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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】ガス分離用膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20241227BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/60 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/38 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/48 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/42 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/70 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20241227BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20241227BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20241227BHJP
   C01B 32/174 20170101ALI20241227BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241227BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D69/10
B01D69/12
B01D69/02
B01D71/60
B01D71/38
B01D71/52
B01D71/44
B01D69/00
B01D71/56
B01D71/64
B01D71/48
B01D71/68
B01D71/42
B01D71/70 500
B01D71/32
B01D71/26
B01D63/08
B01D63/10
B01D63/02
B01D53/22
C01B32/168
C01B32/174
C01B32/50
【請求項の数】 39
(21)【出願番号】P 2021514356
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019051308
(87)【国際公開番号】W WO2020056414
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】62/731,790
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516046846
【氏名又は名称】オハイオ ステート イノベーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ダブリュー.エス.ウィンストン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヤン
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-027841(JP,A)
【文献】特表2013-545825(JP,A)
【文献】特表2014-500131(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107469635(CN,A)
【文献】Yang Han,Dongzhu Wu,W.S. Winston Ho,Nanotube-reinforced facilitated transport membrane for CO2/N2 separation with vacuum operation,Journal of Membrane Science,NL,Elsevier B.V.,2018年08月30日,567,Pages 261-271
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C01B 32/168
C01B 32/174
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜であって、
支持層と、
前記支持層上に配置された選択性ポリマー層と、を含み、
前記選択性ポリマー層が、選択性ポリマーマトリックスと、前記選択性ポリマーマトリックス内に分散したカーボンナノチューブとを含み、
前記選択性ポリマーマトリックスは、アミン含有ポリマーならびに2-(1-ピペラジニル)エチルアミンサルコシン塩(PZEA-Sar)および2-(1-ピペラジニル)エチルアミンアミノイソ酪酸(PZEA-AIBA)を含む移動担体を含み、
前記カーボンナノチューブが、親水性ポリマーで被覆されている、膜。
【請求項2】
前記選択性ポリマーマトリックスが、57℃および1気圧の供給圧力で、少なくとも10のCO:N選択性を有する、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記選択性ポリマーマトリックスが、57℃および1気圧の供給圧力で、10~500のCO:N選択性を有する、請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
前記選択性ポリマーマトリックスが、57℃および1気圧の供給圧力で、10~350のCO:N選択性を有する、請求項1~3のいずれかに記載の膜。
【請求項5】
前記アミン含有ポリマーが、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記アミン含有ポリマーが、ポリビニルアミンを含む、請求項5に記載の膜。
【請求項7】
前記選択性ポリマーマトリックスは親水性ポリマーをさらに含む、請求項1~6のいずれかに記載の膜。
【請求項8】
前記親水性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアミン、ポリシロキサン、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
前記親水性ポリマーが、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、またはポリエチレンイミン、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドからなる群から選択されるポリマーを含む、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
前記選択性ポリマーマトリックスが、架橋剤をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の膜。
【請求項11】
前記架橋剤が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、アクリル酸ビニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、請求項10に記載の膜。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブを含む、請求項1~11のいずれかに記載の膜。
【請求項13】
前記カーボンナノチューブが、多層カーボンナノチューブを含む、請求項1~12のいずれかに記載の膜。
【請求項14】
前記選択性ポリマー層が、前記選択性ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、0.5重量%~5重量%のカーボンナノチューブを含む、請求項1~13のいずれかに記載の膜。
【請求項15】
前記カーボンナノチューブが、10nm~50nmの平均直径を有する、請求項1~14のいずれかに記載の膜。
【請求項16】
前記カーボンナノチューブが、50nm~20μmの平均長さを有する、請求項1~15のいずれかに記載の膜。
【請求項17】
前記カーボンナノチューブが、側壁官能化カーボンナノチューブを含む、請求項1~16のいずれかに記載の膜。
【請求項18】
前記側壁官能化カーボンナノチューブが、ヒドロキシ官能化カーボンナノチューブ、カルボキシ官能化カーボンナノチューブ、アミン官能化カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の膜。
【請求項19】
前記支持層が、ガス透過性ポリマーを含む、請求項1~18のいずれかに記載の膜。
【請求項20】
前記ガス透過性ポリマーが、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ニトリル系ポリマー、高分子有機シリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドから選択されるポリマーを含む、請求項19に記載の膜。
【請求項21】
前記ガス透過性ポリマーが、ポリエーテルスルホンまたはポリスルホンを含む、請求項19または20に記載の膜。
【請求項22】
前記支持層が、ベース上に配置されたガス透過性ポリマーを含む、請求項1~21のいずれかに記載の膜。
【請求項23】
前記ベースが、不織布を含む、請求項22に記載の膜。
【請求項24】
前記不織布が、ポリエステルから形成された繊維を含む、請求項23に記載の膜。
【請求項25】
前記膜が、前記支持層と前記選択性ポリマー層との間に配置された透過性層をさらに含む、請求項1~24のいずれかに記載の膜。
【請求項26】
前記透過性層が、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(トリメチルシリルプロピン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドから選択されるガス透過性ポリマーを含む、請求項25に記載の膜。
【請求項27】
前記膜が、平面シート、螺旋巻き、中空糸、またはプレートアンドフレーム構成で構成されている、請求項1~26のいずれかに記載の膜。
【請求項28】
前記膜が、酸性ガスに対して選択的に透過性である、請求項1~27のいずれか一項に記載の膜。
【請求項29】
前記膜が、二酸化炭素、硫化水素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、窒素酸化物、塩化水素、水、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される流体に対して選択的に透過性である、請求項1~28のいずれか一項に記載の膜。
【請求項30】
第1のガスを、供給ガス流から分離するための方法であって、請求項1~29のいずれかによって定義された膜を、前記第1のガスを含む前記供給ガス流と接触させて、前記第1のガスの膜貫通透過を可能にすることを含む、方法。
【請求項31】
前記供給ガスが、水素、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、一酸化炭素、窒素、メタン、水、硫黄酸化物、窒素酸化物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のガスが、二酸化炭素、硫化水素、塩化水素、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記供給ガスが、窒素、水素、一酸化炭素、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される第2のガスを含み、
前記膜が、57℃および1気圧の供給圧力で、20~300の第1のガス/第2のガス選択性を呈する、請求項3032のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記膜が、供給側面および透過側面を含み、前記方法が、真空を前記膜の前記透過側面に適用して前記第1のガスを除去することをさらに含む、請求項3033のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記膜が、供給側面および透過側面を含み、前記方法が、掃気ガスを前記膜の前記透過側面全域に流動させて前記第1のガスを除去することをさらに含む、請求項3034のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記掃気ガスが、空気、水蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるガスを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記供給ガスが、25℃~100℃の温度を有する、請求項3036のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記供給ガスが、少なくとも100℃の温度を有する、請求項3037のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
膜を作製する方法であって、選択性ポリマー層を、支持層上に堆積させることを含み、前記選択性ポリマー層が、選択性ポリマーマトリックス、および前記選択性ポリマーマトリックス内に分散したカーボンナノチューブを含み、
前記選択性ポリマーマトリックスは、アミン含有ポリマーならびに2-(1-ピペラジニル)エチルアミンサルコシン塩(PZEA-Sar)および2-(1-ピペラジニル)エチルアミンアミノイソ酪酸(PZEA-AIBA)を含む移動担体を含み、
前記カーボンナノチューブが、親水性ポリマーで被覆されている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月14日に出願された米国特許仮出願第62/731,790号に対する優先権の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府が資金提供する研究に関する声明
この発明は、米国エネルギー省によって授与された助成番号DE-FE0026919の下で、政府の支援を受けて行われた。政府は、この発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素、硫化水素、および塩化水素を含有するガス流、または二酸化炭素、窒素酸化物、および硫黄酸化物を含有するガス流を生成する非常に多くの工業プロセスが存在する。水素および窒素などの、ガス流の他の成分から、これらのガスのうちの1つ以上を除去することが、多くの場合望ましい。選択的に透過性の高分子膜が、水素精製および二酸化炭素隔離を含む、様々なガス分離用途について調査されてきた。しかしながら、当該技術分野において、膜、膜の作製方法、およびガスの分離方法の必要性が残っている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2010/0206811号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2013/0341570号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2018/0147513号明細書
(特許文献4) 国際公開第2019/040445号
(特許文献5) 中国特許出願公開第101821089号明細書
(特許文献6) 中国特許出願公開第103124590号明細書
(特許文献7) 中国特許出願公開第104785122号明細書
(特許文献8) 中国特許第107847837号明細書
(特許文献9) 米国特許第7,964,020号明細書
(特許文献10) 米国特許第9,216,390号明細書
(特許文献11) 米国特許出願公開第2008/0168900号明細書
(特許文献12) 米国特許出願公開第2010/0206811号明細書
(特許文献13) 米国特許出願公開第2013/0341570号明細書
(特許文献14) 米国特許出願公開第2017/0056839号明細書
(特許文献15) 米国特許出願公開第2018/0147513号明細書
(特許文献16) 国際公開第2019/040445号
(特許文献17) 米国特許出願公開第2012/0080380号明細書
(特許文献18) 米国特許出願公開第2014/0370252号明細書
(特許文献19) 米国特許出願公開第2016/0263531号明細書
(非特許文献)
(非特許文献1) ANSALONI et al.Facilitated transport membranes containing amino-functionalized multi-walled carbon nanotubes for high-pressure CO2 separations,J.Memb.Sci.490(2015)18-28.
(非特許文献2) CHEN et al.New Pebax/zeolite Y composite membranes for CO2 capture from flue gas,J.Membr.Sci.495(2015)415-423.
(非特許文献3) CHEN et al.High-molecular-weight polyvinylamine/piperazine glycinate membranes for CO2 capture from flue gas,J.Membr.Sci.(2016)376-384
(非特許文献4) CHEN et al.Amine-containing polymer/zeolite Y composite membranes for CO2/N2 separation,J.Membr.Sci.,497(2016)21-28.
(非特許文献5) CHINESE NATIONAL INTELLECTUAL PROPERTY ADMINISTRATION.Office Action issued for Chinese Application No.201980074095.2,dated March 11,2022.
(非特許文献6) EUROPEAN PATENT OFFICE.Extended European Search report issued for EP Application No.19860928.1,dated May 10,2022.
(非特許文献7) HABIBIANNEJAD et al.Pebax-1657 mixed matrix membrane containing surface modified multi-walled carbon nanotubes for gas separation." RSC advances 6.83 (2016): 79563-79577.
(非特許文献8) HAN et al.Nanotube-reinforced facilitated transport membrane for CO2/N2 separation with vacuum operation. Journal of Membrane Science 567 (2018): 261-271.
(非特許文献9) HE et al.Energy efficient process for CO2 capture from flue gas with novel fixed-site-carrier membranes,Energy Procedia 63(2014)174-185.
(非特許文献10) HUANG et al.Carbon dioxide capture using a CO2-selective facilitated transport membrane,Ind.Eng.Chem.Res.47(2008)1261-1267.
(非特許文献11) INTERNATIONAL SEARCHING AUTHORITY (ISA/US).International Search Report and Written Opinion issued in PCT Application No.PCT/US2019/051308 on November 15,2019.8 pages.
(非特許文献12) KIM et al.Separation performance of PVAm composite membrane for CO2 capture at various pH levels,J.Membr.Sci.428(2013)218-224.
(非特許文献13) NEJAD et al.Investigation of carbon nanotubes in mixed matrix membranes for gas separation: a review.ChemBioEng Reviews 3.6 (2016): 276-298.
(非特許文献14) QIAO et al.Preparation and characterization of small molecular amine modified PVAm membranes for CO2/H2 separation,J.Membr.Sci.475 (2015) 290-302.
(非特許文献15) QIAO et al.PVAm-PIP/PS composite membrane with high performance for CO2/N2 separation,AIChE J.59(2013)215-228.
(非特許文献16) SANDRU et al.Composite hollow fiber membranes for CO2 capture,J.Membr.Sci.346(2010)172-186.
(非特許文献17) WILEN et al.Strategies in optical resolutions.Tetrahedron 33.21 (1977): 2725-2736.
(非特許文献18) WILEN et al.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268 (E.L. Eliel, Ed., Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN 1972)
(非特許文献19) WU et al. Synthesis and characterization of nanoporous polyethersulfone membrane as support for composite membrane in CO2 separation: From lab to pilot scale, J.Membr.Sci.,510 (2016) 58-71
(非特許文献20) YAVE et al. Nanometric thin film membranes manufactured on square meter scale: Ultra-thin films for CO2 capture, Nanotechnology 21 (2010) 395301.
(非特許文献21) YAVE et al. CO2-philic polymer membrane with extremely high separation performance, Macromolecules 43 (2009) 326-333.
(非特許文献22) ZHAO et al. Multiwalled carbon nanotube mixed matrix membranes containing amines for high pressure CO2/H2 separation, J.Memb.Sci.459 (2014) 233-243
(非特許文献23) ZOU et al. CO2-selective polymeric membranes containing amines in crosslinked poly(vinyl alcohol), J.Membr.Sci.286 (2006) 310-321.
【発明の概要】
【0004】
CO/N混合物、例えば、石炭または天然ガス由来の煙道ガスからCOを選択的に除去する、アミン含有高分子膜を含む、ガス分離のための膜が開示される。顕著なCO流束およびCO/N選択性は、担体(例えば、アミン担体)を通るCOの反応性拡散によって達成される。膜の選択性層において、固定されたサイト担体として機能する、アミノポリマーを使用して、ポリマーマトリックスを形成し得る。塩基、例えば、ピペラジン、および2-(1-ピペラジニル)エチルアミンと、アミノ酸、例えば、グリシン、サルコシン、および2-アミノイソ酪酸と、を反応させることによって合成されたアミノ酸塩は、移動担体としてのアミノポリマーとブレンドされ得る。実施例によって示されるように、これらのアミノ酸塩は、効果的な移動担体として機能して、57~87℃の操作温度で極薄膜を通ってのCOの透過を向上させ得る。
【0005】
煙道ガスからのCOの実用的な分離に関して、十分な膜貫通差圧を多くの場合使用して、CO透過の推進力を提供する。この目的のため、典型的には、真空が下流側面で引かれる。高分子膜材料に関して、適切な機械的特性が、真空吸引を維持するために必要とされる。カーボンナノチューブ(例えば、多層カーボンナノチューブ、MWNT)を親水的に変性し、それらを、無機補強充填剤として、高分子選択性層中に分散させる方法も、記載される。実施例に実証されるように、ポリビニルピロリドンおよびポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)によるポリマー被覆は、両方とも、アミン含有選択性層中でのMWNTの分散を大幅に向上させる、MWNTの疎水性表面の効果的排除を可能にする。MWNT網目構造は、真空下でのナノポーラス支持体への選択性層の浸透を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】PZEA-Sarの化学構造を示す。
図2】掃気および真空操作を可能とするガス透過測定のために使用されるガス透過ユニットを示す。
図3A】実施例1Aにおいて調製された膜の膜断面のSEM画像を示す。図3Aおよび図3B真空試験の前後それぞれのMWNTを有さない膜の断面である。
図3B】実施例1Aにおいて調製された膜の膜断面のSEM画像を示す。図3Aおよび図3B真空試験の前後それぞれのMWNTを有さない膜の断面である。
図4A】膜断面のSEM画像を示す。図4Aおよび図4B真空試験の前後それぞれのPVP7-co-Vac3/MWNTを有する膜の断面である。
図4B】膜断面のSEM画像を示す。図4Aおよび図4B真空試験の前後それぞれのPVP7-co-Vac3/MWNTを有する膜の断面である。
図5A】透過側面上に0.2気圧の真空を用いる、57℃でのCO透過性およびCO/N選択性に対する供給圧力の効果を示す。図5Aは、一定供給CO濃度下でのこれらの効果を示し、図5Bは、0.166気圧の一定供給CO部分圧力下でのこれらの効果を示す。
図5B】透過側面上に0.2気圧の真空を用いる、57℃でのCO透過性およびCO/N選択性に対する供給圧力の効果を示す。図5Aは、一定供給CO濃度下でのこれらの効果を示し、図5Bは、0.166気圧の一定供給CO部分圧力下でのこれらの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
支持層と、支持層上に配置された(例えば、コーティングされた)選択性ポリマー層とを含む膜が、本明細書に開示される。選択性ポリマー層は、選択性ポリマーマトリックスと、選択性ポリマーマトリックス内に分散したカーボンナノチューブとを含み得る。カーボンナノチューブは、親水性ポリマーで被覆され得る。
【0008】
これらの膜の作製方法、およびこれらの膜の使用方法もまた提供される。
【0009】
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体などの混合物を含む。
【0010】
範囲は、本明細書において、1つの特定の値である「約」から、および/または別の特定の値である「約」までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表される場合、先行詞「約」を使用することによって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。各範囲の終点は、他の終点との関連において、および他の端点とは独立してのどちらでも有意であることがさらに理解されるであろう。また、本明細書には開示されている多数の値があり、各値は、値自体に加えて、その特定の値を「約」として本明細書に開示されていることも理解されよう。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。当業者によって適切に理解されるように、値が開示される場合、値「以下」、「値以上」、および値間の可能な範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10以下」ならびに「10以上」も開示される。用途全体にわたって、データは、多くの異なるフォーマットで提供され、このデータは、終点および始点、データ点の任意の組み合わせの範囲を表すことも理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点15が開示される場合、10および15を超える、それら以上、それら未満、それら以下、ならびにそれらと等しい、ならびに10~15が、開示されているとみなされると理解される。2つの特定のユニット間の各ユニットも開示されることも理解される。例えば、10および15が開示される場合、次いで、11、12、13、および14も開示される。
【0011】
この明細書中、および以下に続く特許請求の範囲中、以下の意味を有すると定義される多数の用語が参照される。
【0012】
「任意選択の」または「任意選択的に」とは、続いて記述される事象または状況が発生し得る、または発生し得ないことを意味し、この記述には、当該事象または状況が発生する例と発生しない例とが含まれることを意味する。
【0013】
「n-員」という用語は、nは整数であり、部分の環形成原子の数を典型的に記載し、ここで、環形成原子の数はnである。例えば、ピペリジニルは、6員ヘテロシクロアルキル環の例であり、ピラゾリルは、5員ヘテロアリール環の例であり、ピリジルは、6員ヘテロアリール環の例であり、1,2,3,4-テトラヒドロ-ナフタレンは、10員シクロアルキル基の例である。
【0014】
本明細書で使用される場合、「任意選択的に置換される」という句は、非置換または置換を意味する。本明細書で使用される場合、「置換される」という用語は、水素原子が除去され、置換基によって置換されることを意味する。所与の原子での置換は、原子価によって限定されることを理解されたい。
【0015】
定義全体にわたって、「Cn~m」という用語は、終点を含む範囲を示し、nおよびmは、整数であり、炭素の数を示す。例としては、C1~4、C1~6などが挙げられる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて採用され、n~m個の炭素を有する、直鎖状または分岐であり得る飽和炭化水素基を指す。アルキル部分の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチルなどの化学基、2-メチル-1-ブチル、n-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、1,2,2-トリメチルプロピルなどの高級同族体などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、または1~2個の炭素原子を含有する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルケニル」は、1個以上の二重炭素-炭素結合を有し、n~m個の炭素を有するアルキル基を指す。アルケニル基の例としては、エテニル、n-プロペニル、イソプロペニル、n-ブテニル、sec-ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルケニル部分は、2~6、2~4、または2~3個の炭素原子を含有する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキニル」は、1個以上の三重炭素-炭素結合を有し、n~m個の炭素を有するアルキル基を指す。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イルなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキニル部分は、2~6、2~4、または2~3個の炭素原子を含有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキレン」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて採用され、n~m個の炭素を有する二価のアルキル連結基を指す。アルキレン基の例としては、エタン-1,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ブタン-1,3-ジイル、ブタン-1,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,3-ジイルなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アルキレン部分は、2~6、2~4、2~3、1~6、1~4、または1~2個の炭素原子を含有する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルコキシ」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて採用され、式-O-アルキルの基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素を有する。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(例えば、n-プロポキシおよびイソプロポキシ)、tert-ブトキシなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルアミノ」という用語は、式-NH(アルキル)の基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルコキシカルボニル」という用語は、式-C(O)O-アルキルの基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルカルボニル」という用語は、式-C(O)-アルキルの基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルカルボニルアミノ」という用語は、式-NHC(O)-アルキルの基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルスルホニルアミノ」という用語は、式-NHS(O)-アルキルの基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「アミノスルホニル」という用語は、式-S(O)NHの基を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルアミノスルホニル」という用語は、式-S(O)NH(アルキル)の基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ジ(Cn~mアルキル)アミノスルホニル」という用語は、式-S(O)N(アルキル)の基を指し、各アルキル基は、独立して、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、各アルキル基は、独立して、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アミノスルホニルアミノ」という用語は、式-NHS(O)NHの基を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルアミノスルホニルアミノ」という用語は、式-NHS(O)NH(アルキル)の基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「ジ(Cn~mアルキル)アミノスルホニルアミノ」という用語は、式-NHS(O)N(アルキル)の基を指し、各アルキル基は、独立して、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、各アルキル基は、独立して、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「アミノカルボニルアミノ」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて採用され、式-NHC(O)NHの基を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルアミノカルボニルアミノ」という用語は、式-NHC(O)NH(アルキル)の基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ジ(Cn~mアルキル)アミノカルボニルアミノ」という用語は、式-NHC(O)N(アルキル)の基を指し、各アルキル基は、独立して、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、各アルキル基は、独立して、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルカルバミル」という用語は、式-C(O)-NH(アルキル)の基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「チオ」という用語は、式-SHの基を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルスルフィニル」という用語は、式-S(O)-アルキルの基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「Cn~mアルキルスルホニル」という用語は、式-S(O)-アルキルの基を指し、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「アミノ」という用語は、式-NHの基を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて採用され、単環式または多環式(例えば、2、3、または4個の縮合環を有する)であり得る芳香族炭化水素基を指す。「Cn~mアリール」という用語は、n~m個の環炭素原子を有するアリール基を指す。アリール基は、例えば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、インダニル、インデニルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、アリール基は、6~約20個の炭素原子、6~約15個の炭素原子、または6~約10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アリール基は、置換もしくは非置換のフェニルである。
【0041】
本明細書で使用される場合、「カルバミル」という用語は、式-C(O)NHの基を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「カルボニル」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて採用され、C(O)としても記載され得る-C(=O)-基を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ジ(Cn~m-アルキル)アミノ」という用語は、式-N(アルキル)の基を指し、2個のアルキル基は、各々独立して、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、各アルキル基は、独立して、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ジ(Cn~m-アルキル)カルバミル」という用語は、式-C(O)N(アルキル)の基を指し、2個のアルキル基は、各々独立して、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、各アルキル基は、独立して、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ハロ」という用語は、F、Cl、Br、またはIを指す。いくつかの実施形態では、ハロは、F、Cl、またはBrである。いくつかの実施形態では、ハロは、FまたはClである。
【0046】
本明細書で使用される場合、「Cn~mハロアルコキシ」は、式-O-ハロアルキルの基を指し、ハロアルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。ハロアルコキシ基の例は、OCFである。いくつかの実施形態では、ハロアルコキシ基は、フッ素化のみである。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「Cn~mハロアルコキシ」という用語は、単独で、または他の用語と組み合わせて採用され、1個のハロゲン原子から同じであるか、または異なっていてもよい2s+1個のハロゲン原子を有するアルキル基を指し、「s」は、アルキル基の炭素原子の数であり、アルキル基は、n~m個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、ハロアルキル基は、フッ素化のみである。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6、1~4、または1~3個の炭素原子を有する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、環化アルキルおよび/またはアルケニル基を含む非芳香族環状炭化水素を指す。シクロアルキル基としては、単環式基または多環式基(例えば、2、3、または4個の縮合環を有する)、およびスピロ環を挙げることができる。シクロアルキル基は、3、4、5、6、7、8、9、または10個の環形成炭素(C3~10)を有し得る。シクロアルキル基の環形成炭素原子は、オキソまたはスルフィド(例えば、C(O)またはC(S))によって任意選択的に置換され得る。シクロアルキル基はまた、シクロアルキリデンも含む。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカルニルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、またはアダマンチルである。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、6~10個の環形成炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、シクロアルキルは、アダマンチルである。シクロアルキルの定義には、シクロアルキル環に縮合した(すなわち、共通の結合を有する)1個以上の芳香環を有する部分も含まれる(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンのベンゾまたはチエニル誘導体など)。縮合芳香環を含有するシクロアルキル基は、縮合芳香環の環形成原子を含む任意の環形成原子を通して結合し得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」は、硫黄、酸素、および窒素から選択される、少なくとも1個のヘテロ原子環員を有する、単環式または多環式芳香族ヘテロ環を指す。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール環は、1、2、3、または4個の、窒素、硫黄、および酸素から独立して選択されるヘテロ原子環員を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール部分内の任意の環形成Nは、N-酸化物であり得る。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、5~10個の環原子、および1、2、3、または4個の、窒素、硫黄、および酸素から独立して選択されるヘテロ原子環員を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、5~6個の環原子、および1または2個の、窒素、硫黄、および酸素から独立して選択されるヘテロ原子環員を有する。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、5員または6員ヘテロアリール環である。5員ヘテロアリール環は、5個の環原子を有する環を有するヘテロアリールであり、1個以上(例えば、1、2、または3個)の環原子は、N、O、およびSから独立して選択される。例示的な5員環ヘテロアリールは、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、1,2,3-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、および1,3,4-オキサジアゾリルである。6員ヘテロアリール環は、6個の環原子を有する環を有するヘテロアリールであり、1個以上(例えば、1、2、または3個)の環原子は、N、O、およびSから独立して選択される。例示的な6員環ヘテロアリールは、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、およびピリダジニルである。
【0050】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」は、O、N、またはSから選択される1個以上の環形成ヘテロ原子を有する非芳香族単環式または多環式ヘテロ環を指す。ヘテロシクロアルキルにおいては、単環式4、5、6、および7員ヘテロシクロアルキル基が含まれる。ヘテロシクロアルキル基としては、スピロ環も挙げることができる。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピロリジン-2-オン、1,3-イソキサゾリジン-2-オン、ピラニル、テトラヒドロプラン、オキセタニル、アゼチジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピペラジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、ピロリジニル、イソキサゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、アゼパニル、ベンザザペンなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキル基の環形成炭素原子およびヘテロ原子は、オキソまたはスルフィド(例えば、C(O)、S(O)、C(S)、またはS(O)など)によって任意選択的に置換され得る。ヘテロシクロアルキル基は、環形成炭素原子または環形成ヘテロ原子を通して結合し得る。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、0~3個の二重結合を含有する。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、0~2個の二重結合を含有する。ヘテロシクロアルキルの定義においては、シクロアルキル環に縮合した(すなわち、共通の結合を有する)1個以上の芳香環を有する部分も含まれる(例えば、ピペリジン、モルホリン、アゼピンのベンゾまたはチエニル誘導体など)。縮合芳香環を含有するヘテロシクロアルキル基は、縮合芳香環の環形成原子を含む任意の環形成原子を通して結合し得る。いくつかの実施形態では、ヘテロシクロアルキルは、4~10、4~7、または4~6個の環原子、および1または2個の、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択されるヘテロ原子を有し、1個以上の酸化環員を有する。
【0051】
特定の場所では、定義または実施形態は、特定の環(例えば、アゼチジン環、ピリジン環など)を指す。別段の指示がない限り、これらの環は、原子の原子価を超えない場合、任意の環員に結合し得る。例えば、アゼチジン環は、環の任意の位置に結合し得、一方では、ピリジン-3-イル環は、3位に結合する。
【0052】
「化合物」という用語は、本明細書で使用される場合、全ての立体異性体、幾何異性体、互変異性体、および示される構造の同位体を含むことを意味する。1つの特定の互変異性体形態としての名称または構造によって、本明細書で特定される化合物は、別段の指定がない限り、他の互変異性体形態を含むことが意図される。
【0053】
本明細書で提供される化合物もまた、互変異性体形態を含む。互変異性体形態は、プロトンの同時移動とともに、単結合と、隣接する二重結合との交換から結果として得られる。互変異性体形態は、同じ実験式および総電荷を有する異性体のプロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体を含む。プロトトロピック互変異性体の例としては、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、エナミン-イミン対、およびプロトンがヘテロ環系の2つ以上の位置を占め得る環状形態、例えば、1H-および3H-イミダゾール、1H-、2H-、および4H-1,2,4-トリアゾール、1H-および2H-イソインドール、ならびに1H-および2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性体形態は、平衡状態にあり得るか、または適切な置換によって、1つの形態に立体的に固定され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書で記載される化合物は、1つ以上の非対称中心を含有し得、したがって、ラセミ化合物およびラセミ化合物混合物、鏡像異性的に濃縮された混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオ異性体およびジアステレオ異性体混合物(例えば、(R)-および(S)-鏡像異性体、ジアステレオ異性体、(D)-異性体、(L)-異性体、(+)(右旋性)形態、(-)(左旋性)形態、これらのラセミ化合物混合物、およびこれらの他の混合物)として発生する。追加の非対称炭素原子が、アルキル基などの置換基内に存在し得る。これらの化合物のそのような全ての異性体形態、ならびにこれらの混合物は、本明細書に明示的に含まれる。本明細書で記載される化合物は、結合の回転が特定の結合に関して制限される結合も含有し得るか、またはさらに含有する(例えば、環または二重結合(例えば、炭素-炭素結合、アミド基などの炭素-窒素結合)の存在に起因する制限)。したがって、全てのシス/トランスおよびE/Z異性体、ならびに回転異性体は、本明細書に明示的に含まれる。別段の言及または指示がない限り、化合物の化学名称は、その化合物の全ての可能な立体化学異性体形態の混合物を包含する。
【0055】
光学異性体は、当業者に既知である標準的な手順によって純粋な形態で得ることができ、その手順としては、ジアステレオ異性体塩の形成、速度論分割、および不斉合成が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Jacques,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.、Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962);Wilen,S.H.、Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照されたい。これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書で記載される化合物は、全ての可能な位置異性体、およびこれらの混合物を含み、それらは、当業者に既知である標準的な分離手順によって純粋な形態で得ることができ、その手順としては、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、および高速液体クロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されないことも理解される。
【0056】
支持層
支持層は、任意の好適な材料から形成され得る。支持層を形成するために使用される材料は、膜の最終使用用途に基づいて選択され得る。いくつかの実施形態では、支持層は、ガス透過性ポリマーを含み得る。ガス透過性ポリマーは、架橋ポリマー、相分離ポリマー、多孔質縮合ポリマー、またはこれらのブレンドであり得る。好適なガス透過性ポリマーの例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリピロロン、ポリエステル、スルホン系ポリマー、ニトリル系ポリマー、高分子有機シリコーン、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、これらのコポリマー、またはこれらのブレンドが挙げられる。支持層中に存在し得るポリマーの具体的な例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジ-イソ-プロピルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、ポリベンズイミダゾール、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの部分フッ素化、過フッ素化、もしくはスルホン化誘導体、これらのコポリマー、またはこれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態では、ガス透過性ポリマーは、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンであり得る。必要に応じて、支持層の透過性を変化させることなく、機械的強度を増加させるために、支持層は無機粒子を含み得る。
【0057】
特定の実施形態では、支持層は、ベースに配置されたガス透過性ポリマーを含み得る。ベースは、特定の用途での使用に好適である膜の形成を促進するように構成されている任意の構成であり得る。例えば、ベースは、平面ディスク、チューブ、螺旋巻き、または中空糸ベースであり得る。ベースは、任意の好適な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、層は、繊維状材料を含み得る。ベース中の繊維状材料は、メッシュ(例えば、金属またはポリマーメッシュ)、織布または不織布、ガラス、ガラス繊維、樹脂、スクリーン(例えば、金属またはポリマースクリーン)であり得る。特定の実施形態では、べースは、不織布(例えば、ポリエステルから形成された繊維を含む不織布)を含み得る。
【0058】
選択性ポリマー層
選択性ポリマー層は、選択性ポリマーマトリックス、および選択性ポリマーマトリックス内に分散したカーボンナノチューブを含み得る。カーボンナノチューブは、親水性ポリマーで被覆され得る。
【0059】
選択性ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミン含有ポリマー、またはこれらの組み合わせを含み得る。任意選択的に、選択性ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックス内に分散したアミン系移動担体(例えば、低分子量アミノ化合物)などの追加の成分をさらに含み得る。例として、いくつかの実施形態では、選択性ポリマー層は、アミン含有ポリマー(例えば、ポリビニルアミン)、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、およびアミン系移動担体(例えば、PZEA-Sar、PZEA-AIBA、HEP、またはこれらの組み合わせ)を含み得る。
【0060】
場合によって、選択性ポリマー層は、ガスが拡散または促進拡散を介して透過するポリマーマトリックスであり得る。選択性ポリマー層は、57℃および1気圧の供給圧力で、少なくとも10のCO:N選択性を有するポリマーマトリックスを含み得る。例えば、ポリマーマトリックスは、57℃および1気圧の供給圧力で、少なくとも25(例えば、少なくとも50、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、少なくとも400、少なくとも425、少なくとも450、または少なくとも475)のCO:N選択性を有し得る。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、57℃および1気圧の供給圧力で、500以下(例えば、475以下、450以下、425以下、400以下、375以下、350以下、325以下、300以下、275以下、250以下、225以下、200以下、175以下、150以下、125以下、100以下、75以下、50以下、または25以下)のCO:N選択性を有し得る。
【0061】
特定の実施例では、選択性ポリマー層は、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲のCO:N選択性を有するポリマーマトリックスを含み得る。例えば、特定の実施形態では、選択性ポリマー層は、57℃および1気圧の供給圧力で、10~500(例えば、57℃および1気圧の供給圧力で、10~400、57℃および1気圧の供給圧力で、75~400、57℃および1気圧の供給圧力で、100~400、57℃および1気圧の供給圧力で、10~350、57℃および1気圧の供給圧力で、75~350、57℃および1気圧の供給圧力で、100~350、57℃および1気圧の供給圧力で、10~250、57℃および1気圧の供給圧力で、75~250、または57℃および1気圧の供給圧力で、100~250)のCO:N選択性を有するポリマーマトリックスを含み得る。選択性ポリマーのCO:N選択性は、以下の実施形態に記載されるものなどの、当該技術分野において既知であるガス透過性を測定するための標準的な方法を使用して測定され得る。
【0062】
必要に応じて、選択性ポリマー層は、例えば、化学グラフト、ブレンド、またはコーティングによって表面改質されて、選択性ポリマー層の性能を改善し得る。例えば、疎水性成分が、選択性ポリマー層に添加されて、より良好な流体選択性を促進する様式で、選択性ポリマー層の特性を変化させ得る。
【0063】
膜中の各層の総厚さは、構造が機械的に堅牢であるが、透過性を損なうほど厚くないように選択され得る。いくつかの実施形態では、選択性ポリマー層は、50ナノメートル~5マイクロメートル(例えば、50nm~2マイクロメートル、または100ナノメートル~750マイクロメートル、または250ナノメートル~500マイクロメートル)の厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、支持層は、1マイクロメートル~500マイクロメートル(例えば50~250マイクロメートル)の厚さを有し得る。場合によって、本明細書に開示される膜は、5マイクロメートル~500マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0064】
選択性ポリマーマトリックス
選択性ポリマーマトリックスは、親水性ポリマー、アミン含有ポリマー、またはこれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、選択性ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーを含み得る。特定の実施形態では、選択性ポリマーマトリックスは、アミン含有ポリマーを含み得る。特定の実施形態では、選択性ポリマーマトリックスは、親水性ポリマーおよびアミン含有ポリマーを含み得る。
【0065】
存在する場合、親水性ポリマーは、任意の好適な親水性ポリマーを含み得る。選択性ポリマー層に使用するのに好適な親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアミン、例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、またはポリエチレンイミンなど、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドを挙げることができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含む。
【0066】
存在する場合、親水性ポリマーは、任意の好適な分子量を有し得る。例えば、親水性ポリマーは、15,000Da~2,000,000Da(例えば、50,000Da~200,000Da)の重量平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、50,000Da~150,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアルコールを含み得る。他の実施形態では、親水性ポリマーは、高分子量親水性ポリマーであり得る。例えば、親水性ポリマーは、少なくとも500,000Da(例えば、少なくとも700,000Da、または少なくとも1,000,000Da)の重量平均分子量を有し得る。
【0067】
選択性ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の親水性ポリマーを含み得る。例えば、場合によって、選択性ポリマーマトリックスは、選択性ポリマーマトリックスを形成するのに使用される成分の総重量に対して、10重量%~90重量%(例えば、10重量%~50重量%、または10重量%~30重量%)の親水性ポリマーを含み得る。
【0068】
選択性ポリマーマトリックスはまた、アミン含有ポリマー(本明細書では「固定担体」とも称される)も含み得る。存在する場合、アミン含有ポリマーは、任意の好適な分子量を有し得る。例えば、アミン含有ポリマーは、5,000Da~5,000,000Da、または50,000Da~2,000,000Daの重量平均分子量を有し得る。
【0069】
アミン含有ポリマーの好適な例としては、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ-N-イソプロピルアリルアミン、ポリ-N-tert-ブチルアリルアミン、ポリ-N-1,2-ジメチルプロピルアリルアミン、ポリ-N-メチルアリルアミン、ポリ-N,N-ジメチルアリルアミン、ポリ-2-ビニルピペリジン、ポリ-4-ビニルピペリジン、ポリアミノスチレン、キトサン、コポリマー、およびこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アミン含有ポリマーは、ポリビニルアミン(例えば、50,000Da~2,000,000Daの重量平均分子量を有するポリビニルアミン)を含み得る。
【0070】
選択性ポリマーマトリックスは、任意の好適な量のアミン含有ポリマーを含み得る。例えば、場合によって、選択性ポリマーマトリックスは、選択性ポリマーマトリックスを形成するのに使用される成分の総重量に基づいて、10重量%~90重量%(例えば、10重量%~50重量%、または10重量%~30重量%)のアミン含有ポリマーを含み得る。
【0071】
アミン含有移動担体
好適なアミン含有移動担体は、ポリマーマトリックス内でCOの「移動担体」として機能し得るアミノ酸塩などの、1個以上の第一級アミン部分および/または1個以上の第二級アミン部分を含む小分子を含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、アミン含有移動担体は、1,000Da以下(例えば、800Da以下、500以下、300Da以下、または250Da以下)の分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、アミン含有移動担体は、膜が保管または使用される温度で不揮発性であり得る。例えば、アミン含有移動担体は、第一級アミンの塩または第二級アミンの塩を含み得る。
【0073】
場合によって、アミン含有移動担体は、アミノ酸塩を含み得る。アミノ酸塩は、任意の好適なアミノ酸の塩であり得る。アミノ酸塩は、例えば、グリシン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、6-アミノヘキサン酸、プロリン、サルコシン、メチオニン、またはタウリンから誘導され得る。場合によって、アミノ酸塩は、以下の式によって定義される化合物の塩を含み得る。
【化1】
式中、アミノ酸の出現ごとに独立して、R、R、R、およびRの各々は、以下のうちの1つから選択されるか、
【化2】
またはRおよびRは、それらが結合している原子と一緒に、nが1である場合、以下の構造によって定義される5員ヘテロ環を形成し、nが2である場合、以下の構造によって定義される6員ヘテロ環を形成する。
【化3】
【0074】
ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリオニチン、またはポリヒスチジンはまた、アミノ酸塩を調製するためにも使用され得る。
【0075】
他の実施形態では、アミン含有移動担体は、以下の式によって定義され得る。
【化4】
【0076】
式中、R、R、R、およびRは、水素または1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、nは、0~4の範囲の整数であり、Am+は、1~3の原子価を有するカチオンである。場合によって、カチオン(Am+)は、以下の式を有するアミンカチオンであり得る。
【化5】
【0077】
式中、RおよびRは、水素または1~4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、Rは、水素または1~4個の炭素原子を有する炭化水素基、または2~6個の炭素原子および1~4個の窒素原子のアルキルアミンであり、yは、1~4の範囲の整数であり、mは、カチオンの原子価に等しい整数である。いくつかの実施形態では、Am+は、元素周期表のIa、IIa、およびIIIa族、または遷移金属から選択される金属カチオンである。例えば、Am+は、リチウム、アルミニウム、または鉄を含み得る。
【0078】
他の好適なアミン含有移動担体としては、アミノイソ酪酸-カリウム塩、アミノイソ酪酸-リチウム塩、アミノイソ酪酸-ピペラジン塩、グリシン-カリウム塩、グリシン-リチウム塩、グリシン-ピペラジン塩、ジメチルグリシン-カリウム塩、ジメチルグリシン-リチウム塩、ジメチルグリシン-ピペラジン塩、ピペラジン-2-カルボン酸-カリウム塩、ピペリジン-2-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-2-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジン-4-カルボン酸-カリウム塩、ピペリジン-4-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-4-カルボン酸-ピペラジン塩、ピペラジン-3-カルボン酸-カリウム塩、ピペリジン-3-カルボン酸-リチウム塩、ピペラジン-3-カルボン酸-ピペラジン塩、およびこれらのブレンドが挙げられる。
【0079】
他の成分
いくつかの実施形態では、選択性ポリマーマトリックスは、架橋剤をさらに含み得る。ポリマーマトリックス中での使用に好適な架橋剤としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、無水マレイン酸、グリオキサール、ジビニルスルホン、トルエンジイソシアネート、トリメチロールメラミン、テレフタレートアルデヒド、エピクロロヒドリン、アクリル酸ビニル、およびこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、架橋剤は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、または無水マレイン酸を含み得る。選択性ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の架橋剤を含み得る。例えば、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの重量に対して、1~40パーセントの架橋剤を含み得る。
【0080】
選択性ポリマーマトリックスは、塩基をさらに含み得る。塩基は、ポリマーマトリックスの架橋(例えば、アミン含有ポリマーを用いる親水性ポリマーの架橋)に触媒作用を及ぼすために、触媒として作用し得る。いくつかの実施形態では、塩基は、ポリマーマトリックス中に残留し得、ポリマーマトリックスの一部を構成し得る。好適な塩基の例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、塩基は、水酸化カリウムを含み得る。ポリマーマトリックスは、任意の好適な量の塩基を含み得る。例えば、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの重量に対して、1~40パーセントの塩基を含み得る。
【0081】
カーボンナノチューブ
選択性ポリマー層は、選択性ポリマーマトリックス内に分散したカーボンナノチューブを含み得る。カーボンナノチューブは、親水性ポリマーで被覆され得る。
【0082】
任意の好適なカーボンナノチューブ(任意の好適な方法によって調製されたか、または市販の供給源から得られた)が、使用され得る。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0083】
場合によって、カーボンナノチューブは、少なくとも10nm(例えば、少なくとも20nm、少なくとも30nm、または少なくとも40nm)の平均直径を有し得る。場合によって、カーボンナノチューブは、50nm以下(例えば、40nm以下、30nm以下、または20nm以下)の平均直径を有し得る。特定の実施形態では、カーボンナノチューブは、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲の平均直径を有し得る。例えば、カーボンナノチューブは、10nm~50nm(例えば、10nm~30nm、または20nm~50nm)の平均直径を有し得る。
【0084】
場合によって、カーボンナノチューブは、少なくとも50nm(例えば、少なくとも100nm、少なくとも200nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nm、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、または少なくとも15μm)の平均長さを有し得る。場合によって、カーボンナノチューブは、20μm以下(例えば、15μm以下、10μm以下、5μm以下、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下、または100nm以下)の平均長さを有し得る。
【0085】
特定の実施形態では、カーボンナノチューブは、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲の平均長さを有し得る。例えば、カーボンナノチューブは、50nm~20μm(例えば、200nm~20μm、または500nm~10μm)の平均長さを有し得る。
【0086】
場合によって、カーボンナノチューブは、非官能化カーボンナノチューブを含み得る。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、側壁官能化カーボンナノチューブを含み得る。側壁官能化カーボンナノチューブは、当該技術分野において周知である。好適な側壁官能化カーボンナノチューブは、例えば、強酸酸化によって側壁上に欠陥を作成することによって、非官能化カーボンナノチューブから調製され得る。酸化剤によって作成された欠陥は、続いて、より安定したヒドロキシル基およびカルボン酸基に変換され得る。酸処理カーボンナノチューブ上のヒドロキシル基およびカルボン酸基は、次いで、他の官能基を含有する試薬(例えば、アミン含有試薬)に結合し、それによって、カーボンナノチューブの側壁上にペンダント官能基(例えば、アミノ基)を導入し得る。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは、ヒドロキシ官能化カーボンナノチューブ、カルボキシ官能化カーボンナノチューブ、アミン官能化カーボンナノチューブ、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、選択性ポリマー層は、選択性ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、少なくとも0.5重量%(例えば、少なくとも1重量%、少なくとも1.5重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、少なくとも3重量%、少なくとも3.5重量%、少なくとも4重量%、または少なくとも4.5重量%)のカーボンナノチューブを含み得る。いくつかの実施形態では、選択性ポリマー層は、選択性ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、5重量%以下(例えば、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、または1重量%以下)のカーボンナノチューブを含み得る。
【0088】
選択性ポリマー層は、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでの範囲の量のカーボンナノチューブを含み得る。例えば、選択性ポリマー層は、選択性ポリマー層の総乾燥重量に基づいて、0.5重量%~5重量%(例えば、1重量%~3重量%)のカーボンナノチューブを含み得る。
【0089】
親水性ポリマーは、任意の好適な親水性ポリマーを含み得る。選択性ポリマー層に使用するのに好適な親水性ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミン、ポリアミン、例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、またはポリエチレンイミンなど、これらのコポリマー、およびこれらのブレンドを挙げることができる。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、15,000Da~2,000,000Da(例えば、50,000Da~200,000Da)の重量平均分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドンまたはポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)を含み得る。
【0090】
作製方法
これらの膜の作製方法もまた本明細書で開示される。膜の作製方法は、選択性ポリマー層を支持層上に堆積させて、支持層上に配置された選択性層を形成することを含み得る。選択性ポリマー層は、選択性ポリマーマトリックス、および選択性ポリマーマトリックス内に分散したカーボンナノチューブを含み得る。
【0091】
任意選択的に、支持層は、選択性ポリマー層の堆積の前に、事前処理、例えば、支持体および吸着質に適した方法を使用して、水または他の吸着種を除去することが行われ得る。吸収された種の例としては、例えば、水、アルコール、ポロゲン、および界面活性剤テンプレートである。
【0092】
選択性ポリマー層は、選択性ポリマーマトリックスの成分(例えば、親水性ポリマー、アミン含有ポリマー、またはこれらの組み合わせ)と、親水性ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブと、任意選択的に1つ以上の追加の成分(例えば、アミン系移動担体、架橋剤、塩基化合物、またはこれらの組み合わせ)と、を好適な溶媒中に含むコーティング溶液を最初に形成することによって調製され得る。好適な溶媒の一例は水である。いくつかの実施形態では、用採用される水の量は、コーティング溶液の重量に対して、50%~99%の範囲内である。次いで、コーティング溶液は、選択性ポリマー層を形成するのに使用され得る。例えば、コーティング溶液は、任意の好適な技術を使用して、後で支持体(例えば、ナノポーラスガス透過性膜)上にコーティングされ得、溶媒は、ナノポーラス膜が基材上に形成されるように蒸発し得る。好適なコーティング技術の例としては、「ナイフコーティング」または「浸漬コーティング」が挙げられるが、これらに限定されない。ナイフコーティングは、ナイフを使用して、ポリマー溶液を、平坦な基材全域にわたって引き伸ばして、均一な厚みのポリマー溶液の薄いフィルムを形成し、その後、周囲温度、または最大約100℃の温度、またはそれ以上の温度で、ポリマー溶液の溶媒を蒸発させて、製作された膜を得るプロセスを含む。浸漬コーティングは、ポリマー溶液が、多孔質支持体と接触するプロセスを含む。過剰の溶液が支持体から排出され得、ポリマー溶液の溶媒は、周囲温度または高温で蒸発する。開示される膜は、中空糸、チューブ、フィルム、シートなどの形状で形成され得る。特定の実施形態では、膜は、平面シート、螺旋巻き、中空糸、またはプレートアンドフレーム構成で構成され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、膜は、架橋が発生するのに十分な温度および時間で加熱され得る。一例では、80℃~100℃の範囲の架橋温度が採用され得る。別の例では、架橋は、1~72時間で発生し得る。結果として得られた溶液は、上述のように、支持層上にコーティングされ得、溶媒は蒸発し得る。いくつかの実施形態では、溶媒除去後、ポリマーマトリックスのより高度な架橋が、約100℃~約180℃で生じ、架橋は、約1~約72時間で発生する。
【0094】
添加剤は、選択性ポリマー層を形成する前に、選択性ポリマー層に含まれて、膜の水分保持能力を高め得る。好適な添加剤としては、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-ナトリウム塩、ポリスチレンスルホン酸-リチウム塩、スルホン化ポリフェニレンオキシド、ミョウバン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一例では、添加剤は、ポリスチレンスルホン酸-カリウム塩を含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、これらの膜の作製方法は、工業レベルにスケール化され得る。
【0096】
使用方法
本明細書で開示される膜は、ガス混合物を分離するために使用され得る。例えば、第1のガスを、第1のガスおよび1つ以上の追加のガス(例えば、少なくとも第2のガス)を含む供給ガスから分離するための方法が提供される。本方法は、開示された膜のいずれか(例えば、選択性ポリマーを含む側面上)を、供給ガスと、第1のガスの膜貫通透過を可能にするのに効果的な条件下で接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、膜の裏面から、少なくとも第1のガスを含有する透過物を引き出すことも含み得、第1のガスは、ガス流から選択的に除去される。透過物は、供給流と比較して増加した濃度で、少なくとも第1のガスを含み得る。「透過物」という用語は、膜の第2の側面に存在し得る掃気ガスまたは液体などの他の流体を除く、膜の裏側または第2の側面で引き出される供給流の一部を指す。
【0097】
膜は、100℃以上の温度を含む任意の好適な温度で、流体を分離するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、供給ガスは、25℃~100℃の温度を有し得る。他の実施形態では、供給ガスは、100℃~180℃の温度を有し得る。いくつかの実施形態では、真空が、膜の透過面に適用されて、第1のガスを除去し得る。いくつかの実施形態では、掃気ガスは、膜の透過面全域に流動して、第1のガスを除去し得る。任意の好適な掃気ガスが使用され得る。好適な掃気ガスとしては、例えば、空気、蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
第1のガスとしては、酸性ガスを挙げることができる。例えば、第1のガスは、二酸化炭素、硫化水素、塩酸、二酸化硫黄、三酸化硫黄、窒素酸化物、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、膜は、二酸化炭素対水素、窒素、一酸化炭素、またはこれらの組み合わせに対して選択性であり得る。いくつかの実施形態では、膜は、硫化水素対水素、窒素、一酸化炭素、またはこれらの組み合わせに対して選択性であり得る。いくつかの実施形態では、膜は、塩酸ガス対水素、窒素、一酸化炭素、またはこれらの組み合わせに対して選択性であり得る。
【0099】
特定の実施形態では、第1のガスは、二酸化炭素を含み得、第2のガスは、水素を含み得る。特定の実施形態では、第1のガスは、二酸化炭素を含み得、第2のガスは、窒素を含み得る。
【0100】
第1のガスまたは酸性ガスの透過性は、57℃および1気圧の供給圧力で、少なくとも50GPU(例えば、75GPU以上、100GPU以上、150GPU以上、200GPU以上、250GPU以上、300GPU以上、350GPU以上、400GPU以上、450GPU以上、500GPU以上、550GPU以上、600GPU以上、650GPU以上、700GPU以上、750GPU以上、800GPU以上、850GPU以上、900GPU以上、950GPU以上、1000GPU以上、1100GPU以上、1200GPU以上、1300GPU以上、または1400GPU以上)であり得る。
【0101】
第1のガスまたは酸性ガスの透過性は、57℃および1気圧の供給圧力で、1500以下(例えば、1400GPU以下、1300GPU以下、1200GPU以下、1100GPU以下、1000GPU以下、950GPU以下、900GPU以下、850GPU以下、800GPU以下、750GPU以下、700GPU以下、650GPU以下、600GPU以下、550GPU以下、500GPU以下、450GPU以下、400GPU以下、350GPU以下、300GPU以下、250GPU以下、200GPU以下、150GPU以下、100GPU以下、または75GPU以下)であり得る。
【0102】
膜を通した第1のガスまたは酸性ガスの透過性は、上記の最小値のいずれかから上記の最大値のいずれかまでで変化し得る。例えば、第1のガスまたは酸性ガスの透過性は、57℃および1気圧の供給圧力で、50GPU~1500GPU(例えば、120℃で、300GPU~1500GPU、または57℃および1気圧の供給圧力で、500GPU~1500GPU)であり得る。
【0103】
膜は、57℃および1気圧の供給圧力で、少なくとも20の第1のガス/第2のガス選択性を呈し得る。いくつかの実施形態では、膜は、57℃および1気圧の供給圧力で、最大300の第1のガス/第2のガス選択性を呈し得る。例えば、膜は、57℃および1気圧の供給圧力で、25以上、50以上、75以上、100以上、125以上、150以上、175以上、200以上、225以上、250以上、または275以上の第1のガス/第2のガス選択性を呈し得る。いくつかの実施形態では、膜の、第1のガスまたは酸性ガスに対する透過性および選択性は、より高い温度またはより低い温度で変化し得る。
【0104】
非限定的な例示として、本開示のある実施形態の例を以下に示す。
【実施例1】
【0105】
実施例1:真空操作を用いるCO2/N2分離のためのナノチューブ強化膜
要約書
この実施例は、透過側面を真空引きにするCO/N分離のための、アミン含有高分子マトリックス中の多層カーボンナノチューブ(MWNT)を含有する膜について記載する。高透過性ナノポーラス支持体の上面にコーティングされた高分子選択性層は、COの輸送を促進する固定されたサイト担体としてのポリアミンマトリックス中の、移動担体としてのアミノ酸塩を含む。ポリマー被覆MWNTは、硬質無機充填剤として、高分子選択性層中に組み込まれる。ポリビニルピロリドンおよびポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)の両方は、MWNTの疎水性表面上を効果的に被覆して、アミン含有選択性層中でのポリマー被覆MWNTの分散を向上させ得る。ポリマー被覆MWNTは、真空下でのナノポーラス支持体への選択性層の浸透を克服し、MWNTはまた、供給ガスが圧縮される場合、膜の圧縮を軽減する。これらの膜は、透過側面上で掃気ガスを使用することによって、CO/N分離にも適用可能である。
【0106】
背景技術
大気中のCO濃度が、過去10年間で400ppmを超えて以来、地球温暖化に関する懸念が高まっている。化石燃料の燃焼は、大量のCO排出の主要な原因の1つである。膜技術は、大規模な固定源(例えば、石炭火力発電所からの煙道ガス、および天然ガス火力発電所からの煙道ガス)から、COを補足し、続いて、地質学的隔離のための圧縮、または向上されたオイル回収への有望な手法として提案されている。膜プロセスの設計には、複数の研究努力が行われ、膜プロセスは、少なくとも95%のCO純度で、発電所の煙道ガスから90%のCOを補足し得る。US7,964,020[1]は、COが、真空膜段階によって濃縮され、続いて、さらなるCO濃縮用の極低温蒸留ユニットが用いられる、膜ガス分離プロセスを開示している。US9,216,390[2]は、COを、真空膜段階によって、95%の純度まで濃縮し得る膜プロセスを開示し、そこでは、下流のCOのさらなる精製は必要とされない。これらの2つの実施例における共通要素は、真空膜段階であり、そこでは、0.2気圧の真空が、膜の透過側面上で引かれて、膜貫通推進力を提供する。この場合、膜は、供給物から透過側面へ差圧を受ける。様々な膜材料が開発されて、2つの上記の膜プロセスに基づくCO補足コストを最小にしたが、CO透過性およびCO/N選択性に関して、膜性能が真空操作モード下で測定されることはめったになかった。Sandru et al.[3]は、確かに真空を引くことによって、それらの膜性能を特徴付けたが、真空下でのCO透過性は、透過側面上で掃気ガスを使用することによって得られるものの半分にすぎなかった。Zhao et al.[4]およびAnsaloni et al.[5]は、高分子膜に組み込まれた多層カーボンナノチューブを、機械的強化充填剤として使用して、供給物対透過物の差圧によって発生するポリマー圧縮に取り組んだ。しかしながら、本実施例における供給物対透過物の差圧は、参照[4]および[5]にあるような供給ガスの加圧の代わりに、透過側面上で真空を引くことによって発生する。高分子膜のこの実施例は、Chen et al.[6]によって開発されたアミン含有複合体膜の延長であり、すなわち、ポリビニルアミン(PVAm)が、ポリマーマトリックスとして採用され、しかしながら、新規なアミノ酸塩、例えば、2-(1-ピペラジニル)エチルアミンサルコシネート(PZEA-Sar)が、CO輸送の移動担体として組み込まれた。膜輸送特性を、透過側面上で掃気ガスを使用することによって測定した。以下の実施例において、透過側面上の真空は、ナノポーラス基材への選択性層の浸透をもたらし、それによって、膜性能の劣化がもたらされることが示される。この浸透を軽減する1つの手法は、多層カーボンナノチューブ(MWNT)を、補強ナノ充填物としてポリマーマトリックス中に分散させることである。しかしながら、初期のMWNTは、その疎水性性質に起因して、PVAmに不相溶性であることが判明した。ポリマー溶液の粘度は、非常に低いMWNT配合でも大幅に減少し、それは、極薄の選択性層用の膜コーティングに困難を発生させた。ポリビニルピロリドン(PVP)系ポリマーは、MWNTの疎水性表面を効果的に被覆し得、したがって、PVAmへの分散性が改善されたことが示される。高分子選択性層の機械的強度が、高い供給物対透過物の差圧で、MWNTによって向上され得ることも示される。
【0107】
材料および方法
2-(1-ピペラジニル)エチルアミン(PZEA、99%)、サルコシン(Sar、98%)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、99%)、およびポリビニルピロリドン(PVP、360kDa)を、Sigma-Aldrich(Milwaukee、WI)から購入した。ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP3-co-VAc7、3:7モル比のVP:VAc、エタノール中50%)をFisher Scientific Inc.(Pittsburgh、PA)から購入した。ポリ(1-ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)(PVP7-co-VAc3、7:3モル比のVP:VAc、エタノール中50%)をVWR International(Radnor、PA)から購入した。MWNTは、Arkema Inc.(Philadelphia、PA)から、Graphistrength(登録商標)C100(0.1~10μmの長さ、10~15nmの直径、5~12の膜)という名称で、粉末で提供された。粉末は、90重量%のMWNT、6重量%の触媒、および4重量%の水分を含有していた。全ての化学物質を、さらに精製することなく、受け取った状態で使用した。ガス透過測定に関して、予備精製COおよびアルゴンを、Praxair Inc.(Danbury、CT)から購入した。
【0108】
アミン含有ポリマーに関して、それは、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、コポリマー、およびこれらのブレンドなどの、アミンポリマーであり得るが、これらに限定されない。本発明に採用されるアミン含有ポリマーは、BASF(Vandalia、IL)からのPolymin(登録商標)VXという名称の市販製品から精製されたPVAmである。PVAmは、2,000kDaの高い重量平均分子量を有する。アミン含有ポリマーは、300~10,000kDa、しかし好ましくは1000kDaより高い重量平均分子量を有し得る。
【0109】
特定の実施形態では、アミノ酸塩は、アミン含有ポリマー中でブレンドされて、CO輸送をさらに促進する。2-(1-ピペラジニル)エチルアミンサルコシネートが、この実施例において例示として使用されるが、それは、任意のアミノ酸の塩であり得る。
【0110】
MWNTのポリマー被覆
ポリマー被覆MWNTを、MWNT粉末を、45mLの円錐遠心分離チューブ内に100μg/mLのMWNT含有量で、1重量%のSDS水溶液中に懸濁させることによって調製した。この懸濁液を、氷浴で冷却された超音波処理プローブ(Branson Sonifier(登録商標)SFX150、Danbury、CT、150W出力電力)によって、30分間超音波処理した。70%振幅で1/8″マイクロチッププローブを使用して、チューブ損傷を防止した。PVP、PVP7-co-VAc3、またはPVP3-co-VAc7を、分散液中に添加して、1重量%の混合物をもたらし、それを、50℃で16時間インキュベートした。結果として得られた混合物を、20,000×gで1時間遠心分離し(Eppendorf 5806、Westbury、NY)、ゼラチン状ペレットを形成した。ペレットを収集して、RO(逆浸透)水中で、0.1重量%の濃度で、超音波処理プローブによって、10分間分散させて、次いで、再度遠心分離した。この遠心分離-分散サイクルを5回繰り返して、過剰な残留ポリマーおよびSDSを除去した。最後の遠心分離後、ポリマー被覆MWNTは、最大1重量%の安定した分散液を形成することができた。
【0111】
コーティング溶液および膜調製
MWNT強化複合膜を、以下のステップによって合成した。最初に、精製PVAm溶液を、Nパージ下、50℃で、水を蒸発させることによって、4重量%まで濃縮した。1重量%の濃度を有するポリマー被覆MNWT分散液を、コーティング溶液の最終総固形分中、0~6重量%のMWNT配合を目的として、10μLのガラス毛細管チューブによって、激しい攪拌下で、濃縮PVAm溶液に滴下した。混合物を、15mLの円錐遠心分離チューブに移し、その中で、均一に分散されるまで、50%振幅を用いて、1/8″マイクロチップ超音波処理プローブによって均質化した。超音波処理を、氷浴中で実施した。
【0112】
アミノ酸、Sarとともに、塩基、PZEAを反応させることによって、アミノ酸塩移動担体、PZEA-Sarを合成した。Sarの化学量論量を、激しい混合下で、24重量%のPZEA水溶液中に添加した。溶液を、使用前に、室温で、2時間混合した。PZEA-Sarの化学構造を、図1に示す。
【0113】
一定量のPZEA-Sar溶液を、分散液中に組み込んで、コーティング溶液を形成した。気泡を除去するための、8,000×g、3分間の遠心分離の後、コーティング溶液を、制御された間隙設定を用いた、GARDCO調整可能マイクロメータフィルムアプリケータ(Paul N.Gardner Company、Pompano Beach、FL)によって、ナノポーラスポリエーテルスルホン(PES)基材上にコーティングした。32nmの表面平均細孔径を有するPES基材を、社内で合成した[7]。理想的には、コーティング溶液は、約170nmの厚さを有する欠陥のない選択性層を形成するために、<15重量%の総固形分含有量で、>1100cpの粘度を有する必要がある。膜を、試験前に、室温で少なくとも6時間、ヒュームフード内で乾燥させた。
【0114】
ガス透過測定
複合膜の輸送特性を、図2に示されるガス透過ユニットによって測定し、それは、透過側面上で掃気および真空モード操作の両方を可能とした。合成された膜を、温度制御されたオーブン(Bemco Inc.Simi Valley、CA)内部のステンレス鋼の長方形の透過セルに装填し、それは、2.7cmの有効面積を有する。膜を、100μmの平均細孔径を有する焼結ステンレス鋼板によって支持した。20%のCOおよび80%のNを含有する100sccmの乾燥供給ガスを使用した。それぞれ、2つの質量流量制御器(MFC1およびMFC2、Alicat Scientific、Tucson、AZ)によって制御されたCOおよびNの2つのガス流を混合することによって、混合ガスを達成した。掃気ガスを、透過側面上で使用した場合、第3の質量流量制御器(MFC3、Alicat Scientific、Tucson、AZ)を採用して、30sccmの乾燥アルゴンを通過させ、それを、バルブ1によって、透過側面に方向付けた。供給および掃気ガスは、それぞれ、60体積%のラシヒリングを充填した、2つの500mLのステンレス鋼の加湿器(Swagelok、Westerville、OH)で、100mLの水を泡立てることによって、水蒸気で完全に飽和していた。加湿器の温度は、57℃で制御され、それは、煙道ガス脱硫(FGD)ユニットを出る典型的な煙道ガス温度である。透過セルに到達する前に、供給および掃気流は、ラシヒリングを充填した2つの乾式圧力容器をそれぞれ通過し、閉じ込められた水滴を除去した。供給および掃気圧力を、2つのほぼ大気圧のレギュレータ、PC1およびPC2によって、それぞれ1~5気圧(絶対)および1psigに制御した。水分を、2つのそれぞれのコンデンサによって、室温でノックアウトした後に、2つの出口ガスを、組成分析のためにAgilent6890Nガスクロマトグラフ(GC、Agilent Technologies、Palo Alto、CA)に送った。GCを、熱伝導度検出器およびSUPELCO Carboxen(登録商標)1004マイクロパックGCカラム(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で装備した。
【0115】
真空モードに関して、透過セルの透過側面を、Ebara MD1真空ダイアフラムポンプ(Ebara Technologies、Inc.、Sacramento、CA)に接続した。透過圧力を、真空レギュレータ(VC、Alicat Scientific、Inc.、Tucson、AZ)によって、正確に0.1~0.9気圧に制御した。透過物流が、真空ポンプに入る前に、それを、冷却装置(Fisher Scientific、Hampton、NH)で0℃に冷却された1Lのステンレス鋼の水ノックアウト容器を通過させて、水分を除去した。30sccmの乾燥アルゴンを、真空ポンプ排出物を、組成分析のためにGCに運ぶために、バルブ1によって方向付けた。
【0116】
試験前後の膜の断面形態を、走査型電子顕微鏡検査(SEM)によって観察した。それは、FEI Nova Nano SEM400(FEI Company、Hillsboro、OR)を使用して実施された。
【0117】
実施例1A(比較)
この実施例では、カーボンナノチューブを組み込まなかった、その結果、膜の選択性層は、ポリアミン、PVAm、およびアミノ酸塩、PZEA-Sarのみを含んでいた。目的は、透過側面上でのアルゴン掃気および真空を用いて試験された場合、異なる膜の性能を証明することであった。
【0118】
10gのPVAm水溶液(1.5重量%、約200cpの粘度)を、Nパージを用いて、水を蒸発させることによって、4重量%に濃縮した。1.968gのPZEA-Sar水溶液(43.19重量%)を、濃縮されたPVAm溶液に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。コーティング溶液は、15/85(重量/重量)の固定対移動担体比を有し、それは、およそ1400cpの粘度にする。GARDCO調整可能マイクロメータフィルムアプリケータ(Paul N.Gardner Company、Pompano Beach、FL)を使用して、コーティング溶液を、32.0nmの平均表面細孔径を有するナノポーラスPES基材上にコーティングした。膜を、ガス透過試験の前に、一晩乾燥させた。170nmの選択性層の厚さを、フィルムアプリケータの間隙設定を調整することによって達成した。この膜を、アルゴン掃気および真空の両方で試験した。アルゴン掃気を用いる試験に関して、供給および透過圧力は、それぞれ1.5および1psigであり、それは、約1の供給対透過圧力比に対応した。真空を用いる試験に関して、供給圧力は、1.5psigであり、一方では、透過圧力は、0.2気圧であり、それは、約5の供給対透過圧力比をもたらした。2つの異なる試験条件からのCO透過性およびCO/N選択性を表1に示す。
【0119】
しかしながら、真空が透過側面上に引かれた場合、透過性は、217GPUに低減した。供給ガスが、57℃で水蒸気で飽和している場合、選択性層中のPVAmは、非常に膨潤した。透過物の吸引によって、選択性層が、ナノポーラス基材の細孔に引きずり込まれ、それによって、COの物質移動抵抗が増加した。真空下の劣化した性能は、明確に、選択性層の機械的強度の欠如に起因していた。真空試験前後の膜の断面SEM画像を図3に示す。図3Aは、膜が、真空試験前に、無傷で、約165nmの厚さの明確な選択性層を有していたことを示し、一方では、図3Bは、真空試験後に、膜の基材細孔への深刻な浸透を呈する。
【表1】
【0120】
実施例1B(比較)
この実施例では、初期のMWNTを、選択性層に組み込んで、機械的強度を向上させた。20gの希釈されたPVAm溶液(1.5重量%)に関して、これを、Nパージ下で、水を蒸発させることによって、4重量%まで濃縮した。次いで、6.158gのMWNT分散液(1重量%)を、激しい混合下で、濃縮されたPVAm溶液に添加した。この後、混合物を、超音波処理して、再分散させた。その後、MWNT分散液によって導入された水を、Nによって蒸発させた。最終的に、3.936gのPZEA-Sar水溶液(43.19重量%)を、分散液に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。しかしながら、コーティング溶液の粘度は、わずかおよそ150cpであった。コーティング溶液を、実施例1Aにおいて記載されるのと同じ手段で、ナノポーラスPES基材上にコーティングした。一晩中乾燥させた後、選択性層は、総固形分中に3重量%のカーボンナノチューブを含有し、PVAm対PZEA-Sar比は、依然として15/85(重量/重量)であった。この膜を、それぞれアルゴン掃気および真空でも試験し、輸送結果を表2に示す。カーボンナノチューブの機械的強度によって、真空下のCO透過性を、577GPUに改善した。しかしながら、それは、アルゴン掃気によって実証されたものよりも依然として296GPU低かった。真空下でのより低い透過性は、コーティング溶液の低い粘度に部分的に起因しており、それによって、膜コーティング中に深刻な浸透がもたらされた。
【表2】
【0121】
実施例1C
この実施例では、PVP3-co-VAc7によって被覆されたMWNTを組み込んだ。20gの希釈されたPVAm溶液(1.5重量%)に関して、これを、Nパージ下で、水を蒸発させることによって、4重量%まで濃縮した。次いで、6.158gのPVP3-co-VAc7/MWNT分散液(1重量%)を、激しい混合下で、濃縮されたPVAm溶液に添加した。この後、混合物を、超音波処理して、再分散させた。その後、MWNT分散液によって導入された水を、Nによって蒸発させた。最終的に、3.936gのPZEA-Sar水溶液(43.19重量%)を、分散液に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。しかしながら、コーティング溶液の粘度は、わずかおよそ979cpであった。コーティング溶液を、実施例1Aにおいて記載されるのと同じ手段で、ナノポーラスPES基材上にコーティングした。一晩中乾燥させた後、選択性層は、総固形分中に3重量%のカーボンナノチューブを含有し、PVAm対PZEA-Sar比は、依然として15/85(重量/重量)であった。この膜を、それぞれアルゴン掃気および真空でも試験し、輸送結果を表3に示す。PVP3-co-VAc7/MWNTの組み込みによって、814GPUのさらに改善されたCO透過性がもたらされ、それは、カーボンナノチューブを含有しない膜よりも、597GPU高かった。
【表3】
【0122】
実施例1D
この実施例では、PVPのみによって被覆されたMWNTを組み込んだ。20gの希釈されたPVAm溶液(1.5重量%)に関して、これを、Nパージ下で、水を蒸発させることによって、4重量%まで濃縮した。次いで、6.158gのPVP/MWNT分散液(1重量%)を、激しい混合下で、濃縮されたPVAm溶液に添加した。この後、混合物を、超音波処理して、再分散させた。その後、MWNT分散液によって導入された水を、Nによって蒸発させた。最終的に、3.936gのPZEA-Sar水溶液(43.19重量%)を、分散液に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。しかしながら、コーティング溶液の粘度は、およそ1313cpであった。コーティング溶液を、実施例1Aにおいて記載されるのと同じ手段で、ナノポーラスPES基材上にコーティングした。一晩中乾燥させた後、選択性層は、総固形分中に3重量%のカーボンナノチューブを含有し、PVAm対PZEA-Sar比は、依然として15/85(重量/重量)であった。この膜を、それぞれアルゴン掃気および真空でも試験し、輸送結果を表4に示す。PVP/MWNTの組み込みによって、939GPUのさらに改善されたCO透過性がもたらされた。呈された透過性は、アルゴン掃気を特徴とするものに近かった。
【表4】
【0123】
実施例1E
この実施例では、PVP7-co-Vac3によって被覆されたMWNTを組み込んだ。20gの希釈されたPVAm溶液(1.5重量%)に関して、これを、Nパージ下で、水を蒸発させることによって、4重量%まで濃縮した。次いで、6.158gのPVP7-co-Vac3/MWNT分散液(1重量%)を、激しい混合下で、濃縮されたPVAm溶液に添加した。この後、混合物を、超音波処理して、再分散させた。その後、MWNT分散液によって導入された水を、Nによって蒸発させた。最終的に、3.936gのPZEA-Sar水溶液(43.19重量%)を、分散液に添加して、均質なコーティング溶液を形成した。しかしながら、コーティング溶液の粘度は、およそ1421cpであった。コーティング溶液を、実施例1Aにおいて記載されるのと同じ手段で、ナノポーラスPES基材上にコーティングした。一晩中乾燥させた後、選択性層は、総固形分中に3重量%のカーボンナノチューブを含有し、PVAm対PZEA-Sar比は、依然として15/85(重量/重量)であった。この膜を、それぞれアルゴン掃気および真空でも試験し、輸送結果を表5に示す。PVP7-co-Vac3/MWNTの組み込みによって、970GPUのさらに改善されたCO透過性がもたらされた。呈された透過性は、アルゴン掃気を特徴とするものをほぼ再現した。真空試験前後の膜の断面SEM画像を図4Aおよび図4Bに示す。これらの図から示されるように、真空試験後の選択性層は、約165nmの厚さで明確であり、それは、試験前の選択性層に類似していた。
【表5】
【0124】
実施例1F
この実施例では、PVP7-co-Vac3/MWNTによって強化された膜(実施例1Eにおいて記載されているような)を、1~5atm(絶対)の高い供給圧力で試験した。透過側面上に引かれた0.2気圧の真空とともに、供給対透過圧力比は、25と同じくらい高かった。膜の輸送性能を図5Aに示す。供給圧力を1から5気圧に上げることによって、透過性は、970から874GPUに減少した。低減したCO透過性に関して、2つの可能な原因が存在する。第1に、膜の圧縮が、供給物の圧縮で発生し得、それが、ポリマーマトリックスを緻密化し、それによって、透過性が低減した。第2に、促進された輸送膜のCO透過性は、供給COの部分圧力に依存し得、すなわち、より高いCO部分圧力によって、担体飽和現象が発生した。これらの2つの効果を区別するために、膜を、1~5気圧の供給圧力で試験したが、供給CO濃度は、0.166気圧の一定CO部分圧力を維持するように調整された。図5Bに示されるように、CO透過性は、異なる供給圧力で、ほぼ同じに維持され、それは、担体飽和現象が、支配的要因であることを確認した。分散されたMWNTは、真空吸引によって引き起こされる膜の曲げ変形に抵抗するために、選択性層の剛性を向上させるだけではない。また、真空吸引とともに、供給物の圧縮は、強化された選択性層を変形させるのに十分ではない。
【0125】
参考文献
[1]R.W.Baker,G.W.Johannes,T.C.Merkel,H.Lin,R.Daniels,S.Thompson,"Gas Separation Process Using Membranes with Permeate Sweep to Remove CO from Combustion Gases"、2011年6月21日に発行された、米国特許第7,964,020号。
[2]W.S.W.Ho,H.Verweij,K.Shqau,K.Ramasubramanian,"Systems,Compositions,and Methods for Fluid Purification"、2015年12月22日に発行された、米国特許第9,216,390号。
[3]M.Sandru,S.H.Haukebo,M.B.Hagg,Composite hollow fiber membranes for CO capture,J.Memb.Sci.346(2010)172-186。
[4]Y.Zhao,B.T.Jung,L.Ansaloni,W.S.W.Ho,Multiwalled carbon nanotube mixed matrix membranes containing amines for high pressure CO/H separation,J.Memb.Sci.459(2014)233-243。
[5]L.Ansaloni,Y.Zhao,B.T.Jung,K.Ramasubramanian,M.G.Baschetti,W.S.W.Ho,Facilitated transport membranes containing amino-functionalized multi-walled carbon nanotubes for high-pressure CO separations,J.Memb.Sci.490(2015)18-28。
[6]Y.Chen,W.S.W.Ho,High-molecular-weight polyvinylamine/piperazine glycinate membranes for CO capture from flue gas,J.Memb.Sci.(2016)376-384.
[7]D.Wu,L.Zhao,V.K.Vakharia,W.Salim,W.S.W.Ho,Synthesis and characterization of nanoporous polyethersulfone membrane as support for composite membrane in CO separation:From lab to pilot scale,J.Membr.Sci.,510(2016)58-71.
【実施例2】
【0126】
実施例2:CO/N分離用のアミン含有の促進された輸送膜。
要約書
この実施例は、CO/N分離用の、移動CO担体を含む、アミン含有の促進された輸送膜に関する。膜の選択性層において、固定されたサイト担体として機能する、アミン含有ポリマーを使用して、ポリマーマトリックスを形成し、そこで、ポリビニルピロリドン被覆多層カーボンナノチューブが分散して、高分子材料の機械的特性を強化する。塩基、例えば、ピペラジン、および2-(1-ピペラジニル)エチルアミンと、アミノ酸、例えば、グリシン、サルコシン、および2-アミノイソ酪酸と、を反応させることによって合成されたアミノ酸塩は、移動担体として採用されて、COの輸送を促進する。本発明は、これらのアミノ酸塩が、効果的な移動担体として機能して、57~87℃の操作温度で極薄膜を通ってCOの透過を向上させ得ることを実証した。CO/N分離では、透過側面上で、真空が引かれるか、または掃気ガス(例えば、水蒸気含有流、空気、またはアルゴン)が使用されて、分離の推進力を提供または増加させ得る。
【0127】
背景技術
産業革命以来、化石燃料の燃焼からの大量のCO排出は、地球温暖化の主な理由となっている。燃焼後の炭素の補足は、大規模な固定源(例えば、石炭火力発電所および/または天然ガス火力発電所からの煙道ガス)からCOを除去し、続いて、地層へ隔離するために、COを2215psiaに圧縮する、または向上されたオイル回収のためにそれを使用する技術を包含する。燃焼後ポートフォリオにおける全ての技術の中で、CO選択性高分子膜は、そのエネルギー効率、操作の簡易性、環境への配慮、および熱力学的溶解平衡限界を克服するための能力に起因して、有望な手法として提案されている。高分子膜合成のための広く関与された手法は、ポリマーの極薄選択性層を、ナノポーラス支持体、典型的には、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、またはポリエーテルイミドから作製された限外ろ過膜上にコーティングすることである。複数の研究努力が、高いCO透過性および適当なCO/N選択性を有するポリマーを設計することにおいて行われてきた。一方では、エチレンオキシド基などの極性官能基が組み込まれて、ポリマーマトリックス中の物理的CO溶解性を増加させる。溶解したCO分子は、膜を通って拡散する[1~3]。他方では、反応性官能基およびアミンなどの反応性化合物が、移動担体として使用されるか、または固定されたサイト担体としてポリマー骨格に結合して、COと可逆的に反応する[4~6]。化学反応は、膜を通るCOの透過を向上させ、このタイプの膜は、促進された輸送膜と称される。
【0128】
促進された輸送膜に関して、1個または複数のアミノ基(複数可)を含有する小分子が、移動担体としてポリマーマトリックス中に組み込まれ得る。そのような移動担体は、供給側面上でCOと反応して、反応生成物を形成する。次いで、反応生成物は、膜全域にわたって拡散し、COを透過側面へ放出する。水性アミン吸収における広範な研究に触発されて、アミノアルコール、例えば、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンは、最初の数少ない小分子の1つであり、それらは、ポリビニルアミン(PVAm)またはポリ(ビニルアルコール)(PVA)膜を通るCO流束を向上させるために採用された[7]。移動担体のモルのCO配合を増加させるために、マルチアミン、例えば、エチレンジアミン[7]およびピペラジン[8]は、効果的な移動担体としても証明された。しかしながら、マルチアミンの1つの可能な欠点は、それらの比較的高い揮発性であり、それは、担体損失をもたらし得、したがって、膜透過性の低減をもたらし得る。この問題を解決するために、不揮発性アミノ酸塩が、強塩基、典型的には、水酸化カリウムを用いて、2-アミノイソ酪酸またはグリシンなどのアミノ酸を脱プロトン化することによって合成された[9~11]。近年、ChenおよびHoが、PVAmによって形成されたポリマーマトリックス中で、移動担体としてグリシン酸ピペラジンを使用することによって、安定した性能を有する、高流束複合膜を報告した[11]。本実施例では、塩基、例えば、環状第二級または第三級アミン、例えば、ピペラジンまたは2-(1-ピペラジニル)エチルアミンと、アミノ酸、例えば、グリシン、サルコシン、および2-アミノイソ酪酸と、を反応させることによる新規なアミノ酸塩が、移動担体として採用されて、COの輸送を促進する。これらのアミノ酸塩は、報告されたものよりも効果的な移動担体として機能して、57~87℃の操作温度で極薄膜を通ってCOの透過を向上させる。
【0129】
材料および方法
この実施例では、ピペラジン(99重量%)、2-(1-ピペラジニル)エチルアミン(99重量%)、2-アミノイソ酪酸(99重量%)、ポリビニルピロリドン(360kDa)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、99重量%)、および水酸化カリウム(85重量%)を、Sigma-Aldrichから購入した。グリシン(99重量%)およびサルコシン(99重量%)を、Acros Organicsから購入した。これらの化学物質を、さらに精製することなく使用した。アミン含有ポリマーに関して、ポリビニルアミン(PVAm)、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、コポリマー、およびこれらのブレンドであり得るが、これらに限定されない。本発明に採用されるアミン含有ポリマーは、BASF(Vandalia、IL)からのPolymin(登録商標)VXという名称の市販製品から精製されたPVAmであった。PVAmは、2,000kDaの高い重量平均分子量を有する。アミン含有ポリマーは、300~3,000kDa、しかし好ましくは1000kDaより高い重量平均分子量を有し得る。カーボンナノチューブを、PVAm中に分散させて、膜の機械的強度を強化し得る。本発明において、多層カーボンナノチューブ(MWNT)が使用され、それは、Arkema Inc.(Philadelphia、PA)からのGraphistrength(登録商標)C100(0.1~10μmの長さ、10~15nmの直径)という名称であった。ナノチューブの長さは、50nm~100μm、しかし好ましくは、200nm~20μmの範囲内であり得る。ナノチューブの直径は、無制限であるが、有利なことには、10~50nmの範囲である。
【0130】
カーボンナノチューブの分散液
市販のカーボンナノチューブは、典型的には、重度に絡み合った束として供給されるため、水に分散させることは本質的に困難である。超音波処理を、水中でカーボンナノチューブを分散させるための効果的な手段として、本発明において使用した。しかしながら、親水性ポリビニルピロリドン(PVP)の物理的被覆を使用して、このプロセスを促進し、水分散液中のカーボンナノチューブを安定化させる。初期のMWNTを、超音波処理によって、1重量%のSDS水溶液中に分散させた。分散液中のMWNT含有量は、1重量%であった。MWNT分散液に、PVP粉末を、1:1のPVP対MWNT重量比で添加した。次いで、混合物を、50℃で5時間インキュベートして、PVP被覆を促進した。結果として得られた混合物を、30分間超音波処理し、10,000rpmで3分間遠心分離した。上澄みを収集し、そこで、PVP対MWNT重量比は、およそ1:2であった。
【0131】
コーティング溶液および膜調製
PVP被覆MWNTを、一定のポリマー濃度およびカーボンナノチューブ配合で、PVAm水溶液に添加した。カーボンナノチューブを、別の超音波処理を実施することによって、ポリマー中に分散させた。その後、一定量のアミノ酸塩を、分散液中に組み込んで、コーティング溶液を形成した。次いで、コーティング溶液を、「ナイフ流延」技術を使用して、ポリエーテルスルホン(PES)ナノポーラス基材上にコーティングした。水を蒸発させた後、膜は、ガス透過試験の準備ができた。
【0132】
ガス透過測定
輸送測定を、以下に記載されるようなガス透過設定を使用して実施した。アミン含有膜試料を、温度制御されたオーブン(Bemco Inc.Simi Valley、CA)内部のステンレス鋼の長方形の透過セルに装填し、それは、2.7cm2の有効膜面積を有する。供給側面上で、20%のCOおよび80%のNを含有する、92sccmの二成分ガス混合物は、57℃で、ラシヒリングの60体積%充填および100mLの水で充填された、500mLのステンレス鋼の加湿器(Swagelok、Westerville、OH)を使用して、水蒸気で完全に飽和していた。供給圧力を、ほぼ大気圧のレギュレータによって、4気圧に制御した。透過側面上で、真空を引いて、膜貫通推進力を提供した。保持物流および透過物流の組成を、熱伝導度検出器(Agilent Technologies、Palo Alto、CA)を装備した、ガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。SUPELCO Carboxen(登録商標)1004マイクロパックGCカラム(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を、分析用に設置した。透過セルの透過側面を、ダイアフラム真空ポンプ(Ebara Corporation、Tokyo、Japan)に接続した。透過圧力を、真空レギュレータ(Alicat Scientific,Inc.、Tucson、AZ)によって、正確に0.2気圧に制御した。透過物流が、真空ポンプに入る前に、それを、冷却装置(Fisher Scientific、Hampton、NH)で0℃に冷却された1Lのステンレス鋼の水ノックアウト(Swagelok、Westerville、OH)を通過させて、水分を除去した。真空ポンプの排出物を、30sccmの乾燥アルゴン掃気によって、組成分析のためにGCに運んだ。
【0133】
実施例2A(比較)
この実施例では、グリシン酸ピペラジンを合成し、移動担体として使用した。1.061gのグリシンを、5.002gのDI水に溶解して、17.5重量%の水溶液を形成した。グリシン溶液に、1.217gのピペラジンを、激しい混合下で添加し、それによって、30.978重量%の濃度を有するグリシン酸ピペラジン(PG)移動担体溶液がもたらされた。一方、20gのPVAm水溶液(1.5重量%、約200cpの粘度)を、Nパージを用いて、水を蒸発させることによって、4.5重量%に濃縮した。濃縮されたPVAm溶液に、最終選択性層の総固形分中の3重量%のMWNT配合を目的として、計算された量のPVP被覆MWNTを、激しい混合下で滴下した。この後、混合物を、超音波処理浴中で超音波処理して、再分散させ、これには、典型的に、6時間を要した。計算された量のPG溶液を添加して、65/35、75/25、および85/15(重量/重量)のPG対PVAm比を、それぞれ有したコーティング溶液を形成した。GARDCO調整可能マイクロメータフィルムアプリケータ(Paul N.Gardner Company、Pompano Beach、FL)を使用して、コーティング溶液を、約32nmの平均表面細孔径を有するナノポーラスPES基材上にキャスティングした。膜を、ガス透過試験の前に、一晩乾燥させた。170nmの選択性層の厚さを、フィルムアプリケータの間隙設定を調整することによって達成した。膜を、4気圧の供給圧力および0.2気圧の透過真空を用いて試験した。異なるPG含有量を用いてCO透過性およびCO/N選択性を表6に示す。見られるように、膜は、約150の高いCO/N選択性とともに、約800GPUの適当なCO透過性を呈した(1GPU=10-6cm(STP)・cm-2・秒-1・cmHg-1)。さらに、CO透過性は、PGの含有量の増加とともに、増加した。839GPUの最も高い透過性が、85/15のPG対PVAm重量比によって得られた。
【表6】
【0134】
実施例2B-移動担体としてPZEA-Glyを含む膜
この実施例では、ピペラジンを、2-(1-ピペラジニル)エチルアミンで置換して、グリシンと反応させた。最初に、1.061gのグリシンを、5.002gのDI水に溶解して、17.5重量%の水溶液を形成した。グリシン溶液に、1.826gの2-(1-ピペラジニル)エチルアミンを、激しい混合下で添加し、それによって、36.229重量%の濃度を有する2-(1-ピペラジニル)エチルアミングリシネート(PZEA-Gly)移動担体溶液がもたらされた。一方、20gのPVAm水溶液(1.5重量%、約200cpの粘度)を、Nパージを用いて、水を蒸発させることによって、4.5重量%に濃縮した。濃縮されたPVAm溶液に、最終選択性層の総固形分中の3重量%のMWNT配合を目的として、計算された量のPVP被覆MWNTを、激しい混合下で滴下した。この後、混合物を、超音波処理浴中で超音波処理して、再分散させた。計算された量のPZEA-Gly溶液を添加して、65/35、75/25、および85/15(重量/重量)のPZEA-Gly対PVAm比を、それぞれ有したコーティング溶液を形成した。3つの膜を、4気圧の供給圧力および0.2気圧の透過真空を用いて試験した。異なるPZEA-Gly含有量を用いてCO透過性およびCO/N選択性を表7に示す。示されるように、CO透過性における50~70GPUの増加は、移動担体としてのPZ-Glyと比較してPZEA-Glyによって実証された。最も高い透過性は、85/15のPZEA-Gly対PVAm重量比を用いた911GPUであった。
【表7】
【0135】
実施例2C-移動担体としてPZEA-Sarを含む膜
この実施例では、グリシンを、サルコシンで置換して、2-(1-ピペラジニル)エチルアミンと反応させた。最初に、1.580gのサルコシンを、5.002gのDI水に溶解して、24.0重量%の水溶液を形成した。サルコシン溶液に、2.291gの2-(1-ピペラジニル)エチルアミンを、激しい混合下で添加し、それによって、43.190重量%の濃度を有する2-(1-ピペラジニル)エチルアミンサルコシネート(PZEA-Sar)移動担体溶液がもたらされた。一方、20gのPVAm水溶液(1.5重量%、約200cpの粘度)を、Nパージを用いて、水を蒸発させることによって、4.5重量%に濃縮した。濃縮されたPVAm溶液に、最終選択性層の総固形分中の3重量%のMWNT配合を目的として、計算された量のPVP被覆MWNTを、激しい混合下で滴下した。この後、混合物を、超音波処理浴中で超音波処理して、再分散させた。計算された量のPZEA-Sar溶液を添加して、65/35、75/25、および85/15(重量/重量)のPZEA-Sar対PVAm比を、それぞれ有したコーティング溶液を形成した。膜を、4気圧の供給圧力および0.2気圧の透過真空を用いて試験した。異なるPZEA-Sar含有量を用いてCO透過性およびCO/N選択性を表8に示す。示されるように、CO透過性におけるおよそ15GPUの増加は、移動担体としてのPZEA-Glyと比較してPZEA-Sarによって実証された。最も高い透過性は、85/15のPZEA-Sar対PVAm重量比を用いた926GPUであった。
【表8】
【0136】
実施例2D-移動担体としてPZEA-AIBAおよびPZEA-Sarを含む膜
この実施例では、サルコシンの一部を、2-アミノイソ酪酸で置換して、KOHの助力を用いて、2-(1-ピペラジニル)エチルアミンと反応させた。最初に、1.250gの2-(1-ピペラジニル)エチルアミンを、5.002gのDI水に溶解して、25.0重量%の水溶液を形成した。1Mの濃度を有するKOH水溶液を、pH値が12に到達するまで添加した。この後、0.998gの2-アミノイソ酪酸を添加し、混合物を、2-アミノイソ酪酸が完全に溶解するまで、激しく混合し続け、溶液を、PZEA-AIBAと表示した。一方、1.580gのサルコシンを、5.002gのDI水に溶解して、24.0重量%の水溶液を形成した。サルコシン溶液に、2.291gの2-(1-ピペラジニル)エチルアミンを、激しい混合下で添加し、それによって、43.190重量%の濃度を有するPZEA-Sar移動担体がもたらされた。次いで、3.228gのこのPZEA-Sar溶液を、PZEA-AIBA溶液に徐々に添加し、それによって、60/40のAIBA対サルコシンのモル比を有する、PZEA-AIBA/PZEA-Sar移動担体溶液がもたらされた。一方、20gのPVAm水溶液(1.5重量%、約200cpの粘度)を、Nパージを用いて、水を蒸発させることによって、4.5重量%に濃縮した。濃縮されたPVAm溶液に、最終選択性層の総固形分中の3重量%のMWNT配合を目的として、計算された量のPVP被覆MWNTを、激しい混合下で滴下した。この後、混合物を、超音波処理浴中で超音波処理して、再分散させた。計算された量のPZEA-AIBA/PZEA-Sar溶液を添加して、65/35、75/25、および85/15(重量/重量)のPZEA-AIBA/PZEA-Sar対PVAm比を、それぞれ有したコーティング溶液を形成した。膜を、4気圧の供給圧力および0.2気圧の透過真空を用いて試験した。異なるPZEA-AIBA/PZEA-Sar含有量を用いてCO透過性およびCO/N選択性を表9に示す。示されるように、CO透過性におけるおよそ15GPUの増加は、移動担体としてのPZEA-Sarと比較してPZEA-AIBA/PZEA-Sarによって実証された。最も高い透過性は、85/15のPZEA-AIBA/PZEA-Sar対PVAm重量比を用いた944GPUであった。
【表9】
【0137】
実施例2E-様々な温度での移動担体としてPZEA-AIBAおよびPZEA-Sarを含む膜
この実施例では、実施例2Dにおいて合成された、85/15のPZEA-AIBA/PZEA-Sar対PVAm比を有する膜を、57℃の代わりに、67~87℃の範囲内の高温で試験した。供給圧力を、膜を通過する前に、4気圧に保持し、供給ガスは、対応する試験温度で水蒸気で完全に飽和していた。しかしながら、透過側面上の真空圧力を、対応する温度での水の飽和圧力よりも0.01気圧高く保持して、結露を回避した。異なる温度でのCO透過性およびCO/N選択性を表10に示す。示されるように、CO透過性は、操作温度に強く依存した。67℃の温度によって、162の高い選択性とともに、透過性が1468GPUに増加した。77および87℃へのさらなる温度の増加によって、それぞれ、2102および2957GPUのさらに高い透過性がもたらされた。77および87℃での選択性は、より低い温度での選択性よりも低かったことに留意されたい。しかしながら、これらの選択性は、促進された輸送を有さない膜によって呈される、典型的には、高温で20未満であるものより、依然としてかなり高かった[1~3]。
【表10】
参考文献
[1]Y.Chen,B.Wang,L.Zhao,P.Dutta,W.S.W.Ho,New Pebax(登録商標)/zeolite Y composite membranes for CO capture from flue gas,J.Membr.Sci.495(2015)415-423。
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[5]T.-J.Kim,H.Vralstad,M.Sandru,M.-B.Hagg,Separation performance of PVAm composite membrane for CO capture at various pH levels,J.Membr.Sci.428(2013)218-224。
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[8]Z.Qiao,Z.Wang,C.Zhang,S.Yuan,Y.Zhu,J.Wang,S.Wang,PVAm-PIP/PS composite membrane with high performance for CO/N separation,AIChE J.59(2013)215-228.
[9]J.Zou,W.S.W.Ho,CO-selective polymeric membranes containing amines in crosslinked poly(vinyl alcohol),J.Membr.Sci.286(2006)310-321。
[10]J.Huang,J.Zou,W.S.W.Ho,Carbon dioxide capture using a CO-selective facilitated transport membrane,Ind.Eng.Chem.Res.47(2008)1261-1267。
[11]Y.Chen,W.S.W.Ho,High-molecular-weight polyvinylamine/piperazine glycinate membranes for CO capture from flue gas,J.Membr.Sci.(2016)376-384.
【0138】
添付の特許請求の範囲の装置、システム、および方法は、特許請求の範囲のいくつかの態様の例示として意図される、本明細書に記載の特定の装置、システム、および方法によって範囲が限定されない。機能的に同等であるいずれの装置、システム、および方法も、特許請求の範囲内に含まれることを意図する。装置、システム、および方法の様々な修正は、本明細書に示された、および記載されたものに加えて、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図する。さらに、本明細書に開示される、特定の代表的な装置、システム、および方法ステップのみが具体的に記載されるが、装置、システム、および方法ステップの他の組み合わせも、具体的に列挙されていない場合でも、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図する。したがって、ステップ、要素、成分、または構成の組合わせは、本明細書で明示的にまたはそれ以下で言及され得るが、ステップ、要素、成分、および構成要素の他の組合わせは、明示的に述べられていなくても含まれる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語およびその変形は、「含む(including)」という用語およびその変形と同義的に使用され、オープンで非限定的な用語である。本明細書では、「含む(comprising)」および「含む(including)」という用語を使用して各種の実施形態を説明してきたが、「含む(comprising)」および「含む(including)」の代わりに「から本質的になる」および「からなる」という用語を使用して、本発明のより具体的な実施形態を提供することができ、およびまた開示されている。特に注記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される形状、寸法などを表す数字は全て、少なくとも、均等論の特許請求の範囲への適用に限定しようとする試みとして理解されるべきでなく、有効数字および通常の丸め手法に照らして解釈されるべきである。
【0140】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、開示された発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用されている刊行物およびそれらが引用されている資料は、参照により具体的に組み込まれている。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B