(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/06 20060101AFI20241227BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20241227BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
B60C15/06 C
B60C5/00 H
B60C15/06 P
B60C13/00 E
(21)【出願番号】P 2020206877
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋平
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-320821(JP,A)
【文献】特開2015-217718(JP,A)
【文献】特開2014-073698(JP,A)
【文献】特開2018-108749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドからサイドウォールを経てビードに至るカーカスと、前記サイドウォールの外表面を形成するサイドウォールゴムと、前記ビードの外表面を形成するリムストリップゴムと、を備え、
前記リムストリップゴムは、車両装着時に内側に位置する内側リムストリップゴムと、車両装着時に外側に位置する外側リムストリップゴムと、を有し、
前記内側リムストリップゴムは、前記カーカスと前記サイドウォールゴムとの間でタイヤ径方向に延在しており、
前記内側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端は、前記外側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端よりもタイヤ径方向の外側に位置
し、
前記サイドウォールゴムは、車両装着時に内側に位置する内側サイドウォールゴムと、車両装着時に外側に位置する外側サイドウォールゴムと、を有し、
前記内側サイドウォールゴムと前記内側リムストリップゴムの合計の体積は、前記外側サイドウォールゴムと前記外側リムストリップゴムの合計の体積と同じであり、且つ前記内側リムストリップゴムの体積は、前記外側リムストリップゴムの体積よりも大きい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
ビードベースラインから前記内側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端までの高さは、前記ビードベースラインから前記外側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端までの高さよりも30%以上高い、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドにおける前記カーカスのタイヤ径方向の外側に積層される複数のベルトプライを備え、
前記内側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端は、前記複数のベルトプライのうち最もタイヤ径方向の内側に配置されるベルトプライのタイヤ幅方向端部よりもタイヤ径方向の内側に位置する、請求項1
又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、耐外傷性を確保しながら軽量化を実現する目的で、ビードの外表面を形成するリムストリップゴムが、カーカスとサイドウォールゴムの間でタイヤ径方向に延在しており、リムストリップゴムのタイヤ径方向外側端が、トレッドゴムのタイヤ幅方向外側に配置され且つトレッドゴムの外周面に到達せずに終端している空気入りタイヤが開示されている。
【0003】
しかしながら、タイヤ幅方向両側のリムストリップゴムのタイヤ径方向外側端をトレッドゴムのタイヤ幅方向外側に配置すると、タイヤの横剛性が大きくなって操縦安定性能は向上するが、タイヤの縦剛性が高くなり過ぎて乗り心地性能は悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、操縦安定性能と乗り心地性能を両立できる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気入りタイヤは、トレッドからサイドウォールを経てビードに至るカーカスと、前記サイドウォールの外表面を形成するサイドウォールゴムと、前記ビードの外表面を形成するリムストリップゴムと、を備え、
前記リムストリップゴムは、車両装着時に内側に位置する内側リムストリップゴムと、車両装着時に外側に位置する外側リムストリップゴムと、を有し、
前記内側リムストリップゴムは、前記カーカスと前記サイドウォールゴムとの間でタイヤ径方向に延在しており、
前記内側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端は、前記外側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端よりもタイヤ径方向の外側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図
【
図3】別実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、
図1~
図2を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2である。なお、第1の方向D1と第2の方向D2に垂直な方向は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向である。
【0010】
タイヤ幅方向D1において、内側は、タイヤ赤道面S1に近い側となり、外側は、タイヤ赤道面S1から遠い側となる。また、タイヤ径方向D2において、内側は、タイヤ回転軸に近い側となり、外側は、タイヤ回転軸から遠い側となる。
【0011】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面のことである。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、一対のビード1aと、各ビード1aからタイヤ径方向D2の外側に延びる一対のサイドウォール1bと、一対のサイドウォール1bのタイヤ径方向D2の外端に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド1cとを備えている。ビード1aには、環状のビードコア11aと、そのビードコア11aのタイヤ径方向D2の外側に設けられたビードフィラー12aとが設けられている。ビードコア11aは、鋼線などの収束体をゴム被覆して形成されている。ビードフィラー12aは、タイヤ径方向D2の外側に延びた断面三角形状の硬質ゴムにより形成されている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム(図示していない)に装着される。
【0013】
タイヤ1は、更に、トレッド1cからサイドウォール1bを経てビード1aに至るカーカス2と、トレッド1cの外表面を形成するトレッドゴム3と、サイドウォール1bの外表面を形成するサイドウォールゴム4,5と、ビード1aの外表面を形成するリムストリップゴム6,7とを備える。トレッド1cには、カーカス2のタイヤ径方向D2の外側に積層されたベルト層8と、そのベルト層8のタイヤ径方向D2の外側に積層されたベルト補強層9とが設けられ、それらがトレッドゴム3で覆われている。図示を省略しているが、トレッドゴム3の表面には、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じたトレッドパターンが形成されている。タイヤ1の内表面は、インナーライナーゴム10で形成されている。
【0014】
サイドウォールゴム4,5は、耐カット性や耐候性に優れたゴムで形成されている。このタイヤ1では、サイドウォールゴム4,5のタイヤ径方向外側の端部をトレッドゴム3の側方部に載せてなる、いわゆるサイドウォールオントレッド(SWOT;sidewall on tread)構造を採用している。タイヤ子午線断面において、サイドウォールゴム4,5は、サイドウォール1bのタイヤ径方向外側の領域であるバットレス領域からタイヤ径方向内側に延び、タイヤ最大幅位置1dを経由してビード1aに到達している。
【0015】
リムストリップゴム6,7は、耐摩滅性に優れたゴムにより形成されている。リムストリップゴム6,7は、タイヤ1が装着されるリム(図示せず)と接触する部位に設けられている。リムストリップゴム6,7のゴム硬度は、サイドウォールゴム4,5のゴム硬度よりも高い。また、リムストリップゴム6,7のゴム硬度は、ビードフィラー12aのゴム硬度よりも低い。リムストリップゴム6,7のゴム硬度は、例えば60~75度である。サイドウォールゴム4,5のゴム硬度は、例えば45~60度である。ビードフィラー12aのゴム硬度は、例えば85~100度である。本明細書において、ゴム硬度は、JIS K6253に準拠し、23℃雰囲気下でタイプAデュロメータを使用して測定された値(デュロメータ硬さ)を指すものとする。
【0016】
また、リムストリップゴム6,7を構成するゴムの比重は、サイドウォールゴム4,6を構成するゴムの比重よりも大きく、かつビードフィラー12aを構成するゴムの比重よりも小さい。
【0017】
ベルト層8は、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列した複数のコードをゴム被覆してなるベルトプライで形成されている。ベルト層8は、
図2に示すように複数枚(本実施形態では二枚)のベルトプライ81,82により構成され、そのプライ間でコードが互いに逆向きに交差するように積層されている。コードの材料には、スチールが好ましく用いられる。ベルトプライ81は、ベルトプライ82のタイヤ径方向D2の内側に配置される。ベルトプライ81のタイヤ幅方向D1の幅は、ベルトプライ82のタイヤ幅方向D1の幅より広くなっている。
【0018】
ベルト補強層9は、実質的にタイヤ周方向に延びるコードをゴム被覆してなる補強プライで形成されている。コードの材料には、有機繊維が好ましく用いられる。ベルト補強層9によってベルト層8を補強することにより、高速耐久性能を向上できる。
【0019】
本実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ赤道面S1に対して非対称となる構造である。かかるタイヤ1は、車両への装着向きを指定されたタイヤであり、リムに装着される際に、タイヤ1の左右何れを車両に対面するかを指定したものである。なお、トレッド1cのタイヤ外表面に形成されるトレッドパターンは、タイヤ赤道面S1に対して対称となる構造でもよく、非対称となる構造でもよい。
【0020】
車両への装着の向きは、サイドウォール1bに表示されている。具体的には、サイドウォールゴム4,5は、表面に、車両への装着の向きを表示する表示部を有している。本実施形態においては、車両装着時に内側(
図1における右側)に配置される一方のサイドウォール1bは、車両内側となる旨の表示(例えば、「INSIDE」等)を付されており、また、車両装着時に外側(
図1における左側)に配置される他方のサイドウォール1bは、車両外側となる旨の表示(例えば、「OUTSIDE」等)を付されている。
【0021】
なお、タイヤ幅方向D1のうち、車両装着時に内側への方向は、車両内側方向D11といい、車両装着時に外側への方向は、車両外側方向D12という。そして、一対のサイドウォールゴム4,5のうち、車両装着時に内側に配置されるサイドウォールゴム4は、内側サイドウォールゴム4といい、車両装着時に外側に配置されるサイドウォールゴム5は、外側サイドウォールゴム5という。また、一対のリムストリップゴム6,7のうち、車両装着時に内側に配置されるリムストリップゴム6は、内側リムストリップゴム6といい、車両装着時に外側に配置されるリムストリップゴム7は、外側リムストリップゴム7という。
【0022】
内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aは、タイヤ最大幅位置1dよりもタイヤ径方向D2の外側に位置する。一方、外側リムストリップゴム7のタイヤ径方向D2の外側端7aは、タイヤ最大幅位置1dよりもタイヤ径方向D2の内側に位置する。すなわち、内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aは、外側リムストリップゴム7のタイヤ径方向D2の外側端7aよりもタイヤ径方向D2の外側に位置する。言い換えると、内側リムストリップゴム6の高さH6は、外側リムストリップゴム7の高さH7よりも高くなっている。ここで、内側リムストリップゴム6の高さH6は、ビードベースラインBLから内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aまでの高さであり、外側リムストリップゴム7の高さH7は、ビードベースラインBLから外側リムストリップゴム7のタイヤ径方向D2の外側端7aまでの高さである。内側リムストリップゴム6の高さH6を高くすることで、横剛性が高まって応答性が良好となり操縦安定性能が向上する。また、外側リムストリップゴム7の高さH7を低くすることで、縦剛性の上昇を抑えて乗り心地性能の悪化を抑える。その結果、操縦安定性能と乗り心地性能を両立できる。なお、ビードベースラインBLは、標準リムのリム径を規定するタイヤ幅方向D1の仮想直線である。
【0023】
内側リムストリップゴム6の高さH6は、外側リムストリップゴム7の高さH7よりも30%以上高いのが好ましく、50%以上高いのがより好ましい。内側リムストリップゴム6の高さH6を外側リムストリップゴム7の高さH7よりも30%以上高くすることで、操縦安定性能と乗り心地性能を適切に両立できる。
【0024】
また、リムストリップゴム6,7を構成するゴムの比重は、ビードフィラー12aを構成するゴムの比重よりも小さいため、車両装着時の内側と外側に位置するリムストリップゴム6,7の高さを異ならせる場合、車両装着時の内側と外側のビードフィラー12aの高さを異ならせる場合に比べ、タイヤ重量の増加を抑えることができる。
【0025】
図2に示すように、内側リムストリップゴム6は、ビード1aに位置する本体部61と、本体部61からタイヤ径方向D2に延びてカーカス2と内側サイドウォールゴム4との間に位置する延在部62と、を有する。本体部61は、サイドウォールゴム4のタイヤ径方向D2の内側端に接する。延在部62は、本体部61から一定の厚みでカーカス2の外側面に沿って延び、トレッドゴム3のタイヤ幅方向D1の外側面に達している。延在部62の先端は、内側リムストリップゴム6の外側端6aである。延在部62は、先端へ向かって先細りとなっている。
【0026】
内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向の外側端6aは、複数のベルトプライ81,82のうち最もタイヤ径方向D2の内側に配置されるベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aよりもタイヤ径方向D2の内側に位置するのが好ましい。内側リムストリップゴム6の外側端6aを、ベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aの近くに配置した場合、ベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81a付近での接地圧が上がり、ベルト端でのセパレーションの発生が懸念される。よって、内側リムストリップゴム6の外側端6aは、ベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aよりもタイヤ径方向D2の内側に位置することで、耐久力の悪化を防止できる。内側リムストリップゴム6の外側端6aとベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aとの間の直線距離は、10mm以上とするのが好ましい。また、内側リムストリップゴム6の外側端6aとベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aとの間の直線距離は、20mm以下とするのが好ましい。
【0027】
延在部62のタイヤ幅方向D1の厚みT62は、サイドゴム厚みTiの50%以下であり、好ましくは30%以下である。ここで、サイドゴム厚みTiとは、カーカス2よりもタイヤ幅方向D1の外側に配置されたゴムの厚みである。具体的には、車両装着時に内側に配置されるサイドウォール1bにおけるサイドゴム厚みTiは、延在部62と内側サイドウォールゴム4のタイヤ幅方向D1の厚みを合計した厚みである。延在部62の厚みT62をサイドゴム厚みTiの50%より大きくすると、タイヤ1の縦剛性が大きくなり過ぎて乗り心地性能に悪影響を及ぼす。なお、延在部62の厚みT62、及びサイドゴム厚みTiは、タイヤ最大幅位置1dにおいてタイヤ幅方向D1と平行に見たときの厚みである(後述のサイドゴム厚みToも同様)。
【0028】
一方、外側リムストリップゴム7は、一般的なリムストリップゴムの形状を呈しており、ビード1aに位置する本体部71のみで構成される。外側リムストリップゴム7の本体部71と内側リムストリップゴム6の本体部61の形状はタイヤ赤道面S1に対して対称である。
【0029】
車両装着時に外側に配置されるサイドウォール1bにおけるサイドゴム厚みTo(
図1を参照)は、外側サイドウォールゴム5のタイヤ幅方向D1の厚みである。サイドゴム厚みToは、タイヤ径方向D2の同じ位置においてサイドゴム厚みTiと同じである。
【0030】
内側リムストリップゴム6が延在部62を有するため、内側リムストリップゴム6の体積は、外側リムストリップゴム7の体積よりも大きくなっている。また、内側サイドウォールゴム4と内側リムストリップゴム6の合計の体積は、外側サイドウォールゴム5と外側リムストリップゴム7の合計の体積と同じ(完全に同じだけでなく、±3%の差異を有する略同じも含む)である。
【0031】
なお、上述した各寸法値、位置関係及び大小関係等は、空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態で測定したものである。例えば、タイヤ最大幅位置1dは、空気入りタイヤ1を正規リムに装着し、正規内圧を充填した無負荷状態のときの、サイドウォール1bの外表面から突出する模様や文字等の構造物を除いたタイヤ幅方向D1における寸法が最大となる位置のタイヤ径方向D2における位置である。正規リムは、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格が空気入りタイヤ1ごとに定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRA及びETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0032】
また、正規内圧は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格が空気入りタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」である。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トレッド1cからサイドウォール1bを経てビード1aに至るカーカス2と、サイドウォール1bの外表面を形成するサイドウォールゴム4,5と、ビード1aの外表面を形成するリムストリップゴム6,7と、を備え、
リムストリップゴム6,7は、車両装着時に内側に位置する内側リムストリップゴム6と、車両装着時に外側に位置する外側リムストリップゴム7と、を有し、
内側リムストリップゴム6は、カーカス2とサイドウォールゴム4との間でタイヤ径方向D2に延在しており、
内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aは、外側リムストリップゴム7のタイヤ径方向D2の外側端7aよりもタイヤ径方向D2の外側に位置するものである。
【0034】
この構成によれば、内側リムストリップゴム6の高さH6を高くすることで、横剛性が高まって応答性が良好となり操縦安定性能が向上する。また、外側リムストリップゴム7の高さH7を低くすることで、縦剛性の上昇を抑えて乗り心地性能の悪化を抑える。その結果、操縦安定性能と乗り心地性能を両立できる。
【0035】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ビードベースラインBLから内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aまでの高さH6は、ビードベースラインBLから外側リムストリップゴム7のタイヤ径方向D2の外側端7aまでの高さH7よりも30%以上高い、という構成である。
【0036】
この構成によれば、内側リムストリップゴム6の高さH6を外側リムストリップゴム7の高さH7よりも十分に高くして、操縦安定性能と乗り心地性能を適切に両立できる。
【0037】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、サイドウォールゴム4,5は、車両装着時に内側に位置する内側サイドウォールゴム4と、車両装着時に外側に位置する外側サイドウォールゴム5と、を有し、内側サイドウォールゴム4と内側リムストリップゴム6の合計の体積は、外側サイドウォールゴム5と外側リムストリップゴム7の合計の体積と同じであり、且つ内側リムストリップゴム6の体積は、外側リムストリップゴム7の体積よりも大きい、という構成である。
【0038】
この構成によれば、内側リムストリップゴム6の高さH6を外側リムストリップゴム7の高さH7よりも高くして、操縦安定性能と乗り心地性能を両立できる。
【0039】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、トレッド1cにおけるカーカス2のタイヤ径方向D2の外側に積層される複数のベルトプライ81,82を備え、内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aは、複数のベルトプライ81,82のうち最もタイヤ径方向D2の内側に配置されるベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aよりもタイヤ径方向D2の内側に位置する、という構成である。
【0040】
この構成によれば、ベルト端付近の接地圧が上昇してセパレーションが発生することを抑制できる。
【0041】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0042】
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、ビードベースラインBLから内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aまでの高さH6は、ビードベースラインBLから外側リムストリップゴム7のタイヤ径方向D2の外側端7aまでの高さH7よりも30%以上高い、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、内側リムストリップゴム6の高さH6が、外側リムストリップゴム7の高さH7よりも25%以上高くすることで、操縦安定性能と乗り心地性能の両立を図ることができる。
【0043】
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、サイドウォールゴム4,5は、車両装着時に内側に位置する内側サイドウォールゴム4と、車両装着時に外側に位置する外側サイドウォールゴム5と、を有し、内側サイドウォールゴム4と内側リムストリップゴム6の合計の体積は、外側サイドウォールゴム5と外側リムストリップゴム7の合計の体積と同じであり、且つ内側リムストリップゴム6の体積は、外側リムストリップゴム7の体積よりも大きい、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、内側サイドウォールゴム4と内側リムストリップゴム6の合計の体積が、外側サイドウォールゴム5と外側リムストリップゴム7の合計の体積と異なってもよい。
【0044】
(3)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、トレッド1cにおけるカーカス2のタイヤ径方向D2の外側に積層される複数のベルトプライ81,82を備え、内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aは、複数のベルトプライ81,82のうち最もタイヤ径方向D2の内側に配置されるベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aよりもタイヤ径方向D2の内側に位置する、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、内側リムストリップゴム6のタイヤ径方向D2の外側端6aが、ベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aとタイヤ径方向D2の同じ位置であってもよい。
【0045】
(4)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、外側リムストリップゴム7は、本体部71のみで構成される、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、外側リムストリップゴム7が、本体部71と、本体部71からタイヤ径方向D2に延びてカーカス2と外側サイドウォールゴム5との間に位置する延在部と、を有するようにしてもよい。ただし、この延在部のタイヤ径方向D2の外側端7aは、タイヤ最大幅位置1dよりもタイヤ径方向D2の内側に位置するように構成される。
【0046】
(5)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、内側リムストリップゴム6の延在部62は、本体部61から一定の厚みでカーカス2の外側面に沿って延び、トレッドゴム3のタイヤ幅方向D1の外側面に達する、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。延在部62は、必ずしもトレッドゴム3のタイヤ幅方向D1の外側面に達する必要はない。
【0047】
(6)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、内側リムストリップゴム6の延在部62は、本体部61から一定の厚みでカーカス2の外側面に沿って延び、トレッドゴム3のタイヤ幅方向D1の外側面に達する、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、かかる構成に限られない。例えば、
図3に示すように、内側リムストリップゴム6の延在部62は、本体部61から一定の厚みでカーカス2の外側面に沿って延び、トレッドゴム3のタイヤ径方向D2の内周面に達する、という構成でもよい。この場合にも、内側リムストリップゴム6の外側端6aは、複数のベルトプライ81,82のうち最もタイヤ径方向D2の内側に配置されるベルトプライ81のタイヤ幅方向端部81aよりもタイヤ径方向D2の内側に位置するのが好ましい。
【符号の説明】
【0048】
1…空気入りタイヤ、1a…ビード、1b…サイドウォール、1c…トレッド、1d…タイヤ最大幅位置、2…カーカス、3…トレッドゴム、4…内側サイドウォールゴム、5…外側サイドウォールゴム、6…内側リムストリップゴム、6a…内側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端、7…外側リムストリップゴム、7a…外側リムストリップゴムのタイヤ径方向の外側端、8…ベルト層、9…ベルト補強層、10…インナーライナーゴム、11a…ビードコア、12a…ビードフィラー、61…本体部、62…延在部、81…ベルトプライ、81a…ベルトプライのタイヤ幅方向端部、BL…ビードベースライン、H6…内側リムストリップゴムの高さ、H7…外側リムストリップゴムの高さ、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、S1…タイヤ赤道面、D11…車両内側方向、D12…車両外側方向