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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】高調波抑制装置および空気調和システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241227BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
H02M7/12 Z
H02M1/08 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022527315
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2020020731
(87)【国際公開番号】W WO2021240642
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石倉 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】橋本 暁範
(72)【発明者】
【氏名】石川 秀太
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050177(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0090542(KR,A)
【文献】特開平11-075363(JP,A)
【文献】特開2016-158432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00~ 7/98
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の相を有する交流電源に接続された高調波発生負荷と並列に接続され、前記高調波発生負荷が発生する高調波を抑制する高調波抑制装置であって、
前記複数の相に対応する複数の上下アームが並列に接続された整流器であって、前記複数の上下アームは上側スイッチング素子と前記上側スイッチング素子に直接に接続されている下側スイッチング素子とを有しており、前記複数の上下アームにおいて、前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子との接続点である中点に、前記交流電源の前記複数の相のうち対応する相が接続されている整流器と、
前記交流電源の前記複数の相のそれぞれの相から前記高調波発生負荷に入力される負荷電流の瞬時値を検出するように構成されている負荷電流検出部と、
前記複数の上下アームに対応して設けられ、前記複数の上下アームのうち対応する前記上下アームの前記上側スイッチング素子をON/OFF動作させる複数の第1駆動回路と、
前記複数の上下アームに対応して設けられ、前記複数の上下アームのうち対応する前記上下アームの前記下側スイッチング素子をON/OFF動作させる複数の第2駆動回路と、
前記上側スイッチング素子および前記下側スイッチング素子の前記ON/OFF動作を前記複数の第1駆動回路および前記複数の第2駆動回路に実施させる制御信号を生成する制御装置と
を備え、
前記複数の第1駆動回路は、
前記複数の上下アームのうち対応する前記上下アームの前記上側スイッチング素子を駆動させる電源として作用するブートストラップコンデンサーと、
前記ブートストラップコンデンサーを充電させる制御電源と
を有し、
前記制御装置は、前記高調波発生負荷が動作状態で、且つ、前記交流電源の前記複数の相のうち前記高調波発生負荷に入力される負荷電流が発生しない相がない場合、前記第1駆動回路の前記ブートストラップコンデンサーを充電する第1充電方式を実施するものであり、
前記第1充電方式において、
前記複数の相の中で、前記複数の相の負荷電流の瞬時値を比較したときに最も負荷電流の瞬時値が小さい相を充電相として選択して、前記充電相の前記負荷電流の瞬時値が前記充電相以外の前記複数の相と比較したときに最小である状態が続いている期間に、
前記複数の第2駆動回路のうち前記充電相に対応する前記第2駆動回路に、前記複数の上下アームのうち前記充電相に対応する前記上下アームの前記下側スイッチング素子をON動作させることで、前記充電相に対応する前記第1駆動回路の前記ブートストラップコンデンサーを充電する
高調波抑制装置。
【請求項2】
前記負荷電流検出部が前記複数の相の全ての相で、前記交流電源から前記高調波発生負荷に入力される前記負荷電流の前記瞬時値を検出した場合に、
前記制御装置は、
前記第1充電方式において、
前記交流電源の前記複数の相の前記負荷電流の中で、前記交流電源の任意の位相における前記複数の相の負荷電流の瞬時値を比較したときに最も前記負荷電流の瞬時値が小さい相を前記充電相として選択して、前記充電相の前記負荷電流の瞬時値が前記充電相以外の前記複数の相と比較したときに最小である状態が続いている期間に、前記複数の第2駆動回路のうち前記充電相に対応する前記第2駆動回路に前記充電相に対応する前記下側スイッチング素子を0%<デューティー比≦100%でON動作させて、前記充電相に対応する前記第1駆動回路の前記ブートストラップコンデンサーを充電する、
請求項1に記載の高調波抑制装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記複数の相の全ての相の前記負荷電流の実効値の平均に対する、前記複数の相のうち前記負荷電流の前記実効値が最大をとる相の前記負荷電流の前記実効値と前記複数の相のうち前記負荷電流の前記実効値が最小をとる相の前記負荷電流の前記実効値の差分の比率を求め、
前記充電相に対応する前記第1駆動回路の前記ブートストラップコンデンサーを充電する期間を、前記比率に基づいて制限し、
前記ブートストラップコンデンサーの充電量が第1閾値以上になるまで、前記充電相が充電対象となる複数の周期の期間にわたって繰り返し前記ブートストラップコンデンサーを充電させる、
請求項1または2に記載の高調波抑制装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記高調波発生負荷が動作状態で、且つ、前記交流電源の前記複数の相のうち前記高調波発生負荷に入力される負荷電流が発生しない相がある場合、
各相の前記負荷電流の前記実効値が第2閾値以下となる期間がある場合、当該期間を第1期間として判別し、
前記第1期間の直前の期間において充電相であった相に基づいて、前記第1期間の充電相を決定する第2充電方式を実施する
請求項に記載の高調波抑制装置。
【請求項5】
前記第1駆動回路は、前記ブートストラップコンデンサーの充電方式として、前記第1充電方式含む複数の充電方式を記憶するメモリを有し、
前記制御装置は、
前記負荷電流検出部における前記複数の相の前記負荷電流の前記瞬時値の検出の有無、または、前記交流電源の平衡および不平衡の別に基づいて、前記複数の充電方式の中から1つを選択する切替信号を前記第1駆動回路に対して出力し、
前記第1駆動回路は、前記切替信号によって指定された充電方式を前記メモリから読み出して、当該充電方式で、前記ブートストラップコンデンサーの充電を行う、
請求項1~4のいずれか一項に記載の高調波抑制装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記ブートストラップコンデンサーの充電中は、前記切替信号の出力を変化させない、
請求項5に記載の高調波抑制装置。
【請求項7】
前記第1駆動回路は、
前記制御電源の前記ブートストラップコンデンサーを充電する制御電圧を調整する制御電圧調整回路を有し、
前記制御電圧調整回路は、
前記負荷電流検出部が検出した前記複数の相の前記負荷電流について、前記実効値が第3閾値以上である前記相がある場合は、当該相に対応する前記第1駆動回路への前記制御電源の前記制御電圧を上昇させ、
前記負荷電流検出部が検出した前記複数の相の前記負荷電流について、前記実効値が前記第3閾値未満である前記相がある場合は、当該相に対応する前記第1駆動回路への前記制御電源の前記制御電圧を下降させる、
請求項3、請求項4、請求項3又は4を引用する請求項5、及び請求項3又は4を引用する請求項5を引用する請求項6のいずれか一項に記載の高調波抑制装置。
【請求項8】
前記上側スイッチング素子および前記下側スイッチング素子は、ワイドバンドギャップ半導体によって構成されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の高調波抑制装置。
【請求項9】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、GaN(窒化ガリウム)、SiC(炭化珪素)、又は、ダイヤモンドである、
請求項8に記載の高調波抑制装置。
【請求項10】
前記交流電源は、三相交流電源であり、
前記整流器は、前記三相交流電源の各相に対応させて設置された3つの前記上下アームの並列接続によって構成されている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の高調波抑制装置。
【請求項11】
圧縮機、熱交換器、および、膨張弁が冷媒配管を介して接続された冷媒回路と、
前記冷媒回路を駆動する前記高調波発生負荷と、
前記高調波発生負荷が発生する高調波電流を抑制する請求項1~10のいずれか一項に記載の高調波抑制装置と
を備えた、空気調和システム。
【請求項12】
前記高調波抑制装置は、前記空気調和システムの本体に内蔵されている、
請求項11に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、系統電源へ流れる電流の高調波成分を抑制する高調波抑制装置、および、それを備えた空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高調波抑制装置として、整流器を構成する上側スイッチング素子と下側スイッチング素子とをON/OFF動作させる駆動回路が、ブートストラップコンデンサーを有しているものがある(例えば、特許文献1参照)。上側スイッチング素子と下側スイッチング素子とは直列接続されてレグを構成している。整流器は、複数のレグが並列接続されて構成されている。
【0003】
特許文献1では、ブートストラップコンデンサーが、各レグの上側スイッチング素子を駆動させるための電源として作用する。ブートストラップコンデンサーは、制御電源から充電される。
【0004】
特許文献1では、高調波抑制動作を起動のためのブートストラップコンデンサーの充電のために、交流電源電圧の位相に基づいて、充電したい相の下側スイッチング素子を、交流電源の相電圧が最小の位相をとるときに常時ON動作させる。また、交流電源の相電圧が最小の位相ではなく、かつ、負極性であるときに、PWM制御を実施する。
【0005】
特許文献1で示される高調波抑制装置では、当該PWM制御を行うことにより、交流電源電圧の位相が最小相のときのみ常時ON動作させる場合と比較して、以下の効果を得ている。すなわち、交流電源電圧の位相が最小相ではなく、かつ、負極性であるときにおいても、急峻な大電流とならないレベルの電源短絡電流を流して、強制的にブートストラップコンデンサーを充電するため、充電時間を短縮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-50177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1の場合、交流電源電圧の状態に基づいて、ブートストラップコンデンサーの充電を実施している。そのため、交流電源電圧の不平衡が著しい場合、あるいは、電源側のインピーダンスが大きい等の理由により交流電源の電源電圧に歪みが重畳している場合には、交流電源電圧の位相を正しく認識することができない。これにより、本来とは異なる充電期間で充電を開始してしまい、想定よりも急峻な大電流が流れてしまうという問題点があった。
【0008】
また、上記の特許文献1には、高調波発生負荷の整流後に、リアクターの電流に基づいて、ブートストラップコンデンサーを充電する手段が記載されている。この場合、高調波抑制するための整流前の負荷電流の電流検出手段の他に、整流後のリアクターの電流検出手段が新たに必要になる。さらに、リアクターの電流だけでは、検出した電流がどの相からの電流によるものか判別できないため、電源電圧および位相を検出する手段が必要となる。
【0009】
本開示は、かかる課題を解決するためになされたもので、交流電源の影響を受けることなく、ブートストラップコンデンサーを充電することが可能な、高調波抑制装置およびそれを備えた空気調和システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る高調波抑制装置は、複数の相を有する交流電源に接続された高調波発生負荷と並列に接続され、前記高調波発生負荷が発生する高調波を抑制する高調波抑制装置であって、前記複数の相に対応する複数の上下アームが並列に接続された整流器であって、前記複数の上下アームは上側スイッチング素子と前記上側スイッチング素子に直接に接続されている下側スイッチング素子とを有しており、前記複数の上下アームにおいて、前記上側スイッチング素子と前記下側スイッチング素子との接続点である中点に、前記交流電源の前記複数の相のうち対応する相が接続されている整流器と、前記交流電源の前記複数の相のそれぞれの相から前記高調波発生負荷に入力される負荷電流の瞬時値を検出するように構成されている負荷電流検出部と、前記複数の上下アームに対応して設けられ、前記複数の上下アームのうち対応する前記上下アームの前記上側スイッチング素子をON/OFF動作させる複数の第1駆動回路と、前記複数の上下アームに対応して設けられ、前記複数の上下アームのうち対応する前記上下アームの前記下側スイッチング素子をON/OFF動作させる複数の第2駆動回路と、前記上側スイッチング素子および前記下側スイッチング素子の前記ON/OFF動作を前記複数の第1駆動回路および前記複数の第2駆動回路に実施させる制御信号を生成する制御装置とを備え、前記複数の第1駆動回路は、前記複数の上下アームのうち対応する前記上下アームの前記上側スイッチング素子を駆動させる電源として作用するブートストラップコンデンサーと、前記ブートストラップコンデンサーを充電させる制御電源とを有し、前記制御装置は、前記高調波発生負荷が動作状態で、且つ、前記交流電源の前記複数の相のうち前記高調波発生負荷に入力される負荷電流が発生しない相がない場合、前記第1駆動回路の前記ブートストラップコンデンサーを充電する第1充電方式を実施するものであり、前記第1充電方式において、前記複数の相の中で、前記複数の相の負荷電流の瞬時値を比較したときに最も負荷電流の瞬時値が小さい相を充電相として選択して、前記充電相の前記負荷電流の瞬時値が前記充電相以外の前記複数の相と比較したときに最小である状態が続いている期間に、前記複数の第2駆動回路のうち前記充電相に対応する前記第2駆動回路に、前記複数の上下アームのうち前記充電相に対応する前記上下アームの前記下側スイッチング素子をON動作させることで、前記充電相に対応する前記第1駆動回路の前記ブートストラップコンデンサーを充電するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る高調波抑制装置によれば、電源電圧に歪みが重畳している場合においても、交流電源の影響を受けることなく、上側スイッチング素子を駆動させるためのブートストラップコンデンサーを充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る高調波抑制装置4を備えた空気調和システム1の概略構成を示す回路ブロック図である。
図2】実施の形態1に係る高調波抑制装置4における第1駆動回路13r~13tの構成を示す回路構成図である。
図3】実施の形態1に係る高調波抑制装置4の制御装置10の構成を示したブロック図である。
図4】実施の形態1に係る下側スイッチング素子70x~70zのON/OFF動作の一例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る高調波抑制装置4の発熱を抑制するための制御電圧調整回路20を有する第1駆動回路13の一例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る高調波抑制装置4のブートストラップコンデンサー18の充電制御例を説明するフローチャートである。
図7】実施の形態1における負荷電流が発生しない相がある場合の高調波抑制装置4におけるブートストラップコンデンサー18の充電制御例を説明するフローチャートである。
図8】R相、S相、T相の負荷電流を示す図である。
図9】実施の形態1に係る高調波抑制装置4の設置方法を模式的に示す図である。
図10】実施の形態1に係る高調波抑制装置4の設置方法を模式的に示す図である。
図11】実施の形態1に係る高調波抑制装置4の設置方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る高調波抑制装置および空気調和システムの実施の形態について図面を参照して説明する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、以下の実施の形態およびその変形例に示す構成のうち、組み合わせ可能な構成のあらゆる組み合わせを含むものである。また、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0014】
また、本開示の実施の形態に係る各プログラムは、記載された順序に沿って時系列に行われる処理であるが、必ずしも時系列に処理されなくても、並列的または個別に実効される処理を含んでもよい。
【0015】
また、本開示の実施の形態に係る高調波抑制装置および空気調和システムの各機能をハードウェアとソフトウェアのどちらで実現してもよい。各ブロック図における各機能は、回路デバイス等のハードウェアで実現してもよく、あるいは、演算装置上で実効されるソフトウェアで実現してもよい。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る高調波抑制装置4を備えた空気調和システム1の概略構成を示す回路ブロック図である。空気調和システム1において、高調波抑制装置4は、高調波発生負荷3から交流電源2に流れる電流の高調波成分を抑制する。高調波とは、歪みが重畳された波形の中に含まれている、基本波の整数倍の周波数をもつ波のことである。
【0017】
図1に示すように、空気調和システム1は、系統電源として機能する交流電源2に接続されている。空気調和システム1は、高調波発生負荷3と、高調波抑制装置4と、冷媒回路5とを備えている。交流電源2は、例えば三相交流電源であり、高調波発生負荷3に電力を供給する。以下では、交流電源2から延びている3本の出力線を、それぞれ、第1の出力線(R相)、第2の出力線(S相)、第3の出力線(T相)と呼ぶ。
【0018】
(高調波発生負荷3の構成)
高調波発生負荷3の構成について説明する。高調波発生負荷3は、例えば、整流器30、直流リアクトル31、平滑コンデンサー32、逆変換器(図示せず)等を備える電力変換装置であり、冷媒回路5に電力を供給する。整流器30は、交流電源2の交流電圧を直流電圧に整流する。整流器30の出力側には、直流リアクトル31を介して、平滑コンデンサー32が並列接続されている。平滑コンデンサー32は、整流器30から直流リアクトル31を介して入力される直流電圧を平滑する。なお、高調波発生負荷3と冷媒回路5との間には、必要に応じて、インバータ回路を設けるようにしてもよい。
【0019】
(冷媒回路5の構成)
次に、冷媒回路5の構成について説明する。冷媒回路5は、例えば、圧縮機50、2つの熱交換器51および52、および、膨張弁53が、冷媒配管54を介して接続されて構成されている。冷媒回路5は、さらに、四方弁、および、アキュムレータなどを有していてもよい。
【0020】
圧縮機50は、低圧のガス冷媒を吸入して圧縮し、高圧のガス冷媒として吐出する。圧縮機50は、例えば、インバータ圧縮機である。インバータ圧縮機は、インバータ回路などの制御により、単位時間あたりに送り出す冷媒の量を変化させることができる。
【0021】
2つの熱交換器51および52のそれぞれは、伝熱管とフィンとを有している。熱交換器51および52は、例えば、フィンアンドチューブ式熱交換器である。熱交換器51および52のそれぞれは、伝熱管の内部を流れる冷媒と、伝熱管の外部を流れる空気との間の熱交換を行う。冷媒回路5が空気調和装置の場合、熱交換器51および52は、一方が蒸発器として機能し、他方が凝縮器として機能する。
【0022】
膨張弁53は、凝縮器で液化した冷媒を蒸発器で蒸発しやすいように、流入された液冷媒を絞り作用により減圧させて流出する。また、膨張弁53は、蒸発器の負荷に応じた適切な冷媒量を維持するように、冷媒量を調整する。膨張弁53は、例えば、電子膨張弁から構成される。膨張弁53は、図1に示すように、2つの熱交換器51および52との間に、冷媒配管54によって接続されている。
【0023】
(高調波抑制装置4の構成)
高調波抑制装置4は、高調波発生負荷3が交流電源2に対して高調波電流を流すため、当該高調波電流を抑制するために設けられている。高調波抑制装置4は、交流電源2に接続された高調波発生負荷3と並列に接続され、高調波発生負荷3から発生する高調波を抑制する。高調波抑制装置4は、図9に示すように、空気調和システム1の本体に内蔵されるか、または、図10に示すように、空気調和システム1の本体に外付けされる。あるいは、高調波抑制装置4は、図11に示すように、空気調和システム1に対して、別体で構成されて、別置きされていてもよい。なお、図9図11は、実施の形態1に係る高調波抑制装置4の設置方法を模式的に示す図である。
【0024】
高調波抑制装置4は、図1に示すように、リプルフィルタ6と、スイッチング回路7と、リアクトル8と、コンデンサー9と、制御装置10と、負荷電流検出部11と、補償電流検出部12とを有している。
【0025】
リプルフィルタ6は、高調波抑制装置4から出力される補償電流のリプル成分を抑制する。リプルフィルタ6は、リアクトル64a、64bおよび64cと、コンデンサー65a、65bおよび65cとを有している。リアクトル64a、64bおよび64cは、それぞれ、交流電源2の第1の出力線(R相)、第2の出力線(S相)、第3の出力線(T相)に直列に接続されている。また、コンデンサー65aの一端は、交流電源2の第1の出力線(R相)に接続され、他端は、接続点63に接続されている。コンデンサー65bの一端は、交流電源2の第2の出力線(S相)に接続され、他端は、接続点63に接続されている。コンデンサー65cの一端は、交流電源2の第3の出力線(T相)に接続され、他端は、接続点63に接続されている。
【0026】
リアクトル8は、スイッチング回路7とリプルフィルタ6とを接続している。リアクトル8は、リアクトル8a、8bおよび8cを有している。リアクトル8a、8bおよび8cは、それぞれ、交流電源2の第1の出力線(R相)、第2の出力線(S相)、第3の出力線(T相)に直列に接続されている。
【0027】
コンデンサー9は、スイッチング回路7に並列に接続されている。
【0028】
スイッチング回路7の構成について説明する。スイッチング回路7では、上側に配置されたスイッチング素子70r、70sおよび70tと下側に配置されたスイッチング素子70x、70yおよび70zとが、それぞれそれと逆並列に接続されたダイオード71を持つ。以下ではこの構成をアームと呼ぶ。また、アームは2つのアームが直列接続されて構成されており、以下では、これを、上下アームと呼ぶ。3つの上下アームは、並列に接続されている。さらに、これらの上下アームには、コンデンサー9が並列接続されている。スイッチング素子70rとスイッチング素子70xとの接続点、スイッチング素子70sとスイッチング素子70yとの接続点、及び、スイッチング素子70tとスイッチング素子70zとの接続点を、それぞれ、中点72a、72bおよび72cと呼ぶ。
【0029】
スイッチング回路7においては、交流電源2の第1の出力線(R相)が、リプルフィルタ6のリアクトル64aとリアクトル8aとを介して、中点72aに接続されている。また、交流電源2の第2の出力線(S相)は、リプルフィルタ6のリアクトル64bとリアクトル8bとを介して、中点72bに接続されている。同様に、交流電源2の第3の出力線(T相)は、リプルフィルタ6のリアクトル64cとリアクトル8cとを介して、中点72cに接続されている。
【0030】
また、スイッチング回路7においては、スイッチング素子70r~70tおよび70x~70zのそれぞれに対し、ダイオード71が逆並列に接続されている。さらに、スイッチング素子70r~70tおよび70x~70zのそれぞれには、これらのON/OFF動作をするための駆動信号を出力する駆動回路13r~13t及び13x~13zが設置されている。駆動回路13r~13t及び13x~13zは、制御装置10に接続されており、制御装置10から制御信号61を受信し、制御信号61に基づいて、対応するスイッチング素子のON/OFF動作を実施する。
【0031】
また、以下では、6つのスイッチング素子70r~70tおよび70x~70zのうち、スイッチング素子70r~70tを上側スイッチング素子と呼び、スイッチング素子70x~70zを下側スイッチング素子と呼ぶ。なお、以下では、上側スイッチング素子70r~70tを駆動する駆動回路13r~13tを第1駆動回路13r~13tと呼び、下側スイッチング素子70x~70zを駆動する駆動回路13x~13zを第2駆動回路13x~13zと呼ぶ。
【0032】
なお、並列接続された3つの上下アームそれぞれのスイッチング素子70r~70tおよび70x~70zに逆並列接続されたダイオード71は、実施の形態1に係る高調波抑制装置4の「整流器」を構成している。すなわち、図1のスイッチング回路7から、第1駆動回路13r~13tおよび第2駆動回路13x~13zを抜いたものが、実施の形態1に係る高調波抑制装置4の「整流器」になる。
【0033】
図2は、実施の形態1に係る高調波抑制装置4における第1駆動回路13r~13tの構成を示す回路構成図である。ここでは、説明を簡略化させるために、第1駆動回路13r~13tを、まとめて、第1駆動回路13と呼ぶ。第1駆動回路13は、上側スイッチング素子70r~70tをそれぞれ駆動させるものである。第1駆動回路13は、図2で示されるように、電流制限抵抗14と、ダイオード15と、ブートストラップコンデンサー18と、駆動IC(Integrated Circuit)17とを有している。ブートストラップコンデンサー18は、上側スイッチング素子70r~70tを駆動させる電源として作用する。ブートストラップコンデンサー18は、制御電源16からダイオード15を介して充電される。駆動IC17は、ブートストラップコンデンサー18の両端電圧によって電源供給される。駆動IC17は、制御装置10から制御信号61を受信する。駆動IC17は、制御信号61に基づいて、上側スイッチング素子70r、70sおよび70tのそれぞれに対して駆動信号62を出力して、上側スイッチング素子70r、70sおよび70tのそれぞれをON/OFF動作させる。電流制限抵抗14は、制御電源16からの電流を制限する。なお、図2で示されるように、電流制限抵抗14は、ダイオード15のアノード側に接続されているが、これに限らず、カソード側に接続されていてもよい。
【0034】
なお、下側スイッチング素子70x~70zをそれぞれ駆動させる第2駆動回路13x~13zは、基本的に、図2に示した第1駆動回路13r~13tと同様の構成を有している。但し、第2駆動回路13x~13zにおいては、ダイオード15を設けなくてもよい。その理由について説明する。第2駆動回路13x~13zは、図1に示すように、コンデンサー9の負極を共通化できるため、ダイオード15を不要とする構成になっており、ブートストラップコンデンサー18は、常時充電されている。
【0035】
図1の説明に戻る。制御装置10は、第1駆動回路13r~13tおよび第2駆動回路13x~13zに、スイッチング素子70r~70tおよび70x~70zをON/OFF動作させる制御信号61を出力する。制御装置10は、図3に示すように、充電相決定部10aと、制御信号生成部10bとを備えている。図3は、実施の形態1に係る高調波抑制装置4の制御装置10の構成を示したブロック図である。充電相決定部10aは、R相、S相、T相の上側スイッチング素子70r~70tの中から、ブートストラップコンデンサー18を充電する相を決定する。制御信号生成部10bは、高調波電流を抑制するための制御信号61を生成する。
【0036】
ここで、制御装置10のハードウェア構成について説明する。制御装置10は処理回路から構成される。処理回路は、専用のハードウェア、または、プロセッサから構成される。専用のハードウェアは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)などである。プロセッサは、メモリに記憶されるプログラムを実行する。制御装置10はメモリを有している。当該メモリは、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、もしくは、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスクなどのディスクである。
【0037】
また、図1に示す負荷電流検出部11は、交流電源2から高調波発生負荷3に入力される負荷電流を検出する。負荷電流検出部11は、負荷電流検出部11rおよび11tを有している。負荷電流検出部11rは、交流電源2の第1の出力線(R相)を流れる負荷電流を検出し、負荷電流検出部11tは、交流電源2の第3の出力線(T相)を流れる負荷電流を検出する。負荷電流検出部11rおよび11tは、制御装置10に接続されており、検出した負荷電流の電流情報を制御装置10に送信する。なお、図1の例では、交流電源2の第2の出力線(S相)には、負荷電流を検出する負荷電流検出部が設けられていない。第2の出力線(S相)を流れる負荷電流は、制御装置10が、第1の出力線(R相)を流れる負荷電流および第3の出力線(T相)を流れる負荷電流に基づいて、演算により求める。なお、交流電源2の第2の出力線(S相)に、第2の出力線(S相)を流れる負荷電流を検出する負荷電流検出部を設けるようにしてもよい。なお、負荷電流検出部11は、例えば、電流センサから構成されている。
【0038】
図1に示す補償電流検出部12は、高調波発生負荷3から発生する高調波電流を抑制するために、高調波抑制装置4から出力される補償電流を検出する。補償電流検出部12は、補償電流検出部12aおよび12cを有している。補償電流検出部12aは、リアクトル8aと中点72aとの間(R相)に設けられ、そこを流れる補償電流を検出する。また、補償電流検出部12cは、リアクトル8cと中点72cとの間(T相)に設けられ、そこを流れる補償電流を検出する。補償電流検出部12aおよび12cは、制御装置10に接続されており、検出した補償電流の電流情報を制御装置10に送信する。なお、図1の例では、リアクトル8bと中点72bとの間(S相)には、そこを流れる補償電流を検出する補償電流検出部が設けられていない。そのため、制御装置10が、補償電流検出部12aが検出したR相の補償電流と補償電流検出部12cが検出したT相の補償電流とに基づいて、リアクトル8bと中点72bとの間に流れるS相の補償電流を演算により求める。なお、これに限らず、リアクトル8bと中点72bとの間(S相)にも、補償電流検出部を設けるようにしてもよい。なお、補償電流検出部12は、例えば、電流センサから構成されている。
【0039】
(ブートストラップコンデンサー18の充電動作)
以下、実施の形態1に係る高調波抑制装置4が、ブートストラップコンデンサー18を充電させる動作について説明する。高調波抑制装置4は、スイッチング回路7の下側スイッチング素子70x~70zをON駆動させて、上側スイッチング素子70r~70tを駆動する第1駆動回路13r~13tのブートストラップコンデンサー18を充電させる。
【0040】
まず、高調波発生負荷3より負荷電流が発生している場合において、高調波抑制装置4がブートストラップコンデンサー18を充電させる動作について説明する。以下では、説明を簡略化するために、充電する相の上側スイッチング素子70r~70tを、単に、上側スイッチング素子70と呼び、当該相の下側スイッチング素子70x~70zを、単に、下側スイッチング素子70と呼ぶこととする。また、充電する相を充電相と呼ぶこととする。さらに、上側スイッチング素子70r~70tの第1駆動回路13r~13tを、単に、駆動回路13と呼ぶこととする。
【0041】
充電相の上側スイッチング素子70を駆動する駆動回路13のブートストラップコンデンサー18を充電するには、充電相の上下アームの中点72の電位をコンデンサー9の負極電位付近まで低くする必要がある。そうすることで、制御電源16の制御電圧が、中点72の電位よりも高くなる。このためには、充電相の下側スイッチング素子70と逆並列接続されているダイオード71に電流が流れるようにするか、あるいは、下側スイッチング素子70をON駆動すればよい。これにより、制御電源16から電流制限抵抗14とダイオード15を介してブートストラップコンデンサー18に電力が供給される。
【0042】
下側スイッチング素子70をON駆動する場合には、制御装置10の充電相決定部10aは、負荷電流検出部11が検出した高調波発生負荷3の負荷電流に基づいて、負荷電流が最小となる相を選択する。選択された相が、充電相となる。制御装置10の制御信号生成部10bは、充電相のブートストラップコンデンサー18を充電するために、充電相に対応する下側スイッチング素子を駆動するための制御信号61を生成する。当該制御信号61は、充電相の下側スイッチング素子70のデューティー比を、0%<デューティー比≦100%となる範囲に指定する。これにより、交流電源2の出力に、歪み等の電源電圧位相の判別に影響を与える要素が重畳されている場合でも、負荷電流1周期の間に、各相のブートストラップコンデンサー18の充電期間が存在するようになり、上側スイッチング素子70の起動性が改善する。
【0043】
ここで、ブートストラップコンデンサー18の充電量が低下すると、上側スイッチング素子70r~70tの動作に影響を与える。そのため、下側スイッチング素子70x~70zのデューティー比は0%を超える範囲に設定する必要がある。当該範囲は、ブートストラップコンデンサー18の充電量の低下が少ない範囲である。
【0044】
次に、交流電源2が不平衡の場合において、高調波抑制装置4がブートストラップコンデンサー18を充電させる動作について説明する。
【0045】
制御装置10は、交流電源2に不平衡が発生しているか否かについては、以下のように判定する。すなわち、制御装置10は、各相の負荷電流の実効値を比較して、負荷電流の最大値をとる相と最小値をとる相との比が、閾値U以上か否かを判定する。当該比が閾値U未満の場合は、交流電源2に不平衡が発生していないと判定する。一方、当該比が閾値U以上の場合は、交流電源2に不平衡が発生していると判定する。このとき、閾値Uは負荷電流の大きさにより変更してもよい。またはあらかじめ決められた固定値であってもよい。
【0046】
また、交流電源2が不平衡の場合には、不平衡の条件によっては、高調波発生負荷3において電流がほとんど流れない相が発生することがある。このときには、電流がほとんど流れない相については、負荷電流検出部11によって負荷電流を検出することができない。この場合には、制御装置10の充電相決定部10aは、すべての相の電流がほとんど流れていない期間を検出して、当該期間の直前の期間において充電を行った相に基づいて、充電相を決定する。その後、制御信号生成部10bは、充電相の下側スイッチング素子70を駆動する制御信号61を生成して、充電相の上側スイッチング素子70のブートストラップコンデンサー18を充電する必要がある。
【0047】
このためには、充電相決定部10aは、各相の負荷電流の実効値あるいは絶対値の平均値などの大きさを用いて、当該大きさが最大となる相と最小となる相との大きさの比が、予め設定された閾値P以上であるか否かを判定する。すなわち、最大となる相の大きさを、最小となる相の大きさで除算した除算結果が、閾値P以上であるか否かを判定する。最大となる相と最小となる相との大きさの比が、閾値P以上であった場合には、充電相決定部10aは、電流がほとんど流れていない期間を判別する。当該期間を、第1期間と呼ぶ。充電相決定部10aは、第1期間の直前の期間において充電を行った相に基づいて、充電相を決定する。ここで、R相、S相、T相の負荷電流は、図8に示すように、周期的に変化する。図8は、直流リアクトルおよび平滑コンデンサーを持つ三相交流電源が入力される整流器のR相、S相、T相の負荷電流を例として示す図である。図8において、横軸は位相、縦軸は負荷電流を示す。また、実線80はR相の負荷電流を示し、破線81はS相の負荷電流を示し、点線82はT相の負荷電流を示す。図8において、期間(1)は、T相の負荷電流が最小の期間で、期間(2)は、R相の負荷電流が最小の期間で、期間(3)は、S相の負荷電流が最小の期間である。このように、R相、S相、T相の負荷電流は周期的に変化し、負荷電流が最小になる相は、R相、S相、T相、R相、S相、・・・の順になる。従って、第1期間の直前の第0期間において充電を行った相がR相の場合には、次に負荷電流が最小となる相はS相であるため、充電相決定部10aは、第1期間の充電相をS相に決定する。また、第1期間の直前の第0期間において充電を行った相がS相の場合には、次に負荷電流が最小になる相はT相であるため、充電相決定部10aは、第1期間の充電相をT相に決定する。同様に、第1期間の直前の第0期間において充電を行った相がT相の場合には、次に負荷電流が最小となる相はR相であるため、充電相決定部10aは、第1期間の充電相をR相に決定する。ここで、図4は、交流電源2が平衡の場合のR相、S相、T相の負荷電流と下側スイッチング素子70x~70zのON/OFF動作例を示す図である。図4(a)において、横軸は位相、縦軸は負荷電流を示す。また、図4(b)において、横軸は位相、縦軸はON/OFF動作を示す。点線は負荷電流が最小となる相が切り替わるタイミングを示す。図4において、期間(1)は、T相の負荷電流が最小の期間で、期間(2)は、R相の負荷電流が最小の期間で、期間(3)は、S相の負荷電流が最小の期間である。従って、第1駆動回路13のブートストラップコンデンサー18を充電するためには、この期間の間において、デューティー比を、0%<デューティー比≦100%となる範囲の制御信号を生成すればよい。
【0048】
制御信号生成部10bは、第1期間において、充電相の下側スイッチング素子70を駆動して、上側スイッチング素子70のブートストラップコンデンサー18を充電するための制御信号61を生成する。これにより、負荷電流が流れない相においても、ブートストラップコンデンサー18が充電され、各相にブートストラップコンデンサー18の充電期間が存在するようになる。図4は、実施の形態1に係る下側スイッチング素子70x~70zのON/OFF動作の一例を示す図である。このうち、図4(a)は、交流電源2に流れる高調波発生負荷3により発生した負荷電流の波形を示す波形図である。また、図4(b)は、下側スイッチング素子70x~70zをON/OFF動作させる駆動信号62x、62yおよび62zの動作波形を示す波形図である。
【0049】
また、高調波発生負荷3より負荷電流が発生している場合の上記の充電方法においては、負荷電流に基づいて充電相を決定しているため、交流電源2の不平衡時においては、1周期のうち電流が流れる期間が、平衡時よりも短くなる。そのため、制御装置10は、それぞれの相の負荷電流から全ての相の負荷電流の平均に対する、負荷電流が最大をとる相と最小をとる相の差分の比率を、不平衡率として求める。そして、制御装置10は、負荷電流の実効値に基づいて、負荷電流が最も小さい相については、不平衡率により充電期間を制限する。これにより、急峻な大電流とならずに、ブートストラップコンデンサー18を充電することができる。1周期における充電量が十分でない場合には、ブートストラップコンデンサー18の充電量が閾値H(第1閾値)以上になるまで、複数周期の期間にわたって繰り返し充電を実施する。これにより、充電量を確保することが出来る。空気調和システム1以外の高調波発生負荷3等の運転による影響により発生した電源の不平衡が解消されれば、負荷電流の不平衡率は小さくなり、充電期間の制限が解除されることにより、充電時間を短くすることができる。また、制限できる充電期間を大きくすると、ブートストラップコンデンサー18の容量が大きくなってしまうため、ブートストラップコンデンサー18の容量に応じて、充電量の低下が少ない範囲で制限することが望ましい。
【0050】
また、負荷電流が大きく、高調波抑制装置4が抑制する高調波電流が多い場合には、高調波電流を抑制するための補償電流が大きくなり、高調波抑制装置4のスイッチング素子が高調波電流の少ない場合と比べて発熱する。図5は、実施の形態1に係る高調波抑制装置4の発熱を抑制するための制御電圧調整回路20を有する第1駆動回路13の一例を示す図である。
【0051】
図5に示す第1駆動回路13は、図2の構成に対して、制御電圧調整回路20と、メモリ21と、ブートストラップ制御回路24と、切替回路25とが追加されている。
【0052】
制御電圧調整回路20には、制御装置10から、高調波抑制装置4の運転状態に基づいて決定された切替信号が入力される。制御電圧調整回路20は、切替信号に基づいて、ブートストラップコンデンサー18を充電する最大電圧を決定する。このとき、負荷電流検出部11が検出した負荷電流が閾値G(第3閾値)以上場合には、スイッチング素子の発熱量が多いため、制御装置10は、負荷電流の値に基づいて、第1切替信号を出力する。制御電圧調整回路20は、第1切替信号に基づいて、制御電源16の制御電圧を、例えば一定量だけ高くする。これにより、スイッチング素子の損失を抑制する。一方、負荷電流が閾値G未満の場合には、スイッチン素子の発熱量が相対的に小さくなるため、運転における温度余裕ができる。この場合には、制御装置10が、負荷電流の値に基づいて、第2切替信号を出力する。制御電圧調整回路20は、第2切替信号に基づいて、制御電源16の制御電圧を、例えば一定量だけ低くする。これにより、スイッチング損失が増加するものの、スイッチング時のノイズを低減することが出来る。ここでは、制御電圧調整回路20での調整を、閾値以上と閾値未満の2段階としているが、負荷電流の値または高調波抑制装置4の運転状態に応じてさらに細分化してもよい。
【0053】
メモリ21は、高調波抑制装置4のブートストラップコンデンサー18の充電方式として、複数の充電方式を記憶している。図5の例では、メモリ21は、第1充電方式を記憶した第1記憶部22と、第2充電方式を記憶した第2記憶部23とを有している。第1記憶部22が記憶する第1充電方式は、負荷電流に基づくブートストラップコンデンサー18の充電方式である。第1充電方式は、高調波発生負荷3が動作状態で、且つ、交流電源2が不平衡あるいは電源インピーダンスが閾値Iより大きい場合に適用される。第2記憶部23が記憶する第2充電方式は、交流電源2の電源電圧に基づくブートストラップコンデンサー18の充電方式である(例えば特許文献1参照)。第2充電方式は、交流電源2の正常時または負荷電流検出部11が負荷電流を検出していない場合に適用される。第2充電方式では、交流電源2の位相を基に、対応する下側スイッチング素子のデューティー比を0%を超える100%以下に制限して、当該下側スイッチング素子をスイッチングさせる。これにより、上側スイッチング素子の駆動回路13のブートストラップコンデンサー18が充電される。第1充電方式の詳細については、図6のフローチャートおよび図7のフローチャートを用いて後述する。
【0054】
第1充電方式で充電を行うか、あるいは、第2充電方式で充電を行うかについては、制御装置10から切替回路25に入力される切替信号によって選択される。制御装置10は、負荷電流のみに基づいて、切替信号を出力してもよいが、交流電源2の状態および電源インピーダンスの値などの他のパラメータも判定に用いる場合には、判定テーブルを予めメモリに記憶しておいてもよい。その場合には、制御装置10は、どのような条件を満たした場合に第1切替信号を出力し、どのような条件を満たした場合に第2切替信号を出力するのかを予め定めた判定テーブルをメモリに記憶する。そして、当該判定テーブルに基づいて切替信号を出力するようにすればよい。切替回路25は、切替信号に従って、第1記憶部22から第1充電方式を読み出すか、あるいは、第2記憶部23から第2充電方式を読み出す。これにより、ブートストラップ制御回路24は、選択された充電方式で、且つ、負荷電流の検出値または電源電圧の検出値のうち、当該充電方式に対応する検出値を用いて、ブートストラップコンデンサー18を充電するための制御信号を、駆動IC17へ出力する。
【0055】
このように、第1記憶部22が記憶する第1充電方式は、高調波発生負荷3が動作状態で負荷電流が検出され、且つ、交流電源2が不平衡あるいは電源インピーダンスが大きい場合に適用する。第2記憶部23が記憶する第2充電方式は、交流電源2の電源正常時または負荷電流を検出していない場合に適用する。このように、交流電源2または負荷電流の状態に応じて、第1充電方式と第2充電方式とを切り替えて用いることで、交流電源2の状態、および、高調波発生負荷3の負荷電流の状態に関わらず、ブートストラップコンデンサー18に充電が可能である。なお、ここでは、負荷電流が発生している場合においては、第1記憶部22が記憶する第1充電方式を適用するとしたが、その場合に限らず、第2記憶部23が記憶する第2充電方式を適用するようにしてもよい。ただし、制御の安定化の観点から、ブートストラップコンデンサー18を充電している間は、充電方式の切替の動作を行わないようにする。そのため、制御装置10は、ブートストラップコンデンサー18の充電中は、切替信号の出力を変化させない。
【0056】
実施の形態1では、以上の構成および動作のように、負荷電流が流れない場合には、電源電圧に基づいて、充電相のブートストラップコンデンサー18を充電する。また、負荷電流が流れる場合には、負荷電流に基づいて、充電相のブートストラップコンデンサー18を充電する。これにより、交流電源2の電圧に歪みが重畳している影響または交流電源2が不平衡となることによる影響を、最小限に抑制することができるので、高調波抑制装置4の起動を円滑にすることができる。また、実施の形態1では、高調波抑制装置4が交流電源2の位相を正しく認識できないことに起因して、急峻な大電流が流れたことにより、高調波抑制装置4が起動できないという問題が解消される。そのため、空気調和システム1と高調波抑制装置4とが連携運転している場合においても、高調波抑制装置4が起動できないことに空気調和システム1の運転が妨げられるといった問題も生じることがなくなる。
【0057】
なお、ここでは、充電方式として、第1充電方式と第2充電方式との2種類としているが、充電方式の個数は3以上であってもよい。具体的には、後述する図6または図7のフローから一部分のステップを削除した充電方式、あるいは、後述する図6または図7のフローに何らかのステップを追加した充電方式なども用意しておいてもよい。その場合、それらの充電方式を第3の充電方式および第4の充電方式などとして、予めメモリ21に記憶しておき、制御装置10からの切替信号により、それらの中から1つを選択して用いる。
【0058】
なお、実施の形態1に係る高調波抑制装置4のスイッチング素子70r~70tおよび70x~70zは、ワイドバンドギャップ半導体で構成されていてもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、例えば、GaN(窒化ガリウム)、SiC(炭化珪素)、または、ダイヤモンドである。
【0059】
上側スイッチング素子70r~70t及び下側スイッチング素子70x~70zが、ワイドバンドギャップ半導体によって構成されている場合の効果について説明する。ワイドバンドギャップ半導体は、耐電圧が高く、許容電流密度も高い。そのため、スイッチング素子70r~70tおよび70x~70zの小型化が可能となる。その結果、そのようなスイッチング素子70r~70tおよび70x~70zを組み込んだ半導体モジュールの小型化も可能となる。また、ワイドバンドギャップ半導体は、耐熱性もよいので、スイッチング素子70r~70tおよび70x~70zに対するヒートシンクを小型化することもできる。さらに、ワイドバンドギャップ半導体をスイッチング素子70r~70tおよび70x~70zに適用した場合、そのオン抵抗が低く、導通損失が小さくなり、また、スイッチング損失も小さい。その他、必要となるゲート電荷量も小さくなるため、ブートストラップコンデンサー18の充電時間が短くなる。
【0060】
(実施の形態1の動作)
図6は、実施の形態1に係る高調波抑制装置4のブートストラップコンデンサー18の充電制御例を説明するフローチャートである。図6は、R相、S相、および、T相のすべての相で、負荷電流が発生している場合のフローを示している。すなわち、図6のフローは、図5に示す第1記憶部22に記憶された第1充電方式に該当する。図6のフローは、負荷電流がすべての相に流れている場合に適用される。
【0061】
(ステップS1)
制御装置10は、R相、S相およびT相の負荷電流の実効値が閾値Aよりも大きいか判定する。閾値Aは、予め設定された値であり、充電開始か否かを判定するための充電開始閾値である。高調波抑制装置4は、負荷電流の実効値が閾値Aを超えている場合は、ステップS2に進む。一方、負荷電流の実効値が閾値Aを超えていない場合は、図6の処理をそのまま終了する。
【0062】
(ステップS2)
制御装置10は、R相、S相およびT相の中から、負荷電流が最も小さい相を検出する。
【0063】
(ステップS3)
制御装置10は、前回の充電相の負荷電流の最小値に基づいて、各相の充電を開始する負荷電流の閾値Bを設定する。なお、これに限らず、閾値Bは、予め設定された固定値であってもよい。
【0064】
(ステップS4)
制御装置10は、R相、S相およびT相の中で、R相の負荷電流が最も小さいか判定する。制御装置10は、R相の負荷電流が最も小さい場合はステップS5に進む。一方、R相の負荷電流が最も小さくない場合は、ステップS7に進む。
【0065】
(ステップS5)
制御装置10は、R相の負荷電流が閾値Bを下回っているか判定する。制御装置10は、R相の負荷電流が閾値Bを下回っている場合は、ステップS6に進む。一方、R相の負荷電流が閾値Bを下回っていない場合は、処理をそのまま終了する。
【0066】
(ステップS6)
制御装置10は、R相の駆動回路13rのブートストラップコンデンサー18を充電するための制御信号61を出力する。これにより、駆動IC17が、下側スイッチング素子70xを駆動させるための駆動信号62を出力する。これにより、下側スイッチング素子70xがON駆動され、R相の駆動回路13rのブートストラップコンデンサー18が充電される。
【0067】
(ステップS7)
制御装置10は、R相、S相およびT相の中で、S相の負荷電流が最も小さいか判定する。制御装置10は、S相の負荷電流が最も小さい場合はステップS8に進む。一方、S相の負荷電流が最も小さくない場合は、ステップS10に進む。
【0068】
(ステップS8)
制御装置10は、S相の負荷電流が閾値Bを下回っているか判定する。制御装置10は、S相の負荷電流が閾値Bを下回っている場合はステップS9に進む。一方、S相の負荷電流が閾値Bを下回っていない場合は、処理をそのまま終了する。
【0069】
(ステップS9)
制御装置10は、S相の駆動回路13sのブートストラップコンデンサー18を充電するための制御信号61を出力する。これにより、駆動IC17が、下側スイッチング素子70yを駆動させるための駆動信号62を出力する。これにより、下側スイッチング素子70yがON駆動され、S相の駆動回路13sのブートストラップコンデンサー18が充電される。
【0070】
(ステップS10)
制御装置10は、T相の負荷電流が閾値Bを下回っているか判定する。制御装置10は、T相の負荷電流が閾値Bを下回っている場合はステップS11に進む。一方、T相の負荷電流が閾値Bを下回っていない場合は、処理をそのまま終了する。
【0071】
(ステップS11)
制御装置10は、T相の駆動回路13tのブートストラップコンデンサー18を充電するための制御信号61を出力する。これにより、駆動IC17が、下側スイッチング素子70zを駆動させるための駆動信号62を出力する。これにより、下側スイッチング素子70zがON駆動され、T相の駆動回路13tのブートストラップコンデンサー18が充電される。
【0072】
図7は、実施の形態1における負荷電流が発生しない相がある場合の高調波抑制装置4におけるブートストラップコンデンサー18の充電制御例を説明するフローチャートである。すなわち、図7のフローは、図5に示す第2記憶部22が記憶する第1充電方式に該当する。図7のフローは、負荷電流が流れていない相がある場合に適用する。
【0073】
(ステップS21)
制御装置10は、R相、S相およびT相の負荷電流の実効値から、実効値が最大の相と、最小の相とを選択する。以下では、最大の相の実効値を、最大実効値と呼び、最小の相の実効値を、最小実効値と呼ぶ。制御装置10は、最大実効値と最小実効値との比が閾値P以上か否かを判定する。制御装置10は、当該比が閾値P以上の場合は、ステップS22に進む。一方、制御装置10は、当該比が閾値P未満の場合は、処理をそのまま終了する。
【0074】
(ステップS22)
制御装置10は、R相、S相およびT相のすべての相の負荷電流が、予め設定された閾値Q(第2閾値)以下か否かを判定する。制御装置10は、R相、S相およびT相のすべての相の負荷電流が、閾値Q以下の場合は、ステップS23に進む。一方、R相、S相およびT相の少なくとも1つの相の負荷電流が閾値Qを超えていれば、制御装置10は、処理をそのまま終了する。
【0075】
(ステップS23)
制御装置10は、R相、S相およびT相のすべての相の負荷電流が閾値Q以下の第1期間を検出する。制御装置10は、第1期間の直前の期間の負荷電流が流れているときに、充電した相がR相か判定する。制御装置10は、充電した相がR相である場合は、ステップS24に進む。一方、R相でない場合は、ステップS25に進む。
【0076】
(ステップS24)
制御装置10は、S相をブートストラップコンデンサー18の充電相として設定する。
【0077】
(ステップS25)
制御装置10は、第1期間の直前の期間の負荷電流が流れているときに、充電した相がS相か判定する。制御装置10は、充電した相がS相である場合は、ステップS26に進む。一方、S相でない場合は、ステップS27に進む。
【0078】
(ステップS26)
制御装置10は、T相をブートストラップコンデンサー18の充電相として設定する。
【0079】
(ステップS27)
制御装置10は、第1期間の直前の期間の負荷電流が流れているときに、充電した相がT相か判定する。制御装置10は、充電した相がT相である場合は、ステップS28に進む。一方、T相でない場合は、そのまま処理を終了する。
【0080】
(ステップS28)
高調波抑制装置4は、R相をブートストラップコンデンサー18の充電相として設定する。
【0081】
(ステップS29)
制御装置10は、すべての相の負荷電流が閾値Q以下でほとんど流れていない期間に、充電相のブートストラップコンデンサー18を充電したいタイミングで充電するために、充電開始遅れ時間が経過しているか判定する。制御装置10は、充電開始遅れ時間が経過している場合はステップS30へ進む。一方、充電開始遅れ時間が経過していない場合は、処理をそのまま終了する。
【0082】
(ステップS30)
制御装置10は、充電相のブートストラップコンデンサー18を充電する。
【0083】
実施の形態1では、図6に示すように、制御装置10が、負荷電流が最も小さい相を、充電相として検出する。制御装置10は、充電相の負荷電流が、前回の充電相の負荷電流の最小値に基づいて決定された閾値Bを下回った場合に、ブートストラップコンデンサーの充電を行う。
【0084】
また、実施の形態1では、図7に示すように、R相、S相およびT相の中で、負荷電流が流れない相が発生している場合には、制御装置10は、R相、S相およびT相の負荷電流の実効値の中から、最大実効値と最小実効値とを選択する。制御装置10は、最大実効値と最小実効値との比が閾値P以上の場合には、すべての相に電流がほとんど流れていない第1期間を判別する。制御装置10は、第1期間の直前の期間に検出した相を判定し、当該相に基づいて充電相を決定する。
【0085】
以上のように、実施の形態1の高調波抑制装置4は、負荷電流が流れる場合は、負荷電流に基づいて充電を行い、負荷電流が流れない場合は、電源電圧に基づいて充電を行う。交流電源2の電圧不平衡が著しい、または、電源インピーダンスが大きいなどの理由で、交流電源2の電源電圧には、歪みが重畳している場合がある。実施の形態1では、そのような場合においても、交流電源2の影響を受けることなく、上側スイッチング素子を駆動させるためのブートストラップコンデンサー18を充電することができる。これにより、高調波抑制装置4を安定して起動させることができる。
【0086】
なお、従来の充電方法として、電源電圧と位相とを検出して充電相を決定する方法が考えられるが、電源電圧に歪みが重畳している場合には、交流電源2の位相を正しく認識することができない。その場合、最悪の場合には、高調波抑制装置4が起動できない場合がある。実施の形態1では、当該課題が解決でき、上記のように、高調波抑制装置4を安定して起動させることができる。
【0087】
また、交流電源2の相間電圧不平衡、または、電源電圧歪みが大きい場合には、従来の充電方式では、交流電源2の位相情報が安定しない。その場合に、電源の位相情報を用いて、ブートストラップコンデンサー18を充電すると、電源位相情報が安定しないため、充電タイミングがずれてしまい、過電流により高調波抑制装置4が起動できない場合がある。実施の形態1では、負荷電流からブートストラップコンデンサー18の充電タイミングを決定するため、このような過電流の問題も回避することができる。
【0088】
実施の形態1では、高調波抑制装置4のブートストラップコンデンサー18の充電は、負荷電流が最小をとる相の負荷電流が、前回の負荷電流の最小値より決定した閾値Bを下回った場合に、実施する。このとき、ブートストラップコンデンサー18の充電を開始する負荷電流は、あらかじめ決められた固定値であってもよい。また、負荷電流が流れない相が発生している場合には、負荷電流が流れる相の中で最大実効値をとる相と負荷電流が流れない相の実効値電流との比を求める。当該比が閾値P以上の場合に、負荷電流がほとんど流れていない期間の直前に充電した相に基づいて充電相を決定し、充電を実施する。これらによって、高調波抑制装置4は、交流電源2に歪み等の電源電圧位相の判別に影響を与える要素が重畳されている場合でも、当該影響を受けることがない。したがって、高調波抑制装置4は、電源短絡させることなく、ブートストラップコンデンサー18を充電することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 空気調和システム、2 交流電源、3 高調波発生負荷、4 高調波抑制装置、5 冷媒回路、6 リプルフィルタ、7 スイッチング回路、8 リアクトル、8a リアクトル、8b リアクトル、8c リアクトル、9 コンデンサー、10 制御装置、10a 充電相決定部、10b 制御信号生成部、11 負荷電流検出部、11r 負荷電流検出部、11t 負荷電流検出部、12 補償電流検出部、12a 補償電流検出部、12c 補償電流検出部、13 駆動回路、13r 第1駆動回路、13s 第1駆動回路、13t 第1駆動回路、13x 第2駆動回路、13y 第2駆動回路、13z 第2駆動回路、14 電流制限抵抗、15 ダイオード、16 制御電源、18 ブートストラップコンデンサー、20 制御電圧調整回路、21 メモリ、22 第1記憶部、23 第2記憶部、24 ブートストラップ制御回路、25 切替回路、30 整流器、31 直流リアクトル、32 平滑コンデンサー、50 圧縮機、51 熱交換器、52 熱交換器、53 膨張弁、54 冷媒配管、61 制御信号、62 駆動信号、62x 駆動信号、62y 駆動信号、62z 駆動信号、63 接続点、64 リアクトル、64a リアクトル、64b リアクトル、64c リアクトル、65 コンデンサー、65a コンデンサー、65b コンデンサー、65c コンデンサー、70 スイッチング素子、70r 上側スイッチング素子、70s 上側スイッチング素子、70t 上側スイッチング素子、70x 下側スイッチング素子、70y 下側スイッチング素子、70z 下側スイッチング素子、71 ダイオード、72 中点、72a 中点、72b 中点、72c 中点。
図1
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