(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】フィルタアセンブリと、それを含む体液を収集するための容器
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20241227BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20241227BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20241227BHJP
B01D 19/00 20060101ALI20241227BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A61M1/36 119
A61M1/02 100
A61M1/00 101
B01D19/00 G
B01D39/16 E
(21)【出願番号】P 2021575337
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2020000469
(87)【国際公開番号】W WO2020254871
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-12
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519173967
【氏名又は名称】フレセニウス ヘモケア イタリア ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】ザンビアンキ,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ボセッリ,マッテオ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-050786(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361674(US,A1)
【文献】特表2001-501849(JP,A)
【文献】特開2008-194386(JP,A)
【文献】特表2008-516664(JP,A)
【文献】特表2000-512173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/34
A61M 1/00
B01D 19/00
B01D 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタシステムおよびフィルタ保持部を備える、体液をろ過するためのフィルタアセンブリであって、
前記フィルタシステムと前記フィルタ保持部は互いに接触し、
前記フィルタシステムは、前記フィルタ保持部の内部に配置されており、
前記フィルタシステムは少なくとも2つの層から構成され、
第1の層
はモノフィラメントで織られたオープンメッシュ生地によって形成され
、前記体液中に蓄積された泡を閉じ込めるために構成された、エンボス加工された三次元構造を有する消泡層であり、
第2の層はメッシュフィルタ層であり、
前記メッシュフィルタ層は、前記消泡層の下流に配置されている、フィルタアセンブリ。
【請求項2】
前記消泡層は、100~500μmの間、
または、150~400μmの間、
または、200~350μmの間、
または、250~300μmの間のメッシュ開口部を含む、請求項1に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項3】
前記消泡層は、100~350μmの間、
または、150~300μmの間、
または、200~300μmの間の直径を有するモノフィラメント繊維によって形成されている、請求項1または請求項2に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項4】
前記消泡層は、10~50n/cmの間、
または、10~30n/cmの間、
または、10~20n/cmの間のメッシュ数を有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項5】
前記メッシュフィルタ層は、20~150μmの間、
または、30~140μmの間、
または、40~130μmの間、
または、50~120μmの間、
または、60~110μmの間、
または、70~100μmの間、
または、80~90μmの間の範囲のメッシュサイズを有する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項6】
前記フィルタアセンブリは、前記消泡層の下流かつ前記メッシュフィルタ層の上流に配置された前置フィルタ層をさらに含み、前記メッシュフィルタ層は、約40μmのメッシュサイズを有する、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項7】
前記フィルタアセンブリは前置フィルタを含まず、前記メッシュフィルタ層は約120μmのメッシュサイズを有する、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項8】
前記前置フィルタ層はスパンボンド不織布を含む、請求項6に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項9】
前記前置フィルタ層の孔径が20と150μmの間、
または、30と140μmの間、
または、40と130μmの間、
または、50と120μmの間、
または、60と110μmの間、
または、70と100μmの間、
または、80と90μmの間の範囲にある、請求項6または請求項8に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項10】
前記フィルタ保持部はプラスチック製であり、前記フィルタシステムの少なくとも一部の上にオーバーモールドされている、請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項11】
前記フィルタアセンブリは消泡剤を含まない、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項12】
前記プラスチックはABSまたはポリカーボネートから選択される、請求項10に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項13】
前記消泡層が150~650μm、
または、200~500μm、
または、250~400μm、
または、300~350μmの厚さを有する、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項14】
前記消泡層は、非平面の配置で分布する細孔を含む、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリ。
【請求項15】
体液を収集するための容器であって、フィルタモジュールとして請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載のフィルタアセンブリを含む、容器。
【請求項16】
体液が容器ハウジング(2)の入口セクション(5)に入ることができる体液入口(4)を備えた容器ハウジング(2)、体液収集セクション(9)、前記入口セクション(5)および前記体液収集セクション(9)に低圧を加えるために前記容器ハウジング(2)に真空源を接続するための真空連結部(10)、および、前記入口セクション(5)と前記体液収集セクション(9)との間に配置されるフィルタモジュール(6)としてフィルタアセンブリをさらに備え、
前記消泡層は前記入口セクション(5)に面し、前記メッシュフィルタ層は前記体液収集セクション(9)に面している、請求項
15に記載の容器。
【請求項17】
前記容器ハウジング(2)は、容器の目的とされた使用中に前記体液収集セクション(9)から真空源によって引き出される空気の流れ方向において、前記体液収集セクション(9)と前記真空連結部(10)との間に配置された疎水性フィルタ(11)をさらに備える、請求項
16に記載の体液を収集するための容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2019年6月19日に出願された欧州出願第19181285.8号の利益および優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フィルタアセンブリ、そのフィルタアセンブリの適切な使用、および、そのフィルタアセンブリを含む体液を収集するための容器に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術から知られているフィルタアセンブリは、様々なタイプの流体、例えば体液に使用され、体液から凝集体、粒子、または、特定の細胞をろ過するために使用される。フィルタアセンブリの特に適切な用途は、血液のろ過である。全血または血液成分は、さまざまな用途、特に輸血製品としての使用のために分離され、さらに処理され得る。
【0004】
フィルタアセンブリは、手術手順中の自己輸血工程、つまり、患者の血液が手術中に回収され、患者に再注入される工程でも使用される。これは、術中回収式自己血輸血(IOBS)、または自己血輸血またはセルサルベージとしても知られている。同種(別個のドナー)輸血に関連する危険がより広く知られるようになり、より十分に理解されるようになるにつれて、それは長年使用され、時間とともにより大きな注目を集めてきた。周術期の設定で患者自身の血液を回収するのを支援するために、いくつかの医療機器が開発されてきた。この手順は、血液使用量が伝統的に高い心臓胸部および血管外科で頻繁に使用される。
【0005】
全血は手術中に回収されるが、手術や空気などにさらされると、同種異系輸血の目的でドナーから血液銀行に集められた血液とは異なる特性を持つ。たとえば、血液の回収には、血栓、手術中に使用される薬物や体液などの非細胞性物質、骨片、手術ごみの除去が必要である。
【0006】
自家血液リサイクルまたは術中回収式自己血輸血は、しばしば泡沫の形成を伴う。血液泡沫の形成(「スキミング」とも称される)は、大きな管の中で空気の存在下での血液の収集または輸送(たとえば、ヤンカウアーカニューレで収集される)に関連し、したがって吸引工程の乱流に関連する。
【0007】
血流中の泡の形成を回避するための1つのアプローチは、自己輸血または体外循環のための血流が収集される貯留部で消泡剤を使用することである。過去には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)-疎水化シリカが消泡剤として広く使用されていた。ただし、PDMSは部分的に血液中に浸出する場合があり、そこで乳化する。IOBSでは、その大部分は洗浄後の老廃物に含まれていると推定されるが、その一部が患者に自己輸血された赤血球濃縮物に含まれていることを排除することはできない。PDMS-疎水化シリカは無毒であるが、毛細血管の閉塞による塞栓と術後の死亡の原因となる可能性があり、消泡剤としてはもはや使用されていない。したがって、今日では、シリカを含まないPDMSのみが使用されている。消泡の原理はPDMSでも同じであるが、物理的な作用方法で気泡を「破壊」するシリカ粒子は、医療機器には適用されなくなったが、非医療消泡には引き続き使用されている。
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、代替の消泡の着想が依然として必要である。
【0009】
本発明の目的は、ろ過された血流など体液における泡沫の形成の低減または防止さえ可能にし、同時にろ過された体液への化学物質の浸出の危険性を低減するフィルタシステムを提供することである。
【0010】
この目的は、以下に説明する特徴を有するフィルタアセンブリによって達成される。
【0011】
したがって、フィルタシステムおよびフィルタ保持部を含む体液をろ過するためのフィルタアセンブリが提供され、ここで、フィルタシステムとフィルタ保持部は、互いに接触しているか、または、互いに接続されている。
【0012】
フィルタシステムは少なくとも2つの層から構成されている。第1の層は、モノフィラメントで織られたオープンメッシュ生地によって形成された消泡層であり、特に体液中に蓄積された泡沫を閉じ込めるために構成された、エンボス加工された三次元構造を有する。第2の層はメッシュフィルタ層である。メッシュフィルタ層は、消泡層の下流に配置されている。
【0013】
「下流」および「上流」という用語は、フィルタアセンブリによってろ過される流体の流れの方向を指す。したがって、ろ過される流体は、最初に消泡層に接触し、次にメッシュフィルタ層に接触する。
【0014】
このようなフィルタアセンブリは、血液や他の体液をろ過するために十分に使用することができる。このようなフィルタアセンブリを使用すると、血液や他の体液での泡沫の形成を効果的に防ぐことができる。本発明のフィルタアセンブリは、泡沫を機械的に取り除くことを可能にする。これにより、消泡剤が不要になり、ろ過された体液に化学物質が浸出する危険が完全に回避される。本発明のフィルタアセンブリは、自家輸血貯留部または容器に特に有用である。
【0015】
意外にも、エンボス加工された3D構造を備える消泡層を使用すると、泡沫が除去または低減されることが見出された。根底にあるメカニズムは、消泡層内への泡沫の閉じ込めである可能性がある。空間的な3D構造により、体液中に形成された気泡を閉じ込めることができる。つまり、気泡は空間構造内に閉じ込められる。別の機構は、下流のメッシュフィルタを通過するときに泡沫の泡が吹き飛ばされることである可能性がある。
【0016】
エンボス加工された3D構造は、特定の高さの規則的に配置された突起および窪みを有するダイヤモンドパターンの形態であり得る。空間的なパターンは、ジグザグ構造またはピラミッドのような構造としても説明できる。
【0017】
先に述べたように、消泡層は構造化されたオープンメッシュ生地である。
【0018】
1つの実施形態では、消泡層は、100~500μmの間、特に150~400μmの間、特に200~350μmの間、より具体的には250~300μmの間、例えば250μmのメッシュ開口部を含む。
【0019】
消泡層を形成する生地のメッシュ数(通常、1cmあたりの糸の数)は、10~50n/cmの間、特に10~30n/cmの間、より具体的には10~20n/cmの間、例えば12~16n/cmであり得る。
【0020】
消泡層の生地は、100~350μmの間、特に150~300μmの間、より具体的には200~300μmの間、例えば200μm、250μm、300μmの直径を有するモノフィラメント繊維でできている。モノフィラメント繊維は、任意の熱可塑性材料で作ることができるが、好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などで形成されることができる。ポリプロピレンが最も好ましいものである。
【0021】
消泡層は、50~250g/m2、特に100~200g/m2、より具体的には150~200g/m2、例えば、98~103g/m2、180~190g/m2、156g/m2の重量を有することができる。
【0022】
消泡層の厚さは、150~650μm、特に200~500μm、特に250~400μm、特に300~350μmであり得る。
【0023】
消泡層はまた、例えばポリウレタンまたはポリエステル発泡体で形成されたスポンジ様構造のものであり得る。
【0024】
1つの実施形態では、第1のメッシュ層は、グリッドまたはネットを形成する複数の相互接続する糸からなる。このように垂直に配置された糸と水平に配置された糸は、グリッドを形成するように接続点で互いに接続されている。
【0025】
1つの実施形態では、メッシュフィルタ層の糸またはフィラメントは、円形の断面を有する。ただし、楕円形、長方形、四角形、または三角形の断面など、他の断面も可能である。同様に、異なる断面を有する糸またはフィラメントの混合も可能である。
【0026】
1つの実施形態では、メッシュフィルタ層のメッシュサイズは、20と160μmの間、特に30と140μmの間、特に40と130μmの間、特に50と120μmの間、特に60と110μmの間、特に70と100μmの間、特に80と90μmの間の範囲である。100から130μm、105から125μm、70から90μm、75から85μm、30から45μm、および、35から40μmの範囲が特に適切である。
【0027】
1つの実施形態では、メッシュフィルタ層は、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート-コ-ポリアルキレングリコールテレフタレート)、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロースなどの高分子、または、それらの組み合わせを含むか、または、そのような高分子またはそれらの組み合わせから完全に作製することができる。それにより、非疎水性または親水性材料は、メッシュフィルタ層を製造するのに特に適切である。メッシュフィルタ層を製造するために使用される材料の親水性を高めること、またはすでに製造されたフィルタの親水性を高めることも可能である。そのため、化学物質の堆積よりも物理的処理の方が適切である。これは、容器の使用中に化学物質がメッシュフィルタから浸出する可能性があるためである。
【0028】
メッシュフィルタ層の適切な表面積は、300から1000cm2、特に400から900cm2、特に500から800cm2、特に600から700cm2の範囲である。
【0029】
さらなる好ましい実施形態では、フィルタアセンブリは、消泡層の下流およびメッシュフィルタ層の上流に配置された、つまり、消泡層とメッシュフィルタ層の間に挟まれた前置フィルタ層(深層フィルタ)を含む。
【0030】
前置フィルタ支持層は、繊維の不織布を含むか、または本質的にそれからなる。それにより、繊維は、ランダムに堆積された繊維の間に隙間が形成されるように配置される。隙間は、平均細孔サイズの開口部として定義できる。その結果、不織布の細孔サイズが得られる。
【0031】
前置フィルタ材料の細孔サイズは、上流の消泡層よりも小さいが、下流のメッシュフィルタ材料よりも大きい。
【0032】
1つの実施形態では、前置フィルタ層は、スパンボンド不織布を含むか、または本質的にそれからなる。この生地の個々の繊維は、円形、楕円形の長方形、四角形または三角形の断面など、任意の所望の断面を有し得る。異なる断面を有する繊維の混合も可能である。
【0033】
前置フィルタ層の繊維はまた、一般に、任意の形状を有することができる。しかしながら、繊維、または繊維の少なくとも一部が、それぞれの繊維の長手方向に延びる少なくとも1つの溝を含む場合、特に良好なろ過を達成できることが判明した。一例を挙げれば、繊維は、それぞれが繊維の長手方向に延びる3つの溝を含み得る。そうすることで、凝集体、脂肪および/または血小板は、フィルタアセンブリを通って流れる血液または別の体液から特によくろ過することができる。
【0034】
1つの実施形態では、繊維の少なくとも一部は、葉状の断面を有する。このような葉状断面は、1つの実施形態では、繊維に長手方向において溝を形成することによって達成することができる。三葉断面は、葉状構造の特に適した例である。そのような三葉状の繊維は、例えば、WO2013/110694A1から一般に知られており、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
前置フィルタ層の不織布を構成する繊維は、1つの実施形態では、スパンボンド繊維またはメルトブロー繊維であり得る。スパンボンド繊維は、典型的には、少なくとも20μm以上の繊維径を持っているが、メルトブロー繊維は20μm未満のより小さな直径を有し得る。
【0036】
前置フィルタ層は、連続フィラメントのスパンボンド不織布を含むか、または本質的にそれからなる。前記布は、原料のチップまたはペレットを押し出し始める連続フィラメント不織布工程(メルトブローおよびスパンボンディング)で得られる。フィラメントの長さは理論的には無限である。
【0037】
前置フィルタ材料の繊維は、「海島型」繊維を含む、1成分、2成分、または多成分繊維であり得る。繊維は、1つの高分子または高分子のブレンドからなり得る。繊維に適した材料は、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート-コ-ポリアルキレングリコールテレフタレート)、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6/12、ナイロン11、ナイロン12、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、または、それらの組み合わせである。それによって、非疎水性または親水性の材料が繊維を製造するのに特に適切である。繊維を製造するために使用される材料の親水性を高めること、またはすでに製造された繊維の親水性を高めることも可能である。それにより、物理的処理は、化学物質の堆積よりも適切である。なぜなら、そのような化学物質は、フィルタアセンブリの使用中に繊維またはそこから生成される布から浸出する可能性があるからである。
【0038】
1つの実施形態では、前置フィルタ層の細孔サイズは、20と150μmの間、特に30と140μmの間、特に40と130μmの間、特に50と120μmの間、特に60と110μmの間、特に70と100μmの間、特に80と90μmの間の範囲にある。100から130μm、105から125μm、70から90μm、75から85μm、30から45μm、および、35から40μmの範囲が特に適切である。
【0039】
上記のように、フィルタシステムは、2つの層または3つの層を含み得る。
【0040】
2層システムの場合、第1の層は消泡層であり、第2の層はメッシュフィルタ層である。このような2層システムは、大孔径ろ過に使用することができる。メッシュフィルタのメッシュサイズは120μmであり得、開口透過率が50%、閉口透過率が34%であり得る。
【0041】
3層システムの場合、第1の層は消泡層であり、第2の(サンドイッチされた)層は前置フィルタ層(深層ろ過材料)であり、第3の層はメッシュフィルタ層である。このような3層システムは、低孔径ろ過に使用することができる。メッシュフィルタ層のメッシュサイズは40μmであり得、40%の開口透過率、12%の非常に閉口された透過率を有し得る。
【0042】
特に好ましい実施形態では、フィルタシステムは、メッシュサイズが200と300μmの間、好ましくは250μmである消泡層と、孔径が50と100μmの間、好ましくは70μmである前置フィルタ層と、メッシュサイズが30と50μmの間、好ましくは40μmであるメッシュフィルタ層を含む。
【0043】
フィルタアセンブリは、フィルタ保持部をさらに含む。このフィルタ保持部は、消泡層、任意の前置フィルタ層、および、メッシュフィルタ層のフィルタシステムに接触する。そうすることで、フィルタシステムも安定する。したがって、フィルタ保持部は、フィルタシステムのさまざまな層を所定の位置に保持するのに役立つ。それは構造的な支持体として機能する。フィルタアセンブリは、単独(スタンドアロン)のフィルタアセンブリ(自立型フィルタアセンブリ)であるか、複数のフィルタ層を備えた1つのパーツ(オーバーモールド)にすることができる。
【0044】
フィルタ保持部はプラスチック製であり、フィルタシステムの少なくとも一部の上にオーバーモールドされている。オーバーモールディングが、外側の層だけでなく、フィルタシステムのすべてのフィルタ材料層の上にある場合が好ましい。これは、フィルタ材料を溶融プラスチックに浸すことで実現できる。プラスチックが冷えて硬くなると、フィルタ材料層を包み込むホルダー構造(一種のケージ)が形成される。それはフィルタシステムの層を一緒にしてしっかりと接続し、フィルタシステムの層の良好な安定化に特に容易に役立つ。
【0045】
驚くべきことに、そのようなフィルタアセンブリは、血液および他の体液をろ過するために十分に使用できることが見出された。このようなフィルタアセンブリを使用すると、血液や他の体液での泡沫の形成が効果的に防止される。消泡剤が不要になり、ろ過された体液に化学物質が浸出する危険が完全に回避される。
【0046】
1つの実施形態では、フィルタアセンブリは、消泡剤を含まない。このような消泡剤の使用を回避することにより、フィルタアセンブリを流れる流体に消泡剤が浸出する危険が完全に防止される。これにより、フィルタアセンブリによってろ過される流体の品質が向上する。
【0047】
本発明は、1つの態様では、インビトロで体液をろ過するために上で説明した特徴を有するフィルタアセンブリの使用に関する。体液は、血液、尿、胆汁、組織液、精子、リンパ液、唾液または脳脊髄液であり得る。血液は、ろ過するのに特に適切な体液である。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、前述の説明に従って、体液をフィルタアセンブリに流すことによって体液をろ過する方法に関する。体液の流れは、重力によって、または、低圧などの外力を体液またはろ過された体液が引き込まれる容器に加えることによって達成することができる。この方法は、インビトロで、または、ろ過される体液を提供する患者は、体液がろ過されるフィルタ器具に接続されている間に行うことができる。
【0049】
1つの実施形態では、この方法は、それを必要とする患者から術中セルサルベージ(ICS)を引き出すための医学的方法である。ICSは、典型的には、手術または侵襲的処置を受けている患者に使用され、それらの患者に血液または血液成分の自己輸血を提供することを目的としている。このような方法の詳細については、以降で説明する。
【0050】
さらに別の態様では、本発明は、フィルタモジュールとして上記で詳細に説明したようなフィルタアセンブリを含む体液を収集するための容器に関する。
【0051】
そのような容器は、体液が容器ハウジングの入口セクションに入ることを可能にする体液入口を備えた容器ハウジングを備える。容器ハウジングはさらに、体液収集セクションと、真空源を容器ハウジングに接続するための真空連結部とを備える。そうすることで、負圧を入口セクションおよび体液収集セクションに加えることができる。真空源は、典型的には、真空ラインを介して容器ハウジングの真空連結部に接続される。
【0052】
さらに、容器ハウジングは、入口セクションを体液収集セクションから分離するフィルタモジュールを含む。より具体的には、フィルタモジュールは、入口セクションと体液収集セクションとの間に配置され、体液は入口セクションから体液収集セクションに流れるためにフィルタを通過する必要がある。言い換えれば、フィルタモジュールには生側と清浄側がある。生側は入口セクションに面し、清浄側は体液収集セクションに面している。
【0053】
特に、フィルタモジュールとしてのフィルタアセンブリは、消泡層が入口セクションに面し、メッシュフィルタ層が体液収集セクションに面するように、入口セクションと体液収集セクションとの間に配置される。
【0054】
1つの実施形態では、容器ハウジングは、体液収集セクションと真空連結部との間に配置された疎水性フィルタ(すなわち、フィルタアセンブリとは別個のもの)を含む。「間」という用語は、容器の意図された動作中に、真空源によって容器(または容器ハウジングの体液収集セクション)から引き出される空気の流れ方向に関する。つまり、容器ハウジングの内部から引き出される流体(特に空気と煙)は、真空連結部に接続された真空ラインに入る前に、疎水性フィルタを通過する必要がある。したがって、疎水性フィルタは、真空が真空ポンプによって生成されるときに、容器ハウジングの真空連結部に接続されている真空ラインの保護要素として機能する。
【0055】
新規のフィルタモジュールと疎水性フィルタは相乗的に作用するため、この組み合わせにより、以下に説明する効果が得られる。フィルタ保持部と、消泡層、任意で前置フィルタ層およびメッシュフィルタ層を含むフィルタアセンブリを備えたフィルタモジュールを構築することにより、従来技術のようにプレハブフィルタソケットを使用する場合よりもはるかに多くの柔軟性がフィルタ保持部の設計に与えられる。さらに、フィルタ保持部をフィルタアセンブリと一緒に単一の製造工程で製造することが可能であり、共成形されたフィルタアセンブリ要素の容器への接続は容易に自動化できる。これにより、製造コストが大幅に削減され、製造工程の信頼性と再現性が向上するため、容器のパフォーマンスが向上する。
【0056】
流れ方向において真空連結部の前に配置された追加の疎水性フィルタは、煙フィルタと過充填防止の両方の役割を果たす。したがって、それは、従来技術に従って個々の構成要素の形で使用されるこれらの要素の特性を単一の要素に組み合わせる。これにより、この単一の要素が容器ハウジングに含まれる。したがって、別の真空ラインに接続する必要はない。疎水性フィルタを洗浄および/または滅菌する必要はない。むしろ、容器全体と一緒に廃棄される使い捨てとして設計することができる。これにより、容器の使用がさらに容易になる。
【0057】
通常の(繊維、泡状物質、または膜のみでできている)フィルタの代わりに、消泡層、任意で前置フィルタ層およびメッシュフィルタ層を含むフィルタアセンブリを使用すると、非常に再現性の高いフィルタ条件を満たせる効果が得られる。通常のフィルタの平均孔径は、平均孔径よりも大きい、または、小さい多くの孔があるが、メッシュフィルタのメッシュサイズは明確に規定されており、本質的に変化しない。さらに、消泡層を使用すると、泡沫の形成が減少または防止される。
【0058】
1つの実施形態では、容器ハウジングの上部カバーまたは入口セクションおよびフィルタ保持部は、一体として製造される、すなわち、それらは一体的に形成される。これにより、容器ハウジングにフィルタを手動で取り付ける必要がなくなるため、製造工程が大幅に容易になる。例を挙げると、フィルタ保持部と容器ハウジング(少なくともその一部)は、単一の射出成形工程で同時成形することができる。そうすることで、容器ハウジングの入口セクションの出口は、フィルタ保持部の内部の入口に一体的に変わる。次に、入口セクションに入る体液は、容器ハウジングの入口セクションからフィルタ保持部の内部空間に向かって流れるか、または引き出される。それは次に、体液収集セクションに到達するために、フィルタアセンブリを通過する必要がある。
【0059】
1つの実施形態では、フィルタ保持部およびフィルタアセンブリは、消泡剤を含まない。通常のフィルタの場合、血液の望ましくない泡立ちを避けるために特定の消泡剤が必要であるが、フィルタ要素を通る血流の設計は、血液中に泡の形成をごくわずかしか誘発しない傾向がある。消泡剤を使用しない場合、そのような薬剤を体液に浸出させ得ないため、対応する体液の汚染を恐れる必要はない。
【0060】
I 1つの実施形態では、フィルタ保持部は、フィルタ保持部の内部に配置されたフィルタ材料を安定させるバーまたは支柱を含む。このようなバーは、例えばフィルタ材料上に直接射出成形することによって容易に製造することができる。それらはフィルタ材料が崩壊したり、濡れたままになるのを防ぐ。さらに、フィルタ要素の下部にパントを作製するために射出成形中に溶融プラスチックを担持するために用いられ得る。
【0061】
1つの実施形態では、フィルタモジュールの入口区域は漏斗状である。このような漏斗の形状は、体液中の泡形成の危険を低減する。したがって、入口区域の漏斗形状は、1つの実施形態では、フィルタモジュールに適用される「設計による消泡」の概念の一部と見なすこともできる。典型的には、フィルタ保持部はこの特定の漏斗状の入口領域を有するが、フィルタアセンブリは(フィルタ保持部に適合する限り)特定の設計を有する必要はない。
【0062】
1つの実施形態では、フィルタモジュールの底部は完全に平坦ではなく、むしろフィルタモジュールの内部空間に向かうくぼみを含む。このくぼみは、1つの実施形態では、実質的に、フィルタモジュールの底部(特にフィルタ保持部)の全領域に及ぶ。フィルタモジュールの底部は、フィルタモジュールの外側から見ると凹状であり、フィルタモジュールの内側から見ると凸状である。フィルタモジュールの底部のそのような設計は、1つの実施形態で採用される「設計による消泡」アプローチにおいても役割を果たす。フィルタモジュールの底のくぼみは、シャンパンの瓶のパントのような形として説明することもできる。この形状は、フィルタモジュールを通過する体液の噴出を防ぎ、フィルタモジュールを通過する体液の落下高さを低減する。落下高さが低いほど、体液に泡が発生する危険が低くなる。
【0063】
1つの実施形態では、疎水性フィルタは、容器ハウジングの上部カバーに組み込まれている。そして、体液との接触の危険を大幅に低減するように、容器の上部に配置されている。さらに、容器の上部カバーへのこのような一体化により、容器全体のコンパクトな設計が可能になる。
【0064】
疎水性フィルタは、1つの実施形態では、フィルタハウジングと、フィルタハウジング内に配置されたフィルタ材料とを含む。疎水性フィルタを交換可能な要素として設計することは一般に可能であるが、1つの実施形態では、疎水性フィルタは、体液収集容器全体と一緒に廃棄される使い捨て要素であることが意図されている。疎水性フィルタの寿命は、一般に、体液収集容器の寿命よりも長いので、体液収集容器の意図された操作中に疎水性フィルタを交換する必要は一般にない。
【0065】
疎水性フィルタはまた、メッシュフィルタであり得る。ここで、メッシュサイズは、2から20μm、特に3から19μm、特に4から18μm、特に5から17μm、特に6から16μm、特に7から15μm、特に8から14μm、特に9から13μm、特に10から12μmが適切である。
【0066】
疎水性フィルタは、体液を収集するために、またはより正確には、この容器の体液収集セクションから、真空源によって引き出された空気をろ過することを目的としている。疎水性フィルタは、煙(特に外科的煙)、粒子(骨や組織の断片など)、および血液から真空源を保護し、ポンプに関連付けられて疎水性フィルタから下流に配置される疎水性抗菌フィルタの汚染の負荷を軽減する。
【0067】
1つの実施形態では、疎水性フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、特に延伸PTFE(ePTFE)などの疎水性高分子を含むか、またはそれからなるフィルタ材料を含む。
【0068】
1つの実施形態では、疎水性フィルタは、疎水性高分子、特に疎水性PETメッシュで処理されたポリエステル(PETなど)などの非疎水性高分子を含むか、またはそれからなるフィルタ材料を含む。この要素の血液との接触は時折あり、時間(噴出)が非常に限られており、位置(上部カバー)によって、疎水性処理が血液に浸出する危険は最小限に抑えられる。ただし、疎水性処理は生体適合性でなければならない。
【0069】
1つの実施形態では、疎水性フィルタは、プリーツフィルタ材料を含む。フィルタ材料にプリーツを付けることにより、疎水性フィルタに必要な全体的なスペースを増やさずに、有効なフィルタ表面を増やすことができる。
【0070】
1つの実施形態では、プリーツフィルタ材料は、疎水性フィルタを収納するフィルタ要素の表面積の少なくとも3倍、特に少なくとも4倍、特に少なくとも5倍、特に少なくとも6倍、特に少なくとも7倍、特に少なくとも8倍のフィルタ表面積を有する。フィルタの表面積は、疎水性フィルタを収容するフィルタ要素の表面積の3から8倍、特に4から7倍、特に5から6倍であり得る。たとえば、フィルタ要素の表面積が5から20cm2の場合、フィルタの総表面積は15から160cm2の範囲になる。したがって、そのような配置によって、非常に低い空間要件しかないフィルタ要素に非常に大きなフィルタ表面積を組み込むことが可能である。これは、従来技術から知られている上部カバーと比較して上部カバーの寸法を増加させずに、疎水性フィルタを容器ハウジングの上部カバーに組み込むことを容易にする。
【0071】
1つの実施形態では、容器は、体液として血液を受容するように特に適合されている。すなわち、本説明で言及される体液は、この実施形態では、血液である。
【0072】
収集された体液中の泡の形成が少ないほど、集合的な体液のより良い品質またはより高い収量が達成される。体液としての血液の場合、泡の形成が少ないと溶血が少なくなり、血小板の活性化が低くなり、その結果、個々の流血処理工程からの血液回収率が高くなり、品質が向上する。赤血球の機械的ストレスは溶血の1つの理由である。泡の形成は、生物学的ストレスの指標となる可能性がある。
【0073】
1つの態様では、本発明は、前述の説明による、真空源および容器を含む体液収集装置に関する。真空源は真空ラインを介して容器の真空連結部に直接接続される。真空源と容器の間に真空ライン以外の構成部品はない。
【0074】
従来技術から知られている体液収集装置は、以下の一般的な設定を有する:体液収集容器-真空ライン-過充填保護-煙連結部-煙フィルタ-真空ライン-真空ポンプ。したがって、合計6つの接続点を確立する必要がある。本発明の現在議論されている態様のように真空源が連結部に直接接続されている場合、体液収集容器-真空ライン-真空源の2つの接続点のみを確立する必要がある。したがって、疎水性フィルタを体液収集容器の容器ハウジングに統合することにより、別個の過充填保護、別個の煙連結部、および別個の煙フィルタが不要になる。本発明のこの態様に依拠する場合、それぞれが2つの接続点を有する3つの別個の部品を完全に省略することができる。これにより、すぐに使用できる体液収集装置を準備する医療スタッフの作業負荷が大幅に軽減される。
【0075】
容器ハウジングの体液収集セクションが大量に溢れた場合、収集した体液が疎水性フィルタを通過することがある。その場合、体液が容器ハウジングの真空連結部に接続されている真空ラインに入る可能性がある。1つの実施形態では、真空ラインは、ポンプを保護するための疎水性の抗菌フィルタを含む。そうすれば、そのような少量の体液のオーバーフローは何の影響も及ぼさない。むしろ、一部の疎水性真空ラインは、汚染物質や液体が蓄積している場合でも機能し続けることができる。指針となる原則は、真空ラインの組み立ての複雑さを軽減して、使いやすさを向上させることである。
【0076】
1つの実施形態では、真空ラインは、一体的に形成された抗菌フィルタを含む。したがって、この抗菌フィルタは追加の構成部品を表すのではなく、真空ラインの一体的な部分である。
【0077】
1つの実施形態では、抗菌フィルタは疎水性フィルタである。そうすることで、それはまた、例えば、容器ハウジングの体液収集セクションの過充填のために真空ラインに入った液体が、抗菌フィルタの下流に配置されたポンプに入るのを効果的に防ぐために使用することができる。そのような抗菌フィルタに、フィルタの汚染に対応するための追加のチャンバーを装備することが可能である。そのようにすることで、このようなチャンバーは、過充填のために真空ラインを通して引き出された過剰な体液を受け取るのにも役立つことができる。
【0078】
1つの実施形態では、抗菌フィルタは、真空ラインを通って引き出された流体(特に空気)からウイルスをろ過するのに十分に小さい細孔サイズまたはメッシュサイズを有する。このような場合、抗菌フィルタには抗ウイルス作用もある。そして、それは抗ウイルスフィルタとして表すことができる。
【0079】
1つの態様では、本発明は、前述の説明に従って容器を製造するための方法に関する。容器の容器ハウジングの上部カバーと容器のフィルタ保持部は共成形される。すなわち、それらは1つの部品として製造され、言い換えれば、それらは一体的に形成されるか、または一体的に成形される。そのような製造工程は、従来技術から知られている製造工程よりも著しく容易である。これは、容器ハウジングを製造し、続いてフィルタを容器ハウジングに取り付けるという以前の方法の工程を単一の製造工程、すなわち共成形工程として組み合わせる。それは、例えば、射出成形によって達成することができる。
【0080】
フィルタアセンブリをフィルタ保持部と一緒に共成形することも可能であるが、製造方法の1つの実施形態では他のアプローチがとられる。より正確には、この実施形態では、フィルタアセンブリは、フィルタ保持部が製造された後、フィルタ保持部に(例えば、成形によって)適用される。フィルタ保持部自体を容器ハウジングの上部カバーと共成形することができる。そうすることで、容器ハウジングのフィルタモジュールに適用される様々なメッシュサイズのために様々な型を製造する必要がない。むしろ、この実施形態では、一体的に形成されたフィルタ保持部を備えた多数の容器ハウジング上部カバーを製造するために単一の型のみが必要であり、その後、様々なフィルタアセンブリのフィルタをフィルタ保持部に適用することができ、したがって、さまざまなフィルタ作用(特にフィルタアセンブリの様々なメッシュサイズ)を提供する容器ハウジング上部カバーが得られる。
【0081】
1つの態様では、本発明は、自己血輸血(ICS)を必要とする患者から引き出すための医学的方法に関する。ICSは典型的には、手術または侵襲的処置を受けている患者に使用され、それらの患者に血液または血液成分の自己輸血を提供することを目的としている。この方法は、以下に説明する工程を含む。まず、採血用の容器の血液入口に血液吸引ラインを接続する。さらに、真空ラインは、この容器の真空連結部と真空ポンプなどの真空源に接続されている。そうすることで、真空源が作動したときに、容器の内部に低圧を加えることができる。容器は、前述の説明による容器である。したがって、それは、血液が容器ハウジングの入口セクションに入ることを可能にする血液入口を備えた容器ハウジングを含む。容器ハウジングはさらに、血液収集セクションを含む。真空源は、典型的には、真空ラインを介して容器ハウジングの真空連結部に接続される。
【0082】
さらに、容器ハウジングは、血液収集セクションから入口セクションを分離するフィルタモジュールを含む。より具体的には、フィルタモジュールは、入口セクションと血液収集セクションとの間に配置され、患者から引き出された血液が入口セクションから血液収集セクションに流れるためにフィルタを通過する必要があるようにする。言い換えれば、フィルタモジュールには生側と清浄側がある。生側は入口セクションに面し、清浄側は血液収集セクションに面している。
【0083】
すべての要素が組み立てられると、真空源が作動される。そうすることで、血液は、患者から(例えば、外科的介入中に)血液吸引ラインを通って、血液収集キャニスターの受容セクションに引き込まれる。その後、フィルタを通過して血液収集セクションに到達する。その後、それはさらに処理され、および/または、患者に自己輸血されるために、血液収集容器から引き出され得る。
【0084】
1つの態様では、本発明は、前述の説明に従ってフィルタアセンブリを製造するための方法に関する。すでに述べたように、そのようなフィルタアセンブリは、フィルタ保持部、消泡層、任意で前置フィルタ層およびメッシュフィルタ層を含む。
【0085】
フィルタ保持部は、メッシュフィルタ層の下流に配置されている。次に、メッシュフィルタ層は、消泡層と任意で前置フィルタ層の下流に配置される。
【0086】
この方法は、フィルタ保持部(プラスチック製)が消泡層と任意で前置フィルタ層とメッシュフィルタ層の一部の上にオーバーモールドされ、フィルタシステムのフィルタ層に接触してそれらを安定することを特徴とする。したがって、フィルタ保持部はその場で製造されるため、フィルタ材料の層の周りにフィルタ保持部を配置するために必要な製造工程は1つだけである。これは、従来技術から知られているろ過装置と比較して、フィルタアセンブリの製造を著しく容易にする。フィルタ保持部は、フィルタアセンブリの接地領域を形成することもできる。したがって、それはフィルタアセンブリの基部を形成し、同時に、フィルタ材料層を固定するために基部の近くにフィルタ材料層を埋め込むことができる。
【0087】
1つの実施形態では、フィルタシステムの様々な層は、最初に平らなリボンを形成する。次に、この平らなリボンをフィルタアセンブリの所望の形状にする。この所望の形状は、例えば、シリンダーが円形の接地領域、楕円形の接地領域、長方形の接地領域、または四角形の接地領域を有するシリンダージャケットの形状であり得る。次に、成形されたリボンの自由端が互いに接続される。1つの実施形態では、成形されたリボンの自由端の接続は、溶接工程によって達成することができる。あるいは、接続は非溶接の接合部として形成することもできる。所定の形状は、フィルタシステムの層をフィルタ保持部で部分的にオーバーモールドすることによって固定される。本発明の1つの態様によるフィルタアセンブリのこの製造方法は、従来技術に従って適用される製造技術よりも著しく容易である。より正確には、従来技術では、通常、2つの溶接リボンで作製された管状フィルタの配置を切断する必要がある。このような製造工程は、2つの管状リボンを溶接および切断すると粒子が生成され、フィルタを通過する流体に浸出する可能性があるため、非常に難しく、粒子汚染の危険が高まる。
【0088】
記載されたフィルタアセンブリのすべての実施形態は、任意の所望の方法で組み合わせることができ、記載された用途、体液を収集するための記載された容器および記載された方法に移すことができ、それぞれの場合にその逆も可能である。
【0089】
本発明の態様のさらなる詳細は、例示的な実施形態および付随する図に関して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】血液収集キャニスターの1つの実施形態の斜視図である。
【0091】
【
図2】
図1のキャニスターの広い側の側面図である。
【0092】
【
図3】キャニスターの狭い側から見た
図1のキャニスターの上部の詳細図である。
【0093】
【
図4A】本発明によるフィルタシステムの第1の実施形態の概略図である。
【0094】
【
図4B】本発明によるフィルタシステムの第2の実施形態の概略図である。
【0095】
図1は、体液を収集するための容器として機能する血液収集キャニスター1の斜視図である。血液収集キャニスター1は、上部カバー3を有するキャニスターハウジング2を備える。3つの異なる血液入口4が上部カバー3に配置されている。典型的には、これらの血液入口4のうちの1つのみが、患者からキャニスターハウジング2の内部に血液を引き込むために、血液吸引ラインを血液収集キャニスター1に接続するために使用される。最も右側(
図4を参照して)の血液入口4は、3/8インチの接続として設計されている。中央の血液入口4は、ルアー入口として設計されており、最も左側の血液入口4は、典型的な血液吸引ラインを収容するためのサイズの吸引ライン連結部として設計されている。
【0096】
血液入口4のそれぞれは、上部カバー3の内側に配置された血液受容セクション5と流体的に接続されている。この血液受容セクション5は、フィルタ保持部として機能する骨格構造7を含むフィルタモジュール6(フィルタアセンブリとして機能する)の内部と流体連通している。
【0097】
骨格構造7の内部には、フィルタシステム8の材料層が配置されている。フィルタ材料またはフィルタシステム8は、医療グレードのメッシュで作られた消泡層とメッシュフィルタ層とを含む。血液は、血液入口4を通って血液収集キャニスター1の受容セクション5に入ると、フィルタモジュール6の内部に流れ、または、引き込まれる。その後、フィルタ材料8を通過し、キャニスターハウジング2の血液収集セクション9に到達する。
【0098】
血液収集キャニスター1は、キャニスターハウジング2の上部セクション3に、真空ラインに接続され、真空ラインを介して、真空源として機能する真空ポンプに接続される真空連結部10を備える。真空連結部10を通って接続された真空ラインに引き込まれる、血液収集セクション9に存在する空気または他の気体は、血液収集セクション9と真空連結部10との間に配置された疎水性フィルタ11を通過する必要がある。
【0099】
血液収集キャニスター1は、キャニスターハウジング2の内部内で達成することができる負圧の量を制限する安全弁12をさらに備える。したがって、安全弁12は、キャニスターハウジング2の内部における望ましくない低い陰圧のために血液収集キャニスター1が内破する危険を低減するのに役立つ。
【0100】
外側から見ると、フィルタモジュール6の底部13は凹状の形状を有し、すなわち、フィルタモジュール6の内部に向かうくぼみを備える。
【0101】
血液入口4を通ってキャニスターハウジング2に入り、フィルタ材料8を通過した血液は、血液収集セクション9に収集される。次に、血液収集キャニスター1から血液出口14を通って引き出されて、さらに処理され、および/または、患者に自己輸血される。
【0102】
図2は、
図1の血液収集キャニスター1を、血液収集キャニスター1の広い側の側面図で示している。同じ要素に対して同じ参照符号が使用される。
図1に関して与えられた説明が参照される。
図2では、フィルタモジュール6とキャニスターハウジング2の血液受容セクション5との間の接続が見られる。
図2から明らかなように、血液は、血液受容セクション5からフィルタモジュール6の内部にのみ入ることができ、次に、キャニスターハウジング2の血液収集セクション9に到達するためにフィルタ材料8を通過する必要がある。したがって、フィルタモジュール6は、血液受容セクション5を血液収集セクション9から分離する。
【0103】
図3は、
図1の血液収集キャニスター1の狭い側から見た部分的に切り取った図を示している。同じ要素に対して同じ参照符号が再び使用される。上記の説明をもう一度参照する。
【0104】
図3の描写では、漏斗状の入口15がフィルタ要素の入口区域に配置されていることがわかる。血液受容セクション5からフィルタモジュール6に入る血液は、この漏斗形の入口15を通過する必要がある。漏斗形状の入口15は、フィルタ材料8およびフィルタモジュール6の凹状の底部13と共に、フィルタモジュール6を通過する血液中の泡の形成を低減するのに役立つ。このような泡の形成の減少は、泡立った血液よりも良好な品質の血液をもたらし、溶血速度が低いために収集収率が高くなる。
【0105】
さらに、
図3の描写において、疎水性フィルタ11がプリーツされたフィルタ材料を含むことが分かる。このフィルタ材料の折り畳みにより、フィルタの有効表面積が大幅に増加する。例を挙げると、疎水性フィルタ11のフィルタ材料は、約60cm
2の全体的なフィルタ表面積を有する。疎水性フィルタ自体は、キャニスターハウジング2の上部カバー3において約10cm
2のスペースしかとらない。したがって、フィルタ材料を折り畳むことにより、有効なフィルタ表面積は、疎水性フィルタ要素11が必要とする表面積の6倍の大きさにされる。
【0106】
図4Aは、本発明によるフィルタシステム8の第1の実施形態を示している。これは、フィルタシステム8が消泡層8aおよびメッシュ層8bになっていることを示している。
【0107】
消泡層8aは、泡沫を閉じ込めるための3次元(3D)のエンボス構造を備えたオープンメッシュ生地でできている。
図4A(および
図4B)に示される実施形態の場合、消泡層の空間的な構造は、一定の高さの規則的に配置された突起およびくぼみを有するダイヤモンドパターンである。この構造または織りパターンは、ゴーフリー・ダイヤモンド(Gauffree Diamond)としても知られている。くぼみは、形成された生体液の泡を捕捉するためのセルを形成する。
【0108】
消泡層8aは、下流の前置フィルタ層8cまたはメッシュ層8bの厚さよりも厚い厚さを有し得る。1つの実施形態では、消泡層8aは、2から3本のフィラメントの厚さよりも厚い厚さを有し得る。消泡層の3次元構造と厚さは、生地の細孔がすべて同じ平面内にあるわけではないことを意味する。
【0109】
消泡層の繊維材料は、繊維径が200~300μm、例えば、200μm、250μm、300μmのポリプロピレン(PP)である。メッシュ数は12~16n/cmの間である。メッシュサイズまたは開口部は250~300μmの間である。
【0110】
メッシュフィルタ層8bは、グリッドまたはネットを形成する相互接続する糸からなる。メッシュフィルタ材料8bのメッシュサイズは40μmと120μmの間であり、したがって消泡層のメッシュサイズよりも小さい。フィルタシステムが消泡層およびメッシュフィルタ層のみからなる
図4Aに示される実施形態の場合、メッシュフィルタ材料のメッシュサイズは120μmであり得る。このようなフィルタシステムは、大孔径ろ過に適用できる。
【0111】
図8Bに示すフィルタシステムは、3つの層で構成されている。消泡層8a、メッシュフィルタ層8b、および消泡層8aとメッシュフィルタ層8bの間に配置(またはサンドイッチ)された前置フィルタ層8cである。
【0112】
前置フィルタ層8cは、三葉断面を有する不織布繊維からなり、一方、メッシュフィルタ層8bは、規則的に形成された医療グレードのメッシュからなる。
【0113】
フィルタシステムが3つの層(消泡層8a、前置フィルタ層8cおよびメッシュフィルタ層8b)からなる
図4Bに示される実施形態の場合、メッシュフィルタ材料のメッシュサイズは40μmであり得る。このようなフィルタシステムは、低孔径ろ過に適用できる。
【0114】
図4Aおよび4Bの両方に示されているように、血流は、消泡層8aを通ってフィルタシステム8に入る。血液に含まれる泡沫の泡は、消泡層8aの3D構造内に閉じ込められ、したがって、下流の前置フィルタ層8cおよびメッシュフィルタ層8bに入ることが防がれる。メッシュフィルタ側でフィルタシステムを出る血流には泡がない。
【0115】
圧力は、使用する材料の細孔径とその坪量に依存する。圧力はキャピラリフローポロメトリーによって決定される。この方法では、フィルタ材料の孔径(MFP、平均流量孔径)を決定できる。