(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】消毒又は殺菌インジケータ
(51)【国際特許分類】
A61L 2/28 20060101AFI20241227BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A61L2/28
A61L2/20 106
A61L2/20 104
A61L2/20 102
A61L2/20 100
(21)【出願番号】P 2021525093
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 IB2019059576
(87)【国際公開番号】W WO2020095243
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521195423
【氏名又は名称】テラジーン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TERRAGENE LLC
【住所又は居所原語表記】25003 Pitkin Road - Suite D800 Spring, Texas 77386 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ロヴェット, アドリアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ロンバルディア, エステバン
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530085(JP,A)
【文献】特開昭63-295686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0154808(US,A1)
【文献】特開2016-160287(JP,A)
【文献】特開2012-078202(JP,A)
【文献】特開2013-042793(JP,A)
【文献】特開平10-201466(JP,A)
【文献】特開2007-202677(JP,A)
【文献】特開2014-140481(JP,A)
【文献】特開2001-013129(JP,A)
【文献】特表2010-512893(JP,A)
【文献】特開2017-086401(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/28
A61L 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒剤又は殺菌剤と接触したときに色の変化をもたらす物質又は試薬がコーティング又は埋め込まれた平面的なキャリアであって、
前記キャリアは、折りやすい線状領域若しくは溝、印刷された線又は印刷された画像を有し、その結果、多面体、円錐体又は円柱体を形成するように、前記線状領域若しくは溝、印刷された線又は画像に沿って折り畳まれるように構成されている、
平面的なキャリア。
【請求項2】
前記キャリアは、円錐体又は円柱体を形成するように折り畳まれる構成である、請求項
1に記載の平面的なキャリア。
【請求項3】
前記消毒剤又は殺菌剤は、スチーム、プラズマ、蒸気状、又はスプレー状の過酸化水素、過酸化水素プラズマ、エチレンオキシド、オゾン、ホルムアルデヒド、オルトフタルアルデヒド(OPA)、又は過酢酸から選択される、請求項
1に記載の平面的なキャリア。
【請求項4】
前記消毒剤又は殺菌剤と接触したときに色の変化をもたらす前記物質又は試薬は、殺菌インジケータインクである、請求項
1に記載の平面的なキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス、プラズマ、スチーム、スプレー、化学的蒸気又は化学的霧を用いた閉鎖環境における消毒又は殺菌の分野に関するものである。より詳細には、本発明は、そのような消毒又は殺菌を監視するためのインジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素、ホルムアルデヒド、オゾン、過酢酸及び酸化エチレンなどの化学薬品を用いて、閉鎖環境及びその表面を消毒又は殺菌することは、産業及び医療分野、特に病院の手術室や入院室で最近では行われている。近年、環境表面の消毒を目的とした新しいデバイスが発売されており、これらのデバイスは化学物質からスチーム、化学的蒸気、プラズマ、スプレー、霧又はガスを発生させることができるため、処理環境内の種々の場所における化学物質の殺菌効率を制御する必要がある。
【0003】
プラズマ、スプレー、霧、スチーム、化学的蒸気又はガスによる物品の殺菌プロセスを監視するために、多種多様な殺菌インジケータストライプ、テープ又はラベルが当該技術分野でよく知られている。この種のインジケータは、一般に、ストライプ、テープ、又はラベルにコーティングされた、又は埋め込まれた適切な物質又は試薬の物理的変化又は化学的反応に起因する、インジケータの色又は他の容易に目視できる特性の変化に基づいている。
【0004】
過去50年から60年の間に製造された殺菌インジケータに関する豊富な特許文献が存在する。
【0005】
ジョンソン&ジョンソン社に譲渡された、1968年6月4日に発行された特許US3386807には、スチームによる殺菌を監視する、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛とサブガレート酸ビスマスでコーティングされた殺菌インジケータテープが開示されている。
【0006】
1971年3月9日に発行された特許US 3568627 (Selinger外)には、オートクレーブで行われた殺菌を記録及び監視するためのインジケータカードが開示されており、殺菌される商品の包装内に配置されることが意図されている。
【0007】
1979年02月06日に発行された特許US4138216 (Larsson外)には、エチレンオキサイド応答性化合物を含浸させ、一端を除いて全てをエチレンオキサイド不浸透性フィルムで封止したウィックを備える、エチレンオキサイドによる殺菌を監視するデバイスが開示されている。
【0008】
1994年09月06日に発行された特許US 5344017 (Wittrock)には、パウチの壁間で保護されるインジケータを含む、医療器具の殺菌用パウチが開示されている。当該発明によれば、スチーム、蒸気、又は酸化エチレンのような有機試薬を検出するための任意の適切なインジケータを使用することができる。
【0009】
2000年10月19日に公開された特許出願WO00/061200(Patel)には、プラズマによる殺菌を監視するための層状インジケータが開示されている。
【0010】
2001年2月15日に公開された特許出願WO01/010471(Patel)には、pH上昇に反応する層状インジケータで監視する、酸化エチレンによる殺菌プロセスが開示されている。
【0011】
先行技術文献には、手術室やその他の病院施設などの環境及又はその中の表面を立体的に監視することを教示するものでも示唆するものでもない。そこで、環境年の種々の領域に配置することを可能にし、殺菌剤の作用を立体的に評価することを可能にする適切な構造及び形状を有するインジケータが必要とされている。例えば、環境年の任意の場所に殺菌剤が到達したことを、インジケータの適切な囲み及びインジケータとの適切な接触によって証明することで決定することが挙げられる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、そのようなニーズを満たすことを目的とするものであり、スチーム、プラズマ、ガス、スプレー、霧、又は蒸気による環境の消毒又は殺菌を制御するインジケータに関するものである。
【0013】
したがって、第1の側面において、本発明の目的は、閉鎖環境及び上記閉鎖環境に位置する表面の消毒又は殺菌を監視するためのインジケータデバイスであって、
消毒剤又は殺菌剤をかけることによって消毒及び殺菌が行われ、
インジケータデバイスが、上記消毒剤又は殺菌剤と接触したときに色又は他の容易に目視できる特性の変化をもたらす物質又は試薬がコーティング又は埋め込まれたキャリアを含み、
キャリアが多面体、円錐体、円柱体、球体又は他の三次元形状として構成されているインジケータデバイスである。
【0014】
本発明のこの第1の側面の好ましい実施形態では、消毒剤又は殺菌剤は、スチーム、プラズマ、蒸気状、スプレー状、又はガス状の化学剤、好ましくは蒸気状の過酸化水素、過酸化水素プラズマ、エチレンオキシド、オゾン、ホルムアルデヒド、オルトフタルアルデヒド(OPA)、又は過酢酸である。
【0015】
本発明のこの第1の側面の好ましい実施形態では、多面体は、四面体、立方体、五面体又は二十面体である。
【0016】
本発明のこの第1の側面の実施形態では、多面体は、二面角を形成するように平面的なキャリアが折り畳まれたものである。
【0017】
本願のこの第1の側面の好ましい実施形態では、平面的なキャリアは、好ましくは四面体、立方体、ピラミッド、五面体又は二十面体を形成するように折り畳まれる。
【0018】
本発明のこの第1の態様の別の好ましい実施形態では、キャリアは、円錐体又は球体として構成される。
【0019】
本発明のこの第1の側面の実施形態では、上記殺菌剤と接触したときに色又は他の容易に目視できる特性の変化をもたらす物質又は試薬は、市販の殺菌インジケータインクから選択される。
【0020】
本発明のこの第1の側面の実施形態において、殺菌インジケータインクは、エチレンオキシドと反応するアクリル樹脂、臭化ナトリウム及びCI 74190(ターコイズブルー);ホルムアルデヒドと反応するCI13025 (メチルオレンジ)、ポリビニルアルコール及びCI74400(ソルベントブルー70);過酢酸と反応するアクリル樹脂、CI 42045 (ブルーアシッド1)、CI 45170(ソルベントレッド49)、CI74190(ターコイズブルー)及び亜硝酸ナトリウム;並びに過酸化水素プラズマと反応するCI11210 (ディスパースレッド17)、EDTA及びアクリル樹脂を含む。
【0021】
本発明のこの第1の側面の好ましい実施形態では、キャリアは、紙、ボール紙、プラスチック、高分子材料又は金属合金、より好ましくは紙又はボール紙でできている。
【0022】
第2の側面では、本発明の目的は、消毒剤及び殺菌剤と接触したときに色又は他の容易に目視できる特性の変化をもたらす物質又は試薬がコーティング又は埋め込まれた平面的なキャリアであって、
キャリアは、折りやすい線状領域若しくは溝、印刷された線又は印刷された画像を有し、その結果、多面体、円錐体又は円柱体を形成するように、上記線状領域若しくは溝、印刷された線又は画像に沿って折り畳まれるように構成されている。
【0023】
本発明のこの第2の側面の実施形態では、消毒剤又は殺菌剤は、スチーム、プラズマ、蒸気状の過酸化水素、過酸化水素プラズマ、エチレンオキシド、オゾン、ホルムアルデヒド、オルトフタルアルデヒド(OPA)又は過酢酸である。
【0024】
本発明のこの第2の側面の好ましい実施形態では、消毒剤又は殺菌剤と接触したときに色又は他の容易に目視できる特性の変化をもたらす物質又は試薬は、市販の殺菌インジケータインクから選択される。
【0025】
第3の観点では、本発明の他の目的は、閉鎖環境及び上記閉鎖環境に位置する表面の消毒又は殺菌を監視する方法であって、
消毒及び殺菌は、消毒剤又は殺菌剤をかけることによって行われ、
上記方法は、
-消毒剤又は殺菌剤の消毒又は殺菌作用を確認することが重要又は必要な環境内の位置を選択するステップと、
-消毒又は殺菌を監視するためのインジケータデバイスを上記位置に提供するステップと、
-消毒剤又は殺菌剤を環境に導入するステップを含む、殺菌ステップを実行するステップと、
-色又は他の容易に目視できる特性の変化を観察するステップと、
を有し、
インジケータデバイスは、消毒剤又は殺菌剤と接触したときに色又は他の容易に目視できる特性の変化をもたらす物質又は試薬が均一にコーティング又は埋め込まれたキャリアを含み、
キャリアは多面体、円錐体、円柱体又は球体として構成される。
【0026】
本発明のこの第3の態様の好ましい実施形態では、殺菌される閉鎖環境は、病院の手術室又は入院室、又はクリニックの医務室、食品製造エリアや医薬品製造エリアである。
【0027】
本発明のこの第3の側面の好ましい実施形態では、殺菌される閉鎖環境は、医療器具の保管室である。
【0028】
本発明のこの第3の側面の好ましい実施形態では、殺菌される閉鎖環境は、食品施設、製薬会社、及び医療機器施設に属する。
【0029】
本発明のこの第3の側面の好ましい実施形態では、消毒剤又は殺菌剤は、スチーム、蒸気状の化学剤又はガス状の化学剤であり、より好ましくは過酸化水素、オゾン又は過酢酸である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、キャリアが四面体として構成されている本発明のインジケータの一実施形態を示す。
【0031】
【
図2】
図2は、キャリアが三角形の底面を有するピラミッドとして構成されている、本発明のインジケータの一実施形態を示す。
【0032】
【
図3】
図3は、キャリアが六角形の底面を持つピラミッドとして構成されている、本発明のインジケータの一実施形態を示す。
【0033】
【
図4】
図4は、キャリアが二十面体として構成されている、本発明のインジケータの実施形態を示す。
【0034】
【
図5】
図5は、平面的なキャリアが、「テント」とも呼ばれる3つの二面角を形成するように折り畳まれている、本発明のインジケータの実施形態を示す。
【0035】
【
図6】
図6は、キャリアが立方体として構成されている、本発明のインジケータの実施形態を示す。
【0036】
【
図7】
図7は、キャリアが円錐体として構成されている、本発明のインジケータの実施形態を示す。
【0037】
【
図8】
図8は、キャリアが球体として構成されている、本発明のインジケータの実施形態を示す。
【0038】
【
図9】
図9は、キャリアが円柱体として構成されている、本発明のインジケータの実施形態を示す。
【0039】
【
図10】
図10Aから10Dは、本発明のインジケータの実施形態を示しており、キャリアは、折りやすい部分を有する紙又はボール紙の平面的な片であり、それぞれ
図2、4、5及び6のインジケータを形成するように折り畳まれる構成である。
【0040】
【
図11】
図11は、消毒評価が行われた部屋のレイアウトを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
環境の消毒又は殺菌は、環境表面及びその中の空気の消毒又は殺菌の効果を決定するパラメータの制御に関して、いくつかの制限に直面している。理由は、殺菌装置は、殺菌される部屋又はチャンバ内の湿度、温度、対象の体積及び壁の大きさなどのパラメータを正確に制御できないからである。その上、かかるプロセスは環境空気を排除することができないため、殺菌剤が拡散して殺菌される全ての表面やゾーンに到達するには多くの障害がある。
【0042】
本発明は、環境内の種々の領域に配置することができ、表面だけに限らず、立体的に殺菌剤の作用を評価することができる、種々の構造及び形状を有する化学的インジケータを提供する。
【0043】
したがって、本発明の目的は、特定の殺菌プロセスのためにあらかじめ定義された物理的又は化学的パラメータ及び/又は特定の殺菌剤に反応することができ、反応性インクとして市場に出回っている、色又は他の容易に目視できる特性の変化をもたらす物質又は試薬を含む殺菌又は消毒化学インジケータを提供することである。したがって、このインジケータは、無菌状態が必要とされる環境表面及び空気の殺菌を確認することができる。
【0044】
本発明は、病院の手術室、オートクレーブチャンバ、診療所の医務室、食品や医薬品の施設など、殺菌されるべき環境内のすべての関心ゾーンにおける殺菌プロセスの有効性を、可能なすべての方向で立体的に分析することを可能にするように種々の幾何学的形状を有する表面に反応性インクを露出することによって、消毒又は殺菌プロセスを検証することができる。
【0045】
したがって、本発明では、殺菌検証が必要な場所に応じて、適切なインジケータの構成を選択することができ、反応性インクを埋め込んだキャリア表面の向きを、
図5に示すような2つの表面又は面から
図4に示すような20以上の面、あるいは、球体、円錐体又は円柱体として構成されたキャリアの場合には連続した複数配向の面に、幅広く提供することができる。このように、本発明のインジケータは、長い間満たされていなかったニーズを解決するものであり、よく知られている平面的なインジケータでは満たすことができないニーズである。
【0046】
本発明のインジケータは、関心のあるすべての場所での殺菌効率の検証を可能にするために、殺菌される環境表面に直接配置してもよく、殺菌される部屋又はチャンバの壁に、例えばチャンバ又は部屋内の殺菌剤源から遠位の端に取り付けたり吊るしたりしてもよい。
【0047】
図1から
図9は、本発明の好ましい例示的な実施形態を示しており、インジケータは、3つの面を有する1つのインジケータから20面を有する正二十面体のインジケータ、また、円錐形、円筒形、及び球形のインジケータなど種々の三次元形状で構成されている。また、コストと構造特性(重量、靭性、構造抵抗など)のバランスを考慮して、中実体又は中空体として構成されていてもよい。図において、ストライプ部分は、各インジケータデバイスにおけるインジケータインクを含む印刷領域を示し、「X」記号は、デバイスに関する情報(例えば、商標、使用方法、又は有効期限)が印刷されたテキストを示す。
【0048】
図1から
図9のインジケータは、固体としてのポリマー材料又は金属合金で作られてもよいし、平面的なボール紙又は紙のキャリアを折り畳むことによって形成されてもよい。インジケータデバイスは、必要又は所望に応じて、表面の上に置かれる代わりに吊るすためのロープ又はワイヤの一部をその上面部分に構成してもよい。
【0049】
図5は、ボール紙製キャリアを折り畳んで形成された三面体のインジケータである。
【0050】
図10Aから10Dは、それぞれ
図1、4、5、6に従って、ピラミッド、二十面体、「テント」、立方体の形の中空インジケータを形成するように折り畳まれた例示的なボール紙製キャリアを示す。
【0051】
本発明のインジケータデバイスに適用することができる、スチーム、化学物質の蒸気又はガスと接触したときに色又は他の容易に目視できる特性の変化をもたらす物質又は試薬は、市販の殺菌インジケータインクから選択することができ、好ましくは、エチレンオキシドと反応するアクリル樹脂、臭化ナトリウム及びCI 74190 (ターコイズブルー);ホルムアルデヒドと反応するCI13025 (メチルオレンジ)、ポリビニルアルコール、CI 74400 (ソルベントブルー70);過酢酸と反応するアクリル樹脂、CI 42045 (ブルーアシッド1)、CI 45170 (ソルベントレッド49)、CI74190 (ターコイズブルー)及び亜硝酸ナトリウム;並びに過酸化水素プラズマと反応するCI11210 (ディスパースレッド17)、EDTA及びアクリル樹脂が挙げられる。
【0052】
準備例
ケミカルインジケータの一般的な製造プロセス
製造プロセスは、消毒の目的である部屋、空間、又は閉鎖環境の特定の領域に置くことができるように、化学的インジケータインクで印刷された複数の面を有する三次元物体を生成するために、製品に対応可能な全ての三次元形状を折り畳むのに適した平面的なテンプレートを設計することから始まる。インジケータインクが印刷された三次元物体は、部屋や空間の天井から吊り下げたり、壁にフックをかけて吊るしたり、表面の上に置いたりするのに適している。
【0053】
本発明の主な目的は、インジケータが、環境消毒プロセスの最も重要な可変項目に対応できることである。インジケータインクで印刷された異なる面は、消毒剤が部屋、空間、又は閉鎖環境のすべてのセクターとコーナーに到達したかどうかを検証することを可能にする。これは、消毒後のインジケータインクの色の変化をチェックすることで簡単に確認することができる。
【0054】
インジケータインクは、マトリックス又はポリマー内に含まれる化学製剤からなり、使用されるキャリア又は基板への接着又は固定を可能にするものである。インジケータインクは、殺菌剤又は消毒剤の存在下でその色を変化させる。この色の変化は、殺菌剤や消毒剤の作用に影響を与えるいくつかの重要な要因に依存する。消毒プロセスの性能に影響を与える要因として、暴露時間、周囲の温度と湿度がある。したがって、インクの反応性は、行われる殺菌又は消毒プロセスを示す色の変化にとって重要である。
【0055】
ケミカルインジケータインクは、キャリアシート上にセリグラフィ又はオフセット印刷によって印刷され、そのように印刷されたシートは、その後、三次元物体に折り畳まれるのに適した平面的なテンプレートを製造するために、ダイキャストプロセスに供してもよい。
【0056】
本発明の好ましい実施形態では、化学的インジケータは、オフセット印刷機の印刷フォーマットに合わせて適切にカットされた(最も典型的には長方形の形状とした)、紙又はカートンの合成片からなる。紙は、黒インク、カラーインク、及び意図された殺菌剤と反応する特定のインジケータインクで印刷される。
【0057】
印刷プロセスは、好ましくは2つのステップで実施される。第1のステップでは、印刷前原本として印刷システムで使用されるマトリックスの準備を行う。
-オフセットマシン用メタリックシート:プレプリント用のオリジナルに関して、CTPレーザー技術(必要なレーザーエネルギーは90から130mJ/cm2、Kodak 400 xLoシステムを使用)により、熱可塑性の非アブレーションのデジタルシート(Kodak(登録商標)の約605x745x0.30mmサイズ)にデザインが印刷される。このシートには、バッチ、製造日、使用期限、消毒剤などの製品関連情報のみが印刷されており、オフセットシステムで印刷される。
-グラフィカルフィルム:フィルム仕様例:エマルジョンコーティングされたAGFA(登録商標)フィルム帯電防止ポリエステルベース0.10mmを、赤色ヘリウムネオン(He-Ne)レーザーとダイオードレーザー(630-670nm)でエッチングしたものである。グラフィカルフィルムによって、システムであらかじめ決められたデザインに沿ってインクを印刷することができる。
【0058】
第2のステップでは、オフセットマシンで実施する場合、紙と金属シートの両方をオフセットマシン内に配置する。圧力をかけることで、エッチングされたデザインが基板に転写される。一般的に、オフセット印刷は、概して油性のインクを、アルミニウム合金で構成された金属板、すなわち上記金属シートに塗布することからなる印刷方法である。金属板を水や極性溶液で濡らし、画像のない部分ではインクをはじき、印刷するモチーフの形をした疎水性化合物や無極性化合物(油性化合物ともいう)があらかじめエッチングされている部分ではインクを吸収できるようにしておく。画像又はテキストは、印刷されるべき表面に転写される。これは直接ではなく、表面に柔軟性のある素材(メッシュ)であって一般的にはゴムである素材をコーティングした円柱体を介して行われる。この素材が画像を受け取り、圧力をかけて印刷面(この場合は合成紙やシャンブリル紙)に転写する。
【0059】
最終工程がセリグラフィによって行われる場合、セファール社のポリエステルシルクを約23ニュートンで張った94×94cmのアルミフレームで構成されたマトリックスを準備する必要がある。このポリエステルシルクにピンテシント感光乳剤を塗布し、シルクとすべての孔を覆う。その上にグラフィックフィルムを置き、フィルムと乳剤の入った枠との間に隙間ができないように真空状態で紫外線を2分間照射する。露光後、フィルムを剥がし、水で現像する。紫外線によって乳剤が定着し、グラフィックフィルムに印刷された部分や黒い形にバージンシルクが残る。水洗いすることで未露光部分が希釈され、インクを乗せる部分がシルクの中に残り、ゴム製の道具で塗り広げていく。インクは画像部分のメッシュを通過して、あらかじめ印刷された合成紙やシャンブリル紙に蓄積する。
【0060】
最後に、紙又は基板のダイキャストは、切断ブレードと目印を備えた木製のマトリックスによって作られる。木材の切断には、操作公差±0.2mmのCNC CO2レーザー(GY-1218 SHモデル)と、自動ABM-300D CNC刃折機を用いる。曲がらないタイプの特殊な集成材をレーザーに使用する。刃はダイフレックスモデルで、刃先は焼き入れされている。ダイキャスト機では、印刷された紙をスライドに置き、木製のマトリックスに圧力をかけて、最終的に平面的なテンプレートを形成し、使用時には三次元物体に折り畳むことができるようになっている。
【0061】
実施例1
上記の一般的な製造プロセスに従って、
図1のインジケータへと折り畳み可能なテンプレートに、酸化エチレンによる殺菌又は消毒を監視するためのインジケータインクを印刷した。このインジケータインクは、表1の組成を有していた。
【表1】
【0062】
実施例2
上記の一般的な製造プロセスに従って、
図2のインジケータへと折り畳み可能なテンプレートに、ホルムアルデヒドによる殺菌又は消毒を監視するためのインジケータインクを印刷した。このインジケータインクは、表2の組成を有していた。
【表2】
【0063】
実施例3
上記の一般的な製造プロセスに従って、
図3のインジケータへと折り畳み可能なテンプレートに、過酢酸による殺菌又は消毒を監視するためのインジケータインクを印刷した。このインジケータインクは、表3の組成を有していた。
【表3】
【0064】
実施例4
上記の一般的な製造プロセスに従って、
図4のインジケータへと折り畳み可能なテンプレートに、過酸化水素プラズマによる殺菌又は消毒を監視するためのインジケータインクを印刷した。このインジケータインクは、表4の組成を有していた。
【表4】
【0065】
本発明のインジケータを用いた消毒モニタリング評価
閉鎖環境のすべての領域における殺菌又は消毒プロセスを監視するための有効性を決定するために、本発明のインジケータを評価した。
【0066】
評価は、温度と相対湿度を制御及び変更できる空調システムを備えた
図11に示す144m
3の部屋で行った。評価では、過酸化水素水を1ml/m
3で気化させる消毒装置1を用いた。部屋の家具は、机2と食器棚3で構成されている。
【0067】
消毒の失敗につながる可能性のあるいくつかの消毒プロセスの重要な可変項目を、プロセスへの影響を確認するために以下のようにテストした。
-溶液濃度:気化させる溶液中の過酸化水素濃度、
-露出時間:気化ステップが終了してから部屋の換気までの時間、
-温度:初期の室温、
-湿度:消毒プロセス前の初期の周囲湿度、及び
-設定量:消毒装置に設定されている操作量
【0068】
評価すべきインジケータ群は、
図11に示す位置に、以下のように配置した。
-A.- 消毒装置1の反対側のコーナーであって、高さ1.5mに位置し、インジケータの一方の面を当該コーナーに向けて、各コーナーの壁から15cm離れた位置に設置する。
-B.- 部屋の中央にあるデスク2の下であって、高さ65cmのデスクから吊るす。
-C.- 部屋の中央に、高さ2.5mの天井から吊るす。
-D.- 消毒器具1に隣接するコーナーの食器棚3と壁の間であって、高さ1.5m、各壁から15cm離れた位置に設置する。
【0069】
評価したインジケータは以下の通りである。
-
図1に示す正四面体で、一辺が10cmの「ピラミッド」と称する。
-
図4に示す正二十面体で、一辺が5cmの「二十面体」と称する。
-
図5に示す「二面体」で、幅10cmx高さ5cmの2つの面と、5cmの底面を持つ「テント」と称する。
【0070】
消毒プロセス後のインジケータを光学的に検査した評価結果を以下のように分けた。
-"成功":化学的インジケータの色の変化が最終的な色又は'エンドポイント''に達した場合。
-"曖昧":最終的な色シフトが評価困難であった場合。
-"失敗":化学的インジケータの色シフトが、顕著及び/又は均一に期待される最終的な色に到達しなかった場合。
-"N/A":インジケータの特殊な三次元形状のために適切な面が無かった場合。
【0071】
インジケータ面に対する空間的な参照は、以下の意味を持つことを意図する。
-"正面":消毒装置1に面したインジケータ領域、
-"側面"、"平面"、"底面":必要に応じて、消毒装置1に直接面していないインジケータ領域、
-"背面'':消毒装置1に対して反対側に向いているインジケータ領域。
【0072】
消毒の結果を以下の表にまとめた。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0073】
表1から11の評価結果は、正面(すなわち消毒装置に面するインジケータ領域)が成功又は曖昧の消毒結果を示した場合であっても、側面、背面又は平面/底面のいずれかで色シフトが部分的又は完全に無いことは、消毒プロセスが完全には有効ではなく、部屋のいくつかの領域が消毒剤に有効にさらされていないことを明確に示している。これは、先行技術の平面的なインジケータデバイスでは達成できない、本発明の有利な特徴である。
【0074】
本発明を図面及び前述の説明で詳細に図示及び説明してきたが、このような図示及び説明は、例示的又は模範的なものであって、制限的なものではないと考えるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する変形は、当業者が請求項の発明を実施する際に、図面、開示内容、及び添付の請求項の検討から理解し、実施することができる。