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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】車載用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20241227BHJP
   H01Q 5/392 20150101ALI20241227BHJP
   H01Q 9/30 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H01Q5/392
H01Q9/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022540277
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027479
(87)【国際公開番号】W WO2022024966
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020126223
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】原 文平
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-088198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 5/392
H01Q 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナベースと、
前記アンテナベースとともに、収容空間を形成するアンテナケースと、
前記収容空間に収容されるモノポールアンテナと、
前記モノポールアンテナの上方に設けられた無給電素子と、
を備え
前記無給電素子が、互いに離間した複数の素子部分から構成されている、車載用アンテナ装置。
【請求項2】
アンテナベースと、
前記アンテナベースとともに、収容空間を形成するアンテナケースと、
前記収容空間に収容されるモノポールアンテナと、
前記モノポールアンテナの上方に設けられた無給電素子と、
を備え
前記無給電素子が、ラジオ放送用アンテナの一部分として機能する、車載用アンテナ装置。
【請求項3】
アンテナベースと、
前記アンテナベースとともに、収容空間を形成するアンテナケースと、
前記収容空間に収容されるモノポールアンテナと、
前記モノポールアンテナの上方に設けられた無給電素子と、
を備え
λを前記モノポールアンテナの動作周波数のうち、前記無給電素子によって利得を増強させる周波数の波長としたとき、無給電素子の前記モノポールアンテナ側の端部と、前記モノポールアンテナの前記無給電素子側の端部と、の間の距離がλ/2-λ/4以上λ/2+λ/4以下である、車載用アンテナ装置。
【請求項4】
前記無給電素子が2次放射素子として機能する、請求項1~3のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項5】
前記モノポールアンテナがテレマティクス用アンテナである、請求項1~4のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【請求項6】
複数の前記モノポールアンテナを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の車載用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セルラーアンテナを備える様々な車載用アンテナ装置が開発されている。例えば特許文献1において、セルラーアンテナは、アンテナベースに対して垂直に立てられた絶縁性基板と、絶縁性基板に設けられた導電部と、を有している。特許文献2において、セルラーアンテナは、板金を折り曲げて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/191811号
【文献】米国特許第9093750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、第5世代移動通信システム(5G)、特に、Sub-6、Frequency Range 1(FR1)等の6GHz未満の周波数帯域での需要が高まっている。このような需要によって、近年では、5GHz~6GHz等の高周波数帯域を含む広帯域での高利得が要請されている。同時に、アンテナの小型化も求められている。一方、例えば特許文献1及び2に記載されているように、絶縁性基板に設けられた導電部や、折り曲げられた板金等によって構成されたセルラーアンテナのみでは、アンテナを小型化した場合に高周波帯域の水平面方向における利得、すなわち、高周波帯域の所望の方向における利得の確保が難しくなり得る。
【0005】
本発明の目的の一例は、アンテナを小型化しつつ高周波数帯域の所望の方向における利得を確保することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
アンテナベースと、
前記アンテナベースとともに、収容空間を形成するアンテナケースと、
前記収容空間に収容されるモノポールアンテナと、
前記モノポールアンテナの上方に設けられた無給電素子と、
を備える車載用アンテナ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、アンテナを小型化しつつ高周波数帯域の所望の方向における利得を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図2】比較例に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図3】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の第1モノポールアンテナの周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。
図4】比較例に係る車載用アンテナ装置の第1モノポールアンテナの周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。
図5】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の第2モノポールアンテナの周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。
図6】比較例に係る車載用アンテナ装置の第2モノポールアンテナの周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。
図7】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の第1モノポールアンテナの水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置の第1モノポールアンテナの水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。
図8】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の第2モノポールアンテナの水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置の第2モノポールアンテナの水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。
図9】実施形態2に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
図10】第1フィルタのSパラメータの順方向伝達係数S21の0~7GHzの周波数特性を示すグラフである。
図11】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の第1モノポールアンテナの水平面方向における平均利得、実施形態2に係る車載用アンテナ装置の第1モノポールアンテナの水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置の第1モノポールアンテナの水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。
図12】実施形態1に係る車載用アンテナ装置の第2モノポールアンテナの水平面方向における平均利得、実施形態2に係る車載用アンテナ装置の第2モノポールアンテナの水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置の第2モノポールアンテナの水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。
図13】実施形態2に係る車載用アンテナ装置のAM/FMラジオ放送用アンテナの水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置のAM/FMラジオ放送用アンテナの水平面方向における平均利得の80MHz~120MHzの周波数特性を示すグラフである。
図14】変形例に係る車載用アンテナ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0011】
図1は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aの斜視図である。
【0012】
図1において、第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは、それぞれ、車載用アンテナ装置10Aの前後方向、左右方向及び上下方向を示している。第1方向Xを示す矢印の方向である第1方向Xの正方向は、車載用アンテナ装置10Aの前方向を示している。第1方向Xを示す矢印の反対方向である第1方向Xの負方向は、車載用アンテナ装置10Aの後方向を示している。第2方向Yを示す矢印の方向である第2方向Yの正方向は、車載用アンテナ装置10Aの左方向を示している。第2方向Yを示す矢印の反対方向の第2方向Yの負方向は、車載用アンテナ装置10Aの右方向を示している。第3方向Zを示す矢印の方向である第3方向Zの正方向は、車載用アンテナ装置10Aの上方向を示している。第3方向Zを示す矢印の反対方向の第3方向Zの負方向は、車載用アンテナ装置10Aの下方向を示している。また、本実施形態における水平面方向とは、XY平面に平行な方向を意味している。後述する図2図9及び図14においても同様である。
【0013】
車載用アンテナ装置10Aは、アンテナベース100、第1アンテナ部12、第2アンテナ部14、第3アンテナ部16、第4アンテナ部18及びアンテナケース600を備えている。アンテナケース600は、アンテナベース100を上方から覆い、収容空間を形成している。第1アンテナ部12、第2アンテナ部14、第3アンテナ部16及び第4アンテナ部18は、アンテナケース600の収容空間に収容されている。なお、図1では、アンテナケース600は、透過して描写されている。
【0014】
アンテナベース100は、車両のルーフ上に搭載されている。ルーフは、グランドとなっている。
【0015】
第1アンテナ部12は、第1基板112、アンテナエレメント200及び第1無給電素子300を有している。
【0016】
アンテナエレメント200は、アンテナベース100上に配置された第1基板112上に設けられている。第1基板112は、例えば、PCB(Printed Circuit Board)である。
【0017】
アンテナエレメント200は、複数のモノポールアンテナを有している。具体的には、アンテナエレメント200は、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220を有している。第1モノポールアンテナ210は、第1セクション212及び第2セクション214を含んでいる。第2モノポールアンテナ220は、第3セクション222及び第4セクション224を含んでいる。第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220は、それぞれ、第1基板112上に設けられた第1ポート216及び第2ポート226に接続されている。第1ポート216に接続される第1セクション212及び第2セクション214、第2ポート226に接続される第3セクション222及び第4セクション224が後述する自己相似形状を有するので、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220は、広帯域で動作することができる。なお、アンテナエレメント200は、単一のモノポールアンテナのみを有していてもよい。第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の各々は、テレマティクス用アンテナであり、例えば、セルラーアンテナである。また、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の各々は、例えば、垂直偏波の送信及び受信の少なくとも一方を行う。ただし、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の各々は、V2X(Vehicle-to-everything)用アンテナ、Wi-Fi(登録商標)用アンテナ等、セルラーアンテナと異なるアンテナであってもよい。
【0018】
本実施形態において、モノポールアンテナとは、車両のルーフ等のグランドに対向する給電部を有していて、当該給電部を挟んでグランドの反対側に動作周波数帯の下限の波長のおおよそ1/4の長さのセクションを放射素子として有するアンテナである。このような構造においては、グランドを挟んで当該セクションの反対側に仮想的なもう1つの放射素子が配置されているようにして、モノポールアンテナは動作することができる。例えば、モノポールアンテナは、疑似的にテーパードスロットアンテナやボウタイアンテナと同様にして動作することができる。
【0019】
第1モノポールアンテナ210は、例えば、板金からなっている。本実施形態では、第1モノポールアンテナ210は、略U字形状の板金を折り曲げることで形成されている。なお、第1モノポールアンテナ210は、PCB等の基板に設けられた導電パターンからなっていてもよい。
【0020】
第1セクション212の下端及び第2セクション214の下端は、第1ポート216に接続されている。第1ポート216は、第1モノポールアンテナ210の給電部となっている。第1セクション212及び第2セクション214は、第1ポート216に関して対称な形状を有している。具体的には、第1セクション212の幅は、第1セクション212の下端から上端に向かうにつれて段階的に又は漸次的に大きくなっている。したがって、第1セクション212の上端の近傍における第1セクション212の幅は、第1セクション212の下端の近傍における第1セクション212の幅より広くなっている。第2セクション214の幅についても同様である。このようにして、第1モノポールアンテナ210は、自己相似形状となっている。第1モノポールアンテナ210が自己相似形状であることで、第1モノポールアンテナ210は広帯域で動作することができる。
【0021】
なお、自己相似形状のアンテナとして、バイコニカルアンテナやボウタイアンテナといった、スケール(サイズ比)を変えても形状が相似形状になるアンテナがある。自己相似形状のアンテナの前提として、アンテナの電気的特性は、アンテナサイズ又は周波数が変わっても原理的には同じ特性を示す。実際の設計では、インピーダンスの調整等のため、バイコニカルアンテナやボウタイアンテナ等の二等辺三角形の放射素子の形状を変形させ、本実施形態における第1モノポールアンテナ210のような形状とすることができる。このような場合であっても、自己相似形状により得られる一定の電気的特性を利用することができる。
【0022】
第2モノポールアンテナ220は、第1モノポールアンテナ210の前方に配置されている。第2モノポールアンテナ220は、例えば、板金からなっている。本実施形態では、第2モノポールアンテナ220は、略U字形状の板金からなっている。なお、第2モノポールアンテナ220は、PCB等の基板に設けられた導電パターンからなっていてもよい。
【0023】
第3セクション222の下端及び第4セクション224の下端は、第2ポート226に接続されている。第2ポート226は、第2モノポールアンテナ220の給電部となっている。第3セクション222及び第4セクション224は、第2ポート226に関して対称な形状を有している。具体的には、第3セクション222の幅は、第3セクション222の下端から上端に向かうにつれて段階的に又は漸次的に大きくなっている。したがって、第3セクション222の上端の近傍における第3セクション222の幅は、第3セクション222の下端の近傍における第3セクション222の幅より広くなっている。第4セクション224の幅についても同様である。このようにして、第2モノポールアンテナ220は、自己相似形状となっている。
【0024】
なお、第1モノポールアンテナ210は、第1セクション212及び第2セクション214の一方のみを有していてもよい。同様にして、第2モノポールアンテナ220は、第3セクション222及び第4セクション224の一方のみを有していてもよい。すなわち、車載用アンテナ装置10Aは、少なくとも1つのセクションを備えるようにすることができる。例えば、車載用アンテナ装置10Aは、第1セクション212、第2セクション214、第3セクション222及び第4セクション224のうちの1つのみを備えていてもよい。
【0025】
第1モノポールアンテナ210又は第2モノポールアンテナ220の形状は本実施形態に係る略U字形状に限定されない。例えば、各モノポールアンテナは、棒状、板状、面状、扇形状、略V字形状等であってもよい。また、各モノポールアンテナは、自己相似形状でなくてもよい。
【0026】
第1無給電素子300は、アンテナエレメント200の上方に設けられている。具体的には、第1無給電素子300の第3方向Zの負方向への射影が、第1モノポールアンテナ210と、第2モノポールアンテナ220と、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の間の領域と、の少なくとも一部分と重なっている。例えば、第1無給電素子300の第3方向Zの負方向への射影は、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の一方と重なる一方で、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の他方と重ならなくてもよい。
【0027】
第1無給電素子300は、2次放射素子として機能している。2次放射素子とは、1次放射素子としてのアンテナエレメント200によって生成されて放射された電波の水平面方向等の所定方向の利得の指向性を増強する素子のことを意味する。また、第1無給電素子300は、5.5GHz~6.0GHz等の所定周波数においてアンテナエレメント200と電気的に結合されている。具体的には、第1無給電素子300は、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の少なくとも一方の所定周波数での水平面方向での利得の指向性を増強させる素子として機能している。また、5.5GHz~6.0GHz等の所定周波数において、第1無給電素子300は、アンテナエレメント200に対して疑似的なアレイアンテナエレメントとして機能している。これによって、車載用アンテナ装置10Aは、アンテナエレメント200から構成される波源と、第1無給電素子300から構成される波源と、の2つの波源をあたかも備えるようになっている。第1無給電素子300が設けられていることで、第1無給電素子300が設けられていない場合と比較して、アンテナエレメント200を小型化しつつ高周波数帯域の水平面方向における利得を確保することができる。図3図8を用いて後述するように、第1無給電素子300が設けられていることで、第1無給電素子300が設けられていない場合と比較して、例えば周波数5.5GHz~6.0GHzの利得を増加させることができる。これによって、アンテナエレメント200及び第1無給電素子300を含む放射素子は、水平面方向に指向性を有することになる。
【0028】
アンテナエレメント200と第1無給電素子300との間の距離を適切に調整することで、アンテナエレメント200の水平面方向の利得を増強させることができる。例えば、第1無給電素子300のアンテナエレメント200側の端部と、アンテナエレメント200の第1無給電素子300側の端部と、の間の距離は、例えばλ/2-λ/4以上λ/2+λ/4以下等、おおよそλ/2にすることができる。ここで、λは、アンテナエレメント200の動作周波数のうち、第1無給電素子300によって利得を増強させる周波数の波長である。当該距離がおおよそλ/2である場合、当該距離がおおよそλ/2から比較的大きく異なる場合と比較して、アンテナエレメント200の水平面方向の利得を第1無給電素子300によってより増強させることができる。
【0029】
第1無給電素子300は、互いに離間した複数の素子部分からなっている。具体的には、第1無給電素子300は、第1素子部分310及び第2素子部分320からなっている。なお、第1無給電素子300は、単一の素子部分のみからなっていてもよいし、又は3つ以上の素子部分からなっていてもよい。第1無給電素子300が複数の素子部分からなる場合、第1無給電素子300が単一の素子部分からなる場合よりも、複数の素子部分を適切な配置に置くことで、第1無給電素子300によって利得を大きく増加することができる。第1素子部分310及び第2素子部分320は、XZ平面に関して対称に配置されている。具体的には、第1素子部分310は、第1素子部分310の下部が第1素子部分310の上部よりも第2方向Yの正方向側に位置するように、水平面方向から傾いている。これに対して、第2素子部分320は、第2素子部分320の下部が第2素子部分320の上部よりも第2方向Yの負方向側に位置するように、水平面方向から傾いている。この場合、第1素子部分310及び第2素子部分320が第3方向Zに平行に配置されている場合と比較して、第1無給電素子300をアンテナケース600の収容空間内に収容しやすくなる。なお、第1素子部分310及び第2素子部分320は、第3方向Zに平行に配置されていてもよい。
【0030】
なお、第1モノポールアンテナ210の上方に、少なくとも1つの素子部分を有する第1無給電素子が設けられ、第2モノポールアンテナ220の上方に、少なくとも1つの素子部分を有する他の第1無給電素子が設けられていてもよい。この場合、第1モノポールアンテナ210及び第2モノポールアンテナ220の上方に1つのみの第1無給電素子が設けられている場合と比較して、各モノポールアンテナ上の各第1無給電素子の形状、配置等の条件を各モノポールアンテナにより適した条件に合わせることができ、各モノポールアンテナ及び各第1無給電素子をより好適に動作させることができる。
【0031】
また、単一のモノポールアンテナの上方に単一の第1無給電素子が設けられる場合、モノポールアンテナのセクションの前端及び後端の少なくとも一方は、それぞれ、第1無給電素子の素子部分の前端及び後端の少なくとも一方と第3方向Zに実質的に揃うようにしてもよい。モノポールアンテナのセクションの前端及び後端と、第1無給電素子の素子部分の前端及び後端とは、高電位になりやすいため、モノポールアンテナのセクションの前端及び後端と、第1無給電素子の素子部分の前端及び後端と、を揃えることで、モノポールアンテナと第1無給電素子とを電気的に結合させやすくなる。
【0032】
第1素子部分310は、車載用アンテナ装置10Aの前後方向の長さが車載用アンテナ装置10Aの上下方向の辺の長さより長い四角形となっている。第1素子部分310のうち定在波が形成される部分の長さは、例えば、λ/2-λ/4以上λ/2+λ/4以下等、おおよそλ/2にすることができる。特に、アンテナエレメント200及び第1無給電素子300によって垂直偏波を送受信する場合、車載用アンテナ装置10Aの上下方向における第1素子部分310の長さは、例えば、λ/2-λ/4以上λ/2+λ/4以下等、おおよそλ/2にすることができる。ここで、λは、アンテナエレメント200の動作周波数のうち、第1無給電素子300によって利得を増強させる周波数の波長である。第1素子部分310の当該長さをおおよそλ/2にすることで、第1素子部分310での共振を生じさせやすくなり、第1素子部分310によって利得をより増強させやすくなる。また、アンテナエレメント200の動作周波数のうち、利得を増強させる周波数より低い動作周波数帯では、第1モノポールアンテナ210又は第2モノポールアンテナ220と第1無給電素子300との結合が弱くなり、第1無給電素子300による影響を弱くすることができる。また、第1素子部分310は、三角形、五角形、六角形、八角形等、四角形以外の多角形であってもよい。第2素子部分320についても同様である。
【0033】
第1無給電素子300は、例えば、板金からなっている。或いは、第1無給電素子300は、導電パターンであってもよい。例えば、アンテナエレメント200を保持する樹脂ホルダ等のホルダが第1基板112上に設けられている場合、第1無給電素子300を構成する板金は、当該ホルダによって支持されていてもよいし、又は第1無給電素子300を構成する導電パターンは、当該ホルダ上に形成されていてもよい。或いは、第1無給電素子300は、アンテナケース600に設けられていてもよい。
【0034】
第2アンテナ部14は、第2基板114及び第1衛星アンテナ410を有している。
【0035】
第1衛星アンテナ410は、アンテナベース100上に配置された第2基板114上に設けられている。第1衛星アンテナ410は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナである。第2基板114は、例えばPCBである。第1衛星アンテナ410は、パッチアンテナとなっている。第1衛星アンテナ410は、アンテナエレメント200よりも前方に配置されている。
【0036】
第3アンテナ部16は、第3基板116、第2衛星アンテナ420及び第2無給電素子422を有している。
【0037】
第2衛星アンテナ420は、アンテナベース100上に配置された第3基板116上に設けられている。第2衛星アンテナは、例えばSXM(Sirius XM)アンテナである。第3基板116は、例えばPCBである。第2衛星アンテナ420は、パッチアンテナとなっている。第2衛星アンテナ420は、第1衛星アンテナ410よりも前方に配置されている。第2衛星アンテナ420上には、第2無給電素子422が配置されている。
【0038】
第4アンテナ部18は、AM/FM(Amplitude Modulation/Frequency Modulation)ラジオ放送用アンテナ500、第1ホルダ512及び第2ホルダ522を有している。
【0039】
AM/FMラジオ放送用アンテナ500は、ヘリカル素子510及び容量装荷素子520を有している。ヘリカル素子510は、アンテナベース100上に設けられた第1ホルダ512に設けられた溝に沿って巻き付けられている、或いは、第1ホルダ512に設けられた突起に保持されている。容量装荷素子520は、第1ホルダ512と接続されている第2ホルダ522によって保持されている。ヘリカル素子510及び容量装荷素子520は、電気的に互いに接続されている。AM/FMラジオ放送用アンテナ500は、ヘリカル素子510及び容量装荷素子520によってAM/FM放送の受信が可能になっている。AM/FMラジオ放送用アンテナ500はAMラジオ放送及びFMラジオ放送の少なくとも一方の受信が可能であればよい。
【0040】
なお、後述する実施形態2において詳細を後述するように、第1無給電素子300がAM/FMラジオ放送用アンテナ500の一部分として機能していてもよい。この場合、第1無給電素子300は、第1無給電素子300によって利得が増加される周波数を遮断するフィルタ、例えばノッチフィルタやローパスフィルタを介して容量装荷素子520に接続することができる。このフィルタが設けられていることで、第1無給電素子300は、AM/FMラジオ放送用アンテナ500を構成する容量装荷素子の一部分となることができる。これによって、AM/FMラジオ放送用アンテナ500の容量装荷素子のサイズ(面積)を大きくすることができ、AM/FMラジオ放送用アンテナ500の性能を向上させることができる。また、第1無給電素子300は、第2ホルダ522の後部を後方に延長させて、第2ホルダ522の当該延長部分に取り付けられていてもよい。
【0041】
本実施形態では、第1アンテナ部12、第2アンテナ部14及び第3アンテナ部16は、互いに異なる基板を用いて形成されている。しかしながら、第1アンテナ部12、第2アンテナ部14及び第3アンテナ部16のうちの少なくとも2つは、同一の基板を用いて形成されていてもよい。
【0042】
図2は、比較例に係る車載用アンテナ装置10Kの斜視図である。比較例に係る車載用アンテナ装置10Kは、第1無給電素子300が設けられていない点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aと同様である。
【0043】
図3は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aの第1モノポールアンテナ210の周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。図4は、比較例に係る車載用アンテナ装置10Kの第1モノポールアンテナ210の周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。図5は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aの第2モノポールアンテナ220の周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。図6は、比較例に係る車載用アンテナ装置10Kの第2モノポールアンテナ220の周波数6GHzでの利得の放射パターンを示すグラフである。
【0044】
図3図6に示す第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは、図1及び図2に示した第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zと同様である。なお、図3図6において、第2方向Yを示す黒点付き白丸は、紙面の奥から手前に向かう方向が第2方向Yの正方向であり、紙面の手前から奥に向かう方向が第2方向Yの負方向であることを示す。
【0045】
各グラフにおいて、グラフの中心から放射状に延びる破線は、方位(単位:deg)を示している。また、グラフの中心に関して同心円状に広がる破線は、利得(単位:dBi)を示している。
【0046】
図3及び図4を比較すると、実施形態1に係る第1モノポールアンテナ210の水平面方向のうち第1方向Xの負方向における利得は、比較例に係る第1モノポールアンテナ210の水平面方向のうち第1方向Xの負方向における利得より大きくなっている。この結果は、第1無給電素子300によって、第1モノポールアンテナ210の周波数6GHzでの第1方向Xの負方向における利得が向上することを示唆する。
【0047】
図5及び図6を比較すると、実施形態1に係る第2モノポールアンテナ220の水平面方向のうち第1方向Xの負方向における利得は、比較例に係る第2モノポールアンテナ220の水平面方向のうち第1方向Xの負方向における利得より大きくなっている。この結果は、第1無給電素子300によって、第2モノポールアンテナ220の周波数6GHzでの第1方向Xの負方向における利得が向上することを示唆する。
【0048】
図7は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aの第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置10Kの第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。図8は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aの第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置10Kの第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。
【0049】
図7及び図8において、グラフの横軸は、周波数(単位:MHz)を示している。グラフの縦軸は、水平面方向における平均利得(単位:dBi)を示している。
【0050】
図7に示すように、実施形態1に係る第1モノポールアンテナ210の周波数5.5GHz~6.0GHzでの水平面方向における平均利得は、比較例に係る第1モノポールアンテナ210の周波数5.5GHz~6.0GHzでの水平面方向における平均利得より高くなっている。この結果は、第1無給電素子300によって、第1モノポールアンテナ210の周波数5.5GHz~6.0GHzでの水平面方向における平均利得が向上することを示唆する。
【0051】
図8に示すように、実施形態1に係る第2モノポールアンテナ220の周波数5.5GHz~6.0GHzでの水平面方向における平均利得は、比較例に係る第2モノポールアンテナ220の周波数5.5GHz~6.0GHzでの水平面方向における平均利得より高くなっている。この結果は、第1無給電素子300によって、第2モノポールアンテナ220の周波数5.5GHz~6.0GHzでの水平面方向における平均利得が向上することを示唆する。
【0052】
図9は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10Bの斜視図である。実施形態2に係る車載用アンテナ装置10Bは、以下の点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aと同様である。
【0053】
第1無給電素子300は、AM/FMラジオ放送用アンテナ500の一部分として機能している。具体的には、車載用アンテナ装置10Bは、第1接続導電体532、第2接続導電体534、第1フィルタ542、第2フィルタ544、第3フィルタ546及び第4フィルタ548を備えている。
【0054】
第1接続導電体532及び第2接続導電体534は、車載用アンテナ装置10Bの左右方向に並んでいる。車載用アンテナ装置10Bの後方から見て、第1接続導電体532は、第2接続導電体534に対して左側に位置している。車載用アンテナ装置10Bの後方から見て、第2接続導電体534は、第1接続導電体532に対して右側に位置している。第1接続導電体532及び第2接続導電体534は、車載用アンテナ装置10Bの前後方向において、第1無給電素子300と容量装荷素子520との間に位置している。
【0055】
第1素子部分310と、容量装荷素子520の左側部分と、は、第1フィルタ542、第1接続導電体532及び第2フィルタ544を介して、電気的に互いに接続されている。具体的には、第1接続導電体532の後方端部と、第1素子部分310の前方端部と、は第1フィルタ542を介して電気的に互いに接続されている。第1接続導電体532の前方端部と、容量装荷素子520の左側部分の後方端部と、は第2フィルタ544を介して電気的に互いに接続されている。
【0056】
第2素子部分320と、容量装荷素子520の右側部分と、は、第3フィルタ546、第2接続導電体534及び第4フィルタ548を介して、電気的に互いに接続されている。具体的には、第2接続導電体534の後方端部と、第2素子部分320の前方端部と、は第3フィルタ546を介して電気的に互いに接続されている。第2接続導電体534の前方端部と、容量装荷素子520の右側部分の後方端部と、は第4フィルタ548を介して電気的に互いに接続されている。
【0057】
第1フィルタ542、第2フィルタ544、第3フィルタ546及び第4フィルタ548の各々は、ローパスフィルタである。したがって、第1無給電素子300と、容量装荷素子520と、は少なくとも1つのローパスフィルタを介して電気的に互いに接続されている。このため、第1無給電素子300は、AM/FMラジオ放送用アンテナ500を構成する容量装荷素子の一部分となることができる。これによって、AM/FMラジオ放送用アンテナ500の容量装荷素子のサイズ(面積)を大きくすることができ、AM/FMラジオ放送用アンテナ500の性能を向上させることができる。
【0058】
図10は、第1フィルタ542のSパラメータの順方向伝達係数S21の0~7GHzの周波数特性を示すグラフである。第1フィルタ542のSパラメータは、ポート1及びポート2を有する二端子対回路において、S11、S21、S12及びS22の4つのパラメータによって示される。パラメータS11は、ポート1から入力されてポート1で反射する信号の反射係数である。パラメータS21は、ポート1から入力されてポート2を透過する信号の透過係数、すなわち、順方向伝達係数である。パラメータS12は、ポート2から入力されてポート1を透過する信号の透過係数、すなわち逆方向伝達係数である。パラメータS22は、ポート2から入力されてポート2で反射される信号の反射係数である。
【0059】
図10において、グラフの横軸は、周波数(単位:MHz)を示している。グラフの縦軸は、順方向伝達係数S21の絶対値(単位:dB)を示している。
【0060】
図10に示すように、98MHz付近のFM帯における順方向伝達係数S21の絶対値は、約-0.2dBとなっている。一方、1.7GHz~6GHzの電話(TEL)帯における順方向伝達係数S21の絶対値は、約-10dB以下となっている。したがって、第1フィルタ542は、TEL帯の信号よりも、FM帯の信号を透過させることができる。また、第1フィルタ542は、5.5GHz~6GHz等、第1無給電素子300によって第1モノポールアンテナ210又は第2モノポールアンテナ220の利得が増加される周波数を遮断することができる。
【0061】
第2フィルタ544、第3フィルタ546及び第4フィルタ548も、図10を用いて説明した第1フィルタ542の特性と同様の特性を有している。
【0062】
図11は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aの第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10Bの第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置10Kの第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。図12は、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aの第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10Bの第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置10Kの第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得の1.5GHz~6GHzの周波数特性を示すグラフである。図13は、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10BのAM/FMラジオ放送用アンテナ500の水平面方向における平均利得及び比較例に係る車載用アンテナ装置10KのAM/FMラジオ放送用アンテナ500の水平面方向における平均利得の80MHz~120MHzの周波数特性を示すグラフである。
【0063】
図11図13において、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10A、実施形態2に係る車載用アンテナ装置10B及び比較例に係る車載用アンテナ装置10Kは、無限遠に広がるグランド板上に配置されている。
【0064】
図11図13において、グラフの横軸は、周波数(単位:MHz)を示している。グラフの縦軸は、水平面方向における平均利得(単位:dBi)を示している。
【0065】
図11に示すように、周波数5.5GHz~6.0GHzの全帯域に亘って、実施形態1及び実施形態2に係る第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得は、比較例に係る第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得より高くなっている。また、周波数5.5GHz~6.0GHzの帯域において、実施形態2に係る第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得は、実施形態1に係る第1モノポールアンテナ210の水平面方向における平均利得に近似している。
【0066】
図12に示すように、周波数5.5GHz~6.0GHzのほぼ全帯域に亘って、実施形態1及び実施形態2に係る第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得は、比較例に係る第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得より高くなっている。また、周波数5.5GHz~6.0GHzの帯域において、実施形態2に係る第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得は、実施形態1に係る第2モノポールアンテナ220の水平面方向における平均利得に近似している。
【0067】
図13に示すように、周波数80MHz~120MHzの全帯域に亘って、実施形態2に係るAM/FMラジオ放送用アンテナ500の水平面方向における平均利得は、比較例に係るAM/FMラジオ放送用アンテナ500の水平面方向における平均利得より高くなっている。
【0068】
図13に示す結果より、第1無給電素子300と容量装荷素子520とを、第1フィルタ542、第2フィルタ544、第3フィルタ546及び第4フィルタ548を介して電気的に互いに接続することで、周波数80MHz~120MHz、すなわち、FM帯の利得を向上させることができるといえる。また、図11及び図12に示す結果より、第1無給電素子300と容量装荷素子520とを、第1フィルタ542、第2フィルタ544、第3フィルタ546及び第4フィルタ548を介して電気的に互いに接続しても、第1無給電素子300と容量装荷素子520とを電気的に互いに接続しない場合と比較して、5.5GHz~6.0GHzの利得の低下はほぼ生じないといえる。
【0069】
図14は、変形例に係る車載用アンテナ装置10Gの斜視図である。変形例に係る車載用アンテナ装置10Gは、以下の点を除いて、実施形態1に係る車載用アンテナ装置10Aと同様である。
【0070】
車載用アンテナ装置10Gは、第1無給電素子300Gを備えている。第1無給電素子300Gは、第1素子部分310G及び第2素子部分320Gを有している。実施形態1に係る第1無給電素子300と異なり、変形例に係る第1素子部分310G及び第2素子部分320Gの各々は、車載用アンテナ装置10Gの前後方向の長さが車載用アンテナ装置10Gの上下方向の辺の長さより短い四角形となっている。本変形例においても、実施形態1と同様にして、第1無給電素子300Gが設けられていない場合と比較して、車載用アンテナ装置10Gを小型化しつつ高周波数帯域の水平面方向における利得を確保することができる。
【0071】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0072】
例えば、第1無給電素子300の形状、配置等の条件は、実施形態及び変形例に係る条件に限定されない。第1無給電素子300の形状、配置等の条件を調整することによって、比較的高域の周波数帯域等、特定の周波数帯域の所望の方向の利得を向上させることができる。
【0073】
本明細書によれば、以下の態様が提供される。
(態様1)
態様1は、
アンテナベースと、
前記アンテナベースとともに、収容空間を形成するアンテナケースと、
前記収容空間に収容されるモノポールアンテナと、
前記モノポールアンテナの上方に設けられた無給電素子と、
を備える車載用アンテナ装置である。
態様1によれば、無給電素子が設けられていない場合と比較して、アンテナを小型化しつつ高周波数帯域の所望の方向における利得を確保することができる。
(態様2)
態様2は、
前記無給電素子が2次放射素子として機能する、態様1に記載の車載用アンテナ装置である。
態様2によれば、無給電素子は、モノポールアンテナの所定周波数での所望の方向での利得を増加させる素子として機能させることができる。
(態様3)
態様3は、
前記モノポールアンテナがテレマティクス用アンテナである、態様1又は2に記載の車載用アンテナ装置である。
態様3によれば、テレマティクス用アンテナについて、態様1と同様にして、アンテナを小型化しつつ高周波数帯域の水平面方向における利得を確保することができる。
(態様4)
態様4は、
複数の前記モノポールアンテナを備える、態様1~3のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様4によれば、車載用アンテナ装置が単一のモノポールアンテナのみを有する場合と比較して、複数のモノポールアンテナを広帯域で動作させることができる。
(態様5)
態様5は、
前記無給電素子が、互いに離間した複数の素子部分から構成されている、態様1~4のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様5によれば、無給電素子が単一の素子部分からなる場合よりも、複数の素子部分を適切な位置に置くことで、無給電素子によって利得を大きく増加することができる。また、高周波数帯域の所望の方向における利得を確保することができる。
(態様6)
態様6は、
前記無給電素子が、ラジオ放送用アンテナの一部分として機能する、態様1~5のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様6によれば、無給電素子がラジオ放送用アンテナの一部分として機能しない場合と比較して、ラジオ放送用アンテナの容量装荷素子のサイズ(面積)を大きくすることができ、ラジオ放送用アンテナの性能を向上させることができる。
(態様7)
態様7は、
λを前記モノポールアンテナの動作周波数のうち、前記無給電素子によって利得を増強させる周波数の波長としたとき、無給電素子の前記モノポールアンテナ側の端部と、前記モノポールアンテナの前記無給電素子側の端部と、の間の距離がλ/2-λ/4以上λ/2+λ/4以下である、態様1~6のいずれか一に記載の車載用アンテナ装置である。
態様7によれば、無給電素子のモノポールアンテナ側の端部と、モノポールアンテナの無給電素子側の端部と、の間の距離がおおよそλ/2である場合、当該距離がおおよそλ/2から比較的大きく異なる場合と比較して、モノポールアンテナの水平面方向の利得を無給電素子によってより増強させることができる。
【0074】
この出願は、2020年7月27日に出願された日本出願特願2020-126223号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0075】
10A 車載用アンテナ装置
10B 車載用アンテナ装置
10G 車載用アンテナ装置
10K 車載用アンテナ装置
12 第1アンテナ部
14 第2アンテナ部
16 第3アンテナ部
18 第4アンテナ部
100 アンテナベース
112 第1基板
114 第2基板
116 第3基板
200 アンテナエレメント
210 第1モノポールアンテナ
212 第1セクション
214 第2セクション
216 第1ポート
220 第2モノポールアンテナ
222 第3セクション
224 第4セクション
226 第2ポート
300 第1無給電素子
300G 第1無給電素子
310 第1素子部分
310G 第1素子部分
320 第2素子部分
320G 第2素子部分
410 第1衛星アンテナ
420 第2衛星アンテナ
422 第2無給電素子
500 AM/FMラジオ放送用アンテナ
510 ヘリカル素子
512 第1ホルダ
520 容量装荷素子
522 第2ホルダ
532 第1接続導電体
534 第2接続導電体
542 第1フィルタ
544 第2フィルタ
546 第3フィルタ
548 第4フィルタ
600 アンテナケース
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14