IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マークテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図1
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図2
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図3
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図4
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図5
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図6
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図7
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図8
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図9
  • 特許-紫外線照射装置、紫外線照射システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】紫外線照射装置、紫外線照射システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20241227BHJP
   G01N 21/91 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G01N21/91 B
G01N21/91 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020215870
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101346
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 敏
(72)【発明者】
【氏名】細矢 学
(72)【発明者】
【氏名】松本 謙二
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194913(JP,A)
【文献】特開2014-224702(JP,A)
【文献】特開平10-176986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の表面に紫外線を照射する紫外線探傷装置用の紫外線照射装置であって、紫外線LED光源、反射装置を備える紫外線照射装置において、
前記反射装置は一対の第一の反射鏡と一対の第二の反射鏡に囲まれて反射部、通過部を備え、更に第三の反射鏡を備え、
前記反射部は前記一対の第一の反射鏡からなる内側面、前記一対の第二の反射鏡からなる下側面を有し、
光軸に沿って延びる直線と直交する第一の直線とが形成する第一の仮想平面を基準として、2つの第一の反射鏡は面対称に形成され、
前記内側面のそれぞれは少なくとも上端辺、開口辺を備え、
前記下側面のそれぞれは上辺、2つの横辺、下辺を備え、
2つの前記第一の反射鏡はそれぞれ、前記上端辺が内側に、前記開口辺が外側に位置するように傾いており、
2つの前記内側面は、2つの前記下側面のそれぞれにより、接続されて設けられ、
2つの前記下側面は、前記第一の仮想平面と直交する第二の仮想平面を基準として面対称に形成され、それぞれの前記上辺が前記下辺より内側に位置するように内側に傾いて形成され、
更に前記反射部は、前記上辺同士に囲まれてスリットを有し、
更に、前記紫外線LED光源が格納される、2つの前記上端辺に囲まれてなる紫外線LED設置スリットと、更に2つの開口辺に囲まれてなる側面開口部2つを備え、
前記スリットは、前記紫外線LED光源の真下に位置し、
前記第三の反射鏡は前記反射部の両側に、前記紫外線LED光源から出射し前記反射部で反射された光を被照射範囲へと反射するように設けられることを特徴とする、紫外線照射装置。
【請求項2】
前記紫外線照射装置は、前記紫外線LED光源と前記反射装置とを取り囲み、前記紫外線LED光源から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、紫外線透過保護フィルタが配置されることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記紫外線照射装置は、前記紫外線LED光源と前記反射装置とを取り囲み、前記紫外線LED光源から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、
前記紫外線出射口には、可視光カット-紫外線透過のバンドパスフィルタが配置されることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記筐体に前記紫外線出射口を閉塞するカバーを設けたことを特徴とする、請求項2~3に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
被照射面は、前記紫外線LED光源により紫外線を照射される面であり、
請求項1~3に記載の紫外線照射装置をY軸方向に4つ以上並べて設けることで、前記被照射面を連ねて長い帯状の均一、無影配光とすることを特徴とする、紫外線照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び被検査物の表面に紫外線を照射して被検査物の表面状態を検査する紫外線探傷装置に関するものであり、より詳細には蛍光磁粉探傷や蛍光浸透探傷等の蛍光体の励起に用いる紫外線照射装置、紫外線照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材等の被検査物の表面の探傷検査としては、非破壊検査方法の一種である、磁粉探傷試験や浸透探傷試験が知られている。磁粉探傷試験では、被検査物の表面に磁粉または磁粉を含有する磁粉溶液を適用するとともに、被検査物に磁場を印加する等して被検査物を磁化する。被検査物の表面のクラック等の欠陥には磁束が集中するため、この磁束に磁粉が引き寄せられて磁粉による指示模様が形成される。そして、この磁粉指示模様を観測することで欠陥を検査する。磁粉探傷試験には、欠陥の検出精度を向上させるために、磁粉に蛍光体を含有した蛍光磁粉を用いる蛍光磁粉探傷試験がある。
【0003】
一方で、浸透探傷試験では、まず、浸透液を被検査物の表面に適用して表面のクラック等の欠陥にこの浸透液を浸透させる。次に、表面に付着している余剰浸透液を除去し、現像剤粉末を表面に塗布して欠陥に浸透している浸透液を毛細管現象により表面に吸い出す。そして、この吸い上げられた浸透液による浸透指示模様を観察することで欠陥を検査する。浸透探傷試験には、欠陥の検出精度を向上させるために、蛍光体を含有する蛍光浸透液を用いる蛍光磁粉探傷試験がある。
【0004】
磁粉探傷試験や浸透探傷試験において蛍光磁粉や蛍光浸透液を用いる場合には、被検査物に紫外線を照射して含有した蛍光磁粉や蛍光浸透液の蛍光体を励起させる必要がある。紫外線を照射する紫外線照射装置としては、光源に紫外線LED(Light Emitting Diode)を用いるものが知られている。
【0005】
LED光源を使用した従来の紫外線照射装置では、LED光源から照射される光を一定範囲に集光するために、レンズ及び反射鏡を使用していたが、レンズでは透過によるロスが、反射鏡では反射によるロスが、それぞれ生じてしまっていた。また、LEDから照射される光線のうち、一定以上の照度を確保できる範囲のみを用いて照射範囲を照射していたため、光軸から離れた、一定以下の照度の光線については、ロスが生じていた。
【0006】
特許文献1では、紫外線ランプの上側から被せるように反射鏡を設ける旨が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1に記載された技術は紫外線ランプの上側に反射鏡を用いているのみで、紫外線ランプから出射した光のうち、斜め下方の、一定の広さを持つ被照射範囲以外の部分を照射してしまうことによるエネルギーのロスを解決できていない。またこれを解決する場合、考えられる方法の一つとして、反射鏡を被照射面付近まで伸ばすことが考えられるが、紫外線探傷の際に、作業者の視線を遮ることになり、また大型化しすぎて設置が難しくなるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008―101947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
紫外線LEDが出力する紫外線波(UV-A)において、従来のレンズの透過率は約91パーセントであり、レンズの表面反射とレンズの紫外線透過率による紫外線強度のロスは、約9パーセントである。レンズの表面反射による低下の場合、入射角/出射角が0度での反射率は約4パーセントであることから、紫外線LED光源からの紫外線がレンズを通る際、最低でも約8パーセントの紫外線強度が低下する計算になる。入射角度による透過率の変化は小さく、影響はない。そのため、約9パーセントのうち残り1パーセントのロスは、紫外線透過率によるロスと考えられる。このため、これらのロスを軽減することが目下の課題となっている。また、コンパクトな紫外線照射装置の実現や、無影化も同時に実現できないかが課題となっている。
【0010】
そこで、紫外線LEDによって紫外線が照射される被照射面において、エネルギーロスを減らしてより少ないLEDで高い紫外線放射照度を実現すること、コンパクトな照射装置による多方向からの照射による無影化が望まれる。
【0011】
本発明の目的は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び被検査物の表面に紫外線を照射して被検査物の表面状態を検査する紫外線探傷装置において、より少ないLEDや、エネルギーで、被照射面の照射領域における高い紫外線放射照度を実現でき、紫外線探傷検査の精度を向上させるコンパクトな紫外線照射装置、紫外線照射システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の紫外線照射装置は、被検査物の表面に紫外線を照射する紫外線探傷装置用の紫外線照射装置であって、紫外線LED光源、反射装置を備える紫外線照射装置において、
前記反射装置は一対の第一の反射鏡と一対の第二の反射鏡に囲まれて反射部、通過部を備え、更に第三の反射鏡を備え、
前記反射部は前記一対の第一の反射鏡からなる内側面、前記一対の第二の反射鏡からなる下側面を有し、
光軸に沿って延びる直線と直交する第一の直線とが形成する第一の仮想平面を基準として、2つの第一の反射鏡は面対称に形成され、
前記内側面のそれぞれは少なくとも上端辺、開口辺を備え、
前記下側面のそれぞれは上辺、2つの横辺、下辺を備え、
2つの前記第一の反射鏡はそれぞれ、前記上端辺が内側に、前記開口辺が外側に位置するように傾いており、
2つの前記内側面は、2つの前記下側面のそれぞれにより、接続されて設けられ、
2つの前記下側面は、前記第一の仮想平面と直交する第二の仮想平面を基準として面対称に形成され、それぞれの前記上辺が前記下辺より内側に位置するように内側に傾いて形成され、
更に前記反射部は、前記上辺同士に囲まれてスリットを有し、
更に、前記紫外線LED光源が格納される、2つの前記上端辺に囲まれてなる紫外線LED設置スリットと、更に2つの開口辺に囲まれてなる側面開口部2つを備え、
前記スリットは、前記紫外線LED光源の真下に位置し、
前記第三の反射鏡は前記反射部の両側に、前記紫外線LED光源から出射し前記反射部で反射された光を被照射範囲へと反射するように設けられることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の紫外線照射装置では、前記紫外線照射装置は、前記紫外線LED光源と前記反射装置とを取り囲み、前記紫外線LED光源から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、紫外線透過保護フィルタが配置されることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の紫外線照射装置は、前記紫外線照射装置は、前記紫外線LED光源と前記反射装置とを取り囲み、前記紫外線LED光源から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、可視光カット-紫外線透過のバンドパスフィルタが配置されることを特徴とする。
【0015】
更に、本発明の紫外線照射装置は、前記筐体に前記紫外線出射口を閉塞するカバーを設けたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の紫外線照射システムは、被照射面は、前記紫外線LED光源により紫外線を照射される面であり、請求項1~3に記載の紫外線照射装置をY軸方向に4つ以上並べて設けることで、前記被照射面を連ねて長い帯状の均一、無影配光とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の紫外線照射装置は、被検査物の表面に紫外線を照射する紫外線探傷装置用の紫外線照射装置であって、紫外線LED光源、反射装置を備える紫外線照射装置において、前記反射装置は一対の第一の反射鏡と一対の第二の反射鏡に囲まれて反射部、通過部を備え、更に第三の反射鏡を備え、前記反射部は前記一対の第一の反射鏡からなる内側面、前記一対の第二の反射鏡からなる下側面を有し、光軸に沿って延びる直線と直交する第一の直線とが形成する第一の仮想平面を基準として、2つの第一の反射鏡は面対称に形成され、前記内側面のそれぞれは少なくとも上端辺、開口辺を備え、
前記下側面のそれぞれは上辺、2つの横辺、下辺を備え、2つの前記第一の反射鏡はそれぞれ、前記上端辺が内側に、前記開口辺が外側に位置するように傾いており、2つの前記内側面は、2つの前記下側面のそれぞれにより、接続されて設けられ、2つの前記下側面は、前記第一の仮想平面と直交する第二の仮想平面を基準として面対称に形成され、それぞれの前記上辺が前記下辺より内側に位置するように内側に傾いて形成され、更に前記反射部は、前記上辺同士に囲まれてスリットを有し、更に、前記紫外線LED光源が格納される、2つの前記上端辺に囲まれてなる紫外線LED設置スリットと、更に2つの開口辺に囲まれてなる側面開口部2つを備え、前記スリットは、前記紫外線LED光源の真下に位置し、前記第三の反射鏡は前記反射部の両側に、前記紫外線LED光源から出射し前記反射部で反射された光を被照射範囲へと反射するように設けられることを特徴とするので、レンズ等を用いることなく帯状の照射範囲を得ることができ、レンズの表面反射、透過率によるロスを減らすことができ、また紫外線LED光源から出射する一定以下の強度の光線をも反射装置により集めることができ、その際反射装置を鉛直方向において短く、コンパクトに形成することができ、作業者の視線を確保しやすい紫外線照射装置を提供することができる。
【0018】
更に、本発明の紫外線照射装置では、前記紫外線照射装置は、前記紫外線LED光源と前記反射装置とを取り囲み、前記紫外線LED光源から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、紫外線透過保護フィルタが配置されることを特徴とするので、外部から粉塵が混入しないようにすることができ、照度などが粉塵により落ちてしまうことを防止することができる。
【0019】
更に、本発明の紫外線照射装置は、前記紫外線照射装置は、前記紫外線LED光源と前記反射装置とを取り囲み、前記紫外線LED光源から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口を有する筐体を更に備え、前記紫外線出射口には、可視光カット-紫外線透過のバンドパスフィルタが配置されることを特徴とするので、可視光により作業者によるきずの誤認などを防ぎ、より正確な検査に資することができる。
【0020】
更に、本発明の紫外線照射装置は、前記筐体に前記紫外線出射口を閉塞するカバーを設けたことを特徴とするので、使用していない際に粉塵などが混入することを重ねて防止することができる。
【0021】
また、本発明の紫外線照射システムは、被照射面は、前記紫外線LED光源により紫外線を照射される面であり、請求項1~3に記載の紫外線照射装置をY軸方向に4つ以上並べて設けることで、前記被照射面を連ねて長い帯状の均一、無影配光とすることを特徴とするので、被検査物が長い帯状の場合でも、被照射範囲を均一配光でより長い範囲とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る紫外線照射装置1の正面図である。
図2】本実施形態に係る紫外線照射装置1を示す図1の上面図である。
図3】本実施形態に係る紫外線照射装置1を示す図1の右側面図である。
図4図1の紫外線照射装置1を、説明のため、第一の反射鏡10を取り除いて内部を示した斜視説明図である。
図5図4の紫外線照射装置1で光線の軌跡を示した概略正面図である。
図6】(X)は図4の紫外線照射装置1において、光線Xの軌跡を示した正面図、(Y)は(X)の斜視図である。
図7】(X)は図4の紫外線照射装置1において、光線Yの軌跡を示した正面図、(Y)は(X)の斜視図である。
図8】(X)は図4の紫外線照射装置1において、更に第三の反射鏡12、12´を説明のため省略した部分正面図、(Y)は(X)の正面図である。
図9】(X)は本実施形態に係る紫外線照射装置1を直列に並べ、これを筐体2に収納した紫外線照射システム90を示した図であり、(Y)は本発明に使用されている反射鏡の積層構造を示した図である。
図10図9(X)のように紫外線照射装置1を直列に複数並べて筐体2に収容したものを更に直列に連ねて設けた本実施形態に係る紫外線照射システム90を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。図1は本実施形態に係る紫外線照射装置1の一例が示された正面図であり、図2図1の紫外線照射装置1の上面図である。図3は、図1の紫外線照射装置1の右側面図であり、図4は説明のために図1に示す紫外線照射装置1の部材のうち、第一の反射鏡10を取り除いて内部を可視化して斜視した説明図であり、図5図4のように第一の反射鏡10を説明のため取り除いた紫外線照射装置1に、紫外線LED光源3から照射された光線の軌跡を一部示した概略正面図である。図6の(X)は図4と同様に説明のため第一の反射鏡10を取り除いた紫外線照射装置1において、光線Xの軌跡を示した正面図であり、(Y)は図6(X)の斜視図であり、図7の(X)は図4と同様に説明のため第一の反射鏡10を取り除いた紫外線照射装置1において、光線Yの軌跡を示した正面図であり、(Y)は図7(X)の斜視図であり、図8の(X)は図4と同様に説明のため第一の反射鏡10を取り除いた紫外線照射装置1において、更に第三の反射鏡12、12´を説明のため省略した部分正面図であり、(Y)は図8(X)の正面図であり、図9(X)は紫外線照射装置1を直列に複数並べて筐体2に収容した本実施形態に係る紫外線照射システム90を示した斜視図であり、(Y)は本実施形態に係る紫外線照射装置1に使用される反射板の積層構造を示した図であり、図10図9(X)の筐体2を更に直列に連ねて設けた本実施形態に係る紫外線照射システムの他の例を示した図である。なお本開示においは説明の便宜上、正面とは図1において手前方向、図3において左方向から見て正面という意味であり、右側面とは図1図2において右から、図3において正面から見た面という意味であり、左側面はその反対方向から見た面という意味とする。
【0024】
まず紫外線照射装置1は、磁粉探傷試験や浸透探傷試験において蛍光磁粉や蛍光浸透液を用いる場合に、被検査物に紫外線を照射して含有した蛍光磁粉や蛍光浸透液の蛍光体を励起させるために被検査物の表面に紫外線を照射するものであり、被検査物5や被照射面80を紫外線により照射する紫外線LED光源3と、複数の反射鏡からなる反射装置4を備える。
【0025】
紫外線照射装置1は、紫外線LED光源3と反射装置4を取り囲み、紫外線LED光源3から発せられた紫外線を出射する紫外線出射口60を有する図1においては図示されない筐体2を更に備えてもよい。図9に示すが、紫外線出射口60には、可視光を遮断可能な紫外線透過フィルタ61を配置することが好ましい。この紫外線透過フィルタ61は、紫外線透過保護フィルタであってもよく、可視光カットー紫外線透過のバンドパスフィルタを用いてもよい。可視光カットー紫外線透過のバンドパスフィルタは、紫外線LED光源3から発せられる僅かな可視光を可視光の波長範囲である、概ね400nm~700nmの範囲でカットするものであり、被検査物から検出された欠陥がグラインダー等で切削された被検査物表面の金属光沢面を検査する際に、金属光沢面に可視光が反射して作業員が眩しくなることを防止することで検査作業を改善することができる。また紫外線透過保護フィルタは、筐体2内に粉塵が混入し、照度が低下するなどの事態を防止することができるため好ましい。また、紫外線出射口60を覆うように図示しないカバーを更に設けてもよい。このようにすることで、紫外線照射装置1を使用していない間に粉塵などが入り込むことを防ぐことができる。
【0026】
図1図2に示すように反射装置4は第一の反射鏡10、10´を備える。紫外線LED光源3の光軸と同位置に伸びる直線Pから横方向に左右それぞれ20度傾いた光線を通過させて、直接被照射面80や被検査物5の検査対象面である被照射範囲を照射可能なようにスリット50が設けられているが、光軸から何度傾いた光線までとするかは被照射面との距離によって適宜設計される。また、紫外線LED光源3から出射する光の光軸と同じ位置の直線Pと、これと直交する直線Nとが形成する平面が、第一の仮想平面Vである。第一の反射鏡10、10´は第一の仮想平面Vを基準として面対称に形成されている。
なお、被照射範囲は被検査物5の大きさや形状に応じて任意に設定される。
【0027】
次に、図3を示しながら紫外線照射装置1をさらに詳述する。第一の反射鏡10、10´は図3のように右側面方向から見てハの字状である。また、第一の反射鏡10、10´が備える上端辺22、22に囲まれて、紫外線LED設置スリット51が形成される。紫外線LED設置スリットの中央部分には、紫外線LED光源3を設ける。また、第一の反射鏡10、10´に囲まれて、これを懸架するように第二の反射鏡11、11´が設けられる。第二の反射鏡11、11´は、図1に示されるが、正面視でハの字状である。また、第三の反射鏡12、12´は、紫外線LED光源3から出射して第二の反射鏡11、11´で反射した光線の大部分を入射させるように設けられ、また、十分な大きさを備える。大きさや位置は他の部材の大きさに応じて適宜設計される。また、紫外線LED光源3の光軸を通る直線Pが存在する第一の仮想平面Vと、直線Pで直交する形で、第二の仮想平面Wがある。従って第二の仮想平面W上においても直線Pは存在する。第二の仮想平面Wを基準として、第二の反射鏡11、11´は面対称に形成されている。
【0028】
次に、図4を示しながら、紫外線照射装置1をより詳述していく。第二の反射鏡11、11´はそれぞれ、下側面30、30´を備える。下側面30、30´は、それぞれ、上辺31、31´、横辺、32、33、32´、33´と、下辺34、34´を備える。そして、上辺31、31´に囲まれてスリット50が形成される。図1に示される直線Pから、Oを原点として仮想平面上Vで20度傾いた直線上に、上辺31、31´が設けられている。
このうち、横辺32、32´は内側面21に、横辺33、33´は内側面21´にそれぞれ接続している。この構造により、第二の反射鏡11、11´は第一の反射鏡10、10´を懸架するように設けられている。また、第二の反射鏡はスリット50の長手方向への傾きはなく、第一の反射鏡10、10´は、スリット50の短手方向への傾きはないように設けられている。内側面21、21´は、上端辺22、開口辺23、側面開口辺24をそれぞれ備える。それぞれ2つの側面開口辺24に囲まれて、反射部20は側面開口部52、52´を備える。
【0029】
また、スリット50は上辺31、31´に囲まれて形成される。そして、スリット50は既に述べたように、紫外線LED光源3からの光が被検査物5を直接照射するため、紫外線LED光源3の真下に位置することになる。その際、光はスリット50を通過した後、第二の反射鏡11、11´に囲まれた、反射部20の下方に位置する、通過部40を通過することとなる。
【0030】
次に、図5を用いて、本発明の紫外線照射装置1における、紫外線LED光源3から出射した光の被検査物5までに至る経路を詳述する。紫外線LED光源3から出射した光線は被照射面5を3方向から照らすことになる。つまり経路としては大まかに3通りある。 まず、紫外線LED光源3から出射した光が、反射部20、スリット50、通過部40を通過して照射される。(ルート1)。ルート1は紫外線LED光源3が反射鏡を介さず直接被検査物5を照射する経路である。
【0031】
また、他の経路としては、紫外線LED光源3から出射した光が、反射部20を通過し、第二の反射鏡11の下側面30に反射され、その光線が第三の反射鏡12に反射されて被検査物5を照射する。(ルート2)
さらに、第三の経路としては、紫外線LED光源3から出射した光が反射部20を通り、第二の反射鏡11´の下側面30´で反射されて反射部20外へと通過し、第三の反射鏡12´で反射されて被検査物5を照射する。(ルート3)
これらの3経路があることにより、被検査物5は3方向から照らされて無影化の度合いが向上し、好適である。蛍光磁粉探傷試験や蛍光浸透探傷試験において、被検査物5は通常凹凸が多数あるため、一方向から光を照射する場合においては、凹凸に影になる部分が生じてしまう。しかし、1方向では影になる部分も、本発明の紫外線照射装置1においては上述のように3経路で照射するため、3方向からの光を照射することとなる。このため、影にならない範囲が増大し、蛍光磁粉探傷試験、蛍光浸透探傷試験においてきずの視認性が向上し、好適である。
【0032】
次に図6を用いてルート2を例に下側面30、30´に反射した際の光線Xの軌跡を詳述する。紫外線LED光源3から出射した光線Xは、図6(X)で図示されるようにまず下側面30で反射され、第三の反射鏡12でさらに反射することになる。図6(Y)ではこれを斜視して示している。光線Xが下側面30´方向に出射され、下側面30´で同様に反射した場合も、同様となる。
【0033】
次に、図7を示しながら、ルート2を例に下側面30、30´に反射した際の光線Xの軌跡の他の場合を詳述する。紫外線LED光源3から出射した光線Yは、図7(X)に示されるように、下側面30で反射され、その次に内側面21で反射され、更に第三の反射鏡12で反射し、被検査物5を照射する。これを斜視して示したのが図7(Y)である。
光線Yのように3度反射する場合は他にも、紫外線LED光源3から出射した光線が下側面30でまず反射し、内側面21´に反射し、その後第三の反射鏡12で反射する場合がある。上述した限り、ルート2において反射の仕方によって、計3つの場合に分類できることになる。紫外線LED光源3から下側面30´に反射した場合、つまりルート3の光の軌跡も同様にこの3つの場合に分類できる。
【0034】
本発明の紫外線照射装置1において、紫外線LED光源3から照射される光の軌跡のうち、ルート2とルート3で合計6つの分類をすることができ、ルート1をこれに加えると7分類にもなることとなる。これらの光線を被検査物5や被照射面80に照射する際、図9(X)において示される紫外線透過フィルタ61を通過することになる。本発明の紫外線照射装置1からの光線が紫外線透過フィルタ61を通過する際、入射角が20度以下でないと可視光がうまくカットできない場合がある。このため、光線の入射角を20度以下にする必要がある。7分類の光線のすべての紫外線透過フィルタ61への入射角を20度以下に制御するために、本発明者らが鋭意研究の結果、図8に示される角α、角βをそれぞれ5~15度、65~75度とすることが好適であることがわかった。
【0035】
まず、図8に示される直線Pは紫外線LED光源3から出射する光の中心軸である光軸と同様に、紫外線LED光源3の中心点Oから垂下する直線である。図8(X)は第一の反射鏡10を説明のため省略しているが、図8(X)のように右側面から見た場合、直線Pを基準として、第一の反射鏡10と10´は左右対称であり、上端辺22の側が内側に傾くようにハの字状に配置される。同様に、図8(Y)のように正面から見た場合、直線Pを基準として、第二の反射鏡11と11´は左右対称であり、上辺31、31´が内側になるように傾いてハの字状に配置される。
【0036】
次に、角αと角βについて詳述する。図8(X)に示す直線Qは直線Pと平行である。直線Qと第一の反射鏡10´とのなす角が角αである。図示しないが第一の反射鏡10についても同様に、直線Pと平行な任意の直線とのなす角は角αである。
次に、角βについてであるが、図8(Y)に示すように、直線Rは直線Pと平行である。直線Rと第二の反射鏡11がなす角が角βである。図示しないが、図8(Y)において直線Pと平行な任意の直線と第二の反射鏡11´とのなす角も、角βとなる。
角βが75度を超える場合であると、第三の反射鏡12、12´が上方に設置する必要がでてきて、第三の反射鏡12、12´から反射された光線を反射装置4が遮ってしまう形となってしまう。また角βが65度未満の場合であると、第三の反射鏡12、12´を反射装置4の高さよりも下方へと設けなければならず、紫外線照射装置1が大きくなってしまう。紫外線照射装置1が大きいと、検査の際に、検査者の視界を遮ってしまったりすることにもなる。角βは65~75度であることが好ましい。
【0037】
また、角βが65~75度である場合、角αは5度~15度であることが好ましい。角αをこの範囲とすることで、紫外線透過フィルタ61を通過する際に、本発明の紫外線照射装置1から出射した7分類の光線のすべての場合を紫外線透過フィルタ61への入射角をおおむね20度以下に制御することできるため、好適である。
【0038】
次に、図9を用いて本発明の紫外線照射システム90につき詳述する。紫外線照射システム90は、本発明に係る紫外線照射装置1を直列に並べてなっている。図9(X)に示されるように、本発明の紫外線照射システム90においては、紫外線照射装置1は並べられ、筐体2に格納されている。並べ方としては、紫外線照射装置1のスリット50の長手方向に直列に、並べられている。この配列により、紫外線照射システム90の照射範囲を、紫外線照射装置1単体よりも縦長に伸ばすことができる。
また、筐体2は紫外線照射口60及び紫外線透過フィルタ61を備える。
紫外線透過フィルタ61は紫外線透過保護フィルタであっても、可視光カットー紫外線透過のバンドパスフィルタであってもよい。紫外線透過保護フィルタであれば、紫外線を透過させつつ筐体2の内部に粉塵などが流入することを防ぐことができる。可視光カットー紫外線透過のバンドパスフィルタであれば、紫外線LED光源3から出るわずかな可視光を大幅に低減することができる。ピーク波長365nm程度の紫外線強度を確保することが紫外線探傷には必要となるが、紫外線LED光源3において紫外線強度を高めると、どうしても400nm以上の可視光が紫外線強度の増加に比例してより多く混ざってしまう。この対策をすることができ、検査者が検査の際にきずの見落とし等をすることを減らすことができ、好適である。
【0039】
図9(Y)は、反射鏡の好適な積層構造を示す。基板73の上に、金属反射膜(AL膜)72を積層し、その上に、誘電体多層膜71(UV増反射膜)を形成すると好適である。誘電体多層膜71の表面は反射面70であり、内側面21、下側面30、第三の反射鏡12、12´の光線を反射する面にあたる。基板73には、素材としてガラスまたは表面が平滑な金属を使用する。第一~第三の反射鏡はすべてこの積層構造であると好ましい。
【0040】
次に図10を示しながら、本発明の紫外線照射システム90をさらに詳述する。図10に示される紫外線照射システム90は、図9の(X)と同様の配列方法で直列に紫外線照射装置1を並べたものを表している。紫外線照射システム90は被照射面80に対し照射をしている。このように紫外線照射装置1を配置することで、照射されている被照射面80のうち、右側3番目の紫外線照射装置1から垂下する直線Sと、左側3番目の紫外線照射装置1から垂下する直線Uとの間の範囲である範囲Tにおいては、図10のような多数の光源を有する紫外線照射システム90の場合においては常に5個の紫外線LED光源3から照射されることになり、均一な高強度の配光を保つことができるため、好適である。数は図10のような場合に限らず、紫外線照射装置1が4つ以上同様の配列方法で直列に並べば均一な照射範囲ができ、好適である。
【実施例
【0041】
実施例の紫外線照射装置1は本発明の特徴を備えていた。すなわち、第一~第三の反射鏡からなる反射装置4を備え、第一の反射鏡10、10´と第二の反射鏡11、11´と第三の反射鏡12、12´との位置関係も本発明と同様であった。第一~第三の反射鏡には図9(Y)のような積層構造を備えた反射鏡として、シグマ光機(株)製アルミ紫外増反射ミラーを使用した。紫外線LED光源3は、ピーク波長が365nmであるものが用いられた。
【0042】
比較例の紫外線照射装置は単に反射鏡を両側に備えた従来の紫外線照射装置が用いられた。そのため、本発明の有するような特徴は有していなかった。
<評価方法>
(紫外線放射照度分布試験)
実施例の紫外線照射装置1を用いた場合における被照射面の紫外線放射照度分布が測定された。改良型リニアフレネルレンズから600mmの離れた距離に位置する被照射面のX軸方向の照射幅200mmの領域における紫外線放射照度分布を測定し、紫外線放射照度分布の改善度合いを測定した。改善度合いの測定方法としては、照射幅全域において、紫外線放射照度の平均値の±10パーセントの範囲に紫外線放射照度が収まっており、紫外線放射照度が均一化されている場合にその均一化されている照度を比較することとした。
【0043】
この紫外線放射照度測定試験により照度を比較した結果、以下の結果が得られた。すなわち、比較例による紫外線放射照度の結果を100%とすると、実施例では被検査物5の照射面においておおむね110~115%前後の紫外線放射照度が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、紫外線を照射する紫外線照射装置、及び紫外線照射装置を備える紫外線探傷装置に好適に利用することができる。しかしながら、本開示は、上述された実施形態、及び実施例に限定されるものではない。本開示の紫外線照射装置は、紫外線を利用する、コンタミネーションチェック、漏洩検査、脱脂洗浄の確認等のいるあらゆる試験や検査に有用である。また、本開示の紫外線探傷装置は、蛍光磁粉探傷装置に限定されるものではなく、蛍光浸透液を用いて被検査物の表面の欠陥を探傷する浸透探傷装置であっても良く、紫外線を利用して欠陥を探傷するあらゆる紫外線探傷装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 紫外線照射装置
2 筐体
3 紫外線LED光源
4 反射装置
5 被検査物
10、10´ 第一の反射鏡
11、11´ 第二の反射鏡
12、12´ 第三の反射鏡
20 反射部
21 内側面
22 上端辺
23 開口辺
24 側面開口辺
30 下側面
31、31´上辺
32、33、32´、33´ 横辺
34、34´下辺
40 通過部
50 スリット
51 紫外線LED設置スリット
52、52´ 側面開口部
60 紫外線出射口
61 紫外線透過フィルタ
70 反射面
71 誘電体多層膜
72 金属反射膜
73 基板
80 被照射面
90 紫外線照射システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10