(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】バリア紙及び産業用材又は包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/30 20060101AFI20241227BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20241227BHJP
D21H 19/82 20060101ALI20241227BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20241227BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20241227BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
B32B27/30 C
B32B27/10
D21H19/82
D21H21/14 Z
D21H19/20 C
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2021027983
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】田中 基晴
(72)【発明者】
【氏名】澤木 恵子
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-265395(JP,A)
【文献】特開2018-168232(JP,A)
【文献】特開平04-334447(JP,A)
【文献】特開2020-066805(JP,A)
【文献】特開2012-117185(JP,A)
【文献】特開2015-107640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0110978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
D21B 1/00- 1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00- 9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙と、
上記基紙の片面又は両面に積層される下塗り層と、
上記下塗り層の表面に積層される塗工層と
を備え、
上記下塗り層が積層された基紙の密度が0.70g/cm
3以上1.10g/cm
3以下であり、
上記下塗り層が積層された基紙の厚さが40μm以上100μm以下であり、
上記下塗り層が積層された基紙の透湿度が800g/m
2・24hr以上2000g/m
2・24hr以下であり、
上記下塗り層の表面のベック平滑度が30秒以上300秒以下であり、
上記塗工層が塩化ビニリデン系共重合体を含有し、
上記塗工層における塩化ビニリデン系共重合体の含有量が固形分換算で50質量%以上であるバリア紙。
【請求項2】
上記塗工層の塗工量が3.0g/m
2以上15.0g/m
2以下ある請求項1に記載のバリア紙。
【請求項3】
上記下塗り層がクレー及びラテックスを含有し、
上記クレーに対する上記ラテックスの質量比が0.3以上1.0以下であり、
上記クレーのアスペクト比が30以下である請求項1又は請求項2に記載のバリア紙。
【請求項4】
上記基紙の表面のベック平滑度が20秒以上280秒以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のバリア紙。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のバリア紙を備える産業用材又は包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア紙及び産業用材又は包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、農業、その他の産業分野等の包装において、従来から内容物の品質低下を防止するために、紙を基材とし、水蒸気バリア性及びガスバリア性を付与した包装材料が用いられている。
【0003】
このような水蒸気バリア性及びガスバリア性を有する包装材料としては、基材上に水蒸気バリア層およびガスバリア層が設けられた紙製バリア包装材料が提案されている(特許文献1参照)。上記従来の紙製バリア包装材料においては、水蒸気バリア層が平均粒子径5μm以上、アスペクト比10以上のカオリンを全顔料に対して50質量%~100質量%含有し、ガスバリア層がバインダー樹脂としてポリビニルアルコール樹脂を含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の紙製バリア包装材料においては、防湿層(水蒸気バリア層)とガスバリア層との特徴を持った塗工層をそれぞれ設けることで、防湿性とガスバリア性とをもたせている。このように、紙製バリア包装材料に防湿性、ガスバリア性、ヒートシール性等を付与しようとすると、防湿層、ガスバリア層、ヒートシール層等、別々の機能を持った塗工層をそれぞれ塗工する必要がある。その場合、それぞれの機能層による塗工量が加算されるために、包装材も厚くなる傾向があった。また、近年、加工性、包装性や持ち運び等の観点から薄い包装材が望まれている。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、薄くてガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れる産業用材又は包装材を製造できるバリア紙の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るバリア紙は、基紙と、上記基紙の片面又は両面に積層される下塗り層と、上記下塗り層の表面に積層される塗工層とを備え、上記下塗り層が積層された基紙の密度が0.70g/cm3以上1.10g/cm3以下であり、上記下塗り層が積層された基紙の厚さが40μm以上100μm以下であり、上記下塗り層が積層された基紙の透湿度が800g/m2・24hr以上2000g/m2・24hr以下であり、上記下塗り層の表面のベック平滑度が30秒以上300秒以下であり、上記塗工層が塩化ビニリデン系共重合体を含有し、上記塗工層における塩化ビニリデン系共重合体の含有量が固形分換算で50質量%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄くてガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れるバリア紙を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るバリア紙は、基紙と、上記基紙の片面又は両面に積層される下塗り層と、上記下塗り層の表面に積層される塗工層とを備え、上記下塗り層が積層された基紙の密度が0.70g/cm3以上1.10g/cm3以下であり、上記下塗り層が積層された基紙の厚さが40μm以上100μm以下であり、上記下塗り層が積層された基紙の透湿度が800g/m2・24hr以上2000g/m2・24hr以下であり、上記下塗り層の表面のベック平滑度が30秒以上300秒以下であり、上記塗工層が塩化ビニリデン系共重合体を含有し、上記塗工層における塩化ビニリデン系共重合体の含有量が固形分換算で50質量%以上である。
【0010】
当該バリア紙は、上記塗工層は、塩化ビニリデン系共重合体を含有し、塩化ビニリデン系共重合体の含有量が固形分換算で50質量%以上であることで、1層の塗工層でガスバリア性及び水蒸気バリア性の両方の機能を備えることができる。さらに、当該バリア紙は下塗り層を備えることによって、下塗り層表面の平坦性及び塗工層を積層する際の塗工性を良好にできるので、塗工層の性状を向上できる。また、塗工層の塗工液が基紙中へ含浸することを抑制し、塗工液使用量を抑えることができる。そして、上記下塗り層の表面におけるベック平滑度が30秒以上300秒以下、上記下塗り層が積層された基紙において、密度が0.70g/cm3以上1.10g/cm3以下であり、厚さが40μm以上100μm以下であり、かつ透湿度が800g/m2・24hr以上2000g/m2・24hr以下であることで、当該バリア紙の加工適性及び上記下塗り層の表面に積層される塗工層の性状を向上できる。また、塗工層の塗工液を均一に塗工できるとともに、基紙への浸透も抑えられることから、低塗工量で高いバリア性を持たせることができる。従って、当該バリア紙は薄くてガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れる。「固形分」とは、溶媒以外の成分をいう。「密度」は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定「厚さ」は、JIS-P8118(2014)に準拠して測定される。「透湿度」は、JIS-Z0208[1976]防湿包装材料の透湿度試験方法[カップ法]に準拠して、条件Bに基づいて測定する。
【0011】
上記塗工層の塗工量が3.0g/m2以上15.0g/m2以下あることが好ましい。上記塗工層の塗工量が上記範囲であることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性の両方の機能を良好にできる。
【0012】
当該バリア紙は、上記下塗り層がクレー及びラテックスを含有し、上記クレーに対する上記ラテックスの質量比が0.3以上1.0以下であり、上記クレーのアスペクト比が30以下であることが好ましい。当該バリア紙の下塗り層が上記構成を有することで、下塗り層表面の平坦性及び塗工層を積層する際の塗工性をより向上し、塗工層の塗工液の基紙中への含浸に対する抑制効果を高めることができる。
【0013】
上記基紙の表面のベック平滑度が20秒以上280秒以下であることが好ましい。上記基紙の表面のベック平滑度であることで、下塗り層の目止め性をより向上できる。
【0014】
本発明の一態様に係る産業用材又は包装材は、当該バリア紙を備える。当該産業用材又は包装材は、当該バリア紙を備えることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、薄くて多機能な産業用材又は包装材を得ることができる。
【0015】
[本発明の実施形態の詳細]
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<バリア紙>
当該バリア紙は、基紙と、上記基紙の片面又は両面に積層される下塗り層と、上記下塗り層の表面に積層される塗工層とを備える。
【0017】
[基材]
基材は、原料パルプを含有するスラリーを抄紙して得られる。基材は、単層又は多層のいずれであってもよい。
【0018】
(原料パルプ)
基材は、パルプを主成分とする。基材を構成する原料パルプとしては、例えば、バージンパルプ、古紙パルプ、これらのパルプを組み合わせたもの等を使用することができる。上記「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、含有量が50質量%以上である成分をいう。
【0019】
バージンパルプとしては、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ(MP)から、化学的に又は機械的に製造されたパルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。印刷面の見栄えや食品包装用途に使用される観点から、晒クラフトパルプのみを使用することが好ましい。
【0020】
古紙パルプとしては、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0021】
(その他の添加剤)
基材には、必要によりその他の添加剤を内添することができる。添加剤としては、例えば、填料、顔料、サイズ剤、凝結剤、耐油剤、蛍光増白剤、硫酸バンド、歩留り向上剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、着色染料、着色顔料、耐水化剤等を、単独で又は複数を組み合わせて使用することができる。
【0022】
(基紙の坪量)
坪量は、JIS-P8124(2011)に準拠して測定される。基紙の坪量は、特に限定されるものではないが、坪量の下限としては、15.0g/m2が好ましく、30.0g/m2がより好ましい。基紙の坪量の上限としては、140.0g/m2が好ましく、120.0g/m2がより好ましい。基紙の坪量が上記範囲であることで、当該バリア紙の加工適性を向上できる。
【0023】
(基紙の密度)
基紙の密度としては、0.60g/cm3以上1.05g/cm3以下が好ましい。上記基紙の密度が上記範囲であることで、低坪量及び軽量化を可能にしつつ、耐折強度を維持できるので、当該バリア紙は加工適性に優れる。
【0024】
(基紙の厚さ)
基紙の厚さとしては、30μm以上150μm以下が好ましい。上記基紙の厚さが上記範囲であることで、低坪量及び軽量化を可能にしつつ強度を維持できる。
【0025】
(基紙の表面のベック平滑度)
上記基紙の下塗り層を設ける表面のベック平滑度の下限としては、20秒であり、30秒が好ましい。一方、ベック平滑度の上限としては、280秒であり、250秒が好ましい。上記基紙の表面のベック平滑度が上記下限以上であることで、下塗り層の塗工液の目止め性が向上し、それにより塗工層の性状を良好にできる。一方、上記基紙の表面のベック平滑度が上記上限を超える場合、下塗り層にピンホールが発生し、その上部に塗工層形成すると、塗工層性状が低下するおそれがある。ベック平滑度は、JIS-P8119(1998)に記載の「紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠した値である。上記ベック平滑度は、空気の流通量(エアーリーク)から平滑性を評価するものである。上記ベック平滑度は、被測定物であるシートを光学的平面仕上げのガラス製試料台とゴム製押え板間に100kPaの圧力で挟み、10mlの空気が比較的広い10cm2のガラス製標準面との間を通り、水銀柱約370mmlに減圧保持された器内に流入するのに要する時間で表され、いわゆる被測定物の面における平滑性を示す。ベック平滑度は、比較的広い面におけるマクロ的な平滑性を評価する。当該バリア紙においては、ベック平滑度により上記基紙の表面のうねり性を評価できる。従って、ベック平滑度にて上記基紙の表面をより適切に評価できる。
【0026】
[下塗り層]
当該バリア紙は、上記基紙の片面又は両面に積層される下塗り層を備える。すなわち、上記塗工層は、上記下塗り層の表面に積層される。当該バリア紙は、下塗り層を備えることによって、塗工層を積層する際の塗工性及び塗工層表面の平坦性を向上することができると共に、塗工層の塗工液が基紙中へ含浸することを抑制し、塗工液使用量を抑えることができるいわゆる目止め層として機能する。上記下塗り層はクレー及びラテックスを含有する。ここで、下塗り層を積層させた基紙は、単に下塗り層ということもある。
【0027】
(クレー)
上記クレーとしては、例えば微粒クレー、2級クレー、1級クレー、エンジニアードクレー等が挙げられる。これらの中でもバリア層塗工液の浸透と抑制のバランスを整え、透湿度を特定の数値範囲に調整する観点から、微粒クレーが好ましい。
【0028】
上記クレーのアスペクト比の上限としては、30が好ましく、25がより好ましく、20が特に好ましい。上記クレーのアスペクト比が30以下であることで、上記クレーの平均粒子径が上記範囲であることで、下塗り層の表面のクレー配列に若干歪が生じるため、塗工層の塗工液が基紙内に適度に浸透し塗工性が向上し、塗工層の性状を良好にできる。また、塗工層の塗工液を均一に塗工できるとともに、基紙への浸透も抑えられることから、低塗工量で高いバリア性を持たせることができる。一方、上記クレーのアスペクト比の下限としては、12が好ましい。上記クレーのアスペクト比が12未満であると、下塗り層の表面のクレー配列に大きな歪が生じるため、塗工液が基紙内に過度に浸透し、塗工層が不均一になり効果を発揮する場所が限定されるおそれがある。ここで、アスペクト比とは、無機粒子の形状で、その長径(最長径)と厚さ(最短径)との比をいう。上記アスペクト比は、例えば、レーザー回折・散乱式の粒子分布測定装置堀場製作所製、Horiba LA 950による粒子画像解析や粉体粒子を電子顕微鏡で撮影し、ランダムに抽出した500個について、直径を厚さで割って平均値を求めることで得ることができる。
【0029】
上記クレーの平均粒子径の下限としては、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。一方、上記クレーの平均粒子径の上限としては、0.3μm以下が好ましく、0.4μm以上がより好ましい。上記クレーの平均粒子径が上記範囲であることで、下塗り層の表面の凹凸が軽減されることにより、塗工層の塗工液の塗工性が向上し、塗工層の性状を良好にできる。また、塗工層の塗工液を均一に塗工できるとともに、基紙への浸透も抑えられることから、低塗工量で高いバリア性を持たせることができる。上記平均粒子径は、レーザー回析散乱法により測定された粒度分布曲線の50%体積%粒子径であるメジアン径(D50)である。
【0030】
上記下塗り層は、クレー以外のその他の顔料を含んでいてもよい。上記その他の顔料としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、シリカ粒子、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物(擬ベーマイト等)、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記、その他の顔料の含有量は下塗り層に対して固形分換算で10質量%以下とすることが好ましい。
【0031】
(ラテックス)
当該バリア紙は、バインダーとしてラテックスを含有する。ラテックスとしては、塗工紙における塗工層を形成する際に用いられる公知のものを用いることができるが、安価かつ基紙に対するアンカー効果が得られるスチレン-ブタジエン共重合体ラテックス(SBR)との併用が特に好ましい。
【0032】
ラテックスとしては、特に限定されず、スチレン-ブタジエン系共重合体、スチレン-アクリル系共重合体、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、ブタジエン-メチルメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル-ブチルアクリレート系共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸-メチルメタクリレート系共重合体などの各種共重合体のラテックスを使用することができ、また、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、微細粒子の脱落を防止する観点から、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックスを使用することが好ましい。
【0033】
上記クレーに対する上記ラテックスの質量比(固形分換算)の下限としては、0.3が好ましく、0.4がより好ましい。一方、上記クレーに対する上記ラテックスの質量比の上限としては、1.0が好ましく、0.9がより好ましい。上記クレーに対する上記ラテックスの質量比が上記範囲であることで、下塗り層表面の平坦性及び塗工層を積層する際の塗工性をより向上し、塗工層の塗工液の基紙中への含浸に対する抑制効果を高めることができる。上記クレーに対する上記ラテックスの質量比が上記下限未満の場合、下塗り層の強度が十分に得られないおそれがある。一方、上記クレーに対する上記ラテックスの質量比が上記上限を超える場合、塗工液の流動性が悪くなり、クレー配列に歪が生じ易くなるおそれがある。
【0034】
上記下塗り層には、上記クレー及びバインダーの他、例えばクレー分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、滑剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料、定着剤等の通常の添加剤や、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸、オレイン酸カルシウム、オレイン酸アンモニウム、レシチン、ポリエチレン、ワックス又はこれらの誘導体等の助剤を必要に応じて適宜配合することができる。
【0035】
下塗り層の塗工量(固形分換算)の下限としては、5.0g/m2が好ましく、5.5g/m2が好ましい。一方、上記塗工量(固形分換算)の上限としては、目止め性を向上させる観点から、15.0g/m2が好ましく、14.0g/m2がより好ましい。上記下塗り層の塗工量が上記下限未満の場合、基紙表面の凹凸を十分に埋めることができず、塗工層の塗工液の塗工性が低下することで、塗工層において良好な性状が得られないおそれがある。一方、上記塗工量が上記上限を超える場合、上記下塗り層の柔軟性が低下し、当該バリア紙の加工適性が低下するおそれがある。
【0036】
(下塗り層の表面のベック平滑度)
上記下塗り層の表面のベック平滑度の下限としては、30秒であり、35秒が好ましい。一方、ベック平滑度の上限としては、300秒であり、250秒が好ましい。上記下塗り層の表面のベック平滑度が上記下限以上であることで、塗工層の塗工液の塗工性が向上し、塗工層の性状を良好にできる。また、塗工層の塗工液を均一に塗工できるとともに、基紙への浸透も抑えられることから、低塗工量で高いバリア性を持たせることができる。一方、上記下塗り層の表面のベック平滑度が上記上限を超える場合、塗工層を形成しても下塗り層の高い平坦性(滑り性の向上)を示すため、製袋加工適性の低下が生じるおそれがある。さらに、下塗り層形成後にカレンダー処理等で、ベック平滑度がさらに高くならないようにすることで、下塗り層にピンホール等の微小欠陥が生じにくくなる。
【0037】
また、上記基紙と上記下塗り層の表面のベック平滑度の差が100秒以内であることが好ましい。上記平滑度の差が100秒以内であることで、塗工層性状及び加工適性を両立することができる。上記平滑度の差を超えると、上記下塗り層の塗工後にカレンダー工程を経ることもできるが、そのことで下塗り層にひび割れが生じやすく、目止め性が低下するおそれがある。
【0038】
(下塗り層が積層された基紙の密度)
上記下塗り層が積層された基紙の密度の下限としては、0.70g/cm3であり、0.75g/cm3が好ましい。一方、上記下塗り層が積層された基紙の密度の上限としては、1.10g/cm3であり、1.05g/m2・24hが好ましい。上記下塗り層が積層された基紙の密度が上記範囲であることにより、製袋加工等の加工時に生じる破れ及び折り目の裂けを防止できる。
【0039】
(下塗り層が積層された基紙の厚さ)
上記下塗り層が積層された基紙の厚さの下限としては、40μmであり、50μmが好ましい。一方、上記下塗り層が積層された基紙の厚さの上限としては、100μmであり、85μmが好ましい。上記下塗り層が積層された基紙の厚さが上記下限以上であることにより、下塗り層の目止め性を良好にするとともに、バリア紙の加工適性を向上できる。上記下塗り層が積層された基紙の厚さが上記上限以下であることにより、バリア紙の加工適性を向上できる。
【0040】
(下塗り層が積層された基紙の透湿度)
下塗り層が積層された基紙の透湿度の下限としては、800g/m2・24hrであり、900g/m2・24hが好ましい。一方、上記下塗り層が積層された基紙の透湿度の上限としては、2000g/m2・24hであり、1800g/m2・24hが好ましい。上記下塗り層が積層された基紙の透湿度が上記範囲であることにより、適度に下塗り層の湿度を保つため、塗工層の成分と下塗り層との親和性が向上し、塗工層を均一に積層できる。
【0041】
[塗工層]
塗工層は、上記下塗り層の表面に積層される。上記塗工層は、塩化ビニリデン系共重合体を含有する。上記塗工層は塩化ビニリデン系共重合体を含有するので、当該バリア紙は、1層の塗工層でガスバリア性及び水蒸気バリア性の両方の機能を備えることができる。また、塩化ビニリデン系共重合体は、ヒートシール温度が低いため、ヒートシール性能も有する。
【0042】
上記塗工層における塩化ビニリデン系共重合体の含有量の下限としては、固形分換算で50質量%であり、70質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。上記塩化ビニリデン系共重合体の含有量が上記範囲であることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性をより向上できる。ここで、上記塗工層における塩化ビニリデン系共重合体の含有量は、100質量%としてもよい。
【0043】
塩化ビニリデン系共重合体において、塩化ビニリデンと共重合可能な他の単量体の具体例としては、例えば塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸等のうち一種または二種以上を選択して用いることができる。また、塩化ビニリデン系共重合体は、2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。さらに、塩化ビニリデン系共重合体には熱安定剤や光安定剤、滑剤等添加剤を適宜添加して用いることもできる。塩化ビニリデン系共重合体は通常、エマルジョン或いは溶液として用いられる。
【0044】
上記塗工層(塗工液)には、上記塩化ビニリデン系共重合体の他、例えば増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、滑剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料、定着剤等の通常の添加剤を必要に応じて適宜配合することができる。
【0045】
塗工層の塗工量(固形分換算)の下限としては、3.0g/m2が好ましく、3.5g/m2がより好ましい。一方、上記塗工量の上限としては、高い酸素バリア性及び水蒸気バリア性を両立させ、さらにヒートシール性を向上させる観点から、15.0g/m2が好ましく、14.0g/m2がより好ましい。上記塗工層の塗工量が上記下限未満の場合、ガスバリア性及び水蒸気バリア性の両方の機能を備えることが困難となるおそれがある。一方、上記塗工量が上記上限を超える場合、当該バリア紙が固くなり、製袋加工に適さないおそれがある。
【0046】
なお、上記基紙の両面側に下塗り層及び塗工層が積層される場合、下塗り層及び塗工層の成分、塗工量等の構成を上記構成とすることができる。
【0047】
[バリア紙の物性値]
(バリア紙の坪量)
当該バリア紙の坪量としては、23.0g/m2以上150.0g/m2以下が好ましい。当該バリア紙の坪量が上記範囲であることで、軽量化を可能にしつつ強度を維持できる。
【0048】
(バリア紙の厚さ)
当該バリア紙の厚さの下限としては、40μmであり、45μmが好ましい。上記厚さの上限としては、150μmであり、100μmが好ましい。当該バリア紙の厚さが上記範囲であることで、低坪量及び軽量化を可能にしつつ加工適性を向上できる。
【0049】
[バリア紙の製造方法]
当該バリア紙の製造方法としては、特に限定されず、例えば原料パルプスラリーを抄紙し、プレスパート及びドライヤーパートに供して基紙を製造する工程と、アンダーコーターパートにて下塗り層塗工液を塗工した上、乾燥及び平坦化処理して下塗り層を積層する工程と、下塗り層の表面に塗工層の塗工液を塗工する工程とを有する。
【0050】
塗工層の塗工液又は下塗り層塗工液を塗工する際の塗工装置としては、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコータ、バーコータ、ゲートロールコータ、ロッドコータ、エアナイフコータ等が挙げられる。
【0051】
また、カレンダー処理の際のカレンダー装置としては、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトコンパクトカレンダー等の金属又はドラムと弾性ロールとの組み合わせによる各種カレンダーがオンマシン又はオフマシン仕様で適宜使用される。
【0052】
[産業用材又は包装材]
当該産業用材又は当該包装材は、当該バリア紙を備える。当該産業用材又は包装材は、当該バリア紙を備えることで、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れ、薄くて多機能な産業用材又は包装材を得ることができる。
【0053】
当該産業用材としては、例えば農業用シート、挿間紙、音響・衣類・建材等に使用されるシート、電気電子機器に使用されるシートに使用されるプラスチック素材に代替される用途が挙げられる。また、当該産業用材は、酸素や湿気の侵入を抑制できるので、内容物の腐敗、劣化を抑制するとともに、内容物の臭気が漏れ出るのを抑制できる。
【0054】
当該包装材としては、例えば食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア性包装材料、パック、パウチ、箱、シュリンク包装、缶、ラミネート包装等のプラスチック素材に代替される用途が挙げられる。当該包装材は、内容物の酸素による酸化や湿気などによる劣化を抑制し、保存期間の延長を図ることができる。
【0055】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1~実施例5及び比較例1~比較例9]
(基紙)
フリーネス450mlの広葉樹クラフトパルプ90質量%及びフリーネス600mlの針葉樹クラフトパルプ10質量%からなるパルプスラリーに、紙力増強剤としての2.0kg/tと、中性ロジン系内添サイズ剤1.0kg/tを添加した紙料スラリーを用いて抄紙して基紙を得た。
【0058】
(下塗り層)
次に、この基紙の両面に、表2に記載の組成の塗工液を塗工して下塗り層を形成した。下塗り層を形成した。下塗り層の塗工液の材料は以下の通りである。
(1)微粒クレー(白石カルシウム社製、品名:カオファイン)
(2)スチレン-ブタジエン系共重合体(SB)ラテックス(旭化成社製、品名:A7090)
(3)軽質炭酸カルシウム(白石工業社製「ブリリアント15」)
(4)重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製「FMT-90」)
(5)エンジニアードクレー(イメリス社製「バリサーフHX」)
(6)ポリビニルアルコール(クラレ社製「11-98」)
(7)スチレン-アクリル系共重合体(サイデン化学社製「サイビノールEK-81」)
(8)ワックス樹脂(東邦化学工業社製「リパックスA-240」)
【0059】
(塗工層)
比較例7を除き、下塗り層の表面に、表3に記載の組成の塗工層の塗工液を塗工して塗工層を形成した。
塗工層の塗工液の材料は以下の通りである。
ポリ塩化ビニリデン(メーカー:旭化成、品名:サランラテックスL536B)
【0060】
上記記載の添加剤の添加量は、絶乾パルプ量に対する固形分換算した量で記載した。また、下塗り層及び塗工層は基紙の片面のみに塗工し、その塗工量は、表2及び表3の通りとした。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
[評価]
得られたバリア紙について下記の方法にて評価した。
【0065】
<坪量>
坪量(g/m2)は、JIS-P-8124(2011)「紙及び板紙-坪量の測定方法」に準拠して測定した。
【0066】
<厚さ>
厚さは、JIS-P8118(2014)に準拠して測定した。
【0067】
<密度>
密度は、JIS-P8118(2014)に記載の「紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0068】
<ベック平滑度>
ベック平滑度は、JIS-P8119(1998)に記載の「紙及び板紙-ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に準拠して測定した。
【0069】
<下塗り層の目止め性>
下塗り層の目止め性は、トルエンを油性インキで着色したものを、下塗り層表面に滴下し、直後に布で拭きとり裏面への抜けを目視で確認した。裏面への裏抜けが少ないという評価は、下塗り層の目止め性が良好な結果である。上記目止め性が良好な結果であることで、塗工層性状が良好となり、酸素透過度及び透湿度が変動なく均一な結果が得ることができる。評価基準は、以下の通りとした。
A:裏面への裏抜けがない。
B:0.5mm以上の裏面への裏抜けが1カ所/m2以上2カ所/m2以下存在する。
C:0.5mm以上の裏面への裏抜けが3カ所/m2以上10カ所/m2以下存在する。
D:0.5mm以上の裏面への裏抜けが10カ所/m2が超存在する。
【0070】
<透湿度>
JIS-Z0208[1976]防湿包装材料の透湿度試験方法[カップ法]に準拠して、条件Bに基づいて測定した。
【0071】
<酸素透過度>
下記の手順で測定した。
JIS-K-7126-1:2006「プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法」に準拠して、GTRテック社の「GTR-11AET」を用いて、23℃の雰囲気下におけるバリア紙の酸素透過度を測定した。
【0072】
<塗工層の性状評価>
塗工層の性状を以下の手順で評価した。
実施例及び比較例で得られたバリア紙の塗工層の性状について目視で判断した。塗工層に不均一な部分があると、その個所で酸素透過度及び透湿度が劣る結果となり、バリア紙としては使用できないものとなる。塗工層の性状について以下の基準で判定した。A及びBの場合、合格である。
(評価基準)
A:塗工層が均一で良好、かつ密着性が良好である。
B:塗工層に一部不均一な部分がある、又は塗工層の密着性が使用上、問題ない。
C:塗工層に不均一な部分が目立つ、又は塗工層の密着性に使用上問題がある。
D:塗工層が不均一、又は塗工層の密着性が弱く、使用できない。
【0073】
<ヒートシール適性>
ヒートシール適性を以下の手順で評価した。
熱傾斜試験機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、シーラー圧2kgf/cm2、シーラー時間2秒間、シール温度140℃の条件で加工後、ロードセル型引張試験機を用いてヒートシール部分の剥離強度を測定した。実施例及び比較例で得られたバリア紙のヒートシール適性について以下の基準で判定した。A及びBの場合、合格である。
(評価基準)
A:剥離強度が2.5N/mm以上である。
B:剥離強度が2.0以上2.5N/mm未満である。
C:剥離強度が1.5以上2.0N/mm未満である。
D:剥離強度が1.5N/mm未満である。
【0074】
<加工適性>
バリア紙の加工適性を以下の手順で評価した。
バリア紙からヒートシールにより個包袋を加工して、製袋時の折り目の評価を行った。実施例及び比較例で得られたバリア紙の加工適性について以下の基準で判定した。A及びBの場合、合格である。
(評価基準)
A:個包装の底部及び端部の折り目にシワ及び破れがなく外観が良好である。
B:個包装の底部及び端部の折り目にシワがあるが、使用上問題ないレベルである。
C:個包装の底部及び端部の折り目にシワ及び破れがわずかに生じ、使用上問題があるレベルである。
D:個包装の底部及び端部の折り目にシワ及び破れがあり、使用できない。
【0075】
上記測定結果及び評価結果について、表1~表3に示す。
【0076】
表3に示すように、バリア紙の厚さが40μm以上100μm以下であり、下塗り層の表面のベック平滑度が30秒以上300秒以下、上記下塗り層が積層された基紙における密度が0.70g/cm3以上1.10g/cm3以下、下塗り層の厚さが40μm以上100μm以下、かつ透湿度が800g/m2・24hr以上2000g/m2・24hr以下であり、さらに塗工層における塩化ビニリデン系共重合体の含有量が固形分換算で50質量%以上である実施例1~実施例8のバリア紙は、ガスバリア性及び水蒸気バリア性、塗工層の性状、並びに加工適性に優れていた。さらに、実施例1~実施例5のバリア紙は、良好なヒートシール性も有していた。
【0077】
一方、上記要件を具備していない比較例1~比較例7及び比較例9においては、バリア紙の評価として、酸素透過度、透湿度、塗工層性状、ヒートシール適性及び加工適性のうち、少なくともどれかを満たしていなかった。なお、塗工層の塗工液にワックス樹脂が添加された比較例8については、上記塗工液と基紙表面との親和性が悪く、塗工層を形成できず、未評価とした。
また、比較例4は下塗り層が含有するエンジニアードクレーのアスペクト比が高いために、上記下塗り層が積層された基紙の透湿度が下がり過ぎて塗工層の性状(塗工層と下塗り層が積層された基紙の密着性)が劣っていた。比較例5は上記下塗り層が積層された基紙の密度及び厚さが上記上限を超えたことにより、バリア紙の厚さが大きくなり、加工適性が劣っていた。上記下塗り層が積層された基紙の透湿度が上限を大きく超える比較例2及び比較例3は塗工層の性状が劣っていた。さらに、下塗り層がクレー及びラテックスを含有しないために上記下塗り層が積層された基紙の透湿度が非常に大きくなった比較例6及び塗工層を備えていない比較例7は、バリア性能を得られなかった。下塗り層の厚さが40μm以下の比較例9は、下塗り層が薄く基紙のピンホールが影響して目止め効果が低下した。その結果、バリア紙としての機能が低下した。また、加工適性も劣っていた。下塗り層を形成後にカレンダー処理を行い上記下塗り層が積層された基紙の密度が上限を超えた比較例10は、下塗り層にピンホールが発生し、目止め性が低下した。またクッション性も若干低下したことから、バリア紙としての機能も低下した。
【0078】
以上の結果、当該バリア紙は薄くてガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れるとともに、ヒートシール性を有することがわかる。従って、当該バリア紙は薄くて多機能な産業用材又は包装材として好適であることが示された。