(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241227BHJP
H02M 7/5387 20070101ALI20241227BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/5387 Z
(21)【出願番号】P 2021049653
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 仁
(72)【発明者】
【氏名】日下 佳祐
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/131384(JP,A1)
【文献】特開2013-192383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/5387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Hブリッジ回路を備える単相インバータ回路と、
前記Hブリッジ回路の高電位側に接続される第1電源線と、前記Hブリッジ回路の低電位側に接続される第2電源線との間に接続される入力コンデンサと、
前記第1電源線又は前記第2電源線と第1接続点との間に直列接続される第1直流電源と、リアクトルとを備える第1電源部と、
前記第1接続点と第2接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第1スイッチと、前記第1接続点と第3接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第2スイッチと、前記第2接続点に一端が接続され、前記第3接続点に他端が接続される第2直流電源とを備える第2電源部と、
前記第3接続点と前記第2電源線との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御し、又は前記第1電源線と前記第2接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第3スイッチと、
前記第1電源線と前記第2接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御し、又は前記第3接続点と前記第2電源線との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第4スイッチと、
前記単相インバータ回路に入力される電圧を、前記単相インバータ回路が出力する周波数の2倍の周波数で脈動させる制御部と
、
前記入力コンデンサの両端の電圧を検出する第1電圧検出部と、
前記第2直流電源の出力電圧を検出する第2電圧検出部と、
を備え、
前記制御部は、取得した前記入力コンデンサの両端の電圧と、前記第2直流電源の出力電圧とに基づき、前記入力コンデンサの両端の電圧が、前記第1直流電源及び前記第2直流電源のいずれの出力電圧よりも大きくなるよう前記第1スイッチ、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチのうち少なくともいずれかの導通状態を制御する、
電源装置。
【請求項2】
前記入力コンデンサの両端の電圧は、前記第1直流電源及び前記第2直流電源のいずれの出力電圧よりも大きい
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第4スイッチとは、前記第2接続点にアノードが接続され、前記第1電源線にカソードが接続されたダイオード、又は前記第2電源線にアノードが接続され前記第3接続点にカソードが接続されたダイオードである
請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記入力コンデンサの両端の電圧が、前記第1直流電源及び前記第2直流電源のいずれの出力電圧よりも大きくなるよう前記第1スイッチ、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチのうち少なくともいずれかの導通状態を制御する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電源の出力電圧を制御し、異なる電圧の直流電力貯蔵機器との間で電力の授受を行う双方向型のDC/DCコンバータが広く使用されている。このようなDC/DCコンバータにおいては、通常、直流電源と直流電力貯蔵機器のそれぞれが個別のリアクトルを要するが、単一のリアクトルを用いて同様の機能を実現するフライングキャパシタ型のDC/DCコンバータが報告されている(例えば、非特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】宮下他、「電流不連続モードを適用したフライングキャパシタ型DC-DCコンバータによるバッテリマネジメントシステムの動作検証」、電気学会研究会資料.SPC、半導体電力変換研究会、2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、太陽光電池のような、所定の条件によって出力電圧や負荷容量が変化する電源では、DC/DCコンバータとバッテリやコンデンサ等のエネルギー蓄積機器とを接続して使用する場合がある。また、家電等の多くの負荷機器は単相交流で稼働するものがあり、直流電源からインバータを用いて交流に変換している。従って、出力電圧が変動する直流電源を用いて交流電源とする場合は、DC/DCコンバータとインバータ装置とを接続して使用する場合があった。
上述したようなフライングキャパシタ型のDC/DCコンバータとインバータ装置とを接続して使用する場合、多数の電力変換用スイッチング素子とリアクトルで構成されているため、非常用電源としては、装置全体の小型化、高効率化や低コスト化に対して課題を有している。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、低コストで直流電源を交流電源に変換可能な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電源装置は、Hブリッジ回路を備える単相インバータ回路と、前記Hブリッジ回路の高電位側に接続される第1電源線と、前記Hブリッジ回路の低電位側に接続される第2電源線との間に接続される入力コンデンサと、前記第1電源線又は前記第2電源線と第1接続点との間に直列接続される第1直流電源と、リアクトルとを備える第1電源部と、前記第1接続点と第2接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第1スイッチと、前記第1接続点と第3接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第2スイッチと、前記第2接続点に一端が接続され、前記第3接続点に他端が接続される第2直流電源とを備える第2電源部と、前記第3接続点と前記第2電源線との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御し、又は前記第1電源線と前記第2接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第3スイッチと、前記第1電源線と前記第2接続点との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御し、又は前記第3接続点と前記第2電源線との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する第4スイッチと、前記単相インバータ回路に入力される電圧を、前記単相インバータ回路が出力する周波数の2倍の周波数で脈動させる制御部と、前記入力コンデンサの両端の電圧を検出する第1電圧検出部と、前記第2直流電源の出力電圧を検出する第2電圧検出部と、を備え、前記制御部は、取得した前記入力コンデンサの両端の電圧と、前記第2直流電源の出力電圧とに基づき、前記入力コンデンサの両端の電圧が、前記第1直流電源及び前記第2直流電源のいずれの出力電圧よりも大きくなるよう前記第1スイッチ、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチのうち少なくともいずれかの導通状態を制御する。
【0007】
本発明の一態様に係る電源装置において、前記入力コンデンサの両端の電圧は、前記第1直流電源及び前記第2直流電源のいずれの出力電圧よりも大きい。
【0008】
本発明の一態様に係る電源装置において、前記第4スイッチとは、前記第2接続点にアノードが接続され、前記第1電源線にカソードが接続されたダイオード、又は前記第2電源線にアノードが接続され前記第3接続点にカソードが接続されたダイオードであってもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る電源装置において、前記制御部は、前記入力コンデンサの両端の電圧が、前記第1直流電源及び前記第2直流電源のいずれの出力電圧よりも大きくなるよう前記第1スイッチ、前記第2スイッチ又は前記第3スイッチのうち少なくともいずれかの導通状態を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストで直流電源を交流電源に変換可能な電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係る電源装置の回路構成の一例を示す回路図である。
【
図2】第1の実施形態に係る電源装置が備える入力コンデンサの両端の電圧変動範囲の一例を示す図である。
【
図3】第1の実施形態に係る電源装置を、電流不連続モードを用いて、第1直流電源と第2直流電源との間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る電源装置を、電流連続モードを用いて、第1直流電源と第2直流電源との間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る電源装置を用いて、第1直流電源と単相インバータとの間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る電源装置を用いて、第2直流電源と単相インバータとの間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る電源装置の回路構成の一例を示す回路図である。
【
図8】従来技術によるフライングキャパシタ型コンバータ回路と単相インバータ回路とを組み合わせた場合における回路図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[従来技術]
図8は、従来技術によるフライングキャパシタ型コンバータ回路と単相インバータ回路とを組み合わせた場合における回路図の一例を示す図である。同図を参照しながら、従来技術による問題点について説明する。
回路90は、従来技術によるフライングキャパシタ型コンバータ回路91と、従来技術による単相インバータ回路92とを組み合わせた回路である。
【0014】
フライングキャパシタ型コンバータ回路91は、バッテリ911と、リアクトル912と、太陽電池913と、スイッチ914と、スイッチ915と、スイッチ916と、スイッチ917とを備える。フライングキャパシタ型コンバータ回路91は、スイッチ914と、スイッチ915と、スイッチ916と、スイッチ917とを所定のタイミングでスイッチング動作させることにより、バッテリ911及び太陽電池913間における電力の授受を行う。なお、バッテリ911及び太陽電池913は、電力を送受電可能な装置であればよい。
【0015】
単相インバータ回路92は、スイッチ923、スイッチ924、スイッチ925及びスイッチ926により構成されるHブリッジと、リアクトル921と負荷922とを備える。単相インバータ回路92は、Hブリッジを制御することにより、フライングキャパシタ型コンバータ回路91から供給される直流電力を単相交流電力に変換する。
【0016】
単相インバータ回路92は、入力コンデンサとして、コンデンサ927を備える。通常、単相インバータ回路の入力コンデンサには、大容量の電解コンデンサが用いられる。電解コンデンサは装置自体が大型であり、更に寿命が短いといった欠点がある。単相インバータ回路92に備えられるコンデンサ927は、当該欠点を補うべく、小容量のフィルムコンデンサが用いられる。そのため、コンデンサ927に与えられる電圧を高くし、単相インバータ回路92の入力電圧に、電源周波数(すなわち、単相インバータ回路30が出力する電力の周波数)の2倍の脈動を与えることを要する。
【0017】
回路90は、フライングキャパシタ型コンバータ回路91と単相インバータ回路92との接続において、リアクトル93と、スイッチ94と、スイッチ95とを備える。回路90は、スイッチ94と、スイッチ95とを所定のタイミングでスイッチング動作させることにより、リアクトル93に流れる電流を制御し、単相インバータ回路92の入力電圧として与えられる電圧を制御する。
【0018】
上述したように、従来技術によれば、フライングキャパシタ型コンバータ回路91と単相インバータ回路92との接続に、リアクトル93と、スイッチ94と、スイッチ95とを要する。したがって、リアクトル93、スイッチ94、及びスイッチ95が増える分だけ装置が大型化し、高コスト化してしまうといった問題があった。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る電源装置の回路構成の一例を示す回路図である。同図を参照しながら、第1の実施形態に係る電源装置1の回路構成の一例について説明する。
【0020】
[電源装置の回路構成]
電源装置1は、第1直流電源11と、リアクトル12と、第1スイッチS1と、第2スイッチS2と、第3スイッチS3と、第4スイッチS4と、第2直流電源21と、単相インバータ回路30と、入力コンデンサ40と、制御部50とを備える。第1直流電源11と、リアクトル12とを第1電源部10とも記載し、第1スイッチS1と、第2スイッチS2と、第2直流電源21とを第2電源部20とも記載する。
【0021】
単相インバータ回路30は、リアクトル31と、負荷32とを備える。また、単相インバータ回路30は、スイッチ33と、スイッチ34と、スイッチ35と、スイッチ36とを含んで構成されるHブリッジ回路を備える。
入力コンデンサ40は、Hブリッジ回路の高電位側に接続される第1電源線PL1と、Hブリッジ回路の低電位側に接続される第2電源線PL2との間に接続される。入力コンデンサ40は、小容量のフィルムコンデンサある。ここで、小容量とは、例えば88μF(マイクロファラド)程度であってもよい。
入力コンデンサ40の両端の電圧は、第1直流電源11の出力電圧よりも大きく、第2直流電源21の出力電圧よりも大きい。入力コンデンサ40の容量は、具体的には、入力コンデンサ40の両端の電圧が第1直流電源11及び第2直流電源21のいずれの出力電圧よりも大きくなるよう設定される。
【0022】
例えば、第1直流電源11の出力電圧が、入力コンデンサ40の両端の電圧よりも大きくなった場合、第1直流電源11に蓄えられた電力は、第1スイッチS1が有する寄生ダイオード成分と、第4スイッチS4が有する寄生ダイオード成分とを介して、入力コンデンサ40に流れる。したがって、第1直流電源11の出力電圧と、入力コンデンサ40の両端の電圧とは、略同一となる。ここで、略同一の範囲とは、リアクトル12、第1スイッチS1が有する寄生ダイオード成分及び第4スイッチS4が有する寄生ダイオード成分による電圧降下を考慮した範囲である。
【0023】
同様に、第2直流電源21の出力電圧が、入力コンデンサ40の両端の電圧よりも大きくなった場合、第2直流電源21に蓄えられた電力は、第4スイッチS4が有する寄生ダイオード成分と、第3スイッチS3が有する寄生ダイオード成分とを介して、入力コンデンサ40に流れる。したがって、第2直流電源21の出力電圧と、入力コンデンサ40の両端の電圧とは、略同一となる。ここで、略同一の範囲とは、第4スイッチS4が有する寄生ダイオード成分及び第3スイッチS3が有する寄生ダイオード成分による電圧降下を考慮した範囲である。
【0024】
第1直流電源11は、直流電力を出力可能な電源である。第1直流電源11は、太陽光電池のようなパワーフローが単一方向である電源であってもよく、バッテリのようにパワーフローが双方向である電源であってもよい。なお、本実施形態において、第1直流電源11は、直流負荷に置き換えることもできる。
リアクトル12は、第1直流電源11に直列接続される。
図1には、第1直流電源11の正極端子側にリアクトル12が直列接続される場合の一例について示す。リアクトル12は、第1直流電源11の負極端子側に直列接続されてもよい。
直列接続された第1直流電源11とリアクトル12とは、一端が第1接続点P1に接続され、他端が第2電源線PL2に接続される。すなわち、第1直流電源11と、リアクトル12とは、第2電源線PL2と第1接続点P1との間に直列接続される。
【0025】
第1スイッチS1は、第1接続点P1と第2接続点P2との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する。
第2スイッチS2は、第1接続点P1と第3接続点P3との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する。
第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、例えば、FET(Field effect transistor)であってもよい。第1スイッチS1及び第2スイッチS2がFETである場合、第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、制御部50によりゲート電圧を制御されることにより、コレクタ-エミッタ間に流れる電流値を制御される。
【0026】
第2直流電源21は、第2接続点P2に一端が接続され、第3接続点P3に他端が接続される。第2直流電源21は、太陽光電池のようなパワーフローが単一方向である電源であってもよく、バッテリのようにパワーフローが双方向である電源であってもよい。なお、本実施形態において、第2直流電源21は、直流負荷に置き換えることもできる。
【0027】
第3スイッチS3は、第3接続点P3と第2電源線PL2との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する。
第4スイッチS4は、第2接続点P2と第1電源線PL1との間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する。
第3スイッチS3及び第4スイッチS4は、例えば、FETであってもよい。第3スイッチS3及び第4スイッチS4がFETである場合、第3スイッチS3及び第4スイッチS4は、制御部50によりゲート電圧を制御されることにより、コレクタ-エミッタ間に流れる電流値を制御される。
【0028】
第4スイッチS4は、例えば、ダイオードであってもよい。第4スイッチS4がダイオードである場合、第2接続点P2にアノードが接続され第1電源線PL1にカソードが接続される。
図1に示す一例においては、FETである第4スイッチS4の有する寄生ダイオード成分を用いることにより、電流制御されてもよい。
【0029】
制御部50は、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4、スイッチ33、スイッチ34、スイッチ35及びスイッチ36(以下、単にスイッチと記載する。)の導通状態を制御する。具体的には、制御部50は、第1直流電源11及び第2直流電源21との間において電力の授受を行うようスイッチの導通状態を制御する。また、制御部50は、スイッチの導通状態を制御することにより第1直流電源11又は第2直流電源21の少なくともいずれかに蓄えられた電力を、単相交流電力に変換する。
また、制御部50は、第1直流電源11及び第2直流電源21の少なくともいずれかと、入力コンデンサ40との間における電力の授受を行うにあたり、入力コンデンサ40の平均電圧Vaveが所定の値になるようスイッチの導通状態を制御する。ここで所定の値とは、単相インバータ回路30の出力電圧の2倍の周波数で脈動する電圧V3の下限の電圧が第1直流電源11の電圧V1又は第2直流電源21の電圧V2の電圧のいずれの電圧よりも高くなるような値とする。
また、制御部50は、入力コンデンサ40の直流電圧をPWM制御によって単相系統電圧に変換する。したがって、制御部50の制御により入力コンデンサ40には、系統の2倍周波数の電圧リプル(ΔV)が発生する。当該電圧リプルは、入力コンデンサ40の容量と、負荷電力によって一義的に決まる。
【0030】
図2は、第1の実施形態に係る電源装置が備える入力コンデンサの両端の電圧変動範囲の一例を示す図である。同図を参照しながら、入力コンデンサ40の両端の電圧変動範囲について説明する。以降の説明において、入力コンデンサ40の両端の電圧をv3とも記載する。同図には、電圧V3の時間変化について、縦軸を電圧、横軸を時間として示す。
【0031】
制御部50は、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3及び第4スイッチS4を制御することにより、電圧V3を、単相インバータ回路30が出力する電源周波数の2倍の周波数で脈動させる。このとき、電圧V3は、下の式(1)で表される。
【0032】
【0033】
電圧V3の電圧変動範囲ΔVは、単相インバータ回路30における定数を用いて表されるため、すなわち電圧V3は、下の式(2)で表される。
【0034】
【0035】
このとき、電圧V3の電圧値が下の式(3)で表される最小値を取る場合においても、第2直流電源21の出力電圧よりも大きくなるよう設定される。
【0036】
【0037】
すなわち、入力コンデンサの両端の電圧をV3とし、単相インバータ回路の最大電力をPとし、単相インバータ回路の周波数をfとし、入力コンデンサの容量をCとしたときに、入力コンデンサの容量Cは、入力コンデンサ40の両端の電圧V3が上の式(3)式を満たす場合においても、入力コンデンサ40の両端の電圧V3が第2直流電源21の出力電圧よりも大きくなるよう設定される。
【0038】
上述した一例では、入力コンデンサ40の容量により、入力コンデンサ40の両端の電圧V3が第2直流電源21の出力電圧よりも大きくなるよう制御される場合の一例について説明したが、本実施形態においては、他の方法により電圧V3を第2直流電源21の出力電圧よりも大きくなるよう制御してもよい。
【0039】
例えば、不図示の第1電圧検出部により、入力コンデンサ40の両端の電圧V3を検出し、不図示の第2電圧検出部により、第2直流電源21の出力電圧を検出し、検出された入力コンデンサ40の両端の電圧V3と、第2直流電源21の出力電圧とに基づき、入力コンデンサ40の両端の電圧V3が、第2直流電源21の出力電圧よりも大きくなるよう第1スイッチS1、第2スイッチS2又は第3スイッチS3のうち少なくともいずれかの導通状態を制御してもよい。
【0040】
[第1直流電源と第2直流電源との間の電力の授受]
図3は、第1の実施形態に係る電源装置を、電流不連続モードを用いて、第1直流電源と第2直流電源との間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。同図を参照しながら、電流不連続モードを用いた場合の、第1直流電源11と第2直流電源21との間の電力の授受の一例について説明する。同図は、リアクトル12に流れる電流値を縦軸とし、その時間変化について、横軸を時間として示す。
【0041】
D1TSWの期間、制御部50は、第1スイッチS1を非導通状態に、第2スイッチS2及び第3スイッチS3を導通状態に制御する。第1直流電源11の正極側端子から、リアクトル12を介し、第1直流電源11の負極側端子に電流が流れる。すなわち、D1TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は増加する。
D2TSWの期間、制御部50は、第2スイッチS2を非導通状態に、第1スイッチS1及び第3スイッチS3を導通状態に制御する。第1直流電源11の電力に加え、リアクトル12に蓄えられた電力が、第2直流電源21に電力が供給される。すなわち、D2TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は減少する。
【0042】
電流不連続モードにおいては、リアクトル12に流れる電流がゼロとなる期間(すなわち、D3TSW)が存在する。具体的には、リアクトル12に流れる電流値の時間変化は、リアクトル12のリアクタンスに依存するため、リアクトル12によっては誤差が生じる場合がある。したがって、電流不連続モードにおいては、リアクトル12に流れる電流がゼロとなる期間を設けることにより、リアクトル12に流れる電流が衝突することを抑止する。D3TSWの期間は、理論的にはゼロであってもよい。
【0043】
D1TSWの期間と、D2TSWの期間とを入れ替えることにより、第2直流電源21の電力を第1直流電源11に供給することができる。
【0044】
なお、周期TSWは固定であってもよく、毎周期ごとに変化(すなわち周波数変調:PFM)させてもよい。
【0045】
図4は、第1の実施形態に係る電源装置を、電流連続モードを用いて、第1直流電源と第2直流電源との間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。同図を参照しながら、電流連続モードを用いた場合の、第1直流電源11と第2直流電源21との間の電力の授受の一例について説明する。同図は、リアクトル12に流れる電流値を縦軸とし、その時間変化について、横軸を時間として示す。
【0046】
電流連続モードにおいては、リアクトル12に流れる電流がゼロとなる期間(すなわち、D3TSW)が存在しない点において、上述した電流不連続モードとは異なる。電流不連続モードの説明において、既に説明した内容については、説明を省略する場合がある。
【0047】
電流連続モードにおいては、期間D3TSWを設けないため、リアクトル12に流れる電流がゼロとならず、電流変化が少ない。したがって、電流連続モードにおいては、電流変化が少ないため、ノイズが少なくなるメリットがある。一方、電流不連続モードでは、リアクトル12に流れる電流変化が大きいため、ノイズが大きくなるデメリットがある。
【0048】
また、電流連続モードにおいては、リアクトル12に流れる電流を検出することを要し、制御が複雑となるデメリットがある。一方、電流不連続モードでは、リアクトル12に流れる電流を検出することを要しないため、制御が容易となるメリットがある。
【0049】
また、電流連続モードにおいては、リアクトル12に流れる電流変化が小さいため、第1直流電源11の電圧を昇圧させるために、より大きいリアクタンスを有するリアクトル12を用いることを要するデメリットがある。一方、電流不連続モードでは、リアクトル12に流れる電流変化が大きいため、第1直流電源11の電圧を昇圧させるために、より小さいリアクタンスを有するリアクトル12を用いることができるというメリットがある。
【0050】
[第1直流電源又は第2直流電源と単相インバータとの間の電力の授受]
図5は、第1の実施形態に係る電源装置を用いて、第1直流電源と単相インバータとの間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。同図を参照しながら、第1直流電源11と単相インバータ回路30との間の電力の授受の一例について説明する。同図は、リアクトル12に流れる電流値を縦軸とし、その時間変化について、横軸を時間として示す。
【0051】
D1TSWの期間、制御部50は、第1スイッチS1を非導通状態に、第2スイッチS2及び第3スイッチS3を導通状態に制御する。第1直流電源11の正極側端子から、リアクトル12を介し、第1直流電源11の負極側端子に電流が流れる。すなわち、D1TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は増加する。
D2TSWの期間、制御部50は、第2スイッチS2及び第3スイッチS3を非導通状態に、第1スイッチS1及び第4スイッチS4を導通状態に制御する。第1直流電源11の電力に加え、リアクトル12に蓄えられた電力が、単相インバータ回路30に電力が供給される。すなわち、D2TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は減少する。
【0052】
D3TSWの期間、リアクトル12に流れる電流がゼロとなる。リアクトル12に流れる電流がゼロとなる期間を設けることにより、リアクトル12に流れる電流が衝突することを抑止する。D3TSWの期間は、理論的にはゼロであってもよい。
【0053】
なお、D2TSWの期間と、D1TSWの期間とを入れ替えることにより、リアクトル12に流れる電流は負となり、単相インバータ回路30から第1直流電源11に電力が供給される。
【0054】
D4TSWの期間、制御部50は、第1スイッチS1を非導通状態に、第2スイッチS2及び第3スイッチS3を導通状態に制御する。第1直流電源11の正極側端子から、リアクトル12を介し、第1直流電源11の負極側端子に電流が流れる。すなわち、D4TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は増加する。
D5TSWの期間、制御部50は、第1スイッチS1及び第3スイッチS3を非導通状態に、第2スイッチS2及び第4スイッチS4を導通状態に制御する。第1直流電源11の電力と、第2直流電源21と、リアクトル12に蓄えられた電力とが、単相インバータ回路30に電力が供給される。すなわち、D5TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は減少する。
【0055】
D6TSWの期間、リアクトル12に流れる電流がゼロとなる。リアクトル12に流れる電流がゼロとなる期間を設けることにより、リアクトル12に流れる電流が衝突することを抑止する。D6TSWの期間は、理論的にはゼロであってもよい。
【0056】
なお、D4TSWの期間と、D5TSWの期間とを入れ替えることにより、リアクトル12に流れる電流は負となり、単相インバータ回路30及び第2直流電源21から第1直流電源11に電力が供給される。
【0057】
なお、周期TSWは固定であってもよく、毎周期ごとに変化(すなわち周波数変調:PFM)させてもよい。
【0058】
図6は、第1の実施形態に係る電源装置を用いて、第2直流電源と単相インバータとの間の電力の授受をさせる場合におけるリアクトルに流れる電流値の時間変化の一例を示す図である。同図を参照しながら、第2直流電源21と単相インバータ回路30との間の電力の授受の一例について説明する。同図は、リアクトル12に流れる電流値を縦軸とし、その時間変化について、横軸を時間として示す。
【0059】
D1TSWの期間、制御部50は、第1スイッチS1を非導通状態に、第2スイッチS2及び第3スイッチS3を導通状態に制御する。第1直流電源11の正極側端子から、リアクトル12を介し、第1直流電源11の負極側端子に電流が流れる。すなわち、D1TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は増加する。
D2TSWの期間、制御部50は、第2スイッチS2及び第3スイッチS3を非導通状態に、第1スイッチS1及び第4スイッチS4を導通状態に制御する。第1直流電源11の電力に加え、リアクトル12に蓄えられた電力が、単相インバータ回路30に電力が供給される。すなわち、D2TSWの期間、リアクトル12に流れる電流は減少する。
このとき、第1直流電源11は、直前の周期TSWにおいて第2直流電源21から受けた電力を放出する。
【0060】
D3TSWの期間、リアクトル12に流れる電流がゼロとなる。リアクトル12に流れる電流がゼロとなる期間を設けることにより、リアクトル12に流れる電流が衝突することを抑止する。D3TSWの期間は、理論的にはゼロであってもよい。
【0061】
D5TSWの期間、制御部50は、第2スイッチS2及び第4スイッチS4を非導通状態に、第1スイッチS1及び第3スイッチS3を導通状態に制御する。第2直流電源21の電力が、第1直流電源11に供給されつつ、リアクトル12には電力が蓄積される。すなわち、D5TSWの期間、リアクトル12には、負の電流が流れる。
D4TSWの期間、制御部50は、第1スイッチS1を非導通状態に、第2スイッチS2及び第3スイッチS3を導通状態に制御する。リアクトル12に蓄えられた電力が、第1直流電源11に移動する。すなわち、D4TSWの期間、リアクトル12には、正の電流が流れる。
【0062】
なお、第1直流電源11の電力授受は、D1TSW及びD2TSWの期間に移行する電力と、D4TSW及びD5TSWの期間に移行する電力との収支により決定される。具体的には、D1TSW及びD2TSWの期間に移行する電力が、D4TSW及びD5TSWの期間に移行する電力より大きい場合には力行動作となり、D1TSW及びD2TSWの期間に移行する電力が、D4TSW及びD5TSWの期間に移行する電力より小さい場合には回生動作となる。また、D1TSW及びD2TSWの期間に移行する電力と、D4TSW及びD5TSWの期間に移行する電力とが等しい場合には、第1直流電源11は電力を授受しない。
【0063】
なお、周期TSWは固定であってもよく、毎周期ごとに変化(すなわち周波数変調:PFM)させてもよい。
【0064】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る電源装置の回路構成の一例を示す回路図である。同図を参照しながら、第1の実施形態に係る電源装置1Aの回路構成の一例について説明する。電源装置1Aは、電源装置1と等価な回路である。電源装置1Aの説明において、電源装置1と同様の構成については、同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
【0065】
電源装置1Aは、第1直流電源11Aと、リアクトル12Aと、第1スイッチS1Aと、第2スイッチS2Aと、第3スイッチS3Aと、第4スイッチS4Aと、第2直流電源21Aと、単相インバータ回路30と、入力コンデンサ40と、制御部50Aとを備える。第1直流電源11Aと、リアクトル12Aとを第1電源部10Aとも記載し、第1スイッチS1Aと、第2スイッチS2Aと、第2直流電源21Aとを第2電源部20Aとも記載する。
【0066】
電源装置1Aは、第1直流電源11に代えて第1直流電源11Aを備え、リアクトル12に代えてリアクトル12Aを備える。電源装置1Aは、第1直流電源11Aの負極端子側にリアクトル12Aが接続される点において、電源装置1とは異なる。直列接続された第1直流電源11Aとリアクトル12Aとは、一端が第1接続点P1Aに接続され、他端が第1電源線PL1に接続される。すなわち、第1直流電源11と、リアクトル12とは、第1電源線PL1と第1接続点との間に直列接続される。
【0067】
第1スイッチS1Aは、第1接続点P1Aと第3接続点P3Aとの間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する。第2スイッチS2Aは、第1接続点P1Aと第2接続点P2Aとの間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する。
第2直流電源21Aは、第2接続点P2Aに一端が接続され、第3接続点P3Aに他端が接続される。
【0068】
第3スイッチS3Aは、第1電源線PL1Aと第2接続点P2Aとの間に流れる電流を導通状態又は非導通状態に制御する。第4スイッチS4Aは、第2電源線PL2Aと第3接続点P3Aとの間に流れる電流を制御する。第4スイッチS4Aは、例えば、ダイオードであってもよい。第4スイッチS4Aがダイオードである場合、第2電源線PL2Aにアノードが接続され第3接続点P3Aにカソードが接続される。
【0069】
制御部50Aは、第1スイッチS1A、第2スイッチS2A、第3スイッチS3A、第4スイッチS4A、スイッチ33、スイッチ34、スイッチ35及びスイッチ36(以下、単にスイッチと記載する。)の導通状態を制御する。具体的には、制御部50は、第1直流電源11A及び第2直流電源21Aとの間において電力の授受を行うようスイッチの導通状態を制御する。また、制御部50Aは、スイッチの導通状態を制御することにより第1直流電源11A又は第2直流電源21Aの少なくともいずれかに蓄えられた電力を、単相交流電力に変換する。
【0070】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、電源装置1は、第1電源部10と、第2電源部20と、単相インバータ回路30と、入力コンデンサ40と、制御部50とを備えることにより、単相インバータ回路30に入力される電圧を、単相インバータ回路30が出力する周波数の2倍の周波数で脈動させる。よって、本実施形態によれば、入力コンデンサ40として小容量のフィルムコンデンサを用いることができるため、装置を低コストかつ小型化することができる。
また、本実施形態によれば、上述したような制御を行うことにより、従来技術では必要としていたリアクタンスやスイッチング素子等の素子を削減することができるため、低コストで直流電源を交流電源に変換可能な電源装置1を提供することができる。また、本実施形態によれば、装置を小型化することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、入力コンデンサ40の両端の電圧は、第2直流電源21の出力電圧よりも大きい。すなわち、単相インバータ回路30に入力される電圧が一番小さくなった場合においても、第2直流電源21の電圧値を下回ることがない。したがって、本実施形態によれば、入力コンデンサ40として小容量のフィルムコンデンサを用いることができるため、装置を低コストかつ小型化することができる。
【0072】
また、本実施形態によれば、入力コンデンサ40の容量は、入力コンデンサ40の両端の電圧が第2直流電源21の出力電圧よりも大きくなるよう設定される。すなわち、本実施形態によれば、コンデンサ容量を適切な値に設定することにより、制御部50が複雑な制御をすることなく、入力コンデンサ40の両端の電圧が、第2直流電源21の出力電圧を下回らない。したがって、本実施形態によれば、容易に直流電源を交流電源に変換することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、電源装置1は、第1電圧検出部を備えることにより入力コンデンサ40の両端の電圧を検出し、第2電圧検出部を備えることにより第2直流電源21の出力電圧を検出する。制御部50は、入力コンデンサ40の両端の電圧が、第2直流電源21の出力電圧よりも大きくなるよう各スイッチを制御する。よって、本実施形態によれば、入力コンデンサ40の両端の電圧が、第2直流電源21の出力電圧よりも小さくなることはない。
【0074】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1…電源装置、10…第1電源部、11…第1直流電源、12…リアクトル、20…第2電源部、21…第2直流電源、30…単相インバータ回路、31…リアクトル、32…負荷、33、34、35、36…スイッチ、40…入力コンデンサ、50…制御部、S1…第1スイッチ、S2…第2スイッチ、S3…第3スイッチ、S4…第4スイッチ、PL1…第1電源線、PL2…第2電源線、P1…第1接続点、P2…第2接続点、P3…第3接続点、91…フライングキャパシタ型コンバータ回路、92…単相インバータ回路