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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】液相及び固相DNA増幅の組合せ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6837 20180101AFI20241227BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20241227BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241227BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20241227BHJP
【FI】
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/09 200
C12M1/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021565983
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 GB2020051122
(87)【国際公開番号】W WO2020225564
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】1906461.7
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520099955
【氏名又は名称】ディーエヌエイイー ダイアグノスティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッドソン、デイヴィッド アラン
(72)【発明者】
【氏名】ウォースリー、グレアム
(72)【発明者】
【氏名】キルパック、ジャレット
(72)【発明者】
【氏名】リード、サミュエル
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-522858(JP,A)
【文献】国際公開第2013/144580(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/042399(WO,A1)
【文献】特表2018-500926(JP,A)
【文献】特表2015-532094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68- 1/70
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00- 3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMOSチップにおける核酸配列の増幅及び分析のための方法であって、
該方法が、
a.液体体積が、核酸試料、2種以上の非固定化増幅プライマー及び核酸増幅のための試薬を含み、CMOSチップの表面が1種以上の固定化増幅プライマーを有する、該CMOSチップの表面と接触する液体体積を有するシステムを提供すること、
b.非固定化増幅プライマーを使用して核酸増幅反応を実施して、第1の非固定化核酸増幅産物を生成すること、
c.1種以上の固定化増幅プライマーを使用して第1の非固定化核酸増幅産物をさらに増幅して、固定化された第2の核酸増幅産物を生成すること、
d.ii.液体体積及び第1の非固定化増幅産物を除去し、及び固定化された第2の核酸増幅産物にハイブリダイズするプライマーを有する新しい液体体積と交換すること、
かつ
1.ハイブリダイズしたプライマーを直接検出すること、又は
2.ハイブリダイズしたプライマーを伸長するために、固定化された第2の増幅産物上に少なくとも1種のヌクレオチドを含む溶液を流すこと
のいずれか、並びに、
e.第2の核酸増幅産物の存在、非存在又は配列を、CMOSチップを用いて検出すること
を含む、上記方法。
【請求項2】
検出が、シリコンベースのセンサのアレイを介して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
センサが、時間的、空間的のいずれか、又はその両方で感知された信号を統合するように構成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
センサが、そこに固定化されたプライマーを含む反応によって生成されたプロトンを検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
液体体積中の非固定化増幅プライマーが、ステップCにおける増幅前に固相から放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
増幅産物の検出が、ヌクレオチドの取り込みから放出されたプロトンの検出を使用する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
検出がISFETセンサを使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
増幅産物の検出が、蛍光レポータプローブ及びその後の蛍光の測定を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の増幅産物が第1の増幅産物よりも短くなるように、固定化増幅プライマーが第1の増幅産物の内部部分を増幅する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の液体体積が2種以上の固定化増幅プライマーに曝露され、各プライマーが異なる配列を増幅する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
2種以上の固定化増幅プライマーが単一塩基によって異なり、それにより、第1の核酸増幅産物中の単一塩基バリアントを検出する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸配列のより広い集団からの核酸断片の亜集団の配列特異的増幅のための方法に関する。本発明は、所望の標的配列のみを正確に検出する。本発明の態様は、そのような方法で使用するための核酸構築物に関する。集団からの特定の核酸配列の効率的な標的化増幅及び検出のための手段を記載する。
【背景技術】
【0002】
血液及び他の生物学的試料中の病原体の同定は、敗血症を含む多くの疾患状態の有効な治療のために重要である。英国では敗血症により1時間に5人が死亡し、敗血症生存者全体の25%が永続的で人生を変えるような後遺症に苦しんでいる。細菌感染の原因物質の早期検出と同定は、敗血症の発症を予防し、治療を成功させるために不可欠である。血液媒介感染の検出及び同定の現在の方法には、血液培養及び抗生物質感受性アッセイの使用が含まれる。これらの方法は細胞の培養を含み、これは時間と費用の両方がかかる。多くの場合、細胞培養の結果が得られる前に敗血症性ショックが発生する。
【0003】
病原体由来の核酸を分析することによって試料から病原体を同定することができる、PCRなどの現在の分子検出方法の使用は、全体的な感度レベルが低いことによって制限されている。これは、大量の非標的(ヒト)核酸が存在するため、ヒト試料を分析する場合に特に問題となる。これらの非標的核酸は、標的(病原体)核酸の下流の精製及び増幅を阻害して偽陰性結果をもたらすか、又は非特異的増幅に起因して病原体核酸の偽陽性読み取り値を与える可能性がある。
【0004】
例えば、点突然変異又は他の多型に起因する複数のバリアントを有し、特定の突然変異の存在が別の突然変異と比較して異なる治療戦略をもたらし得るいくつかの抗生物質耐性遺伝子がある。したがって、これらの多型の同定が、時宜を得た費用効果の高い方法で行われることが重要である。PCR及び他の増幅反応を使用する現在の同定戦略は能力が限られており、実験室は、内部配列を解明し、多型を同定するために配列決定を用いることができるが、これは実施に時間と費用がかかる。したがって、非標的核酸と比較した標的核酸の集団の選択的増幅は、医療産業及び研究にとって大きな価値がある。
【0005】
増幅反応は、一般に、増幅される所望の配列ごとに一対の増幅プライマーに依存する。数対の非固定化プライマーを組み合わせることができるが、プライマー間のクロスハイブリダイゼーションのために、多数のプライマー対の組合せは一般に実行可能ではない。したがって、マルチプレックスPCRは、一般に、別々の溶液体積で別々のプライマーを使用して行われ、大量の試料を必要とする。本発明は、単一の試料体積内の複数の異なるプライマーの配列選択的増幅を可能にする、増幅反応の改善を記載する。
【0006】
油エマルジョン中の水泡が水泡あたり平均1つ未満の鋳型分子を含むように個々の鋳型を希釈する、エマルジョンPCRのための方法も開示されている。単一の固定化プライマーを有するビーズを含めることができ、第2のプライマーは溶液中にある。したがって、増幅は2つのプライマーの混合物を使用して実施され、その1つは固定化され、もう1つは溶液中にある。しかしながら、これは、第1の増幅産物がさらに増幅される本明細書に記載の方法とは対照的に、反応体積当たり単一の増幅産物しか与えない。
【0007】
例えばIlluminaのクラスタベースの架橋増幅などの、両方のプライマーが固定化される増幅方法も公知である。そのような場合、遊離溶液中にプライマーは存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、固定化及び非固定化プライマーと標的DNA鋳型との組合せを使用して、溶液中及び表面上にDNAアンプリコンを同時に生成することができる、固相及び液相(熱サイクル又は等温)増幅反応の両方を含む二相増幅反応を提供する。アンプリコンの有無は、増幅後のエンドポイントアッセイ又はリアルタイムで検出することができる。この二相アプローチは、固体、すなわち表面ベースの増幅と液相増幅の両方を含むため、エマルジョンPCRを含む最新の技術水準とは異なる。
【0009】
核酸試料は、1つ以上の非固定化プライマーを使用して増幅することができる。この液相で生成されたDNA、及び標的DNA鋳型は、固相でのさらなる反応のための鋳型としても機能するか、又はその後に機能することができ、それによって1つ以上の固定化プライマーがDNA増幅反応の一部として液相鋳型と相互作用する。異なる配列のプライマーを既知の位置に固定化し、位置を識別することができる検出システムを使用する(例えば、CMOS ICチップ上のISFET又はアレイベースの蛍光/光学イメージングシステムを使用する)ことによって、読み出しはシステムにさらなる識別力を提供する。
【0010】
ここで、核酸配列のより広い集団からの核酸断片の亜集団の多重配列特異的増幅を達成するための新規方法を提案する。
【0011】
以下を含む、核酸配列の増幅及び分析のための方法を含む方法を説明する、
a.液体体積が、核酸試料、2つ以上の非固定化増幅プライマー及び核酸増幅のための試薬を含み、固体支持体が1つ以上の固定化増幅プライマーを有する、固体支持体と接触する液体体積を有するシステムを取ること、
b.非固定化増幅プライマーを使用して核酸増幅反応を実施して、第1の非固定化核酸増幅産物を生成すること、
c.1つ以上の固定化増幅プライマーを使用して第1の非固定化核酸増幅産物をさらに増幅して、固定化された第2の核酸増幅産物を生成すること、
d.i.固定化された第2の核酸増幅産物の位置で生成された局在化信号をリアルタイムで調べること、又は
ii.液体体積及び第1の非固定化増幅産物を除去し、固定化された第2の核酸増幅産物にハイブリダイズするプライマーを有する新しい液体体積と交換すること
のいずれか、及び
1.ハイブリダイズしたプライマーを直接検出すること、又は
2.ハイブリダイズしたプライマーを伸長するために、固定化された第2の増幅産物上に少なくとも1種のヌクレオチドを含む溶液を流すこと
のいずれか、並びに、
e.第2の核酸増幅産物の存在、非存在又は配列を検出すること。
【0012】
液体体積中の非固定化増幅プライマーが増幅前に固相から放出される方法を実施することができる。非固定化プライマーを使用する核酸増幅反応は、一対又は複数対の非固定化プライマーを使用することができる。任意の段階の核酸増幅は、等温であり得るか、又は熱サイクリングによって行うことができる。
【0013】
この方法によれば、第2の核酸増幅産物にハイブリダイズしたプライマーを蛍光標識し、その後の蛍光の測定を達成することができる。あるいは、増幅産物の検出が、例えばISFETセンサを介したヌクレオチド取り込みから放出されたプロトンの検出を使用する方法を実施することができる。
【0014】
この方法は、第1及び第2の増幅産物が、同じ核酸配列を有する増幅プライマーを使用して得られるように実施することができる。
【0015】
この方法は、第2の増幅産物が第1の増幅産物よりも短くなるように、第1の増幅産物の内部部分を増幅する固定化増幅プライマーをさらに含み得る。
【0016】
この方法は、同じ第1の液体体積を2つ以上の固定化増幅プライマーに曝露することをさらに含み得、各プライマーは異なる配列を増幅する。2つ以上の固定化増幅プライマーは単一塩基によって異なり得、それにより、第1の核酸増幅プロセスにおいて単一塩基バリアントを検出する。
【0017】
この方法の固定化プライマーは、オープンマイクロアレイ上又は別々のウェル内に存在し得る。別々のウェルを同じ試薬体積に同時に曝露することができる。ウェルが異なる配列の固定化プライマーを含む場合、異なるアンプリコンを異なるウェルで生成することができ、したがって単一の液体体積内での多重増幅が可能になる。
【0018】
本発明のなおさらなる態様は、固体支持体と接触する液体体積を含む核酸配列の増幅及び検出のためのシステムを提供し、液体体積は、核酸試料、2つ以上の非固定化増幅プライマー及び核酸増幅のための試薬を含み、固体支持体は、1つ以上の固定化増幅プライマーを有し、システムは、増幅産物を検出するためのセンサを含む。
【0019】
増幅産物は、光学的又は電気的に検出することができる。光学的に検出するには、増幅産物を蛍光マーカで標識する必要があり、次いで、光学レジメンによってマーカを検出することができる。
【0020】
光出力又は電気出力のいずれが検出されるかにかかわらず、感知は、電界効果トランジスタ(FET)などのシリコンベースのセンサのアレイを介して実施することができる。選択されるFETは、ISFETを含むがこれに限定されない任意の適切なCMOSチップであり得る。センサは、存在する増幅産物の有無、又は場合によっては量子を識別するために、時間的に、又は空間的に、又はその両方で感知された信号を統合するように構成される。光学アレイのいくつかの展開とは異なり、それらは出力を撮像するように構成されていない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】単一局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)を示す概略図。
図2】複数局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)を示す概略図。
図3】ランオフの実行を示す概略図。チップ上の流動機能を必要とするオープンシステムで行われる。増幅反応中、液相からの産物アンプリコンは固相プライマー上に着地し、チップ表面に伸長したアンプリコンのフォレストを形成するように伸長する。増幅後、増幅産物と試薬を洗い流して、チップ表面に一本鎖アンプリコンを残す。ランオフプライマーと酵素をチップ上にロードし、短いハイブリダイゼーション工程の後、4つのヌクレオチド全てを一緒に流入し、伸長したオリゴを有するそれらのISFET上にプロトンのバーストを作り出す。このプロトンバーストは、最小限のデータ処理で非常に明確に見られる。
図4図4は、ランオフワークフロー及びそこからのデータを示す。最初の横列はアッセイの増幅段階を表し、チップ表面に伸長アンプリコンのクラスタを生成する。これに続いて、例えば熱を使用するデハイブリダイゼーション工程を行って、液相中に生成物がない状態でチップ表面に一本鎖アンプリコンを生成する。ランオフプライマーと酵素のハイブリダイゼーションに続いて、4つのヌクレオチド全てがチップを横切って流れ、特異的に伸長されたISFET上で信号が生成される。
図5図5は、3つの標的鋳型についてのPCR後に生成されたランオフ信号を示すサンプルISFETデータを示す。示されているデータは、関連する標的の特異的増幅後の大腸菌(E.coli)(80塩基産物、したがって最大60塩基のランオフ)、エンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis)及びセラチア・マルセッセンス(S.marcescens)に関するものである。データは変更されておらず、全てのISFETが示されている。
図6図6は、3つのアンカードプライマー及び陽性鋳型対照をスポットした多重化チップを示す。Ef鋳型を用いたPCR、続いてランオフ。ヒートマップは、ヌクレオチド流の約15秒後に測定されたISFET電圧を示す。ISFETはスポッティングパターンに一致していることがわかり、Efと陽性対照の両方に対応している。右側のトレースは、各ISFETグループに対するISFET応答の例を示す。
図7図7は、配列決定の実行を示す。4つのヌクレオチド全てがランオフのために添加されるのではなく、ヌクレオチドが連続的に添加される。チップ上の流動機能を必要とするオープンシステムで行われる。増幅反応中、液相からの産物アンプリコンは固相プライマー上に着地し、チップ表面に伸長したアンプリコンのフォレストを形成するように伸長する。増幅後、増幅産物と試薬を洗い流して、チップ表面に一本鎖アンプリコンを残す。配列決定プライマーと酵素をチップ上にロードし、短いハイブリダイゼーション工程の後、4つのヌクレオチド全てを個別に流入し、増幅産物と正しい鋳型塩基を有するISFET上にプロトンのバーストを作り出す。一塩基解像度を達成することができる。
図8図8は、配列決定ワークフロー及びそこからのデータを示す。最初の横列はアッセイの増幅段階を表し、チップ表面に伸長アンプリコンのクラスタを生成する。これに続いて、例えば熱を使用するデハイブリダイゼーション工程を行って、液相中に生成物がない状態でチップ表面に一本鎖アンプリコンを生成する。ランオフプライマーと酵素のハイブリダイゼーションに続いて、4つのヌクレオチド全てが個別にチップを横切って流れ、ヌクレオチドが組み込まれ、増幅産物が生成された場所に対応するISFET上で信号が生成される。
図9図9は、リアルタイム検出ワークフローを示す。チップ増幅後の流体の流れがない、又は流体の流れが最小限のプラットフォーム上で行うことができる。反応は、永続的に密閉された1つ又は複数の反応チャンバ内で行われ得る。増幅反応中、液相からの産物アンプリコンは固相オリゴに着地し、特定のオリゴを修飾及び伸長する。低緩衝の密閉システムでは、増幅反応の各サイクルの伸長段階の間に固相近くでプロトンが生成される。液相中で有意に過剰なフォワードプライマーを与えるために非対称性を推し進めると、各サイクルでプロトンの「ミニランオフ」バーストが効果的に生成され、これは後のサイクルで検出可能になるはずである。増幅反応の開始時のプライマーの非対称性の代替として、増幅反応中又は設定された時点でさらなるプライマーを放出又は添加することができる。増幅反応は、pH信号のリアルタイム検出を可能にするために低緩衝液中で行われる。
図10図10は、リアルタイム検出からのデータを示す。ブロック内に複数のアンカードプライマーがスポットされたチップ、6チャンバガスケット(3つのチャンバが流体密封されている)を用いたPCR(3:1の非対称)、単一チャンバを有するフローステーションでのランオフ。液相は、反応が進行していたことを示すリアルタイムpH信号を示す。増幅の確認として、PCR後、アンプリコンの遠位端を標的とする蛍光標識でチップをプローブすると、PCR反応中にアンカードプライマーが伸長したことを示す。
図11】例1のISFETからの平均デルタ信号を示す。
図12図12は、例1のアンカードプライマー標的陽性についての全てのISFETからのデルタ信号を示す。
図13図13は、例1のアンカードプライマー標的陰性についての全てのISFETからのデルタ信号を示す。
図14図14は、例1のアンカードプライマー対照についての全てのISFETからのデルタ信号を示す。
図15図15は、例1の陽性プライマー、陰性プライマー及び対照プライマーについての平均ISFET信号の結果を示す。
図16図16は、例1のセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)のPCR後に液相アンプリコンが生成されたことを示すゲル電気泳動画像である。
図17図17は、例1のSensospot蛍光画像を示す。
図18図18は、例2のISFETからの平均デルタ信号を示す。
図19図19は、例2のアンカードプライマー標的1~4陽性についてのデルタ信号を示す。
図20図20は、例2のアンカードプライマー陰性についての全てのISFETからのデルタ信号を示す。
図21図21は、例2のアンカードプライマー対照についての全てのISFETからのデルタ信号を示す。
図22図22は、例2の陽性、陰性及び対照についての平均ISFET信号の結果を示す。
図23図23は、例2のゲル電気泳動画像である。
図24図24は、例2のSensospot蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同じ反応体積から異なる配列の読み出しを生成する機能を備えたシステムを説明する。
【0023】
手短に言えば、このシステムは、固相上の固定化プライマーの存在下で液相(PCR又は等温)増幅反応が起こり、それが増幅反応産物の生成にさらに関与する二相増幅反応を含む。液相(PCR又は等温)増幅反応は、1つ以上のプライマー及び標的核酸鋳型を使用して、溶液中の核酸増幅産物を生成することができ、十分な産物が生成されると、対応する信号がシステムによって検出される。この液相で生成された核酸増幅産物、及び標的核酸鋳型は、固相でのさらなる反応のための鋳型としても機能するか、又はその後に機能することができ、それによって1つ以上の固定化プライマーが増幅反応の一部として液相鋳型と相互作用し、その後システムによって検出可能な核酸配列を生成する。プライマーを既知の位置に固定化し、位置を識別することができる検出システムを使用する(例えば、CMOS ICチップ上のISFET又はアレイ型光学イメージングシステムを使用する)ことによって、読み出しは、同じデバイスにおける多くのアンプリコンの選択的増幅及び検出を可能にする。
【0024】
増幅反応は、固相に固定化された1つ以上のさらなるプライマーの存在下に液相中で行われる。固定化プライマーは、1つ以上の液相プライマーと同じ配列であるか、又は液相で生成された核酸鋳型の内部配列に対応することができる。前者は、同じ反応成分から第2の呼び出しを行うことを可能にし、後者は、正しい増幅反応産物が生成されたことの確認及び信頼性の向上を追加し、及び/又は標的鋳型の内部配列に関するさらなる情報を与える第2の呼び出しを可能にする。
【0025】
本明細書に記載の検出モードは、ISFET CMOS技術を使用することができるが、既存の核酸増幅反応及びマイクロアレイ法、並びに液相反応と固相反応の両方のリアルタイム検出を統合するためのカスタマイズされたシステムにも適用可能である。ISFET CMOSの冗長性の可能性は、各アッセイについてかなりの数の複製物及び各標的について複数の標的遺伝子を可能にし、それにより、各標的についての複数の読み出しに依存することによってシステムの信頼性を向上させる。この設計により、各反応容器への陽性対照及び陰性対照の組み込みも容易になり、対照が必要に応じて機能するときに正しい呼び出しが行われることが保証される。
【0026】
以下は、液相及び固相増幅反応の組合せの様々な実施形態である。
【0027】
DNA増幅の読み出し
記載される固定化プライマーは、1つ以上の液相プライマーと同じか又は類似していてもよく、溶液プライマーの非存在下で行われる増幅と比較した場合に固定化プライマーから増加した信号が生成されるように増幅反応に関与し、それによって結果に信頼性を追加するが、生成される配列にさらなる情報を追加することはない。例えば、液相での非対称PCRは、液相で枯渇したプライマーを固相上に存在させることによって補償することができる。増幅反応が進行するにつれて、生成される液相生成物は固相と相互作用するように促され、液相及び固相アンプリコンの両方を生成する。固定化されたアンプリコンを検出することができる。プライマーが固定化されている複数の位置にわたってこの読み出しが存在することは、そのとき増幅された物質が試料中に確実に存在するという信頼性を高める。異なる配列を有する固定化プライマーが陽性の結果をもたらさない場合、結果の信頼性が高まる。
【0028】
内部確認を伴うDNA増幅
記載される固定化プライマーは、液相で生成されたDNA鋳型の内部配列に対応することができるため、固相で生成された信号は、液相で正しい生成物が作製されたことの明確な確認である。この確認は、液相アンプリコンがプライマーダイマー、ミスマッチプライマー又は他の非特異的反応物(例えば、意図される標的が宿主試料中の病原体である場合、宿主(ヒト)DNAと相互作用することによって生成される信号)などによって生成されていないことを実証し、さらなる配列情報が読み出しで推測されるという点で、融解曲線分析及び電気泳動ゲルイメージングなどの標準的な確認試験に比べて有意な利点を与える。
内部確認信号は、融解曲線分析、電気泳動ゲルイメージングなどの標準的な実験室確認手順に類似する。
【0029】
標的鋳型中の内部配列に対応する固定化プライマーを使用することにより、システムにさらなる特異性を与えることが可能になり、それにより、液相反応と固相反応との組合せは、それ自体で液相反応よりも多くの配列情報を特定し、それにより、液相単独と比較して結果の信頼性を向上させる。
【0030】
内部配列情報を用いたDNA増幅
既に特定された確認工程に加えて、液相増幅産物の異なる領域に対応する複数の固定化プライマーを存在させる可能性も利用可能であり、その結果、単に正しい生成物が液相で作製されたことを確認することに加えて、1つ以上を使用して内部情報を提供することができる。
【0031】
これは、増幅産物からの複数の内部プライマーの単純な形態をとることができ、それぞれが複数の配列アラインメントを提供することによって推測結果に信頼性を追加するか、又はより高度なバージョンでは、点突然変異及び他の多型に対応する標的遺伝子内の内部変異を同定するために使用することができる。例えば、点突然変異又は他の多型に起因する複数のバリアントを有し、特定の突然変異の存在が別の突然変異と比較して異なる治療戦略をもたらし得るいくつかの抗生物質耐性遺伝子がある。したがって、これらの多型の同定が、時宜を得た費用効果の高い方法で行われることが重要である。PCR及び他の増幅反応を使用する現在の同定戦略は能力が限られており、実験室は、内部配列を解明し、多型を同定するために配列決定を用いることができるが、これは実施に時間と費用がかかり、しばしば行われない。
【0032】
この実施形態では、単一のプライマー対を液相で使用して遺伝子の全てのバリアントを増幅することができ、点突然変異又は多型に対応する1つ以上の固定化プライマーを固相で使用して、1つ以上のバリアントを同定することができる。内部固定化プライマーのそれぞれの組合せは、増幅された遺伝子の全体的な配列に関する豊富な情報をユーザに提供し、臨床的決定がより容易かつより迅速に行われるようにすることができる。
【0033】
ランオフ(複数のランオフを含む)
増幅反応は、一般に高イオン強度の緩衝液中で行われる。組み込まれたヌクレオチドのプロトン放出を測定する配列決定システムでは、増幅緩衝液を低緩衝能の緩衝液に置き換えると、増幅産物を検出することができる。あるいは、増幅産物は、蛍光標識プライマーを使用して、又は蛍光標識ヌクレオチドの使用を介して検出することができる。
【0034】
ランオフは、チップ上の流動機能を必要とするオープンシステムで行われる。増幅反応中、液相からの産物アンプリコンは固相プライマー上に着地し、チップ表面に伸長したアンプリコンのフォレストを形成するように伸長する。増幅後、増幅産物と試薬を洗い流して、チップ表面に一本鎖アンプリコンを残す。ランオフプライマーと酵素をチップ上にロードし、短いハイブリダイゼーション工程の後、4つのヌクレオチド全てを一緒に流入し、伸長したオリゴを有するそれらのISFET上にプロトンのバーストを作り出す。このプロトンバーストは、最小限のデータ処理で非常に明確に見られる。
【0035】
電子/プロトン検出を実施するために、液相反応と固相反応の両方で前述の増幅段階の終了時に、液相成分をカートリッジから洗い流し、低緩衝能の溶液と交換する。次に、プライマー及び酵素が順番に又は組み合わされてこれに続き、その後にヌクレオチドの流れが続き、ヌクレオチドが組み込まれるとプロトンが放出され、検出プラットフォーム上の対応する信号、例えば関連するISFETのmV変化が生じる。ランオフに使用されるプライマーは、先の増幅反応中に付加されたジェネリック配列を含む、増幅された鋳型内の任意の位置に対応することができる。溶液増幅産物の内部にアンプリコン特異的プライマーを使用すると、正しい物質が固相で作製されたことを確認することによって結果の信頼性が高まるが、多重化がより高くなることでシステムの複雑さを増す可能性がある。先の増幅反応でジェネリック配列が付加されている場合、液相の多重化の規模を制限し、それによって反応の効率を改善することが可能であるが、これは、ジェネリック配列のミスファイアリングの可能性があるため、読み出しの信頼性を制限し得る。
【0036】
特定の固定化プライマーの位置を知ることによって、ランオフ反応中に生成されるプロトンが、特定のプライマーが固定化されている特定のISFETセンサに信号をもたらすときに、標的の同定を決定することができる。この実施形態では、各アッセイ標的について複数の複製物が可能であり、多重化の規模は、空間的分離、デバイスあたりのウェル及びセンサの数、並びにバイオインフォマティクスの課題によって制限される。
【0037】
システムは、各実行の間のデハイブリダイゼーション工程の有無にかかわらず、単一のランオフ反応又は複数のランオフ反応を利用することができる。内部配列の信頼性を高めることができるように、さらなるランオフを使用して先の信号を調べることができる。例えば、ジェネリック配列が先の増幅反応で使用された場合、最初のランオフでは、そのジェネリック配列を使用していずれのアッセイが信号を生成したかを特定し、その後のランオフでは、それらの特定のアッセイに対応する特定のプライマーを使用して、正しい産物が作製されたことを確認することができる。
【0038】
異なる配列のプライマーを固体支持体上の異なる位置に固定することができるので、複数の標的配列を並行して分析することができる。
【0039】
配列情報(一度に単一又は複数の塩基)
前述の増幅段階の終了時に、ランオフワークフローと同様に、液相成分をカートリッジから洗い流し、低緩衝の溶液と交換することができる。次に、プライマー及び酵素が順番に又は組み合わされてこれに続き、その後に個々のヌクレオチド又は2つ以上のヌクレオチドの組合せの流れが続き、正しい相補的ヌクレオチドがチップを横切って流れ、組み込まれたときにプロトンの放出が生じる。このワークフローは、プライマーとその対応する鋳型とのアラインメントのみに依存するのではなく、配列情報を与えるという点で、全ての実施形態の中で最も豊富な情報を提供する。このワークフローは、正しいアラインメントが行われ、正しい生成物が固相上に作製されたことを確認するだけでなく、推論又は直接同定のいずれかによって内部配列も示す。ランオフの実施形態で論じたのと同様のアプローチをここで使用することができ、さらなる情報を提供するために複数の実行が可能であり、また使用される1つ以上のヌクレオチドのこのアプローチとランオフを組み合わせたワークフローも可能である。
【0040】
リアルタイム検出
固定化プライマーの伸長を測定することによって、増幅プロセスをリアルタイムで検出することができる。反応は、永続的に密閉された1つ又は複数の反応チャンバ内で行われ得る。増幅反応中、液相からの産物アンプリコンは固相オリゴに着地し、特定のオリゴを修飾及び伸長する。低緩衝の密閉システムでは、増幅反応の各サイクルの伸長段階の間に固相近くでプロトンが生成され、これらを検出することができる。
【0041】
増幅は非対称であり得、溶液中の2つのプライマーが異なる濃度で存在し、それらに対して伸長する相補的プライマーがないため、大部分が一本鎖である増幅産物を生じる。液相中で有意に過剰なフォワードプライマーを与えるために非対称性を推し進めると、各サイクルでプロトンの「ミニランオフ」バーストが効果的に生成され、これは後のサイクルで検出可能になるはずである。増幅反応の開始時のプライマーの非対称性の代替として、増幅反応中又は設定された時点でさらなるプライマーを放出又は添加することができる。増幅反応は、pH信号のリアルタイム検出を可能にするために低緩衝液中で行われる。
【0042】
ソース核酸は、ゲノムポリヌクレオチドであり得る。ソース材料は、真核生物、原核生物、又は古細菌であり得る。1つ以上のソース材料が提供され得る。ソース核酸は、ゲノムの断片、例えば単一の染色体又は単一のゲノム遺伝子座(例えば、対立遺伝子多型の迅速な配列決定のため)であり得る。特定の例では、増幅は、試料内の病原性物質に特異的であり得る。例えば、増幅は、ヒト試料内に存在する細菌又はウイルス核酸を選択し得る。鋳型は、DNA、RNA、又はそれらのcDNAコピーであり得る。
【0043】
生物学的材料は、特許請求される増幅反応を受ける前に溶液中で増幅され得る。したがって、材料は、本発明が実施される前に配列に基づく増幅の工程を既に経ていてもよい。あるいは、試料を、試料中の全ての鎖の一方又は両方の末端に共通のユニバーサル配列を付加するように処理し得る。ユニバーサル配列は、天然には存在し得ない可能性のある共通のプライマーにハイブリダイズするためのユニバーサル配列として使用することができる。
【0044】
本明細書に記載の本発明は、4つ以上のレベルの増幅特異性を可能にすることができる。最初の増幅は溶液中で行うことができる。第2の増幅は、非固定化プライマーを使用して行うことができる。第3の増幅は、第2の増幅プライマーとは異なる配列の固定化プライマーを使用して行うことができる。アンプリコンの存在は、固定化プライマーによって生成されたアンプリコンに特異的なプライマーを使用して検出することができる。したがって、4つのレベルの増幅特異性を使用することができ、元の配列が試料中に絶対的に確実に存在する場合にのみ最終アンプリコンが検出されることを保証する。したがって、密接に関連しているが望ましくない配列の検出からの偽陽性結果を排除することができる。
【0045】
表面への核酸の固定化は従来通りである。共有結合又は非共有結合固定化の任意の方法を使用し得る。固定化は、理想的には、核酸鎖の分離を引き起こす温度までの複数のサイクルの熱サイクリングに対して安定である。固定化の特定の方法には、UV誘導架橋又はアミド結合もしくはホスホロチオアート結合の形成による固定化が含まれる。
【実施例
【0046】
単一標的領域でのセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)(販売元:NCTC、カタログ番号27137)の単一局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)並びに複数の標的領域でのシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(販売元:ATCC、カタログ番号:26189)の複数局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)について実験データを収集した。
【0047】
単一LAPAD及び複数LAPADの両方の概略図を図1及び図2に示す。
【0048】
例1:単一局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)
単一の標的領域でのセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)の増幅及び検出。増幅された鋳型DNAの3’末端にある標的領域は、相補的なアンカードプライマー標的にハイブリダイズした。増幅プロセス中に、このアンカードプライマー標的が伸長され、次の段階で、伸長中に同じ標的領域が検出された。使用したプライマー/オリゴヌクレオチド配列を表1に示す。
【表1】

【0049】
例2:複数局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)
複数の標的領域でのシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)の増幅及び検出。
増幅された鋳型DNAの3’末端から数ヌクレオチド塩基後にある標的領域1は、相補的なアンカードプライマー標的1にハイブリダイズした。標的領域1から数塩基後にあり、増幅された鋳型DNAの5’末端に向かう標的領域2は、相補的なアンカードプライマー標的2にハイブリダイズした。標的領域2から数塩基後にあり、増幅された鋳型DNAの5’末端に向かう標的領域3は、相補的なアンカードプライマー標的3にハイブリダイズした。標的領域3から数塩基後にあり、増幅された鋳型DNAの5’末端に向かう標的領域4は、相補的なアンカードプライマー標的4にハイブリダイズした。増幅プロセス中に、ハイブリダイズしたDNA鋳型を有するこれら4つのアンカードプライマー標的が伸長され、次の段階で、伸長中に同じ標的領域が検出された。使用したプライマー/オリゴヌクレオチド配列を表1に示す。
【0050】
実験方法
ISFETからなる、SU-8ウェルに封入された「004」Ta CMOSチップを組み込んだチッププラットフォームを、UVベースの架橋表面化学を使用してプライマーで固定した。チップ表面で反応が起こるための流体工学を含むように、マニホールドをチップ表面に取り付けた。
【0051】
検出用のDNAを生成するためにPCRを実施し、PCR試薬の配合、最終容量50μlを表2に示す。使用した熱サイクリング条件を表3に示す。
【表2】

【表3】
【0052】
PCR後、チップを洗浄緩衝液(0.06×食塩水-クエン酸ナトリウム、0.06%Tween20)で洗浄し、続いてDNAを20mM NaOHで5分間化学的にデハイブリダイズし、次いで再び洗浄緩衝液で洗浄した。
【0053】
次に、ランオフプライマーミックス(表1に示す配列)をチップ表面に添加した。3.33μMの蛍光標識(Cy3)プライマーをアニーリング緩衝液(5mM酢酸マグネシウム、150mM塩化ナトリウム、20mMトリスpH7.5、0.01%Tween20)に添加した。
次に、ランオフプライマーミックスを含むチップを95°Cで2分間、続いて58°Cで5分間加熱し、室温で15分間インキュベートした。次に、チップを酵素ローディング緩衝液(1xThermopol(登録商標)、0.06%Tween20)で洗浄した。
【0054】
次に、酵素混合物をチップの表面に添加し、この酵素混合物は、25単位/μLのカスタムメイドのBst Large Fragment DNAポリメラーゼを酵素ローディング緩衝液に添加することによって作製した。次に、チップを室温で5分間インキュベートした。
【0055】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の組み込みを、dNTPをチップ表面に流すことを可能にするカスタムメイドのフローシステムの使用によって達成した。それぞれ12.5μMのデオキシアデノシン三リン酸、デオキシチミジン三リン酸、デオキシグアノシン三リン酸及びデオキシシチジン三リン酸を、非炭酸RMD緩衝液(10mM塩化マグネシウム、25mM塩化ナトリウム、0.025%Tergitol)に添加した。dNTP混合物のpHをpH8に調整し、流体を窒素ガス下に保つことによって維持した。
【0056】
ISFETセンサ検出
生のISFETセンサ電圧出力データ及びアンカードプライマースポッティングマップを、カスタムデータ分析パイプライン(Galaxy Runoffパイプラインv1.3.15)によって一緒に処理した。ISFETからの電圧信号ピーク高さを検出し、アンカードプライマーISFET電圧信号ピーク高さを、隣接する上流のブランクISFETのピーク高さから差し引いた。これは、検出をマスクし得る流体流からのノイズを含むシステムノイズを除去するために行う。全ての特定のアンカードプライマーセンサから出力されたこのデルタISFETセンサ電圧を平均して、信号検出を決定した。
【0057】
E-gel電気泳動分析
既製のE-gel(臭化エチジウムで染色した48ウェル2%アガロースゲル)を液相PCRの定性分析に使用した。PCR後にチップ表面から試料を収集し、1μLの試料を1×E-gelローディング色素に添加した後、E-gelウェルにロードした。アンプリコンのサイズ比較のために、ラダーもロードした。DNAアンプリコンがそのサイズに従って移動するための電場を提供するE-gelベース上で、ゲルを10分間泳動させた。
【0058】
Sensospot蛍光イメージング
実行後、チップを緑色光の下でSensospot蛍光スキャナでスキャンして、オンチップで生成されたアンプリコンにハイブリダイズしたであろうCy3ランオフプライマーを照射した。蛍光強度に基づいて、オンチップ増幅を定性的に決定することができる。
【0059】
結果
両方のアッセイの検出を、デルタISFETセンサ電圧出力によって定量的に確立した。液相PCR増幅をE-gel分析によって定性的に評価し、チップ表面増幅をSensospot蛍光イメージングによって評価した。
【0060】
例1:単一局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)
標的:セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)
チップID:NM-248-0214
【0061】
例1のアンカードプライマー配列を表4に示す。
【表4】
【0062】
ISFETからの平均デルタ信号を図11に示す。
【0063】
アンカードプライマー標的陽性についての全てのISFETからのデルタ信号を図12に示す。
【0064】
アンカードプライマー標的陰性についての全てのISFETからのデルタ信号を図13に示す。
【0065】
アンカードプライマー対照についての全てのISFETからのデルタ信号を図14に示す。
【0066】
陽性プライマー、陰性プライマー及び対照プライマーについての平均ISFET信号の結果を図15に示す。陽性アンカードプライマーNH2_iSp18_SmRについて平均36.2dmVのISFET信号が検出され、これは、対照アンカードプライマーNH2_ddl_5’+T15についての23.4dmVの平均ISFET信号よりもさらに大きかった。
【0067】
ゲル電気泳動画像に見られるように、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)のPCR後に液相アンプリコンが生成された(図16)。対照アンカードプライマーと共に、生成されたオンチップアンプリコンは、Sensospot蛍光画像の陽性アンカードプライマーNH2-iSp18_SmRについても見ることができる(図17)。
【0068】
単一の標的領域でのセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)の増幅及び検出が実証された。対照アンカードプライマーよりもさらに大きい有意なデルタISFET電圧信号が検出された。
【0069】
例2:複数局在化アンカードプライマー増幅及び検出(LAPAD)
標的:シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)
チップID:NM-248-0172
例2のアンカードプライマー配列を表5に示す。
【表5】
【0070】
例2のISFETからの平均デルタ信号を図18に示す。
【0071】
アンカードプライマー標的1~4陽性についての全てのISFETからのデルタ信号を図19に示す。
【0072】
アンカードプライマー陰性についての全てのISFETからのデルタ信号を図20に示す。
【0073】
アンカードプライマー対照についての全てのISFETからのデルタ信号を図21に示す。
【0074】
陽性プライマー、陰性プライマー及び対照プライマーについての平均ISFET信号の結果を図22に示す。1.5~4.4dmVのISFET信号が、4つの陽性アンカードプライマーについて検出された。これは、以前の信号強度及び34.6dmVであった対照アンカードプライマーの平均ISFET信号よりもはるかに低い。
【0075】
ゲル電気泳動画像に見られるように、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のPCR後に液相アンプリコンが生成された(図23)。生成されたオンチップアンプリコンは、Sensospot蛍光画像の陽性アンカードプライマーでは見られない(図24)。しかしながら、対照アンカードプライマーは見ることができる。
【0076】
複数の標的領域でのシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)の増幅及び検出が実証された。
本発明には以下の好ましい態様が含まれる。
(1)核酸配列の増幅及び分析のための方法であって、
a.液体体積が、核酸試料、2種以上の非固定化増幅プライマー及び核酸増幅のための試薬を含み、固体支持体が1種以上の固定化増幅プライマーを有する、固体支持体と接触する液体体積を有するシステムを取ること、
b.非固定化増幅プライマーを使用して核酸増幅反応を実施して、第1の非固定化核酸増幅産物を生成すること、
c.1種以上の固定化増幅プライマーを使用して第1の非固定化核酸増幅産物をさらに増幅して、固定化された第2の核酸増幅産物を生成すること、
d.i.固定化された第2の核酸増幅産物の位置で生成された局在化信号をリアルタイムで調べること、又は
ii.液体体積及び第1の非固定化増幅産物を除去し、かつ固定化された第2の核酸増幅産物にハイブリダイズするプライマーを有する新しい液体体積と交換すること、
のいずれか、及び
1.ハイブリダイズしたプライマーを直接検出すること、又は
2.ハイブリダイズしたプライマーを伸長するために、固定化された第2の増幅産物上に少なくとも1種のヌクレオチドを含む溶液を流すこと
のいずれか、並びに、
e.第2の核酸増幅産物の存在、非存在又は配列を検出すること
を含む、上記方法。
(2)液体体積中の非固定化増幅プライマーが、増幅前に固相から放出される、(1)に記載の方法。
(3)非固定化プライマーを使用する核酸増幅反応が、二対以上の非固定化プライマーを使用する、請求項1又は2に記載の方法。
(4)増幅が熱サイクリングによって行われる、(2)に記載の方法。
(5)非固定化プライマーを使用する核酸増幅反応が等温増幅である、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(6)第2の増幅産物がさらなる等温増幅によって生成される、(5)に記載の方法。
(7)第2の増幅産物が熱サイクリングによって生成される、(5)に記載の方法。
(8)固定化された第2の核酸増幅産物の増幅が、リアルタイムで生成された局在化信号を調べることによって行われる、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)溶液中の2つのプライマーが、非対称増幅をもたらすために異なる濃度で存在する、(8)に記載の方法。
(10)第2の核酸増幅産物にハイブリダイズしたプライマーが蛍光標識されている、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(11)増幅産物の検出が、ヌクレオチドの取り込みから放出されたプロトンの検出を使用する、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(12)検出がISFETセンサを使用する、(11)に記載の方法。
(13)増幅産物の検出が、蛍光レポータプローブ及びその後の蛍光の測定を含む、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(14)第1及び第2の増幅産物が、同じ核酸配列を有する増幅プライマーを使用して得られる、(1)~(13)のいずれかに記載の方法。
(15)第2の増幅産物が第1の増幅産物よりも短くなるように、固定化増幅プライマーが第1の増幅産物の内部部分を増幅する、(1)~(13)のいずれかに記載の方法。
(16)第1の液体体積が2種以上の固定化増幅プライマーに曝露され、各プライマーが異なる配列を増幅する、(1)~(15)のいずれかに記載の方法。
(17)2種以上の固定化増幅プライマーが単一塩基によって異なり、それにより、第1の核酸増幅産物中の単一塩基バリアントを検出する、(16)に記載の方法。
(18)固定化プライマーがオープンマイクロアレイ上にある、(16)又は(17)に記載の方法。
(19)固定化プライマーが別個のウェルにある、(16)又は(17)に記載の方法。
(20)固体支持体と接触する液体体積を含む核酸配列の増幅及び検出のためのシステムであって、液体体積が核酸試料、1種以上の非固定化増幅プライマー及び核酸増幅のための試薬を含み、並びに固体支持体が1種以上の固定化増幅プライマーを有し、システムが増幅産物を検出するためのセンサを含む、上記システム。
(21)センサが光学センサである、(20)に記載のシステム。
(22)センサが電気センサである、(20)に記載のシステム。
(23)センサがCMOSセンサである、(20)0又は(22)に記載のシステム。
(24)複数のISFETセンサ及び2種以上の固定化プライマーを含み、各ISFETセンサが単一の固定化プライマーを含む、(23)に記載のシステム。
【配列表フリーテキスト】
【0077】
配列表3 <223>1位のCは、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)に結合しており、スペーサ18は、6個の炭素を有するアミノ修飾因子(5AmMC6)に結合している。
配列表4 <223>1位のTは、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)に結合しており、スペーサ18は、6個の炭素を有するアミノ修飾因子(5AmMC6)に結合している。
配列表5 <223>1位のGは、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)に結合しており、スペーサ18は、6個の炭素を有するアミノ修飾因子(5AmMC6)に結合している。
配列表6 <223>1位のGは、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)に結合しており、スペーサ18は、6個の炭素を有するアミノ修飾因子(5AmMC6)に結合している。
配列表7 <223>1位のTは、6個の炭素を有するアミノ修飾因子(5AmMC6)に結合している。
配列表8 <223>1位のTは、蛍光色素(5Cy3)に結合している。
配列表11 <223>20位のCと21位のAとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表12 <223>20位のCと21位のGとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表13 <223>20位のCと21位のCとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表14 <223>20位のCと21位のGとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表15 <223>20位のCと21位のAとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表16 <223>20位のCと21位のGとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表17 <223>20位のCと21位のTとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表18 <223>20位のCと21位のAとの間は、18原子のヘキサエチレングリコールスペーサであるスペーサ18(iSp18)である。
配列表20 <223>1位のCは、蛍光色素(5Cy3)に結合している。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図20
図21
図22
図23
図24
【配列表】
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