(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】表皮係止用クリップ
(51)【国際特許分類】
A47C 31/02 20060101AFI20241227BHJP
B68G 7/052 20060101ALI20241227BHJP
F16B 2/22 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A47C31/02 B
B68G7/052 A
F16B2/22 C
(21)【出願番号】P 2021191596
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】知野見 勇平
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-186324(JP,A)
【文献】特開2019-138471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0011853(US,A1)
【文献】米国特許第8690257(US,B2)
【文献】国際公開第2021/177405(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 31/02
B68G 7/052
F16B 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体に埋設されて前記発泡体に保持される板状の基部と、
前記基部の幅方向に間隔をあけて設けられ、前記基部の板厚方向に延びる一対の延設部と、
前記一対の延設部の先端部にそれぞれ設けられ、前記発泡体を覆う表皮が備える被係止部を係止する係止部と、
前記延設部から前記基部の幅方向外側へ向けて延び、前記延設部が前記幅方向外側へ撓むと、前記基部に当接して前記延設部を支持する支持部と、
を有
し、
前記基部は、前記支持部の先端部が挿入される挿入部と、前記挿入部の前記幅方向外側に設けられた被係合部とを有し、
前記支持部は、前記支持部の先端部側に前記被係合部と係合する係合部とを有する、表皮係止用クリップ。
【請求項2】
前記挿入部は、前記基部に設けられた貫通孔である、請求項
1に記載の表皮係止用クリップ。
【請求項3】
前記支持部は、湾曲形状部を有する、請求項1
又は請求項2に記載の表皮係止用クリップ。
【請求項4】
前記支持部の基端部は、前記延設部の先端部側に位置する、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の表皮係止用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮係止用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表皮係止用クリップが開示されている。この表皮係止用クリップは、シートのパッド(発泡体)の内部に配置されており、シートのパッドを覆う表皮材(表皮)に取り付けられたサスペンダと係合した状態で、表皮材をパッドに拘束する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の表皮係止用クリップでは、パッドのローラークラッシングの際に、延設部が押されて弾性変形すると、延設部に設けられた突起が基部に立設された立上部に当接して延設部の塑性変形(破損)が抑制されるようになっている。
【0005】
また、上記表皮係止用クリップには、発泡体に保持される基部の縁辺に一対の切欠きが設けられている。この表皮係止用クリップに発泡体から抜け出る力が作用した場合、基部の一対の切欠き近傍が変形してねじれ、基部が発泡体から抜け出るのが抑制されるようになっている。しかしながら、市場では、表皮係止用クリップが発泡体から抜け出るのを更に抑制することが望まれている。
【0006】
本発明の課題は、発泡体の内部に配置される表皮係止用クリップにおいて、発泡体のローラークラッシングの際の破損を抑制し、かつ、発泡体に保持される基部に延設部の変形を抑制する部位を立設する構成と比べて、発泡体からの抜け出しを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様の表皮係止用クリップは、発泡体に埋設されて前記発泡体に保持される板状の基部と、前記基部の幅方向に間隔をあけて設けられ、前記基部の板厚方向に延びる一対の延設部と、前記一対の延設部の先端部にそれぞれ設けられ、前記発泡体を覆う表皮が備える被係止部を係止する係止部と、前記延設部から前記基部の幅方向外側へ向けて延び、前記延設部が前記幅方向外側へ撓むと、前記基部に当接して前記延設部を支持する支持部と、を有する。
【0008】
第1態様の表皮係止用クリップでは、発泡体に保持された状態において例えば、ローラークラッシングによって延設部に外力が作用すると、延設部が基部の幅方向外側へ撓み、支持部が基部に当接すると、支持部によって延設部が支持される。このように表皮係止用クリップでは、支持部と基部との当接によって延設部の撓み変形が抑制されるため、発泡体のローラークラッシングの際に、延設部が塑性変形して破損するのが抑制される。
【0009】
また、第1態様の表皮係止用クリップでは、延設部の破損を抑制するための支持部が延設部に設けられているため、例えば、延設部の破損を抑制するための立上部が基部に設けられる構成と比べて、延設部と基部との間に発泡体が入り込みやすい。このため、上記表皮係止用クリップでは、延設部と基部と支持部とで囲まれる領域に発泡体が十分に入り込むことで、基部が発泡体に保持される力が強くなる。すなわち、上記表皮係止用クリップは、発泡体からの抜け出しが抑制される。
【0010】
本発明の第2態様の表皮係止用クリップは、第1態様の表皮係止用クリップにおいて、前記基部は、前記支持部の先端部が挿入される挿入部と、前記挿入部の前記幅方向外側に設けられた被係合部とを有し、前記支持部は、前記支持部の先端部側に前記被係合部と係合する係合部とを有する。
【0011】
第2態様の表皮係止用クリップでは、発泡体が基部の挿入部に入り込むことで発泡体からの抜け出しが更に抑制される。
【0012】
第3態様の表皮係止用クリップは、第2態様の表皮係止用クリップにおいて、前記挿入部は、前記基部に設けられた貫通孔である。
【0013】
第3態様の表皮係止用クリップでは、基部に設けられた挿入部としての貫通孔を通して、延設部と基部との間、詳細には、延設部と基部と支持部とで囲まれる領域に発泡体が入り込みやすくなる。これにより、上記表皮係止用クリップでは、発泡体からの抜け出しが更に抑制される。
【0014】
第4態様の表皮係止用クリップは、第1態様~第3態様のいずれか一態様の表皮係止用クリップにおいて、前記支持部は、湾曲形状部を有する。
【0015】
第4態様の表皮係止用クリップでは、支持部が湾曲形状部を有するため、支持部が基部に当接することによって支持部に作用する外力の力方向を湾曲形状部で分散できる。これにより、支持部に作用する外力が大きくても、延設部が塑性変形して破損するのが抑制される。
【0016】
第5態様の表皮係止用クリップは、第1態様~第4態様のいずれか一態様の表皮係止用クリップにおいて、前記支持部の基端部は、前記延設部の先端部側に位置する。
【0017】
第5態様の表皮係止用クリップでは、支持部の基端部が延設部の先端部側に位置することから、例えば、支持部の基端部が延設部の基端部側に位置する構成と比べて、延設部と基部と支持部とで囲まれる領域が広くなり、延設部と基部と支持部との間により多くの発泡体が入り込みやすくなる。これにより、上記表皮係止用クリップでは、発泡体からの抜け出しが更に抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発泡体の内部に配置される表皮係止用クリップにおいて、発泡体のローラークラッシングの際の破損を抑制し、かつ、発泡体に保持される基部に延設部の変形を抑制する部位を立設する構成と比べて、発泡体からの抜け出しを抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態のクリップを示した斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態のクリップを示した斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態のクリップを示した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態のクリップを示した断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態のクリップを示した断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態のクリップを示した断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態のクリップを示した断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態のクリップを示した断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態のクリップを上方側から見た斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態のクリップを下方側から見た斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態のクリップを示した平面図である。
【
図12】本発明の一実施形態のクリップを示した底面図である。
【
図13】本発明の一実施形態のクリップを示した正面図である。
【
図14】本発明の一実施形態のクリップが用いられるシートを示した分解斜視図である。
【
図15】本発明の一実施形態のクリップが用いられるシートを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態の表皮係止用クリップの一例を
図1~
図15を参照しながら説明する。なお、図中に示す矢印Hは部品上下方向を示し、矢印Wは部品幅方向を示し、矢印Lは部品前後方向を示す。
【0021】
まず、表皮係止用クリップ20(以下単に「クリップ20」)が用いられる車両用のシート100について説明する。シート100は、
図15に示されるように、乗員の臀部等を支持するクッション部110と、背部及び腰部等を支持するバック部120と、頭部を支持するヘッドレスト128とを備えている。
【0022】
クッション部110は、
図14に示されるように、クッション112(発泡体の一例)と、表皮114とを備えている。さらに、クッション112は、メイン部112Aと、メイン部112Aを幅方向から挟むように配置された一対のサポート部112Bとを備えている。
【0023】
それぞれのサポート部112Bとメイン部112Aとの間には、溝116が形成され、溝116の底に、クリップ20が配置されている。具体的には、クッション112を発泡成形する際に、クリップ20を金型にインサートすることで溝116の底にクリップ20が配置されるようになっている(
図4参照)。
【0024】
そして、表皮114に取り付けられたシート状のシート部材117に固定されている被係止部の一例としてのサスペンダ118が、クリップ20に取り付けられるようになっている(
図7参照)。なお、サスペンダ118、及びクリップ20については、詳細を後述する。
【0025】
同様に、バック部120は、
図14に示されるように、クッション122(発泡体の一例)と、表皮124とを備えている。さらに、クッション122は、メイン部122Aと、メイン部122Aを幅方向から挟むように配置された一対のサポート部122Bとを備えている。
【0026】
それぞれのサポート部122Bとメイン部122Aとの間には、溝126が形成され、溝126の底に、クリップ20が配置されている。具体的には、クッション122を発泡成形する際に、クリップ20を金型にインサートすることで溝126の底にクリップ20が配置されるようになっている(
図4参照)。
【0027】
また、一方のサポート部122B側には、サイドエアバック132(以下単に「エアバック」と記載する)が配置されている。そして、表皮124には、エアバック132が展開した際にエアバック132を外部へ放出するためのスリット(図示省略)が形成されている。
【0028】
そして、表皮124に取り付けられたシート部材127に固定されている被係止部の一例としてのサスペンダ118が、クリップ20に取り付けられるようになっている(
図7参照)。なお、サスペンダ118、及びクリップ20については、詳細を後述する。
【0029】
サスペンダ118は、溝116、126の底面に沿って延び(
図7の紙面奥行方向に延び)、
図7に示されるように、先端側が先細りとなっている。そして、サスペンダ118の基端側の部分には、外側(
図7の左右方向側)に突出する一対の突起118Aが形成されている。
【0030】
<クリップ>
クリップ20は、
図9に示されるように、基部22と、保持部30と、支持部40とを有している。基部22と保持部30とは、樹脂材料で一体的に形成されている。言い換えると、本実施形態のクリップ20は、樹脂の一体成形品である。前述の通り、クッション112の溝116の底とクッション122の溝126の底に複数のクリップ20がそれぞれ配置される。
【0031】
(基部)
基部22は、クリップ20において、クッション112、122に埋設されてクッション112、122に保持される部分である。この基部22は、板状とされている。具体的には、基部22は、角部が円弧状に湾曲した長方形状の板体である。
【0032】
基部22には、
図9及び
図10に示されるように、一方の縁辺22Aに沿って部品前後方向に並ぶ3個の貫通孔24と、他方の縁辺22Aに沿って部品前後方向に並ぶ3個の貫通孔24とが形成されている。つまり、これらの貫通孔24は、部品前後方向に並んで部品幅方向に複数列(本実施形態では2列)形成されている。そして、クッション112、122(
図14参照)を発泡成形する際に、発泡体が貫通孔24に入り込むようになっている(
図7参照)。これにより、クリップ20において、基部22がクッション112、122に埋設されてクッション112、122に保持される。
【0033】
なお、クリップ20がクッション112、122に保持された状態では、基部22は、
図4に示されるように、クッション112、122の溝116、126の底面に沿って延びるように配置されている。言い換えると、クッション112に保持されたクリップ20は、溝116の延びる方向が部品前後方向となり、クッション122に保持されたクリップ20は、溝126の延びる方向が部品前後方向となる。
【0034】
(保持部)
保持部30は、
図3に示されるように、サスペンダ118を保持可能な部分である。
図9に示されるように、基部22の表面から上方側へ立ち上がり、部品前後方向に並んで2個備えられている。
図11に示されるように、一方の保持部30と他方の保持部30とが、基部22の部品前後方向の中心線L1を挟んで配置されている。基部22の中心線L1上には、6つの貫通孔24のうち、部品前後方向の中央に位置する一対の貫通孔24C(
図9参照)が配置されている(
図11及び
図12参照)。そして、一方の保持部30を挟んで部品幅方向両側には、部品前後方向の一方側に位置する一対の貫通孔24Aが配置されている。また、他方の保持部30を挟んで部品幅方向両側には、部品前後方向の他方側に位置する貫通孔24Bが配置されている。それぞれの保持部30は、概ね同じ形状のため、以下一方の保持部30について説明する。なお、本実施形態の一対の貫通孔24Cは、本発明における挿入部の一例である。
【0035】
保持部30は、
図4及び
図9に示されるように、一対の延設部32と、一対の係止爪34と、を有している。
【0036】
一対の延設部32は、基部22の部品幅方向に間隔をあけて設けられ、基部22の板厚方向にそれぞれ延びている。具体的には、一対の延設部32は、基部22の表面からそれぞれ立ち上がり、互いに対向して配置されている。
【0037】
一対の係止爪34は、一対の延設部32の先端部にそれぞれ設けられ、サスペンダ118を係止する。具体的には、一対の係止爪34は、サスペンダ118を挟み込んで係止する。
【0038】
一対の延設部32、及び一対の係止爪34は、基部22の部品幅方向の中心線L2(
図4参照)に対して対称とされている。
【0039】
一対の延設部32は、それぞれ部品上下方向に沿って延びている。そして、それぞれの延設部32は、それぞれの延設部32の先端側が中心線L2から離れるように弾性変形可能とされている。
【0040】
係止爪34は、一対の係止爪34の先端側が互いに近接するように、延設部32の先端部側にそれぞれ形成されている。具体的には、係止爪34の先端側は中心線L2寄りに形成されている。
【0041】
ここで、クリップ20がクッション112、122に保持された状態では、保持部30は、
図4に示されるように、クッション112、122の溝116、126に配置され、係止爪34が発泡体から外部に露出するようになっている。
【0042】
また、一対の係止爪34が、サスペンダ118を挟み込んで係止する際には、
図6及び
図7に示されるように、それぞれの延設部32は、一対の係止爪34が互いに離間するように弾性変形するようになっている。
【0043】
一対の延設部32の先端部側には、突起36がそれぞれ形成されている。この突起36は、
図4に示されるように、延設部32が互いに対向する側とは反対側(係止爪34が形成される側とは反対側)に突出している。
【0044】
(支持部)
支持部40は、クリップ20において、外力によって弾性変形する延設部32を支持することで、延設部32の塑性変形を抑制する部位である。この支持部40は、延設部32の基部22の部品幅方向外側へ向けて延びている板状部である。具体的には、支持部40は、延設部32から部品幅方向外側で且つ基部22に向けて延びている。さらに、支持部40は、円弧状に湾曲する湾曲形状部42を有している。この湾曲形状部42は、部品幅方向外側で且つ基部22に向けて円弧状に湾曲している。また、支持部40の基端部(延設部32との接続部分)は、延設部32の先端部側に位置している。言い換えると、支持部40は、延設部32の先端部側から部品幅方向外側で且つ基部22に向けて延びている。
【0045】
また、支持部40は、
図8及び
図13に示されるように、先端部側に基部22における貫通孔24Cの縁部25と係合する係合部44を有している。この係合部44は、支持部40の先端部側から部品幅方向外側へ向けて突出する突起である。そして、延設部32が部品幅方向外側へ撓む(弾性変形する)と、基部22に当接して延設部32を支持する。具体的には、
図8に示されるように、支持部40は、該延設部32が部品幅方向外側へ撓むと、先端部が貫通孔24Cに挿入され、係合部44が貫通孔24Cの縁部25に当接して延設部32を支持する。なお、貫通孔24Cの縁部25は、支持部40の先端部が挿入される挿入部の一例としての貫通孔24Cの部品幅方向外側に設けられた被係合部の一例である。また、本発明はこの構成に限定されず、例えば、挿入部の一例として基部22に設けられた凹部を用いてもよい。
【0046】
ここでクリップ20がクッション112、122に保持された状態では、延設部32と基部22と支持部40との間の領域に発泡体が充填されている。
【0047】
そして、一対の係止爪34が互いに離間するように延設部32が弾性変形すると(
図5及び
図6参照)、
図8に示されるように、支持部40の係合部44が基部22の貫通孔24Cの縁部25に当接(面接触)して延設部32の変形を抑制する。
【0048】
次に、クリップ20の作用を、クッション112、122にローラークラッシングした際のクリップの変形状況、表皮114、124に取り付けられているシート部材117、127に固定されていたサスペンダ118をクリップ20に取り付ける作業、及びエアバック132が展開した場合にクリップ20に過剰な引き抜き力が作用した場合のクリップ20の変形状況によって説明する。
【0049】
(ローラークラッシング)
図8には、脱型後に一対のローラ140(
図8では一方のローラのみ図示)でクッション112、122をクラッシングした際のクリップ20の変形状況が示されている。
図8に示されるように、クッション112、122を一対のローラ140で挟むと、一対のローラ140からの圧力によって延設部32が部品幅方向外側へ撓む(弾性変形する)。延設部32が撓むと、支持部40の係合部44が基部22の縁部25に当接し、支持部40が延設部32を支持する。このように支持部40の係合部44が基部22の縁部25に当接することによって、延設部32の撓み変形が抑制されるため、クッション112、122のローラークラッシングの際に、クリップ20の延設部32が塑性変形して破損するのが抑制される。
【0050】
(取付作業)
サスペンダ118をクリップ20に取り付ける場合には、
図5に示されるように、サスペンダ118を溝116、126に挿入する。サスペンダ118を溝116、126に挿入すると、先細りとされているサスペンダ118の先端側の部分と、一対の係止爪34とが当接する。
【0051】
さらに、サスペンダ118を溝116、126の底に向けて挿入すると、
図6に示されるように、一対の係止爪34がサスペンダ118に押圧され、一対の係止爪34が互いに離間するように延設部32が弾性変形する。これより、一対の係止爪34の間をサスペンダ118が通過するのが許容される。この際、支持部40の係合部44と、基部22の縁部25とは当接することなく、隙間が形成される。
【0052】
サスペンダ118の突起118Aが一対の係止爪34の間を通過すると、
図7に示されるように、延設部32が弾性復帰し、一対の係止爪34がサスペンダ118を挟み込んで係止する。これにより、サスペンダ118がクリップ20に取り付けられる。
【0053】
このようにして、サスペンダ118をクリップ20に取り付ける取付作業が完了する。
【0054】
(エアバック転開時)
図2、
図7には、引き抜き力が作用していないサスペンダ118がクリップ20に取り付けられている状態が示されている。
【0055】
しかし、何らかの理由でエアバック132(
図14参照)が展開した場合には、シート100の内側からエアバック132が表皮124を押圧する。エアバック132が表皮124を押圧すると、
図1、
図3に示されるように、サスペンダ118が上方側へ移動する。サスペンダ118が上方側へ移動することで、サスペンダ118の突起118Aが保持部30の係止爪34と押圧し、保持部30が上方側へ持ち上げられる。これにより、クリップ20には、クリップ20がクッション112、122から抜き出る力が生じる。
【0056】
ここで、
図3に示されるように、クリップ20では、延設部32の破損を抑制するための支持部40が延設部32に設けられているため、例えば、延設部の破損を抑制するための立上部が基部に設けられる構成と比べて、延設部32と基部22との間に発泡体が入り込みやすい。このため、クリップ20では、延設部32と基部22と支持部40とで囲まれる領域に発泡体が十分に入り込むことで、基部22が発泡体(クッション112、122)に保持される力が強くなる。すなわち、クリップ20は、発泡体からの抜け出しが抑制される。
【0057】
また、クリップ20では、発泡体が基部22の貫通孔24A、24B、24Cに入り込むことで発泡体からの抜け出しが更に抑制される。
【0058】
さらに、クリップ20では、基部22に設けられた貫通孔24Cを通して、延設部32と基部22との間、詳細には、延設部32と基部22と支持部40とで囲まれる領域に発泡体が入り込みやすくなる。これにより、クリップ20では、発泡体からの抜け出しが更に抑制される。
【0059】
また、クリップ20では、支持部40が湾曲形状部42を有するため、支持部40が基部22に当接することによって支持部40に作用する外力の力方向を湾曲形状部42で分散できる。これにより、支持部40に作用する外力が大きくても、延設部32が塑性変形して破損するのが抑制される。
【0060】
そして、クリップ20では、支持部40の基端部が延設部32の先端部側に位置することから、例えば、支持部40の基端部が延設部32の基端部側に位置する構成と比べて、延設部32と基部22と支持部40とで囲まれる領域が広くなり、延設部32と基部22と支持部40との間により多くの発泡体が入り込みやすくなる。これにより、クリップ20では、発泡体からの抜け出しが更に抑制される。
【0061】
また、クリップ20では、基部22における保持部30を挟んで部品幅方向両外側の部分にそれぞれ貫通孔24A、24Bを形成していることから、例えば、当該部分に立上部を設ける構成と比べて、基部22の樹脂量を減らすことができる。これにより、クリップ20が軽量となり、このクリップ20を用いた車両用シートが軽量化される。このような軽量の車両用シートを用いることで、車両の燃費を改善することができる。
【0062】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、クリップ20に保持部30が2個備えられたが、3個以上であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、エアバック132の展開時に表皮124を押圧することで、クリップ20がクッション112、122から抜き出ようとする場合を例にとって説明したが、特にエアバック132が展開しなくてもよくクリップ20に前述した力が生じればよい。
【0064】
また、上記実施では、クリップ20を車両用のシート100に用いた場合を例にとって説明したが、クリップ20を事務椅子、家庭用のソファー、又は座椅子等の他のシート(椅子)に用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
20 クリップ
22 基部
24C 貫通孔(挿入部の一例)
25 縁部(被係合部の一例)
32 延設部
34 係止爪(係止部の一例)
40 支持部
42 湾曲形状部
44 係合部
112 クッション(発泡体の一例)
118 サスペンダ(被係止部の一例)
122 クッション(発泡体の一例)