(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】車両外装品用補強部材及び車両外装品の補強構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/02 20060101AFI20241227BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20241227BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
B60R19/02 G
B60R19/04 B
B60R19/04 C
B60R13/04 Z
(21)【出願番号】P 2021160859
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】工藤 智祥
(72)【発明者】
【氏名】湯谷 優太郎
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-151678(JP,A)
【文献】実開昭54-174154(JP,U)
【文献】実開平02-132548(JP,U)
【文献】特開2003-312398(JP,A)
【文献】特開昭58-170647(JP,A)
【文献】国際公開第2017/153756(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113085750(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/02
B60R 19/04
B60R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットが設けられた車両外装品に取り付けられて前記車両外装品の前記スリット付近を補強する補強部材において、
前記スリット内に配置される支柱部と、前記支柱部の幅方向両側部から所定の間隔を空けて設けられた保持部とを備え、
前記スリットの幅方向両側部に設けられた被保持部を前記保持部により保持することを特徴とする補強部材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両外装品の補強部材において、
前記被保持部は、前記スリットの幅方向両側部から長手方向に延びる車両外装品に設けられた突出部であり、
前記保持部は、前記突出部が嵌合する前記補強部材に設けられた嵌合凹部である補強部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の補強部材において、
前記車両外装品は、複数の外装部材を各々に設けられた連結部において連結して構成されるものであり、
前記複数の外装部材の連結部は、互いに整合する位置に前記スリットと前記被保持部を備え、
前記補強部材の支柱部は、前記複数の外装部材のスリット内に配置され、
前記補強部材の保持部は、前記複数の外装部材の被保持部を前記スリットと反対側から保持し、
前記補強部材は、前記複数の外装部材の連結部を一体に挟持して前記複数の外装部材を連結する挟持部を備えている補強部材。
【請求項4】
スリットが形成された車両外装品を補強部材で補強する補強構造において、
前記車両外装品は、前記スリットの幅方向両側部に設けられた被保持部を備え、
前記補強部材は、前記スリット内に配置される支柱部と、前記支柱部の幅方向両側部から所定の間隔を空けて設けられた保持部を備え、
前記被保持部を前記保持部により保持することを特徴とする補強構造。
【請求項5】
請求項4に記載の補強構造において、
前記車両外装品は、車両の角部に配置される屈曲部を有しており、
前記スリットは、前記屈曲部に形成されている補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用外装品の機械的強度を補強するための補強部材及び補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に取り付けられる車両外装品には、様々な理由から、スリット(切り欠き)が設けられることがある。例えば、樹脂製の車両用バンパーの場合、樹脂成型用の金型からバンパーを引き抜く際にバンパーを変形させることがあり、この変形を容易にするために、所定位置にスリットが形成される。
【0003】
また、複数の部材から構成される車両外装品の場合、部材の連結のためにスリットが必要となることがある。例えば、複数の部材を互いに連結する連結部材を用いる場合には、各部材に連結部材を取り付けるためのスリットが形成されることがある。また、特許文献1(特開2003-312298号)においては、フロントバンパーとフロントフェンダの連結のために、スリット状の切り欠き溝がフロントバンパーに形成されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、車両外装品には様々な理由からスリットが形成されるが、このスリットの存在が車両外装品の機械的強度を弱めてしまうことがある。すなわち、車両外装品は、スリットが設けられた部分において、スリットが外側に広がるように変形しやすく、これが車両外装品の機械的強度を弱める原因となっていた。
【0006】
本発明は、以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、スリットが形成された車両外装品の機械的強度を簡素な構成で効果的に高めることができる補強部材及び補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては、次のような解決方法を採択している。すなわち、請求項1に記載のように、スリットが設けられた車両外装品に取り付けられて前記車両外装品の前記スリット付近を補強する補強部材において、前記スリット内に配置される支柱部と、前記支柱部の幅方向両側部から所定の間隔を空けて設けられた保持部とを備え、前記スリットの幅方向両側部に設けられた被保持部を前記保持部により保持するようにした。
【0008】
上記解決手法によれば、補強部材(例えば、補強部材30、50)の保持部(例えば、第1の保持壁部37、第2の保持壁部38、嵌合穴53)が、車両外装品(例えば、バンパー10、54)のスリット(例えば、スリット21A、21B、55)の両側に設けられた被保持部(例えば、第1の突出部23A、23B 第2の突出部24A、24B、突起部56)を保持するので、車両外装品のスリットが押し広げられてしまう変形が適切に規制され、車両外装品の機械的強度が高められる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載の通りである。すなわち、前記被保持部は、前記スリットの幅方向両側部から長手方向に延びる車両外装品に設けられた突出部であり、前記保持部は、前記突出部が嵌合する前記補強部材に設けられた嵌合凹部であってもよい(請求項2対応)。この場合、車両外装品の被保持部である突出部(例えば、第1の突出部23A、23B 第2の突出部24A、24B)は、補強部材(例えば、補強部材30)の保持部(例えば、第1の保持壁部37、第2の保持壁部38)により形成された嵌合凹部(例えば、第1の嵌合凹部39、第2の嵌合凹部40)に嵌合したうえで、保持部により支柱部(例えば支柱部35)と反対側(すなわちスリットと反対側)から保持されるので、保持部による保持は堅固であり、スリット(例えば、スリット21A、21B)が外側に広がってしまう変形は効果的に規制され、車両外装品の機械的強度が著しく高められる。また、突出部は、スリットの開口端(例えば、開口端22A、22B)の両側部分を延長して形成することができるので、新たな構成を追加する必要はなく、補強構造を簡素化できる。
【0010】
前記車両外装品は、複数の外装部材を各々に設けられた連結部において連結して構成されるものであり、前記複数の外装部材の連結部は、互いに整合する位置に前記スリットと前記被保持部を備え、前記補強部材の支柱部は、前記複数の外装部材のスリット内に配置され、前記補強部材の保持部は、前記複数の外装部材の被保持部を前記スリットと反対側から保持し、前記補強部材は、前記複数の外装部材の連結部を一体に挟持して前記複数の外装部材を連結する挟持部を備えていてもよい(請求項3対応)。この場合、補強部材は、車両外装品を構成する複数の外装部材(例えば、上側バンパー部材10A、下側バンパー部材10B)の総てに対して、スリットが広がってしまう変形を防止する補強部材として機能するとともに、複数の外装部材の連結部(例えば、連結部20A、20B)を挟持部(例えば、第1の挟持壁部32、第2の挟持壁部33)で挟持して連結する連結部材としても機能する。したがって、1つの補強部材に、2つの機能を持たせることができるので、構成を簡素化できるとともに、部品点数減少によるコスト削減を図り得る。
【0011】
また、請求項4に記載のように、スリットが形成された車両外装品を補強部材で補強する補強構造において、前記車両外装品は、前記スリットの幅方向両側部に設けられた被保持部を備え、前記補強部材は、前記スリット内に配置される支柱部と、前記支柱部の幅方向両側部から所定の間隔を空けて設けられた保持部を備え、前記被保持部を前記保持部により保持するようにした。
【0012】
上記解決手法によれば、補強部材(例えば、補強部材30、50)の保持部(例えば、第1の保持壁部37、第2の保持壁部38、嵌合穴53)が、車両外装品(例えば、バンパー10、54)のスリット(例えば、スリット21A、21B、55)の両側に設けられた被保持部(例えば、第1の突出部23A、23B 第2の突出部24A、24B、突起部56)を保持するので、車両外装品のスリットが押し広げられてしまう変形が適切に規制され、車両外装品の機械的強度が高められる。
【0013】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項5以下に記載の通りである。すなわち、前記車両外装品は、車両の角部に配置される屈曲部を有しており、前記スリットは、前記屈曲部に形成されていてもよい(請求項5対応)。この場合、車両外装品の屈曲部にスリットが形成されているので、車両外装品の製造時には、車両外装品を容易に変形させて、成型用の金型から容易に引き抜くことができる一方で、車両外装品の使用時には、スリット部分における変形が補強部材により適切に防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、補強部材の保持部により車両外装品のスリット両側の被保持部が保持されるので、スリットが外側に広がってしまう変形が適切に規制され、車両外装品の機械的強度が効果的に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明が適用される車両用バンパーを備えた車両を示す図である。
【
図2】車両用バンパーにスリットが設けられる理由を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態における補強構造の概略を示す斜視図であり、スリットに補強部材が取り付けられる前の状態を示す。
【
図4】本発明の実施形態における補強部材を第1の保持壁部側から見た斜視図である。
【
図5】補強部材を第2の保持壁部側から見た斜視図である。
【
図6】補強部材を第1の保持壁部側から見た側面図である。
【
図8】補強部材がバンパーに取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図9】補強部材がバンパーに取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の他の実施形態の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明が適用される車両用バンパー10を備えた車両1を示す。バンパー10は、例えば樹脂成型で形成される車両外装品であり、図示されるように、車両1の前部に取り付けられ、フロントグリル2の下方に配置されている。
【0017】
バンパー10は、車両1の前面3に沿って配置される正面部11と、車両1の両側側面4の前端部分に沿って配置される両側の側面部12を備えている(
図1には、車両1の左側の側面部12のみを示す)。正面部11と両側の側面部12の間には、略90度湾曲した屈曲部13が形成されており、車両1の前面3の幅方向両端の角部5に配置されるようになっている。本発明の補強構造は、この屈曲部13に対して適用される。
【0018】
図2は、バンパー10にスリットが設けられる理由を説明するための模式図である。本実施形態のバンパー10は、樹脂成型で形成されるものであるので、成型後に金型から引き抜く必要がある。図には、バンパー10の内側に金型5が配置され、この金型5からバンパー10が引き抜かれる場合を示している。
【0019】
この場合、バンパー10を金型5から正面部11側(図の左側)に向けて動かして引き抜くことになるが、側面部12の正面部11と反対側の端部には、内側に折れ曲がった鉤部14が設けられているため、この鉤部14が金型5に引っ掛かってしまう。このため、バンパー10を金型5から引き抜くときには、図に一点鎖線で示すように側面部12を外側に撓ませて、バンパー10を変形させることにより、鉤部14と金型5の干渉を回避する。このようなバンパー10の変形を容易にするために、屈曲部13の内側部分にスリット21が設けられることになる。
【0020】
図3には、本発明の実施形態における補強構造の概略を示す。なお、本図においては、バンパー10に補強部材30が取り付けられる前の状態が示されており、また、バンパー10の一部のみが切り取られた状態で図示されている。
【0021】
図示されるように、バンパー10は、上側バンパー部材10Aと下側バンパー部材10Bを上下に組み合わせて構成されている。以下の説明においては、上側バンパー部材10Aと下側バンパー部材10Bの対応する構成の参照番号を、同一の数字に対して、上側バンパー部材10Aの構成にはAを、下側バンパー部材10Bの構成にはBを、それぞれ付したものとしている。
【0022】
上側バンパー部材10Aの屈曲部13Aと下側バンパー部材10Bの屈曲部13B(図示せず)には、それぞれ、湾曲の内側に水平に張り出した庇形状の連結部20Aと連結部20Bが設けられている。連結部20A、20Bは、同一形状を有する板状の部分であり、互いに上下に重なり合った状態となっている。詳しくは後述するように、上側バンパー部材10Aと下側バンパー部材10Bは、連結部20A、20Bにおいて、互いに連結されるようになっている。
【0023】
連結部20A、20Bには、それぞれスリット21A、21Bが形成されている。スリット21A、21Bは、同一形状を有し、また、互いに整合する位置に形成されており、上下に重なることで1本のスリットを形成している。詳しくは後述するように、これらのスリット21A、21Bに対して補強部材30が取り付けられる。
【0024】
スリット21A、21Bは、バンパー10の内側(車両1の内側)に向けて開口した開口端22A、22Bを備えている。開口端22A、22Bの左右両側には、それぞれ、第1の突出部23A、23Bと第2の突出部24A、24Bが設けられている。
【0025】
第1の突出部23A、23Bと第2の突出部24A、24Bは、開口端22A、22Bの両側部分を延長した板状の部分であり、バンパー10の内側に向けて(すなわち、車両1の内方に向けて)水平に延び出している。本実施形態においては、突出部24A、24Bの方が、突出部23A、23Bよりも、開口端22A、22Bから遠い位置まで延び出した形状となっており、また寸法も大きめのものとなっている。
【0026】
連結部20A、20Bには、突出部24A、24Bの後方に位置するように、係止穴25A、25Bが形成されている(係止穴25Bは図示せず)。係止穴25Aは、連結部20Aの上面に形成され、上方に開口している。一方、係止穴25Bは、連結部20Bの下面に形成され、下方に開口している。
【0027】
図4から
図7には、補強部材30を詳細に示す。なお、以下の説明においては、補強部材30の各構成を、前後、上下、左右等の方向を表す表現を用いて説明しているが、これは説明の便宜上のものであり、本発明の内容を限定するものではない。
【0028】
補強部材30は、例えば樹脂から形成されたクリップ部材である。図示されるように、補強部材30の前端31側の上下両側には、それぞれ第1の挟持壁部32と第2の挟持壁部33が設けられている。第1の挟持壁部32と第2の挟持壁部33は、補強部材30の長手方向(前後方向)の中央付近まで延びており、所定の間隔をもって、互いに平行に配置されている。
【0029】
第1、第2の挟持壁部32、33の各々の内向き面(対向面)には、補強部材30の長手方向に延びる複数の突条34が形成されている。これにより、補強部材30のバンパー10への装着時には、バンパー10の連結部20A、20Bが、第1の挟持壁部32と第2の挟持壁部33の間に上下から挟持され、突条34と接して保持されるようになっている。
【0030】
第1の挟持壁部32と第2の挟持壁部33の間には、支柱部35が設けられている。支柱部35は、第1の挟持壁部32の内向き面から第2の挟持壁部33の内向き面に至る板状の部分であり、補強部材30の前端31付近から、補強部材30の長手方向に延びている。支柱部35は、補強部30のバンパー10への装着時に、スリット21A、21B内に配置される部分であり、その左右の幅は、バンパー10のスリット21A、21Bの幅よりもわずかに小さく設定されている。
【0031】
補強部材30の後端36側には、第1の保持壁部37と第2の保持壁部38が設けられている。第1、第2の保持壁部37、38は、補強部材30の左右から後端36にかけての外壁の一部を構成している。また、第1の保持壁部37は、第1、第2の挟持壁部32、33の側面後端から連なっている。
【0032】
第1、第2の保持壁部37、38の各々は、支柱部35の左右両側に配置されている。これにより、第1の保持壁部37の内側(支柱部35側)には、バンパー10の第1の突出部23A、23Bが嵌合する第1の嵌合凹部39が、また第2の保持壁部38の内側(支柱部35側)には、バンパー10の第2の突出部24A、24Bが嵌合する第2の嵌合凹部40がそれぞれ形成されている。
【0033】
第1の保持壁部37、第2の保持壁部38の内向き面には、それぞれ、支柱部35側に隆起した保持凸部41、42が形成されている。バンパー10の第1の突出部23A、23B、第2の突出部24A、24Bが第1の嵌合凹部39、第2の嵌合凹部40に嵌合したときには、これらの保持凸部41、42が、それぞれ第1の突出部23A、23B、第2の突出部24A、24Bに、支柱部35と反対側から当接する。これにより、第1の突出部23A、23B、第2の突出部24A、24Bは、第1の保持壁部37、第2の保持壁部38により、支柱部35(すなわちスリット21A、21B)と反対側から保持されるようになっている。
【0034】
第1、第2の嵌合凹部39、40は、それぞれ、第1の突出部23A、23B、第2の突出部24A、24Bの位置及び形状(寸法)に対応した位置及び形状を有するものとなっている。詳しく説明すると、第1の保持壁部37は、補強部材30の長手方向中央付近に配置されているのに対して、第2の保持壁部38は、補強部材30の後端36側に配置されている。また、支柱部35は、第2の保持壁部38よりも第1の保持壁部37との間隔が狭くなる位置に配置されている。
【0035】
これにより、第1の嵌合凹部39は、第1の突出部23A,23Bの位置に対応して、補強部材30の長手方向中央付近において、支柱部35と第1の保持壁部37の間に形成されており、また、第1の突出部23A,23Bの大きさに対応して、寸法の小さなものとなっている。一方、第2の嵌合凹部40は、第2の突出部24A、24Bの位置に対応して、補強部材30の後端31付近において、支柱部35の後方の内側壁面43と第2の保持壁部38の間に形成されており、また、第2の突出部24A、24Bの寸法に対応して、寸法の大きなものとなっている。
【0036】
第1、第2の挟持壁部32、33の後端には、それぞれ、上下の係止アーム44が設けられている。係止アーム44は、支柱部35に対して第2の保持壁部38側(嵌合凹部40の前方)に設けられており、先端側の係合爪45と、基端側の操作部46と、係合爪45と操作部46の間に設けられた接続部47を備えている。係止アーム44は、接続部47を介して第1、第2の挟持壁部32、33に対して一体に形成されている。
【0037】
補強部材30がバンパー10に装着されたときには、係止アーム44の係合爪45が、バンパー10の係止穴25A、25Bに係合する。これにより、補強部材30は、バンパー10(連結部20A、20B)に係止され、バンパー10からの脱落が防止されるようになっている。
【0038】
係止アーム44は、補強部材30の外側に突出した操作部46を内側に押すように操作することで、係止爪45が係止穴25A、25Bから外れる方向に回動させることができ、この操作により、係合爪45の係止穴25A、25Bへの係合及び係合解除を行うことができるようになっている。
【0039】
図8及び
図9には、補強部材30がバンパー10に取り付けられた状態を示す。補強部材30のバンパー10への取り付けに際しては、補強部材30の前端31をバンパー10側に向けた状態(
図3に示す状態)から、補強部材30の支柱部35を、スリット21A、21Bの開口端22A、22Bから、スリット21A、21Bの中に挿入していく。
【0040】
補強部材30がバンパー10に装着されると、
図8に示すように、補強部材30の支柱部35がスリット21A、21B内に配置されるとともに、補強部材30の第1、第2の挟持壁部32、33がバンパー10の連結部20A、20Bの上下に配置される。これにより、補強部材30の突条34が連結部20A、20Bに当接して、連結部20A、20Bは、第1、第2の挟持壁部32、33により上下から挟持される。したがって、上側バンパー部材10Aと下側バンパー部材10Bは、連結部20A、20Bにおいて、補強部材30により連結された状態となる。すなわち、本実施形態の補強部材30は、上側バンパー部材10Aと下側バンパー部材10Bを連結する連結部材としても機能する。
【0041】
一方、
図9に示すように、バンパー10の第1の突出部23A、23B、第2の突出部24A、24Bは、それぞれ第1の嵌合凹部39、第2の嵌合凹部40に嵌合する。これにより、第1の突出部23A、23B、第2の突出部24A、24Bは、第1、第2の保持壁部37、38の保持凸部41、42と当接して、スリット21A、21Bと反対側から保持される。これにより、バンパー10のスリット21A、21Bが外側に広がる変形が適切に規制され、バンパー10の機械的強度が高められる。
【0042】
以上のように、本実施形態の補強部材30及び補強構造によれば、両側の第1、第2の保持壁部37、38が、スリット21A、21Bの両側に設けられた第1、第2の突出部23A及び23B、24A及び24Bを、スリット21A、21Bと反対側から保持するので、スリット21A、21Bが外側に広がる変形が適切に規制される。したがって、補強部材30をスリット21A、21Bに取り付けるだけで、バンパー10の機械的強度が向上する。また、補強部材30の取り付けは、支柱部35をスリット21A、21Bに挿入していくだけで容易に行える。また、第1、第2の突出部23A及び23B、24A及び24Bは、スリット21A、21Bの開口端22A、22Bの両側部分を延長して形成されるので、第1、第2の保持壁部37、38によって保持される被保持部として新たな構成を追加する必要はない。
【0043】
また、スリット21A、21B内に支柱部35が配置されるので、バンパー10に対する補強部材30の位置決めを適切に行うことができる。また、支柱部35がスリット21A、21Bの内側への変形を規制するので、スリット21A、21Bの変形が適切に防止される。
【0044】
また、上側バンパー部材10Aの連結部20Aと下側バンパー部材10Bの連結部20Bは、互いに重なった状態で、補強部材30の第1、第2の挟持壁部32、33により挟持されるので、上側バンパー部材10Aと下側バンパー部材10Bは、連結部20A、20Bにおいて、補強部材30により連結される。したがって、補強部材30は、連結部材としても機能し、補強部材30の他に連結部材を用意する必要がなくなるので、車両外装品の構成を簡素化でき、部品点数の減少によるコスト削減を図り得る。
【0045】
また、補強部材30の係止アーム44の係止爪45が、バンパー10の係止穴25A、25Bに係合して、補強部材30がバンパー10に係止されるので、補強部材30の脱落が適切に防止される。また、係止アーム44の係止穴25A、25Bに対する係脱は、操作部46を押す操作だけで容易に行うことができる。
【0046】
図10には、本発明の他の実施形態の概略を示す。図示されるように、本実施形態の補強部材50は、板形状の本体51と、本体51の下面に設けられた支柱部52と、支柱部52の両側の所定位置に形成された嵌合穴53を備えている。一方、バンパー54には、スリット55と、スリット55の両側の所定位置に設けられた突起部56を備えている。
【0047】
補強部材50をバンパー54に装着するときには、支柱部52をスリット55に配置するとともに、両側の突起部56をそれぞれ対応する嵌合穴53に嵌合させる。これにより、スリット55の両側が補強部材50によって保持され、スリット55が外側に押し広げられる変形が規制されるので、バンパー54の機械的強度が高められる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲において適宜の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、補強部材30の保持部を、補強部材30の外壁の一部を構成する第1、第2の保持壁部37、38としたが、本発明における保持部の形態は、この実施形態に限定されるものではなく、スリット両側の被保持部をスリットと反対側から保持するものであれば、任意の形態をとり得るものである。
【0049】
また、
図10に示す実施形態については、補強部材50に突起部を設け、バンパー54に突起部が嵌合する嵌合穴を設けるようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、車両用バンパーの機械的強度を高めるために利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
10 車両用バンパー
10A 上側バンパー部材
10B 下側バンパー部材
11 バンパーの正面部
12 バンパーの側面部
13 バンパーの屈曲部
14 バンパーの屈曲部
20A、20B 連結部
21、21A、21B スリット
22A、22B スリットの開口端
23A、23B 第1の突出部
24A、24B 第2の突出部
25A、25B 係止穴
30 補強部材
31 補強部材の前端
32 第1の挟持壁部
33 第2の挟持壁部
34 突条
35 支柱部
36 補強部材の後端
37 第1の保持壁部
38 第2の保持壁部
39 第1の嵌合凹部
40 第2の嵌合凹部
41 第1の保持壁部の保持凸部
42 第2の保持壁部の保持凸部
43 内側壁面
44 係止アーム
45 係止爪
46 操作部
47 接続部
50 補強部材
51 補強部材の本体
52 支柱部
53 嵌合穴
54 バンパー
55 スリット
56 突起部