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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】給湯制御装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20220101AFI20241227BHJP
   F24D 17/00 20220101ALI20241227BHJP
   F24H 15/156 20220101ALI20241227BHJP
   F24H 15/219 20220101ALI20241227BHJP
   F24H 15/238 20220101ALI20241227BHJP
   F24H 15/258 20220101ALI20241227BHJP
   F24H 15/215 20220101ALI20241227BHJP
   F24H 15/335 20220101ALI20241227BHJP
【FI】
F24H1/18 G
F24D17/00 P
F24H15/156
F24H15/219
F24H15/238
F24H15/258
F24H15/215
F24H15/335
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021038339
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138452
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 福郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 勝也
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-148298(JP,A)
【文献】特開2020-125862(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174735(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/116454(WO,A1)
【文献】特開2014-202405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/00-15/493
F24D17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通流路に流通する流体を加熱して湯を生成する複数の熱源機と、複数の前記熱源機を介して加熱された湯が流通する1つの出湯路から分岐する複数の分岐路に夫々接続された複数の温水消費装置とを有する給湯システムを制御する給湯制御装置であって、
前記出湯路は、湯水を貯留する貯湯タンクと連通し、前記分岐路よりも上流側の第一循環路及び前記分岐路よりも下流側の第二循環路と、を含んでおり、
前記共通流路は、前記貯湯タンクと複数の前記熱源機とを接続しており、
前記共通流路に流通する流体の循環流量を制御する制御部と、
複数の前記温水消費装置を有する1つの前記給湯システムに関して複数の前記温水消費装置で消費される熱負荷を含む熱負荷データを取得する熱負荷データ取得部と、
複数の前記熱負荷データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記熱負荷データに含まれ、前記第一循環路を流通する湯の第一温度と前記第二循環路を流通する湯水の第二温度との差に基づいて取得される前記熱負荷及び前記循環流量を参照して、異なる前記給湯システムにおける前記制御部の作動条件を設定する設定部と、を備えた給湯制御装置。
【請求項2】
記制御部は、前記熱負荷に応じて前記第一温度と前記第二温度との差が所定範囲内となるように、前記循環流量を制御する請求項1に記載の給湯制御装置。
【請求項3】
前記記憶部は、複数の前記給湯システムにおける夫々の設置条件と、前記設置条件に対応する複数の前記給湯システムに関する前記熱負荷データと、を記憶しており、
前記設定部は夫々の前記設置条件に対応する前記熱負荷データを参照して前記作動条件を設定する請求項1又は2に記載の給湯制御装置。
【請求項4】
前記設置条件は、外気温及び水温を含んでおり、
前記設定部は、前記外気温及び水温に基づいて、参照する前記熱負荷データを補正した補正熱負荷データを生成し、当該補正熱負荷データに基づいて前記作動条件を設定する請求項3に記載の給湯制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅向けの給湯システムを制御する給湯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅の各戸の温水消費装置に湯を供給するために、複数の熱源機を用いて水を加熱して湯を生成する給湯システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この給湯システムは、複数の熱源機を用いて水を加熱するため、熱源機の台数制御を行うことでエネルギー効率を高め、1台の熱源機に不具合が発生しても、各戸に湯を供給できるものである。
【0003】
特許文献1に記載の給湯システムは、給湯器で構成される熱源機と、複数の熱源機と貯湯タンクと各戸の蛇口(温水消費装置)との間で温水を循環させる循環路とを備えており、貯湯タンクの温水温度に応じて循環路に設置された循環ポンプを駆動又は停止させて、各戸の蛇口に対する給湯温度を制御するマルチコントローラが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-148298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のマルチコントローラは、貯湯タンクの温水温度に応じて循環ポンプを駆動又は停止をさせているだけなので、集合住宅全体の温水消費量が少ない場合でも、熱源機は一定の熱量を供給し続けている。温水消費量に応じて熱源機の台数制御を行うことで、エネルギー消費量を低下させることができるものの、個々の熱源機における出力負荷は変わらず、エネルギー効率を高める上で、改善の余地があった。特に、新たに建築された集合住宅では、全体の温水消費量が分からないため、複数の熱源機を定格出力で作動させる必要があり、エネルギー効率が悪化しやすい。
【0006】
そこで、様々な集合住宅においてエネルギー効率を高めることが可能な給湯制御装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給湯制御装置の特徴構成は、共通流路に流通する流体を加熱して湯を生成する複数の熱源機と、複数の前記熱源機を介して加熱された湯が流通する1つの出湯路から分岐する複数の分岐路に夫々接続された複数の温水消費装置とを有する給湯システムを制御する給湯制御装置であって、前記出湯路は、湯水を貯留する貯湯タンクと連通し、前記分岐路よりも上流側の第一循環路及び前記分岐路よりも下流側の第二循環路と、を含んでおり、前記共通流路は、前記貯湯タンクと複数の前記熱源機とを接続しており、前記共通流路に流通する流体の循環流量を制御する制御部と、複数の前記温水消費装置を有する1つの前記給湯システムに関して複数の前記温水消費装置で消費される熱負荷を含む熱負荷データを取得する熱負荷データ取得部と、複数の前記熱負荷データを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記熱負荷データに含まれ、前記第一循環路を流通する湯の第一温度と前記第二循環路を流通する湯水の第二温度との差に基づいて取得される前記熱負荷及び前記循環流量を参照して、異なる前記給湯システムにおける前記制御部の作動条件を設定する設定部と、を備えた点にある。
【0008】
本構成では、ある集合住宅が備える給湯システムに関する熱負荷データを取得して、様々な集合住宅に対応する複数の熱負荷データを記憶している。そして、設定部は、複数の熱負荷データを参照して、例えば、新築の集合住宅の給湯システムにおいて、熱源機にて加熱される湯水の循環流量を制御する制御部の作動条件を設定する。
【0009】
つまり、制御に必要な熱負荷データが無い、若しくは一年を通して取得されていない集合住宅においても、設定部により制御部の作動条件が設定されるので、すべての熱源機を一定出力で作動させる必要がなく、エネルギー効率の高い給湯システムを実現できる。このように、様々な集合住宅においてエネルギー効率を高めることが可能な給湯制御装置が提供できる。
【0010】
他の特徴構成は、記制御部は、前記熱負荷に応じて前記第一温度と前記第二温度との差が所定範囲内となるように、前記循環流量を制御する点にある。
【0011】
本構成では、第一温度と第二温度との差により、温水消費装置の熱負荷が分かるため、この熱負荷に応じて熱源機に供給する循環流量を制御している。つまり、第一温度と第二温度との差が所定範囲内となるように制御すれば、熱負荷が高い場合は循環流量を大きくすることにより熱源機の出力熱量を確保して各戸に必要量の給湯を実現し、熱負荷が低い場合は循環流量を小さくして熱源機の出力熱量を下げ、エネルギー消費量を低下させることができる。よって、熱源機は、過剰な熱量供給となることが無く、エネルギー効率を高めることができる。
【0012】
他の特徴構成は、前記記憶部は、複数の前記給湯システムにおける夫々の設置条件と、前記設置条件に対応する複数の前記給湯システムに関する前記熱負荷データと、を記憶しており、前記設定部は夫々の前記設置条件に対応する前記熱負荷データを参照して前記作動条件を設定する点にある。
【0013】
本構成のように、設定部が、例えば集合住宅の規模や地域といった設置条件が似通った熱負荷データを参照すれば、より実情に即した給湯制御が可能となるため、新築の集合住宅であっても、初動からエネルギー効率を高めることができる。
【0014】
他の特徴構成は、前記設置条件は、外気温及び水温を含んでおり、前記設定部は、前記外気温及び水温に基づいて、参照する前記熱負荷データを補正した補正熱負荷データを生成し、当該補正熱負荷データに基づいて前記作動条件を設定する点にある。
【0015】
本構成のように、外気温や水温に基づいて補正熱負荷データを生成すれば、より適正な作動条件を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】給湯システムの概念図である。
図2】給湯制御装置を示すブロック図である。
図3】給湯制御フロー図である。
図4】作動条件の設定に係る説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る給湯制御装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示す本実施形態における給湯システム100は、1棟の建物に複数の住戸が存在する集合住宅に設けられている。この給湯システム100は、複数の給湯器2(熱源機の一例)にて湯水(流体の一例)を加熱して湯を生成し、この湯を、夫々の住戸に設けられた温水消費装置9に供給する。本実施形態における給湯制御装置1は、夫々の集合住宅に設置された複数の給湯システム100の作動を制御する。この給湯制御装置1は、給湯システム100の状態を遠隔地で集中管理する管理センタに設けられたコンピュータの一部の機能であっても良いし、給湯システム100の一部として機能する制御機構であっても良いし、これらの組み合わせであっても良い。給湯制御装置1は、各種処理を実行するCPUやメモリ等を中核としたハードウェアとソフトウェアとの協働により構成されている。
【0019】
[給湯システムの基本構成]
給湯システム100は、集合住宅の各戸に設けられる温水消費装置9と、温水消費装置9に供給される湯を生成する複数の給湯器2(熱源機の一例)と、複数の給湯器2で湯水を加熱して生成された湯を貯留する貯湯タンク3と、を備えている。この給湯システム100は、貯湯タンク3に貯留された湯水を複数の給湯器2で加熱して生成された湯を貯湯タンク3に戻し、この湯を貯湯タンク3から夫々の温水消費装置9に供給する。また、給湯システム100は、給湯制御装置1と有線又は無線により相互通信が可能に構成されており、給湯制御装置1により作動が制御される。
【0020】
複数の給湯器2は、夫々の給湯器2が並列に接続されており、1つの湯水循環路41に流通する湯水を加熱して湯を生成する。なお、夫々の給湯器2を直列で接続しても良い。また、湯水を加熱して湯を生成する熱源機は、給湯器2に限定されず、燃料電池、ガスエンジンコージェネレーション装置、電気式ヒートポンプ装置、太陽熱集熱装置など、熱を与える様々な装置を用いることができる。
【0021】
給湯器2は、ケーシング21内部に配管22を備えており、配管22に給湯熱源である熱交換器23が設けられている。この給湯器2は、ガス配管24から供給される都市ガス13Aなどの燃焼ガスの燃焼火炎で得た熱を、熱交換器23により配管22を流通する湯水に与えて給湯機能を実行するガス給湯器である。
【0022】
貯湯タンク3は、複数の給湯器2の熱エネルギーを蓄え(即ち、熱媒体としての湯で熱を蓄え)、出湯配管42を介して、分岐路91から湯を温水消費装置9へと流出させるように構成されている。貯湯タンク3の下部には、水道水が供給される給水配管45が接続されており、貯湯タンク3の内部には湯水が満たされている。
【0023】
貯湯タンク3には、貯湯タンク3と複数の給湯器2との間で湯水を循環させる1つの湯水循環路41(共通流路の一例)が接続されている。つまり、貯湯タンク3に貯えられている湯水は、湯水循環路41を通って複数の給湯器2と貯湯タンク3との間で循環する。この湯水循環路41の途中には循環ポンプPが設けられており、循環ポンプPの駆動力を変更することで、湯水循環路41を流通する湯水の循環流量を変化させることができる。湯水循環路41は、貯湯タンク3の下部から取り出された湯水が、複数の給湯器2を経由して、貯湯タンク3の上部へと帰還するように設けられている。つまり、貯湯タンク3の下部から取り出された相対的に低温の湯水が、複数の給湯器2で熱を回収し、複数の給湯器2から排出された熱を回収した相対的に高温の湯は、貯湯タンク3の上部に帰還する。その結果、貯湯タンク3では、上部には相対的に高温の湯が貯えられ、下部には相対的に低温の湯水が貯えられるというように、温度成層を形成して湯水が貯えられることになる。
【0024】
貯湯タンク3の上部には、貯えている高温の湯を出湯する出湯配管42が接続されている。この出湯配管42からは、貯湯タンク3に貯留されている相対的に高温の湯が放出される。出湯配管42に調整弁6が接続されており、この調整弁6では、出湯配管42を介して貯湯タンク3から放出される相対的に高温の湯と、給水配管45を介して供給される相対的に低温の水とが流れ込む。給湯制御装置1は、調整弁6から下流側の出湯路43へと流通する湯の温度が、出湯目標温度(例えば、30~45℃)となるように調整弁6の動作を制御する。なお、調整弁6を省略して、出湯配管42と出湯路43とを直接接続しても良い。
【0025】
調整弁6は、出湯配管42の湯の流通量、及び、給水配管45からの水の合流量を制御する三方弁等で構成される弁部材である。なお、調整弁6に用いる弁部材としては、ロータリバルブ、電磁弁などを用いることができる。この調整弁6は、給湯制御装置1からの指示に従って、出湯配管42及び給水配管45の開度を調整する。つまり、給湯制御装置1は、調整弁6を出湯配管42が開状態となるように制御することにより、出湯路43を介して温水消費装置9への出湯可能となり、出湯目標温度に基づいて給水配管45の連通開度を制御する。一方、温水消費装置9への出湯を停止する際、給湯制御装置1は、貯湯タンク3側の出湯配管42を遮断すると共に、給水配管45側を全開状態となるように調整弁6の弁位置を制御しておく。つまり、温水消費装置9への出湯を停止する際、調整弁6は、給水配管45の水を出湯配管42に流通可能な弁位置となっている。調整弁6の弁位置に係る情報は、給湯制御装置1へ出力される。
【0026】
給水配管45には、上水温度を計測する上水温度センサSwが設けられている。湯水循環路41には、給湯器2よりも上流側に湯水温度Taを計測する湯水温度センサSaが設けられており、給湯器2よりも下流側に目標とする湯温度Tbを計測する目標温度センサSbが設けられている。また、湯水循環路41には、湯水循環路41を流通する湯水の循環流量Vを計測する流量センサSvが設けられている。出湯路43は、湯水を貯留する貯湯タンク3から分岐路91までの出湯配管42と接続される第一循環路43aと、分岐路91から貯湯タンク3までの第二循環路43bと、を含んでいる。つまり、出湯路43は、湯水を貯留する貯湯タンク3と連通し、分岐路91よりも上流側の第一循環路43aと、分岐路91よりも下流側の第二循環路43bと、を含んでいる。第一循環路43aには、温水消費装置9にて熱回収が行われる前の出湯温度T1を計測する熱回収前温度センサScが設けられており、第二循環路43bには、温水消費装置9にて熱回収が行われた後の湯水の戻り温度T2を計測する熱回収後温度センサSdが設けられている。これら上水温度センサSw,湯水温度センサSa,目標温度センサSb,熱回収前温度センサSc及び熱回収後温度センサSdは、例えば熱電対等を含んでおり、当該熱電対等で検出した温度に係る情報を、給湯制御装置1へ出力する。また、流量センサSvは、例えばプロペラ式流量計で構成されており、当該流量計で検出した流量に係る情報を、給湯制御装置1へ出力する。
【0027】
複数の温水消費装置9は、複数の給湯器2を介して加熱された湯が流通する1つの出湯路43から分岐する複数の分岐路91に夫々接続されている。温水消費装置9は、給湯用途や暖房用途等である。温水消費装置9が給湯用途の場合、消費された湯水は貯湯タンク3へ帰還しない。温水消費装置9が暖房用途の場合、湯が保有している熱のみが消費されて、湯水は貯湯タンク3へと帰還する。分岐路91には、その分岐路91を流れる湯を再加熱するために、給湯器等の熱交換器で構成される補助熱源装置(不図示)が設けられていても良い。貯湯タンク3の上部から流出した湯の温度が、温水消費装置9で要求される湯の温度よりも低いとき、補助熱源装置を運転して温水消費装置9へ供給される湯の温度が所望の温度となるような制御を行う。
【0028】
[給湯制御装置]
図1図2に示すように、給湯制御装置1は、夫々の集合住宅に設置された複数の給湯システム100の作動を制御する。給湯制御装置1は、通信部11(熱負荷データ取得部の一例)と制御部12と記憶部13と設定部14と学習部15とを有している。
【0029】
通信部11は、給湯システム100との間で有線通信又は無線通信が可能な通信インターフェースで構成されている。この通信部11は、給湯システム100の状態を遠隔地で集中管理する管理センタに設けられている。
【0030】
制御部12は、給湯システム100の作動を制御するが、本実施形態では、主として、湯水循環路41に流通する湯水の循環流量Vを制御する形態を説明する。この制御部12は、管理センタに設けられているが、機能の一部を給湯システム100に受け持たせても良い。
【0031】
制御部12は、式(1)の演算式に基づき、集合住宅の各戸に設けられた温水消費装置9で消費される合計熱量(集合住宅の熱負荷Q)に応じて、熱回収前温度センサScで計測された出湯温度T1と熱回収後温度センサSdで計測された戻り温度T2との差が、所定範囲内(例えば、20℃≦(T1-T2)≦30℃)となるように循環流量Vを制御する。ここで、集合住宅の熱負荷Qは、給湯システム100を一定の条件(例えば、給湯器2を一定出力、循環流量Vを一定流量)で稼働させることにより、取得することができる。
Q=(T1-T2)×V×熱量換算係数α ・・・式(1)
Q:温水消費装置9で消費される合計熱量(集合住宅の熱負荷)
T1:第一循環路43aを流通する熱回収前の出湯温度
T2:第二循環路43bを流通する熱回収後の戻り温度
V:湯水循環路41を流通する湯水の循環流量V
α:4.182
【0032】
また、制御部12は、湯水循環路41において貯湯タンク3から給湯器2まで循環する湯水の湯水温度Taと、湯水循環路41において給湯器2から貯湯タンク3まで循環する湯の湯温度Tbと、循環流量Vとに基づいて、(Tb-Ta)×Vに比例する形態で、給湯器2の稼働台数及び燃焼ガス供給量を制御する。ここで、湯温度Tbは、貯湯タンク3の上部に貯留するための湯温として、予め設定されている目標温度(例えば、35~50℃)である。つまり、制御部12は、上述した式(1)にて設定された循環流量Vと湯水温度センサSaにて計測された湯水温度Taとに基づいて、給湯器2の稼働台数及び燃焼ガス供給量を制御する。
【0033】
記憶部13は、複数の給湯システム100における夫々の設置条件や熱負荷データを記憶する記憶媒体で構成されている。設置条件としては、給湯システム100を備えた集合住宅における、設置地域、その地域の環境情報(外気温や水道水温等)、築年数、住戸数、給湯器2の設置台数等が挙げられる。熱負荷データは、給湯システム100を備えた集合住宅における時系列データとして、温水消費装置9の使用状況(年月日、時間帯、同時使用率等)、給湯器2の稼働台数、熱回収前温度センサScで計測された出湯温度T1(第一温度の一例)、熱回収後温度センサSdで計測された戻り温度T2(第二温度の一例)、流量センサSvで計測された湯水循環路41を循環する湯水の循環流量V等が挙げられる。なお、同時使用率とは、所定日時において、各戸の温水消費装置9が同時に使用される割合のことである。
【0034】
設定部14は、記憶部13に記憶された熱負荷データを参照して、異なる給湯システム100における制御部12の作動条件を設定する。また、設定部14は、給湯システム100が設置される設置条件に基づいて、作動条件を設定する。一例として、図4に示すように、設定部14は、記憶部13に記憶された集合住宅A~Dの設置条件と、新築の集合住宅Xの設置条件とを比較して、類似する設置条件である集合住宅Bを抽出する。そして、設定部14は、集合住宅Bの熱負荷データを参照して、新築の集合住宅Xにおける制御部12の作動条件を設定する。具体的には、設定部14は、参照する熱負荷データ(記憶部13に記憶された集合住宅Bの時間帯別の循環流量V)と同様の作動条件とする。そして、制御部12は、この設定された循環流量Vに基づいて、目標とする湯温度Tbと計測された湯水温度Taとから(Tb-Ta)×Vに比例する形態で、給湯器2の稼働台数及び燃焼ガス供給量を制御する。なお、一度設定された循環流量Vは、所定期間(例えば1日)取得された熱負荷Qに基づいて、所定間隔毎(例えば1日おき)に、式(1)を用いて20℃≦(T1-T2)≦30℃となるように補正しても良い。
【0035】
この作動条件の設定に際し、例えば、設置条件としての外気温及び水温に基づいて、参照する熱負荷データ(記憶部13に記憶された集合住宅Bの熱負荷Qb及び循環流量V)を補正した補正熱負荷データ(集合住宅Xの熱負荷Qa)を生成し、当該補正熱負荷データに基づいて作動条件を設定しても良い。具体的には、式(2)に示すように、集合住宅Xの熱負荷Qaを、集合住宅Bの平均水温と集合住宅Xの平均水温との差に比例させて補正する。そして、補正された集合住宅Xの熱負荷Qaを作動条件として、制御部12は、式(1)で20℃≦(T1-T2)≦30℃となるように循環流量Vを調整し、(Tb-Ta)×Vに比例する形態で、給湯器2の稼働台数及び燃焼ガス供給量を制御する。この補正は、(集合住宅Bの平均外気温-集合住宅Xの平均外気温)の絶対値が所定値(例えば5℃)以上、且つ、(集合住宅Bの平均水温-集合住宅Xの平均水温)の絶対値が所定値(例えば5℃)以上のときに行っても良い。
Qa=Qb+(集合住宅Bの平均水温-集合住宅Xの平均水温)×V×熱量換算係数α
・・・式(2)
【0036】
また、設定部14は、集合住宅における制御部12の作動条件を、通信部11にて取得された集合住宅の熱負荷データを参照して、変更しても良い。例えば、式(2)で補正した集合住宅Xの平均水温に対して、例えば冬のように実水温と乖離している場合に、作動条件を変更する。一例として、同じ集合住宅での日時間や季節間における外気温の変動が所定値(例えば5℃)以上、且つ、水道水温の変動が所定値(例えば5℃)以上である場合、既に生成された熱負荷Qcを補正して補正熱負荷データを生成しても良い。具体的には、式(3)に示すように、集合住宅の補正後の熱負荷Qdを、集合住宅の平均水温と集合住宅の実水温との差に比例させて補正する。このとき、設定部14は、温水消費装置9の使用状況(年月日、時間帯、同時使用率等)や給湯器2の稼働台数から導かれる集合住宅における実際の熱負荷と、補正した熱負荷Qdとが近似している場合は、集合住宅の熱負荷Qcを熱負荷Qdとして更新しても良い。
Qd=Qc+(集合住宅の平均水温-集合住宅の実水温)×V×熱量換算係数α
・・・式(3)
【0037】
学習部15は、集合住宅の設置条件に基づいて、制御部12の作動条件を学習する。学習部15は、例えば、集合住宅の設置条件をインプットデータとして、集合住宅の熱負荷Q及び循環流量Vをアウトプットデータとして、機械学習を行う。この機械学習にあたっては、記憶部13に記憶された複数の給湯システム100における熱負荷データを参照して、異なる給湯システム100における制御部12の作動条件を設定する教師データ有り学習である。なお、学習部15を省略しても良く、例えば、設定部14が、住戸数や熱源機台数のみでフィルター処理を行って、類似した集合住宅における熱負荷データを参照しても良い。
【0038】
続いて、図3を主に参照しながら、新規に建築された集合住宅の給湯システム100における給湯制御装置1の制御方法について説明する。
【0039】
給湯制御装置1は、通信部11にて複数の集合住宅の給湯システム100における熱負荷データを取得し、記憶部13に記憶している(♯31)。次いで、設定部14は、新規に建築された集合住宅の設置条件と類似する設置条件を有する集合住宅があるか否かを検索し、類似する設置条件を有する集合住宅が有れば(♯32YES判定)、その集合住宅の給湯システム100における熱負荷データを参照する(♯33)。図4に示す例では、既設の集合住宅Bと新築の集合住宅Xとは、住戸数や熱源機台数が似通っているため、集合住宅Bの熱負荷データを参照する。そして、設定部14は、参照した集合住宅Bの熱負荷データに基づいて、新築の集合住宅Xにおける制御部12の作動条件を設定する。具体的には、設定部14は、参照する熱負荷データ(記憶部13に記憶された集合住宅Bの熱負荷Qb及び循環流量V)を、上述した式(2)で補正した補正熱負荷データに基づいて作動条件を設定する。
【0040】
一方、類似する設置条件を有する集合住宅が無ければ(♯32NO判定)、新築の集合住宅Xにおける制御部12の作動条件として、循環流量Vを最大にして、全ての給湯器2を定格出力に設定する(♯34)。♯33や♯34で設定された作動条件を、通信部11を介して新築の集合住宅Xの給湯システム100に送信し、当該作動条件に基づいて作動させる(♯35)。このように設定された循環流量Vは、所定期間(例えば1日)取得された集合住宅Xの熱負荷Qaに基づいて、所定間隔毎(例えば1日おき)に、式(1)を用いて20℃≦(T1-T2)≦30℃となるように補正する。
【0041】
次いで、通信部11は、新築の集合住宅Xにおける実際の熱負荷データ及び設置条件(実外気温や実水温)を取得する(♯36)。次いで、例えば、集合住宅Xでの外気温の変動が所定値(例えば5℃)以上、且つ、水道水温の変動が所定値(例えば5℃)以上である場合、集合住宅Xの作動条件を変更する(♯37YES判定)。作動条件を変更する場合、上述した式(3)に基づいて、設定部14は、集合住宅Xの補正後の熱負荷Qdを演算し、この補正後の熱負荷Qdを集合住宅Xの作動条件として変更し、補正熱負荷データとして作動条件を再設定する(#38)。このとき、補正後の熱負荷Qdと実際の熱負荷とを比較し、近似している場合のみ集合住宅Xの作動条件を再設定しても良い。これら#35~#38の処理を、例えば新築の集合住宅Xにおいて1年間の熱負荷データが取得できるまで、所定間隔(例えば1週間)毎に繰り返す。
【0042】
[その他の実施形態]
<1>上述した実施形態では、設定部14が、集合住宅の設置条件に基づいて制御部12の作動条件を設定したが、設置条件以外の要素に基づいて制御部12の作動条件を設定しても良い。例えば、集合住宅の熱負荷が予め予測可能な場合、設定部14は、記憶部13に記憶された複数の熱負荷データを参照して、類似する熱負荷データに基づいて制御部12の作動条件を設定しても良い。また、設定部14は、複数の集合住宅における複数の熱負荷データを参照して、記憶部13に熱負荷Q-循環流量Vマップを記憶させておき、リアルタイムで取得される異なる集合住宅の熱負荷に応じて、制御部12の作動条件(循環流量V)を設定しても良い。
【0043】
<2>上述した実施形態における貯湯タンク3を省略して、複数の給湯器2にて水道水(流体の一例)を加熱して生成された湯を、直接、温水消費装置90に供給しても良い。
【0044】
<3>上述した実施形態における式(2)や式(3)では、設定部14が補正熱負荷データを演算する際に水道水温を用いたが、外気温等、他のパラメータを用いても良い。
【0045】
<4>上述した実施形態では、具体的な数値を挙げて給湯システム100で行われる制御例について説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。
【0046】
なお、上述した実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、集合住宅向けの給湯システムを制御する給湯制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 :給湯制御装置
2 :給湯器(熱源機)
3 :貯湯タンク
9 :温水消費装置
11 :通信部(熱負荷データ取得部)
12 :制御部
13 :記憶部
14 :設定部
41 :湯水循環路(共通流路)
43 :出湯路
43a :第一循環路
43b :第二循環路
90 :温水消費装置
91 :分岐路
100 :給湯システム
T1 :出湯温度(第一温度)
T2 :戻り温度(第二温度)
V :循環流量
図1
図2
図3
図4