(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】金属間シール形成方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
F16J15/08 A
F16J15/08 F
(21)【出願番号】P 2021574826
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2020067051
(87)【国際公開番号】W WO2020254543
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-12
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ラングトリー、 アンソニー ビビアン
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-142330(JP,A)
【文献】特開2018-187685(JP,A)
【文献】実開昭54-087350(JP,U)
【文献】実開昭58-011170(JP,U)
【文献】実開昭61-036763(JP,U)
【文献】実開昭57-177964(JP,U)
【文献】米国特許第03147016(US,A)
【文献】米国特許第03903931(US,A)
【文献】米国特許第03546917(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状金属本体と、前記本体に内部圧力を導入するために前記本体から延びる導入管とを含む金属シールリングを用いて2つの対向する金属表面の間に金属間シールを形成する方法であって、前記金属シールリングの本体を前記金属表面の間に配置することと、前記導入管を使用して前記本体に内部圧力を導入し、前記本体を前記金属表面に当てて変形させて前記
金属間シールを形成することとを含み、前記本体は、前記
金属間シールを破壊することなく前記本体の内部圧力を解放することができるように塑性変形される、方法。
【請求項2】
前記内部圧力は、作動液などの流体を前記導入管から前記本体に押し込むことによって前記本体に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体を前記導入管から前記本体に押し込むことは、前記導入管を加締めることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内部圧力は、液体又は固体を前記導入管に導入し、前記導入管を密封し、次いで液体又は固体を気化又は昇華できるようにするか又は気化又は昇華させることによって生成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記金属シールリングの一部又は全部を溶解又は化学的に反応させることによって前記
金属間シールを解放することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属シールリングの本体は外側が金でめっきされた銅で作られ、方法は、銅を溶媒で溶解して金の層を残すことをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記内部圧力は、前記導入管の内部容積内でピストン表面を移動させることによって前記金属シールリングに導入される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ピストン表面は、ねじによって提供されるか又はねじを用いて移動可能である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記本体の内部は、隔壁によって第1及び第2のチャンバに分割され、前記隔壁は、前記導入管を用いて前記第1のチャンバに導入される内部圧力に応答して前記第2のチャンバに向かって移動し、それにより前記本体を前記対向する金属表面のそれぞれに当てて膨張させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のチャンバは、前記隔壁の移動に対抗する支柱を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記支柱は、前記隔壁に弾性復元力を与えるように弾性的に圧縮される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シールリング及び金属間シールを形成する方法に関する。詳細には、限定されるものではないが、本発明は、トカマク核融合炉内の真空チャンバなどの真空チャンバ又はピストンエンジンをシールするのに用いる金属シールリングに関する。
【背景技術】
【0002】
金属シールリングは、互いに接合されている2つの真空チャンバのフランジ付きポート間などの2つの金属表面の間に気密シール又は液密シールを提供するためにしばしば使用される。いくつかの用途において、金属シールリングは、銅又はアルミニウムなどの比較的軟らかい金属で作られている平たい円形金属ガスケットであり、ステンレス鋼などのより硬い金属で作られている金属表面の間で押しつぶされる。金属表面又は「コンフラットフランジ」にはそれぞれ、円形隆起又は「ナイフエッジ」が設けられ、ナイフエッジはガスケットのそれぞれの面に食い込み、ガスケットの金属がナイフエッジの周りに押し出され、それによって2つの金属表面の間にシールを形成する。
【0003】
コンフラットフランジ及び金属ガスケットは、例えば超高真空システムで、非常に優れたシールを形成するために使用することができるが、フランジと金属ガスケットとの慎重な位置合わせ(「嵌合」)及び高いクランプ力の必要性を含む、多くの欠点を有する。また、ガスケットの圧縮荷重が不均一であるか又は高すぎる場合、シールの品質が大幅に低下する可能性がある。
【0004】
別のタイプの金属シールリングは、金属管から形成されたOリングである、いわゆるウィルズリングである。使用中、ウィルズリングは、その断面がフランジの表面に当たって変形してシールを形成するように2つのフランジ間で圧縮される。ウィルズリングのいくつかのバージョンは、弾力性を高めるために加圧される。Helicoflex(登録商標)という名称で市販されている別のタイプのシールリングは、C形断面を有する管状の金属リングと、その弾性を高めるために金属リングの内部に挿入された螺旋ばねとを含む。しかしながら、これらのタイプの金属シールリングは、均一なシールを得るために、またシールリングの損傷を避けるために、比較的精密な合わせとクランプ力の慎重な制御を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題に対処するか又は少なくともそれらを軽減する金属シールリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、2つの対向する金属表面の間に金属間シールを形成するための金属シールリングが提供される。金属シールリングは、管状金属本体と、本体に内部圧力を導入するために本体から延びる導入管とを含む。本体は、対向する金属表面のそれぞれに当たって内部圧力下で変形してシールを形成するように構成される。
【0007】
本体は、異なるそれぞれの金属で作られた2つ以上のセクションを含む断面(例えば、径方向断面)を有することができ、各金属は、異なる延性及び/又は降伏強度を有する。
【0008】
本体は、異なるそれぞれの厚さを有する2つ以上のセクションを含む断面(例えば径方向断面)を有することができる。
【0009】
2つ以上のセクションは、本体に内部圧力を導入すると、本体の断面が優先的に軸方向に沿って膨張するように配置することができる。
【0010】
本体は、本体に内部圧力を導入すると金属表面の1つ以上とナイフエッジシールを形成するようにリングの周りに延びる1つ以上の隆起を含むことができる。
【0011】
本体は、インジウムなどの延性金属の外側層を含むことができる。
【0012】
本体は、全体的又は部分的に油圧媒体で満たされ得る。油圧媒体はシリコーンゴムであることができる。
【0013】
本体は、0.1mmから10mm、好ましくは0.2mmから2mmの厚さを有する壁を含むことができる。
【0014】
本体は、周囲圧力を300MPa以下だけ、好ましくは150MPa以下だけ上回る内部圧力を導入すると体積が少なくとも5%増加するように構成され得る。
【0015】
本体は、内部圧力を導入すると塑性変形することによって体積が増加するように構成され得る。塑性変形により、シールを破壊することなく本体の内部圧力を解放することが可能になる。
【0016】
導入管は、本体と導入管とが共に閉鎖系を形成するようにシールすることができ、それにより導入管の内部容積を減少させることによって本体に内部圧力が導入される。金属シールリングは、本体に内部圧力を導入するために導入管の内部容積内で移動可能なピストン表面を含むことができる。ピストン表面は、ねじによって提供されるか又はねじを用いて移動可能であることができる。
【0017】
金属シールリングは、本体の内部圧力を維持するためのピストンチャンバを含むことができ、ピストンチャンバは、本体及び/又は導入管と流体連通しており、本体内の油圧媒体を圧縮するように構成されたピストンを含む。
【0018】
管状金属本体は円環状(トロイダル)であることができる。
【0019】
本体の内部は、隔壁によって第1及び第2のチャンバに分割することができ、隔壁は、導入管を用いて第1のチャンバに導入される内部圧力に応答して、第2のチャンバに向かって移動し、本体を対向する金属表面のそれぞれに当てて膨張させるように構成されている。第2のチャンバは、隔壁の移動に対抗するように構成された支柱を含むことができ、好ましくは、支柱は、隔壁に弾性復元力を与えるように弾性的に圧縮可能である。
【0020】
導入管は、管状金属本体の外周壁(すなわち、管状金属本体によって形成されるリングの外周を画定する壁)から延びることができる。例えば、管状金属本体が回転軸を有する場合(例えば、管状金属本体が円環状である場合)、導入管は、管状本体が導入管よりも軸に近いように管状本体の外周壁から延びることができる。詳細には、導入管は、管状本体から外向きに、径方向(すなわち、軸に垂直でありかつ管状本体の外周壁に垂直である方向)に沿って軸から離れるように延びることができる。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、2つの対向する金属表面の間にシールが設けられる。シールは、上記の金属シールリングを含む。金属シールリングは、金属表面の少なくとも一方に形成されたチャネル内に少なくとも部分的に配置される。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、上記の金属シールリング(又は第2の態様における上記のシール)を用いて互いにシールされた2つの対向する金属表面を含む真空チャンバが提供される。金属シールリングの導入管は、対向する金属表面の少なくとも一方にあるチャネルを通って真空チャンバの外に延びることができる。
【0023】
本発明の第4の態様によれば、エンジンブロックと、上記の金属シールリング(第2の態様における上記のシール)を含むヘッドガスケットを用いてエンジンブロックにシールされたシリンダヘッドとを含むピストンエンジンが提供される。
【0024】
本発明の第5の態様によれば、上記の金属シールリングと、油圧ポンプ、好ましくは油圧ハンドポンプと、金属シールリングの導入管を油圧ポンプに接続するためのコネクタとを含むキットが提供される。
【0025】
本発明の第6の態様によれば、円環状の内部容積を有する真空チャンバを含むトカマクが提供される。真空チャンバは、複数のセグメントを含み、各セグメントは、円環状の内部容積のセクタを提供し、セクタ内にトロイダル磁場を生成するためにセグメントの周りに巻かれた1つ以上のトロイダル磁場コイルを含む。真空チャンバは、上記の金属シールリング(又は第2の態様における上記のシール)を用いてセグメントの少なくとも2つの間に形成されたシールをさらに含む。
【0026】
各セグメントは、真空チャンバから個別に取り外し可能であり、すなわち、各セグメントは、他のセグメントの取り外し又は移動を必要とせずに真空チャンバから取り外すことができる。複数のセグメントは、12個以上のセグメント、好ましくは16個のセグメントを含むことができる。
【0027】
本発明の第7の態様によれば、上記のトカマクを取り囲む外側真空チャンバを含む真空システムが提供される。外側真空チャンバは、トカマクの真空チャンバのセグメントの1つ以上を移動させることができる別の真空チャンバに接続される。
【0028】
本発明の第8の態様によれば、上記の金属シールリングを用いて2つの対向する金属表面の間に金属間シールを形成する方法が提供される。方法は、金属シールリングの本体を金属表面の間に配置することと、導入管を使用して本体に内部圧力を導入し、本体を金属表面に当てて変形させてシールを形成することとを含む。
【0029】
内部圧力は、作動液などの流体を導入管から本体に押し込むことによって本体に導入することができる。流体を導入管から本体に押し込むことは、導入管を加締めることを含むことができる。本体は、シールを破壊することなく本体の内部圧力を解放することができるように塑性変形させることができる。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、上記の態様のいずれかによる金属シールリングを含むピストンが提供される。
【0031】
本発明のさらに別の態様によれば、チャンバと、上記のさらなる態様による1つ以上のピストンとを含むプラズマ圧縮デバイスが提供される。ピストンは、チャンバと流体連通しており、プラズマ圧縮デバイスは、ピストンを用いたチャンバ内のプラズマの圧縮を可能にするように構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】2つのフランジ間にシールを提供するために使用される金属シールリングの概略斜視断面図である。
【
図2】シールを形成する前の
図1の金属シールリングの概略斜視断面図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、膨張前後の金属シールリングの本体の概略断面図である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、膨張前後の金属シールリングの本体の概略断面図である。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、膨張前後の金属シールリングの本体の概略断面図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、膨張前後の金属シールリングの本体の概略断面図である。
【
図7】トカマク核融合炉を含む真空システムの概略断面図である。
【
図8】トカマク核融合炉を含む真空システムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、断面5を有する中空の金属管から形成された本体3を含む金属シールリング1の断面を示す。図ではリング1の一部のみを示しているが、本体3は円をなして周りに延びて円環体を形成している。金属シールリング1はまた、本体5の外壁から径方向外向きに延びかつ「T型」接合部7によって本体に接合される導入管7を含む。この例では、導入管7の端部11は密封されていないが、後述するように、場合によっては、金属シールリング1内の内部圧力を維持するために密封され得る。
【0034】
金属シールリング1は、一対の合わせられた円形の金属フランジ13A、Bの間に配置される。この例では、フランジ13A~Bのそれぞれが、金属シールリング1の本体3を共に収容する一対の相補的な周方向溝又はチャネル15A~Bの一方を有する。後述するように、金属シールリング1の本体3の断面5は、フランジ13A~Bの隣接する内面の間にシールを形成するために溝15A~Bによって形成される断面17と概ね一致するように構成される。この例では、チャネル断面17及び本体3の断面5は正方形又は長方形であるが、他の形状を用いることもできる。いくつかの用途では、2つの金属フランジの一方のみに溝又はチャネル15A~Bを設けることが有益であり、これにより(シールリングがチャネル内に配置されている間に)フランジを互いに対して所定の位置にスライドさせることができる。このようなアプローチは、フランジが軸方向に(すなわち、シールリングの軸に沿って)1つにまとめられることを妨げるか又は不可能にする幾何学的制約がある場合に特に有用である。このような制約の例は、
図6及び
図7に関連して後述する。
【0035】
金属シールリング1の導入管7は、周方向チャネル13A、Bからフランジ13A~Bを通って径方向に延びる一対の相補的なチャネルによって収容され、導入管7の端部11がフランジ13A~Bの径方向最外縁を通って突出することを可能にする。径方向チャネル19A~Bの断面は、いかなる形状であることもできるが、その形状は、導入管11を所定の位置に確実に保持するために導入管11に一致することが好ましく、これは、接合部9に応力がかかるのを避けるに役立ち、導入管7が変形するのを防ぐ。
【0036】
図2は、フランジ13A~B間にシールを形成する前の金属シールリング1の一部を示す。金属シールリング1の本体3の断面5は、
図2に示すように最初は円形であり、チャネル断面17よりも小さく、フランジ13A、13Bが合わせられる前に本体3をチャネル15A、15Bの一方に容易に挿入することを可能にする。シールは、導入管7を用いて金属シールリング1の本体3に内部圧力を導入することにより形成され、内部圧力は、本体3の断面5を溝15A~Bの壁に当てて変形(例えば、膨張)させ、すなわち、本体3の外側面は、シールリング1の周囲全体にわたって溝15A~Bの壁と接触するように強制される。
【0037】
本体3を形成するために使用される金属及び合金の特性及び変形の程度に応じて、本体3は塑性変形することができ、すなわち、本体3の内部圧力が解放されると、変形は本質的に不可逆である。このプロセスは、一対の金型(ダイ)の間に管を挿入し、高圧水を用いて膨張させ、金型の対向面に一致する形状を生成する、ハイドロフォーミングとして知られる製造方法といくつかの類似点を共有している。この場合、本体3の内部圧力を維持する必要がない可能性がある。しかしながら、多くの場合、少なくともある程度は、本体3を「膨張させた」状態に保つことが好ましい可能性がある。これがシール強度を改善し、振動などの機械力が本体3をさらに変形させるのを防ぐからである。有利なことに、金属シールリング1は、いくつかの従来のシールリングとは異なり、膨張中にチャネル15A~Bの形状に適合することができ、すなわち、シールする前にチャネル15A~Bに正確に一致する必要がないので、比較的広い製造公差で製造することができる。
【0038】
代替的に、本体3の内部圧力が解放されると金属シールリング1が実質的にその初期形状を取り戻すように、本体3を弾性変形させることができる。場合によっては、これにより、金属シールリング1を再利用することができ、かつ/又は、例えば、真空チャンバ内へのガスの制御された導入(例えば、通気中に生じる)を可能にするために、シールの漏れ率を調整することができる。
【0039】
金属シールリング1は、好ましくは銅又はアルミニウムなどの延性金属で作られ、これにより、本体3の断面5を変形させるのに必要な内部圧力が低減される。また、同じ理由で、本体3の壁は比較的薄いことが好ましい。しかしながら、壁の厚さは一般に、シールのサイズによって決まる。例えば、大きなシールリングを必要とする大きなトカマク(下記参照)などのいくつかの用途では、本体3の壁の厚さは1mmから10mm又は2mmから5mmであることができる。比較的小さな真空チャンバを含むものなどの他の用途では、本体3の壁は0.1mmから1mm又は0.2mmから0.5mmであることができる。金属シールリング1の外側面の一部又は全部は、フランジ13A~Bの表面によりよく適合する金属シールリング1のシール面を形成するために、インジウムなどのより柔らかい金属の層で被覆され得る。
【0040】
内部圧力は、様々な方法で本体3に導入することができる。例えば、空気ポンプを使用して、導入管7を通して圧縮ガスを本体3に押し込むことができる。代替的に、油圧ハンドポンプなどの油圧プレス又はポンプを使用して、水、油又はシリコーンゴムなどの油圧媒体を本体3に押し込むことができる。導入管7の端部11は、例えば、その外面又は内面にねじ山を設けることによって、ポンプ及び/又はプレスに接続するように構成され得る。導入管7には、金属シールリング1内の流体を圧縮するために使用できるピストンを取り付けることもできる。一例では、ピストンは、導入管7の端部11にねじ込まれたグラブねじなどのねじによって形成され、ねじを導入管7内に前進させることによってリング1内の内部圧力が上昇するようになっている。
【0041】
代替的又は追加的に、内部圧力は、導入管7の端部11を密封し、導入管7の少なくとも一部を圧縮して、例えば、導入管7を加締めて、流体(例えば、空気)を本体3に押し込むことによっても生成され得る。内部圧力はまた、液体窒素又は固体二酸化炭素などの液体又は固体を導入管7に導入し、導入管7を密封し、次いで液体又は固体が気化(又は昇華)できるようにするか又は液体又は固体を気化(又は昇華)させることによって生成され得る。
【0042】
いくつかの例では、シールリング1及び/又は導入管7と流体連通し、かつリング1内の内部圧力を維持するための油圧アキュムレータとして機能する、シールされた補助チャンバが提供され得る。例えば、補助チャンバは、本体3内の流体(油圧媒体)を圧縮するように構成されたピストンを収容するピストンチャンバであることができ、ピストンは、ばねなどの弾性部材を用いて付勢される。
【0043】
一般に、本体3を膨張させることによって形成されるシールは、流体(ガス又は液体など)がフランジ15A、Bの間を径方向に通過するのを防ぐことができるが、他の形状を使用することもできる。例えば、金属シールリング1と同様のシールリングを使用して、一対の入れ子状のシリンダ又はチューブの間にシールを形成することができる。この場合、金属シールリングは、一方のシリンダの端部に形成されたチャネル内に設けられ、シリンダが入れ子にされた後に他方のシリンダに当たって膨張し、すなわち、シールリングは径方向に膨張する。この幾何学的形状は、例えば、2つのパイプを密閉するように結合することができる。
【0044】
上記の例では、説明を簡単にするために円形断面のシールリングを使用している。状況によっては、他の断面が、得られるシールの完全性に対してさらに利点がある可能性がある。
図3Aは、膨張前の金属シールリング21の本体の断面19を示す。図中の垂直矢印(「z」と表示されている)は、金属シールリング21の軸の方向を示している。断面19は、リング21の反対の軸方向面に配置された2つの鋭い(すなわち、尖った)隆起23A~Bを含む。
図1及び
図2に示すように、金属シールリング21の本体は、シールされる金属表面のチャネルによって形成される空洞25(
図3A及び
図3Bに破線で示す)内に閉じ込められる。
図3Bは、金属シールリング21の導入管を用いて本体に内部圧力を導入することによって金属シールリング21の本体が膨張及び変形している点を除いて、
図3Aと同じである。断面25は、空洞25に適合するように変形され、隆起23A~Bのそれぞれの頂部は、空洞の対向する金属表面に打ち込まれ、ナイフエッジシールを形成する。
【0045】
別の例(図示せず)では、シールされる金属表面(フランジ)のそれぞれが、鋭利な1つ又は複数のナイフエッジを含む。金属シールリングが膨張すると、ナイフエッジが金属シールリングの外側面に食い込み、シールを形成する。場合によっては、金属シールリングの外側面は、より強力なシールを提供するために、ナイフエッジを受け入れるための1つ以上のノッチを含む。いくつかの例では、ナイフエッジの特徴的な寸法は、リングの厚さ(すなわち、短半径)よりもはるかに小さく、リングの外側面に食い込むためのざらざらした(すなわち、粗い)表面を提供する。
【0046】
図4A及び
図4Bは、金属シールリング21が、概ね円形又は楕円形でありかつ異なる金属(又は合金)で作られたセクション29A~B、31A~Bから成る本体断面を有する金属シールリング27に置き換えられていることを除いて、
図3A及び
図3Bと同様である。この例では、セクションの一方の対29A~Bは、銅などの比較的延性の高い金属で作られ、シールリング27の半径に沿って配置され、一方、セクションの他方の対31A~Bは、鋼などの比較的延性の低い金属で作られ、シールリング27に対して軸方向に配置されている。セクション29A~B、31A~Bは、例えば溶接によって互いに接合されるが、ろう付け又ははんだ付けなどのセクションを互いに接合する他の方法も使用することができる。膨張後、延性の低いセクション31A~Bは実質的に同じ形状のままであるが、延性の高いセクション29A~Bは軸方向に沿って引き伸ばされ、延性の低いセクション31A~Bを空洞25の金属表面と接触させ、それにより金属表面の間にシールを形成する。シールリング27を膨張させるために必要な内部圧力は、延性の低いセクション29A~Bの厚さを変えることによって制御することができ、比較的低い内部圧力を必要とする用途には、例えば、シールリング27が大きい直径を有する場合又は低い内部圧力しか生成できない場合には、より薄いセクションが使用される。
【0047】
図5A及び
図5Bは、金属シールリング33の本体が、リング33の1つの面の周りに延びる尖った隆起を形成するニブ35を備えた中空円形断面34を有することを除いて、再び
図3A及び
図3Bと同様である。この例では、ニブ35は、(他の比較的硬い金属も使用できるが)鋼で作られ、本体の残りの部分34は、(他の比較的柔らかい金属も使用できるが)銅で作られている。ニブ35は、典型的には溶接によって本体に取り付けられるが、ろう付け、はんだ付け、又は、例えば共押し出し又は延伸加工によってニブを所定の位置に機械的に付けるなど、他の取り付け方法を使用することもできる。この例の金属リング33を取り囲む空洞36は、
図3A及び
図3Bのものとは異なる形状を有し、空洞36は、金属シールリング33が膨張/拡張した後に、ニブ35を収容するためのより小さいセクションを有する。ニブ35は、隣接する金属表面に「食い込み」、「ナイフエッジ」シールを形成し、一方、円形断面34も、空洞36のより大きいセクションに適合するように膨張することによってシールを形成する。
【0048】
図6A及び
図6Bは、金属シールリング37が本体の内部を2つのチャンバ39A、39Bに分割する内壁38を含むことを除いて、再び
図3A及び
図3Bと同様である。隔壁38は当初、第1のチャンバ39Aに向かって座屈している(曲げられている)。導入管7を用いて第1のチャンバ39Aに内部圧力を導入すると、隔壁38は第2のチャンバ39Bに向かって移動して真っ直ぐになる。この移動は、シールリング37の本体の外壁を強制的に離し、本体を金属表面40A、40Bに当てて変形させ、シールを形成させる(
図6B参照)。この例では、第2のチャンバ39Bは、隔壁38が反対方向に(すなわち、第2のチャンバ39B内に)座屈する(曲がる)のを避けるために、隔壁38が真っ直ぐになった後の隔壁のさらなる移動に対抗する支柱41を含む。
【0049】
支柱38は、第1のチャンバ39Aの内部圧力を維持し、したがって、本体の外壁によって金属表面40A、40Bに加えられるシール圧力を維持するために、弾性的に圧縮可能であり得る。隔壁38を移動させ、それによりシール圧力を上昇させるために第1のチャンバ39Aに導入しなければならない圧力を上昇させるために、第2のチャンバ39Bも加圧され得る。
【0050】
代替的又は追加的に、(例えば、真空ポンプを用いて)第2のチャンバ39B内の圧力を低下させることによって隔壁38を移動させて、チャンバ39A、39B間に圧力差を作り出すことができる。逆に、第2のチャンバ39Bに内部圧力を導入して反対方向の圧力差を形成することによって、第2のチャンバ39Bへの隔壁38の移動を逆にすることができる。これにより、金属シールリング37を「収縮」させることによってシールを解放することができる。
【0051】
シールを解放することができる別の方法は、金属シールリング1、21、27、33、37の一部(又は全部)を溶解又は化学的に反応させることである。例えば、金属シールリングの本体は、(外側が)金でめっきされた銅で作ることができる。銅は、導入管7(例えば)を通してシールリングに導入される溶媒(例えば、塩化鉄III)を用いて金の層を残すように溶解することができ、これによりシールを容易に除去することができ、嵌合部品を互いに分離することができる。当然ながら、他の材料の組み合わせ及び/又は溶媒も使用することができる。
【0052】
上記の金属シールリング1、21、27、33、37は、様々な用途に使用することができる。例えば、上記の金属シールリングの1つ以上をヘッドガスケットに使用して、シリンダヘッドをピストンエンジンのエンジンブロックにシールすることができる。別の例として、上記の金属シールリングの1つ以上が、ピストンヘッドに作用する流体圧力に逆らって(又はそれに応答して)シリンダ内をスライドするピストンヘッドを含むピストンデバイスに含まれ得る。この場合、金属シールリングを使用して、ピストンヘッドとシリンダとの間、又はシリンダとピストンヘッドに取り付けられた又はピストンヘッドと一体のコネクティングロッドとの間にシールを形成することができる。1つ以上のこのようなピストンをプラズマ圧縮デバイスに使用することができる。プラズマ圧縮デバイスは、例えば、プラズマが注入される液体金属渦を入れたチャンバを含む融合反応器であり得る。ピストンは、液体金属をチャンバの中心に向けて駆動するように構成され、それによって渦を崩壊させ、プラズマを圧縮して核融合反応を開始する。
【0053】
図7及び
図8は、外側真空チャンバ43と、トカマク45(すなわち、磁気的に閉じ込められた高温プラズマにおける核融合反応を制御するためのトロイダル核融合炉)と、保守真空チャンバ47とを含む真空システム42を示す。外側真空チャンバ43は、トカマク45を取り囲み、後述するように保守真空チャンバ47に接続されている。1つの特定の実施形態では、トカマク45は約5から15mの高さを有し、外側真空チャンバは約20から30mの高さを有するが、一般に、外側真空の高さはトカマク45の高さの約2から2.5倍である。外側真空チャンバ43及び保守真空チャンバ45は、トリチウム及び他の放射性同位元素が漏れ出るのを防ぐためにトカマク45の構成要素を共に取り囲む。
【0054】
トカマク45は、プラズマを閉じ込めるための円環状内部容積51を有する内側真空チャンバ49を含む。
図8に最も明確に見られるように、内側真空チャンバ49は、独立して取り外し可能な複数のセグメント53から形成され、各セグメント53は、内側真空チャンバ49のセクタ(すなわち、先細の角のある部分)を提供する。例えば、各セグメントは、内側真空チャンバ49が16個のセグメントから形成されるように22.5度の角度にわたることができる(ただし、セグメントがそれぞれ同じサイズの角度にわたる必要はなく、任意の数のセグメントを使用することができる)。各セグメント53は、セグメントの内部容積を取り囲むトロイダル磁場(TF)コイル55を含み、内側真空チャンバが完全に組み立てられ、電流がコイル55に供給されると、内側真空チャンバ49内にトロイダル磁場が生成されるようになっている。この場合、トロイダル磁場コイル55は、セグメント53の内壁に取り付けられ、セグメント53の概ね楕円形の断面に沿っている。
【0055】
各セグメント53は、トカマク45の「第1の壁」のセグメント57、すなわちトカマク45が使用されているときにプラズマに直接隣接する壁を収容する。第1の壁セグメント57の大部分は、内側真空チャンバのセグメント53の径方向の最も外側の壁に向かって配置されているが、内側真空チャンバセグメント53の径方向の最も内側の壁に位置する第1の壁セグメント57の内側部分59が存在する。トカマク45の動作中にトカマク45の磁場から軸方向に逃げるプラズマを捕捉するために、第1の壁セグメント57の径方向外側部分と内側部分との間に一対のダイバータ61、63が設けられている。一方のダイバータ61はセグメント53の下壁に設けられ、他方のダイバータ63はセグメント53の上壁に設けられている(ここで、上及び下は、セグメント53の軸、すなわち円環状の内部容積の軸が垂直である
図7に関して使用されている)。第1の壁セグメント57及びダイバータ61、63は、トカマク45から出る中性子束を制限するために遮蔽体65によってセグメント53内に取り囲まれている。
【0056】
各セグメント53は、内側真空チャンバ49を形成するようにセグメント53が組み立てられるときにセグメント53を支持する面内支持構造67(又は「キャリア」)内に取り付けられる。フレームは、トカマク45の軸線に近い面内支持構造67の下側を支持する中央支持体69と、トカマク45の外側の周りに配置され、各面内支持構造67をその径方向の縁に沿って支持する支持柱71とを含む。面内支持構造67は、セグメント53に極低温冷却剤を(典型的には、約20から30Kの温度で)供給し、TFコイル55に電流を供給し、遮蔽体65に冷却剤を供給し、第1の壁セグメント57に冷却を供給するために、その基部にカップリング73を含む。トカマク45が組み立てられるとき、冷却剤及び電力が各セグメント53に供給されるように、カップリングは外側真空チャンバ43の基部に設けられた相補的なフィードスルー75に接続される。
【0057】
図8では、セグメント53の1つが、例えば外側真空チャンバ43内に配置されたロボット式ハンドリングシステム(図示せず)を用いて、外側真空チャンバ42から保守チャンバ47に(トカマク45の右側により不鮮明な線で示されるように)移動されている。この例では、保守チャンバ47の寸法は、単一のセグメント53を収容することができるように選択され、それにより、例えば別のロボットシステムを用いた、検査及び/又はメンテナンスのためのセグメント53の表面へのアクセスを可能にする。いくつかの例では、ゲート弁(図示せず)などの隔離弁が設けられて、保守チャンバ47と外側真空チャンバ43を互いに隔離することを可能にし、例えば、保守チャンバ47を大気圧に上げて、セグメント53の一部(又はセグメント53全体)を取り外して交換することができるようにする。
【0058】
例えばセグメント53が修理された後に、内側真空チャンバ49を再組み立てするために、セグメント53とセグメント53の両側の隣接するセグメントとの間に真空シールを形成する必要がある。しかしながら、セグメント53は、内側真空チャンバ49を形成するために互いに密接に適合する必要があり、一般に、フレーム69、70によって所定の位置にしっかりとクランプされており、これは、シールリングの圧縮に依存するシール(例えば、コンフラットシール)が適切でない可能性があることを意味する。この問題の解決策は、セグメント53の間に配置され、膨張して必要なシールを形成することができる、上記の金属シールリング1、21、27、33によって提供される。セグメント53の間に金属間シールを使用することは、トリチウムがトカマク45から漏れるのを防ぐために特に重要である。
【0059】
各セグメントは、シールリング1、21、27、33、が膨張前にセグメント53の面と同一平面上にある(又はセグメント53の面に埋め込まれる)ようにシールリング1、21、27、33を据え付ける溝又はチャネルを含むことができる。このような構成により、セグメント53は、組み立てられると互いに密接に適合する(例えば、5mm未満しか離れない)ことが可能となり、これにより、各セグメント53に収容されたそれぞれの第1の壁セグメント57、ダイバータ61、63、及び遮蔽体65の間の隙間のサイズが最小化される。
【0060】
追加的又は代替的に、遮蔽体65は、組立中にセグメント53が真空チャンバ53内に径方向に移動されるときにある程度の移動の自由度を遮蔽体に提供する適合取り付け部(図示せず)に固定することができる。この自由度により、セグメント53の挿入を妨げることなく、遮蔽体65を所定の位置にしっかりと嵌め込むことができる。
【0061】
代替的に、金属シールリング1、21、27、33は、隣接するセグメント53の間に挿入され、シールリングが膨張してシールを形成した後に除去される、取り外し可能なキャリア(図示せず)に取り付けることができる。このアプローチの利点は、セグメント53のいずれも溝を必要としないことであり、これは、シールを形成する前に、シールリング及びセグメント53をそれぞれ所定の位置にスライドさせること、例えば、トカマク45の上方から垂直方向(軸方向)に所定の位置にスライドさせることができることを意味する。したがって、この構成により、隣接するセグメント53を移動する必要なしに、セグメント53を個別に取り外して交換することができる。
【0062】
ポロイダル磁場(PF)コイル(図示せず)は、トカマク45が動作するときに内側真空チャンバ49内にポロイダル磁場を提供するように、内側真空チャンバ49の上下に設けられる。TFコイル55とは異なり、PFコイルはセグメント化する必要がない。上部PFコイルは、セグメント53を取り外すことができるようにトカマク45から持ち上げることができ、一方、下部PFコイルは、面内支持構造67と中央支持体69との間の内側真空チャンバ49の下の所定の位置に留まることができるからである。
【0063】
内側真空チャンバ49が組み立てられると(
図7を参照)、面内支持構造67はキャッピング構造77によって所定位置にクランプされる。キャッピング構造77は、トカマク45の軸線(中心柱)上にあり、セグメント53を取り外し又は交換することを可能にするために外側真空チャンバ43の頂部まで持ち上げることができる。