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  • 特許-包装用原紙及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】包装用原紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/10 20060101AFI20241227BHJP
   D21H 11/04 20060101ALI20241227BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
D21H27/10
D21H11/04
B65D65/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021198116
(22)【出願日】2021-12-06
(65)【公開番号】P2023084032
(43)【公開日】2023-06-16
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】沓名 稔
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-001038(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 27/10
D21H 11/04
B65D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主成分とする包装用原紙であって、縦方向の比引張り強さが0.09kN・m/g以上であり、横方向の比引裂強さが10.0mN・m2/g以上であり、パルプの50質量%以上が針葉樹クラフトパルプであり、離解フリーネスが400~600mlCSFであり、密度が0.70~1.30g/cm 3 あることを特徴とする包装用原紙。
【請求項2】
前記パルプの90質量%以上が針葉樹クラフトパルプであることを特徴とする請求項1に記載の包装用原紙。
【請求項3】
前記針葉樹クラフトパルプが針葉樹未晒クラフトパルプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用原紙。
【請求項4】
前記包装用原紙の片艶であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の包装用原紙。
【請求項5】
前記包装用原紙の米坪量が50~200g/m2であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の包装用原紙。
【請求項6】
針葉樹クラフトパルプを50質量%以上含むパルプスラリーを円網抄紙機にて抄紙する工程を有し、前記パルプスラリーの離解フリーネスが400~600mlCSFであり、縦方向の比引張り強さを0.09kN・m/g以上とし、横方向の比引裂強さを10.0mN・m2/g以上とし、密度を0.7~1.3g/cm3とすることを特徴とする包装用原紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装用原紙に関し、更に詳しくは、包装加工適性に優れた包装用原紙であって、特に、塗工適性と印刷適性に優れ、包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量は4億トン/年を超えると言われ、その中でも包装容器セクターでのプラスチック生産量が特に多く、プラスチックゴミの原因になっている。包装容器に使用されるプラスチックとしては、飲料のボトル等に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)、レジ袋や容器のラミネートに使用されるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)が最も多く使用されている。プラスチックは半永久的に分解せず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化して生態系に深刻な悪影響を与えており、特に海洋の汚染は著しく、そのプラスチックゴミは回収不可能と言われている。今後、プラスチックの使用を低減することが地球環境にとって必要である。
【0003】
工業的に大量の包装処理を行う場合には、包装加工機で包装処理を行うのが一般的である。このような用途に用いられる包装加工機としては、プラスチックフィルムを袋状に加工し、内容物を充填する、いわゆるピロー包装機などがある。ピロー包装機はプラスチックフィルムの使用を前提として設計されているためプラスチックの使用を低減するために包装材料をプラスチックフィルムから紙へ置き換えた場合には、包装用紙が破れるなどして正常に包装加工ができないという問題がある。ピロー包装機以外の包装機械もプラスチックフィルムの使用を前提としており、同様の問題を有している。
【0004】
既存の包装用紙としては重包装用途でクラフト紙が流通しているが、重包装用クラフト紙は比引張強さが弱く、また低密度に起因して剛度が高いため、柔軟なプラスチックフィルムの仕様を前提としたピロー包装機などの包装機ではトラブルが発生するおそれがある。ピロー包装機では製袋加工と内容物の梱包をほぼ同時に行うため、包装体の剛度が高すぎると筒状にする工程などでシワや破れが発生するおそれがある。
【0005】
従来の技術としては、特許文献1に記載の、原料パルプとして広葉樹晒クラフトパルプと、針葉樹晒クラフトパルプと、針葉樹未晒クラフトパルプを用い、広葉樹晒クラフトパルプのフリーネスを500mlCSF以下、針葉樹晒クラフトパルプのフリーネスを660mlCSF以上、針葉樹未晒クラフトパルプのフリーネスを660mlCSF以上としたクラフト紙の製造方法についての技術があるが、縦方向の比引張強度が弱いため、包装機で紙が切れて正常に包装できないおそれがある。特許文献2に記載の、針葉樹未晒クラフトパルプを用い、ギャップフォーマー型抄紙機で製造するクラフト紙の製造方法についての技術があるが、密度が低く塗工適性と印刷適性に劣る。また重包装用途のため密度が低く、低密度に起因して剛度が高くなり、ピロー包装などの包装機械でトラブルが発生するおそれがあり、包装用原紙としては不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-131922号公報
【文献】特開2014-055372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、紙製の包装体でありながら、従来のプラスチックフィルムの使用を前提とした包装加工機でも正常に包装加工することができ、かつ塗工適性と印刷適性に優れた包装用原紙を提供することにある。
【0008】
また本発明のほかの目的とするところは、塗工適性と印刷適性に優れた包装用原紙の製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の包装用原紙は、パルプを主成分とする包装用原紙であって、縦方向の比引張り強さが0.09kN・m/g以上であり、横方向の比引裂強さが10.0mN・m2/g以上であり、パルプの50質量%以上が針葉樹クラフトパルプであり、離解フリーネスが400~600mlCSFであることを特徴とする。
【0011】
ここで「離解フリーネス」とは、JIS P 8220-1に準拠して包装用原紙を離解させた後、JIS P 8121-2に準拠してフリーネス(カナダ標準濾水度)を測定した値である。また、縦方向とは抄紙機での機械方向(Machine Direction方向)であり、横方向とは抄紙機での幅方向(Cross Direction)である。
【0012】
このような構成とすることで、塗工適性と印刷適性に優れ、包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙とすることができる。
【0013】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記パルプの90質量%以上が針葉樹クラフトパルプであっても良い。より縦方向の比引張強さと、横方向の比引裂強さが向上し、包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙とすることができる。
【0014】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記針葉樹クラフトパルプが未晒針葉樹クラフトパルプであっても良い。より縦方向の比引張強さと、横方向の比引裂強さに優れ、包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙とすることができる。
【0015】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、前記包装用原紙の密度が0.7~1.3g/cm3であってもよい。より塗工適性と印刷適性に優れ、包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙とすることができる。
【0016】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、包装用原紙の米坪量が50~200g/m2であってもよい。より縦方向の比引張強さと、横方向の比引裂強さに優れ、包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙を得ることができる。
【0017】
また、本発明の包装用原紙の製造方法は、針葉樹クラフトパルプを50質量%以上含むパルプスラリーを円網抄紙機にて抄紙する工程を有し、前記パルプスラリーのフリーネスが400~600mlCSFであり、縦方向の比引張り強さを0.09kN・m/g以上とし、横方向の比引裂強さを10.0mN・m2/g以上とし、密度を0.7~1.3g/cm3とすることを特徴とする。より縦方向の比引張強さと、横方向の比引裂強さに優れ、包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の包装用原紙は、塗工適性と印刷適性に優れ、包装加工機での破れ耐性に優れるため、包装袋として好適に加工が可能となり、従来プラスチック製の包装袋であったものを紙製包装に代替するための原紙として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例及び比較例による包装用原紙の配合と物性を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0021】
本発明の包装用原紙はパルプを主成分とする。ここで用いるパルプとしては、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹未晒サルファイトパルプ(NUSP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹未晒サルファイトパルプ(LUSP)に代表される木材未漂白化学パルプ、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)に代表される木材漂白化学パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、リファイナーグラウンドパルプ(RGP)、砕木パルプ(GP)に代表される機械パルプなどが挙げられる。これらの中でも、縦方向の比引張強さと、横方向の比引裂強さがより向上しやすい針葉樹クラフトパルプを使用することが好ましく、比較的に繊維長が長く、晒し工程での繊維へのダメージを受けていないという理由から、針葉樹未晒クラフトパルプであればより好ましい。
【0022】
本発明においては、パルプの50質量%以上を針葉樹クラフトパルプとし、針葉樹クラフトパルプの割合が90質量%以上であればより好ましい。針葉樹クラフトパルプを50質量%以上使用することで、縦方向の比引張強さと、横方向の比引裂強さに優れた包装用原紙を得ることができる。針葉樹クラフトパルプの割合が50%未満になると、縦方向の比引張強さと、横方向の比引裂強さに劣る。
【0023】
本発明にかかる包装用原紙においては原料パルプの離解フリーネスを、400~600mlCSFの範囲となるように調製する。離解フリーネスをこのような範囲にすることで、縦方向の比引張強さと横方向の比引裂強さに優れた包装用原紙を得ることができる。離解フリーネスを400~550mlCSFの範囲とすると、より縦方向の比引張強さに優れる包装用原紙を得ることができ好ましい。包装用原紙の離解フリーネスが400mlCSF未満であると、横方向の比引裂強さが低下するおそれがある。600mlCSFを超えると、密度や透気度が低下して塗工適性と印刷適性を損なうおそれがある。
【0024】
離解フリーネスは原料パルプの叩解によりコントロール可能であり、叩解方法は特に限定するものではなく、ビーター、ジョルダン、デラックス・ファイナー、ダブル・ディスク・レファイナー等、いずれの叩解機を単独または併用して使用してもよい。
【0025】
本発明の包装用原紙は、縦方向の比引張り強さが0.09kN・m/g以上、横方向の比引裂強さが10.0mN・m2/g以上となるようにする。比引張り強さと比引裂強さがこのような範囲となるように構成とすることで、包装加工適性に優れ、特に包装加工機での破れ耐性に優れた包装用原紙とすることができる。包装加工機による包装処理ではロール状の包装用原紙から連続的に袋を加工する工程があり、比引張り強さが0.09kN・m/g未満であると、用紙に部分的に切れ目が生じることでその部位に応力が集中し、連鎖的に破れが生じてロールが断裂することで加工効率が低下するおそれがある。また比引裂強さが10.0mN・m2/g未満であると、包装加工機で紙が切れて破れることにより加工効率が低下するおそれがある。比引張り強さは0.1kN・m/g以上であればより好ましい。また、比引裂強さは11.0mN・m2/g以上であればより好ましく、12.0mN・m2/g以上であればより好ましい。
【0026】
比引張り強さと比引裂強さが共に本発明の範囲であることで、破れ耐性に優れた包装用原紙を得ることが可能である。一般的には比引張り強さと比引裂き強さはトレードオフの関係性があり、例えば原料パルプのフリーネスを下げると比引張り強さは向上するが、比引裂き強さは低下する。また、包装用原紙の密度を下げることで比引裂き強さは向上するが、比引張り強さは低下する。比引張り強さと比引裂き強さの両方を高いレベルで維持する手段としては、例えば密度、原料パルプ種と配合率、繊維配向、離解フリーネス、の適切なコントロールなどが挙げられ、これらの手段を適宜組み合わせることができる。一例として、繊維配向のコントロールは丸網抄紙機を用いることで比較的容易に行える。
【0027】
比引裂強さの測定はJIS P 8116に準拠して測定可能であり、比引裂強さは引裂強さを米坪で除した値である。比引張強さの測定はJIS P 8113に準拠して測定可能であり、比引張強さは引張強さを米坪で除した値である。
【0028】
本発明において包装用原紙は、密度が0.7~1.3g/cm3であることが好ましく、0.75~1.0g/cm3であればより好ましい。密度をこの範囲とすることで、縦方向の比引張強さと横方向の比引裂強さに優れた包装用原紙を得やすくなる。密度が0.7g/cm3未満であると、比引裂強さは向上するが剛度が高くなるため包装加工機での加工効率が低下するおそれがある。また、包装用原紙内部の空隙が非常に大きくなるため、塗工適性と印刷適性が低下するおそれもある。一方、密度が1.3g/cm3を超えると、比引張強さは向上するが比引裂き強さが低下して包装加工機での加工効率が低下するおそれがある。密度は、離解フリーネス、原料パルプの種類、マシンカレンダー、ウェットプレスによって調整が可能である。
【0029】
本発明において包装用原紙は、透気度が50秒以上の範囲であることが好ましい。この範囲とすることで、より塗工適性と印刷適性に優れた包装用原紙を得ることが可能である。透気度が50秒を下回ると塗工適性と印刷適性が悪化するおそれがある。包装用原紙は包装する内容物によって様々な適性を付与することが必要であり、このような適性としては例えば耐水性、耐油性、酸素バリア性、水蒸気バリア性などが挙げられる。これらの適性を付与するための方法としては、例えば包装用原紙の片面もしくは両面に塗工液を塗工するという方法があり、この際に透気度や密度が低すぎると包装用原紙の内部の空隙が非常に大きくなるため空隙に塗工液が過剰に吸収されて所望する適性を得られないおそれがある。
【0030】
包装用原紙は様々な適性を付与する以外にも、商品としての意匠性を付与するために片面もしくは両面に印刷を行う場合がある。透気度や密度が低すぎると、このような場合にもインクが包装用原紙内部の空隙に過剰に吸収され、印刷画像が不鮮明になるおそれがある。透気度の測定はJIS P 8117:2009に準拠して、王研式透気度平滑度試験機で測定可能である。
【0031】
包装用原紙に塗工液を塗工する際の塗工量は、基紙の片面あたり固形分換算で3~20g/m2とすることが好ましい。塗工液を塗工する方法としては特に限定するものではなく、コーター方式、スプレー方式等の各種公知の塗布方式により塗布することができ、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、チャンプフレックスコーター、リップコーター、ロッドコーター、ゲートロールコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、フィルム転写型コーターなどの塗工方式によってオフマシンコーターあるいはオンマシンコーターで、塗工することができる。塗工後の乾燥方法についても特に限定するものでは無く、多筒シリンダードライヤー方式、ヤンキードライヤー方式、エアードライヤーなどの熱風乾燥に代表される空気乾燥方式、赤外線装置に代表される輻射乾燥方式などを用いることができる。これらの中でも、塗工液が塗工された塗工紙を熱風で浮かせて乾燥できるためにロール等の設備をバインダーで汚すことなく乾燥できる点から熱風乾燥方式が好ましい。
【0032】
本発明において包装用原紙は、米坪が50~200g/cm3の範囲であることが好ましく、60~120g/m2であればより好ましい。米坪が50g/m2未満になると包装加工機で破れが発生するおそれがある。一方、米坪が200g/m2を超えると剛度が高くなり過ぎるため包装加工機で正常に加工できれないおそれがある。
【0033】
本発明に用いる包装用原紙は、パルプスラリーを用いて抄紙することで得ることができる。パルプスラリーには、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、硫酸バンド、填料、サイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤、着色染料、着色顔料、嵩高剤等の各種製紙用資材を含有させることができる。填料としては、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、焼成クレー、硫酸バリウム、合成樹脂填料などの公知の填料を1種以上使用することができる。
【0034】
包装用原紙にサイズ剤を用いる場合には、パラフィンワックス系サイズ剤、マイクロクリスタリンワックス系サイズ剤、カルナウバ(カルナバワックス)系サイズ剤、アルキルケテンダイマーワックス系サイズ剤、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸サイズ剤、スチレンアクリル系サイズ剤等の中から1種以上を使用することができる。
【0035】
また、包装用原紙に紙力剤を用いる場合には、澱粉、カチオン化澱粉、その他変性澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂、植物ガム、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ゴム系ラテックス、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド樹脂など乾燥紙力の向上を促すものや、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン系のエポキシ樹脂など湿潤紙力の向上を促すもの等を1種以上使用することができる。
【0036】
本発明において包装用原紙の抄紙方法は特に限定するものではなく、円網抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機、これらの抄紙機のコンビネーション抄紙機など従来から周知の抄紙機を使用して、単層または抄合わせにて抄造できる。抄紙機の乾燥方法としては特に限定するものでは無く、多筒シリンダードライヤー方式、ヤンキードライヤー方式、熱風乾燥に代表される空気乾燥方式、赤外線装置に代表される輻射乾燥方式などを用いることができる。それらの中でも多筒シリンダードライヤー方式又はヤンキードライヤー方式が好ましく、特にヤンキードライヤー方式がより好ましい。ヤンキードライヤー方式で乾燥することにより基紙の片面にヤンキードライヤーの鏡面が転写されて片艶の紙となり、より塗工適性と印刷適性に優れた包装用原紙を得ることができる。ヤンキードライヤーに湿紙を張り付けて乾燥させる、いわゆる緊張乾燥とすることで、引裂強さの低下を防止できるため、引裂強さと引張強さとの両立することで、より包装加工機での包装加工適性に優れた包装用原紙を得ることができる。円網抄紙機は、槽中の紙原料をシリンダー型のワイヤーで抄くことにより繊維シートを作るため、紙原料に速度をつけてワイヤー上に載せる長網抄紙機に比べて、地合(均一性)が高く、繊維配向をコントロールしやすいため、引裂強さと引張強さとの両立することでき、より包装加工機での包装加工適性に優れた包装用原紙を得ることができる。
【実施例1】
【0037】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ固形分換算での質量部又は質量%を示す。また、硫酸バンドについては硫酸アルミニウム16水和物としての固形分部数を示す。
【0038】
(実施例1)
原料パルプとして針葉樹未晒クラフトパルプ(N-UKP)を90%、針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)を10%の比率で水中に分散して、叩解処理を行いパルプスラリーを得た。該パルプスラリー100部に、硫酸バンド(テクノ北越社製)2.5部、ロジン系サイズ材(商品名:AL-1300、星光PMC社製)0.35部をそれぞれ添加して紙料を得た後、その紙料を用いて円網抄紙機で抄紙し、ヤンキードライヤーで乾燥することで、坪量100g/m2、密度0.81g/cm3、の片艶の包装用原紙を得た。包装用原紙の離解フリーネスは475mlCSFであった。
【0039】
(実施例2)
実施例1において、原料パルプの比率を針葉樹未晒クラフトパルプ(N-UKP)75%、針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)25%とし、離解フリーネスを410mlCSFとした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0040】
(実施例3)
実施例1において、原料パルプの比率を針葉樹未晒クラフトパルプ(N-UKP)55%と、針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)20%、広葉樹晒クラフトパルプ(L-BKP)25%の比率とし、離解フリーネスを410mlCSFとした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0041】
(実施例4)
実施例1において、密度0.72g/cm3、離解フリーネスを550mlCSFとした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0042】
(実施例5)
実施例1において、密度0.98g/cm3、離解フリーネスを410mlCSFとした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0043】
(実施例6)
実施例1において、多筒シリンダードライヤーで乾燥することで両更の包装用原紙とした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0044】
(実施例7)
実施例1において、原料パルプを針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)100%とし、密度0.83g/cm3、離解フリーネスを420mlCSFとした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0045】
(実施例8)
実施例1において、原料パルプを針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)55%、広葉樹晒クラフトパルプ(L-BKP)45%とし、密度0.85g/cm3とした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0046】
(比較例1)
実施例1において、原料パルプを針葉樹未晒クラフトパルプ(N-UKP)100%とし、円網抄紙機での抄紙を長網抄紙機での抄紙に変更し、密度0.78g/cm3、離解フリーネスを350mlCSFとした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0047】
(比較例2)
実施例1において、密度0.65g/cm3、離解フリーネスを410mlCSFとした以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0048】
(比較例3)
実施例1において、原料パルプを針葉樹未晒クラフトパルプ(N-UKP)0%と、針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)10%、広葉樹晒クラフトパルプ(L-BKP)90%の比率とし、密度0.74g/cm3、離解フリーネスを450mlCSFとし、円網抄紙機での抄紙を長網抄紙機での抄紙に変更した以外は実施例1と同様にして包装用原紙を得た。
【0049】
得られた包装用原紙について、以下に示す方法により評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0050】
<包装用原紙の離解フリーネス>
JIS P 8220-1『パルプ-離解方法-第1部:化学パルプの離解』に準拠して、包装原紙を離解した後、JIS P 8121-2『パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法』に準拠して、包装用原紙の離解フリーネス(mlCSF)を測定した。
【0051】
<包装用原紙の密度>
JIS P 8118『紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の試験方法』に準拠して紙の密度(g/cm3)を測定した。
【0052】
<包装用原紙の比引張り強さ>
JIS P 8113『紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法』に準拠して紙の縦方向(T)の比引張り強さ(kN・m/g)を測定した。
【0053】
<包装用原紙の比引裂強さ>
JIS P 8116『紙-引裂強さ試験方法-エルメンドルフ形引裂試験機法』に準拠して紙の横方向(Y)の比引裂き強さ(mN・m2/g)を測定した。
【0054】
<塗工適性>
包装用原紙の片面に水系アクリル樹脂(ヘンケル社、AQUENCE BC-900F、固形分30%に希釈)塗工液を乾燥塗工量5g/m2となるようにメイヤーバーで塗工して、熱風乾燥機で120℃、30秒間乾燥させて作成した用紙を用いて、キット耐油度を測定した。キット耐油度の測定方法は、TAPPI T-559cm-02(耐油紙キット法)に準拠し、水系アクリル樹脂塗工液の塗工面を評価した。値(キット値)が高いほど耐油性が高い。また、実用レベルは値が5以上である。
○:キット耐油度5~12であり、塗工液の性能が発揮されており、実用上問題のない塗工適性である。
×:キット耐油度4以下であり、塗工液の性能が発揮されていないため、実用が難しい塗工適性である。
【0055】
実施例1~8で得られた包装用原紙は、縦方向の比引張強さが0.09kN・m/g以上であり、横方向の比引裂強さが10.0mN・m2/g以上であるので、比較例1~3の包装用原紙に比較して、例えばピロー包装機で破れることなく包装加工ができるなどの効果が期待できる。比較例1で得られた包装用原紙は、比引裂強さに劣るものであった。これは、長網抄紙機で抄紙を行ったことが原因であると考えられる。また、比較例2で得られた包装用原紙は、比引張強さと塗工適性に劣るものであった。これは、離解フリーネスが600mlCSFを上回っていることが原因であると考えられる。比較例3で得られた包装用原紙は、比引張強さ及び比引裂強さに劣るものであった。これは、針葉樹クラフトパルプの配合割合が低いことが原因であると考えられる。
図1