(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】予兆検知装置及びホームドア装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20241227BHJP
B61B 1/02 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
H02P29/024
B61B1/02
(21)【出願番号】P 2021085465
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泉
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-172527(JP,A)
【文献】特開2018-199434(JP,A)
【文献】特開2010-208248(JP,A)
【文献】特開2019-115094(JP,A)
【文献】特開2020-005340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/024
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームドア装置に設置されて、当該ホームドア装置の近傍における支障物の存否を検出するセンサを機械的にスキャン動作させるスキャン装置を駆動する電動機の故障の予兆を検知する予兆検知装置であって、
前記センサがスキャン動作する間に変動する前記電動機の制御変数の
変動量を収集するデータ収集部と、
前記データ収集部で収集され
たデータのうち、事前に設定された許容範囲から外れるデータの数を求めるデータ解析部と、
前記データ解析部で求められた前記許容範囲から外れるデータの数が、事前に設定された条件を満たす場合に、その旨を報知する警報出力部と、
前記センサがスキャン動作の一方の終点にあって、方位角Pを指向していることを検出するP点検出手段と、
前記センサがスキャン動作の他方の終点にあって、方位角Qを指向していることを検出するQ点検出手段と、
スキャン動作の前記一方の終点と前記他方の終点の間に設定されたスキャン動作の原点Oを、前記センサが指向していることを検出する原点検出手段と、
を有する
とともに、
前記データ収集部は、前記センサがスキャン動作のいずれかの終点からスキャン動作の原点Oを指向する位置まで移動する間に変動する前記制御変数の変動量と、前記センサがスキャン動作の原点Oを指向する位置から前記センサがスキャン動作のいずれかの終点まで移動する間に変動する前記制御変数の変動量を収集する、
予兆検知装置。
【請求項2】
前記事前に設定された条件は、前記データ解析部により求められた前記許容範囲から外れるデータの数が基準値以上であることである、
請求項1に記載の予兆検知装置。
【請求項3】
前記事前に設定された条件は、前記データ解析部により求められた前記許容範囲から外れるデータの数の前記許容範囲内にあるデータの数に対する比率が基準値以上であることである、
請求項1に記載の予兆検知装置。
【請求項4】
前記事前に設定された条件は、前記データ解析部により求められた前記許容範囲から外れるデータの数の前記データ収集部で収集されたデータの総数に対する比率が基準値以上であることである、
請求項1に記載の予兆検知装置。
【請求項5】
前記電動機はステッピングモータであって、
前記制御変数
の変動量は、
前記センサがスキャン動作する間に、前記ステッピングモータに印加されるパルス数である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の予兆検知装置。
【請求項6】
前記電動機の回転角度を検出する回転角検出器を備え、
前記制御変数
の変動量は、
前記センサがスキャン動作する間に変動する前記電動機の回転角度である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の予兆検知装置。
【請求項7】
前記センサはレーザ光を対象物に向けて投射するともに、対象物の表面で反射した前記レーザ光を受光するレーザセンサであって、
前記レーザ光を受ける平板であって、前記原点Oに対応する位置にスリットが穿設された平板を備え、
前記原点検出手段は、前記レーザセンサ自身であって、前記レーザセンサから射出された前記レーザ光が前記スリットを通過したことを検知して、前記レーザセンサがスキャン動作の原点Oを指向したことを検出する、
請求項1に記載の予兆検知装置。
【請求項8】
前記P点検出手段及び前記Q点検出手段は、前記スキャン装置の旋回台に固定されたドグと、前記スキャン装置の固定部の前記方位角P及び前記方位角Qに対応する位置にそれぞれ固定されたリミットスイッチであって、前記ドグが前記リミットスイッチのいずれかに当接したことを検知して、前記センサがスキャン動作のいずれかの終点にあることを検知する、
請求項1に記載の予兆検知装置。
【請求項9】
ホームドア装置の近傍における支障物の存否を検出するセンサと、
電動機で駆動されて前記センサを機械的にスキャンさせるスキャン装置と、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の予兆検知装置と、を備える、
ホームドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予兆検知装置及びホームドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホームドア装置は鉄道駅のプラットホームに設置される一種の自動ドア装置である。ホームドア装置は、プラットホームに固定される戸袋と、戸袋に進退自在に取り付けられた扉体とを有している。プラットホームに隣接する軌道に列車が到着すると、扉体が戸袋の中に引き込まれて、乗客の乗降が可能にされる。乗客の乗降が終わると、扉体が戸袋の外に引き出されて、乗降口が閉鎖される。
【0003】
ホームドア装置には、乗客の安全を図るために、物体の存否を確認するセンサが取り付けられる。特許文献1に記載のホームドア装置は、3次元距離画像センサを備えて、ホームドア近傍の利用客又は障害物等の支障物を検知している。そして、3次元距離画像センサの検知結果に基づいて、ドアパネルの開閉又は車両の運行を制御して、安全性の向上を図っている。
【0004】
3次元距離画像センサにおいて、センサを機械的にスキャン動作させるスキャン装置を備えるものがある。例えば、特許文献2に記載の移動ロボットが備える3次元環境計測装置は、2次元形状を取得するセンサをモータでチルト回転させている。つまり、特許文献2に記載の3次元環境計測装置は、センサの上下方向の走査を、モータを使ってセンサを機械的に回転させることで実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-11224号公報
【文献】特開2008-139035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
モータで駆動されてセンサを機械的にスキャン動作させるスキャン装置においては、センサ本体を構成する電子回路に比べて、モータが故障しやすいという問題がある。そこで、現実に故障が発生する前に、モータの故障の予兆となる現象を検知する方法あるいは装置が求められる。モータの故障の予兆となる現象を検知することができれば、現実に故障が発生する前にモータの交換あるいは修理を行えるからである。
【0007】
本開示は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ホームドア装置に設置されて、センサを機械的にスキャン動作させるスキャン装置を駆動する電動機の故障の予兆となる現象を検知する装置、方法、及び該装置を備えるホームドア装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本開示に係る予兆検知装置は、ホームドア装置に設置されて、当該ホームドア装置の近傍における支障物の存否を検出するセンサを機械的にスキャン動作させるスキャン装置を駆動する電動機の故障の予兆を検知する。予兆検知装置は、センサがスキャン動作する間に変動する電動機の制御変数の変動量を収集するデータ収集部と、データ収集部で収集されたデータのうち、事前に設定された許容範囲から外れるデータの数を求めるデータ解析部と、データ解析部で求められた許容範囲から外れるデータの数が、事前に設定された条件を満たす場合に、その旨を報知する警報出力部と、を有する。更に、予兆検知装置は、センサがスキャン動作の一方の終点にあって、方位角Pを指向していることを検出するP点検出手段と、センサがスキャン動作の他方の終点にあって、方位角Qを指向していることを検出するQ点検出手段と、スキャン動作の一方の終点と他方の終点の間に設定されたスキャン動作の原点Oを、センサが指向していることを検出する原点検出手段と、を有するとともに、データ収集部は、センサがスキャン動作のいずれかの終点からスキャン動作の原点Oを指向する位置まで移動する間に変動する制御変数の変動量と、センサがスキャン動作の原点Oを指向する位置からセンサがスキャン動作のいずれかの終点まで移動する間に変動する制御変数の変動量を収集する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電動機の故障の予兆となる現象が検知され、警報が出力される。このため、現実に故障が発生する前に電動機の交換あるいは修理等の対策を施すことが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)は本開示の実施の形態に係る予兆検知の対象となるホームドア装置の正面図、(B)は(A)に記載のホームドア装置の平面図
【
図2】(A)は
図1にホームドア装置が備えるスキャン装置の正面図、(B)は、スキャン装置の平面図
【
図3】
図1に記載のホームドア装置が備える制御システムのハードウェアの構成図
【
図4】
図3に記載の制御システムのステッピングモータ用の予兆検知部が備えるデータ収集部が実行するデータ収集処理のフローチャート
【
図5】
図3に記載の制御システムのステッピングモータ用の予兆検知部が備えるデータ解析部が実行するデータ解析処理のフローチャート
【
図6】
図3に記載の制御システムのステッピングモータ用の予兆検知部が備える警報出力部が実行する警報出力処理のフローチャート
【
図7】
図3に記載の制御システムのDCモータ用の予兆検知部が備えるデータ収集部が実行するデータ収集処理のフローチャート
【
図8】
図3に記載の制御システムのDCモータ用の予兆検知部が備えるデータ解析部が実行するデータ解析処理のフローチャート
【
図9】
図3に記載の制御システムのDCモータ用の予兆検知部が備える警報出力部が実行する警報出力処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る予兆検知装置及び方法の構成と作用を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
【0012】
図1(A)は、本開示の実施の形態に係る予兆検知の対象となるホームドア装置1の構成を示す正面である。
図1(B)は、ホームドア装置1の平面図である。ホームドア装置1は、鉄道駅のプラットホームに設置される一種の自動ドア装置であって、
図1(A)に示すようにプラットホームの床面2に固定される戸袋3を備える。そして、
図1(A)と
図1(B)に示すように、戸袋3には扉体4が進退自在に支持されている。なお、
図1(A)と
図1(B)は扉体4が戸袋3から引き出された状態を示している。この状態においては、2台の戸袋3の間にある乗降通路は閉鎖されている。扉体4が戸袋3に引き込まれると、乗降通路は開放される。なお、ホームドア装置1を制御する制御システムの構成については後述する。
【0013】
図1(A)と
図1(B)に示すように、ホームドア装置1は、センサ5を備えている。本実施の形態において、センサ5はレーザ光を利用してホームドア装置1の近傍における異物の存否を検出するセンサである。センサ5によれば、射出するレーザ光波の位相と検出対象の表面で反射してセンサ5に帰還するレーザ光波の位相とを比較することによって、検出対象までの距離を測定することができる。
【0014】
図1(A)と
図1(B)に示すように、センサ5はスキャン装置6を介して、2台の戸袋3の一方に取り付けられている。スキャン装置6は2軸スキャン装置である。スキャン装置6によれば、旋回軸、つまり
図1(A)に示すT軸周りにセンサ5を旋回させて、センサ5の指向方向を水平面内でスキャンし、
図1(B)に示す扇形の範囲にセンサ5のレーザ光を向けることができる。また、スキャン装置6によれば、揺動軸、つまり
図1(B)に示すE軸周りにセンサ5を揺動させて、センサ5の指向方向を垂直面内でスキャンし、
図1(A)に示す扇形の範囲にセンサ5のレーザ光を向けることができる。このようにセンサ5は、スキャン装置6によってT軸及びE軸周りにスキャン動作されるので、
図1(A)及び
図1(B)において扇形で示される範囲にある物体の方位と距離を測定する3次元センサとして機能する。なお、T軸周りのスキャン動作とE軸周りのスキャン動作は、例えば、並行して独立に行われる。
【0015】
図1(A)及び
図1(B)において符号Oが付された点はホームドア装置1に固定された原点である。スキャン装置6のT軸周りの旋回は原点Oを基準にして制御される。そのため、スキャン装置6をT軸周りに旋回駆動するモータについては原点Oを基準にして原点合わせを行う必要がある。また、平板7aは、当該モータの原点合わせに使用される部品であって、センサ5を後述する原点検出器7(
図1において図示しない)として機能させる部品である。
図1(A)及び
図1(B)に示すように、平板7aは、扉体4を挟んで、スキャン装置6が固定される戸袋3の反対側に配置される他方の戸袋3に固定されている。また、平板7aは、原点Oの上下に鉛直方向に延在する図示しないスリットを備えている。なお、平板7aの作用については、後述する。
【0016】
図2(A)は、スキャン装置6の正面図であり、
図2(B)は、スキャン装置6の平面図である。
図2(A)と
図2(B)に示すように、スキャン装置6は固定部8と、固定部8に軸支されて、T軸の周りに旋回する旋回台9を備えている。
図2(A)に示すように、固定部8の下面には、ステッピングモータ10が固定されている。旋回台9はステッピングモータ10によって駆動されて、T軸周りに旋回する。なお、ステッピングモータ10は、その回転軸の回転角を検出する角度検出器を備える。角度検出器の詳細は後述する。
【0017】
また、
図2(A)と
図2(B)に示すように、旋回台9にはDCモータ11が固定されている。センサ5はDCモータ11によって駆動されて、E軸周りに揺動する。そのため、
図2(A)に示すように、センサ5の指向方向、すなわち、レーザ光の出射方向は、鉛直面内において上限Uと下限Dの間を往復する。
【0018】
図2(B)に示すように、固定部8には、2個のリミットスイッチ12p,12qが間隔を空けて固定されている。また旋回台9には、ドグ13が固定されていて、
図2(B)において、旋回台9を反時計回りに旋回させると、ドグ13はリミットスイッチ12pに当接し、旋回台9はそこで停止する。そして、旋回台9は時計回りの旋回を開始する。旋回台9を時計回りに旋回させると、ドグ13はリミットスイッチ12qに当接し、旋回台9はそこで停止する。そして、旋回台9は反時計回りの旋回を開始する。このように、旋回台9の旋回範囲はリミットスイッチ12p,12qによって制限される。つまり、旋回台9は、ドグ13がリミットスイッチ12pに当接する旋回角とドグ13がリミットスイッチ12qに当接する旋回角との間を往復する。
【0019】
これにより、水平面内におけるセンサ5の指向方向、すなわち水平面内におけるレーザ光の出射方向は、ドグ13がリミットスイッチ12pに当接するときの指向方向とドグ13がリミットスイッチ12qに当接する時の指向方向との間でスキャンされる。
【0020】
以下の説明において、ドグ13がリミットスイッチ12pに当接する時の旋回台9の旋回角を方位角P、ドグ13がリミットスイッチ12qに当接する時の旋回角を方位角Qと呼ぶ。旋回台9の旋回角が方位角Pに至るとリミットスイッチ12pが動作し、旋回台9の旋回角が方位角Qに至るとリミットスイッチ12qが動作する。
【0021】
さて、前述したように、スキャン装置6が固定される戸袋3の、扉体4を挟んで反対側に配置される他方の戸袋3には、平板7aが固定されている。また、平板7aは原点Oの上下に鉛直方向に延在するスリットを備えている。そのため、スキャン装置6をT軸回りにスキャン動作させる過程で、センサ5が原点Oを指向すると、つまり、センサ5が
図2(B)に示す方向を指向すると、センサ5から射出されたレーザ光がスリットを通過し、それまでセンサ5に帰還していたレーザ光の反射光がセンサ5に到達しなくなるので、センサ5が原点Oを指向したことを検知できる。そして、この時のステッピングモータ10の回転角度が、以後のステッピングモータ10の制御においてステッピングモータ10の回転角度の原点として使用される。このように、平板7aを備えることによって、センサ5自身が、センサ5が原点Oを指向したことを検知する原点検出器7(
図2において図示しない)として機能する。
【0022】
なお、原点検出器7は、センサ5自身が、センサ5が原点Oを指向したことを検知するものには限定されない。原点Oに、レーザ光を検知する光電センサを配置して、センサ5が原点Oを指向したことを光電センサで検知しても良い。この場合、光電センサが原点検出器7として機能する。あるいは、センサ5が原点Oを指向した時に、センサ5に当接して動作する機械スイッチをホームドア装置1に備えて、その機械スイッチを原点検出器7として機能させても良い。また、あるいは、センサ5が原点Oを指向した時に、動作する磁気スイッチをホームドア装置1に備えて、その磁気スイッチを原点検出器7として機能させても良い。
【0023】
図3は、ホームドア装置1が備える制御システム15のハードウェアの構成図である。
図3に示すように、制御システム15はコンピュータから構成され、中央処理装置16と記憶装置17と入出力インターフェイス(I/F)18とを備えている。記憶装置17にはプログラムが記録されていて、中央処理装置16は記憶装置17から読みだしたプログラムに従って、各種の処理を実行する。また、処理の結果は、中央処理装置16によって、記憶装置17に書き込まれる。
【0024】
また、制御システム15は入出力インターフェイス18を介して、センサ5、原点検出器7、ステッピングモータ10のドライバ10a、ステッピングモータ10の回転角検出器10b、DCモータ11のドライバ11a、リミットスイッチ12p,12q及び上位装置19に接続される。なお、上位装置19は、当該プラットホーム上にある全てのホームドア装置1、あるいは当該鉄道駅内に配置された全てのホームドア装置1を統括する制御装置である。
【0025】
原点検出器7とリミットスイッチ12p,12qは、検出結果を示す検出信号を制御システム15に出力する。原点検出器7の検出位置及びリミットスイッチ12p,12qの検出位置はホームドア装置1に物理的に固定されていて、経年劣化などによる位置ずれは無視できるものとする。
【0026】
なお、制御システム15は、記憶装置17に記憶されたプログラムを中央処理装置16が読みだして、そのプログラムを実行することによって、ホームドア装置1のセンサ5の制御部として機能する。制御システム15は、センサ5の通常の制御、例えば、ステッピングモータ10とDCモータ11の駆動制御、センサ5の検出信号に基づく、障害物までの距離の分布を示す距離画像の作成、支障物の検出等の処理を行う。さらに、制御システム15は、ステッピングモータ10の故障の予兆を検出する予兆検知部20及びDCモータ11の故障の予兆を検出する予兆検知部30としても機能する。なお、予兆検知部20と予兆検知部30は、本開示に係る予兆検出装置の例示である。
【0027】
また、ステッピングモータ10用の予兆検知部20は、データ収集部21とデータ解析部22と警報出力部23とを備える。データ収集部21は、ステッピングモータ10の制御変数を示すデータを収集し、収集したデータを記憶装置17に記録する。データ解析部22は、データ収集部21によって記憶装置17に記録されたデータを解析して、故障の予兆の有無を検出し、その結果を警報出力部23に出力する。警報出力部23はデータ解析部22の解析結果を受けて動作して、必要な場合に警報を出力する。
【0028】
データ収集部21、データ解析部22及び警報出力部23は、中央処理装置16が記憶装置17からプログラムを読みだして、そのプログラムを実行することによって、実現される。つまり、後述するプログラムに従って処理を実行することによって、制御システム15は、データ収集部21、データ解析部22あるいは警報出力部23として機能する。
【0029】
また、
図3に示すように、DCモータ11用の予兆検知部30は、データ収集部31とデータ解析部32と警報出力部33とを備える。データ収集部31は、DCモータ11の制御変数を示すデータを収集し、収集したデータを記憶装置17に記録する。データ解析部32は、データ収集部31によって記憶装置17に記録されたデータを解析して、故障の予兆の有無を検出し、その結果を警報出力部33に出力する。警報出力部33はデータ解析部32の解析結果を受けて動作して、必要な場合に警報を出力する。
【0030】
データ収集部31、データ解析部32及び警報出力部33は、中央処理装置16が記憶装置17からプログラムを読みだして、そのプログラムを実行することによって、実現される。つまり、後述するプログラムに従って処理を実行することによって、制御システム15は、データ収集部31、データ解析部32あるいは警報出力部33として機能する。
【0031】
なお、制御システム15の本来の機能はホームドア装置1を制御して、ホームドア装置1を動作させることにある。そこで、制御システム15によって制御されるホームドア装置1の動作を簡単に説明する。
【0032】
まず、電車が到着すると、上位装置19からの指示に応答して、制御システム15は、図示しない駆動部を動作させて、扉体4を戸袋3に引き込み、乗降通路を開放する制御を行う。また、制御システム15は、センサ5を起動して、レーザ光を射出させると共に支障物からの反射光を受光させ、その射出光と反射光の位相差を求めることで、支障物までの距離を求める。また、制御システム15は、ドライバ10aと11aを制御して、ステッピングモータ10とDCモータ11をそれぞれ設定された範囲内で往復回転させることにより、センサ5の指向方向を走査する。制御システム15は、センサ5が取得した支障物までの距離とドライバ10a、11a及び回転角検出器10bから得られるセンサ5の指向方向から、走査エリア内の距離画像を取得し、乗降通路とその近傍に支障物が存在するか否かを判別する。制御システム15が、乗降通路とその近傍に支障物が存在すると判別した際には、制御システム15は扉体4を停止させる。扉体4が戸袋3に引き込まれ、乗降通路が開放されると、制御システム15は、センサ5とステッピングモータ10とDCモータ11の動作を停止させる。
【0033】
乗客の乗降が終了すると、上位装置19からの指示に応答し、制御システム15は、図示しない駆動部を動作させて、扉体4を戸袋3から引き出し、乗降通路を閉じる。乗降通路を閉鎖する動作がなされる間に、制御システム15は、センサ5とステッピングモータ10とDCモータ11を動作させて、スキャンエリアの距離画像を取得し、乗降通路とその近傍に支障物が存在するか否かを判別する。制御システム15が、乗降通路とその近傍に支障物が存在すると判別した際には、制御システム15は扉体4を停止させる。扉体4が引き出され、乗降通路が閉じられると、制御システム15は、センサ5とステッピングモータ10とDCモータ11の動作を停止させる。
【0034】
このように、制御システム15はホームドア装置1を制御して、ホームドア装置1を動作させる制御装置として機能する。そして、前述したように、制御システム15は、ステッピングモータ10の故障の予兆を検出する予兆検知部20及びDCモータ11の故障の予兆を検出する予兆検知部30としても機能する。以下において、予兆検知部20及び予兆検知部30で実行される具体的な処理について詳細に説明する。
【0035】
図4は、中央処理装置16がデータ収集部21として実行するデータ収集処理のフローチャートである。データ収集処理は、センサ5が起動すると起動され、センサ5の動作が終了すると終了する。
【0036】
図4に示すように、データ収集部21は、データ収集処理を開始すると、旋回台9の旋回角が方位角Pに至るまで待機する(ステップS1:No)。ステッピングモータ10によって駆動されて、旋回台9が旋回し、旋回角が方位角Pに一致すると、ドグ13がリミットスイッチ12pに当接する。これにより、リミットスイッチ12pは、検出信号を制御システム15に出力する。制御システム15は、検出信号に応答し(ステップS1:Yes)、処理をステップS2に進める。
【0037】
ステップS2で、データ収集部21は、その時点までにステッピングモータ10に印加されたパルス電圧のパルス数Apをドライバ10aから取得する。データ収集部21は、取得したパルス数Apから、その前にセンサ5が原点Oを指向した時にドライバ10aから取得して内部メモリに保存していたパルス数Aoを減じて、センサ5が原点Oを指向する位置から旋回台9の旋回角が方位角Pに一致する位置まで、旋回台9が旋回する間に、ステッピングモータ10に印加されたパルス電圧のパルス数Aopを算出して、記憶装置17に記録する。また、今回取得したパルス数Apを内部メモリに保存する。
【0038】
また、データ収集部21は、回転角検出器10bが検出したステッピングモータ10の回転角度θpを取得する。データ収集部21は、取得した回転角度θpから、その前にセンサ5が原点Oを指向したときに取得して内部メモリに保存していた回転角度θoを減じて、センサ5が原点Oを指向する位置から旋回台9の旋回角度が方位角Pに一致する位置まで、旋回台9が旋回する間に、ステッピングモータ10が回転した角度θopを算出して、記憶装置17に記録する。また、今回取得した回転角度θpを内部メモリに保存する。
【0039】
ステップS2が終了したら、データ収集部21は、センサ5が原点Oを指向するまで待機する(ステップS3:No)。センサ5が原点Oを指向すると、原点検出器7が検出信号を出力する。制御システム15は、この検出信号に応答して(ステップS3:Yes)、処理をステップS4に進める。
【0040】
ステップS4で、データ収集部21は、旋回台9の旋回角が方位角Pに一致する位置からセンサ5が原点Oを指向する位置まで、旋回台9が旋回する間に、ステッピングモータ10に印加されたパルス電圧のパルス数ApoをステップS2と同様の手順で算出して、記憶装置17に記録する。また、旋回台9の旋回角が方位角Pに一致する位置からセンサ5が原点Oを指向する位置まで、旋回台9が旋回する間にステッピングモータ10が回転した角度θpoを、ステップS2と同様の手順で取得して、記憶装置17に記録する。
【0041】
ステップS4が終了したら、データ収集部21は、旋回台9の旋回角が方位角Qに至るまで待機する(ステップS5:No)。旋回台9の旋回角が方位角Qに至ると、ドグ13がリミットスイッチ12qに当接し、リミットスイッチ12qが検出信号を出力する。制御システム15は、この検出信号に応答し(ステップS5:Yes)、処理をステップS6に進める。
【0042】
ステップS6で、データ収集部21は、旋回台9が、センサ5が原点Oを指向する位置から、旋回台9の旋回角が方位角Qに一致する位置まで旋回する間に、ステッピングモータ10に印加されたパルス電圧のパルス数AoqをステップS2と同様の手順で算出して、記憶装置17に記録する。また、センサ5が原点Oを指向してから、旋回台9の旋回角が方位角Qに一致するまでの間に、ステッピングモータ10が回転した角度θoqを、ステップS2と同様の手順で取得して、記憶装置17に記録する。
【0043】
ステップS6が終了したら、データ収集部21は、センサ5が原点Oを指向するまで待機する(ステップS7:No)。センサ5が原点Oを指向すると、原点検出器7が検出信号を出力する。制御システム15は、この検出信号に応答して(ステップS7:Yes)、処理をステップS8に進める。
【0044】
ステップS8で、データ収集部21は、旋回台9が、旋回台9の旋回角が方位角Qに一致する位置からセンサ5が原点Oを指向する位置まで旋回する間に、ステッピングモータ10に印加されたパルス電圧のパルス数AqoをステップS2と同様の手順で算出して、記憶装置17に記録する。また、旋回台9の旋回角が方位角Qに一致する位置からセンサ5が原点Oを指向する位置まで、旋回台9が旋回する間に、ステッピングモータ10が回転した角度θqoを、ステップS2と同様の手順で取得して、記憶装置17に記録する。
【0045】
ステップS8の処理を終えたら、データ収集部21は、処理をステップS1に戻して、同じ処理を繰り返す。
【0046】
このように、データ収集処理を実行すると、パルス数Aop,Apo,Aoq,Aqo,と、回転角度θop,θpo,θoq,θqoのデータが記憶装置17に順次記録され蓄積される。
【0047】
データ解析部22は、データ収集部21が記憶装置17に蓄積したデータを解析し、ステッピングモータ10の故障の予兆の有無を検出する。
【0048】
図5は、データ解析部22が実行するデータ解析処理のフローチャートである。データ解析部22は、例えば、1日の業務の終了時、1時間毎等の予め設定されたタイミングで、データ解析処理を実行する。なお、
図5は、センサ5が原点Oを指向する位置から旋回台9の旋回角が方位角Pに一致する位置まで、
旋回台9が旋回する間に、ステッピングモータ10に印加されたパルス電圧のパルス数A
opのデータを解析する例を示す。
【0049】
データ解析部22は、データ解析処理を開始すると、まず、許容範囲内にあるデータのカウント数NAと許容範囲から外れるデータのカウント数NNAを、0に戻す(ステップS11)。次に、記憶装置17に蓄積されているパルス数Aopのデータのうちの1個を読みだす(ステップS12)。そして、パルス数Aopと事前に設定された基準値Asopの差分dを求める(ステップS13)。なお、基準値Asopを設定する手法は特に限定されない。スキャン装置6を設計する際に、パルス数Aopの理論値あるいは設計値を求めて、その理論値あるいは設計値を基準値Asopとしてもよい。あるいは、ホームドア装置1の新設時に、データ収集部21を動作させて、パルス数Aopの実測値を複数個求めて、それらの値の算術平均、中央値、或いは、最頻値を基準値Asopとしてもよい。
【0050】
差分dが、事前に設定された許容範囲内にあれば(ステップS14:Yes)、許容範囲内にあるデータのカウント数NAに1を加算する(ステップS15)。その後、ステップS17に進む。
【0051】
差分dが、事前に設定された許容範囲を超えていれば(ステップS14:No)、許容範囲から外れるデータのカウント数NNAに1を加算する(ステップS16)。そしてステップS17に進む。
【0052】
ステップS17において、未処理のパルス数Aopのデータが記憶装置17に残っていれば、処理はステップS12に戻る(ステップS17、Yes)。未処理のデータが記憶装置17に残っていなければ、処理を終了する(ステップS17、No)。
【0053】
データ解析部22は、記憶装置17に蓄積したパルス数Apo,Aoq,Aqo,回転角θop,θpo,θoq,θqoについても同様の処理を行う。
データ解析部22は、全てのデータについて、解析処理を終了すると、警報出力部23を起動して、その後、停止する。
【0054】
図6は、警報出力部23が実行する警報出力処理のフローチャートである。警報出力処理が開始されると、警報出力部23は、パルス数A
op,A
po,A
oq,A
qo,回転角θ
op,θ
po,θ
oq,θ
qoのそれぞれについて求めた差分dが許容範囲を超えるデータのカウント数N
NAを事前に設定された閾値と比較する(ステップS21)。閾値以上のカウント数N
NAを有するパルス数又は回転角が1つでも存在する場合(ステップS21:Yes)には、ステッピングモータ10の故障の発生が予想されるので、その旨、即ち故障の予兆の検出を示す警報を上位装置19に出力する(ステップS22)。その後、処理を終了する。
【0055】
一方、パルス数Aop,Apo,Aoq,Aqo,回転角θop,θpo,θoq,θqoのいずれについても、差分dが許容範囲を超えるデータのカウント数NNAが閾値を超えない場合(ステップS21:No)には、警報を出力することなく、処理を終了する。
【0056】
次に、予兆検知部30によるDCモータ11の故障の予兆を検出する動作を説明する。
図7は、予兆検知部30のデータ収集部31が実行するデータ収集処理のフローチャートである。データ収集処理は、センサ5が起動すると起動され、センサ5の動作が終了すると終了する。
【0057】
図7に示すように、データ収集部31は、データ収集処理を開始すると、DCモータ11のドライバ11aを監視してDCモータ11の回転方向の正転と逆転が切り替えられるのを待つ(ステップS31:No)。データ収集部31は、DCモータ11の回転方向が切り替えられたら(ステップS31:Yes)、内部タイマから時刻Tを読み出し、記憶装置17に記録する(ステップS32)。
【0058】
次に、データ収集部31は、時刻Tと、その前にDCモータ11の回転方向の正転と逆転が切り替えられた時に記録された時刻T0との差dTを算出する(ステップS33)。DCモータ11の回転方向の正逆が切り替えられるタイミングは、センサ5がE軸周りのスキャン範囲の何れかの端に到達した時であるから、dTは1回のスキャンに要した時間に相当する。データ収集部31は、このスキャン時間dTに基づいて、スキャン動作の平均動作速度又は平均回転速度Vmeanを算出し、記憶装置17に記録する(ステップS34)。ステップS34が終了したらステップS31に戻り、同じ処理を続ける。データ収集処理を繰り返し実行することで、記憶装置17に平均動作速度Vmeanのデータが蓄積される。
【0059】
データ解析部32は、データ収集部31が記憶装置17に蓄積した平均動作速度Vmeanのデータを解析し、ステッピングモータ10の故障の予兆の有無を検出する。データ解析部32は、データ解析部22の起動とほぼ同一のタイミングで起動される
【0060】
データ解析部32は、
図8に示すデータ解析処理を開始すると、まず、許容範囲内にあるデータのカウント数N
NAと許容範囲から外れるデータのカウント数NN
NAとをリセットし、0に戻す(ステップS41)。
【0061】
次に、データ解析部32は、記憶装置17に蓄積されている平均動作速度Vmeanのデータのうちの1個を読み出し(ステップS42)、平均動作速度Vmeanと事前に設定された基準速度Vsの差分dVを求める(ステップS43)。
【0062】
データ解析部32は、差分dVが、事前に設定された許容範囲内にあれば(ステップS44:Yes)、許容範囲内にあるデータのカウント数NNAに1を加算する(ステップS45)。その後、ステップS47に進む。
【0063】
データ解析部32は、差分dVが、事前に設定された許容範囲を超えていれば(ステップS44:No)、許容範囲から外れるデータのカウント数NNNAに1を加算する(ステップS46)。そしてステップS47に進む。
【0064】
データ解析部32は、ステップS47において、未処理の平均動作速度Vmeanのデータが記憶装置17に残っていれば、処理をステップS42に戻す(ステップS47:Yes)。一方、未処理の平均動作速度Vmeanのデータが記憶装置17に残っていなければ、ステップS48に処理を移す。このように、記憶装置17に蓄積された平均動作速度Vmeanの全てのデータについて処理が完了するまで、ステップS42からステップS47までの処理を続ける。
【0065】
ステップS48で、データ解析部32は、警報出力部33を起動し(ステップS48)、処理を終了する。
【0066】
図9は、警報出力部33が実行する警報出力処理のフローチャートである。
【0067】
図9に示すように、警報出力部33は、警報出力処理を開示すると、記憶装置17に記録された、差分dVが許容範囲から外れるデータのカウント数NN
NAを事前に設定された閾値と比較する(ステップS51)。
【0068】
警報出力部33は、カウント数NNNAが閾値以上の場合(ステップS51:Yes)、DCモータ11の故障の発生が予想されるので、その旨を示す警報を、上位装置19に出力する(ステップS52)。その後、処理を終える。一方、警報出力部33は、カウント数NNNAが閾値未満の場合(ステップS51:No)、警報を発することなく、処理を終了する。
【0069】
以上、説明したように、制御システム15は、ホームドア装置1のステッピングモータ10の印加パルスの数、回転角度、DCモータ11の動作速度等の制御変数のデータを収集して、収集されたデータを事前に設定された基準値と比較して、両者の差が、事前に設定された許容値の範囲から外れるデータの数を集計する。そして、許容値の範囲から外れるデータが、事前に設定された水準以上に出現することを検出し、その旨を外部に警報することができる。そのため、ステッピングモータ10及びDCモータ11の故障の予兆が検出され、予防保全が容易になる。
【0070】
なお、本開示の技術的範囲は、上記の実施の形態によっては、限定されない。本開示は、特許請求の範囲に示された技術的思想の限りにおいて、自由に、応用、変形、あるいは改良して実施することができる。
【0071】
上記実施の形態においては、スキャン装置6の旋回台9が、3つの基準スキャン方向、すなわち、センサ5が原点Oを指向する方向と、旋回台9の旋回角が方位角Pに一致する方向と、旋回台9の旋回角が方位角Qに一致する方向との間を旋回する間に変化する制御変数を予兆検知の基礎となる制御変数とした。そして、旋回台9が3つの基準スキャン方向の間を旋回する間の制御変数の変化量を基準値と比較した。すなわち、スキャン装置6の旋回台9が3つの基準スキャン方向の間を旋回する間にステッピングモータ10に印加される印加パルス数Aop,Apo,Aoq,Aqoと、その間のステッピングモータ10の回転角度θop,θpo,θoq,θqoを基準値と比較した。
【0072】
しかしながら、予兆検知の基礎となる制御変数の選択は任意である。基準スキャン方向の選択も任意である。例えば、旋回台9の旋回角が方位角Pに一致する方向と、旋回台9の旋回角が方位角Qに一致する方向とを基準スキャン方向として、スキャン装置6の旋回台9が2つの基準スキャン方向の間を旋回する間にステッピングモータ10に印加される印加パルス数Aqp,Apqと、その間のステッピングモータ10の回転角度θqp,θpq等を基準値と比較してもよい。また、DCモータ11の平均動作速度Vmeanを予兆検知の基礎となる制御変数の例として示したが、1スキャンに要する時間dTを予兆検知の基礎とすることもできる。
【0073】
また、例えば、ステッピングモータ10の動作速度、動作時間、パルス電流の大きさ、消費電力、温度、振動の大きさなどを予兆検知の基礎としてもよい。また、DCモータ11の直流電流の大きさ、消費電力、温度、振動の大きさなどを予兆検知の基礎としてもよい。
【0074】
また、例えば、上記実施の形態において、警報が出力される条件として、許容範囲から外れるデータが、事前に定められた基準値以上に存在することを例示したが、警報が出力される条件、つまり警報の要否を判断する基準はこれには限定されない。例えば、許容範囲から外れるデータの数の許容範囲内にあるデータの数に対する比率を求めて、その比率が事前に定められた基準値以上である場合に警報を出力しても良い。あるいは、許容範囲から外れるデータの数のデータ収集部21あるいはデータ収集部31で収集されたデータの総数に対する比率を求めて、その比率が事前に定められた基準値以上である場合に警報を出力しても良い。
【0075】
上記実施の形態においては、センサ5をスキャンさせるための電動機の例として、ステッピングモータ、DCモータを例示したが、他の種類のモータ、例えば、交流モータも利用可能である。
【0076】
センサ5にスキャンさせるスキャン装置6の構成は、
図2に示す構成に限定されない。例えば、上記実施形態では、センサ5の指向方向を水平方向および垂直方向の2方向に、2つのモータでスキャンする例を示したが、1つのモータで2方向にスキャンさせてもよく、或いは、水平方向または垂直方向の一方向にのみスキャンさせる構成でもよい。また、スキャン範囲を制限する構成も実施の形態に限定されない。本開示に係るスキャン装置は、少なくとも1個のスキャン軸と1台の電動機を備えていればよい。
【0077】
また、警報を受けた上位装置19が行う処理は、限定されない。上位装置19は管制パネルの警告ランプを点灯してもよいし、保全担当者に修理点検を促すレポートを出力してもよい。また、警報の出力先は上位装置19には限定されない。ホームドア装置1あるいはスキャン装置6に警告ランプを備えて、警報が出力されると、その警告ランプが点灯されるようにしてもよい。
【0078】
各動作フローに示した処理の手順は、同様の結果を得られるならば、実施の形態によっては限定されない。
【0079】
上記において、データ収集部21、31が複数組のデータを記憶装置17に蓄積して、蓄積されたデータをデータ解析部22、32でバッチ処理で解析する例を示したが、データ収集部21、31が1組あるいは1個のデータを取得する度に、データ解析部22、32で、そのデータを解析するようにしてもよい。
【0080】
データ解析部22,32と警報出力部23,33を動作させる時期と頻度は、上記の実施の形態の記載によっては限定されない。これらを動作させる時期と頻度は、必要に応じて任意に設定できる。
【0081】
センサ5の具体例として、レーザ光を利用し、距離画像を生成するものを例示したが、スキャン装置6に搭載されるセンサであれば、センサの形式あるいは動作原理は限定されない。
【0082】
上記において、角度検出器11bを備えるステッピングモータ10を例示したが、本開示に係るスキャン装置が備えるモータは、角度検出器を備えないものであっても良い。
【0083】
本開示に係るホームドア装置とスキャン装置の具体的あるいは機械的な、形式あるいは形態には、各図面の記載によっては限定されない。
【符号の説明】
【0084】
1 ホームドア装置、2 プラットホームの床面、3 戸袋、4 扉体、 5 センサ、6 スキャン装置、7 原点検出器、7a 平板、8 固定部、9 旋回台、10 ステッピングモータ、10a ドライバ、10b 回転角検出器、11 DCモータ、11a ドライバ、12p,12q リミットスイッチ、13 ドグ、15 制御システム、16 中央処理装置、17 記憶装置、18 入出力インターフェイス(I/F)、19 上位装置、20 予兆検知部、21 データ収集部、22 データ解析部、23 警報出力部、30 予兆検知部、31 データ収集部、32 データ解析部、33 警報出力部。