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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】T細胞リンパ腫の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241227BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20241227BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 E
A61K31/7068
A61K31/282
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021542146
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020051234
(87)【国際公開番号】W WO2020152081
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】62/795,194
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506000184
【氏名又は名称】イナート・ファルマ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】INNATE PHARMA PHARMA S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】アブデラジム,ハテム
(72)【発明者】
【氏名】パトゥレル,カリーヌ
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/073363(WO,A1)
【文献】特表2016-513104(JP,A)
【文献】LISA ARGNANI; ET AL,CUTANEOUS T-CELL LYMPHOMAS: FOCUSING ON NOVEL AGENTS IN RELAPSED AND REFRACTORY DISEASE,CANCER TREATMENT REVIEWS,2017年10月28日,VOL:61,PAGE(S):61 - 69,http://dx.doi.org/10.1016/j.ctrv.2017.10.007
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TCLの処置における使用のための、KIR3DL2ポリペプチドに結合し、かつKIR3DL2発現細胞を除去することができる抗体を含む医薬組成物であって、ここで該医薬組成物は、ゲムシタビン及びオキサリプラチンと組み合わせて投与され、およびここで該抗KIR3DL2抗体、オキサリプラチン及びゲムシタビンが、別々の投与のために製剤化され、かつ並行して又は順次投与される、医薬組成物。
【請求項2】
ゲムシタビンが、2週間ごとに1回、800~1000mg/mの用量で投与され、及びオキサリプラチンが、2週間ごとに1回、75~100mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
ゲムシタビンが、2週間ごとに1回、800~1000mg/mの用量で投与され、及びオキサリプラチンが、3週間ごとに1回、75~130mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
抗体が、1週間当たり1回~4週間ごとに1回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
抗体が、1週間当たり1回投与され、任意選択で抗体が、第1相において1週間当たり1回投与され、続いて、第2相において2週間ごとに1回又は1ヵ月当たり1回投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記TCLが、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)ある、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記PTCLが、成人T細胞白血病(ATL)、腸症関連T細胞リンパ腫(EATL)、PTCL-NOS又は未分化大細胞リンパ腫(ALCL)である、請求項6に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
抗体が、1~20mg/kgの用量、任意選択で750mgの用量で投与される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
抗体が、少なくとも1回の投与サイクルを含むレジメンにおいて投与され、前記少なくとも1回のサイクルのそれぞれについて、2、3又は4用量の前記KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体が投与され、且つ少なくとも2、3又は4用量のゲムシタビンが投与され、及び任意選択でオキサリプラチンが投与され、ゲムシタビンが、2週間ごとに1回、800~1000mg/mの用量で投与され、オキサリプラチンが、2週間ごとに1回、75~130mg/mの用量で投与される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
個人におけるTCLの前記処置が、
a)TCLを有する前記個人内の悪性細胞のKIR3DL2ポリペプチドステータスを決定することと、
b)前記個人が、悪性細胞の表面上に発現されるKIR3DL2ポリペプチドを有すると決定されると、オキサリプラチン及びゲムシタビンと組み合わせて、KIR3DL2ポリペプチドに結合する前記抗体を前記個人に投与することと
を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
KIR3DL2ポリペプチドに結合する前記抗体が、(a)配列番号48~51のいずれかの2B12 VHと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び(b)配列番号43~47のいずれかの2B12 VLと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むVLドメインを含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
KIR3DL2ポリペプチドに結合する前記抗体が、(a)配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び(b)配列番号44又は45のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
KIR3DL2ポリペプチドに結合し、かつKIR3DL2発現細胞を除去することができる抗体と組み合わせて、TCLの処置において使用するためのゲムシタビン及びオキサリプラチンを含む医薬組成物であって、ここで該抗KIR3DL2抗体、オキサリプラチン及びゲムシタビンが、別々の投与のために製剤化され、かつ並行して又は順次投与される、医薬組成物。
【請求項14】
TCLの処置における使用のためのキットであって、KIR3DL2発現細胞を除去することができる抗KIR3DL2抗体を含有する医薬組成物、キサリプラチンを含有する医薬組成物及びゲムシタビンを含有する医薬組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年1月22日に提出された米国仮特許出願第62/795,194号明細書の利益を主張し、これは、任意の図面を含め、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
配列表に対する参照
本出願は、電子形式の配列表と共に提出される。配列表は、サイズが54KBである、2020年1月14日に作られた「KIR-9 PCT_ST25」というタイトルのファイルとして提供される。配列表の電子形式の情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、T細胞リンパ腫の診断及び処置のためのKIR3DL2標的作用物質の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
KIR3DL2/CD158kは、健康な循環NKリンパ球及びCD8+Tリンパ球の亜集団に発現される細胞表面受容体である。しかしながら、KIR3DL2は、悪性T細胞、特に悪性CD4+T細胞の表面上にも見出されており、その結果、T細胞リンパ腫(TCL)の処置のための標的としてさらに浮上した。
【0005】
KIR3DL2発現TCLは、菌状息肉腫(MF)及びセザリー症候群(SS)などのような皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(例えば、特許文献1(Innate Pharma)及び特許文献2(INSERM)を参照されたい)並びに末梢T細胞非ホジキンリンパ腫(例えば、特許文献3、Innate Pharmaを参照されたい)を含む。MF及びSSは、比較的稀であるが、PTCLは、西洋諸国において、高悪性度リンパ腫の15%~20%、すべての非ホジキンリンパ腫(NHL)の7%~10%を占める。それらは、通常、中年~高齢の患者において生じ、主要な特徴は、患者の68%における播種性疾患によって特徴付けられ、そのほぼ半分(45%)において全身症状、4分の1(25.8%)において骨髄(BM)病変及び3分の1(37%)において節外性疾患を伴う。積極的な療法にもかかわらず、半分を超える患者がそれらの疾患で死亡する。ある特有の疾病は、処置された場合、予後徴候を改善したが、多くの侵攻性PTCLについての予後は、第2及び第3世代の化学療法レジメンを使用しても比較的変わらず、5年間の全生存(OS)は、依然として例えばPTCL-NOSについて25%~47%のままである。
【0006】
KIR3DL2に特異的に結合する抗体は、当技術分野においてよく知られている。Innate Pharmaは、例えば、KIR3DL2上の一連の様々なエピトープに向けられる多くの抗KIR3DL2抗体、例えば特許文献4及び特許文献5において記載される抗体15C11、19H12、22B2、18B10、12B11、13H1、10F6、2B12、18C6、9E10、10G5、13H1、5H1、1E2、1C3及び20E9を記載した。Innate Pharmaによる治験は、ヒト菌状息肉腫及びセザリー症候群患者における抗KIR3DL2抗体の有望な結果を実証した。特に、難治性SS患者からのデータは、単剤IPH4102(ADCC媒介性抗KIR3DL2抗体)の反復投与による処置に際して、42.9%の全奏効率(ORR)、13.8ヵ月の奏効期間の中央値(DoR)及び11.7ヵ月の無増悪生存期間の中央値(PFS)によって実証される強い臨床活性を明らかにした。これらの望みをもたせ、そのうえ副作用がほとんどない結果並びに健康なKIR3DL2発現NK細胞及びT細胞の除去を引き起こすことなく悪性KIR3DL2発現細胞を除去することができることは、TCLの処置において重要な前進をもたらす。しかしながら、患者の中には、疾患の進行を示し、且つ/又は最初の処置に十分に応答しなかった者もいた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/081890号パンフレット
【文献】国際公開第02/50122号パンフレット
【文献】国際公開第2014/128221号パンフレット
【文献】国際公開第2014/044681号パンフレット
【文献】国際公開第2014/044686号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その結果、TCLを有する患者にとっての利益の改善が当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、とりわけ、ゲムシタビン及びオキサリプラチンが、それぞれ悪性T細胞においてKIR3DL2発現の増加を引き起こすことができ、及びこれらの薬剤が抗KIR3DL2除去抗体と組み合わされると、結果として悪性T細胞を除去する免疫細胞(NK細胞)の能力の劇的な増加につながるという発見に由来する。
【0010】
興味深いことに、ゲムシタビン及びオキサリプラチンのそれぞれは、別々にTCL細胞上のKIR3DL2発現を増加させただけでなく、ゲムシタビン+オキサリプラチンの組み合わせは、TCL細胞上のKIR3DL2発現のさらなる増加を引き起こした。ゲムシタビン+オキサリプラチン+抗KIR3DL2抗体の3つを合わせると、結果として、個別の薬剤と比較して悪性T細胞を除去する免疫細胞(NK細胞)の強い能力につながることも観察された。ゲムシタビン(若しくはヌクレオシドアナログ)及び/又はオキサリプラチン(若しくは他の白金化合物)は、そのため、抗KIR3DL2抗体の活性を強化するために、又は特にリンパ球(例えば、T細胞、NK細胞)にTCL細胞を排除させる抗KIR3DL2抗体の能力を強化するために使用することができる。
【0011】
ゲムシタビン及び/又は白金ベースの化合物の抗KIR3DL2抗体との組み合わせは、そのため、TCL(例えば、KIR3DL2発現TCL、PTCL、CTCL、SS又はMF)を有する患者の特に有利な処置を提供することができる。
【0012】
ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))は、ヌクレオシド代謝阻害剤として、以下を含む多くの癌腫に対して承認されている:
- カルボプラチンと組み合わせて、白金ベースの療法の終了の少なくとも6ヵ月後に再発した進行卵巣癌の処置のため、
- パクリタキセルと組み合わせて、アントラサイクリンが臨床上禁忌である場合を除いて、先に行われたアントラサイクリン含有補助化学療法に失敗した後の転移性乳癌の第一選択処置のため、
- シスプラチンと組み合わせて、非小細胞肺癌の処置のため、及び
- 膵臓癌の処置のための単剤として。
【0013】
オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標))は、以下に対して承認されている白金ベースの薬剤である:
- 原発腫瘍の完全切除を受けたことがある患者における病期III結腸癌の補助的処置、及び
- 進行結腸直腸癌の処置。
【0014】
したがって、一態様において、本発明は、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させる薬剤又は処置(例えば、化学療法剤)と組み合わせた、KIR3DL2に結合する抗体の使用を介して、KIR3DL2発現悪性T細胞に対する抗腫瘍免疫応答を媒介するための改善された方法を提供する。
【0015】
一態様において、本開示は、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させるための手段と組み合わせた、KIR3DL2に結合することができる抗体の使用を介して、抗腫瘍免疫応答を増強するための改善された方法を提供する。一実施形態において、KIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させるための手段は、化学療法剤(例えば、ヌクレオシドアナログ及び/又は白金製剤)並びに薬学的に許容され得るキャリヤを含む医薬組成物である。
【0016】
一態様において、TCLの処置において使用するための、KIR3DL2に結合する抗体が本明細書において提供され、KIR3DL2に結合する抗体は、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させる薬剤と組み合わせて投与される。
【0017】
一態様において、TCLの処置において使用するための、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させる薬剤が本明細書において提供され、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させる薬剤は、KIR3DL2に結合する抗体と組み合わせて投与される。
【0018】
一実施形態において、個人におけるTCL細胞を処置又は予防する方法であって、(a)悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させる薬剤、及び(b)KIR3DL2に結合する抗体を個人に投与することを含む方法が提供される。
【0019】
一実施形態において、KIR3DL2に結合する抗体の抗腫瘍効果を強化する方法であって、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させる薬剤を個人に投与することを含む方法が提供される。
【0020】
一実施形態において、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させるための薬剤又は手段は、白金ベースの薬剤である。一実施形態において、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させるための薬剤又は手段は、ヌクレオシド代謝阻害剤、任意選択でゲムシタビン又はそのアナログ若しくは誘導体である。一実施形態において、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させるための薬剤又は手段は、配合剤又は白金ベースの薬剤及びヌクレオシド代謝阻害剤(例えば、ゲムシタビン又はそのアナログ若しくは誘導体)である。
【0021】
一実施形態において、KIR3DL2に結合する抗体は、KIR3DL2発現細胞(例えば、悪性T細胞)のエフェクター細胞媒介性溶解を媒介又は誘導する抗体である。一実施形態において、抗体は、ADCC及び/又はADCPを媒介することができるFcドメインを含む。一実施形態において、抗体は、免疫エフェクター細胞の表面に発現される(例えば、免疫エフェクター細胞上のキメラ抗原受容体の一部として)。任意選択で、抗体は、KIR3DL2発現細胞に向けてADCC及び/又はADCPを誘導する単一特異性又は多重特異性(例えば、二重特異性)抗体である。任意の態様において、KIR3DL2ポリペプチドに結合し、KIR3DL2発現細胞を除去することができる抗体は、KIR3DL2発現細胞を除去することができる組成物として特徴付けることができ、組成物は、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体を含む。一実施形態において、KIR3DL2に結合する抗体は、ラクタマブ(lacutamab)である。
【0022】
本明細書における任意の実施形態の一態様において、個人は、ヒトであると指定することができる。
【0023】
一実施形態において、抗KIR3DL2抗体及び悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させるための薬剤又は手段は、それぞれ治療有効量で投与される。
【0024】
一実施形態において、抗KIR3DL2抗体は、KIR3DL2発現腫瘍細胞に向けてのADCCを媒介するのに十分な量及び頻度において、癌を有する個人に投与される。
【0025】
一実施形態において、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させるための薬剤又は手段は、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現の増加を引き起こすのに十分な量及び頻度において、癌を有する個人に投与される。
【0026】
本明細書における任意の態様において、本開示に従って処置される個人は、ノンレスポンダーであるか、又はTCLのための先に行われた処置時に部分奏効若しくは不完全奏効を経験した個人であり得る。
【0027】
他の実施形態において、抗癌剤が悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させることができるかどうかを決定又は評価する(例えば、インビトロにおいて)ことを含む、TCLの処置のための、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体と組み合わせた使用のための抗癌剤の効能又は適合性を予測又は評価する方法であって、抗癌剤が悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させることができるという決定は、薬剤が抗KIR3DL2抗体と組み合わせて癌の処置に使用され得ることを示す、方法が提供される。抗癌剤が悪性T細胞の表面でのKIR3DL2の発現を誘発するか又は増加させることができるかどうかを決定又は評価することは、例えば、悪性KIR3DL2発現T細胞(例えば、腫瘍細胞)をインビトロにおいて薬剤と接触させることと、KIR3DL2の発現を評価することとを含み得る。一実施形態において、抗癌剤は、化学療法剤、任意選択でヌクレオシドアナログ又は白金製剤である。
【0028】
これらの態様は、本明細書において提供される本発明の説明においてより詳細に記載され、他の態様、特徴及び利点は、本明細書において提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】HUT78 TCL細胞系(セザリー症候群)に対する抗KIR3DL2抗体の細胞毒性を示し、抗KIR3DL2の抗腫瘍活性は、ゲムシタビン及びオキサリプラチンのそれぞれによって増強され、ゲムシタビン及びオキサリプラチンの組み合わせによってさらにより増強された。
図2】ゲムシタビン及びオキサリプラチンが腫瘍細胞における細胞表面KIR3DL2発現を増加させることを示す。RAJI-KIR3DL2(48時間のインキュベーション)(図2、左側のパネル)又はHut78(トランスフェクトB-NHL細胞系;24時間のインキュベーション(図2、右側のパネル)を、ゲムシタビン及びオキサリプラチンの用量を上昇させながらインキュベートした。腫瘍細胞系表面上のKIR3DL2の蛍光強度の中央値をフローサイトメトリーによって分析した。
図3】Raji-KIR3DL2をIV移植し、1週間に2回、以下により処置したマウス(1グループ当たりn=9)の生存期間を示す:アイソタイプコントロールmAb、IPH4102(1回の注射当たり0.3μg)、ゲムシタビン(50mg/kg)若しくはオキサリプラチン(5mg/kg)、IPH4102+ゲムシタビンの両方又はIPH4102+オキサリプラチンの両方。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において使用されるように、「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味し得る。請求項において使用される場合、語「含む」と共に使用される場合、語「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ又は2つ以上を意味し得る。本明細書において使用されるように、「他の」は、少なくとも第2の又はそれを超えるものを意味し得る。
【0031】
「含む」が使用される場合、これは、任意選択で、「~から本質的になる」又は「~からなる」と交換することができる。
【0032】
本明細書全体内で、いつでも、「TCLの処置」又は同種のものは、抗KIR3DL2結合剤(例えば、抗体)に関して言及され、(a)TCLの処置を可能にする用量(治療有効量)で、例えば上記に及び下記に指定される用量(量)で、そのような処置を必要とする温血動物、とりわけヒトに、抗KIR3DL2結合剤(例えば、薬学的に許容され得るキャリヤ材料中の)を投与するステップを含む(少なくとも1つの処置のための)、TCLの処置の方法;(b)TCLの処置のための抗KIR3DL2結合剤若しくは前記処置における(とりわけヒトにおける)使用のための抗KIR3DL2結合剤の使用;(c)TCLの処置のための医薬調製物の製造のための抗KIR3DL2結合剤の使用、TCLの処置のための医薬調製物の製造に抗KIR3DL2結合剤を使用する方法であって、薬学的に許容され得るキャリヤと抗KIR3DL2結合剤を混合することを含む方法若しくはTCLの処置に適切な、有効用量の抗KIR3DL2結合剤を含む医薬調製物;又は(d)本出願が提出される国において特許を受けるのに許容される主題に従うa)、b)及びc)の任意の組み合わせを意味する。
【0033】
本明細書において使用される用語「抗体」は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を指す。重鎖中の定常ドメインのタイプに依存して、抗体は、5つの主なクラスのうちの1つに割り当てられる:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM。これらのいくつかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及び同種のものなどのサブクラス又はアイソタイプにさらに分けられる。例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。それぞれの四量体は、同一の2対のポリペプチド鎖から構成され、それぞれの対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。それぞれの鎖のN-末端は、抗原認識を主として担う約100~110又はそれを超えるアミノ酸の可変領域を定める。可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。異なるクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖定常ドメインは、「アルファ」、「デルタ」、「イプシロン」、「ガンマ」及び「ミュー」とそれぞれ称される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元立体配置は、よく知られている。IgGは、それらが生理学的状況において最も一般的な抗体であるため、また、それらが研究所の環境において最も容易に作製されるため、本明細書において用いられる例示的なクラスの抗体となる。一実施形態では、抗体が、モノクローナル抗体である。ヒト化、キメラ、ヒト又はそうでなければヒトに適した抗体が提供される。「抗体」は、完全長抗体及び本明細書に記載される抗体の任意の断片又は誘導体を含む。
【0034】
「超可変領域」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」若しくは「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおける残基24~34(L1)、50~56(L2)及び89~97(L3)並びに重鎖可変ドメインにおける31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3);Kabat et al.1991)並びに/若しくは「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおける残基26~32(L1)、50~52(L2)及び91~96(L3)並びに重鎖可変ドメインにおける26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol 1987;196:901-917)又は抗原結合を担う必須アミノ酸を決定する類似の系を含む。典型的には、この領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.、前掲において記載される方法によって実行される。本明細書における「Kabat位置」、「Kabatの可変ドメイン残基ナンバリング」及び「Kabatに従う」などのような句は、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについてのこのナンバリング方式を指す。Kabatナンバリング方式を使用すると、ペプチドの実際の直線状のアミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮形又は挿入に対応するより少ない又は追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、CDR H2の残基52の後に単一のアミノ酸の挿入(Kabatに従う残基52a)並びに重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b及び82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、「標準」Kabatナンバリング配列を有する抗体の配列の相同領域でのアライメントによって所定の抗体について決定され得る。
【0035】
本明細書において使用される「フレームワーク」又は「FR」残基は、CDRとして定義される領域を除く抗体可変ドメインの領域を意味する。それぞれの抗体可変ドメインフレームワークは、CDRによって分離される連続した領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)にさらに細分することができる。用語「Fcドメイン」、「Fc部分」及び「Fc領域」は、例えば、ヒトγ(ガンマ)重鎖の約アミノ酸(aa)230~約aa450の、抗体重鎖のC-末端断片又は他のタイプの抗体重鎖(例えば、ヒト抗体についてα、δ、ε及びμ)若しくはその天然に存在するアロタイプにおけるその対応する配列を指す。他に指定のない限り、免疫グロブリンについて一般的に受け入れられているKabatアミノ酸ナンバリングは、本開示の全体にわたって使用される(Kabat et al.(1991)Sequences of Protein of Immunological Interest,5th ed.,United States Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MDを参照されたい)。
【0036】
用語「~に特異的に結合する」は、抗体が、タンパク質の組換え形態、その中のエピトープ又は単離標的細胞の表面に存在する天然のタンパク質を使用して評価されるように、競合結合アッセイにおいて、結合パートナー、例えばKIR3DL2に結合することができることを意味する。競合結合アッセイ及び特異的な結合を決定するための他の方法は、下記にさらに記載され、当技術分野においてよく知られている。
【0037】
抗体が、特定のモノクローナル抗体「と競合する」と言われる場合、抗体が、組換えKIR3DL2分子又は表面に発現されるKIR3DL2分子を使用する結合アッセイにおいてモノクローナル抗体と競合することを意味する。例えば、試験抗体が、結合アッセイにおいてKIR3DL2ポリペプチド又はKIR3DL2発現細胞へのAZ158、19H12、2B12又は12B11の結合を低下させる場合、抗体は、AZ158、19H12、2B12又は12B11とそれぞれ「競合する」と言われる。
【0038】
本明細書において使用される用語「親和性」は、エピトープへの抗体の結合の強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数Kdによって与えられ、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和性定数Kは、1/Kdによって定義される。mAbの親和性を決定する方法は、Harlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)において見ることができ、これらの参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。mAbの親和性を決定するための当技術分野においてよく知られている1つの標準的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングの使用である(BIAcore(商標)SPR分析デバイスによる分析によってなど)。
【0039】
「決定基」は、ポリペプチド上の相互作用又は結合の部位を示す。
【0040】
用語「エピトープ」は抗原決定基を指し、抗体が結合する抗原上のエリア又は領域である。タンパク質エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基及び特異的な抗原結合抗体又はペプチドによって有効に遮断されるアミノ酸残基、すなわち抗体の「フットプリント」内のアミノ酸残基を含み得る。それは、例えば、抗体又は受容体と連結することができる複雑な抗原分子上の最も単純な形態又は最も小さい構造エリアである。エピトープは、線状又は立体構造/構造的なものであり得る。用語「線状エピトープ」は、アミノ酸の線状配列(一次構造)上で連続しているアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。用語「立体構造又は構造的エピトープ」は、すべてが連続しているわけではなく、したがって、分子のフォールディング(二次、三次及び/又は四次構造)によって互いに接近するようになる、アミノ酸の線状配列の隔てられた部分に相当するアミノ酸残基から構成されるエピトープとして定義される。立体構造エピトープは、3次元構造に依存する。用語「立体構造」は、そのため、多くの場合、「構造的」と区別なく使用される。
【0041】
KIR3DL2発現細胞に関する用語「除去すること」、「除去する」又は「除去」は、サンプル又は対象において存在するKIR3DL2発現細胞の数にマイナスの影響を与えるように、(例えば、ADCC又はADCPの誘発を通して)死滅させるか、除くか、溶解するか又はそのような死滅、除去若しくは溶解を誘発することができるプロセス、方法又は化合物を意味する。
【0042】
用語「免疫複合体」、「抗体コンジュゲート」、「抗体医薬コンジュゲート」及び「ADC」は、区別なく使用され、他の成分(例えば、任意の非抗体成分、治療剤、細胞傷害性部分又は標識)にコンジュゲートされる抗体を指す。
【0043】
用語「作用物質」は、化学化合物、化学化合物の混合物、生体高分子又は生体物質から作製された抽出物を表すために本明細書において使用される。用語「治療剤」は、生物学的活性を有する作用物質を指す。
【0044】
用語「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」又は「ADCC」は、当技術分野においてよく理解される用語であり、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介する非特異的細胞傷害性細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好中球及び好酸球を含む。
【0045】
用語「単離された」、「精製された」又は「生物学的に純粋な」は、その天然の状態で見られるように通常それに付随する構成成分が実質的に又は本質的にない材料を指す。純度及び均一性は、ポリアクリルアミドゲル等電点電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を使用して典型的に決定される。調製物中に存在する主な種であるタンパク質は、実質的に精製される。
【0046】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において区別なく使用される。用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的ミメティックであるアミノ酸ポリマー並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。
【0047】
用語「組換え」は、例えば、細胞又は核酸、タンパク質若しくはベクターに関して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質若しくはベクターが異種核酸若しくはタンパク質の導入又は天然の核酸若しくはタンパク質の改変によって修飾されたこと又は細胞がそのように修飾された細胞に由来することを示す。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然の(非組換え)形態内で見られない遺伝子を発現するか又はそうでなければ異常に発現されるか、不十分に発現されるか若しくは全く発現されない天然の遺伝子を発現する。
【0048】
本明細書における文脈の範囲内において、ポリペプチド又はエピトープ「に結合する」抗体という用語は、特異性及び/又は親和性により前記決定基に結合する抗体を示す。
【0049】
用語「同一性」又は「同一な」は、2つ以上のポリペプチドの配列間の関係において使用される場合、一連の2つ以上のアミノ酸残基間のマッチの数によって決定されるように、ポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」は、特定の数学モデル又はコンピュータープログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって処理される、ギャップアライメント(存在する場合)を有する2つ以上の配列のより小さい配列間の同一マッチのパーセントを測定する。関連するポリペプチドの同一性は、知られている方法によって容易に計算することができる。そのような方法は、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M.Stockton Press,New York,1991;及びCarillo et al.,SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)において記載されるものを含むが、これらに限定されない。
【0050】
同一性を決定する方法は、試験された配列間の最大のマッチをもたらすように設計される。同一性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムにおいて記載される。2つの配列間の同一性を決定するためのコンピュータープログラム方法は、GAP(Devereux et al.,Nucl.Acid.Res.12,387(1984);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)を含むGCGプログラムパッケージ、BLASTP、BLASTN及びFASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215,403-410(1990))を含む。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)及び他の供給源から公的に入手可能である(BLAST Manual,Altschul et al.NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschul et al.、前掲)。よく知られているSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用され得る。
【0051】
T細胞悪性腫瘍の処置
KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体の活性を強化するために、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2発現を誘発するか又は増加させる薬剤の投与を通した個人におけるTCLの処置及び予防において有用な方法が本明細書に記載される。本明細書に記載される治療レジメン及び治療法は、種々のT細胞リンパ腫、特にCD4+T細胞リンパ腫に使用することができる。任意の態様において、TCLは、表面にKIR3DL2を発現する悪性細胞によって特徴付けられるTCLであると指定することができる。
【0052】
本明細書において示されるように、ゲムシタビン(Gemzar(登録商標)、Eli Lilly and Company)は、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2発現を誘発するか又は増加させることができる。ゲムシタビンは、固形腫瘍の処置における化学療法として承認されているヌクレオシド類似体である。フルオロウラシル及びピリミジンの他のアナログと同様に、この薬品は、DNA複製中に核酸の構成単位の1つ、この場合にはシチジンと置き換わる。したがって、ゲムシタビン並びにそのアナログ及び誘導体は、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体の活性を強化するために使用することができる。
【0053】
本明細書において示されるように、オキサリプラチンは、悪性T細胞の表面でのKIR3DL2発現を誘発するか又は増加させることができる。オキサリプラチン及び他の白金製剤は、当技術分野においてよく知られており、例えばシスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、フェナントリプラチン(phenanthriplatin)、ピコプラチン、サトラプラチンを含む。したがって、白金製剤は、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体の活性を強化するために使用することができる。
【0054】
白金製剤及び/又はゲムシタビン製剤は、例えば、遊離化合物として又は複合体の一部、ナノ粒子剤形、カプセル化されたもの(例えば、リポソーム中に)としてのものを含め、任意の適した形状又は剤形であり得、それぞれの場合に任意選択で追加の薬学的に活性な薬剤とさらに組み合わせることができる。
【0055】
したがって、一態様において、以下のそれぞれの有効量を個人に投与することを含む、TCLを有する個人を処置する方法が提供される:(a)KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体、並びに(b)白金製剤及び/又はゲムシタビン。一実施形態において、方法は、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体、白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及びゲムシタビンを個人に投与することを含む。別の実施形態において、方法は、ゲムシタビンの投与又は使用と組み合わせることなく、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体及び白金製剤(例えば、オキサリプラチン)を個人に投与することを含む。別の実施形態において、方法は、オキサリプラチンの投与又は使用と組み合わせることなく、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体及びゲムシタビンを個人に投与することを含む。別の実施形態において、方法は、白金製剤の投与又は使用と組み合わせることなく、KIR3DL2ポリペプチドに結合する抗体及びゲムシタビンを個人に投与することを含む。
【0056】
一実施形態において、白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及び/又はゲムシタビンは、悪性細胞の表面上のKIR3DL2ポリペプチドの発現の増加を引き起こすのに有効な量で投与される。
【0057】
一態様において、悪性細胞を有効量の白金製剤及び/又はゲムシタビンと接触させることを含む、悪性細胞、任意選択でTCL細胞の表面上でのKIR3DL2ポリペプチドの発現を増加させる(例えば、インビトロにおいて又はTCLを有する個人においてインビボにおいて)方法が提供される。一実施形態において、方法は、KIR3DL2発現悪性細胞(例えば、KIR3DL2の発現が増加している)を除去するステップをさらに含み、このステップは、悪性細胞を、KIR3DL2ポリペプチドに結合する有効量の抗体と接触させることを含む。
【0058】
本明細書において提供される癌の処置のための組み合わせ療法は、T細胞悪性腫瘍、任意選択でCD4+T細胞悪性腫瘍を有する個人を処置するために、(a)抗KIR3DL2除去抗体(例えば、KIR3DL2結合抗体又は抗体断片、KIR3DL2結合抗体断片を含むキメラ活性化受容体(例えば、T細胞受容体)をその表面に発現するエフェクター細胞)、及び(b)白金製剤、任意選択でオキサリプラチンの投与を含むことができる。
【0059】
別の実施形態において、本明細書において提供される癌の処置のための組み合わせ療法は、T細胞悪性腫瘍、任意選択でCD4+T細胞悪性腫瘍を有する個人を処置するために、(a)抗KIR3DL2除去抗体(例えば、KIR3DL2結合抗体又は抗体断片、KIR3DL2結合抗体断片を含むキメラ活性化受容体(例えば、T細胞受容体)をその表面に発現するエフェクター細胞)、及び(b)ヌクレオシド類似体、任意選択でゲムシタビンの投与を含む。
【0060】
別の実施形態において、本明細書において提供される癌の処置のための組み合わせ療法は、T細胞悪性腫瘍、任意選択でCD4+T細胞悪性腫瘍を有する個人を処置するために、(a)抗KIR3DL2除去抗体(例えば、KIR3DL2結合抗体又は抗体断片、KIR3DL2結合抗体断片を含むキメラ活性化受容体(例えば、T細胞受容体)をその表面に発現するエフェクター細胞)、及び(b)白金製剤、任意選択でオキサリプラチン、及び(c)ヌクレオシド類似体、任意選択でゲムシタビンの投与を含む。
【0061】
TCLを有するか、TCLに罹患しやすいか又はTCLを経験したことがある個人を処置するための治療方法が提供される。一実施形態において、TCLは、高悪性度又は進行TCL(例えば、病期IV又はより一般には病期IIを超える)である。一実施形態において、患者は、再発性又は難治性疾患を有する。一実施形態において、患者は、疾患進行について予後不良を有する(例えば、生存期間についての予後不良)か、療法に対する応答について予後不良を有するか、又は先に行われた療法による先に行われた処置後に疾患の進行若しくは再発を有する。
【0062】
一実施形態において、TCLは、高悪性度T細胞腫瘍である。一実施形態において、TCLは、高悪性度非皮膚TCLである。別の実施形態において、TCLは、高悪性度皮膚TCL、任意選択で原発性皮膚CD4+小/中T細胞リンパ腫又は原発性CD8+小/中T細胞リンパ腫である。一実施形態において、TCLは、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)である。一実施形態において、TCLは、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、任意選択で非皮膚PTCLである。PTCL及びPTCL-NOSは、任意選択で皮膚T細胞リンパ腫以外の疾患であると指定され得る。
【0063】
皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(下記の画像を参照されたい)は、皮膚への腫瘍性Tリンパ球の局在によって特徴付けられるリンパ増殖性障害の1つのグループである。全体として、CTCLは、一種の非ホジキンリンパ腫(NHL)として分類される。CTCLについてのWorld Health Organization-European Organization for Research and Treatment of Cancer(WHO-EORTC)による分類は、Willemze et al.(2005)Blood 105:3768-3785において報告されている。WHO-EORTCは、CTCLを、不活性の臨床的挙動を有するもの及び高悪性度亜型を有するものに分けている。第3のカテゴリーは、T細胞リンパ腫ではない血液前駆細胞腫瘍のカテゴリーである(CD4+/CD56+血液皮膚腫瘍、芽球性ナチュラルキラー(NK)細胞リンパ腫又はB細胞由来原発性皮膚腫瘍)。不活性の臨床的挙動を有し得るCTCLは、菌状息肉腫(MF)及びそのバリアント、原発性皮膚CD30+リンパ増殖性障害(例えば、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症)、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(暫定的)並びに原発性皮膚CD4+小/中型多形性T細胞リンパ腫(暫定的)を含む。高悪性度臨床的挙動を有するCTCLは、セザリー症候群(SS)、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、原発性皮膚末梢T細胞リンパ腫、非特定、原発性皮膚高悪性度表皮向性CD8+T細胞リンパ腫(暫定的)及び皮膚ガンマ/デルタ陽性T細胞リンパ腫(暫定的)を含む。本明細書において開示される方法は、これらの状態のそれぞれを治療するために使用することができる。
【0064】
最も一般的なCTLCは、MF及びSSである。それらの特徴は、例えば、Willemze et al.(2005)Blood 105:3768-3785において概説されており、この開示は、参照によって本明細書に援用される。MFのほとんどの症例では、その臨床的特徴、病歴並びに組織形態学的及び細胞形態学的所見により診断に至る。炎症性皮膚疾患とCTCLとを区別するための追加の診断判定基準は、分子的アッセイ(例えば、サザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))による皮膚生検標本における優勢なT細胞クローンの実証である。遺伝子検査も検討され得る。古典的な菌状息肉腫は、3つの病期に分けられる:(1)紅斑(萎縮性又は非萎縮性):非特異的皮膚炎、体幹下部及び殿部の紅斑;わずかなそう痒/そう痒なし;(2)局面:かゆみの激しい局面、リンパ節腫脹、並びに(3)腫瘤:潰瘍形成の傾向がある。セザリー症候群は、紅皮症及び白血病によって特定される。徴候及び症状は、皮膚の浮腫、リンパ節腫脹、手掌及び/又は足底の過角化、脱毛症、爪ジストロフィー、外反並びに肝脾腫を含む。セザリー症候群の診断について、基準は、典型的には、セザリー細胞の絶対数計測、免疫表現性の異常、T細胞抗原の損失及び/又は分子的若しくは細胞遺伝学的方法によって示される末梢血中のT細胞クローンを含む。
【0065】
CTCLの病期は、TNM分類に従ってI、II、III及びIVを含み、適宜、末梢血病変を含む。菌状息肉腫又はセザリー症候群(MF/SS)の細胞を有する末梢血病変は、より進行した皮膚の病期、リンパ節及び内臓の病変並びに生存期間の短縮と相関する。MF及びSSは、International Society for Cutaneous Lymphomas(ISCL)及びEuropean Organization of Research and Treatment of Cancer(EORTC)によって提唱される正式な病期分類システムを有する。その開示が参照によって本明細書に援用されるOlsen et al.,(2007)Blood.110(6):1713-1722及びAgar et al.(2010)J.Clin.Oncol.28(31):4730-4739を参照されたい。
【0066】
一実施形態において、TCLは、末梢T細胞リンパ腫(PTCL)、任意選択で非皮膚PTCLである。PTCL及びPTCL-NOSは、任意選択で、別個の病状とみなされる皮膚T細胞リンパ腫、セザリー症候群及び菌状息肉腫以外の疾患であると指定され得る。一実施形態において、PTCLは、結節性の(例えば、主として又は優位に結節性の)PTCLである。優位に結節性のPTCLは、とりわけ、PTCL-NOS(末梢T細胞リンパ腫、非特定型)、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)及び血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)を含む。例えば、PTCLは、高悪性度で、非皮膚の、優位に結節性のPCTLであり得る(疾患は、そのうえ、節外性の症状を有し得る)。
【0067】
一実施形態において、PTCLは、節外性の(例えば、主として節外性の)PTCLである。例えば、PTCLは、高悪性度非皮膚節外性PCTLであり得る。
【0068】
一実施形態において、PTCLは、成人T細胞白血病又はリンパ腫(ATL)、例えばHTLV+ATLである。
【0069】
一実施形態において、PTCLは、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型である。一実施形態において、PTCLは、腸症関連T細胞リンパ腫である。
【0070】
一実施形態において、PTCLは、肝脾T細胞リンパ腫、任意選択で肝脾αβT細胞リンパ腫、任意選択で肝脾γδT細胞リンパ腫である。
【0071】
一実施形態において、PTCLは、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、任意選択でALK+ALCL、任意選択でALK-ALCLである。ALK+ALCLは、一般に、従来の療法を使用すれば良好な予後徴候を享受する(5年間生存率は93%)が、ALK-ALCLは、不良な予後徴候(37%)を有する。ALCLは、一般に、一様なCD30表面発現によって特徴付けられる。一実施形態において、PTCLは、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)、任意選択で皮膚AITL、任意選択で原発性皮膚CD4+小/中T細胞リンパ腫又は原発性CD8+小/中T細胞リンパ腫、任意選択で非皮膚AITLである。
【0072】
一実施形態において、PTCLは、腸管リンパ腫、例えば腸管ALCLである。
【0073】
一実施形態において、PTCLは、T細胞前リンパ球性白血病である。
【0074】
一実施形態において、PTCLは、PTCL-NOS(末梢T細胞リンパ腫、非特定型)である。PCTL-U又はPTCL-非特定とも呼ばれるPTCL-NOSは、主に結節型の高悪性度リンパ腫であるが、節外性病変が一般的である。大多数の結節性の症例は、CD4及びCD8であり、CD30は、大細胞バリアントにおいて発現され得る。PTCL-NOSを有するほとんどの患者は、結節性の病変の症状を示すが、多くの節外性の部位も含まれ得る(例えば、肝臓、骨髄、胃腸、皮膚。研究によれば、一般に、5年の全生存期間は、標準的な化学療法を使用すると、およそ30%~35%となることが報告されている。これまで、レンネルトリンパ腫、Tゾーンリンパ腫、多形性T細胞リンパ腫及びT免疫芽球性リンパ腫などのようなT細胞腫瘍の識別できる亜型に対応する多くの確かな実体について記載されたが、これらが特有の臨床病理学的実体に対応するという証拠は、依然として不足している。こういった理由のため、造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の最近のWorld Health Organization(WHO)による分類では、これらは、PTCL-NOS/Uといった単一の広範なカテゴリーの下にまとめられた。そのため、PTCL-NOSは、T細胞前リンパ球性白血病、ATL/成人T細胞白血病、節外性NK/T細胞白血病鼻型、EATL/腸症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、ALCL/未分化大細胞リンパ腫及び/又はAITL/血管免疫芽球性T細胞リンパ腫などのようなある特有の臨床病理学的実体を除外するように指定され得る。
【0075】
PTCL診断基準は、例えば、World Health Organization(WHO)の分類体系に従う標準的な治療指針のものであり得る(例えば、World Health Organization.WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues,4th ed.Lyon,France:IARC Press,2008を参照されたい)。例えば、その開示が参照によって本明細書に援用されるFoss et al.(2011)Blood 117:6756-6767も参照されたい。
【0076】
一実施形態において、TCLは、それらの表面に有意な及び/又は検出可能なCD30ポリペプチドを発現しない腫瘍又は腫瘍細胞によって特徴付けられる(CD30陰性)。他の実施形態において、TCLは、それらの表面にCD30を発現する腫瘍又は腫瘍細胞によって特徴付けられ(CD30陽性);一実施形態において、腫瘍又は腫瘍細胞は、それらの表面に低レベルのCD30を発現し;別の実施形態において、腫瘍又は腫瘍細胞は、それらの表面に高レベルのCD30を発現する。任意選択で、CD30発現は、免疫組織化学的検査によって決定される。
【0077】
例示的な一態様において、検出可能なレベルの癌細胞を有する哺乳動物宿主(例えば、ヒト患者)におけるTCLの進行を低下させる方法であって、抗KIR3DL2抗体、抗KIR3DL2抗体組成物又は関連する組成物(例えば、抗KIR3DL2抗体をコードする核酸、抗KIR3DL2抗体断片を発現する細胞組成物)を、宿主における血液悪性腫瘍の進行を検出可能に低下させるのに十分な量で投与することを含む方法が提供される。
【0078】
例示的な一態様において、不良な疾患予後を有し、且つ/又は再発したか、又は第1の治療剤による療法に抵抗性であるか若しくは応答性ではない個人におけるTCLを処置する方法が提供される。
【0079】
PTCL(例えば、PTCL-NOS)は、典型的には、詳細な免疫組織化学的検査、フローサイトメトリー、細胞遺伝学的検査及び分子遺伝学的検査が補足された、末梢血の検査又は組織学的な特徴についての組織生検に基づく。検査は、例えば、全血球数及び分類、腎機能及び肝機能の試験、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、ベータ2ミクログロブリン、アルブミン、血清カルシウム、尿酸、骨髄生検、胸部X線並びに胸部、腹部及び骨盤のコンピューター断層撮影(CT)スキャンを含み得る。進行は、任意選択で、潜在性細胞の選択的なクローン増殖を評価することによって決定される。癌及び癌進行を検出する方法は、いくつかの例が当技術分野において知られている、任意の適した技術によって実現することができる。適した技術の例は、PCR及びRT-PCR(例えば、癌細胞に関連する遺伝子又は「マーカー」の)、生検、画像処理技術、核型分析及び他の染色体分析、イムノアッセイ/免疫細胞化学的検出技術、組織学的及び/又は組織病理学アッセイ、細胞動態研究及び細胞周期分析、フローサイトメトリー並びに身体検査技術(例えば、身体的症状についての)を含む。
【0080】
対象に抗KIR3DL2抗体を送達すること(単離若しくは精製された抗体(例えば、溶液中の抗体)として、CAR細胞によって発現される抗体断片として直接的な投与によって又は抗KIR3DL2抗体をコードする核酸配列を含むポックスウイルス遺伝子導入ベクターからなどのような、対象における核酸からの発現によって)及び本明細書における他の方法を実施することは、癌進行(特にTCL進行)の任意の適した側面を低下させるか、処置するか、予防するか又はそうでなければ回復させるために使用することができる。本明細書における方法は、腫瘍成長(例えば、循環中の腫瘍細胞のパーセンテージ(健康なT細胞と比較した腫瘍細胞)、数)及び腫瘍成長と関連する任意のパラメーター又は症状(例えば、バイオマーカー)の低下及び/又は回復において特に有用になり得る。癌進行のそのような側面を個別に及びまとめて低下させるか、予防するか又はそうでなければ回復させる方法は、有利な特徴である。
【0081】
さらなる態様において、ヒト患者などのような哺乳動物宿主におけるTCLの寛解を促進する方法であって、宿主におけるTCL寛解を促進するために、抗KIR3DL2抗体を含む組成物を宿主に投与することを含む方法が提供される。
【0082】
さらなる態様において、TCLを発症する危険性を低下させ、癌性の状態を発病する機会を低下させ、且つ/又は早期段階で診断されるTCLの重症度を低下させる方法であって、所望の生理学的効果を実現するために予防有効量の抗KIR3DL2抗体又は関連する組成物を宿主に投与することを含む方法が提供される。
【0083】
さらなる態様において、TCLと診断されたヒト患者において、適切な期間にわたる生存の見込みを増加させる方法が提供される。別の態様において、TCL患者の生活の質を改善する方法であって、その生活の質を改善するために、有効量の組成物を患者に投与することを含む方法が提供される。さらなる態様において、本明細書に記載される方法は、例えば、TCL細胞の総数が低下するように、脊椎動物宿主におけるTCL細胞の数を有意に低下させるために適用することができる。関連する意味において、ヒト癌患者などのような脊椎動物におけるTCL細胞を死滅させる(例えば、その死を直接又は間接的に引き起こす)方法が提供される。
【0084】
本明細書において使用されるように、補助的な又は組み合わせの投与は、同じ若しくは異なる投薬形態をした化合物の同時投与又は化合物の別々の投与(例えば、順次投与)を含む。したがって、KIR3DL2結合抗体は、白金製剤及び/又はゲムシタビンと組み合わせて使用することができる。例えば、抗KIR3DL2抗体並びに白金製剤及び/又はゲムシタビンは、単一の剤形で同時に投与することができる。代わりに、抗KIR3DL2抗体並びに白金製剤及び/又はゲムシタビンは、別々に投与するために製剤することができ、並行して又は順次投与される。
【0085】
ゲムシタビンの投与に適した用量は、800~1200mg/mの用量であり、静脈内に投与される。ゲムシタビンの投与は、2週間毎に1回繰り返すことができる。代わりに、ゲムシタビンは、3週間サイクル(繰り返すことができる)の1日目及び8日目に投与することができる。
【0086】
オキサリプラチンの投与に適した用量は、75~150mg/m(例えば、75mg/m、100mg/m,130mg/m、75~130mg/m)の用量であり、静脈内に投与される。オキサリプラチンの投与は、例えば、75~100mg/m(例えば、75mg/m、100mg/m)の用量で2週間毎に繰り返すことができる。代わりに、オキサリプラチンは、3週間ごとに1回投与することができる(例えば、サイクルを繰り返すことができる場合、3週間サイクルの1日目及び8日目に)。オキサリプラチンを3週間ごとに1回投与する場合、用量範囲は、任意選択で、2週間ごとに投与する場合よりも高いことができ、例えば3週間ごとのレジメンで100~150mg/m(例えば、100mg/m、130mg/m)の用量である。
【0087】
一般に、処置は、少なくとも1回の投与サイクル(例えば、8週間以下の期間)を含み、少なくとも1回のサイクルのそれぞれについて、2、3又は4用量の抗KIR3DL2抗体が投与され、少なくとも2、3又は4用量の白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及び/又はゲムシタビンが投与される。
【0088】
ゲムシタビン及びオキサリプラチンは、同じ日(例えば、1日目)に投与することができるか、又はゲムシタビンを例えば第1の日(1日目)に、続いてオキサリプラチンを翌日(2日目)に投与することができる。
【0089】
CTL(例えば、PTCL、CTCL、MF又はSS)を有するヒトを処置するための適した処置プロトコールは、例えば、抗KIR3DL2抗体及びゲムシタビンのそれぞれの有効量を患者に投与することを含み、処置は、少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量の抗KIR3DL2抗体が投与され(例えば、毎週、2週間ごと、4週間ごと)且つ少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量のゲムシタビンが投与され、任意選択で、ゲムシタビンが約800~1200mg/m、任意選択で約800~1000mg/mの用量で投与される、少なくとも1回の投与サイクルを含む。任意選択で、ゲムシタビンは、2週間毎に1回又は繰り返される3週間サイクルの1日目及び8日目に投与される。任意選択で、処置プロトコールは、白金製剤又はオキサリプラチンとの組み合わせの処置を伴わないものとして特徴付けられる。
【0090】
MF又はSSを有するヒトを処置するための例示的な処置プロトコールは、例えば、抗KIR3DL2抗体及びゲムシタビンのそれぞれの有効量を患者に投与することを含み得、処置は、少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量の抗KIR3DL2抗体が投与され(例えば、毎週、2週間ごと、4週間ごと)且つ少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量のゲムシタビンが投与され、ゲムシタビンが、繰り返される4週間サイクルの1週目、2週目及び3週目に(例えば、1、8及び15日目あたりに)約800~1200mg/mの用量で投与される、少なくとも1回の投与サイクルを含む。4週間サイクルは、例えば、3、4、5、6ヵ月又はそれを超える期間にわたって繰り返すことができる。プロトコールは、白金製剤又はオキサリプラチンとの組み合わせの処置を伴わないものとして特徴付けられ得る。
【0091】
CTL(例えば、PTCL)を有するヒトを処置するためのさらに適した処置プロトコールは、例えば、抗KIR3DL2抗体及びオキサリプラチンのそれぞれの有効量を患者に投与することを含み、処置は、少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量の抗KIR3DL2抗体が投与され(例えば、毎週、2週間ごと、4週間ごと)且つ少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量のオキサリプラチンが投与され、任意選択で、オキサリプラチンが約75~130mg/mの用量で投与される、少なくとも1回の投与サイクルを含む。任意選択で、オキサリプラチンは、2週間毎に1回又は3週間毎に1回投与される。
【0092】
PCTLを有するヒトを処置するための別の適した処置プロトコールは、例えば、抗KIR3DL2抗体、ゲムシタビン及びオキサリプラチンのそれぞれの有効量を患者に投与することを含み、処置は、以下の投与を含む、少なくとも1回の投与サイクルを含む:
- 抗KIR3DL2抗体の少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量(例えば、毎週、2週間ごと、4週間ごと)、
- ゲムシタビンの少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量、任意選択で、ゲムシタビンは、約800~1000mg/mの用量で投与され、任意選択で、ゲムシタビンは、2週間毎に1回又は繰り返される3週間サイクルの1日目及び8日目に投与される、及び
- オキサリプラチンの少なくとも1用量、任意選択で少なくとも2用量、任意選択で、オキサリプラチンは、約75~130mg/mの用量で投与され、任意選択で、オキサリプラチンは、2週間毎に1回又は3週間毎に1回(例えば、すなわち繰り返される3週間サイクルの1日目に)投与される。
一実施形態において、オキサリプラチン及びゲムシタビンは、それぞれ2週間ごとに1回、任意選択でさらに同じ日に投与される。別の実施形態において、オキサリプラチン及びゲムシタビンは、それぞれ3週間毎に投与され、オキサリプラチンは、3週間の期間の1日目に投与され、ゲムシタビンは、3週間の期間の1日目及び8日目に投与される。
【0093】
投与サイクルは、本明細書に記載される投与頻度に相応する適した期間であり得ることが理解されるであろう。例えば、投与サイクルは、4週間、8週間、8週間超、8週間未満等の期間であり得る。
【0094】
一実施形態において、抗KIR3DL2抗体は、ゲムシタビン及び/又はオキサリプラチンと同じ日に投与される。一実施形態において、抗KIR3DL2抗体は、ゲムシタビンの投与の少なくとも1日(例えば、1、2、3日)後に投与される。一実施形態において、抗KIR3DL2抗体は、オキサリプラチンの投与の少なくとも1日(例えば、1、2、3日)後に投与される。一実施形態において、抗KIR3DL2抗体は、ゲムシタビン及びオキサリプラチンの両方の投与の少なくとも1日(例えば、1、2、3、4、5、6又は7日)後に投与される(例えば、投与される化合物となる後者の少なくとも1日後)。
【0095】
抗KIR3DL2抗体(例えば、IPH4102又はラクタマブとして知られているヒト化2B12抗体)は、点滴静注により、1~20mg/kg体重、任意選択で1~10mg/kg体重の用量又は750mgの均一の用量で有利に投与することができる。抗KIR3DL2抗体は、1ヵ月当たり1~4回、例えば1週間当たり1回、2週間ごとに1回又は4週間ごとに1回、有利に投与することができる。一実施形態において、抗KIR3DL2抗体は、抗KIRDL2抗体が週単位で投与される(例えば、4週間ごとの投与)第1相、続いて抗KIRDL2抗体が1週間当たり1回未満、例えば1ヵ月当たり1~2回、2週間ごとに1回、1ヵ月当たり1回投与される第2相を含むレジメンに従って投与される。一実施形態において、抗KIR3DL2抗体は、抗KIRDL2抗体が週単位で投与される(例えば、4週間ごとの投与)第1相、続いて抗KIRDL2抗体が2週間ごとに1回投与される第2相(例えば、2週間ごとに投与される少なくとも2回の逐次投与、例えば2週間ごとに1回投与される2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10回又はそれを超える投与)、続いて抗KIRDL2抗体が1ヵ月当たり1回投与される第3相(例えば、1ヵ月当たり1回投与される少なくとも2回の逐次投与、例えば1ヵ月当たり1回投与される2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10回又はそれを超える投与を含むレジメンに従って投与される。
【0096】
ゲムシタビン及びオキサリプラチンと組み合わされる場合、処置方法は、例えば、少なくとも1回の投与サイクル(例えば、8週間以下、任意選択で8週間、任意選択で4週間の期間)を含むものとして指定することができ、少なくとも1回のサイクルのそれぞれについて、2、3又は4用量の抗KIR3DL2抗体が投与され(例えば、1~20又は1~10mg/kg体重の用量の、750mgの均一の用量のヒト化2B12抗体)、少なくとも2、3又は4用量のゲムシタビン及びオキサリプラチンが投与される。ゲムシタビン及びオキサリプラチンは、同じ日に又は連日で投与するものとして指定することができる(例えば、75~130mg/mのオキサリプラチンは、800~1000mg/mのゲムシタビンの投与の次の日に投与される)。KIR3DL2結合抗体は、ゲムシタビン及び/若しくはオキサリプラチンと同じ日に、ゲムシタビン及び/若しくはオキサリプラチンの前若しくは後に連日で、又はゲムシタビン及び/若しくはオキサリプラチンの数日前若しくは数日後に投与するものとして指定することができる。
【0097】
処置方法において、KIR3DL2結合抗体並びに白金製剤及び/又はゲムシタビン製剤は、別々に、一緒に若しくは順次又はカクテルで投与することができる。いくつかの実施形態において、KIR3DL2結合抗体は、白金製剤及び/又はゲムシタビン製剤の投与前に投与される。例えば、KIR3DL2結合抗体は、ゲムシタビンの投与のおよそ0~30日、任意選択で1~7日前又は白金製剤の投与の0~30日、任意選択で1~7日前に投与することができる。いくつかの実施形態において、KIR3DL2結合抗体は、ゲムシタビン(又は白金製剤)の投与の約30分~約2週間、約30分~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~1日又は約1~5日前に投与される。いくつかの実施形態において、KIR3DL2結合抗体は、白金製剤及び/又はゲムシタビンの投与と並行して投与される。いくつかの実施形態において、KIR3DL2結合抗体は、白金製剤及び/又はゲムシタビン製剤の投与後に投与される。例えば、KIR3DL2結合抗体は、白金製剤及び/又はゲムシタビン製剤の投与のおよそ0~30日、任意選択で1~7日後に投与することができる。いくつかの実施形態において、KIR3DL2結合抗体は、白金製剤及び/又はゲムシタビン製剤の投与の約30分~約2週間、約30分~約1週間、約1時間~約2時間、約2時間~約4時間、約4時間~約6時間、約6時間~約8時間、約8時間~1日又は約1~5日後に投与される。
【0098】
一実施形態において、抗KIR3DL2抗体並びに白金製剤及び/又はゲムシタビン製剤は、以下の用量で投与される:
(a)750mgの抗KIR3DL2抗体及び(i)75~130mg/mの白金製剤(例えば、オキサリプラチン)又は(ii)800~1200mg/mのゲムシタビン;
(b)1~10mg/kg又は750mgの抗KIR3DL2抗体及び75~130mg/mのオキサリプラチン;
(c)1~10mg/kg又は750mgの抗KIR3DL2抗体及び800~1200mg/mのゲムシタビン;
(d)1~10mg/kg又は750mgの抗KIR3DL2抗体、75~100mg/mのオキサリプラチン及び800~1000mg/mのゲムシタビン;
(e)1~10mg/kg又は750mgの抗KIR3DL2抗体、100~130mg/mのオキサリプラチン及び800~1000mg/mのゲムシタビン。
【0099】
キット、例えば以下を含むキットも提供される:
(i)抗KIR3DL2抗体を含有する医薬組成物及びゲムシタビンを含有する医薬組成物;
(ii)抗KIR3DL2抗体を含有する医薬組成物及び白金製剤(例えば、オキサリプラチン)を含有する医薬組成物;
(iii)抗KIR3DL2抗体を含有する医薬組成物、白金製剤(例えば、オキサリプラチン)を含有する医薬組成物及びゲムシタビンを含有する医薬組成物;
(iv)抗KIR3DL2抗体を含有する第1の医薬組成物並びに前記抗KIR3DL2抗体を、白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及び/又はゲムシタビンと一緒に投与するための指示書;
(v)白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及び/又はゲムシタビンを含有する医薬組成物並びに前記組成物を抗KIR3DL2抗体と一緒に投与するための指示書;
(vi)白金製剤(例えば、オキサリプラチン)を含有する医薬組成物並びに前記組成物を抗KIR3DL2抗体(及び任意選択でさらにゲムシタビン)と一緒に投与するための指示書;
(vii)ゲムシタビンを含有する医薬組成物並びに前記組成物を抗KIR3DL2抗体(及び任意選択でさらに白金製剤(例えば、オキサリプラチン))と一緒に投与するための指示書。
【0100】
医薬組成物は、任意選択で、薬学的に許容され得るキャリヤを含むものとして指定され得る。抗KIR3DL2抗体、白金製剤及び/又はゲムシタビンは、任意選択で、本明細書における任意の方法において使用するのに適した治療有効量、任意選択で悪性TCL細胞の表面のKIR3DL2レベルを増加させる量で存在するものとして指定され得る。キットは、任意選択で、例えば、開業医(例えば、医師、看護師又は患者)が、その中に含有される組成物を癌(例えば、特に本明細書において開示されるCTLC又はPTCL)を有する患者に投与するのを可能にするための投与スケジュールを含む指示書を含むこともできる。任意の実施形態において、キットは、注射器を含むこともできる。
【0101】
任意選択で、キットは、単一用量の医薬組成物の複数のパッケージを含み、それぞれ上記に提供される方法に従う単回投与のための有効量の抗KIR3DL2抗体及び/又は白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及び/又はゲムシタビンを含有する。医薬組成物を投与するのに必要な機器又はデバイスもキットに含まれ得る。例えば、キットは、ある量の抗KIR3DL2抗体、白金製剤又はゲムシタビンを含有する1つ以上の充填済みの注射器又はバイアルを提供し得る。
【0102】
一実施形態において、本発明は、ヒト患者におけるTCLを処置するためのキットを提供し、キットは、以下のものを含む:
(a)配列番号32若しくは48~51のいずれかにおいて示される配列を有する重鎖可変領域のH-CDR1、H-CDR2及びH-CDR3ドメイン並びに配列番号33若しくは43~47において示される配列を有する軽鎖可変領域のL-CDR1、L-CDR2及びL-CDR3ドメインを含む、ある用量の抗KIR3DL2抗体;及び/又は
(b)ある用量の白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及び/若しくはある用量のゲムシタビン;並びに
(c)任意選択で、本明細書に記載される任意の方法において、前記抗KIR3DL2抗体及び/若しくは前記白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及び/若しくはゲムシタビンを使用するための指示書。
【0103】
一実施形態において、処置は、抗KIR3DL2抗体、白金製剤(例えば、オキサリプラチン)及びゲムシタビンの投与を含み、いかなるさらなる抗癌剤も投与されない。
【0104】
本開示の処置方法は、処置の前にKIR3DL2発現について腫瘍細胞を特徴付けるステップを伴っても又は伴わなくてもよいことが理解されるであろう。任意の実施形態において、KIR3DL2発現は、免疫組織化学的検査によって決定することができる。
【0105】
一実施形態において、方法は、(a)個人がTCL、任意選択でPTCLを有するかどうかを決定すること;及び(b)個人がTCL、任意選択でPTCLを有する場合、個人がKIR3DL2ポリペプチドを発現するTCL細胞を有するかどうかを決定することを含む。個人がKIR3DL2ポリペプチドを発現するTCL細胞を有するという決定は、個人が本開示の処置方法によって処置することができることを示す。任意選択で、方法は、本開示の処置を個人に施すステップを含む。
【0106】
一実施形態において、KIR3DL2ポリペプチドは、所定の患者から採取されたかなりの数の腫瘍細胞(例えば、TCL細胞)において発現される。例えば、KIR3DL2は、患者から採取されたTCL細胞の少なくとも30%、40%、50°%、60%、70%、80%又はそれを超えて存在し得る。
【0107】
方法は、任意選択で、患者のある身体コンパートメント内に存在する悪性TCL細胞の割合(例えば、パーセンテージ)の評価を可能にする、TCLの発症レベルの評価のステップをさらに含むことができる(疾患の病期分類)。この方法によれば、前記身体コンパートメントから収集された生物学的サンプル由来の細胞を抗KIR3DL2抗体と接触させ、それらの表面にKIR3DL2ポリペプチドを発現している腫瘍細胞(例えば、細胞の割合)が測定される。細胞は、例えば、CD4+細胞又はCD4-CD8+細胞であり得る。腫瘍細胞がKIR3DL2を発現するか又は優位に発現するという所見は、TCLが高悪性度又は進行TCL(例えば、病期IV又はより一般には病期IIを超える)であることを示す。このようなTCLは、本開示の処置方法を使用して有利に処置することができる。
【0108】
任意の実施形態において、方法は、個人からの生物学的サンプル由来の細胞を抗KIR3DL2抗体と接触させること、及びそれらの表面にKIR3DL2ポリペプチドを発現するT細胞の割合(例えば、パーセンテージ)を測定すること、及びそのような割合を、非TCLヒトにおいて(例えば、健康なヒトにおいて)観察される、表面にKIR3DL2ポリペプチドを発現するT細胞の平均的な割合(例えば、パーセンテージ)と比較することを含む、TCL診断のステップを含み得、前記測定された割合が前記平均的な割合よりも有意に高い場合、TCL陽性の診断がなされる。
【0109】
別の実施形態において、方法は、例えば、生物学的サンプルにおいて見出される腫瘍細胞について、白金製剤又はゲムシタビンの投与を受けていた個人からの生物学的サンプルにおけるKIR3DL2核酸又はポリペプチドの発現レベルを決定するステップを含む。
【0110】
別の実施形態において、方法は、例えば、生物学的サンプルにおいて見出される腫瘍細胞について、抗癌剤(例えば、白金製剤又はゲムシタビン)が個人からの生物学的サンプルにおけるKIR3DL2核酸又はポリペプチドの発現レベルを増加させるかどうかを決定するステップを含む。
【0111】
生物学的サンプルにおけるKIR3DL2核酸又はポリペプチドの発現レベルを決定することは、健康な個人又は抗癌剤(例えば、白金製剤若しくはゲムシタビン)による処置の前の個人に相当する参照レベル(例えば、値、弱い細胞表面染色等)とレベルを比較することを含み得る。生物学的サンプルが、参照レベルと比較して増加しているレベルでKIR3DL2核酸又はポリペプチドを発現するという決定は、個人が抗KIR3DL2抗体による処置から利益を得ることができるTCLを有すること、又は任意選択で、個人が、抗癌剤(例えば、それぞれ白金製剤及び/若しくはゲムシタビン)と組み合わせた抗KIR3DL2抗体による処置から利益を得ることができるTCLを有することを示す。任意選択で、生物学的サンプルにおけるKIR3DL2ポリペプチドの検出は、悪性リンパ球の表面上に発現されるKIR3DL2ポリペプチドを検出することを含む。
【0112】
抗体の産生
KIR3DL2(CD158k)は、開示が参照により本明細書に組み込まれるPende et al.(1996)J.Exp.Med.184:505-518において記載される約140kDの3つのIgドメイン分子のジスルフィド結合ホモ二量体である。いくつかの対立遺伝子変異体がKIR3DL2ポリペプチドについて報告されており、これらのそれぞれは、用語KIR3DL2によって包含される。成熟ヒトKIR3DL2(allele *002)のアミノ酸配列は、下記に配列番号1において示され、21アミノ酸残基リーダー配列が省かれたGenbank受入番号AAB52520に対応する。
【化1】
【0113】
KIR3DL2(allele *002)のcDNAは、Genbank受入番号U30272において示される。ヒトKIR3DL2 allele *003のアミノ酸配列は、下記に示され、Genbank受入番号AAB36593に対応する。
【化2】
【0114】
それぞれ野生型、完全長KIR3DL2と1つ以上の生物学的特性又は機能を共有する及び少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれを超えるヌクレオチド又はアミノ酸同一性を共有する任意の核酸又はタンパク質配列も包含される。
【0115】
密接に関連するKIR3DL1(CD158e1)は、Colonna and Samaridis(1995)Science 268(5209),405-408において記載される約70kDの単量体分子である。KIR3DL1(CD158e2)ポリペプチド(allele *00101)をコードするcDNAは、Genbank受入番号L41269において示され、コードされるアミノ酸配列は、Genbank受入番号AAA69870において示される。一実施形態では、本明細書において言及されるKIR3DL1ポリペプチドが、allele *00101である。
【0116】
ヒトKIR3DL2に結合する抗体の例は、19H12、12B11、10F6、2B12、9E10、10G5、13H1、5H1、1E2、1C3又は20E9を含む。これらの及びさらなる抗体は、PCT/欧州特許出願公開第2013/069302号明細書及びPCT/欧州特許出願公開第2013/069293号明細書において提供され、両方とも2013年9月17日に提出され、これらの抗体の開示は、参照によって本明細書に援用される。これらの抗体は、KIR3DL2に選択的に結合し、KIR3DL1(又はKIR3DS1)に結合しない。例えば、抗体10F6、2B12、9E10、10G5、13H1、5H1、1E2、1C3又は20E9は、例えば、病原性KIR3DL2発現細胞に対するADCCの誘発により、KIR3DL2発現標的を除去するために個人に投与される治療剤として使用することができるが、12B11及び19H12は、特に検出アッセイにおけるKIR3DL2陽性細胞の検出において効率的であり、12B11は、凍結組織切片を使用する免疫組織化学的検査アッセイに有利である一方、19H12は、フローサイトメトリー検出に有利であるため、抗体12B11及び19H12は、細胞の表面上のKIR3DL2発現の検出(例えば、インビトロアッセイ)に有利であろう。
【0117】
2B12、10G5、19H12及び12B11のそれぞれは、KIR3DL2発現標的細胞の排除のために個人に投与される治療剤として適している。19H12及び12B11並びにPCT/欧州特許出願公開第2013/069293号明細書において開示される他の抗体は、KIR3DL2を介して細胞内に内部移行することができ、例えば抗体が毒性成分にコンジュゲートされる場合、抗体-薬剤コンジュゲートとして構成される除去抗体として有利に使用することができる。2B12及びPCT/欧州特許出願公開第2013/069302号明細書において開示される他の抗体は、腫瘍細胞内へのいかなるKIR3DL2による内部移行も誘発せず、それにより、エフェクター細胞媒介性活性が例えばADCCを誘発する除去抗体に求められる場合に有利な使用を提供する。
【0118】
抗体10F6、9E10、10G5、13H1、1E2、1C3又は20E9の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を表Aに列挙する。
【0119】
【表1】
【0120】
特定の実施形態では、モノクローナル抗体AZ158、19B12、10G5、12B11、10G5又は2B12のいずれかと同じエピトープ又は決定基に本質的に結合する抗体が提供され、任意選択で、抗体が、抗体AZ158、19B12、12B11、10G5又は2B12の抗原結合領域を含む。本明細書における実施形態のいずれかにおいて、抗体AZ158、19B12、12B11、10G5又は2B12が、そのアミノ酸配列及び/又はそれをコードする核酸配列によって特徴付けることができる。一実施形態では、モノクローナル抗体が、AZ158、19B12、12B11、10G5又は2B12のFab又はF(ab’)部分を含む。AZ158、19B12、12B11、10G5又は2B12の重鎖可変領域を含むモノクローナル抗体も提供される。一実施形態によれば、モノクローナル抗体が、AZ158、19B12、12B11、10G5又は2B12の重鎖可変領域の3つのCDRを含む。AZ158、19B12、12B11、10G5若しくは2B12の可変軽鎖可変領域又はAZ158、19B12、12B11、10G5若しくは2B12の軽鎖可変領域の1、2若しくは3つのCDRをさらに含むモノクローナル抗体も提供される。任意選択で、任意の1つ以上の前記軽鎖又は重鎖CDRは、1、2、3、4若しくは5つ又はそれを超えるアミノ酸修飾(例えば、置換、挿入又は欠失)を含有し得る。任意選択で、抗体AZ158、19B12、12B11、10G5又は2B12の抗原結合領域の一部又はすべてを含む軽鎖及び/又は重鎖可変領域のいずれかが、ヒトIgGタイプの免疫グロブリン定常領域、任意選択でヒト定常領域、任意選択でヒトIgG1又はIgG3アイソタイプに融合される抗体が提供される。
【0121】
TCLを処置する際に使用するためのKIR3DL2結合抗体(若しくは抗体断片)は、例えば、単離及び/若しくは精製されたタンパク質組成物の形態であり得るか、又はそれは、細胞(例えば、T細胞、NK細胞若しくはNKT細胞などのようなCARエフェクター細胞)の表面上に存在若しくは結合することができるか、又は抗KIR3DL2抗体コード核酸配列を含むポックス若しくは他のウイルス遺伝子導入ベクターからなどのように抗体をコードする核酸の形態をさらにとることができる。キメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞は、構築することができる。CARの例は、T細胞抗原受容体複合体ゼータ鎖の細胞内シグナル伝達ドメインに融合された細胞外単鎖抗体(scFv)を含むように操作され、T細胞、NKT細胞又はNK細胞などのようなエフェクター細胞において発現された場合、モノクローナル抗体の特異性に基づく抗原認識(すなわちKIR3DL2認識)をリダイレクトする能力を有する。一態様において、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン(TM)及びKIR3DL2特異的細胞外ドメイン(例えば、KIR3DL2に特異的に結合するモノクローナル抗体、例えば本明細書において開示される抗体の1つの可変重鎖及び軽鎖領域に由来するドメイン)を含むKIR3DL2特異的キメラ免疫受容体を発現し、細胞表面膜上に担持される遺伝子操作された免疫細胞が提供される。KIR3DL2特異的キメラ免疫受容体、受容体をコードするDNA構築物及び発現にふさわしい方向で構築物を含有するプラスミド発現ベクターも提供される。
【0122】
一実施形態において、KIR3DL2結合抗体は、KIR3DL2発現細胞に対してADCC、任意選択でさらにADCPを指示する抗体又は抗体断片を含む。
【0123】
一実施形態において、本明細書における任意の実施形態において使用される抗体は、KIR3DL2ポリペプチドに結合し、任意選択で、抗体は、KIR3DL1ポリペプチドに実質的に結合せず、100ng/ml未満(又はそれよりも良好な)、任意選択で1~100ng/mlの、ヒトKIR3DL2ポリペプチドに対する結合親和性(K)によって特徴付けられる。
【0124】
抗体は、任意選択で、100ng/ml未満、任意選択で1~100ng/ml、任意選択で1~50ng/ml、任意選択で25~75ng/ml、任意選択で約50ng/mlの、健康なボランティア由来のPBMCによるHuT78腫瘍溶解についての51Cr遊離測定におけるEC50によって特徴付けられる。抗体は、任意選択で、本明細書において開示される抗KIR3DL2抗体のEC50に匹敵する、健康なボランティア由来のPBMCによるHuT78腫瘍溶解についての51Cr遊離測定におけるEC50によって特徴付けられる(例えば、配列番号49のVH及び配列番号44又は45のVLを有し、野生型又は修飾ヒトIgG1アイソタイプのFcドメインを含み、ADCCを媒介する、本明細書において開示される2B12抗体のそのEC50よりも低い又はその1-log若しくは0.5-log内にあるEC50を有する。
【0125】
抗体AZ158
AZ158は、ヒトKIR3DL2ポリペプチド及びヒトKIR3DL1ポリペプチドに結合する(国際公開第2010/081890号パンフレットを参照されたい)。AZ158のVHは、下記に示され、CDR1、2及び3にそれぞれ下線を引く。
【化3】
【0126】
AZ158のVLは下記に示され、CDR1、2及び3にそれぞれ下線を引く。
【化4】
【0127】
抗KIR3DL2抗体は、そのようなAZ158抗体由来の可変領域又はCDR配列を有する抗体を含み得る(例えば、ヒト定常領域に融合された重鎖及び/又は軽鎖可変領域;ヒトIgG1重鎖定常領域に融合された重鎖可変領域);代わりに、抗KIR3DL2抗体は、AZ158抗体由来の可変領域又はCDR配列を有する抗体以外の抗体であり得る。
【0128】
抗体19H12
抗体19H12の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、下記に列挙される。
【化5】
【0129】
抗体19H12の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、下記に列挙される。
【化6】
【0130】
一態様では、抗体をコードする精製ポリペプチドが提供され、抗体が、配列番号9において示されるアミノ酸配列GYTFTNFGMNを含むHCDR1領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(例えば、NFGMN(配列番号7)、GYTFTN(配列番号8))(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号10において示されるアミノ酸配列WINTYTGEPTYADDFを含むHCDR2領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(例えば、WINTYTGE(配列番号11))(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号12において示されるアミノ酸配列NGNFGYYFDYを含むHCDR3領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号13において示されるアミノ酸配列RSSQNIVHSNGNTYLEを含むLCDR1領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号14において示されるアミノ酸配列KVSNRFSを含むLCDR2領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);及び/又は配列番号15において示されるアミノ酸配列FQGSHVPFTを含むLCDR3領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって欠失若しくは置換され得るか、又は配列は1つ以上のアミノ酸の挿入を含み得る)を含む。
【0131】
他の態様では、
(a)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号5の重鎖可変領域;並びに/又は
(b)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号6の軽鎖可変領域;並びに/又は
(c)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号5の重鎖可変領域;及び1つ以上のこれらのアミノ酸が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号6の軽鎖可変領域;並びに/又は
(d)任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号7~9、10~11及び12においてそれぞれ示される重鎖CDR1、2及び3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(e)任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号13、14若しくは15においてそれぞれ示される軽鎖CDR1、2及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(f)任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号7、8若しくは9、10若しくは11及び12においてそれぞれ示される重鎖CDR1、2及び3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列;及び1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号13、14若しくは15において示される軽鎖CDR1、2及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(g)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号5のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%若しくは95%同一である重鎖可変領域;並びに/又は
(h)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号6のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%若しくは95%同一である軽鎖可変領域を含む、ヒトKIR3DL2に結合する抗体が提供される。
【0132】
抗体12B11
抗体12B11の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、下記に列挙される。
【化7】
【0133】
抗体12B11の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、下記に列挙される。
【化8】
【0134】
一態様では、抗体をコードする精製ポリペプチドが提供され、抗体が、配列番号20において示されるアミノ酸配列GYTFTNYGMNを含むHCDR1領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(例えば、NYGMN(配列番号18)、GYTFTN(配列番号19))(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号21において示されるアミノ酸配列WINTYTGEPTYADDFKGを含むHCDR2領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(例えば、WINTYTGEPT(配列番号22))(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号23において示されるアミノ酸配列GPWLAYを含むHCDR3領域又はその少なくとも4、5、6、7、8若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号24において示されるアミノ酸配列KASQDINVYLSを含むLCDR1領域又はその少なくとも4、5、6、7、8若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号25において示されるアミノ酸配列RAIRLVDを含むLCDR2領域又はその少なくとも4、5、6、7、8若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号26において示されるアミノ酸配列LQYDELPYTを含むLCDR3領域又はその少なくとも4、5、6、7、8若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって欠失若しくは置換され得る)を含む。
【0135】
他の態様では、
(a)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号16の重鎖可変領域;並びに/又は
(b)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号17の軽鎖可変領域;並びに/又は
(c)1つ以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号16の重鎖可変領域;及び1、2、3つ若しくはそれを超えるこれらのアミノ酸が異なるアミノ酸によって置換され得る配列番号17の軽鎖可変領域;並びに/又は
(d)任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号18、19若しくは20、21若しくは22及び23においてそれぞれ示される重鎖CDR1、2及び3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(e)任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号24、25及び26おいて示される軽鎖CDR1、2及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(f)任意のCDRの1つ以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号18、19若しくは20、21若しくは22及び23においてそれぞれ示される重鎖CDR1、2及び3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列;及び任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号24、25及び26において示される軽鎖CDR1、2及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(g)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号16のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%若しくは95%同一である重鎖可変領域;並びに/又は
(h)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号17のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%若しくは95%同一である軽鎖可変領域
を含む、ヒトKIR3DL2に結合する抗体が提供される。
【0136】
抗体2B12
抗体2B12の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、下記に列挙される(Kabat定義のCDRに下線を引く)。
【化9】
【0137】
抗体2B12の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、下記に列挙される(Kabat CDRに下線を引く)。
【化10】
【0138】
一態様において、抗体をコードする精製ポリペプチドが提供され、抗体は、配列番号36において示されるアミノ酸配列GYTFTTAGMQを含むHCDR1領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(例えば、GYTFTT(配列番号34)若しくはTAGMQ(配列番号35))(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号37において示されるアミノ酸配列WINSHSGVPKYAEDFKGを含むHCDR2領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(例えば、WINSHSGVP(配列番号38))(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号39において示されるアミノ酸配列GGDEGVMDY(任意選択でトリプトファン残基をさらに含む)を含むHCDR3領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つれ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号40において示されるアミノ酸配列KASQDVSTAVAを含むLCDR1領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号41において示されるアミノ酸配列WTSTRHTを含むLCDR2領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって置換され得る);配列番号42において示されるアミノ酸配列QQHYSTPWTを含むLCDR3領域又はその少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列(ここで、1つ以上のこれらのアミノ酸は、異なるアミノ酸によって欠失又は置換され得る)を含む。
【0139】
他の態様では、
(a)任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号34、35若しくは36(HCDR1)、37若しくは38(HCDR2)及び39(HCDR3)においてそれぞれ示される重鎖CDR1、2及び3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(b)任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号40、41及び42おいて示される軽鎖CDR1、2及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(c)任意のCDRの1つ以上のアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号34、35若しくは36(HCDR1)、37若しくは38(HCDR2)及び39(HCDR3)においてそれぞれ示される重鎖CDR1、2及び3(HCDR1、HCDR2、HCDR3)アミノ酸配列;及び任意のCDRの1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号40、41及び42において示される軽鎖CDR1、2及び3(LCDR1、LCDR2、LCDR3)アミノ酸配列;並びに/又は
(d)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号32又は48~51のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%若しくは95%同一である重鎖可変領域;並びに/又は
(e)1、2、3つ若しくはそれを超えるアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置換され得る、配列番号33又は43~47のアミノ酸配列を有する可変領域と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%若しくは95%同一である軽鎖可変領域
を含む、ヒトKIR3DL2を結合する抗体が提供される。
【0140】
本明細書における実施形態のいずれかの他の態様では、重鎖及び軽鎖のCDR1、2及び3のいずれかが、その少なくとも4、5、6、7、8、9若しくは10の連続したアミノ酸の配列によって及び/又は対応する配列番号において列挙される特定のCDR又はCDRのセットと少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%若しくは95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を有するとして特徴付けられ得る。
【0141】
他の態様では、上記の抗体のいずれかについて、(a)~(h)のモノクローナル抗体とKIR3DL2結合について競合する抗体が提供される。
【0142】
ヒト化抗体
別の態様において、本発明の処置の方法で使用される抗KIR3DL2抗体は、ヒト化抗体、例えば下記の表Bにおいて示される2B12及び10G5可変領域から選択されるVH及びVLを有するヒト化2B12又は10G5抗体である。
【0143】
例えば、ヒト化2B12抗体は、以下を含むことができる:
(a)配列番号34、35又は36のアミノ酸配列を含むCDR-H1;
(b)配列番号37又は38のアミノ酸配列を含むCDR-H2;
(c)配列番号39のアミノ酸配列を含むCDR-H3;
(d)配列番号40のアミノ酸配列を含むCDR-L1;
(e)配列番号41のアミノ酸配列を含むCDR-L2;
(f)配列番号42のアミノ酸配列を含むCDR-L3;及び
(g)ヒトフレームワーク配列。
【0144】
一実施形態において、ヒト化抗体は、JH6と一緒にヒトサブグループVH1及び/又はVH7由来の重鎖フレームワークを含み、任意選択で、抗体は、IGHJ601と一緒にIGHV7-4-102及び/又はIGHV1-c01を含む。一実施形態において、ヒト化抗体は、ヒトサブグループVK1及び/又はVK4由来の軽鎖フレームワーク、任意選択でJH4と一緒にIGKV4-101及び/又はIGKV1-3901、任意選択でIGKJ401を含む。
【0145】
任意選択で、ヒトフレームワークは、例えば、1つ以上の突然変異、例えば復帰突然変異を含む。
【0146】
別の態様において、ヒト化抗体は、配列番号48~51のヒト化2B12のVHドメインに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%又はそれを超える同一性)を有するVHドメインを含む。別の特定の態様において、ヒト化抗体は、(a)ヒトVHドメイン内に組み込まれた非ヒトCDR残基を含むVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号48~51のヒト化2B12 VHと少なくとも約80%(例えば、少なくとも90%、95%、97%、98%)同一である)、及び(b)ヒトVLドメイン内に組み込まれた非ヒトCDR残基を含むVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号43~47のヒト化2B12 VLと少なくとも約80%(例えば、少なくとも90%、95%、97%、98%)同一である)を含む。
【0147】
別の態様において、ヒト化抗体は、配列番号57~61のヒト化10G5のVHドメインに対して少なくとも約80%の配列同一性(例えば、少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%又はそれを超える同一性)を有するVHドメインを含む。別の特定の態様において、ヒト化抗体は、(a)ヒトVHドメイン内に組み込まれた非ヒトCDR残基を含むVHドメイン(ここで、VHドメインは、配列番号57~61のヒト化10G5 VHと少なくとも約80%(例えば、少なくとも90%、95%、97%、98%など)同一である)、及び(b)ヒトVLドメイン内に組み込まれた非ヒトCDR残基を含むVLドメイン(ここで、VLドメインは、配列番号52~56のヒト化10G5 VLと、少なくとも約80%(例えば、少なくとも90%、95%、97%、98%など)同一である)を含む。
【0148】
10G5又は2B12抗体は、天然の又は操作されたヒトIgG定常ドメインをさらに含み得る。任意選択で、定常ドメインは、任意選択で、Fc受容体結合を増加させるための修飾をさらに含むIgG1ドメインである。
【0149】
【表2】
【0150】
【表3】
【0151】
一実施形態において、ヒト化2B12モノクローナル抗体は、
(a)配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
(b)配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0152】
一実施形態において、ヒト化2B12モノクローナル抗体は、
(a)配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
(b)配列番号45のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0153】
一実施形態において、ヒト化10G5モノクローナル抗体は、
(a)配列番号58のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
(b)配列番号53のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0154】
一実施形態において、ヒト化10G5モノクローナル抗体は、
(a)配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
(b)配列番号53のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0155】
一実施形態において、ヒト化2B12抗体は、ラクタマブとしても知られている抗体IPH4102(Innate Pharma、フランス)の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列であるか又はそれを含む(WHO Drug Information,Vol.32,No.4,2018を参照されたい)。ラクタマブは、ヒト化2B12抗体(2B12のKabat重鎖及び軽鎖CDR1、2及び3を有する)であり、配列番号49のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0156】
任意の適した抗体を使用することができることが理解されるであろうが、一態様において、使用される抗体は、本明細書に記載される任意の抗KIR3DL2抗体を含む、知られている抗KIR3DL2抗体と同じエリア又は領域に結合する。抗KIR3DL2抗体は、配列番号1(又はその部分列)のKIR3DL2ポリペプチドの残基1~192、残基1~98又は残基99~192に対応するセグメントにおける、少なくとも部分的に重複するか又は少なくとも1つの残基を含むエピトープに結合し得る。一実施形態では、エピトープのすべての重要な残基が、配列番号1のKIR3DL2ポリペプチドの残基1~192、残基1~98又は残基99~192に対応するセグメント中にある。一実施形態では、抗体が、配列番号1のKIR3DL2ポリペプチドの残基1~192、1~98又は99~192に対応するセグメント中の1、2、3、4、5、6、7つ又はそれを超える残基を含むエピトープに結合する。好ましくは、抗体が結合する残基は、KIR3DL2ポリペプチドの表面上に存在する。
【0157】
任意選択で、抗体は、配列番号1の残基P179及び/又は残基S181を含むエピトープに結合する。任意選択で、抗体は、配列番号1のN99、H100、E130、H131、F132、V178、P179、H180、S181、P182、Y183及び/又は残基Q184からなる群から選択される1、2、3、4、5、6、7つ又はそれを超える残基を含むエピトープに結合する。
【0158】
PCT/欧州特許出願公開第2013/069302号明細書及びPCT/欧州特許出願公開第2013/069293号明細書は、一連の突然変異体ヒトKIR3DL2ポリペプチドの試験について記載する。KIR3DL2突然変異体によりトランスフェクトされた細胞への抗KIR3DL2抗体の結合を測定し、抗KIR3DL2抗体が野生型KIR3DL2ポリペプチド(配列番号1)に結合する能力と比較した。本明細書において使用される抗KIR3DL2抗体及び突然変異体KIR3DL2ポリペプチド間の結合の低下は、結合親和性の低下(例えば、特定の突然変異体を発現する細胞のFACS試験などの知られている方法によって若しくは突然変異体ポリペプチドへの結合についてのBiacore試験によって測定されるように)及び/又は抗KIR3DL2抗体の全体の結合能力の低下(例えば、抗KIR3DL2抗体濃度対ポリペプチド濃度のプロットにおけるBmaxの減少によって証明される)があることを意味する。結合の著しい減少は、突然変異した残基が、抗KIR3DL2抗体への結合に直接関与するか又は抗KIR3DL2抗体がKIR3DL2に結合した場合に結合タンパク質の非常に近くにあることを示す。抗体エピトープは、このように、そのような残基を含み得、そのような残基に空間的に隣接しているさらなる残基を含み得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、結合の著しい減少は、抗KIR3DL2抗体及び突然変異体KIR3DL2ポリペプチド間の結合親和性及び/又は能力が、40%超、50%超、55%超、60%超、65%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超又は95%超、抗体及び野生型KIR3DL2ポリペプチド(例えば、配列番号1において示されるポリペプチド)間の結合と比較して低下していることを意味する。ある実施形態では、結合が、検出可能な限界未満まで低下する。いくつかの実施形態では、結合の著しい減少は、突然変異体KIR3DL2ポリペプチドへの抗KIR3DL2抗体の結合が、抗KIR3DL2抗体及び野生型KIR3DL2ポリペプチド(例えば、配列番号1において示される細胞外ドメイン)間で観察される結合の50%未満(例えば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%又は10%未満)である場合に証明される。そのような結合測定値は、当技術分野において知られている様々な結合アッセイを使用して生成することができる。1つのそのようなアッセイの特定の例は、実施例の部において記載される。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗KIR3DL2抗体は、野生型KIR3DL2ポリペプチド(例えば、配列番号1)中の残基が置換された突然変異体KIR3DL2ポリペプチドに対して有意により低い結合を示す。ここで使用される速記表記法では、フォーマットは、配列番号1において示されるような残基のナンバリングを伴う野生型残基:ポリペプチド中の位置:突然変異体残基とする。
【0161】
任意選択で、抗体は、配列番号1の残基N99、H100、E130、H131、F132、V178、P179、H180、S181、P182、Y183及び/又は残基Q184に置換を有するKIR3DL2ポリペプチドへの結合が低下している。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗KIR3DL2抗体が、配列番号1の配列を有する野生型KIR3DL2ポリペプチドに結合するが、任意の1つ以上(例えば、1、2、3又は4つ)の以下の突然変異を有する突然変異体KIR3DL2ポリペプチドへの結合が減少している:P179T及び/又はS181T(配列番号1に関して)。一実施形態では、突然変異体KIR3DL2への結合が、野生型KIR3DL2への結合と比較して、有意に低下している。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗KIR3DL2抗体は、野生型KIR3DL2ポリペプチド(例えば、配列番号1)中の残基1~98、残基99~292又は残基99~192に対応するセグメント(又はそのサブ配列)中の残基が異なるアミノ酸により置換された突然変異体KIR3DL2ポリペプチドへの有意により低い結合を示す。
【0164】
一態様では、抗体が、モノクローナル抗体AZ158、10G5、19H12、2B12又は12B11と競合することができ、モノクローナル抗体AZ158、10G5、19H12、2B12又は12B11と実質的に若しくは本質的に同じ又は同じ、KIR3DL2分子上のエピトープ又は「エピトープ部位」を認識するか、それに結合するか、又はそれに対する免疫特異性を有する。他の実施形態では、モノクローナル抗体が、抗体AZ158、10G5、19H12、2B12又は12B11からなる又はその誘導体若しくは断片である。
【0165】
抗体が抗体AZ158、10G5、19H12、2B12又は12B11と同じエピトープに結合し得るが、適した抗体は、抗体がKIR3DL2に結合し、所望の機能性を有する限り、KIR3DL2ポリペプチドの任意の部分を認識し、それに対して産生することができることが理解されるであろう。例えば、KIR3DL2、例えばヒトKIR3DL2の任意の断片又はKIR3DL2断片の任意の組み合わせは、抗体を産生するために免疫原として使用することができ、抗体は、それらが本明細書に記載されるようにKIR3DL2発現NK細胞上で認識することができる限り、KIR3DL2ポリペプチド内の任意の場所のエピトープを認識することができる。一実施形態では、認識されたエピトープが、細胞表面に存在する、すなわち、それらは、細胞の外側に存在する抗体に接触可能である。任意選択で、エピトープは、抗体AZ158、10G5、19H12、2B12又は12B11によって特異的に認識されるエピトープである。さらに、KIR3DL2内の別個のエピトープを認識する抗体は、例えば、様々な個人間で最大の効能及び幅でKIR3DL2ポリペプチドに結合するように、組み合わせて使用することができる。
【0166】
抗体は、当技術分野において知られている様々な技術によって産生され得る。典型的には、それらは、KIR3DL2ポリペプチド、任意選択でヒトKIR3DL2ポリペプチドを含む免疫原による、非ヒト動物、任意選択でマウスの免疫化によって産生される。KIR3DL2ポリペプチドは、ヒトKIR3DL2ポリペプチドの完全長配列を含み得る又はその断片若しくは誘導体、典型的に免疫原性断片、すなわちKIR3DL2ポリペプチドを発現する細胞の表面上に曝露したエピトープを含むポリペプチドの一部分、任意選択で、AZ158、10G5、19H12、2B12若しくは12B11抗体によって認識されるエピトープを含み得る。そのような断片は、典型的には、成熟ポリペプチド配列の少なくとも約7つの連続するアミノ酸又はその少なくとも約10の連続するアミノ酸を含有する。断片は、典型的には、受容体の細胞外ドメインに本質的に由来する。一実施形態では、免疫原が、典型的に細胞の表面の脂質膜中の野生型ヒトKIR3DL2ポリペプチドを含む。一実施形態では、免疫原が、任意選択で処置された又は溶解された、インタクトな細胞、特にインタクトなヒト細胞を含む。他の実施形態では、ポリペプチドが、組換えKIR3DL2ポリペプチドである。
【0167】
抗原により非ヒト哺乳動物を免疫化するステップは、マウスにおける抗体の産生を刺激するために、当技術分野においてよく知られている任意の方法で実行され得る(例えば、全開示が参照により本明細書に組み込まれるE.Harlow and D.Lane,Antibodies:A Laboratory Manual.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(1988)を参照されたい)。免疫原は、任意選択で、完全又は不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと共に、バッファー中に懸濁される又は溶解される。免疫原の量、バッファーのタイプ及びアジュバントの量を決定する方法は、当業者によく知られており、決して限定的ではない。これらのパラメーターは異なる免疫原について異なり得るが、容易に解明される。
【0168】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫化の場所及び頻度も当技術分野においてよく知られている。典型的な免疫化プロトコールでは、非ヒト動物は、1日目及び約1週間後に再び抗原を腹腔内に注射される。任意選択で、不完全フロインドアジュバントなどのアジュバントと共に、およそ20日目に抗原のリコール注射がこれに続く。リコール注射は静脈内に実行され、数日連続して繰り返され得る。典型的にアジュバントを伴うことなく、40日目の静脈内の又は腹腔内のブースター注射がこれに続く。このプロトコールは、約40日後に抗原特異的抗体産生B細胞の産生をもたらす。他のプロトコールも、それらが免疫化において使用される抗原に向けられる抗体を発現するB細胞の産生をもたらす限り、使用され得る。
【0169】
ポリクローナル抗体調製について、血清は、免疫化非ヒト動物から得られ、その中に存在する抗体はよく知られている技術によって単離される。血清は、KIR3DL2ポリペプチドに反応する抗体を得るために、固体支持体に連結された上記に記載される免疫原のいずれかを使用してアフィニティー精製され得る。
【0170】
代替の実施形態では、非免疫化非ヒト哺乳動物由来のリンパ球が、単離され、インビトロにおいて成長され、次いで、細胞培養中の免疫原に曝露される。次いで、リンパ球は収集され、下記に記載される融合ステップが実行される。
【0171】
例示的なモノクローナル抗体について、次のステップは、免疫化非ヒト哺乳動物由来の脾細胞の単離及び抗体産生ハイブリドーマを形成するための不死化細胞とのそれらの脾細胞の続く融合である。非ヒト哺乳動物由来の脾細胞の単離は、当技術分野においてよく知られており、典型的には、麻酔をかけた非ヒト哺乳動物から脾臓を摘出すること、小さい部分にそれを切ること及び単細胞浮遊液を産生するために、適切なバッファー中に細胞濾過器のナイロンメッシュに脾膜から脾細胞を押し込むことを含む。細胞は、洗浄し、遠心分離し、あらゆる赤血球を溶解するバッファー中に再懸濁する。溶液は再び遠心分離し、ペレット中の残りのリンパ球は、新鮮なバッファー中に最終的に再懸濁する。
【0172】
単離され、単細胞浮遊液中に存在したら、リンパ球は不死の細胞株に融合することができる。ハイブリドーマを作るのに有用な多くの他の不死の細胞株が当技術分野において知られているが、これは典型的にマウス骨髄腫細胞株である。マウス骨髄腫系は、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、U.S.A.から入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、American Type Culture Collection、Rockville、Maryland U.S.A.から入手可能なX63 Ag8653及びSP-2細胞を含むが、これらに限定されない。融合は、ポリエチレングリコール又は同種のものを使用して達成される。次いで、結果として生じるハイブリドーマは、非融合親骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する、1つ以上の物質を含有する選択培地において成長させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を妨げる。
【0173】
ハイブリドーマは、マクロファージの支持細胞層上で典型的に成長させる。マクロファージは、脾細胞を単離するために使用される非ヒト哺乳動物の同腹仔由来のものであり得、ハイブリドーマを平板培養する数日前に不完全フロインドアジュバント又は同種のものにより典型的にプライミングされる。融合方法は、開示が参照により本明細書に組み込まれるGoding,“Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,” pp.59-103(Academic Press,1986)において記載される。
【0174】
細胞を、コロニー形成及び抗体産生に十分な時間、選択培地中で成長させる。これは、通常約7~約14日である。
【0175】
次いで、ハイブリドーマコロニーは、KIR3DL2ポリペプチド遺伝子産物、任意選択で、抗体AZ158、19H12、2B12又は12B11によって特異的に認識されるエピトープに特異的に結合する抗体の産生についてアッセイされる。ハイブリドーマが成長するウェルに適応することができる任意のアッセイが用いられ得るが、アッセイは、典型的には、比色定量ELISAタイプアッセイである。他のアッセイは、ラジオイムノアッセイ又は蛍光標識細胞分取を含む。所望の抗体産生について陽性のウェルは、1つ以上の別個のコロニーが存在するかどうかを決定するために検査される。2つ以上のコロニーが存在する場合、細胞は再クローニングし、単一の細胞のみが所望の抗体を産生するコロニーをもたらしたことを確実にするために成長させ得る。典型的には、抗体は、KIR3DL2ポリペプチド、例えばKIR3DL2発現細胞に結合する能力についても試験されるであろう。
【0176】
モノクローナル抗体を産生することが確認されたハイブリドーマは、DMEM又はRPMI-1640などの適切な培地中で大量に成長させることができる。代わりに、ハイブリドーマ細胞は、動物中で腹水腫瘍としてインビボにおいて成長させることができる。所望のモノクローナル抗体を産生するための十分な成長後、モノクローナル抗体を含有する成長培地(又は腹水)は、細胞から分離され、その中に存在するモノクローナル抗体は、精製される。精製は、典型的には、ゲル電気泳動法、透析、アガロース又はセファロースビーズなどの固体支持体に連結されたプロテインA若しくはプロテインG-セファロース又は抗マウスIgを使用するクロマトグラフィーによって実現される(すべて、例えば開示が参照により本明細書に組み込まれるAntibody Purification Handbook,Biosciences,publication No.18-1037-46,Edition ACにおいて記載される)。結合した抗体は、低pHバッファー(pH3.0又はそれ未満のグリシン又は酢酸バッファー)を使用することによってプロテインA/プロテインGカラムから典型的に溶出され、抗体含有画分は即座に中和される。これらの画分は、必要に応じて、プールされ、透析され、濃縮される。
【0177】
単一の明確なコロニーを有する陽性のウェルは、典型的には、1つのモノクローナル抗体のみが検出され、産生されていることを保証するために再クローニングされ、再アッセイされる。
【0178】
抗体は、例えば、全開示が参照により本明細書に組み込まれるWard et al.Nature,341(1989)p.544において開示されるように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーの選択によっても産生され得る。
【0179】
興味がある抗原、すなわちKIR3DL2、特に又は本質的にモノクローナル抗体AZ158、19H12、2B12又は12B11と同じ領域、決定基又はエピトープに結合する1つ以上の抗体の同定は、抗体競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイのいずれか1つを使用して容易に決定することができる。多くのそのようなアッセイは、ルーチン的に実行され、当技術分野においてよく知られている(例えば、参照によって本明細書において特に援用される、1997年8月26日に発行された米国特許第5,660,827号明細書を参照されたい)。
【0180】
例えば、検査されることになる試験抗体が異なる供給源の動物又はさらに異なるIgアイソタイプから得られる場合、コントロール(例えば、AZ158、19H12、2B12又は12B11)及び試験抗体が混合され(又はあらかじめ吸着され)、KIR3DL2ポリペプチドを含有するサンプルに加えられる単純な競合アッセイが用いられ得る。ウェスタンブロット法に基づくプロトコール及びBIACORE分析の使用は、そのような競合研究における使用に適している。
【0181】
ある実施形態では、KIR3DL2抗原サンプルに加える前の期間に、コントロール抗体(例えば、AZ158、19H12、2B12又は12B11)を様々な量の試験抗体(例えば、約1:10又は約1:100)とあらかじめ混合する。他の実施形態では、コントロール及び様々な量の試験抗体を、KIR3DL2抗原サンプルへの曝露中に単純に混合することができる。遊離抗体から結合抗体を(例えば、非結合抗体を除くための分離又は洗浄技術を使用することによって)及び試験抗体から2B12を(例えば、種特異的若しくはアイソタイプ特異的な二次抗体を使用することによって又は検出可能な標識によりAZ158、19H12、2B12若しくは12B11を特異的に標識することによって)区別することができる限り、試験抗体がAZ158、19H12、2B12又は12B11の抗原への結合を低下させるかどうかを決定することができる。全く関係のない抗体の非存在下における(標識)コントロール抗体の結合は、コントロール高値として役割を果たすことができる。コントロール低値は、全く同じタイプの非標識抗体(AZ158、19H12、2B12又は12B11)と、標識(AZ158、19H12、2B12又は12B11)抗体をインキュベートすることによって得ることができ、競合が生じ、標識抗体の結合を低下させるであろう。試験アッセイにおいて、試験抗体の存在下における標識抗体反応性の有意な低下は、試験抗体が標識(AZ158、19H12、2B12又は12B11)抗体と「交差反応する」又は競合することを示す。約1:10~約1:100のAZ158、19H12、2B12又は12B11:試験抗体の任意の比で少なくとも約60%又はより好ましくは少なくとも約80%若しくは90%(例えば、約65~100%)などのように、少なくとも約50%、KIR3DL2抗原へのAZ158、19H12、2B12又は12B11の結合を低下させる任意の試験抗体を選択することができる。一実施形態において、このような試験抗体は、少なくとも約90%(例えば、約95%)、KIR3DL2抗原へのAZ158、19H12、2B12又は12B11の結合を低下させるであろう。
【0182】
競合は、例えば、フローサイトメトリー試験によって評価することもできる。このような試験において、所定のKIR3DL2ポリペプチドを有する細胞は、例えば、最初に2B12と、次に蛍光色素又はビオチンで標識された試験抗体とインキュベートすることができる。飽和量の2B12とのプレインキュベーション時に得られる結合が、2B12とのプレインキュベーションなしの抗体によって得られる結合(蛍光発光によって測定される)の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%、20%又は10%)である場合、抗体は、2B12と競合すると言われる。代わりに、飽和量の試験抗体とプレインキュベートした細胞上の標識2B12抗体(蛍光色素又はビオチンによって)により得られる結合が、試験抗体とのプレインキュベーションなしで得られる結合の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%、20%又は10%)である場合、抗体は、2B12と競合すると言われる。
【0183】
抗体がエピトープ領域内で結合するかどうかの決定は、当業者に知られている方法で実行することができる。そのようなマッピング/特徴付け方法の1つの例として、抗KIR3DL2抗体に対するエピトープ領域は、それぞれのKIR3DL2タンパク質において露出したアミン/カルボキシルの化学修飾を使用するエピトープ「フットプリント法」によって決定され得る。そのようなフットプリント法技術の1つの特定の例は、HXMS(質量分析法によって検出される水素-重水素交換)の使用であり、受容体及びリガンドタンパク質アミドプロトンの水素/重水素交換、結合及び逆交換が生じ、タンパク質結合に参加する主鎖アミド基は、逆交換から保護され、そのため、重水素化されたままであろう。関連する領域は、消化性タンパク質分解、ファストマイクロボア高速液体クロマトグラフィー分離及び/又はエレクトロスプレーイオン化質量分析により、この時点で同定することができる。例えば、Ehring H,Analytical Biochemistry,Vol.267(2)pp.252-259(1999)Engen,J.R.and Smith,D.L.(2001)Anal.Chem.73,256A-265Aを参照されたい。適したエピトープ同定技術の他の例は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)であり、典型的には、遊離抗原及び抗体などの抗原結合ペプチドと複合体を形成した抗原の2次元NMRスペクトル中のシグナルの位置が比較される。抗原は、典型的には、15Nにより選択的に同位体標識され、抗原に対応するシグナルのみがNMRスペクトルにおいて見られ、抗原結合ペプチドからのシグナルは見られない。抗原結合ペプチドとの相互作用に典型的に関与するアミノ酸に起源を有する抗原シグナルは、遊離抗原のスペクトルと比較して、複合体のスペクトルにおいて位置をシフトさせ、結合に関与するアミノ酸はそのように同定することができる。例えば、Ernst Schering Res Found Workshop.2004;(44):149-67;Huang et al.,Journal of Molecular Biology,Vol.281(1)pp.61-67(1998);及びSaito and Patterson,Methods.1996 Jun;9(3):516-24を参照されたい。
【0184】
エピトープマッピング/特徴付けは、質量分析法方法を使用して実行することもできる。例えば、Downard,J Mass Spectrom.2000 Apr;35(4):493-503及びKiselar and Downard,Anal Chem.1999 May 1;71(9):1792-1801を参照されたい。プロテアーゼ消化技術もエピトープマッピング及び同定の状況において有用になり得る。抗原決定基に関連する領域/配列は、プロテアーゼ消化により、例えばKIR3DL2に対して約1:50の比率でトリプシンを使用すること又はpH7~8でのo/n消化、その後に続く、ペプチド同定のための質量分析法(MS)分析により決定することができる。抗KIR3DL2バインダーによってトリプシン切断から保護されたペプチドは、続いて、トリプシン消化にかけられたサンプル及び抗体とインキュベートされ、次いで、例えばトリプシンによる消化にかけられたサンプルの比較によって同定することができる(それによってバインダーについてのフットプリントを明らかにする)。キモトリプシン、ペプシンなどの他の酵素も、同様に又は代わりに、類似するエピトープ特徴付け方法において使用することができる。さらに、酵素的消化は、潜在的な抗原決定基配列が、表面に曝露されておらず、したがって、おそらく、免疫原性/抗原性の点から関連しない、KIR3DL2ポリペプチドの領域内にあるかどうかを分析するための迅速な方法を提供することができる。
【0185】
部位特異的突然変異誘発は、結合エピトープの解明に有用な他の技術である。例えば、「アラニンスキャニング」では、タンパク質セグメント内のそれぞれの残基が、アラニン残基と交換され、結合親和性についての結果が測定される。突然変異が結合親和性の著しい減少に至る場合、それはおそらく結合に関与しているであろう。構造的エピトープに対して特異的なモノクローナル抗体(すなわち非フォールドタンパク質に結合しない抗体)は、アラニン置換が、タンパク質の全体的なフォールドに影響を及さないことを検証するために使用することができる。例えば、Clackson and Wells,Science 1995;267:383-386;及びWells,Proc Natl Acad Sci USA 1996;93:1-6を参照されたい。
【0186】
電子顕微鏡もエピトープ「フットプリント法」に使用することができる。例えば、Wang et al.,Nature 1992;355:275-278は、天然ササゲモザイクウイルスのカプシド表面上のFab断片の物理的フットプリントを決定するために、連係して適用した低温電子顕微鏡、3次元像修復及びX線結晶解析を使用した。
【0187】
エピトープ評価のための「標識遊離」アッセイの他の形態は、表面プラズモン共鳴(SPR、BIACORE)及び反射型干渉分光法(RifS)を含む。例えば、Faegerstam et al.,Journal Of Molecular Recognition 1990;3:208-14;Nice et al.,J.Chroma-togr.1993;646:159-168;Leipert et al.,Angew.Chem.Int.Ed.1998;37:3308-3311;Kroeger et al.,Biosensors and Bioelectronics 2002;17:937-944を参照されたい。
【0188】
抗体と同じ又は実質的に同じエピトープに結合する抗体は、本明細書に記載される、1つ以上の例示的な競合アッセイにおいて同定することができることも注目されるべきである。
【0189】
KIR3DL2に結合することができ、且つ/又は他の所望される特性を有することができる(例えば、ADCC及び/若しくは抗体依存性細胞貪食(ADCP)を媒介する能力)抗体が同定されたら、それらは、典型的には、無関係なポリペプチドを含む他のポリペプチドに結合するそれらの能力について、本明細書に記載されるものを含む標準的な方法を使用しても評価されるであろう。理想的には、抗体は、KIR3DL2、例えばヒトKIR3DL2にのみ実質的な親和性により結合し、無関係なポリペプチドに有意なレベルで結合しない。しかしながら、KIR3DL2に対する親和性が、それが他の無関係なポリペプチドに対するものよりも実質的に大きい限り(例えば、5×、10×、50×、100×、500×、1000×、10,000×又はそれを超える)、抗体は、本発明の方法における使用に適していることが理解されるであろう。
【0190】
KIR3DL2発現細胞への抗体の結合は、非ヒト霊長動物、例えばカニクイザル又はマウスなどの他の哺乳動物において評価することもできる。抗体並びにその断片及び誘導体が提供され、前記抗体、断片又は誘導体は、KIR3DL2に特異的に結合し、これは、非ヒト霊長動物、例えばカニクイザル由来のKIR3DL2にさらに結合する。
【0191】
脊椎動物又は細胞における免疫化及び抗体の産生において、特定の選択ステップは、主張される抗体を単離するために実行され得る。この点では、特定の実施形態では、本開示は、そのような抗体を産生する方法であって、(a)KIR3DL2ポリペプチドを含む免疫原により非ヒト哺乳動物を免疫化すること;及び(b)前記免疫化された動物から抗体を調製すること;及び(c)KIR3DL2に結合することができる、ステップ(b)からの抗体を選択することを含む方法に関する。
【0192】
実施形態のいずれかの一態様では、本発明の方法に従って調製される抗体が、モノクローナル抗体である。他の態様では、抗体を産生するために使用される非ヒト動物が、げっ歯動物、ウシ、ブタ、家禽、ウマ、ウサギ、ヤギ又はヒツジなどの哺乳動物である。
【0193】
代替の実施形態によれば、KIR3DL2ポリペプチド上に存在するエピトープに結合する抗体をコードするDNAが、ハイブリドーマから単離され、適切な宿主中へのトランスフェクションのための適切な発現ベクター中に置かれる。次いで、宿主は、抗体又はそのモノクローナル抗体のヒト化バージョン抗体の活性断片、抗体の抗原認識部分を含むキメラ抗体若しくは検出可能な成分を含むバージョンなどのその変異体の組換え産生に使用される。
【0194】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離し、シークエンシングすることができる(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)。単離されたら、DNAは発現ベクター中に置くことができ、これは、次いで、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成するために、トランスフェクトされなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞などの宿主細胞内にトランスフェクトされる。本明細書において別記されるように、そのようなDNA配列は、多くの目的のいずれかのために、例えば抗体をヒト化する、断片若しくは誘導体を産生するために又は抗体の結合特異性を最適化するために、例えば抗原結合部位中の抗体の配列を修飾するために、修飾することができる。
【0195】
抗体をコードするDNAの細菌における組換え発現は、当技術分野においてよく知られている(例えば、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.,5,pp.256(1993);及びPluckthun,Immunol.130,p.151(1992)を参照されたい。
【0196】
抗原結合化合物が得られたら、それは、KIR3DL2発現標的細胞に向けてADCC、ADCP及び/又はCDCを誘発し、且つ/又はそれを除去する能力について評価され得る。ADCC、ADCP及び/又はCDC(補体依存性細胞障害作用)を誘発するか又はKIR3DL2発現標的細胞の活性の除去若しくは阻害に一般に至る抗原結合化合物の能力の評価は、方法の任意の適したステージで実行することができる。この評価は、治療上の使用のために定められた抗体(又は他の化合物)の同定、産生及び/又は開発に関与する様々なステップの1つ以上で有用になり得る。例えば、活性は、候補抗原結合化合物を同定するためのスクリーニング方法との関連において又は抗原結合化合物が選択され、ヒトに適したものにする(例えば、抗体の場合、キメラ又はヒト化される)、抗原結合化合物を発現する細胞(例えば、組換え抗原結合化合物を発現する宿主細胞)が得られ、機能的抗体(若しくは他の化合物)を産生するその能力について評価され、且つ/又はある量の抗原結合化合物が産生され、活性について評価することになる(例えば、産物のバッチ若しくはロットを試験する)方法において、評価され得る。一般に、抗原結合化合物は、KIR3DL2ポリペプチドに特異的に結合することが知られているであろう。ステップは、複数(例えば、ハイスループットスクリーニング方法を使用する非常に多数又は少数)の抗原結合化合物を試験することを伴い得る。
【0197】
ADCP、CDC及びADCCの試験は、当技術分野において知られているもの及び本明細書における実験の実施例において記載されるものを含む、様々なアッセイによって実行することができ、決定することができる。ADCCの試験は、典型的には、抗KIR3DL2抗体が結合したKIR3DL2発現標的細胞(例えば、TCL細胞又は他のKIR3DL2発現細胞)が、補体の関与を伴うことなく、Fc受容体を有するエフェクター細胞によって認識される細胞媒介性細胞傷害性を評価することを含む。KIR3DL2抗原を発現しない細胞は、コントロールとして任意選択で使用することができる。NK細胞傷害性の活性化は、サイトカイン産生(例えば、IFN-γ産生)又は細胞傷害性マーカー(例えば、CD107動員)の増加を測定することによって評価される。一実施形態では、抗体が、サイトカイン産生の増加、細胞傷害性マーカーの発現又はコントロール抗体(例えば、KIR3DL2に結合しない抗体、マウス定常領域を有するKIR3DL2抗体)と比較して、標的細胞の存在下において少なくとも20%、50%、80%、100%、200%若しくは500%の標的細胞溶解を誘発するであろう。他の実施例では、標的細胞の溶解は、例えば、クロミウム放出アッセイにおいて検出され、例えば、抗体は、標的細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%の溶解を誘発するであろう。
【0198】
抗体の断片及び誘導体(特に指定のない限り又は文脈によって明らかに否定されない限り、本出願において使用される用語「抗体」によって包含される)は、当技術分野において知られている技術によって産生することができる。「断片」は、インタクトな抗体の一部分、一般に、抗原結合部位又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2及びFv断片;二重特異性抗体;限定を伴うことなく、(1)単鎖Fv分子、(2)関連する重鎖成分がない、軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有する1つの軽鎖可変ドメイン又はその断片のみを含有する単鎖ポリペプチド、及び(3)関連する軽鎖成分がない、重鎖可変領域の3つのCDRを含有する1つの重鎖可変領域又はその断片のみを含有する単鎖ポリペプチドを含む、連続したアミノ酸残基の1つの途切れない配列からなる一次構造を有するポリペプチドである任意の抗体断片(「単鎖抗体断片」又は「単鎖ポリペプチド」と本明細書において呼ばれる);並びに抗体断片から形成される多特異性抗体を含む。とりわけ、ナノボディ、ドメイン抗体、単一ドメイン抗体又は「dAb」が含まれる。
【0199】
ある実施形態では、抗体を産生するハイブリドーマのDNAが、例えば、相同な非ヒト配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインについてのコード配列を置換することによって(例えば、Morrison et al.,PNAS pp.6851(1984))又は非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列のすべて若しくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することにより、発現ベクターへの挿入の前に修飾することができる。そのように、もとの抗体の結合特異性を有する「キメラ」抗体又は「ハイブリッド」抗体が、調製される。典型的には、そのような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインと置換される。
【0200】
したがって、他の実施形態によれば、抗体が、ヒト化抗体である。抗体の「ヒト化」形態は、マウス免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、特異的なキメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖又は断片である(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2若しくは抗体の他の抗原結合サブ配列など)。大部分について、ヒト化抗体は、もとの抗体の所望の特異性、親和性及び能力を維持しながら、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、もとの抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基と交換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0201】
いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基と交換され得る。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においても、移入されるCDR若しくはフレームワーク配列においても見られない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良し、最適化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべて又は実質的にすべてがもとの抗体のものに対応し、FR領域のすべて又は実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、実質的にすべての、少なくとも1つの、典型的に2つの可変ドメインを含むであろう。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にヒト免疫グロブリンのものも含むであろう。さらなる詳細については、全開示が参照により本明細書に組み込まれるJones et al.,Nature,321,pp.522(1986);Reichmann et al,Nature,332,pp.323(1988);Presta,Curr.Op.Struct.Biol.,2,pp.593(1992);Verhoeyen et Science,239,pp.1534;及び米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)。抗体をヒト化する方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0202】
ヒト化抗体を作製するのに使用されることになるヒト可変ドメイン、軽鎖及び重鎖の両方の選択は、抗原性を低下させるのに非常に重要である。いわゆる「最適適合(best-fit)」方法によれば、抗体の可変ドメインの配列は、知られているヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、マウスのものに最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として許容される(Sims et al.,J.Immunol.151,pp.2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.196,1987,pp.901)。他の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al.,PNAS 89,pp.4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151,p.2623(1993))。
【0203】
KIR3DL2受容体に対する高い親和性及び他の好都合な生物学的特性を保持しながら、抗体がヒト化されることはさらに重要である。この目標を達成するために、1つの方法によれば、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の3次元モデルを使用する、親の配列及び様々な概念的なヒト化産物の分析のプロセスによって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者によく知られている。候補免疫グロブリン配列の有望な3次元構造を示し、表示するコンピュータープログラムは、入手可能である。これらの表示についての検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の有望な役割の分析、すなわちその抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このように、標的抗原に対する親和性の増加などの所望の抗体特質が実現されるように、FR残基は、コンセンサス配列及びインポート配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に直接、最も実質的に影響を及ぼすことに関与する。
【0204】
ヒト又はヒト化モノクローナル抗体を作製するための別の方法は、免疫化のために遺伝子修飾マウスを使用することである。免疫グロブリン遺伝子が機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられたいくつかのマウス宿主が知られている。したがって、このマウスによって又はこのようなマウスのB細胞から作製されるハイブリドーマにおいて産生される抗体は、すでにヒト抗体又はヒト化抗体である。例示的な動物は、米国特許第6,162,963号明細書及びJakobovitz et al.,Nature 362(1993)255において記載されており、これらは、参照によって本明細書に援用される。ヒト抗体は、ファージディスプレー方法を使用する抗体レパートリーの選択によるなど、様々な他の技術に従っても産生され得る。そのような技術は、当業者に知られており、本出願において開示されるモノクローナル抗体から出発して実行することができる。
【0205】
KIR3DL2結合化合物、例えば抗KIR3DL2抗体は、第2の成分にさらに結合され得、抗体が、KIR3DL2発現細胞に第2の成分を送達することができる。任意選択で、第2の成分は、治療剤、毒性の作用物質及び/又は検出可能な作用物質である。
【0206】
非誘導体化又は未修飾形態をした抗体、特にIgG1又はIgG3タイプが、例えばKIR3DL2発現PTCL細胞に対してADCC、ADCP及び/又はCDCを向けることにより、過剰増殖している細胞の増殖を阻害するか又はPTCL患者由来のものにおけるなどの過剰増殖している細胞に対して細胞傷害性となることが予想されるが、細胞傷害性である誘導体化抗体免疫複合体を調製することも可能である。一実施形態において、KIR3DL2特異的抗体が単離され、任意選択で他の状態に修飾されたら(例えば、ヒト化)、それらはそれらを細胞に対して毒性となるように誘導体化されるであろう。このように、PTCL患者への抗体の投与は、過剰増殖している細胞への抗体の比較的特異的な結合に至り、それにより障害の根底にある細胞を直接死滅させる又は阻害するであろう。
【0207】
抗KIR3DL2抗体がADCC及びCDCを誘発する能力を考慮して、抗体は、抗体依存性細胞傷害性、肥満細胞脱顆粒及び食作用などのエフェクター機能並びにリンパ球増殖及び抗体分泌の調節などの免疫調節性シグナルに影響を与えることもできる、Fc受容体に結合するそれらの能力を増加させる修飾をなすことができる。典型的な修飾は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、挿入)及び/又はグリコシル化の改変タイプ、例えば低フコシル化を含む修飾ヒトIgG1定常領域を含む。
【0208】
抗KIR3DL2抗体は、任意選択で修飾されたヒトIgG1又はIgG3アイソタイプのFcドメイン(又はその一部分)を含み得る。
【0209】
ある実施形態において、CH2及び/又はCH3ドメイン(又はそれらを含むFcドメイン)は、ヒトCD16及び任意選択でFcRnなどのような別の受容体への結合を増加させる1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、アミノ酸置換)を含み得る。任意選択で、修飾は、新生児型Fc受容体(FcRn)、例えば、ヒトFcRnに結合するFc由来のポリペプチドの能力を実質的に減少又は消滅させないであろう。典型的な修飾体は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、置換、欠失、挿入)及び/又はグリコシル化の改変タイプ、例えば低フコシル化を含む修飾ヒトIgG1由来定常領域を含む。そのような修飾は、Fc受容体:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)との相互作用に影響を与えることができる。FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32A)及びFcγRIII(CD16)は、活性化(すなわち免疫系増強)受容体であるが、FcγRIIB(CD32B)は、阻害(すなわち免疫系抑制)受容体である。修飾は、例えば、エフェクター(例えば、NK)細胞上のFcγRIIIaへのFcドメインの結合を増加させ得、且つ/又はFcγRIIBへの結合を減少させ得る。修飾の例は、国際公開第2014/044686号パンフレットにおいて提供され、この開示は、参照によって本明細書に援用される。FcγRIIIa又はFcRn結合に影響する(増強させる)特異的な突然変異(IgG1 Fcドメインにおける)は、さらに下記に記載される。
【0210】
【表4】
【0211】
変異Fc領域は、Fc領域のCH2及び/又はCH3ドメインにおいて少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ又はそれを超えるアミノ酸修飾を有する)を含み得、修飾は、ヒトCD16ポリペプチドへの結合を増強する。他の実施形態において、Fc領域は、アミノ酸237~341のFc領域のCH2ドメインにおいて又は残基231~341を含む下部ヒンジ-CH2領域内に少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9つ又はそれを超えるアミノ酸修飾)を含む。いくつかの実施形態において、Fc領域は、少なくとも2つのアミノ酸修飾(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9つ又はそれを超えるアミノ酸修飾)を含み、このような修飾の少なくとも1つは、CH3領域内にあり、少なくとも1つのこのような修飾は、CH2領域内にある。ヒンジ領域におけるアミノ酸修飾も包含される。一実施形態において、CH1ドメインにおける、任意選択で、残基216~230(Kabat EUナンバリング)を含む上部ヒンジ領域におけるアミノ酸修飾が包含される。Fc修飾の任意の適した機能的組み合わせ、例えば異なるFc修飾の任意の組み合わせを作製することができ、これらは、米国特許第7,632,497号明細書;米国特許第7,521,542号明細書;米国特許第7,425,619号明細書;米国特許第7,416,727号明細書;米国特許第7,371,826号明細書;米国特許第7,355,008号明細書;米国特許第7,335,742号明細書;米国特許第7,332,581号明細書;米国特許第7,183,387号明細書;米国特許第7,122,637号明細書;米国特許第6,821,505号明細書及び米国特許第6,737,056号明細書;並びに/又は国際公開第2011/109400号パンフレット;国際公開第2008/105886号パンフレット;国際公開第2008/002933号パンフレット;国際公開第2007/021841号パンフレット;国際公開第2007/106707号パンフレット;国際公開第06/088494号パンフレット;国際公開第05/115452号パンフレット;国際公開第05/110474号パンフレット;国際公開第04/1032269号パンフレット;国際公開第00/42072号パンフレット;国際公開第06/088494号パンフレット;国際公開第07/024249号パンフレット;国際公開第05/047327号パンフレット;国際公開第04/099249号パンフレット及び国際公開第04/063351号パンフレット;並びに/又はLazar et al.(2006)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103(11):405-410;Presta,L.G.et al.(2002)Biochem.Soc.Trans.30(4):487-490;Shields,R.L.et al.(2002)J.Biol.Chem.26;277(30):26733-26740及びShields,R.L.et al.(2001)J.Biol.Chem.276(9):6591-6604)のいずれにおいても開示されている。
【実施例
【0212】
実施例1 - 化学療法剤とのインビトロ組み合わせ研究
化学療法剤が宿主免疫系に負に影響し、その結果として、ADCCを媒介する治療抗体の効能を阻害し得ることが知られている。その結果として、本発明者らは、化学療法剤が、ヒトIgG1アイソタイプ並びにそれぞれ配列番号49及び44において示されるVH及びVLアミノ酸配列を有するヒト化2B12抗体ラクタマブのNK細胞媒介性ADCC活性に影響するかどうかを評価することを試みた。化学療法剤を、単独で又は組み合わせて、同種異系NK細胞及びKIR3DL2発現セザリー症候群細胞系(Hut78)と共に、濃度を増加させながらの抗KIR3DL2抗体の存在下においてインビトロ細胞傷害(ADCC)アッセイに追加した。
【0213】
結果を図1に示す。この実験設定において、ゲムシタビンもオキサリプラチンも、HUT78 CTCL細胞系に対する抗KIR3DL2抗体誘発性のADCCを妨げなかった。実際、抗KIR3DL2抗腫瘍活性は、驚くべきことに、ゲムシタビン及びオキサリプラチンのそれぞれによって増強され、ゲムシタビン及びオキサリプラチンの組み合わせによってさらに増強された。
【0214】
実施例2 - ゲムシタビン及びオキサリプラチンはそれぞれKIR3DL2発現を増強する
HUT78 CTCL細胞系に対する抗KIR3DL2抗体誘発性のADCCの増強について考え得る理由について調べるために、本発明者らは、KIR3DL2発現がインビトロにおいて同じ化学療法薬によって調整することができるかどうかを評価した。
【0215】
手短に言えば、Hut78細胞(セザリー症候群細胞系)又はRAJI-KIR3DL2細胞(ヒトKIR3DL2をトランスフェクトしたRAJI B-NHL細胞系を、ゲムシタビン及びオキサリプラチンの用量を上昇させながらインキュベートした。腫瘍細胞系表面上のKIR3DL2の蛍光強度の中央値をフローサイトメトリーによって分析した。
【0216】
結果を図2に示す。RAJI-KIR3DL2細胞をパネルA(左側)に示し、Hut78細胞をパネルBに示す(右側。オキサリプラチン及びゲムシタビンの両方が、ベースラインと比較して2~3倍のプラトーに達するまで、用量依存的に両方の細胞系上のKIR3DL2表面発現を増強することがわかった(図2)。これらの図は、2つの独立した実験を代表するものである。興味深いことに、シクロホスファミドなどのような他の化学療法剤は、同じ実験条件においてKIR3DL2発現を増加させなかった。
【0217】
概して、これらの結果は、特に、処置の改善を特に必要とし得る、PTCLが再発した患者における、ゲムシタビン及びオキサリプラチンとの抗KIR3DL2抗体の組み合わせの活用を支持するものである。
【0218】
実施例3 - インビボにおける効能
完全に機能的なNK細胞及びマクロファージを保持する免疫不全マウス株のCB17-SCIDマウスにおける異種移植片モデルである。加えて、マウスFc受容体は、ヒトFcに有効に結合し、マウスエフェクター細胞がヒト化mAbによって動員され、ADCC又はADCPを実行することをインビボにおいて可能にする。B-NHL細胞系RAJIを、KIR3DL2(RAJI-KIR3DL2)を安定して発現するようにトランスフェクトし、トランスフェクタントをIVによってSCIDマウスに接種し(5×10細胞)、それにより播種腫瘍モデルがもたらされた。最初に、ゲムシタビン及びオキサリプラチンの個々の用量をこの異種移植片モデルにおいて確立した。しかしながら、ゲムシタビン及びオキサリプラチンは、ヒトにおいて一緒に使用することができるが、これらのマウスにおいて、活性であるが、忍容性であるように組み合わせることができるゲムシタビン及びオキサリプラチンの用量を見出すことは、不可能であった。その結果として、抗KIR3DL2抗体(ラクタマブ)は、ゲムシタビン又はオキサリプラチンと別々に組み合わせた。
【0219】
この播種腫瘍モデル(1グループ当たりn=9匹のマウス)において、マウスグループは、したがって、以下により、1週間につき2回処置した:
- アイソタイプコントロールmAb、
- 抗KIR3DL2抗体(ラクタマブ)、
- ゲムシタビン(50mg/kg)
- オキサリプラチン(5mg/kg)、
- 抗KIR3DL2抗体(ラクタマブ)+ゲムシタビン(50mg/kg)、又は
- 抗KIR3DL2抗体(ラクタマブ)+オキサリプラチン(5mg/kg)。
【0220】
抗KIR3DL2抗体及びアイソタイプコントロールの両方は、1回の注射当たり0.3μgで投与した。
【0221】
結果を図3に示す。抗KIR3DL2抗体及びオキサリプラチンの組み合わせは、抗KIR3DL2抗体単独と少なくとも同程度に活性であった(オキサリプラチンは、このモデルにおいて、それのみでは抗腫瘍効果がたとえあったとしても非常に限られていた)。興味深いことに、抗KIR3DL2抗体及びゲムシタビンは、インビボにおいて相乗的な抗腫瘍活性を示した。抗KIR3DL2抗体及びゲムシタビンにより処置したマウスは、それぞれの薬剤によって別々に処置したマウスと比較して生存期間が有意に改善した。上記に示す効果は、2回の独立した実験において、毎回1グループ当たりの9匹のマウスで再現された。
【0222】
これらの結果は、インビトロ組み合わせデータ並びにゲムシタビン及びオキサリプラチンによるKIR3DL2の可能性として考えられる誘発と一緒に、TCL患者におけるゲムシタビン及びオキサリプラチンとの抗KIR3DL2抗体の処置の組み合わせを支持するものである。ヒト化2B12との組み合わせは、抗癌処置として特に強力であるが、ゲムシタビン及び/又はオキサリプラチンがKIR3DL2発現を増加させる能力は、単独では2B12よりも強力でない抗体の抗腫瘍を増強するためにも有用であり得る。組み合わせは、特にPTCLが再発した患者において有効であり得る。
【0223】
本明細書において引用される刊行物、特許出願及び特許を含むすべての参考文献は、それらの全体が参照により、また、あたかもそれぞれの参考文献が、参照により組み込まれることが個々に且つ明確に示され、且つ本明細書においてその全体が示されるのと同じ程度まで(法律によって許可される最大限の程度まで)、本明細書において別記される特定の文献の組み込みが別々に提供されるにもかかわらず、本明細書に組み込まれる。
【0224】
特に指定のない限り、本明細書において提供される厳密な値はすべて、対応する近似値の代表である(例えば、特定の因子又は測定値に関して提供されるすべての厳密な例示的な値は、適切な場合、「約」によって修飾される、対応する近似の測定値も提供すると考えることができる)。
【0225】
要素に関して「含む」、「有する」、「包含する」又は「含有する」などの用語を使用する本発明の任意の態様又は実施形態の本明細書における記載は、特に指定のない限り又は文脈によって明らかに否定されない限り、その特定の要素「からなる」、「から本質的になる」又は「を実質的に含む」本発明の類似する態様又は実施形態について支持を提供することが意図される(例えば、特定の要素を含むとして本明細書に記載される組成物は、特に指定のない限り又は文脈によって明らかに否定されない限り、その要素からなる組成物を記載することも理解されるべきである)。
【0226】
本明細書において提供されるあらゆる実施例又は例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることが意図され、特に主張されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる用語も、本発明の実施にとって不可欠なものとして主張されていない要素を示すと解釈されるべきでない。
図1
図2
図3
【配列表】
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