のmol%と前記ジアミンのmol%との比は、1.000:1.000であり、
前記潜伏性鎖延長剤としてのテトラカルボン酸の三級アミン塩を構成する三級アミンは、二重結合を含み、
前記潜伏性鎖延長剤は、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の三級アミン塩で、該三級アミン塩を構成する三級アミンは、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEEM)であり、
前記架橋剤としての二重結合を含む三級アミンは、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート(DMPM)、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMEA)、2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート(DEEA)、及び3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(DMPA)から選ばれる1つを含む、デバイス。
【請求項14】
前記ポリ(アミド酸)塩は、ポリ(アミド酸)三級アミン塩である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記二無水物は、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項17】
前記ベースポリマーの重量平均分子量は、25000~35000である、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記感光性ポリマー製剤は、光開始剤、増感剤、溶解促進剤、及び接着促進剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項13に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年6月28日に出願の米国仮特許出願第62/868,761号及び2020年1月17日に出願の米国特許出願第16/746,695号の、利益を享受し、優先権を主張するものであり、その全ての内容が参考として本明細書に組み入れられる。
【0002】
[技術分野]
本開示の実施態様は、一般に、感光性ポリイミド製剤、材料、及びその使用に関する。より詳しくは、本開示の実施態様は、鎖延長剤を有する感光性ポリイミド材料と、該ポリイミド材料の伸び及び成形性を向上させるその製剤、並びに、このようなポリマー材料を製作する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
例えばプリント回路基板等の電子回路は、広範囲にわたる部品で用いられており、通常、導電層及び絶縁層を含む。例えば、ディスクドライブ産業において、フレクシャは、回転ディスクに近接して読込み/書込み変換器を柔軟に支持する構造である一方、変換器へ/変換器から電気信号を伝導するための可撓性電気回路体も支持する。いくつかの構造においては、時には基層として、ステンレス鋼の層が含まれ、ここに種々の絶縁層及び導電層が形成される。
【0004】
ポリマー材料は、電子回路の製造において、金属層上にコーティングされた絶縁層として広く用いられている。特定の電子部品の製造のために、導電層及び絶縁層は、フォトリソグラフィ及びエッチング技術を用いてパターニングされ、このように、感光性ポリマー材料が必要とされる。電子部品の製造においては、感光性ポリマー材料としてポリイミド材料の使用が見出されている。最初の製造プロセスの間と、それ以降の後続するプロセス及び使用の間との両方で、適したポリイミド材料は、多くのパラメータ及び特性を満足しなければならない。
【0005】
いくつかの例においては、デバイスがまず最初に加工された後、電子部品の製造には、機械的な成形が必要とされる。そして、このような例においては、金属部上にコーティングされた硬化ポリマー層が成形に供される。この成形は、ポリマーでコーティングされた金属部を略90度の角度まで曲げることを含む。デバイスフットプリントが減少する点から、小さな成形半径(範囲)が特に望ましい。
【0006】
デバイスが成形に供される(例えば、デバイスが曲げられる)際に、ポリマーコーティングは、成形領域(formed area)で伸ばされる。ポリマーコーティングの成形には、多くの難問がある。部品又はデバイスは、一般に、ステンレス鋼等の金属層上にコーティングされたポリマー層を含んでいる。最初の製造時、デバイス中の金属層は中立軸状態(neutral axis state)にあり、引張も圧縮もない。この段階で、ポリマー層は硬化するであろう。次に、デバイスが成形されるか曲げられ、これにより、ポリマー層が、成形領域において伸びる。成形領域の半径(範囲)が減少し続けるにつれて、成形領域におけるポリマーの伸びが増加し続ける。
【0007】
もし、成形プロセスの間のポリマー終局歪が限度を超えるものであれば、ポリマー層において割れが起こり、ポリマー材料は失敗作となる。これは重要な課題であり、このようにして成形されたデバイスアプリケーションでは、感光性ポリマー材料の実用性が厳しく制限されてきた。成形後のポリマー層の一般的な失敗モデルには、ポリマー層における完全な裂けとポリマー層における部分的な裂けとが含まれ、これらはいずれも、各々が、金属層の上面で成形に供されたポリマー層におけるものであり、独立したポリマー層におけるものである。このような、成形されたポリマー層における完全な裂け及び部分的な裂けは、破滅的であり、デバイスの使用を不可能にさえし得る。
【0008】
この課題は、従来のポリマー材料全般で一般的なものである。溶媒現像工程の間に、非常に低分子量のポリマー製剤では、激しく割れが生じる傾向があった。一方、より高分子量のポリマーは、成形後に良好な伸び及び成形性を示すことが知られている。しかしながら、感光性材料が必要であるとき、高分子量の感光性ポリマーは、加工が困難であるか非実用的である。例として、限定はないが、高分子量のポリマーは、一般に、約40000以上の範囲の平均分子量を有していると考えられる。高分子量のポリマーは、最初の製造工程に、特にフォトリソグラフィプロセス工程に、否定的な影響を与える特性を示す。例えば、高分子量の感光性ポリマーは、一般に、非常に高い粘度及び/又は低い固形分を示す。濾過には非常に時間を要し、高価である。フォトリソグラフィコントラスト(photolithographic contrast)及び現像スピードに劣る。このように、高分子量の感光性ポリマーは、硬化工程よりも前の最初のプロセス工程に適していない。
【0009】
このように、前記課題は非常に複雑であり、現在利用できるポリマー材料は、実質、不適切である。したがって、新たな開発が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
概して、本開示の実施態様により、感光性ポリマー製剤、材料、及びこのような材料の使用が提供される。より詳しくは、本開示の実施態様により、潜伏性鎖延長剤(latent chain extender)を有する感光性ポリイミド材料と、該ポリイミド材料の伸び及び成形性を向上させるその製剤、及び、このようなポリマー材料を製作する方法が提供される。
【0011】
発明者らは、前記課題を解決するために、最初のデバイス製造工程、ポリマー製剤が硬化工程に供される様式、及び後続する成形工程の間を含むプロセスを通して、感光性ポリマー製剤の化学組成及び特性について、いくつかの複雑な要因が理解され、均衡が保たれなければならないことを発見した。
【0012】
以下に詳細に説明するように、より低分子量のポリマーは、最初の製造工程、特にフォトリソグラフィプロセス工程の間に、より望ましい特徴を示す。一方、より高分子量のポリマーは、後続する成形工程の間に、より良好な伸び又は成形性を示す。相当な研究及び努力の後、発明者らは、革新的なポリマー製剤及びこれを作製する方法を開発した。ここで、前記製造、硬化、成形工程を通して、ポリマー製剤及び化学組成は選択的に操作され、ポリマーの分子量が制御されて、所望の特性が達成される。例えば、いくつかの実施態様において、次のような方法が提供されている。すなわち、感光性ポリマー製剤におけるポリ(アミド酸)の分子量を選択的に制御して、最初のプロセス工程の間に、比較的低重量平均分子量の範囲となるようにして、その後硬化の間に、ポリイミドポリマーの重量平均分子量を増大させて、後続する成形工程の間に、向上した伸び及び成形性を示す高重量平均分子量のポリイミドポリマーを含むポリイミド絶縁層を成形に供する方法である。このように、ポリイミドポリマーの分子量は、硬化後により高くなっている(増大されている)と広く述べられている。
【0013】
いくつかの実施態様において、硬化前の最初のポリマー製剤におけるベースポリマーの重量平均分子量と比較して、ポリイミドポリマーの重量平均分子量は、硬化後に少なくとも2倍に増大する。いくつかの実施態様において、ポリイミドポリマーの重量平均分子量は、硬化後に約60000に増大する。いくつかの実施態様について、ポリイミドポリマーの重量平均分子量は、硬化後に60000を超える値、例えば10000000にまで増大し得る。硬化ポリマーの重量平均分子量は、容易に測定することができないとしても、類似した成形挙動の既知のポリマーとの比較に基づいて推定され得る。
【0014】
いくつかの実施態様について、感光性ポリマー製剤は、ポリイミド前駆体としてのポリ(アミド酸)塩と、潜伏性鎖延長剤としてのテトラカルボン酸の三級アミン塩とを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施態様について、前記ポリ(アミド酸)塩は、(i)二無水物及びジアミンのベースポリマーと、(ii)架橋剤とを含む。
【0016】
いくつかの実施態様について、前記ポリ(アミド酸)塩は、ポリ(アミド酸)三級アミン塩である。
【0017】
いくつかの実施態様について、前記二無水物は、BPDAである。
【0018】
いくつかの実施態様について、前記ジアミンは、TFMBである。
【0019】
いくつかの実施態様について、前記架橋剤は、DEEMである。
【0020】
いくつかの実施態様について、前記ベースポリマーの重量平均分子量は、約40000以下である。
【0021】
いくつかの実施態様について、前記ベースポリマーの重量平均分子量は、約25000~35000である。
【0022】
いくつかの実施態様について、前記潜伏性鎖延長剤としてのテトラカルボン酸の三級アミン塩は、前記二無水物を水及び三級アミンと室温で反応させることによって調製される。いくつかの実施態様について、前記潜伏性鎖延長剤としてのテトラカルボン酸の三級アミン塩は、テトラカルボン酸を三級アミンと反応させることによって調製される。
【0023】
いくつかの実施態様について、前記潜伏性鎖延長剤は、BPDAを水及びDEEMと室温で反応させ、テトラカルボン酸の三級アミン塩を形成させることによって調製される。
【0024】
いくつかの実施態様について、前記ジアミンのmol%は、前記二無水物のmol%よりも高い。
【0025】
いくつかの実施態様について、前記二無水物のmol%対前記ジアミンのmol%は、0.900~0.999:1.000の範囲である。
【0026】
いくつかの実施態様について、前記二無水物及び前記潜伏性鎖延長剤のmol%と前記ジアミンのmol%との比は、約1.000:1.000である。
【0027】
いくつかの実施態様について、前記感光性ポリマー製剤は、光開始剤をさらに含むことができる。
【0028】
いくつかの実施態様について、前記感光性ポリマー製剤は、増感剤をさらに含むことができる。
【0029】
いくつかの実施態様について、前記感光性ポリマー製剤は、溶解促進剤をさらに含むことができる。
【0030】
いくつかの実施態様について、前記感光性ポリマー製剤は、接着促進剤をさらに含むことができる。
【0031】
いくつかの実施態様について、ポリイミドポリマーを形成する方法が提供され、該方法は、本開示におけるいくつかの実施態様に係る感光性ポリマー製剤を供給すること、及び、該感光性ポリマー製剤を硬化させることにより、前記潜伏性鎖延長剤を活性化させ、末端アミン基と反応して新しいイミド結合を形成する二無水物を再形成させて、ポリイミドポリマーを形成することを含むことができる。
【0032】
いくつかの実施態様について、前記ポリ(アミド酸)塩は、(i)二無水物及びジアミンのベースポリマーと、(ii)架橋剤とを含む。
【0033】
いくつかの実施態様について、前記方法は、前記ジアミンのmol%を前記二無水物のmol%よりも高くなるように制御して、前記感光性ポリマー製剤における前記ポリ(アミド酸)塩の前記ベースポリマーの重量平均分子量を制御することをさらに含むことができる。
【0034】
いくつかの実施態様について、前記方法は、前記二無水物及び前記潜伏性鎖延長剤のmol%と前記ジアミンのmol%との比を約1.000:1.000に制御することをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
添付の図面は、本明細書に組み入れられ、その一部を構成するものであり、本発明の種々の実施態様を例示し、本明細書の記載と共に、本発明の原理を説明して示す役割を担う。図面は、図表方式で、代表的な実施態様の主な特徴を示すことを目的としている。図面は、実際の実施態様の全ての特徴や、描かれた構成要素の相対的な寸法を示すことを目的としているわけではなく、正確な縮尺で描かれてはいない。
【0036】
図1図1は、本開示のいくつかの実施態様に係る、潜伏性鎖延長剤を形成する代表的な反応を示す。
図2図2は、本開示のいくつかの実施態様に係る、ポリイミド前駆体及び潜伏性鎖延長剤から、より高重量平均分子量を有するポリマーを形成する代表的な反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の概要で記載された課題を解決するために、発明者らは、異なる製造プロセス工程の間で、ポリマー材料の種々の特性に影響を与えるパラメータ、特徴、及び変数の調査に相当な努力を費やした。この説明のために、製造プロセス工程は、次のとおり、大まかに定義される。
(1)金属層上に最初のポリマー製剤をコーティングすることを限定なく含む最初のデバイス製造工程、及び、例えばパターン化UV露光及び現像等の種々のフォトリソグラフィ工程
(2)金属層上のポリマー製剤の硬化
(3)後続する成形工程
当業者により、他の工程を採用し、順序を変更してもよいこと、及び、ここに開示の発明はこれに限定されず、前記定義は、便宜上、説明を容易にするために提供されていることが、認められるであろう。
【0038】
ポリイミド前駆体及び潜伏性鎖延長剤を含むポリマー製剤が提供される。いくつかの実施態様について、ポリイミド前駆体は、ポリ(アミド酸)塩である。好ましくは、ポリイミド前駆体は、(i)二無水物及びジアミンのポリマーと(ii)架橋剤とを含んでいるポリ(アミド酸)塩である。いくつかの実施態様について、ポリイミド前駆体は、ポリ(アミド酸)三級アミン塩である。ポリイミド前駆体は、当該技術分野で既知の合成方法で製造され得る。例えば、ポリイミド前駆体は、次の合成方法で製造され得る。すなわち、二無水物及びジアミンを有機溶媒中で重合させ、ポリ(アミド酸)溶液を調製する。そして、フォトパッケージ(photopackage)の一部であるいずれかの他の添加剤だけでなく、三級アミン等の架橋剤を添加し、ポリ(アミド酸)三級アミン塩溶液を調製する。
【0039】
ポリ(アミド酸)、すなわち、二無水物及びジアミンのポリマーは、比較的低重量平均分子量である。例として、限定されないが、本開示に係る低重量平均分子量のポリマーは、一般に、約40000以下の範囲、代表的には約25000~35000の重量平均分子量を有すると考えられる。なお、本開示の重量平均分子量の数値について、該数値は、LiBr及びリン酸を移動相としてDMFを用い、PEO標準に基づいて、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて決定されたことに留意すべきである。また、高重量平均分子量のポリマーについて、伸び性能のために必要とされる分子量はポリマー骨格で変化するであろうことが、開示された発明の範囲内において理解されるべきである。
【0040】
ポリイミド前駆体の二無水物には、限定されるものではないが、無水物構造を有するモノマーが含まれてよい。好ましくは、二無水物には、テトラカルボン酸二無水物構造が含まれる。使用される二無水物成分は、架橋し得る又は架橋されたポリイミドプレポリマー、ポリマー、若しくはコポリマーの形成に適したいずれかの二無水物であればよい。例えば、所望のとおり、テトラカルボン酸二無水物が、単独で又は組み合わせて利用されてよい。
【0041】
いくつかの実施態様について、二無水物は芳香族二無水物である。ポリイミド前駆体における使用に適した芳香族二無水物の代表例には、
2,2-ビス(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、
4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、
2,2-ビス(4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物、
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、
4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物、
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、及び
4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、
1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、並びに、
前記二無水物の1つからなる混合物
が含まれる。
【0042】
好ましい二無水物には、以下の二無水物化合物が含まれる。すなわち、以下の式:
【化1】
で表わされる3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、以下の式:
【化2】
で表わされる3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、以下の式:
【化3】
で表わされる2,2-ビス(3’,4’-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、以下の式:
【化4】
で表わされるピロメリット酸二無水物(PMDA)、及びこれらの混合物が含まれる。
【0043】
ジアミンは、分子構造中にの2個のアミノ基を有するジアミン化合物である。該ジアミン化合物の例には、芳香族ジアミン化合物又は脂肪族ジアミン化合物のいずれも含まれるが、芳香族ジアミン化合物が好ましい。
【0044】
ジアミン化合物の例には、
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、
p-フェニレンジアミン、
m-フェニレンジアミン、
4,4’-ジアミノジフェニルメタン、
4,4’-ジアミノジフェニルエタン、
4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、
4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、
4,4-ジアミノジフェニルスルホン、
1,5-ジアミノナフタレン、
3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、
5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、
6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、
4,4’-ジアミノベンズアニリド、
3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、
3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、
3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、
2,7-ジアミノフルオレン、
2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、
2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、
2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、
4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、
1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、
4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、
1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、
4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、
4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、
2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、及び
4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;
ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環とアミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子とに結合した2個のアミノ基を有する芳香族ジアミン;
1,1-メタキシリレンジアミン、
1,3-プロパンジアミン、
テトラメチレンジアミン、
ペンタメチレンジアミン、
オクタメチレンジアミン、
ノナメチレンジアミン、
4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、
1,4-ジアミノシクロヘキサン、
イソホロンジアミン、
テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、
ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、
トリシクロ[6,2,1,02,7]ウンデシレンジメチルジアミン、及び
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族及び脂環式ジアミン
が含まれる。
【0045】
これらの中でも、芳香族ジアミン化合物がジアミン化合物として好ましい。例えば、2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホンがより好ましく、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及びp-フェニレンジアミンが特に好ましい。最も好ましいジアミン化合物は、TFMBである。ジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
ポリ(アミド酸)塩を形成している架橋剤は、当該技術分野で既知の適した架橋剤のいずれでもあり得る。いくつかの実施態様について、ポリ(アミド酸)塩を形成している架橋剤は三級アミンであり、ポリイミド前駆体としてポリ(アミド酸)三級アミン塩を形成する。ポリマー製剤に適した架橋剤には、
2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEEM)、
2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)、
2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMEM)、
3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート(DMPM)、
2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート(DMEA)、
2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート(DEEA)、及び
3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート(DMPA)
が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、架橋剤は2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEEM)である。
【0047】
これらの代表的な三級アミンは、二重結合を含んでおり、架橋剤として作用し得る。二重結合を含む他の三級アミンもまた、用いることができ、架橋剤として作用し得る。三級アミンは、最終的に得られるポリイミドの他の特性に影響する添加剤又は添加剤の一部でもあり得る。
【0048】
ポリイミド前駆体は、前記のとおり、溶媒中で提供され得る。当該技術分野で既知の適した溶媒のいずれも用いることができる。いくつかの実施態様について、溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサンメチレンホスホラミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、及びN-アセチル-2-ピロリドンを含む有機溶媒であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0049】
ポリマー製剤は、ポリイミド前駆体と共に、潜伏性鎖延長剤をさらに含む。いくつかの実施態様について、潜伏性鎖延長剤は、テトラカルボン酸の三級アミン塩である。いくつかの実施態様について、潜伏性鎖延長剤は、一般的に好適な二無水物を水及び三級アミン架橋剤と室温で反応せることによって調製され得る。潜伏性鎖延長剤の調製に用いられる二無水物は、前記のとおりの二無水物であり得る。本開示において、室温は約20~24℃である。
【0050】
潜伏性鎖延長剤の例示的な実施態様として、BPDA等の一般的に好適な二無水物は、図1の反応に示されるように、水及び三級アミン架橋剤と室温で反応して、テトラカルボン酸の三級アミン塩を製造する。より詳しくは、図1の代表的な反応において、テトラカルボン酸の三級アミン塩(鎖延長剤)は、NMP等の溶媒中で、BPDAと水及び2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEEM)とを反応させることによって調製される。
【0051】
2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEEM)又は2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAEMA)等の三級アミンは、架橋剤であり得る。これらの代表的な三級アミンは、二重結合を含んでおり、架橋剤として作用し得る。二重結合を含む他の三級アミンもまた、用いることができ、架橋剤として作用し得る。三級アミンは、最終的に得られるポリイミドの他の特性に影響する添加剤又は添加剤の一部でもあり得る。
【0052】
当該技術分野で既知の適した溶媒のいずれも用いることができる。いくつかの実施態様について、溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサンメチレンホスホラミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、及びN-アセチル-2-ピロリドンを含む有機溶媒であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0053】
鎖延長剤としては、それが室温で潜伏性であるようなものが選択され、これは、硬化温度(例えば、250~450℃)に加熱しない限り、ポリイミド前駆体と鎖延長剤との間で反応が起こらないことを意味する。そして、潜伏性鎖延長剤を有するこのポリマー製剤が、低重量分子量のポリマーが所望される最初のデバイス製造(フォトリソグラフィ)工程の間に用いられる。一度フォトリソグラフィ工程が完了すると、ポリマー製剤は硬化される。ポリマー製剤が硬化されると、鎖延長剤は活性化され、これは、図1の代表的な反応にて示されるように、二無水物が再形成されることを意味する。再形成された二無水物は、末端アミン基と反応し、新しいイミド結合を形成する。これにより、より高重量平均分子量のポリマーが形成される。例示を目的として、ポリイミド前駆体及び潜伏性鎖延長剤から、より高重量平均分子量のポリマーを形成する代表的な反応を、図2に示す。代表的なポリイミド前駆体は、BPDA-TFMB(アミド酸)塩及び2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEEM)からなるものである。
【0054】
ポリイミド前駆体において、ジアミン化合物のmol%は、好ましくは、二無水物のmol%よりも高い。ジアミン化合物に対する二無水物のmol%比について、二無水物のmol%対ジアミン化合物のmol%は、好ましくは0.900~0.999:1.000の範囲、より好ましくは0.950~0.990:1.000の範囲である。
【0055】
ポリイミド前駆体において、ジアミン化合物のモル当量及び二無水物のモル当量は、当該技術分野にて既知の方法で測定される。例えば、ポリイミド前駆体樹脂は、ジアミン化合物と二無水物とに分解されるように、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの塩基性水溶液中で加水分解処理に供され得る。得られたサンプルは、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等によって分析され、ポリイミド前駆体を構成している二無水物とジアミン化合物との割合が決定される。
【0056】
いくつかの実施態様について、ポリマー製剤は、(硬化温度で二無水物を形成する)潜伏性鎖延長剤を、二無水物及び潜伏性鎖延長剤のmol%とジアミンのmol%との比が約1.000:1.000となるようなmol%で含んでいる。
【0057】
(硬化温度で二無水物を形成する)潜伏性鎖延長剤のmol%の決定は、カロザーズ方程式によって予測され得る。すなわち、ジアミンと二無水物モノマーとは、平均ポリマー鎖長を最長にするために、一般に、略1:1のモル化学量論比で添加される。他の比率でジアミンと二無水物モノマーとを添加することにより、得られるポリマーの平均鎖長を変化させることができる。カロザーズ方程式によって予測され、実際に広範囲にて実証されるように、一般に、モノマーのモル比が本質的に1:1から外れた化学量論比で行われた重合反応により、平均ポリマー鎖長は低減される。カロザーズ方程式は、以下のとおりである。
【数1】
【0058】
本開示のいくつかの実施態様によれば、ポリイミド前駆体において、前記のとおり、ジアミン化合物のmol%は、好ましくは二無水物のmol%よりも高い。ジアミンと二無水物モノマーとが、一般に、略1:1のモル化学量論比で添加されるように、カロザーズ方程式を通じて、(硬化温度で二無水物を形成する)潜伏性鎖延長剤のmol%が予測され得る。言い換えると、二無水物及び潜伏性鎖延長剤のmol%とジアミン化合物のmol%との比は、約1.000:1.000である。
【0059】
いくつかの実施態様について、二無水物及び潜伏性鎖延長剤のmol%とジアミン化合物のmol%との比が約1.000:1.000となるように、ポリマー製剤は、0.1mol%~10.0mol%の量で潜伏性鎖延長剤を含む。いくつかの実施態様について、二無水物及び潜伏性鎖延長剤のmol%とジアミン化合物のmol%との比が約1.000:1.000となるように、ポリマー製剤は、0.5mol%~5.0mol%の量で、又は1.0mol%~3.0mol%の量で、潜伏性鎖延長剤を含む。
【0060】
いくつかの実施態様について、ポリ(アミド酸)塩、すなわち、ポリイミド前駆体を形成するための架橋剤は、1モルの二無水物に対して約0.1~10.0モルの量でポリマー製剤に含まれ得る。いくつかの実施態様について、該架橋剤は、1モルの二無水物に対して、約0.5~7.5モルの量で、1.0~5.0モルの量で、又は1.0~3.0モルの量である。
【0061】
いくつかの実施態様について、ポリマー製剤は、例えば光開始剤、増感剤、溶解促進剤、接着促進剤等の他の添加剤を任意に含む。光開始剤は、当該技術分野で既知の適した光開始剤であり得る。いくつかの実施態様について、光開始剤はUV露光によってラジカルを生じる。好ましくは、PI前駆体吸光度が最小のところに光開始剤吸光度ピークが存在する。例えば、ポリマー製剤に適した光開始剤には、
1-[9-エチル-6-(2-メチルベンジル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(OXE-02)及び1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)フェニル]2-(O-ベンゾイルオキシム)(OXE-01);
ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド等の種々のホスフィンオキシド;
2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、及び2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノンを含む種々のアセトフェノン系開始剤;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、4,4’-ジメトキシベンゾイン、4,4’-ジメチルベンジルを含む種々のベンゾイン系開始剤;
ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーのケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーのエチルケトン)、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、並びに種々のヒドロキシベンゾフェノン及びアルキルベンゾフェノンを含むベンゾフェノン系開始剤;
チオキサンテン-9-オン、イソプロピルチオキサンテン-9-オン、ジエチルチオキサンテン-9-オン、及びクロロチオキサンテン-9-オンを含むチオキサントン類
が含まれるが、これらに限定されるものではない。光開始剤は、好ましくは、OXE-01、OXE-02、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンである。光開始剤は、最も好ましくはOXE-02である。
【0062】
いくつかの実施態様について、光開始剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.1~10.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。いくつかの実施態様について、光開始剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.5~7.5重量部、又は1.0~5.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。
【0063】
増感剤は、当該技術分野で既知の適した増感剤のいずれでもあり得る。いくつかの実施態様について、増感剤は、芳香族又は(メタ)アクリレート基を含む三級アミンであり、光反応で形成されるラジカルイオンを安定させる。製剤中に既に、三級アミン(メタ)アクリレートが豊富に存在するとき、製剤への増感剤の追加は必要ではなく、任意である。ポリマー製剤のための適した増感剤には、N-フェニルジエタノールアミン(NPDEA)、N-フェニルグリシン、ミヒラーのケトン、ミヒラーのエチルケトン、及び種々のアルキル4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート類が含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施態様について、前記架橋剤は、ポリマー製剤のための増感剤であるとも考えられ得る。
【0064】
いくつかの実施態様について、増感剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.1~10.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。いくつかの実施態様について、増感剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.5~7.5重量部、又は1.0~5.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。
【0065】
溶解促進剤は、当該技術分野で既知の適した溶解促進剤のいずれでもあり得る。いくつかの実施態様について、溶解促進剤は、後の塗工焼成(apply bake)の間、キャストフィルム中に残存するのに充分な低揮発性を有する小さい分子である。例えば、ポリマー製剤のための適した溶解促進剤には、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGMA)、ベンゾトリアゾール(BTA)、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート(PTMA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。他の例には、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールトリアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリリトール(pentaeryritol)の種々のトリ及びテトラ(メタ)アクリレートエステル類、2-ニトロベンズアルデヒド及び3-ニトロベンズアルデヒド、ジヒドロピリジン誘導体、並びに芳香族スルホンアミド類が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
いくつかの実施態様について、溶解促進剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.1~20.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。いくつかの実施態様について、溶解促進剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.5~15.0重量部、又は1.0~10.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。
【0067】
接着促進剤は、当該技術分野で既知の適した接着促進剤のいずれでもあり得る。いくつかの実施態様について、接着促進剤は、官能性一級アミンに基づくアルコキシシランである。いくつかの実施態様について、接着促進剤は、PI骨格を通して結合し、鎖延長メカニズムに干渉しないであろう、シリコン含有ジアミンである。単官能アミン接着促進剤の例には、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノ-3,3’-ジメチルブチルトリエトキシシラン、3-(m-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシランが含まれる。代表的なシリコン含有ジアミンの例には、ポリジメチルシロキサンのアミノプロピル末端オリゴマーだけでなく、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン及びその異性体(2-アミノプロピル基は通常の不純物である)が含まれる。最も好ましくは、接着促進剤は、熱安定性の点から、異性体的に純粋な1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンである。
【0068】
いくつかの実施態様について、接着促進剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.1~5.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。いくつかの実施態様について、接着促進剤は、ポリ(アミド酸)100重量部に対して約0.1~3.0重量部、又は0.1~1.0重量部の量でポリマー製剤に含まれ得る。
【0069】
硬化前後での感光性ポリイミド製剤の分子量を制御する方法もまた、提供される。該方法には、前記のとおり、最初のポリマー製剤を提供することが含まれる。前記のとおり、ポリマー製剤は、ポリイミド前駆体及び潜伏性鎖延長剤を含んでおり、最初のデバイス製造(フォトリソグラフィ)工程の間では、低分子量のポリマーが必要とされる。ポリ(アミド酸)、すなわち、二無水物及びジアミンのポリマーは、ポリイミド前駆体の一部であり、比較的低重量平均分子量である。例として、限定されるものではないが、本開示に係る低重量平均分子量のポリマーは、一般に、重量平均分子量が約40000以下の範囲、代表的には約25000~35000の範囲であると考えられる。
【0070】
ポリイミド前駆体のポリ(アミド酸)の重量平均分子量を制御するために、最初のポリマー製剤において、ジアミン化合物のmol%は、二無水物のmol%よりも高くなるように制御される。ジアミンと二無水物モノマーとが、一般に、略1:1のモル化学量論比で添加されるように、カロザーズ方程式を通じて、(硬化温度で二無水物を形成する)潜伏性鎖延長剤のmol%が制御される。言い換えると、二無水物及び潜伏性鎖延長剤のmol%とジアミン化合物のmol%との比は、約1.000:1.000である。
【0071】
一度フォトリソグラフィ工程が完了すると、ポリマー製剤は硬化される。ポリマー製剤が硬化されると、鎖延長剤は活性化される。鎖延長剤は、末端アミン基と反応してイミド結合を形成する二無水物を再形成し、ポリイミド前駆体のポリ(アミド酸)よりもより高分子量のポリマーが形成される。
【0072】
さらに、前記ポリマー製剤を用いたデバイスを作製する方法が提供される。デバイスを作製する方法には、コーティング、露光、現像、硬化、エッチング、及び機械的成形が含まれる。いくつかの実施態様について、コーティングには、基板上にポリイミドコーティングを塗工することが含まれる。いくつかの実施態様について、該ポリイミドコーティングは、先に詳細に述べたポリマー製剤である。好ましくは、基板はステンレス鋼基板であるが、当該技術分野で既知の適した基板もまた、相応しい。該ポリイミドコーティングは、液体スロットダイ、ローラーコート、スプレー、カーテンコート、ドライフィルムラミネーション、及びスクリーン印刷技術を含む技術を用いて塗工され得るが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施態様について、ポリイミドコーティングは、液体スロットダイで塗工され、UV露光に供され、当該技術分野で既知の適切な溶媒で現像され、硬化する。
【0073】
基板上にポリイミド絶縁層を形成するためのポリイミドコーティング(例えば、前記ポリマー製剤)の硬化は、例えば赤外線硬化といった当該技術分野で既知の適した技術のいずれによっても実行され得る。図2の代表的な反応に示されるように、硬化工程の間に、DEEM及び水が放出され、鎖延長剤は二無水物に戻る。再形成された二無水物は、ポリ(アミド酸)の末端アミン基と反応してイミド結合を形成し、それにより、ポリイミドポリマーの分子量が増加する。このように、得られるポリイミドは、後続する成形工程に必要な、比較的高い分子量と、向上した伸び及び成形性といった特性とを示す。
【0074】
いくつかの実施態様について、デバイスを作製する方法には、基板上にレジストコーティングを塗工することがさらに含まれる。該レジストコーティングは、液体スロットダイ、ローラーコート、スプレー、カーテンコート、ドライフィルムラミネーション、及びスクリーン印刷技術を含む技術を用いて基板上に塗工され得るが、これらに限定されるものではない。次いで、該レジストコーティングは、当該技術分野で既知のフォトリソグラフィ及びエッチング技術を用いて、UV露光に供され、現像され、エッチングされ(すなわち、基板は、レジストパターンで保護されていない箇所がエッチングされる)、取り去られる。いくつかの実施態様について、該方法には、デバイスの機械的成形が含まれる。いくつかの実施態様により、その成形性を試験するために、パーツ(parts)は100μm径で成形された。
【実施例
【0075】
以下に、本開示のポリマー製剤を調製するための代表的な手順を示す。窒素パージした300mL容の反応器に、NMP(100mL)を添加した。TFMB(28.80g)をビーカーに測り取り、激しく撹拌しながら反応器に添加した。追加のNMP(40mL)をビーカーに添加し、ビーカーに付着しているTFMBを溶解させ、これを反応器に添加した。TFMBを完全に溶解させた後、BPDAの定量的移動を確実にするための追加のNMP(40mL)とともに、BPDA(25.20g)をゆっくりと反応器に添加した。反応器の温度を70℃に設定し、溶液を4時間攪拌した。
【0076】
窒素雰囲気下の別のフラスコにおいて、BPDA(1.27g)をNMP(30mL)に懸濁させた。DEEM(3.22g)及び水(0.156g)を添加し、全てが溶解するまで、内容物を室温で4時間攪拌した。その後、OXE-02(1.62g)を添加し、溶解するまで攪拌して、フォトパッケージ溶液を形成させた。
【0077】
300mL容の反応器が室温に戻った後、DEEM(31.90g)を30分間に亘って反応器に滴下させた。最後に、フォトパッケージ溶液を反応器に添加し、真空下での脱気、瓶詰め、及び凍結の前に、溶液を室温で1時間撹拌した。
【0078】
表1~2に示す組成を有する実施例1~3のポリマー製剤は、前記代表的な手順によって調製される。比較例1~13においても同様の方法で調製されるが、潜伏性鎖延長剤を含まない組成である。比較例1~13の組成もまた、表1~2に示す。実施例及び比較例のいずれにおいても、NMP溶媒中のポリ(アミド酸)溶液は約18重量%であり、DEEM架橋剤の添加後のポリ(アミド酸)DEEM塩溶液は約28~29重量%である。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
実施例1~3及び比較例1~13の組成を、デバイスの作製に用いる。デバイスは、パーツの成形性を試験するために、100μm径で成形した。ステンレス鋼パネル上にポリイミド溶液をローラーコートし、コンベヤーオーブンに載置して乾燥させた。得られたフィルムは、もはや粘着性ではなく、代表的には20~24μmの厚みであった。該フィルムを、フォトマスクを通してUV露光に供し、露光後に焼成させ、NMP系有機現像溶液中で現像して、パターン化構造を形成した。その後、パネルを、窒素雰囲気下にて350℃で1時間硬化させた。硬化フィルムの厚みは10~12μmであった。その後、パネルの両面をフォトレジストでコーティングし、UVでパターニングし、水性基剤で現像し、塩化鉄でエッチングし、フォトレジストを取り去ることにより、選択的にエッチングした。その後、平らでエッチングされたパーツを、固定芯金及び滑りワイプパンチを用い、過剰クリアランスで機械的に成形した。これれに続く第二カムパンチにより、成形を完成させた。成形物の内径は、略100μmである。
【0082】
次いで、成形されたパーツを、成形範囲において、光学顕微鏡にて20倍ズームで観察した。各実施例及び比較例について、40~100のパーツを観察した。ポリイミド端がフォームライン(form line)でいくつかの裂傷を有するパーツ又はポリイミド層における完全な裂けを伴うパーツは、割れを有すると考えた。成形領域外に欠陥を有するが、成形領域内には割れがないパーツは、試験から除外した。
【0083】
表2に示すように、そのポリマー製剤中に潜伏性鎖延長剤を含む実施例1~3のデバイスは、優れた成形性を有していた。すなわち、実施例1~2のデバイスは、そのポリイミド絶縁層に少しの割れもなかった。実施例3により、本開示のポリマー製剤から形成されたポリイミド絶縁層には、10%の割れしかないことが示された。
【0084】
一方、比較例2~13のデバイスは、成形性に劣り、潜伏性鎖延長剤を含まないポリマー製剤から形成されたポリイミド絶縁層は、少なくとも58%の割れを有していた。比較例1では、優れた成形性で、3%の割れしかないことが示された。しかしながら、比較例1のものは、59.8Kといった非常に高い重量平均分子量を有している。前記のとおり、高重量平均分子量のポリマーは、最初の製造工程に、特にフォトリソグラフィプロセス工程に、否定的な影響を与える特性を示す。したがって、比較例1のものは、デバイスを成形するための、硬化工程に先立つ最初のプロセス工程に適していない。
【0085】
種々の修飾及び付加は、本発明の範囲を逸脱しない範囲で議論される例示的な実施態様となり得る。例えば、前記実施態様が特別な特徴に言及する一方、本発明の範囲には、異なる特徴の組み合わせを有する実施態様、及び記載の特徴を全て含むわけではない実施態様もまた、含まれる。したがって、本発明の範囲は、全ての同等の内容と共に、請求の範囲内に該当するような、全てのこのような代替、修飾、及び変更を包含するように意図されている。
図1
図2