(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】粘着剤組成物および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/06 20060101AFI20241227BHJP
C09J 147/00 20060101ALI20241227BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241227BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J147/00
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2021049565
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 理沙
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003960(JP,A)
【文献】特開2015-003959(JP,A)
【文献】特開2017-066243(JP,A)
【文献】特開2022-050067(JP,A)
【文献】国際公開第2022/163166(WO,A1)
【文献】特開2009-067826(JP,A)
【文献】特開2021-059617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環化重合モノマー
10.5~89.8質量%と、アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル10.1~90.0質量%と、架橋性官能基含有モノマー0.1~9.5質量%とを含むモノマー成分の重合体であり、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル重合体(A)と、
架橋剤(B)と
を含
み、
前記環化重合モノマーが下記式(1)または式(2)で示されるモノマーである粘着剤組成物。
【化1】
(式中、R
1
は、炭素数が6~18のアルキル基である。)
【化2】
(式中、R
2
は、炭素数が6~18のアルキル基である。)
【請求項2】
前記(メタ)アクリル重合体(A)が、前記環化重合モノマー10.5~79.5質量%と、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル20.0~84.0質量%と、前記架橋性官能基含有モノマー0.5~5.5質量%とを含むモノマー成分の重合体である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の粘着剤組成物より作製された粘着剤層を、ポリイミド基材、または、ポリテトラフルオロエチレン基材上に設けてなる粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着シートに関し、詳しくは、耐熱性に優れた粘着剤組成物および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品、車両、住宅、建材等において部材の固定や貼り合わせの際に、粘着テープが用いられている。
粘着テープには、使用環境や使用箇所に応じて、様々な性能が要求される。例えば、高温環境下での使用や、貼り合わせ部品の輸送時に高温環境下に晒されるような場合、高温環境下においても被着体から粘着テープが剥がれないこと、粘着テープにおける粘着剤層と基材との密着性が損なわれないことなどが求められる。
【0003】
これまでにも、粘着テープの高耐熱化に関する研究・開発は多くなされているが、近年においては、より耐熱性に優れることが求められている。
引用文献1は、透明性、粘着特性に優れた粘着層を形成することができる光学テープ用樹脂組成物を開示する。前記組成物は、α-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体(AMA系単量体)を含む単量体組成物を重合して得られる樹脂、および、架橋剤を含むことを特徴とする。
【0004】
引用文献2は、粘着剤組成物および粘着製品を開示する。前記粘着剤組成物は、炭素数2~18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと特定構造のモノマーとを含むモノマー組成物を重合して得られるポリマーおよび架橋剤を含むことを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-3960号公報
【文献】特開2015-3959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1および引用文献2には、各組成物の23℃における粘着力については記載されているが、高温環境下における粘着力については記載がなく、引用文献1および引用文献2から耐熱性に関する知見は得られていなかった。
【0007】
本発明は、耐熱性に優れる粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、環化重合モノマーを含むモノマー成分より得られる重合体を含む粘着剤組成物を用いることで、耐熱性に優れる粘着シートが得られることを見出し、完成させたものである。
【0009】
本発明は、たとえば下記の[1]~[5]に関する。
[1] 環化重合モノマー0.5~89.8質量%と、アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル10.1~90.0質量%と、架橋性官能基含有モノマー0.1~9.5質量%とを含むモノマー成分の重合体であり、ガラス転移温度が0℃未満である(メタ)アクリル重合体(A)と、
架橋剤(B)と
を含む粘着剤組成物。
[2] 前記(メタ)アクリル重合体(A)が、前記環化重合モノマー10.5~79.5質量%と、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル20.0~84.0質量%と、前記架橋性官能基含有モノマー0.5~5.5質量%とを含むモノマー成分の重合体である[1]に記載の粘着剤組成物。
[3] 前記環化重合モノマーが下記式(1)または式(2)で示されるモノマーである[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数が1~18のアルキル基である。)
【化2】
(式中、R
2は、炭素数が1~18のアルキル基である。)
[4] 前記式(1)におけるR
1および式(2)におけるR
2が、炭素数6~18のアルキル基である[3]に記載の粘着剤組成物。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載の粘着剤組成物より作製された粘着剤層を、ポリイミド基材、または、ポリテトラフルオロエチレン基材上に設けてなる粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られる粘着シートは、耐熱性に優れる。また、本発明により得られる粘着剤層は、環化重合モノマーを適宜選択することにより、環化重合モノマーの使用量によらず粘着剤層のヘイズを低く保つことができ、かつ、湿熱環境下に晒された場合であっても粘着力を保持できる。さらに、本発明の粘着剤組成物は、特にポリイミド基材およびポリテトラフルオロエチレン基材に対する密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の粘着剤組成物および粘着シートを説明する。
本発明において、アクリルおよびメタクリルを総称して「(メタ)アクリル」とも記載し、アクリレートおよびメタクリレートを総称して「(メタ)アクリレート」とも記載する。
【0012】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル重合体(A)と架橋剤(B)とを含む。
【0013】
[(メタ)アクリル重合体(A)]
(メタ)アクリル重合体(A)は、環化重合モノマーと、アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、架橋性官能基含有モノマーとを含むモノマー成分の重合体である。前記モノマー成分には、さらにそれ以外のモノマー(他のモノマー)が含まれていてもよい。
【0014】
(メタ)アクリル重合体(A)は、環化重合モノマーが重合して形成される環状の構造単位を含み、この構造単位により、本発明の粘着剤組成物より得られる粘着シートは良好な耐熱性、粘着特性を発現する。
【0015】
(環化重合モノマー)
環化重合モノマーは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび架橋性官能基含有モノマーと重合可能であれば特に制限はないが、下記式(1)~式(7)で示されるモノマーを好適に挙げることができる。環化重合モノマーとしては、粘着シートの耐熱性と粘着特性の双方の物性を発現させる観点から下記式(1)または式(2)で示されるモノマーが好ましく、粘着シートの耐熱性の観点から下記式(1)で示されるモノマーが特に好ましい。
【0016】
なお、本発明において耐熱性が良いということは、粘着シートの初期の粘着力と熱環境下に放置後の粘着力とで大きな差が生じないこと、また、耐熱試験により被着体等から粘着シートが剥がれないことを指す。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【化9】
式(1)、式(2)、式(3)、式(5)、および式(6)におけるR
1、R
2、R
3、R
7、およびR
10は、炭素数が1~18のアルキル基である。
【0024】
前記炭素数が1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、イソオクタデシル基等を挙げることができる。
【0025】
式(1)、式(2)、式(3)、式(5)、および式(6)におけるR1、R2、R3、R7、およびR10は、得られる粘着剤層のヘイズが低く、かつ耐熱性に優れることから、炭素数が6~18のアルキル基であることがより好ましい。
【0026】
式(3)、式(4)、式(5)および式(7)におけるR4、R6、R8、およびR12は、1~18のアルキル基である。その中でも、環化重合におけるゲル化反応を抑制する観点から、R4、R6、R8、およびR12は、炭素数が3~12のアルキル基であることがより好ましい。
【0027】
式(4)、式(6)および式(7)におけるR5、R9、およびR11は、水素または1~6のアルキル基である。その中でも、ポリマーの重合度を高めるか観点から、R5、R9、およびR11は、水素またはメチル基であることがより好ましい。
【0028】
式(1)で示されるモノマーの具体例としては、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸エチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-プロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソプロピル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸sec-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸tert-ブチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ペンチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘプチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-オクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソオクチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-エチルヘキシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ノニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソノニル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-デシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ウンデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ドデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-トリデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-テトラデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ペンタデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘキサデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ヘプタデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸n-オクタデシル、α-アリルオキシメチルアクリル酸イソオクタデシル等を挙げることができる。
【0029】
式(2)で示されるモノマーの具体例としては、ジメチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジエチル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-プロピル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソプロピル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ビス-2-プロペノエート、ジ(sec-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(tert-ブチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ペンチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ヘキシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ヘプチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-オクチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソオクチル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(2-エチルヘキシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ノニル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソノニル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-デシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ウンデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ドデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-トリデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-テトラデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ペンタデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ヘキサデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-ヘプタデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(n-オクタデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート、ジ(イソオクタデシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート等を挙げることができる。
【0030】
式(3)で示されるモノマーは下記文献1に開示されている合成法により、式(4)で示されるモノマーは下記文献2に開示されている合成法により、式(5)で示されるモノマーは下記文献3に開示されている合成法により、式(6)で示されるモノマーは下記文献4に開示されている合成法により、式(7)で示されるモノマーは下記文献5に開示されている合成法により得ることができる。
【0031】
文献1:Lon J.Mathias et al.,Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry,Vol.35,pp2111―2121,1997
文献2:Toshiyuki Kodaira et al.,Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition,Vol.14,pp1107―1115,1976
文献3:Toshiyuki Kodaira et al.,Macromolecules,Vol.29,484―485,1996
文献4:Akira Matsumoto et al.,Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition,Vol.21,pp609―613,1983
文献5:Toshiyuki Kodaira et al.,Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition,Vol.12,pp897―910,1974
これらの環化重合モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記モノマー成分が前記環化重合モノマーを含むことにより、前記モノマー成分の重合によって得られる(メタ)アクリル重合体(A)を含む本発明の粘着剤組成物より得られる粘着シートは、耐熱性が向上する。
【0033】
前記モノマー成分に占める環化重合モノマーの比率は0.5~89.8質量%であり、好ましくは10.5~79.5質量%、より好ましくは20.0~70.0質量%である。
環化重合モノマーの比率を前記範囲とすることで、耐熱性に優れる粘着シートが得られる。
【0034】
(アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル)
アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデカ(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中でも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル重合体(A)の高分子量化が容易なn-ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0035】
前記アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記モノマー成分に占める、アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率は10.1~90.0質量%であり、好ましくは20.0~84.0質量%、より好ましくは26.0~79.0質量%である。
【0036】
アルキル基の炭素数が4~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率を前記範囲とすることで、(メタ)アクリル重合体の分子量を向上させられ、耐熱保持力に優れる粘着シートが得られる。
【0037】
(架橋性官能基含有モノマー)
架橋性官能基含有モノマーとしては、架橋性官能基として、ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも一方を有するモノマーが好ましく、ヒドロキシ基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーから選択される少なくとも1種のモノマーであることがより好ましい。
【0038】
前記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クロロ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコールが挙げられ、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。前記ヒドロキシ基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、3-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、4-カルボキシブチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸および無水マレイン酸が挙げられ、(メタ)アクリル酸が好ましい。前記カルボキシ基含有モノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記モノマー成分に占める記架橋性官能基含有モノマーの比率は0.1~9.5質量%であり、好ましくは0.5~5.5質量%、より好ましくは1.0~4.0質量%である。
架橋性官能基含有モノマーの比率を前記範囲とすることで、被着体からの剥離時に糊残りしづらく、耐熱性に優れる粘着シートが得られる。
【0041】
(他のモノマー)
前記モノマー成分に含まれ得る他のモノマーとしては、例えばアルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート、窒素原子含有モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、アセトアセチル基含有(メタ)アクリレート、芳香環含有モノマー、メタクリロキシプロピルメトキシシラン、酢酸ビニル、塩化ビニル、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
【0042】
前記アルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0043】
前記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0044】
前記窒素原子含有モノマーとしては、アミド基およびアミノ基の少なくとも一方の官能基を有するモノマーが挙げられ、具体的には(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-ビニルアセトアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマーが挙げられる。
【0045】
前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0046】
前記アセトアセチル基含有(メタ)アクリレートとしては、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
前記芳香環含有モノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエンを挙げることができる。
【0047】
前記他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記モノマー成分が前記他のモノマーを含む場合には、前記モノマー成分に占める他のモノマーの比率は、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.2~25質量%である。
【0048】
前記(メタ)アクリル重合体(A)のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、通常は10万~200万であり、粘着剤組成物の塗工性の観点および、得られる粘着シートの高温特性に特に優れる観点からは、20万~180万が好ましく、30万~150万がより好ましい。
【0049】
前記(メタ)アクリル重合体(A)の示差走査熱量計(DSC)により測定されるガラス転移温度(Tg)は、通常は0℃以下であり、好ましくは-80~0℃、より好ましくは-60~-10℃である。Tgが前記範囲内にあると、粘着剤層の被着体に対する密着性の観点から好ましい。また、Tgが前記下限値以上であると、粘着剤層の凝集力に優れ、耐久性向上の観点から好ましい。
【0050】
((メタ)アクリル重合体(A)の製造方法)
前記(メタ)アクリル重合体(A)は、モノマー成分を、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法および懸濁重合法等の従来公知の重合法により重合することで得ることができる。これらの中でも、溶液重合法により製造することが好ましい。(メタ)アクリル重合体(A)は、該重合体と、有機溶媒とからなるポリマー溶液として得てもよい。
【0051】
例えば、反応容器内に重合溶媒、モノマー成分を仕込み、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合開始剤を添加し、反応開始温度を通常40~100℃、好ましくは50~90℃に設定し、通常50~90℃、好ましくは60~90℃の温度に反応系を維持して、3~20時間反応させることにより(メタ)アクリル重合体(A)を得ることができる。
【0052】
重合開始剤としては、例えば、過酸化物系重合開始剤、アゾ系開始剤が挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、例えば、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ-i-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-アミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-α-クミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-オクチルパーオキシシクロヘキシル)ブタンが挙げられる。
【0053】
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)ジヒドレート、4,4'-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-シアノプロパノール)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0054】
重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合中に、重合開始剤を複数回添加することも制限されない。
重合開始剤は、(メタ)アクリル重合体(A)を形成するモノマー成分100質量部に対して、通常0.001~5質量部、好ましくは0.005~3質量部の範囲内の量で使用される。また、上記重合反応中に、重合開始剤、連鎖移動剤、重合性単量体、重合溶媒を適宜追加添加してもよい。
【0055】
溶液重合に用いる重合溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類等が挙げられる。
重合溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
[架橋剤(B)]
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル重合体(A)を架橋することができればよく、特に制限はない。架橋剤(B)としては、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物等の、前記(メタ)アクリル重合体(A)が有する架橋性官能基と反応し得る架橋剤を用いることができる。
前記架橋剤(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物としては、例えば、1分子中のイソシアネート基数が2以上のイソシアネート化合物が通常用いられ、1分子中のイソシアネート基数は好ましくは2~8であり、より好ましくは3~6である。イソシアネート基数が前記範囲にあると、(メタ)アクリル重合体(A)とイソシアネート化合物との架橋反応効率の点、および粘着剤層の柔軟性を保つ点で好ましい。
【0058】
1分子中のイソシアネート基数が2のジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数4~30の脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチルジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の炭素数7~30の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート等の炭素数8~30の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0059】
1分子中のイソシアネート基数が3以上のイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、4,4',4"-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0060】
また、イソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネート基数が2または3以上の上記イソシアネート化合物の、多量体(例えば2量体または3量体、ビウレット体、イソシアヌレート体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上のジイソシアネート化合物との付加反応生成物)、重合物が挙げられる。前記誘導体における多価アルコールとしては、低分子量多価アルコールとして、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリトール等の3価以上のアルコールが挙げられ、高分子量多価アルコールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールが挙げられる。
【0061】
このようなイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの3量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはトリレンジイソシアネートのビウレット体またはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの3分子付加物)、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物(例えばヘキサメチレンジイソシアネートの3分子付加物)、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートが挙げられる。
【0062】
イソシアネート化合物の中でも、難黄変性の点で、キシリレンジイソシアネート系およびヘキサメチレンジイソシアネート系の架橋剤が好ましく、応力緩和性の観点からトリレンジイソシアネート系の架橋剤が好ましい。キシリレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられ、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられ、トリレンジイソシアネート系架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネートおよびその多量体や誘導体、重合物が挙げられる。
【0063】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としては、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられ、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N'-ジアミングリシジルアミノメチル)が挙げられる。
【0064】
(金属キレート化合物)
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属に、アルコキシド、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等が配位した化合物が挙げられる。具体的には、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネートが挙げられる。
【0065】
前記粘着剤組成物中の架橋剤(B)の含有量としては、(メタ)アクリル重合体(A)100質量部に対して、通常は0.05~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.3~2.5質量部である。
このような態様であると、架橋構造が充分かつ適度に形成され、凝集力が高く、また粘着物性のバランスに優れ、耐久性に優れた粘着剤を得ることができる。
【0066】
[有機溶媒(C)]
前記粘着剤組成物は、塗工性を調整するために有機溶媒(C)を含有していてもよい。
有機溶媒(C)としては、前述の(メタ)アクリル重合体(A)の製造方法で挙げた有機溶媒が挙げられる。なお、(メタ)アクリル重合体(A)の製造時に使用した有機溶媒と、粘着剤組成物に含まれる有機溶媒(C)は同種の有機溶媒であっても、別種の有機溶媒であってもよい。有機溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
粘着剤組成物が有機溶媒(C)を含む場合、有機溶媒(C)の含有量は、粘着剤組成物100質量%中に、通常は30~90質量%、好ましくは40~90質量%である。
【0067】
[添加剤(D)]
前記粘着剤組成物は、上記(A)~(C)成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤(D)を含んでいてもよい。
添加剤(D)としては、例えば、粘着付与樹脂、シランカップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、金属腐食防止剤、可塑剤、架橋促進剤、およびリワーク剤が挙げられる。添加剤(D)としては、1種単独で用いても、2種以上を用いてもよい。前記粘着剤組成物が添加剤(D)を含有する場合、添加剤(D)の含有量は、添加剤(D)の種類によっても異なり、特に制限はないが、粘着剤組成物100質量%中に、通常は0.01~10質量%、好ましくは0.1~5質量%である。
【0068】
[粘着剤組成物の調製]
前記粘着剤組成物は、例えば、上記各成分を従来公知の方法により混合することで調製することができる。例えば、(メタ)アクリル重合体(A)を含む溶液と架橋剤(B)と必要に応じて用いられる添加剤等の他の成分とを混合することにより、粘着剤組成物を調製することができる。
【0069】
<粘着シート>
本発明の粘着剤組成物より粘着シートを得ることができる。前記粘着シートは、本発明の粘着剤組成物より作製された粘着剤層を有する。
粘着シートとしては、例えば、粘着剤層のみから形成される粘着シート、基材と基材の両面に形成された粘着剤層とを有し、少なくとも一方の粘着剤層が本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層である両面粘着シート、基材と基材の一方の面に形成された本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層とを有する片面粘着シート、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層の両面に基材が配置された粘着シートが挙げられる。
【0070】
前記基材としては、特に制限はなく、プラスチック基材、不織布、織布、紙、金属、ガラス、セラミックス、フォーム等が挙げられる。基材の厚さはその用途等によってもことなり、特に制限はないが、通常は5~200μmである。
【0071】
プラスチック基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンおよびABS等を挙げることができる。これらのうち、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリイミドおよびポチテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリイミドおよびポリテトラフルオロエチレンが特に好ましい。本発明の粘着剤組成物より得られる粘着シートは耐熱性に優れるため、はんだ付け工程保護に用いられる耐熱マスキング用途での使用に好適である。また、環化重合モノマーを共重合することによりポリマーの熱分解温度が向上し、加熱時に基材密着性を損ねる原因となるオリゴマーの生成が抑制される。そのため、本発明の粘着剤組成物は、耐熱マスキング用途で用いられるポリイミドやポリテトラフルオロエチレンとの密着性にも優れる。
【0072】
基材の表面は、表面の極性、より具体的には粘着剤組成物に対するぬれ性や化学親和性を改良するために、粘着層を形成する前に、例えばナトリウム処理、コロナ処理、プライマー処理、火炎処理、フッ素化又はプラズマ処理等によって、前処理されてもよい。基材がポリテトラフルオロエチレンの場合は、基材の表面を前処理することが好ましく、特にナトリウム処理、コロナ処理、プラズマ処理することが好ましい。
【0073】
基材は、剥離処理された基材であってもよい。粘着シートが、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層の両面に基材が配置された粘着シートである場合には、少なくとも一方の基材は、剥離処理された基材であり、被着体との接着時に、剥離処理された基材は除去される。
【0074】
粘着剤層の厚さは、粘着性能維持の観点から、通常は5~200μm、好ましくは10~100μmである。
粘着剤層は、その製造過程で粘着剤組成物中の、(メタ)アクリル重合体(A)と架橋剤(B)とが反応することにより、少なくとも一部が架橋されていてもよい。
【0075】
粘着シートの製造方法としては特に制限はないが、例えば以下のとおりである。前述の粘着剤組成物を基材上に塗布する。前記粘着剤組成物が溶媒を含有する場合、通常は50~150℃、好ましくは60~100℃で、通常は1~10分間、好ましくは2~7分間乾燥して溶媒を除去し、塗膜を形成する。続いて、塗膜の基材がない側の表面へ、別の基材を貼り合わせる。続いて、通常は1日以上、好ましくは3~10日間、通常は5~60℃、好ましくは15~40℃、通常は30~70%RH、好ましくは40~70%RHの環境下で養生し、粘着シートを製造する。前記養生を熟成ともいう。前記条件で熟成を行うと、熟成中に架橋が進行し、効率よく架橋体の形成が可能である。
【0076】
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法、例えばスピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ドクターブレード法により、所定の厚さになるように塗布・乾燥する方法を用いることができる。
【実施例】
【0077】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
下記の製造例における重量平均分子量(Mw)およびガラス転移温度(Tg)の測定は下記の方法で行った。
【0078】
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件で行った。
装置名:東ソー(株)製、HLC-8120
カラム:東ソー(株)製、G7000HXL(7.8mm I.D.×30cm)1本、GMHXL(7.8mm I.D.×30cm)2本、G2000HXL(7.8mm
I.D.×30cm)1本
サンプル濃度:1.5mg/cm3になるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0cm3/min
カラム温度:40℃
【0079】
(ガラス転移温度(Tg))
重合体を簡易密閉パンに封入し、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定を行った。測定は、窒素気流下、-100℃から200℃まで10℃/min.で昇温して熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される特徴的な変曲をTgとした。なお、Tgは、DSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
【0080】
[製造例1]
(アクリル重合体(A-1)の合成)
撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル8質量部、n-ブチルアクリレート90質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート2質量部、酢酸エチル90質量部仕込み、窒素ガスを導入しながら65℃に昇温した。次いで、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、窒素雰囲気下、65℃で8時間重合反応を行い、アクリル重合体(A-1)溶液を得た。
得られたアクリル重合体(A-1)のMwおよびTgを表1に示す。
【0081】
[製造例2~11]
配合組成を表1に記載したとおりに変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル重合体(A-2)~(A-10)、(A’-1)溶液を得た。
得られたアクリル重合体(A-2)~(A-10)および(A’-1)のMwおよびTgを表1に示す。
【0082】
【表1】
MeAMA:α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル
HxAMA:α-アリルオキシメチルアクリル酸ヘキシル
DdAMA:α-アリルオキシメチルアクリル酸n-ドデシル
HxED:ジ(n-ヘキシル)-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート
BA:n-ブチルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
AA:アクリル酸
【0083】
[実施例1]
(粘着剤組成物の調製)
アクリル重合体(A-1)溶液(固形分(アクリル重合体)換算100質量部)にイソシアネート系架橋剤L-45(綜研化学製)を固形分換算で2質量部を添加し、ガラス棒で、5分撹拌して粘着剤組成物を得た。
【0084】
(粘着シートの作製)
ポリイミド(PI)フィルム上に、得られた粘着剤組成物を、泡抜け後、ドクターブレードを用いて乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して粘着剤層を形成した。粘着剤層のPIフィルムと接している面とは反対側表面に、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせた。その後、23℃/50%RHの条件で7日間静置して熟成させて、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを製造した。
【0085】
[実施例2~9、比較例1]
配合組成を表2に記載したとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0086】
[実施例10]
アクリル重合体(A-1)溶液に代えてアクリル重合体(A-10)溶液を使用し、さらにイソシアネート系架橋剤L-45に代えてエポキシ系架橋剤E-5C(綜研化学製)を固形分換算で1質量部使用したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0087】
[実施例11]
アクリル重合体(A-1)溶液に代えてアクリル重合体(A-8)溶液を使用したこと、および、ポリイミド(PI)フィルムに代えて、ナトリウム処理したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0088】
前記実施例および比較例で得られた粘着剤組成物より、下記の方法で全光線透過率およびヘイズを測定した。また、実施例および比較例で得られた粘着シートの初期粘着力、耐熱粘着力および湿熱後粘着力を下記の方法で測定した。
【0089】
・全光線透過率およびヘイズ
剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、得られた粘着剤組成物を、泡抜け後、ドクターブレードを用いて乾燥後の厚さが25μmとなるように塗布し、90℃で3分間乾燥させて溶媒を除去して粘着剤層を形成した。粘着剤層の、剥離処理されたPETフィルムと接している面とは反対側表面に、剥離処理されたフィルムを貼り合わせた。その後、23℃/50%RHの条件で7日間静置して熟成させて、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを製造した。得られた粘着シートを50mm×50mmの大きさに裁断した後、片方の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層を厚さ0.5mmのガラス板に貼り合わせた。その後、もう一方の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、ヘイズメーターMH-150(村上色彩技術研究所製)を用いて全光線透過率およびヘイズを測定した。
【0090】
・初期粘着力
得られた粘着シートを25mm×100mmのサイズに裁断して試験片を得た。得られた試験片の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をSUS板に貼付して、2kgローラー3往復にて圧着した後、23℃/50%RH環境下に20分放置した。その後、SUS板面に対して180°方向に300mm/minの速度で試験片端部を引っぱり、粘着力を測定した。
【0091】
・耐熱粘着力
得られた粘着シートを25mm×100mmのサイズに裁断して試験片を得た。得られた試験片の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をSUS板に貼付して、2kgローラー3往復にて圧着した後、180℃環境下に2時間放置した。その後、23℃/50%RH環境下に20分放置した。SUS板面に対して180°方向に300mm/minの速度で試験片端部を引っぱり、粘着力を測定した。
また、得られた耐熱粘着力および初期粘着力から、下記式により粘着力変化率を求めた。
粘着力変化率[%]=(耐熱粘着力/初期粘着力)×100
【0092】
・湿熱後粘着力
得られた粘着シートを25mm×100mmのサイズに裁断して試験片を得た。得られた試験片の剥離処理されたPETフィルムを剥がし、露出した粘着剤層をSUS板に貼付して、2kgローラー3往復にて圧着した後、60℃/90%RH環境下に24時間放置した。その後、23℃/50%RH環境下に20分放置した。SUS板面に対して180°方向に300mm/minの速度で試験片端部を引っぱり、粘着力を測定した。
測定結果を表2に示す。
【0093】
上記初期粘着力、耐熱粘着力および湿熱後粘着力の測定において、比較例1の耐熱粘着力測定以外では、粘着シートの粘着剤層とSUS板との界面で剥離が生じる界面破壊(af)となった。このため、表2に示した比較例1の耐熱粘着力の数値以外は、粘着シートとSUS板との間の粘着力を表している。一方、比較例1の耐熱粘着力測定では、粘着シートのポリイミド(PI)フィルムと粘着剤層との界面で剥離が生じ、粘着剤層がSUS板上に移る転着となった。このため、表2に示した比較例1の耐熱粘着力の数値は、粘着シートとSUS板との間の粘着力を表していない。
【0094】
【0095】
表2より、実施例1~11で得られた粘着シートは、初期と熱環境下に晒された後との粘着力差が大きくなく、耐熱性に優れている結果となった。特に、環化重合モノマーが有するアルキル基の炭素数が6以上となる環化重合モノマーを用いて場合、環化重合モノマー使用量の増加によっても、得られる粘着剤層を低ヘイズに保つことができ、かつ、湿熱環境下に晒された場合であっても高粘着力を発現する結果となった(実施例4~8、11)。これに対し、環化重合モノマーを所定量含まないアクリル重合体を用いた比較例1の粘着シートは、粘着剤層と基材との密着性が悪く、耐熱性にも優れない結果となった。