(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】基板洗浄装置および基板洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241227BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241227BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
H01L21/304 648A
H01L21/304 643B
H01L21/304 644E
H01L21/78 F
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2021081735
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】小林 恭子
(72)【発明者】
【氏名】清水 健
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-198407(JP,A)
【文献】特開2013-169474(JP,A)
【文献】特開2008-300644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を、保持手段にて保持し、基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄手段で洗浄する基板洗浄装置であって、
前記保持手段は、各基板小片を保持する保持部を有し、保持部の周りを包囲するように、正圧状態乃至大気開放状態となる洗浄液侵入低減室を設けるとともに、隣り合う洗浄液侵入低減室の間に仕切部を設けた
ものであり、前記保持部は、前記仕切部を構成する周囲枠部にて囲まれて負圧状態とされる負圧室からなり、前記洗浄液侵入低減室は、正圧状態となる正圧室であることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を、保持手段にて保持し、基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄手段で洗浄する基板洗浄装置であって、
前記保持手段は、各基板小片を保持する保持部を有し、保持部の周りを包囲するように、正圧状態乃至大気開放状態となる洗浄液侵入低減室を設けるとともに、隣り合う洗浄液侵入低減室の間に仕切部を設け、前記仕切部は、基板小片が保持手段にて保持されている状態で、座屈変形及び圧縮変形しない剛性を有することを特徴とす
る基板洗浄装置。
【請求項3】
基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を、保持手段にて保持し、基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄手段で洗浄する基板洗浄装置であって、
前記保持手段は、各基板小片を保持する保持部を有し、保持部の周りを包囲するように、正圧状態乃至大気開放状態となる洗浄液侵入低減室を設けるとともに、隣り合う洗浄液侵入低減室の間に仕切部を設け、前記洗浄手段は、洗浄液を被洗浄面に吹き付ける洗浄液吹き付け機構を備えることを特徴とす
る基板洗浄装置。
【請求項4】
基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を、保持手段にて保持し、基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄手段で洗浄する基板洗浄装置であって、
前記保持手段は、各基板小片を保持する保持部を有し、保持部の周りを包囲するように、正圧状態乃至大気開放状態となる洗浄液侵入低減室を設けるとともに、隣り合う洗浄液侵入低減室の間に仕切部を設け、前記洗浄手段は、少なくとも洗浄ローラと洗浄ブラシのいずれかを有する洗浄構造を備え、この洗浄構造から洗浄液が供給されることを特徴とす
る基板洗浄装置。
【請求項5】
基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を形成する切断ステージで、基板小片の他方の面が洗浄された基板小片を、前記保持手段にて保持することを特徴とする請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄する基板洗浄方法であって、
正圧状態乃至大気開放状態となる洗浄液侵入低減室にて、各基板小片を保持している保持部の周囲を包囲し、かつ、隣り合う洗浄液侵入低減室を仕切部にて仕切った状態で、基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄液にて洗浄する
ものであり、前記保持部は、前記仕切部を構成する周囲枠部にて囲まれて負圧状態とされる負圧室からなり、前記洗浄液侵入低減室は、正圧状態となる正圧室であることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板洗浄方法であって、基板を切断して個片化して、その個片化されてなる基板小片を形成する切断ステージで、基板小片の他方の面を洗浄し、その後、前記基板洗浄方法にて、基板小片の一方の面を洗浄することを特徴とする基板洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄装置および基板洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU基板(マザーボード)を製造する場合、
図10に示すように、複数の回路パターンを形成した基板151を形成した後、この基板151を切断分離装置にて切断して個片化することによって、複数個のマザーボード152となる。
図10において、154は切断線を示し、155は廃材としての基板端材を示している。
【0003】
ところで、基板を個片化する場合、切断によって切り屑や樹脂カス等の汚染物が生じる。このように汚染物が生じた場合、個片化された複数の製品に付着するおそれがあった。そこで、従来には、このような汚染物を洗浄するための構造(洗浄手段)を備えたものがある(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に示す基板切断装置は、切削物と回転刃に加工水を供給するためノズルを備えたものである。ノズルとして、切削水供給ノズルと、冷却水供給用ノズルと、洗浄水供給ノズルを備える。
【0005】
すなわち、基板切断装置は、基板を切断用テーブル(切断ステージ)上に吸着乃至粘着支持し、この状態で、回転刃にて切断して基板を個片化して基板小片を形成するものである。その切断時に、切削水供給ノズルからは回転刃と回転刃が接触する被加工点に向かって切削水が噴射され、冷却水供給用ノズルからは回転刃の側面に向かって冷却水が噴射され、洗浄水供給ノズルからは基板に向けて切削水が噴射される。
【0006】
このため、基板の表面を洗浄する(クリーン化)することが可能であるが、このような装置では、基板の裏側を洗浄することができない。そこで、基板の裏側を洗浄する場合、
図9(a)(b)に示すように、基板151を個片化してなる基板小片151aを上方から吸着保持する吸着シート100を用いるものがある。この吸着シート100で基板151を保持している状態で、下方を向いている基板151の一方の面を洗浄面として、この洗浄面に下方から高圧水等の洗浄液を噴射することになる。
【0007】
この場合の吸着シート100は、平板形状のシート本体101と、このシート本体101の下面に付設されるシート副体102とを備えたものであり、シート副体102に、複数の吸引室(真空室)103が形成されている。シート本体101には、吸引室103に連通される吸引孔104が設けられ、吸引孔104に、図示省略のエア吸引手段が連設されている。なお、エア吸引手段としては、真空ポンプやエジェクタ等の真空発生器で構成できる。
【0008】
このため、エア吸引手段を駆動することによって、吸引孔104を介して吸引室103のエアが吸引され、この吸引室103が負圧室となる。このため、基板151の各基板小片1aがこの吸着シート100に吸着される。このように、基板151が吸着シート100にて吸着保持されている状態で、上述したように、下方を向いている基板151の一方の面(各基板小片151aの裏面)を洗浄面として、この洗浄面に下方から高圧水等の洗浄液を噴射することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図9(a)(b)に示すような吸着シート100を用いれば、吸着シート100内に基板の切断端面間の隙間から、吸着シート100の吸引室103間に洗浄液が入りこみ、さらには、吸引室103にも洗浄液が入り込むことになる。このため、洗浄液とともに汚染物が基板151の吸着シート吸着面(上方を向いた面である被洗浄面)側に侵入することになる。このため、切断時にクリーン化した上面に汚染物を付着させる場合がある。このような場合、再度、上面を洗浄する必要が生じる。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みて、洗浄している被洗浄面と反対側の面(吸着面)側に切断屑等の汚染物の付着を低減できる基板洗浄装置および基板洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の基板洗浄装置は、基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を、保持手段にて保持し、基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄手段で洗浄する基板洗浄装置であって、前記保持手段は、各基板小片を保持する保持部を有し、保持部の周りを包囲するように、正圧状態乃至大気開放状態となる洗浄液侵入低減室を設けるとともに、隣り合う洗浄液侵入低減室の間に仕切部を設けたものである。この場合、例えば、保持手段にて基板小片を上方から保持し、下方を向いている基板小片の一方の面(例えば、裏面)を被洗浄面として洗浄手段にて洗浄する。
【0013】
本発明の基板洗浄装置によれば、保持部の周りに洗浄液侵入低減室が設けられているので、保持部内への、洗浄液乃至基板を個片化する際に生じた切り屑等の侵入を低減できる。しかも、仕切部にて基板(基板小片)の姿勢を平面姿勢に維持でき、保持部に対して基板小片の傾きを抑制でき、傾きが生じたことによる保持部と基板小片との間、洗浄液が侵入する隙間が生じ難くなる。
【0014】
前記保持部は、前記仕切部を構成する周囲枠部にて囲まれて負圧状態とされる負圧室からなり、前記洗浄液侵入低減室は、正圧状態となる正圧室であるように構成できる。このように構成することによって、各基板小片を安定して吸着保持でき、しかも、洗浄液侵入低減室が正圧室となるので、この洗浄液侵入低減室への洗浄液が侵入する吸引力が作用せずむしろ外部へ流出させるような力が生じ、侵入を有効に低減できる。
【0015】
前記保持部は、吸着パッドにて構成するとともに、洗浄液侵入低減室は、吸着パッドを包囲する大気開放室にて構成することも可能である。このように構成することによって、各基板小片を安定して吸着保持でき、しかも、洗浄液侵入低減室は、大気開放室であるので、洗浄液侵入低減室への洗浄液が侵入する吸引力が作用せず、侵入を低減できる。
【0016】
前記仕切部は、基板小片が保持手段にて保持されている状態で、座屈変形及び圧縮変形しない剛性を有するものが好ましい。このように構成することによって、仕切部によって、安定して基板小片の集合体を平面上に配設することができる。
【0017】
洗浄手段は、洗浄液を被洗浄面に吹き付ける洗浄液吹き付け機構を備えたものであっても、少なくとも洗浄ローラ及び洗浄ブラシのいずれかを有する洗浄構造を備え、この洗浄構造から供給されるものであってもよい。また、ローラやブラシ等を用いる場合、これらに、洗浄液が供給されて保持されたものであってもよい。
【0018】
基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を形成する切断ステージで、基板小片の他方の面が洗浄された基板小片を、前記吸着手段にて吸着保持するものであってもよい。このように構成することよって、基板小片の一方の面を洗浄する際に、切断ステージ側で洗浄された基板小片の表面を汚すことがない。このため、基板小片の各面の洗浄はそれぞれ1回に終わり、この基板洗浄装置の洗浄機構の数を少なくでき、装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0019】
本発明の基板洗浄方法は、基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄する基板洗浄方法であって、正圧状態乃至大気開放状態となる洗浄液侵入低減室にて、各基板小片を保持している保持部の周囲を包囲し、かつ、隣り合う洗浄液侵入低減室を仕切部にて仕切った状態で、基板小片の一方の面を被洗浄面として洗浄液にて洗浄するものである。
【0020】
本発明の基板洗浄方法によれは、保持部の周りに洗浄液侵入低減室が設けられているので、保持部内への、洗浄液乃至基板を個片化する際に生じた切り屑等の侵入を低減できる。しかも、仕切部にて基板(基板小片)の姿勢を平面姿勢に維持でき、保持部に対して基板小片の傾きを抑制でき、傾きが生じたことによる保持部と基板小片との間、洗浄液が侵入する隙間等が生じ難くなる。
【0021】
前記板洗浄方法を行う基板洗浄方法であって、基板を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片を形成する切断ステージで、基板小片の他方の面を洗浄し、その後、前記基板洗浄方法にて、基板小片の一方の面を洗浄するものである。
【0022】
このような基板洗浄方法を行えば、基板小片の一方の面を洗浄する際に、切断ステージ側で洗浄された基板小片の他方の面を汚すことがない。このため、基板小片の各面の洗浄はそれぞれ1回で終わり、この基板洗浄装置の洗浄機構の数を少なくでき、装置のコンパクト化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、基板小片の集合体に対して、一方の面を洗浄している際に、他方の面への汚染物の付着を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の基板洗浄装置の要部拡大断面図である。
【
図2】
図1に示す基板洗浄装置の要部底面図である。
【
図3】
図1に示す基板洗浄装置の簡略構成ブロック図である。
【
図4】本発明の第2の基板洗浄装置の要部拡大断面図である。
【
図7】基板の切断線形成順序を示し、(a)はX軸方向の切断線を形成した状態の簡略図であり、(b)は(a)の状態から90°回転させてY方向の切断線を形成した状態の簡略図である。
【
図8】
図6に示す基板切断装置を用いて基板に切断線をマトリックス状に形成した状態の簡略図である。
【
図9】基板小片の集合体における各基板小片の裏面を洗浄する際に、用いる粘着シートを示し、(a)は要部底面図であり、(b)は要部断面図である。
【
図10】基板に切断線をマトリックス状に形成した状態の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明の実施の形態を
図1~
図8に基づいて説明する。
図6は本発明に係る洗浄装置での洗浄前の基板切断に使用する基板切断装置を示している。基板切断装置は、基板1を受けるテーブル2と、このテーブル2上の基板1を切断分離する切断手段3等を備える。
【0026】
基板1は、複数の回路パターンを形成したものであって、個片化して、CPU基板(マザーボード基板)である基板小片1aを形成するものである。
図7及び
図8に示すように、基板1にマトリックス状の切断線L1,L2を作成することによって、製品としての基板小片1aを形成した場合、基板1の4つの辺側に、廃材としての前記基板端材1bが形成される。
【0027】
テーブル2は、その上壁が平面視において正方形状をなし複数個に分割された小ブロック片部10を形成している。すなわち、小ブロック片部10は、この切断装置にて切断分離されて形成される基板小片1aに対応する。そして、このテーブル2には、基板小片1aが各小ブロック片部10に吸着される吸着手段11が付設される。吸着手段11は、図示省略の真空機構を備え、テーブル内には、真空通路12が形成される。また、各小ブロック片部10には吸引口13が設けられ、この吸引口13が真空通路12に連通している。このため、真空機構を駆動させて、真空通路12を負圧状態とすることによって、吸引口13を介して、各基板小片1aが各小ブロック片部10に吸着される。なお、真空機構としては、真空ポンプや真空エジェクタ等が使用される。
【0028】
また、このテーブル2は、図示省略の回転駆動機構によって、その中心部を中心にθ方向に回転する。なお、回転駆動機構は、例えば、駆動用モータ(サーボモータ等)と、この駆動用モータの回転駆動力をテーブル2に伝達する駆動力伝達機構とからなる。駆動力伝達機構としては、ギア機構やベルト機構等から構成することができる。
【0029】
切断手段3は、円盤状のカッタ15と、このカッタ15をその軸心周りに回転させるモータ16と、冷却媒体(例えば、冷却水)を噴射する噴射機構とを備える。噴射機構は、回転駆動するカッタ15の近傍に配置される冷却用噴射ノズル(図示省略)を有し、図外の冷却媒体供給源からの冷却媒体を冷却用噴射ノズルを介してカッタ15乃至カッタ15による基板1の切断部位に噴き付けることになる。
【0030】
この場合、カッタ15とモータ16と噴射ノズル等で構成される基板切断部MがXYZ移動機構(図示省略)によって、相互に直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動することができる。ここで、X軸方向とY軸方向とは、水平面内での
図4の座標で示す方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。XYZ移動機構は、XYZ軸ステージやXYZアームを用いることができる。
【0031】
また、この基板切断装置には、洗浄水を基板1の表面(具体的には、基板小片1aの表面)に洗浄液を噴射する図示省略の洗浄手段が設けられている。
【0032】
次に前記したように構成された基板切断装置を用いた基板1の切断分離方法を説明する。まず、テーブル2上に基板1を載置する。そして、吸着手段11にて、各小ブロック片部10ごとに基板1を吸着する。この状態で、基板切断部Mを、XYZ移動機構の駆動によって、
図7(a)に示すように、基板1に対して切断線L1を形成する。
【0033】
すなわち、基板切断部MをZ軸方向に沿って上昇させた状態からZ軸方向に沿って下降させて、
図7(a)の座標軸で示すX軸方向に沿って移動させることによって、基板に対してX軸方向の切断線L1を形成することができる。この場合、基板切断部Mが2機あれば、まず、一方の基板切断部Mで前方側の切断線L1を形成するとともに、他方の基板切断部Mで後方側の切断線L1を形成する。
【0034】
その後、各基板切断部MをZ軸方向に沿って上昇させた後、一方の基板切断部Mを所定ピッチだけY軸方向後方側に移動させ、次に上昇させた状態からZ軸方向に沿って下降させて、X軸方向に沿って移動させる。これによって、基板1に対して、前回のX軸方向の切断線L1よりも所定ピッチだけY軸方向後方側にずれたX軸方向の切断線L1を形成することができる。また、他方の基板切断部Mを所定ピッチだけY軸方向前方側に移動させ、次に上昇させた状態からZ軸方向に沿って下降させて、X軸方向に沿って移動させる。これによって、基板に対して、前回のX軸方向の切断線L1よりも所定ピッチだけY軸方向前方側にずれたX軸方向の切断線L1を形成することができる。
【0035】
以後同様に、所定ピッチだけY軸方向にずれたX軸方向の切断線L1を、順次形成していけば、
図7(a)に示すように、基板のY軸方向全範囲に、所定ピッチだけY軸方向にずれた複数本のX軸方向の複数本の切断線L1を形成できる。
【0036】
次に、回転駆動機構にて、
図7(b)に示すように、テーブルを90°回転させれば、前記形成された切断線L1は、基板のX軸方向全範囲に、所定ピッチだけX軸方向にずれた複数本のY軸方向の複数本の切断線となる。
【0037】
そこで、前記した工程を行うことによって、
図7(b)に示すように、基板のY軸方向全範囲に、所定ピッチだけY軸方向にずれた複数本のX軸方向の複数本の切断線L2を形成する。これによって、
図8に示すように、基板1にマトリックス状の切断線L1,L2を形成することができ、基板1の個片化が可能となる。
【0038】
ところで、切断線L1,L2の形成時には、切断手段3では冷却媒体(冷却水)が噴射され、図示省略の洗浄手段にて、基板1に洗浄液(洗浄水)が噴射され、基板1の表面が洗浄される。なお、噴射された洗浄水(洗浄剤)を乾燥させる乾燥手段(例えば、温風吹き付け機構)を備えたものであってもよい。
【0039】
この装置では、XYZ移動機構、回転駆動機構、及び切断手段3等が、図示省略のコンピュータにて制御され、前記切断工程が実施される。コンピュータは、基本的には、入力機能を備えた入力手段と、出力機能を備えた出力手段と、記憶機能を備えた記憶手段と、演算機能を備えた演算手段と、制御機能を備えた制御手段にて構成される。入力機能は、外部からの情報を、コンピュータに読み取るためのものであって、読み込まれたデータやプログラムは、コンピュータシステムに適した形式の信号に変換される。出力機能は、演算結果や保存されているデータなどを外部に表示するものである。記憶手段は、プログラムやデータ、処理結果などを記憶して保存するものである。演算機能は、データをプログラムの命令に随って、計算や比較して処理するものである。制御機能は、プログラムの命令を解読し、各手段に指示を出すものであり、この制御機能はコンピュータの全手段の統括をする。入力手段には、キーボード、マウス、タブレット、マイク、ジョイスティック、スキャナ、キャプチャーボード等がある。また、出力手段には、モニタ、スピーカー、プリンタ等がある。記憶手段には、メモリ、ハードディスク、CD・CD-R,PD・MO等がある。演算手段には、CPU等があり、制御手段には、CPUやマザーボード等がある。
【0040】
このように、表面の洗浄が済んだ基板小片1aの集合体の裏面を本発明に係る基板洗浄装置で洗浄することになる。基板洗浄装置は、
図3に示すように、基板1と個片化した基板小片1aを保持する保持手段20と、この吸着手段17にて吸着されている基板小片1aの下面を洗浄する洗浄手段18とを備える。また、吸着手段17は、この実施形態では、吸着盤26を備える。吸着盤26は、
図1に示すように、第1層21と第2層22と第3層23とからなる吸着盤本体24と、この吸着盤本体24の下面24aに付設される基板吸着シート層25とを有する。ところで、この実施形態では、保持手段20として基板小片1aのいずれか一方の面を吸着保持する吸着手段17を用いている。
【0041】
基板吸着シート層25は、
図2に示すように、正方形状の複数の仕切部(柱部)27と、吸着盤26の外周を包囲する外枠壁28とで構成される。仕切部27内に、第3層23に形成される吸引孔30が開口し、仕切部27内が負圧状態となる負圧室31とされ、仕切部27の周りの空間内に、正圧供給孔32が開口し、負圧室31間に正圧状態となる正圧室33とされる。
【0042】
このため、吸引孔30は、第2層22に設けられた連通孔34に連通され、各連通孔34は、吸着盤26の外部の図示省略の吸引配管に接続されている。また、吸引配管に、図示省略エア吸引手段を構成する真空ポンプやエジェクタ等の真空発生器が接続されている。なお、連通孔34は、第3層23側の小径孔34aと、第1層21側の大径孔34bとからなり、小径孔34aが吸引孔30に連通される。
【0043】
また、正圧供給孔32は、小径のノズル部32aと、大径の中径室32bとを有し、第2層22に設けられた連通孔35に連通され、この連通孔35が、第1層21に設けられた供給配管36に接続される。なお、連通孔35は、第3層23側の小径孔35aと、第1層21側の大径孔35bとからなり、小径孔35aが正圧供給孔32の中径室32bに接続される。供給配管36に、正圧空気を供給する正圧空気供給部(図示省略)が接続されている。
【0044】
このため、真空発生器を駆動することによって、仕切部27内が負圧状態とって負圧室31となる。このため、各負圧室31が基板1の基板小片1aを保持(吸着保持)する保持部(吸着部40)を構成する。また、正圧空気供給部から、供給配管36に正圧空気を供給することによって、吸着部40の周りを包囲する正圧状態の洗浄液侵入低減室41を形成することができる。
【0045】
また、
図1に示すように、隣り合う洗浄液侵入低減室41の間に仕切部27が形成されているということができる。この場合、吸着部40にて、基板1の基板小片1aを吸着保持している状態(この場合、洗浄液侵入低減室41は正圧状態)で、仕切部27が座屈変形及び圧縮変形しない剛性を有する。しかしながら、基板吸着シート層25の下面が基板1の上面に密接するため、金属製では基板1を傷付けるおそれがあるため、この基板吸着シート層25としては、ゴム硬度が70~90程度のゴム材にて構成される。ゴム硬度は、JIS-K6253に準拠し、23℃の環境下におけるデュロメータータイプAによる硬さである。
【0046】
ところで、この吸着盤26は、移動手段19にて、相互に直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動することができる。ここで、X軸方向とY軸方向とは、水平面内での相互に直交する方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。XYZ移動機構は、XYZ軸ステージやXYZアームを用いることができる。
【0047】
また、洗浄手段18は、
図1に示すように、洗浄液噴射ノズル42を有する洗浄液吹き付け機構を備えたものである。この洗浄液噴射ノズル42に図示省略の洗浄液供給源から供給され、洗浄液噴射ノズル42の洗浄液が、複数の基板小片1aからなる集合体の裏面に噴射される。洗浄液吹き付け機構の洗浄液噴射ノズル42は、基板1の下方に所定ピッチで複数本が配設される。この場合、洗浄液噴射ノズル42の数や配設ピッチは、基板1の大きさ等により任意に設定できる。このため、図例では、洗浄液噴射ノズル42から洗浄液が上方に向けて噴射される。なお、洗浄液噴射ノズル42として、基板1に対して、斜め下方から洗浄液が噴射されるものであってもよい。
【0048】
ところで、吸着手段17、洗浄手段18、及び移動手段19は、
図3に示すように、基板切断装置で備えていたコンピュータと同様の図示省略のコンピュータにて制御される。
【0049】
次に、
図1と
図2に示す洗浄装置にて、複数の基板小片1aからなる集合体の洗浄方法を説明する。まず、基板切断装置で、個片化された基板1における複数の基板小片1aからなる集合体の上面を、吸着盤26で吸着保持する。この場合、負圧室31からなる各吸着部40にて、各基板1の基板小片1aの上面を吸着保持する。すなわち、複数の基板小片1aの集合体を吸着盤26で吸着保持する。
【0050】
この状態で、移動手段19を介して、洗浄手段18を有する位置に吸着盤26を搬送する。すなわち、複数の基板小片1aの集合体を切断ステージから洗浄ステージに搬送することになる。そして、洗浄手段18を有する洗浄ステージで、各基板小片1aの下面(裏面)を洗浄することになる。
【0051】
この場合、洗浄手段18にて洗浄液を各基板小片1aの下面(裏面)に向けて噴射する際には、吸着盤26の正圧室33を正圧状態とする。また、この洗浄の際には、吸着盤26側と洗浄手段18側とを相対的に移動させて、全基板小片1aの下面(裏面)を洗浄できるようにする。このため、吸着盤26側のみを移動させても、洗浄手段18側のみを移動させても、吸着盤26側及び洗浄手段18側の両者を移動させてもよい。なお、洗浄手段18側を移動させる場合、洗浄液噴射ノズルを図示省略に移動手段を介して移動させる必要があり、この移動手段として、吸着盤26を移動させる移動手段19と同様な構成で構成できる。
【0052】
本発明の基板洗浄装置によれば、吸着部40の周りに正圧室33が形成されるので、正圧室33が、洗浄液の侵入を低減する洗浄液侵入低減室41となる。これによって、吸着部50内への、洗浄液乃至基板を個片化する際に生じた切り屑等の侵入を低減できる。しかも、仕切部27にて基板1(基板小片1a)の姿勢を平面姿勢に維持でき、吸着部40に対して基板小片1aが傾くのを抑制でき、傾きが生じたことによる吸着部40と基板小片1aとの間に、洗浄液が侵入する隙間が生じ難くなる。
【0053】
基板小片1aの集合体に対して、その下面を洗浄している際に、その上面への汚染物の付着を低減でき、上面の再度の洗浄作業を行わなくてもよく、基板小片1aの集合体の洗浄を効率よく行うことができる。ここで、「汚染物の付着を低減でき」とは、被洗浄面と相違する非洗浄面を再度洗浄することの必要がない程度に非洗浄面への汚染物の付着を低減できることを意味する。すなわち、非洗浄面側を再度洗浄することなく、被洗浄体である基板1(基板小片1a)を製品として使用できるものであればよい。
【0054】
吸着部40は、仕切部27を構成する周囲枠部にて囲まれて負圧状態とされる負圧室31からなり、洗浄液侵入低減室41は、正圧状態となる正圧室33であるように構成できる。このように構成することによって、各基板小片1aを安定して吸着保持でき、しかも、洗浄液侵入低減室41が正圧室33となるので、この洗浄液侵入低減室41への洗浄液が侵入する吸引力が作用せずむしろ外部へ流出させるような力が生じ、侵入を有効に低減できる。
【0055】
仕切部27は、基板小片1aが吸着手段17にて吸着保持されている状態で、座屈変形及び圧縮変形しない剛性を有するものが好ましい。このように構成することによって、仕切部27によって、安定して基板小片1aの集合体を平面上に配設することができる。
【0056】
次に、
図4は、吸着盤26の他の実施形態を示し、この場合の吸着盤26は、第1層46と、第2層47とからなり、第2層47に、吸着パッド構造48にて構成される吸着部が設けられている。すなわち、第2層の47の下面に吸着パッド構造48が収納されて大気開放状となる洗浄液侵入低減室41を構成する大気開放室54が設けられる。
【0057】
吸着パッド構造48は、ゴムや樹脂等の弾性材からなる吸着パッド50と、この吸着パッド50が支持されるパッド支持部51とを備えたものであり、図示省略の真空ポンプ等の真空発生器が駆動することによって、パッド支持部51内の吸引孔51aを介して吸着パッド50内のエアが吸引される。この場合、第2層47にパッド支持部51の吸引孔51aに連通される連通孔52が形成され、そして、各連通孔52が連結孔53を介して真空発生器に接続される。
【0058】
このため、真空発生器が駆動することによって、吸着パッド50内のエアが吸引される。各基板小片1aがこの吸着パッド50にて吸着保持される。すなわち、この実施形態では、この吸着パッド50が基板小片1aを吸着保持する吸着部40を構成する。
【0059】
また、この吸着パッド構造48を収納する大気開放室54には、第2層47に設けられた連通孔55に連通され、この連通孔55が、第2層47に設けられて連結路57を介して、第1層46に設けられた大気開放孔56が接続される。このため、大気開放室54が大気開放状となって、吸着部40の周りに洗浄液侵入低減室41が形成されることになる。
【0060】
この実施形態においても、洗浄手段18は、基板1の下方に、複数の洗浄液噴射ノズル42が配設されてなる洗浄液吹き付け機構で構成される。この場合も、洗浄液噴射ノズル42の数や配設ピッチは、基板1の大きさ等により任意に設定できる。
【0061】
次に、
図4に示す洗浄装置を用いて、複数の基板小片1aからなる集合体の洗浄方法を説明する。前記
図1に示す洗浄装置と同様に、まず、基板切断装置で、個片化された基板1における複数の基板小片1aからなる集合体の上面を、吸着盤26で吸着保持する。この場合、負圧室からなる各吸着部にて、各基板1の基板小片1aの上面を吸着保持する。すなわち、複数の基板小片1aの集合体を吸着盤26で吸着保持する。
【0062】
この場合も、複数の基板小片1aの集合体を切断ステージから洗浄ステージに搬送することになる。そして、洗浄手段18を有する洗浄ステージで、各基板小片1aの下面(裏面)を洗浄することになる。
【0063】
また、前記基板小片1aの下面(裏面)に洗浄液を供給(付与)する必要があるので、この場合も、吸着盤26側と洗浄手段18側とを相対的に移動させて、全基板小片1aの下面(裏面)を洗浄できるようにする。このため、吸着盤26側のみを移動させても、洗浄手段18側のみを移動させても、吸着盤26側及び洗浄手段18側の両者を移動させてもよい。なお、洗浄手段18側を移動させる場合、洗浄ローラ構造全体を図示省略の移動手段を介して移動させる必要があり、この移動手段として、吸着盤26を移動させる移動手段19と同様な構成で構成できる。
【0064】
この
図4に示す吸着盤26では、吸着部40を、吸着パッド50にて構成するとともに、洗浄液侵入低減室41を、吸着パッド50を包囲する大気開放室54にて構成することになる。このように構成することによって、各基板小片1aを安定して吸着保持でき、しかも、洗浄液侵入低減室41は、大気開放室であるので、洗浄液侵入低減室41への洗浄液が侵入する吸引力が作用せず、侵入を低減できる。
【0065】
また、本基板洗浄方法では、基板1を切断して個片化し、その個片化されてなる基板小片1aを形成する切断ステージで、基板小片1aの表面を洗浄し、その後、基板洗浄方法にて、基板小片1aの裏面を洗浄するものである。
【0066】
このような基板洗浄方法を行えば、基板小片1aの裏面を洗浄する際に、切断ステージ側で洗浄された基板小片1aの表面を汚すことがない。このため、基板小片1aの各面の洗浄はそれぞれ1回に終わり、作業性に優れた基板洗浄方法となる。
【0067】
ところで、前記各実施形態においては、洗浄手段18として、洗浄液吹き付け機構を用いたが、
図5に示すような洗浄ローラを有する洗浄構造60を用いてもよい。洗浄構造60は、回転軸61と、この回転軸61に外嵌される円筒形状のスポンジ体62とを有する洗浄ローラ63を備える。スポンジ体62は、吸液性を有するスポンジ状の樹脂(例えば、低反発素材のポリウレタン等)で構成される。そして、スポンジ体62の下部が洗浄液に浸漬され、スポンジ体62の上部が基板小片1aの下面に接触する。また、回転軸61は、図示省略の駆動機構にてその軸心回りに回転し、それによって、スポンジ体62がその軸心回りに回転して、洗浄液に浸漬されてスポンジ体62に吸収された洗浄液を基板小片1aの下面に供給することによって、基板小片1aの下面が洗浄される。このため、この洗浄ローラには、洗浄液が供給されて、この洗浄ローラは洗浄液を保持している状態となっている。また、洗浄構造60は、洗浄ブラシを有する洗浄ブラシ構造等であってもよい。この洗浄ブラシであっても、洗浄液が供給されて、この洗浄ブラシは洗浄液を保持している状態となっているのが好ましい。
【0068】
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、各実施形態では、上方から基板小片1aを吸着手段17にて吸着保持して、下方を向いている基板小片の一方の面(裏面)を洗浄面として洗浄手段18で洗浄するものであったが、逆等であってもよい、すなわち、下方から基板小片1aを吸着保持し、上方を向いている基板小片1aの表面(又は裏面)を洗浄面として洗浄してもよい。また、保持手段20として、各実施形態では、基板1を吸着する吸着手段17を用いたが、チャック爪等を備えたチャック機構等で構成してもよい。
【0069】
洗浄液としては、純水、水道水、さらには、基板洗浄に用いることができる洗浄液等を使用できる。なお、基板1を切断して基板小片1aを形成する場合、一の基板1から形成される基板小片1aの数や大きさ等も任意に設定でき、また、基板小片1aの形状として、平面的に見て正方形であっても長方形であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 基板
1a 基板小片
18 洗浄手段
19 移動手段
20 保持手段
40 吸着部
41 洗浄液侵入低減室
42 洗浄液噴射ノズル
43 洗浄液噴吹き付け機構
48 吸着パッド構造
50 吸着パッド
60 洗浄ローラ構造
63 洗浄ローラ