(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】DI金属トランザクションデバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20241227BHJP
B42D 25/305 20140101ALI20241227BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/077 196
G06K19/077 296
G06K19/077 264
G06K19/077 244
G06K19/077 156
B42D25/305 100
(21)【出願番号】P 2022548029
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 US2021016741
(87)【国際公開番号】W WO2021158866
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-10-26
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516351810
【氏名又は名称】コンポセキュア,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】アダム ロウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エサウ
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/152235(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/136436(WO,A1)
【文献】実開平07-018875(JP,U)
【文献】特表2017-524171(JP,A)
【文献】特表2019-531918(JP,A)
【文献】米国特許第08608082(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
B42D 25/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側表面、裏側表面、周縁部および金属層内の1つ以上の不連続部を有する金属層であって、各不連続部が、前記表側表面から前記裏側表面まで延在する前記金属層内のギャップを構成し、前記金属層の前記周縁部まで延在する不連続部が少なくとも1つ含まれている、金属層と;
前記金属層の前記表側表面全体にわたり配置された第1の非金属層と;
前記金属層の前記裏側表面全体にわたり配置され、前記金属層から絶縁された複数のメタライゼーションを含む、ブースタアンテナと;
前記金属層の前記裏側表面全体にわたり配置された第2の非金属層と;
前記第1の非金属層を通って延在する前記金属層内の開口部と;
前記開口部内に配置され、前記ブースタアンテナと通信状態にあるトランスポンダチップモジュールであって、かつ前記ブースタアンテナと共に、デバイスリーダとの無線通信用に構成された支払い回路を含む、トランスポンダチップモジュールと;
を含むトランザクションデバイス。
【請求項2】
前記不連続部のうちの少なくとも第1の不連続部が、前記周縁部から前記金属層内の前記開口部まで延在している、請求項
1に記載のトランザクションデバイス。
【請求項3】
前記不連続部のうちの少なくとも第2の不連続部が前記周縁部から前記金属層内の前記開口部内に無い端点まで延在している、請求項
2に記載のトランザクションデバイス。
【請求項4】
前記不連続部のうちの少なくとも第3の不連続部が、前記第1の不連続部との交差点から、前記開口部内にも前記周縁部にもない端点まで延在している、請求項
3に記載のトランザクションデバイス。
【請求項5】
前記金属層が前記支払い回路から電気的に絶縁されている、請求項
1ないし
4のいずれか1項に記載のトランザクションデバイス。
【請求項6】
前記金属層が前記支払い回路の一部である、請求項
1ないし
4のいずれか1項に記載のトランザクションデバイス。
【請求項7】
前記第1の非金属層および前記第2の非金属層が各々繊維強化エポキシ積層材料を含む、請求項
1ないし
4のいずれか1項に記載のトランザクション
デバイス。
【請求項8】
トランザクションデバイスであって、前記トランザクションデバイスは、
表側表面、裏側表面および周縁部を有する金属層と;
前記金属層からデバイスの頂部表面まで延在する前記金属層中の開口部と;
前記金属層内の1つ以上の不連続部であって、各不連続部が、前記表側表面から前記裏側表面まで延在する前記金属層内のギャップを構成し、前記金属層の前記周縁部と前記金属層内の前記開口部の間に延在する不連続部が少なくとも1つ含まれている、1つ以上の不連続部と;
前記金属層の前記裏側表面全体にわたり配置された裏側繊維強化エポキシ積層材料層と;
前記金属層とは別個のブースタアンテナと;
前記開口部内に配置され、前記トランザクションデバイスの前記頂部表面からアクセス可能な頂部表面を有するトランスポンダチップモジュールであって、前記ブースタアンテナと通信状態にあり、前記ブースタアンテナと共に、デバイスリーダとの無線通信用に構成された支払い回路を含む、トランスポンダチップモジュールと;
を含み、
前記金属層が前記支払い回路から絶縁されて
おり、
前記金属層の前記表側表面全体にわたり配置された表側繊維強化エポキシ積層材料層をさらに含み、
前記金属層の前記裏側表面全体にわたり配置された裏側繊維強化エポキシ積層材料層をさらに含み、前記表側および裏側繊維強化エポキシ積層材料層が各々、これらの表側および裏側繊維強化エポキシ積層材料層のエポキシにより前記金属層に対して直接固着されており、
前記金属層が、前記支払い回路および前記ブースタアンテナから絶縁されており、前記裏側繊維強化エポキシ積層材料層上のまたはこの層内に埋込まれた複数のメタライゼーションを含む、トランザクションデバイス。
【請求項9】
前記複数のメタライゼーションが前記裏側繊維強化エポキシ積層材料層の裏側表面上に配置されており、デバイスが前記複数のメタライゼーション全体にわたり配置された非金属層を含んでいる、請求項
8に記載のトランザクションデバイス。
【請求項10】
トランザクションデバイスを製造する方法において:
(a)表側表面、裏側表面、および周縁部を有する金属層を提供するステップと;
(b)前記金属層内に1つ以上の不連続部を形成するステップであって、各不連続部が、前記表側表面から前記裏側表面まで延在する前記金属層内のギャップを構成し、前記金属層の前記周縁部まで延在する不連続部が少なくとも1つ含まれている、ステップと;
(c)前記金属層の前記裏側表面全体にわたりブースタアンテナを配置するステップであって、前記ブースタアンテナが複数のメタライゼーションを含んでいる、ステップと;
(d)前記金属層の前記表側表面全体にわたり第1の繊維ガラス層を配置するステップと;
(e)前記金属層の前記裏側表面全体にわたり第2の繊維ガラス層を配置するステップと;
(f)前記第1の繊維ガラス層を通って前記トランザクションデバイスの頂部表面まで延在する開口部を前記金属層内に形成するステップと;
(h)前記開口部内にトランスポンダチップモジュールを配置するステップと;
を含む方法。
【請求項11】
デバイスリーダとの無線通信のために構成された支払い回路の一部分を共に形成するために、前記ブースタアンテナと電気通信状態になるように前記トランスポンダチップモジュールを構成するステップを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記メタライゼーションが前記金属層から電気的に絶縁された状態で前記金属層の前記裏側表面全体にわたりブースタアンテナ層を配置するステップと、前記金属層が前記支払い回路内に含まれていない状態で前記トランザクションデバイスを構成するステップとを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記ブースタアンテナを前記金属層の前記裏側表面全体にわたり配置する前記ステップが、前記第2の繊維ガラス層上のまたはこの層内に埋込まれた前記複数のメタライゼーションを形成するステップを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記メタライゼーション全体にわたり追加の非金属層を配置するステップをさらに含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属層の前記表側表面全体にわたり前記第1の繊維ガラス層を配置するステップ及び前記金属層の前記裏側表面全体にわたり第2の繊維ガラス層を配置するステップが、前記第1および第2の繊維ガラス層をエポキシと共に注型して、前記金属層に直接固着された第1および第2の繊維強化エポキシ積層材料層を形成するステップを含んでいる、請求項
10ないし
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属層の前記表側表面全体にわたり前記第1の繊維ガラス層を配置するステップ及び前記金属層の前記裏側表面全体にわたり第2の繊維ガラス層を配置するステップが、前記金属層の前記表側表面に対して第1の接着剤層を用いて第1の硬化した繊維強化エポキシ積層材料を取付けるステップと、前記金属層の前記裏側表面に対して第2の接着剤層を用いて第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層を取付けるステップと、を含む、請求項
10ないし
14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層上のまたはこの層内に埋込まれた複数のメタライゼーションを形成することによって、前記金属層の前記裏側表面全体にわたり前記ブースタアンテナを形成するステップをさらに含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のメタライゼーションを形成するステップが、前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料内にワイヤを埋込むステップを含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のメタライゼーションを形成するステップが、前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料の表面上にメタライズされたインクを印刷するステップを含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項20】
前記複数のメタライゼーションを形成するステップが、前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層全体にわたり金属層を配置するステップと、前記金属層の一部分をエッチングで除去して前記メタライゼーションを残留させるステップとを含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項21】
前記金属層に対面する前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層の内部表面上に前記複数のメタライゼーションを形成するステップを含む、請求項
19または
20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の接着剤層が非金属基板層を含む、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属層から見て外方を向いた前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層の外部表面上に前記複数のメタライゼーションを形成するステップを含む、請求項
19または
20に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料の前記外部表面およびその上に配置された複数のメタライゼーション全体にわたり非金属層を配置するステップを含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記金属層内の前記開口部が、前記金属層内の前記不連続部と同じステップ内で創出される、請求項
10ないし
24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
トランザクションデバイスを製造するための方法において、
(a) 表側表面、裏側表面および周縁部を有する金属層と;
前記金属層の前記表側表面に対して固着された第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層と;
前記金属層の前記裏側表面に対して固着された第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層と;
を含む、予め作られた積層体を提供するステップと;
(b) 前記予め作られた積層体の前記金属層内に1つ以上の不連続部を形成するステップであって、各不連続部が、前記表側表面から前記裏側表面まで延在する前記金属層内のギャップを構成し、前記金属層の前記周縁部まで延在する不連続部が少なくとも1つ含まれており、前記1つ以上の不連続部の各々が同様に、前記第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層または前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層のうちの少なくとも1つを通って延在している、ステップと;
(c) 前記第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層または前記第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層のうちの一方の外側表面全体にわたりブースタアンテナを配置するステップであって、前記ブースタアンテナが複数のメタライゼーションを含んでいる、ステップと;
(d) 前記第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層を通って前記トランザクションデバイスの頂部表面まで延在する開口部を前記金属層内に形成するステップと;
(h) 前記開口部内にトランスポンダチップモジュールを配置するステップと;
を含む、方法。
【請求項27】
前記第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層または第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層のうちの一方の繊維強化エポキシ積層体層の前記外側表面上のまたはこの一方の繊維強化エポキシ積層体層の内部に埋込まれた複数のメタライゼーションを形成することによって、前記ブースタアンテナを形成するステップをさらに含む、請求項
26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数のメタライゼーションを形成するステップが、前記
第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層及び前記第2の硬化した繊維強化エポキシ
積層体層のそれぞれの前記外側表面上に金属層を配置するステップと、前記金属層の一部分をエッチングで除去してメタライゼーションを残留させるステップとを含んでいる、請求項
26に記載の方法。
【請求項29】
前記
第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層及び前記第2の硬化した繊維強化エポキシ
積層体層のそれぞれの外側表面およびその上に配置された前記複数のメタライゼーション全体にわたり非金属層を配置するステップを含む、請求項
26に記載の方法。
【請求項30】
前記複数のメタライゼーションを形成するステップが、前記第1または第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層内にワイヤを埋込むステップを含む、請求項
26に記載の方法。
【請求項31】
前記複数のメタライゼーションを形成するステップが、前記金属層から電気的に絶縁されるように複数のメタライゼーションのそれぞれを形成するステップを含む、請求項
26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組込まれている「DI金属トランザクションデバイスおよびその製造方法」なる名称の2020年2月7日付け米国仮特許出願第62/971,439号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、電子コンポーネントを伴うトランザクションカードおよびその生産方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属支払いカードは、誘導結合支払いモジュール、RF電子機器、およびスタンドアローン電子インレイなどの電子コンポーネントを含む場合、特有の課題を提示する。これらのコンポーネントを収容するため、金属はさまざまな幾何形状に機械加工され、その後、コンポーネントはキャビティ内に設置され、露出した状態に残されるか、またはプラスチックの印刷されたシートまたは他の装飾的要素の下に隠される。装飾的要素は、例えばプラテンラミネート加工、コンタクト接着剤、硬化性接着剤または「押嵌め」などのさまざまなプロセスまたは当該技術分野にとって公知のあらゆる接合方法を通してカードに貼付され得る。キャビティ内には、RFシールドが求められることが多く、そのためカードの所望される美観を維持した状態でのカード組立てがさらに複雑になっている。
【0004】
これらの求められる機械加工幾何形状のいくつかは、著しい量の金属を除去するか、またはカードを貫通するスリットまたは孔を残し、これらはカードの強度を低下させ、美観的に望ましくない。カードを強化し、望ましい表面を提供する目的で、カード内部に電子インレイを封入しカード幾何形状を強化するためにオーバモールディングおよびインサート成形技術が開発されてきた。さらに、この開発は、構造的剛性および所望の外観を維持しながら臨界RF送信および受信部域内でのより多くの金属の除去を可能にすることから、既存の設計に比べ改善されたRF性能を有する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様は、トランザクションデバイス、トランザクションデバイスの製造方法ならびに、開示された方法により生産されたトランザクションデバイスに関する。
【0006】
本発明の一態様は、表側表面、裏側表面、周縁部、金属層内の開口部を有する金属層、開口部内に配置されたトランスポンダチップモジュール、およびトランスポンダチップモジュールと通信状態にあるブースタアンテナを含むトランザクションデバイスである。トランスポンダチップモジュールおよびブースタアンテナは、デバイスリーダとの無線通信用に構成された回路内のコンポーネントである。金属層は、1つ以上の不連続部を有し、各不連続部は、表側表面から裏側表面まで延在する金属層中のギャップを構成し、デバイス周縁部から開口部までの通路を画定する不連続部が少なくとも1つ含まれている。金属層は、ブースタアンテナまたは回路内のコンポーネントの一部ではない。
【0007】
非金属成形材料が、金属層内の1つ以上の不連続部内に配置されてよい。いくつかの実施形態において、繊維ガラス、より詳細には繊維強化エポキシ積層材料を含む層などの補強層が金属層全体にわたり配置される。金属層の表側表面および裏側表面のうちの少なくとも一方の上に繊維強化エポキシ積層材料層を配置することができ、いくつかの実施形態において、金属層は、対向する繊維強化エポキシ積層材料層の間に挟置される。
【0008】
本発明の別の態様は、内部に1つ以上の不連続部を有する金属層と、金属層の表側表面全体にわたり配置された第1の非金属補強層と、金属層の裏側表面全体にわたり配置されたブースタアンテナと、金属層の裏側表面全体にわたり配置された第2の非金属補強層と、第1の非金属補強層を通って延在する金属層内の開口部と、開口部内に配置されたトランスポンダチップモジュールを有するトランザクションデバイスを含む。ブースタアンテナは、金属層から電気的に絶縁された複数のメタライゼーションを含む。トランスポンダチップモジュールは、ブースタアンテナと通信状態にあり、かつブースタアンテナと共に、デバイスリーダとの無線通信用に構成された支払い回路を構成している。第1の非金属層と第2の非金属層は各々、繊維強化エポキシ積層材料を含み得る。
【0009】
1つ以上の不連続部は、周縁部から金属層内の開口部まで延在する不連続部、周縁部から金属層内の開口部内に無い端点まで延在する不連続部、第1の不連続部との交差点から、開口部内にも周縁部にもない端点まで延在する不連続部、またはそれらの組合せを含むことができる。金属層は支払い回路から電気的に絶縁されていてよく、あるいは支払い回路の一部であってもよい。
【0010】
本発明の別の態様は、金属層と、金属層からデバイスの頂部表面まで延在する金属層内の開口部と、金属層内の1つ以上の不連続部と、金属層の裏側表面全体にわたり配置された裏側繊維強化エポキシ積層材料層と、ブースタアンテナと、開口部内に配置され、デバイスの頂部表面からアクセス可能な頂部表面を有するトランスポンダチップモジュールとを含むトランザクションデバイスを含む。少なくとも1つの不連続部が金属層の周縁部と金属層内の開口部の間に延在する。ブースタアンテナと通信状態にあるトランスポンダチップモジュールは、これと共に、デバイスリーダとの無線通信用に構成された支払い回路を構成している。ブースタアンテナは金属層を含むか、または金属層とは別個であり得、金属層は支払い回路から電気的に絶縁されている。表側繊維強化エポキシ積層材料層が、金属層の表側面全体にわたり配置され得る。表側および/または裏側繊維強化エポキシ積層材料層は各々、それぞれの繊維強化エポキシ積層材料層のエポキシにより金属層に対して直接固着されていてよい。金属層が、支払い回路およびブースタアンテナから電気的に絶縁されている実施形態において、ブースタアンテナは、裏側繊維強化エポキシ積層材料層上のまたはこの層内に埋込まれた複数のメタライゼーションを含むことができる。複数のメタライゼーションが裏側繊維強化エポキシ積層材料層の裏側表面上に配置されている実施形態において、デバイスは複数のメタライゼーション全体にわたり配置された非金属層を含むことができる。それぞれの繊維強化エポキシ積層材料層は、それぞれの繊維強化エポキシ積層材料層のエポキシ以外の接着剤により金属層に対して固着された個別層として、金属層の表側面および裏側面全体にわたり配置され得る。いくつかの実施形態において、複数のブースタアンテナメタライゼーションの少なくとも一部分は、裏側繊維強化エポキシ積層材料層の表側表面上に配置され、繊維強化エポキシ積層材料層と金属層の間に配置された非金属層により金属層から分離されていてよい。
【0011】
本発明の他の態様は、本明細書に記載のトランザクションデバイスの製造方法を含む。このような方法は、金属層を提供するステップと、金属層内に1つ以上の不連続部を形成するステップと、金属層の裏側表面全体にわたりブースタアンテナを配置するステップと、金属層の表側表面全体にわたり第1の繊維ガラスを配置するステップと、金属層の裏側表面全体にわたり第2の繊維ガラス層を配置するステップと、第1の繊維ガラス層を通ってデバイスの頂部表面まで延在する開口部を金属層内に形成するステップと、開口部内にトランスポンダチップモジュールを配置するステップと、を含む。金属層内の開口部は、金属層内の不連続部と同じステップの中で創出される。
【0012】
該方法は、ブースタアンテナのメタライゼーションが金属層から電気的に絶縁された状態で金属層の裏側表面全体にわたりブースタアンテナ層を配置するステップと、金属層が支払い回路内に含まれていない状態でデバイスを構成するステップとを含むことができる。ブースタアンテナを金属層の裏側表面全体にわたり配置するステップは、第2の繊維ガラス層上のまたはこの層内に埋込まれた複数のメタライゼーションを形成するステップ、そして任意には、メタライゼーション全体にわたり追加の非金属層を配置するステップを含むことができる。
【0013】
1つの方法実施形態において、金属層の表側表面および裏側表面全体にわたり第1および第2の繊維ガラス層を配置するステップは、第1および第2の繊維ガラス層をエポキシと共に注型して、金属層に直接固着された第1および第2の繊維強化エポキシ積層材料層を形成するステップを含んでいる。
【0014】
別の方法実施形態において、金属層の表側表面および裏側表面全体にわたり第1および第2の繊維ガラス層を配置するステップは、金属層の表側表面に対して第1の接着剤層を用いて第1の硬化した繊維強化エポキシ積層材料を取付けるステップと、金属層の裏側表面に対して第2の接着剤層を用いて第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層を取付けるステップと、を含む。金属層の裏側表面全体にわたりブースタアンテナを形成するステップを含む実施形態において、複数のメタライゼーションは、第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層上に形成されるかまたはこの層内に埋込まれ得る。このような1つの方法は、第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層全体にわたり金属層を配置するステップと、金属層の一部分をエッチングで除去してメタライゼーションを残留させるステップとを含む。金属層に対面する第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層の内部表面上に複数のメタライゼーションを形成するステップを含む方法において、第2の接着剤層は非金属基板層を含むことができる。金属層から見て外方を向いた第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料層の外部表面上に複数のメタライゼーションを形成するステップを含む方法において、該方法は、第2の硬化した繊維強化エポキシ積層材料の外部表面およびその上に配置された複数のメタライゼーション全体にわたり非金属層を配置するステップを含むことができる。
【0015】
本発明の別の態様において、トランザクションデバイスを製造するための方法は、金属層と、金属層の表側表面に対して固着された第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層と、金属層の裏側表面に対して固着された第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層と、で構成されている予め作られた積層体を提供するステップを含む。予め作られた積層体の金属層内に1つ以上の不連続部が形成され、各不連続部は、表側表面から裏側表面まで延在する金属層内のギャップを構成し、金属層の周縁部まで延在する不連続部が少なくとも1つ含まれている。1つ以上の不連続部の各々は同様に、第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層または第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層のうちの少なくとも1つを通って延在している。第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層または第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層のうちの一方の外側表面全体にわたりブースタアンテナが配置される。第1の繊維ガラス層を通ってデバイスの頂部表面まで延在する金属層内の開口部が形成され、開口部内にトランスポンダチップモジュールが配置される。第1の硬化した繊維強化エポキシ積層体層または第2の硬化した繊維強化エポキシ積層体層のうちの一方の繊維強化エポキシ積層体層の外側表面上のまたはこの一方の繊維強化エポキシ積層体層の内部に埋込まれた複数のメタライゼーションを形成することによって、ブースタアンテナを形成することができる。該方法はさらに、それぞれの硬化した繊維強化エポキシ積層材料の外側表面およびその上に配置された複数のメタライゼーション全体にわたり非金属層を配置するステップを含むことができる。前述の概要および以下の詳細な説明が両方共例示的なものであり、本発明を限定するものではないということを理解すべきである。
【0016】
本発明は、同様の要素が同じ参照番号を有している添付図面と関連付けて以下の詳細な説明を読んだ場合に最も良く理解できるものである。類似の要素が複数存在する場合には、特定の要素を意味する小文字呼称を伴って、単一の参照番号を複数の類似の要素に割当てることができる。複数の要素に集合的に言及するかまたは複数の要素のうちの非特定的な1つ以上の要素に言及する場合、小文字呼称を落とすことができる。これにより、慣行にしたがって、図面のさまざまな特徴部が別段の標示の無いかぎり原寸に比例して描かれていないということが強調される。逆に、さまざまな特徴部の寸法を、明確さのために拡大または縮小することが可能である。図面中に含まれるのは、以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の態様に係るトランザクションカードを製造するための方法の選択されたステップの流れ図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の態様に係るオーバーモールディング前の電子コンポーネントを示す写真である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の態様に係るオーバーモールディング後の電子コンポーネントを示す写真である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の態様に係る、インサート成形に先立つトランザクションカードの表側の概略的例示である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の態様に係る、インサート成形に先立つトランザクションカードの裏側の概略的例示である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の態様に係る、インサート成形の後のトランザクションカードの表側の概略的例示である。
【
図3D】
図3Dは、本発明の態様に係る、インサート成形の後のトランザクションカードの裏側の概略的例示である。
【
図4A-4B】
図4Aおよび4Bは、本発明の態様に係る、トランザクションカードを製造するためのオーバーモールディングプロセスの選択されたステップの概略的例示である。
【
図5A】
図5Aは、支払いモジュールを取り囲む封入アンテナを有する例示的カードの表側面を描いた画像である。
【
図5C】
図5Cは、内部への支払いモジュールの挿入に先立つ絶縁された例示的封入アンテナの斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、フレーム内の開口部の内部へのチップ層の封入に先立つ、本発明の一態様に係る例示的非接触RFIDデバイスの概略的例示平面図である。
【
図6B】
図6Bは、チップ層の封入後の、ライン6B-6Bを通る断面での
図6Aの例示的非接触RFIDデバイスの概略的例示図である。
【
図7A】
図7Aは、フレーム内の開口部の内部へのチップ層の封入に先立つ、本発明の別の態様に係る例示的非接触RFIDデバイスの概略的例示平面図である。
【
図7B】
図7Bは、チップ層の封入後の、ライン7B-7Bを通る断面での
図7Aの例示的非接触RFIDデバイスの概略的例示図である。
【
図8A】
図8Aは、フレーム内の開口部の内部へのチップ層の封入に先立つ、本発明の別の態様に係る例示的DI RFIDデバイスの概略的例示平面図である。
【
図8B】
図8Bは、チップ層の封入後の、ライン8B-8Bを通る断面での
図8Aの例示的DI RFIDデバイスの概略的例示図である。
【
図9A】
図9Aは、複数の不連続部を含む例示的トランザクションカードの表側面の概略的平面図の例示である。
【
図9B】
図9Bは、
図9Aの例示的トランザクションカードの裏側面の概略的平面図の例示である。
【
図9D】
図9Dは、予め作られたFR-4/金属積層体から形成された、別の例示的トランザクションカードの概略的断面図の例示である。
【
図9E】
図9Eは、FR-4層のうちの1層の内部表面上にメタライゼーションが配置された状態の、金属層に対して接着剤により取付けられた個別のFR-4層を含む、トランザクションカードの一部分の概略的断面図の例示である。
【
図9F】
図9Fは、FR-4層のうちの1層の外部表面上にメタライゼーションがエッチングされた状態の、金属層に対して直接固着されたFR-4層、およびメタライゼーションを覆う追加の層を含む、トランザクションカードの一部分の概略的断面図の例示である。
【
図10】
図10は、トランザクションカードを作製するための例示的方法を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の態様は、トランザクションカード、トランザクションカードの製造方法ならびに、開示された方法により生産されたトランザクションカードに関する。
【0019】
図1には、本発明の態様に係るトランザクションカードを生産するための方法100の選択されたステップを描く流れ図が示されている。本明細書中に記載の方法に関して、本明細書中の説明から、1つ以上のステップを省略することおよび/または記載された該方法の順序から外れて行なうことが可能であり、それでもなお所望の結果は得られるものと理解される、ということを指摘しておかなければならない。
【0020】
ステップ110において、トランザクションカードのカード本体内に開口部が形成される。開口部は、1つ以上の成形された電子コンポーネントを収容するようにサイズ決定され得る。開口部は、カード本体を通って部分的に(こうして例えばポケットを形成する)あるいは完全に(こうして孔を形成する)延在することができる。いくつかの実施形態において、カード本体を通って形成された孔は次に一方の側で、例えば適用材料、例えば
図3Dに示された要素307cなどの接着式に固着されるプラスチック材料を用いて、完全にまたは部分的に覆われ得る。
図3D内に描かれているように、要素307cは、孔を取り囲む部域に重複して、カード本体内の孔の縁部により周縁部で、そして適用材料307cにより底部端部上で境界画定されたポケットを形成する。適用材料は、後でポケット内に充填すべき成形された材料と同じであるかまたはそれと相容性のある材料であり得る。いくつかの実施形態において、
図3Dに示されているように、カード本体内の孔を取り囲む部域に重複する適用材料307cは、カード本体内の孔の周縁部の内側に適用材料の「棚」309を提供するように、カード本体内の孔よりも小さい面積を有する貫通孔308を有することができる。
【0021】
本発明のカード本体は、ステンレス鋼、青銅、銅、チタン、炭化タングステン、ニッケル、パラジウム、銀、金、白金、アルミニウム、またはカードにその本体(構造)および重量の大部分を与える任意の合金といった好適なあらゆる金属を含めた任意の好適な材料で構成されてよい。付加的に、または代替的に、本明細書中に記載のカード本体は、任意の好適なポリマ材料(例えばポリカーボネート、ポリエステル)または無機材料(例えばガラス、セラミック)、または以上の材料のいずれかの任意の組合せで構成されてよい。
【0022】
ステップ120では、カード本体の開口部内に電子コンポーネントが挿入される。
【0023】
ステップ130では、電子コンポーネントの周りに成形材料が成形される。ステップ120および130の順序は、特定の利用分野に応じて変動可能であるということを指摘しておかなければならない。
【0024】
一実施形態において、ステップ130は、オーバーモールディングプロセスを含む。オーバーモールディングプロセス中、成形材料は、電子コンポーネントの表面の少なくとも一部分を覆うような形で、電子コンポーネントの周りに(そして典型的には電子コンポーネント全体にわたり)成形される。電子コンポーネントのオーバーモールディングは、ENGLEインサート(Engel Austria GmbH、Austria)およびCavistMoldManTM(Reno、NV)などの、従来の市販の設備を用いて達成可能である。
【0025】
電子コンポーネント201が、オーバーモールディングプロセスの前(
図2A中)および後(
図2B中)で示されている。オーバーモールディングされたコンポーネント200は、電子コンポーネント201を成形材料205が完全に覆うものとして描かれているものの、当業者であれば、さまざまな程度にオーバーモールディングすることにより、トランザクションカードの所望の構造的剛性、機能性および美観を達成することができるということを理解するものである。詳細には、
図2Aおよび2Bに示されているように、コンポーネント200に接続されたワイヤ210および220の形をした電気接点は各々、コンポーネントに対する電気的接続を可能にするためオーバーモールディングから突出する未封入端部を有する。
図2Aおよび2B中ワイヤとして描かれているものの、電気接点または他の未封入部分は、電気接点に限定されず、任意の形状または形態をとることができるということを理解すべきである。さらに、いくつかの実施形態、例えば未封入コンポーネントと封入コンポーネントの間の技術的に望ましい程度の結合を、封入層を通して行い得る実施形態などでは、コンポーネントを完全に封入することが可能であるということも理解すべきである。
【0026】
オーバーモールディングプロセスが利用されている
図1に戻ると、ステップ120の実施に先立ってステップ130を行なうことができる。すなわち、カード本体の開口部内への挿入に先立って、電子コンポーネントを別個にオーバーモールディングすることができる。オーバーモールディングされた電子コンポーネントの挿入に先立って、オーバーモールディングされたコンポーネントをさらに機械加工して、余剰の成形材料を除去しかつ/または、オーバーモールディングされた電子コンポーネントをカード本体の開口部内にしっかり固定するために使用可能である成形材料内に特徴部を創出することができる。例えば、
図2Bを参照すると、オーバーモールディングされたコンポーネント200をカード本体の開口部内にしっかり固定できるように成形材料205内に唇状部を機械加工することができる。
【0027】
代替的には、ステップ120を行なった後で、ステップ130のオーバーモールディングを行なうことができる。この実施形態では、電子コンポーネントはカード本体の開口部内に挿入される。その後、強制的に成形材料をカード本体の開口部内に流入させ、電子コンポーネントの少なくとも頂部表面を含めた1つ以上の露出した表面全体にわたり成形する。当業者であれば、成形材料をカード本体の開口部内に流入させる場合には、オーバーモールディングに付隨する圧力および熱に実質的な変形なく耐えるようにカード本体材料を選択することができるということを理解するものである。
【0028】
インサート成形プロセスが利用される場合には、ステップ120を行なう前にステップ130を行なうことができる。従来のインサート成形プロセスには、金型内に電子コンポーネントを挿入するステップとそれに続いて成形材料を金型キャビティ内に射出して、成形された電子コンポーネントを形成するステップが含まれる。成形された電子コンポーネントは、インサート成形プロセスの後、成形材料によって完全にまたは部分的に封入されてよい。
【0029】
図3A-Dに目を向けると、本発明の態様に係るトランザクションカードを製造するためのインサート成形プロセスの選択されたステップの概略的例示が描かれている。図中、
図3A~3D内の部域305および308は、カードを貫通する孔を表わす。
図3A中の部域307a、bおよび
図3Bおよび3D内の部域307cは、成形材料が結合し手掛りとするためのカード本体内の部分的に覆われた孔(ポケット)を表わす。
図3Bは、成形されたコンポーネント310のインサート成形された材料が見える完成した成形済みカードを描いている。インサート成形された材料は、例示を目的として背景のカード材料とコントラストを付けて示されているものの、成形されたコンポーネントは、背景のカードとの関係において彩色またはシェーディングにおけるいずれかの特定のコントラスト度に限定されず、カードの表側と同じ材料を含むことができ、または完成したカード内でのその可視性を最小限に抑えるべく表側面の彩色またはシェーディングと整合するように選択された彩色またはシェーディングを有するように選択された材料を含むことができる。例えば、成形材料とは異なる材料を含むカード本体(例えば金属またはセラミックの本体と熱可塑性樹脂成形材料)においては、成形材料の彩色は、カード本体材料と同じまたは類似のものである成形材料内の成分の使用(例えば本体の金属と同じである粉末金属の成形材料内への包含)を含め、本体の材料に可能なかぎり近く整合する色および色調を有するように選択され得る。他の実施形態においては、カードの本体とコントラストを示す成形材料を使用することができる。
図3Aは、カード本体302を貫通して延在する開口部305を含むトランザクションカード300の表側面を描いている。複数の固定用特徴部307a、bは、成形材料が接着するかまたは他の形で結合することのできる部域を提供する。描かれた実施形態において、固定用特徴部307a、bは、非貫通孔(例えばポケット)である。類似の固定用特徴部セット307cが、
図3B中にトランザクションカード300の対向する背側面上に見られる。開口部305および固定用特徴部307a、b、cの幾何形状は、金属トランザクションカード300のRF性能を改善するように選択された。固定用特徴部307a、b、cは、成形材料と同じであるかまたは他の形で相容性があり、かつカード本体材料とは異なるものである材料を含むことができ、こうして成形材料および固定用特徴部の材料は、成形材料とカード本体の間に創出されるいかなる固着よりも相対的に強い固着を伴って、融解または他の形で接合するようになっている。
【0030】
図3Cは、インサート成形された電子コンポーネント310が開口部305内に設置された後のトランザクションカード300の表側面を描いている。描かれた実施形態において、成形された電子コンポーネント310はトランザクションカード300上で目に見えるものと思われる。成形された電子コンポーネント310の幾何形状により、固定用特徴部307a、b、cが創出する付勢作用を通して成形された電子コンポーネント310を、トランザクションカード300にしっかり固定することが可能にする。代替的に、または付加的には、成形された電子コンポーネント310は、ビスフェノール、ノボラック、アリファティックおよびグリシジルアミンなどのエポキシ樹脂を用いて、トランザクションカード300の開口部305に接着することができる。
【0031】
余剰の成形材料は、追加の電子コンポーネントまたは他の所望されるコンポーネントを組込むために、成形された電子コンポーネント310から(例えばフライス加工または機械加工によって)除去されてよい。
【0032】
図4Aは、電子コンポーネント405を収容するためにカード本体402内にポケット403が機械加工される、例示的オーバーモールディングプロセスを描いている。描かれた実施形態において、電子コンポーネント405は、プリント基板(PCB)、具体的にはRFIDモジュールである。ポケット403はカード本体402の背面の実質的部分を横断するものとして描かれているものの、当業者であれば、組み込むべき電子コンポーネントに応じて、さまざまな幾何形状のより小さい開口部が好適であり得るということを理解するものである。
【0033】
ポケット403は、電子コンポーネント405を収容し所定の位置に止着するようにサイズ決定されてよく、あるいは、ポケット403の内部唇状部と電子コンポーネント405の外部縁部との間に余剰の成形材料を許容するようにサイズ決定されてもよい。電子コンポーネント405は、付加的にまたは代替的に、上述のようにエポキシを用いてポケット403に接着され得る。
【0034】
オーバーモールディングされたフェースプレート410が、トランザクションカード400の裏面を創出する。オーバーモールディングされたフェースプレート410は、電子コンポーネント405を完全にまたは部分的に封入することができる。オーバーモールディングされたフェースプレート410は、別個に調製され、その後、(例えば上述のような好適なエポキシを用いて)ポケット403に取付けられてよく、あるいは、成形材料の層を直接ポケット403内にオーバーモールディングすることによって形成されてもよい。
【0035】
例示的実施形態において、オーバーモールディングされたフェースプレート内で使用される成形材料は、トランザクションカード400が金属または他のRF干渉材料で構成されている場合、RF伝送を増強し得るプラスチック材料である。
【0036】
当該技術分野において公知の通り、販売時点(POS)端末のカードリーダとの誘導結合用のRFIDチップモジュールを伴うトランザクションカードは同様に、典型的に、RFIDチップモジュールに対して埋込み型アンテナを誘導結合するように構成された埋込み型ブースタアンテナ構造を有し、結合されたアンテナ、RFIDモジュールおよびカードリーダは、カードからカードリーダまで情報を伝送するための回路を形成している。したがって、RFIDモジュールが、封入されたまたは部分的に封入されたコンポーネント(または本明細書中に記載の通りに加工される複数の電子コンポーネントのうちの1つ)である例示的実施形態において、アンテナ構造は、あらゆる数の手法で提供可能である。一実施形態において、アンテナ構造は、本明細書中に記載の成形プロセスの後にカードに適用される層内に埋込まれ得る。アンテナ担持層は、非加熱プロセス(例えば接着剤による)または、電子コンポーネント全体にわたる成形品を再融解、変形または他の形で有害に妨げることのない温度、圧力および持続時間で行なわれる熱積層プロセスを用いてカードに積層され得、あるいは、このような熱積層プロセス中に、積層ステップが行なわれている対向表面から成形品の何らかの再融解または変形部分が突出するのを防ぐために、バッキングシート(金属または熱積層による影響を受けない他の何らかの材料を含むもの)を具備することが可能である。
【0037】
別の実施形態において、成形ステップは、本明細書中に記載の電子コンポーネントのみならず、アンテナ構造が後に中に配置される予定のカード表面の部分をも少なくとも覆うオーバーモールディングステップを含み得る。例えば、RFIDモジュールを封入または部分的に封入することに加えて、所望の厚みを有する層内の少なくとも1つの全表面(典型的には裏側表面、ただし、同様にまたはその代りに表側表面)をも覆うフラッドオーバーモールディングステップを実施することが可能である。次に、当該技術分野において公知の超音波プロセスを用いて、このオーバーモールディングされた層内にアンテナを埋込むことができる。カードの表面上に印刷すべきあらゆるコンテンツを、オーバーモールディングされた層の表面上に印刷することもでき、あるいは、追加の印刷層を接着剤または積層などによって取付けることも可能である。他の実施形態では、アンテナを成形品の表面上に印刷するかまたは、成形された表面全体にわたり、例えば接着剤を用いてまたは積層によって取付けられる別の層として適用することもできる。以上は、非限定的な例であり、カード内に成形された電子コンポーネントを提供するために本明細書中に記載の方法の結果としての製品の下流側加工には無限の可能性が存在し、本発明の一部の態様は、いかなる形であれ後の方法ステップによって限定されないということを理解すべきである。
【0038】
図5A~5Cに例示されている別の実施形態において、支払いモジュールのアンテナと誘導結合するためのブースタアンテナ502は、支払いモジュール(例えばデュアルインタフェース(DI)RFIDチップ)をほぼ取り囲む環状金属フレームの形をとることができる。
図5A~5C内に描かれているように、アンテナは、環状アンテナの内側縁部から外側縁部まで延在する不連続部またはスリット506を有する。このようなアンテナは概して、参照により本明細書に組込まれているLe Garrecらに対する米国特許第8,608,082号(’082特許)中では「増幅器」として、そしてFinnらに対する米国特許第9,812,782号(およびその他)では「結合用フレーム」として説明され特徴付けされている。以上で、そして本発明の共通譲受人に対して譲渡され参照により本明細書に組込まれている「DI容量性埋込み金属カード」なる名称の2018年3月22日出願の米国特許出願第15/928,813号(’813出願)中で説明されている通り、金属カード自体は、カードの周縁部から支払いモジュールが中に組付けられているポケットまで不連続部(例えば
図5Aおよび5B中に描かれている504など)が延在している状態で、このようなアンテナまたは増幅器として機能することができる。不連続部は、
図5Aおよび5B内に描かれている段付き形状、’813出願および関連出願中に記載の任意の幾何形状、または上述の参考文献中で開示されているあらゆる幾何形状を非限定的に含めた、任意の幾何形状を有することができる。
【0039】
’813出願は同様に、FR-4材料(エポキシ樹脂および製織繊維ガラスで作られた熱硬化性積層体)またはポリイミドなどの自立層をカードの裏側に用いて、不連続部を有にするカードを強化するステップも開示している。さまざまなインディシア、磁気ストライプなどのための印刷層をFR-4層と組立てるかまたは、FR-4層上に直接印刷することができる。例えば’813出願は、FR-4バッキング層と共に相対的に薄い(例えば厚み0.009インチ)のステンレス鋼基板が使用される1つの実施形態、そして、2ミルの接着剤層を用いて鋼層の裏側面に取付けられた4ミルのFR-4層を有する18ミルのステンレス鋼層、(別の2ミルの接着剤層を介して取付けられた)FR-4層の裏側の5ミルの印刷されたシート、および印刷シート層の裏側面に対して積層された磁気ストライプを含む2ミルのオーバーレイ層を含む別の実施形態を記載している。’813出願は、参照可能な自立(例えばFR-4)層が、80MPa・m3~40GPa・m3の剛性を有することを開示している。
【0040】
本明細書中に以下でより詳細に説明されるいくつかの実施形態においては、同様にブースタアンテナも提供され得る。いくつかの実施形態において、特に、ブースタアンテナを含む実施形態においては、金属カード本体を、カードリーダと通信するための支払い回路から絶縁することができ、ここでこの回路は、トランスポンダモジュールとブースタアンテナを格納する。このような実施形態において、支払い回路はアンテナまたは増幅器として機能しない可能性がある。他の実施形態では、金属カード本体はブースタアンテナと共に、トランスポンダモジュールを格納する支払い回路の一部として役立つ可能性がある。さらに他の実施形態では、金属カード本体は、カードリーダからエネルギをハーベストする異なる回路の一部であり得るが、参照により本明細書に組込まれている2020年1月24日出願の「ウインドウまたはウインドウパターンと任意のバックライティングを伴う金属、セラミック製またはセラミックコーティングされたトランザクションカード」なる名称の米国特許出願第16/751,285号の中でより詳細に論述されているように、実際にカードリーダと通信してもしなくてもよい。
【0041】
図5Cに示されているように、金属アンテナ502は、封入用材料で取り囲まれて、外側周辺部520および内側領域522を形成し、封入材は同様に、内側領域を外側周辺部に連結するスリット506も充填する。例示を目的として、
図5Cにおいてアンテナは、描写中でアンテナが目に見える状態にとどまるように、Z方向でそれを覆う封入用材料無しで描かれている。カードの金属本体500が信号増幅のために利用されている実施形態においては、封入用材料は同様に金属本体内のスリット504をも充填し得る。しかしながら、全ての実施形態にスリット504が存在しない可能性があるということを理解すべきである。さらに、カード本体が2つ以上のスリットを有し得るということを理解すべきである。例示的な代替的追加スリットの場所554、564、574は破線で描かれている。例えば、一実施形態において、チップポケットと交差するスリット504および554の組合せは、カードの全長に沿った二分区分を形成することができ、あるいは、チップポケットと交差するスリット564および574の組合せは、共に、カードの全幅に沿った二分区分を形成することができる。ここで、「二分する」なる用語は、ラインがカードを2つの区分に分割するものの、これらの区分は必ずしもサイズが等しくないことを意味するように意図されているということを指摘しておかなければならない。アンテナの対向する側で同じラインに整列させられて全体的にアンテナを中心とするものとして描かれているが、組合されたスリットは、アンテナの異なる側にあるスリットが平行なまたは平行でないライン上に存在する関係、スリットがアンテナの対向する側ではなくむしろ隣接する側に連結している関係、スリットがカードの縁部に対して平行でない関係、または一方のスリットまたは両方のスリットが線形でない関係を含めた、アンテナに対してそして互いに対して任意の関係を有することができる。カードが二分されている実施形態については、カードの残りの部品は、オーバーモールディングによってかまたは他の非導電性接着剤または充填材によって、共に固着され得る。好ましい実施形態は、カード本体を2つの個別の部分へと一回だけ二分することしか含まないものの、複数の本体スリットがカードを3つ以上の個別の部分へと分割することも可能である。二分された配設は、概して渦電流を最小限に抑えることができる。
【0042】
したがって、
図5Cに描かれているように封入されたアンテナ502は、全体として創出されて次にカード本体内の開口部の中に挿入されても、あるいは例えばオーバーモールディングによってカード本体内の開口部の中にその場で創出されてもよい金属含有プラグ550を画定する。プラグがポケット内に挿入されるかまたはその場で成形された後、(例えばフライス加工または当該技術分野において公知の任意のプロセスによって)ポケットをプラグの内側領域522内に創出することができる。このような設計の利点としては、金属カード本体を、プラグ550を収容するための貫通孔と共に形成することができる、という点がある。好ましくは、貫通孔は、フライス加工以外の方法、例えばスタンピング、エッチング、レーザカッティングなどによって形成され得る。あるいは、カード本体を最初に貫通孔を伴って形成することが可能であり、これは、セラミック、鋳造金属、または金属ドープされたエポキシ製(例えば、本出願の共同譲受人に対して譲渡され参照により本明細書に組込まれている「金属ドープされたエポキシ樹脂トランザクションカードおよびその製造方法」なる名称の2018年9月12日出願の米国仮特許出願第62/730,282号からの優先権を主張する2019年9月11日出願の米国PCT出願第2019/50592号中に記載のもの)であるカード本体にとって極めて有利であり得る。この場合、支払いモジュールを収容するためのポケットを創出するためのフライス加工ステップを非金属封入用材料内で行なうことしか必要でなく、この材料は金属に比べフライス加工するのが容易でありかつ短い時間しか要さない。当該技術分野において公知であるように、支払いモジュールを収容するためのポケットは、カードの表側表面上に第1の相対的に大きい方の面積およびカードの裏側面上の第2の相対的に小さい方の面積を有する段付き孔であってよい。支払いモジュールが中に挿入されるカード本体内のポケットの面積を拡大することによって、(スリットが存在する実施形態において)金属カード本体内にカットしなければならないスリット504の全長を最小限に抑え、同様に製造時間を節約することができる。上述の改善は、生産量および効率の増大を生み出す。
【0043】
いくつかの実施形態において、カード本体がブースタアンテナの一部として機能する必要はないか、または所望されない可能性がある。このような実施形態においては、カード本体内の開口部は、
図5A~5C中に描かれているよりも相対的に大きい可能性があり、こうして、外側周辺部520は、カード本体からの電気的/磁気的干渉を容認できる程度に最小化するために動作可能である、カード本体からプラグ550内のアンテナ502の金属を分離する幅Wを有することになる。このような実施形態内のプラグ550の幾何形状は、さらに矩形であり得、プラグの最内側縁部560は、接点の位置についての関連規格に適合するようにDI支払いモジュールの場所が描かれた通りに本質的に不変にとどまる一方で、RF信号の一部をカードの中心に向かって誘導するために、さらにカード本体500の中心に向かって位置付けされている。
【0044】
本明細書中では金属カード本体に関連して説明されているものの、類似の幾何形状を非金属カードで利用することも可能である。(金属、セラミックおよびセラミックコーティングされた金属の本体にとって極めて有利であるものの)あらゆる材料のカード本体に好適である本明細書中に記載の製造方法に加えて、例えば、カード内部のインレイとしてプラスチック内に金属コンポーネントを超音波で(または他の形で)埋込み、こうして銅線またはエッチングされたアンテナインレイを置換することによって、プラスチック(例えばPVC)のカード本体内でアンテナ502を展開することが可能である。描かれているアンテナ幾何形状502は、環帯の内側周縁部と外側周縁部を連結するスリット506を伴って、ほぼ閉鎖した周縁部を有する平面的な環状部材として説明することができる。例示的実施形態においては単一の部材として描かれているものの、アンテナ構造はそのように限定されず、2つ以上の部材を含むことができる。対照的に、銅線またはエッチングされたアンテナインレイは典型的に、螺旋の巻回が半径方向で空間により分離されている状態で、ラインまたはワイヤの螺旋パターンを創出する。
【0045】
当業者であれば、好適な成形材料が、ステップ130において使用される成形プロセスのタイプにより左右されることを理解するものである。例えば、インサート成形またはオーバーモールディングが利用される場合、EVA、メタロセンポリアルファオレフィン、アタクチックポリアルファオレフィンを含むポリオレフィン、ブロックコポリマ、ポリウレタンホットメルト、エポキシおよびポリアミドからなる群中の1つ以上の材料を含み得るTechno Melt(登録商標)融解性接着剤(Henkel)などの熱可塑性材料、そして例えば繊維ガラス強化ポリエステル、ポリウレタン、ベークライト、デュロプラスト、メラミン、ジアリルフタレート、およびポリイミドなどの熱硬化性材料を使用することができる。当業者であれば、ロジウム、アルミニウム、チタン、マグネシウム、銅、黄銅、ニッケル、モネル、インコネル、鋼および上述のものの合金を含め、かつ上述のもののいずれかを非限定的に含む粉末金属を含有するエポキシを含めた、オーバーモールディングまたはインサート成形プロセス中で流動性を有し得る他の材料も同様に使用可能である、ということを理解するものである。セラミック材料を含有するエポキシも同様に使用可能である。
【0046】
別の実施形態においては、オーバーモールディングまたはインサート成形プロセス内で使用される成形材料は、およそ150~300Cの成形温度範囲を有するプラスチック材料である。
【0047】
図6A~6Cは、外側周縁部611を有する金属フレーム610の形をした本体、金属フレームの内側周縁部612を画定するカード本体内の開口部を含む金属RFIDデバイスの特定の実施形態600を描いている。少なくとも1つの本体不連続部620が、金属フレームの外側周縁部から内側周縁部まで延在する。少なくとも1つの電子コンポーネントが開口部内に配置され、非導電性材料640、642の層が、電子コンポーネントの周りに配置される。電子コンポーネントは、基板634内に配置されたRFIDチップ632を含み、同じく基板内に配置されているアンテナ636がRFIDチップに連結されている。RFIDチップ、アンテナ、および基板を集合的に、RFIDモジュールと呼ぶことができる。したがって、RFIDデバイス600は、対向する表面614、615、外側周縁部611および、内側周縁部612を画定し対面する表面614、615のうちの少なくとも一方から一定の深さだけ延在する金属フレーム内の開口部を有する、金属フレーム610を含む。
図6A~6Cに描かれているように、開口部は、上部表面614から下部表面615までの金属フレームの厚みTと共存する深さがある。(非導電性基板634、基板634に組付けられたRFIDトランスポンダチップ632、およびRFIDトランスポンダチップに接続された基板内のモジュールアンテナ636を含む)チップ層630が、開口部の内部に配置されている。モジュールアンテナはエッチングされてもよいし、または基板内への配置のために当該技術分野において公知の任意の構造を有していてよい。1つ以上の充填層640、642がフレームの開口部内で、チップ層と金属フレームの表面の1つとの間に配置され得る。金属フレームの少なくとも1つの表面全体にわたり、1つ以上の層650、652が積層され得る。1つの貫通孔660が、好ましくは、金属層の内側表面611と外側表面612の間に位置設定されたデバイスの一部分全体にわたって整列させられて、デバイスの頂部表面と底部表面の間、
図6Bに描かれているように頂部層650の頂部表面と底部層652の底部表面の間に延在する。
図6A~6C内では、チップ層内のアンテナ636および金属フレーム内の不連続部620の両方を伴って示されているものの、いくつかのコンポーネントでは一方または他方だけを有し、両方を有してはいない可能性もあり、一方、他の実施形態では、描かれている通り両方を有している可能性もある。
【0048】
デバイス600を作る1つのプロセスは、開口部内への層642、630および640の積重ねに先立って金属フレーム610の底部表面615に層652を貼付するステップ、そして次に、開口部全体にわたり層650を配置するステップ、および層640および642がチップ層630を包むような形でスタックを積層するステップを含むことができる。金属フレームは、金属ブランク内に開口部をカットすること、金属を所望の形状に成形すること、または押出された棒から断面を切取ることによって構築され得る。金属フレーム610の内側周縁部612まで延在する寸法を有するものとして描かれているものの、チップ層630が実質的により小さい設置面積を有することができ、こうして層640および642はチップ層630の全ての側面を完全に包むことになる、ということを理解すべきである。さらに、非導電性材料の中間層(図示せず)が、基板634の外側周縁部がフレームの内側周縁部612よりも小さい構成で、基板634の周縁部を収容するための切欠きを伴って、層640と642の間に配置され得る、ということを理解すべきである。
【0049】
図7A~7Cに描かれている別の実施形態において、RFIDデバイス700は、対向する表面714、715、外側周縁部711および、内側周縁部712を画定し表面714から深さDにわたって延在する金属フレーム内の開口部を有する金属フレーム710を含む。
図7A~7Cに描かれているように、開口部は、上部表面714から下部表面715までの金属フレームの厚みTよりも小さい深さDを有する。(基板734、基板734に組付けられたRFIDトランスポンダチップ732およびRFIDトランスポンダチップに接続された基板内のモジュールアンテナ736を含む)チップ層730が、開口部の内部に配置されている。したがって、開口部は、底部を有するポケットおよびチップ層とポケット底部の間に配置されたフェライト層742を含み、ポケット内で金属フレームの頂部表面714とチップ層730の間に充填層740が配置されている。層750が、金属フレーム710の頂部表面714および充填層740全体にわたり積層される。
【0050】
デバイス700を作製する1つの方法は、金属ブランク内に(フライス加工、エッチング、レーザにより)ポケット開口部を作って金属フレーム710を画定するステップ、開口部内に層742、730および740を積重ねるステップ、開口部全体にわたり層750を配置するステップおよび積重ねたコンポーネントを共に積層するステップを含むことができる。
図7A~7Cに描かれているように、RFIDデバイス700は、デバイスの頂部表面と底部表面の間、好ましくは金属層の内側表面711と外側表面712の間のデバイスの部分内で整列させられて、
図7Aに描かれているように頂部層750の頂部表面と金属層の底部715表面の間に延在する貫通孔760を有する。
図7B中にさらに描かれているように(煩雑さを削減するため
図7Aまたは7Cには示されておらず、
図6A~6Cおよび
図8A~8Cの設計にも同様に適用可能であるものの、図示されていない)、孔760は、キーリングまたはキーチェーンなどの1つ以上のキーを保持するように構成された装置のコンポーネントなどの部材780を収容するのに特に好適であり得る。したがって、デバイス600および700は、典型的にクレジットカードに関連するサイズよりも小さいサイズであり得、かつキーフォブまたはキータグとして機能するのにさらにふさわしい好適なサイズを有するものであり得る。
【0051】
図6A~6Cおよび7A~7Cは、非接触専用RFIDデバイスを描いているものの、以上のいずれかにおけるRFIDデバイスが、非接触および接触型の両方のリーダとインタフェースする能力をもつデュアルインタフェースデバイスであってよいということを理解すべきである。したがって、
図8A~8Cに描かれているように、RFIDデバイス800は、対向する表面814、815、外側周縁部811および、内側周縁部812を画定し表面814から一定の深さだけ延在する金属フレーム内の開口部を有する金属フレーム810を含む。(基板834、基板834に組付けられたRFIDトランスポンダチップ832およびRFIDトランスポンダチップに接続された基板内のモジュールアンテナ836を含む)チップ層830が、開口部の内部に配置されている。したがって、開口部が、底部を有するポケットを含む
図8Bに描かれた実施形態においては、チップ層とポケット底部の間にフェライト層842が配置されており、ポケット内で金属フレームの頂部表面814とチップ層830の間に充填層840が配置されている。層850は、金属フレーム810の頂部表面814および充填層840全体にわたり積層される。DIチップは、接触型の機能性を有することから、上部層850の頂部表面まで延在する。
【0052】
デバイス800の1つのプロセスは、金属ブランク内に(フライス加工、エッチング、レーザにより)ポケット開口部を作って金属フレーム810を画定するステップ、開口部内に層842、830および840(チップ832を収容するための切欠きを有する)を積重ねるステップ、開口部全体にわたり層850(チップ832を収容するための切欠きを伴う)を配置するステップおよび積重ねたコンポーネントを共に積層するステップを含むことができる。別の実施形態においては、層842、830、840および850のスタックが共に積層されるとき、アンテナ836だけが基板830上に存在することができ、その後、チップ832を収容するための孔が創出され、チップ832が挿入される。後続する積層ステップは、チップ832の頂部接触表面以外の全てを包むように融解性層をリフローさせるのに好適な温度で行なうことができる。
【0053】
図8B内の金属フレームの厚みよりも小さい深さを有するポケットとして描かれているものの、DIチップ(または接触専用)の設計は、
図6A~6Cに描かれている実施形態などの、金属フレームの全厚みに開口部が延在している設計で使用するためにも同様に好適であり得るということを理解すべきである。さらに、このような実施形態の置換物には、アンテナ836のみを伴うもの、アンテナ836およびスリット620に類似するスリットを伴うもの、およびアンテナとスリットの両方を伴うものが含まれる。
【0054】
クレジットカードサイズの支払いデバイス用に意図された標準的カードリーダ内で機能性を維持するために、DIチップの配向(チップ832の接触パッドの短い縁部がデバイスの前縁870に対し平行な状態)、DIチップ832の場所(中心の左側)および金属フレーム810の寸法は、(カードの表側表面または頂部表面から見た)標準DIクレジットカードの最左側部分のものと同一である。このような構成により、前縁870が最初に配向された状態でデバイスを接触型カードリーダ内に矢印Pの方向で挿入することが可能となり、こうしてデバイス800はカードリーダの視点で見た場合に標準的クレジットカードと見分けのつかないものになっている。
【0055】
実施形態600、700、800のいずれにおいても、キーキャリヤのコンポーネントを収容するための貫通孔について、いずれか特定の場所が限定されていないものの、DI(または接触専用)デバイス内では、孔はカードリーダ内への挿入との干渉をひき起こさない場所に位置設定されなければならない、ということを理解すべきである。デバイスの左上または右上コーナーの場所(例えば
図8A中で孔860aが示されている場所)が許容可能であり得るものの、
図8A中で孔860bが描かれている場所など、カードの後縁872から突出する付属物874上に孔が位置設定されている構成においては、カード挿入方向におけるデバイスの全寸法を削減することが可能である。
図8Aに描かれている幾何形状は半円形であるものの、付属物874は、所望されるあらゆる幾何形状を有することができる。デバイス1つにつき単一の貫通孔しか必要とされないかもしれないものの、いくつかのデバイスは2つ以上を有していてよい。図面中では特定の場所にある貫通孔660、760、860a、860bを伴って描かれているが、孔は、デバイスの機能的要素(または、例えばカードリーダ用、接触包含モジュール用などのデバイスの意図された用途)と干渉しない任意の場所にあってよい。しかしながら、フレームの金属コーナーに位置設定することが極めて望ましい。
【0056】
矩形として描かれているが、デバイス600、700、800(最も詳細には、接触機能を伴って描かれていないデバイス600および700)は、所望される任意の幾何形状を有することができる。デバイス800は関連する部分内でカードリーダ中に挿入するための幾何形状を必要とするものの、その全体的幾何形状は限定されない。
【0057】
本明細書中では開口部および非導電性積層および/またはRFIDトランシーバチップを取り囲む基板を含む具体的実施形態で説明されているものの、RFIDチップおよび/またはアンテナは、本明細書中に記載の任意の技術を用いて封入可能である、ということを理解すべきである。さらに、本明細書中のいくつかの実施形態は「カード」に言及し、他の実施形態はキーホルダ上で使用するのに好適な「デバイス」に言及しているものの、本明細書中で開示されている設計のいずれも、標準的なトランザクションカードのサイズにもキーホルダに取付けるように意図されたより小さなサイズにも限定されない任意のサイズでの使用に好適であり得る、ということを理解すべきである。当該技術分野において公知であるように、標準的トランザクションカード(例えばクレジットカード、デビットカード、ギフトカード)は、CR80またはISO/IEC7810:2003規格に準拠しており、半径3.18ミリメートルの丸味のあるコーナーを伴っておよそ3.5インチ×2インチ、またはより具体的には3.37インチ(85.6mm)×2.125(53.98mm)、厚み0.03125インチ(0.76ミリメートル)という公称寸法を有する。当業者であれば理解するように、上述の寸法は、各々について許容誤差範囲を有する公称寸法である。本明細書中では「キーホルダ」と呼ばれているものの、本明細書中で論述される貫通孔を伴うデバイスは、チェーン、リング、ランヤード、ロープ、ネックレス、ブレスレット、ポストなどを含めた、同じ部材にキーが取付けられたまたは取付けられていない、孔を通過するのに好適な任意のタイプの部材に取付けることができる、ということを理解すべきである。
【0058】
図9A~9Cに描かれたさらに別の実施形態において、カードは、金属箔、金属シート、バルク金属または他の公知の金属から形成され得る金属層950を含む。金属層950は、カード周縁部からトランスポンダチップモジュール910を収容するための金属層内の開口部912までの通路を画定する少なくとも1つの第1の不連続部920を含めた、金属層の表側表面902から裏側表面904まで延在する複数の不連続部を含むことができる。
図9A~9C中に描かれている実施形態では、他の不連続部922、924、928が、周縁部から、開口部912と一致しない端点まで延在している。別の不連続部926は、不連続部920との交差点から、開口部内にも周縁部にも至らない端点まで延在している。金属層950はさらに、追加の不連続部、例えばカード周縁部から開口部(
図9A~9Cには示されていないものの
図5Aに描かれているスリット504および554またはスリット564および574のそれぞれの組合せと類似のもの)までの通路を画定しかつカードを2つの個別の部分に二分する第2の不連続部を含むことができる。不連続部は、任意の形状を有していてよく、印刷された特徴部と一体となった状態を含めカードの一方の面または両方の面の上で美的デザインの外観に組込まれるかまたは英数字、記号などの形状で形成されている不連続部を含むことができる。
【0059】
図9Cに描かれた実施形態において、ブースタアンテナ層942は、ブースタアンテナを形成する基板(例えばポリエステル)上に複数のメタライゼーション940、944を含む。好適なブースタアンテナは同様に、非金属基板上に配置された金属ワイヤアンテナを含むことができる。アンテナの金属部分は、ブースタアンテナと金属層を分離する糊着層952により金属層950から絶縁されている。ブースタアンテナ942は、トランスポンダチップモジュール910と通信するために構成されており、トランスポンダチップモジュール910およびブースタアンテナ942は両方共、カードリーダ(図示せず)との無線通信用に構成された回路内のコンポーネントを含む。ブースタアンテナは、トランスポンダチップモジュールに対し誘導的に、または物理的接続部(例えばワイヤ、トレース、接点)を用いて接続され得る。例示的実施形態において、ブースタアンテナ層942は、中実ポリエステル層(例えば厚みおよそ25ミクロン)を含み、この層は両側で非対称にメタライズされていてよく、ポリエステルを貫通するビアが対向表面上に配置されたそれぞれのメタライゼーションを接続している。
【0060】
FR-4などの繊維ガラス強化エポキシ積層体といった補強層982が、金属層950の表側表面902全体にわたり配置され、類似の構成の補強層984が、金属層950の裏側表面904およびブースタアンテナ層942全体にわたって配置されている。しかしながら、補強層は、難燃性(ここから「FR(flame retardant)」の呼称)および非難燃性の両方のガラス強化エポキシ積層体を含めた、任意の特定のタイプのガラス強化エポキシ積層材料に限定されるわけではない。「FR-4」なる用語は、本明細書において、難燃性および非難燃性の繊維強化エポキシ積層体を非限定的に含めた、任意の構成の補強層を意味するための省略表現として使用されてよい。繊維強化積層体内の繊維は、繊維ガラス、ポリマ繊維または、繊維強化された構造を作るための当該技術分野において公知の他のあらゆるタイプの繊維を含むことができる。本明細書中で使用される繊維なる用語は、メッシュまたはグリット構造、製織構造、無作為配向繊維を有する構造などを非限定的に含めた、繊維またはフィラメント状部材を含む任意のタイプの構造を含むことができる。FR-4層は、接着剤層981および983によりそれぞれの層に接着され得る。接着剤層からの接着剤は、カードの形成中に、不連続部924、926、928に浸透し、部分的にまたは完全にこれに充填することができる。いくつかの実施形態(図示せず)において、アンテナ層942およびFR-4層984を逆転させ、層984を最外側層とし、外側印刷シート層上に直接印刷物を印刷することができる。アンテナ層が金属層に隣接している実施形態において、アンテナのメタライゼーションは金属層とは反対側のアンテナ基板の表面上に配置されるか、またはメタライゼーションと金属層の間に絶縁材料(例えば非金属基板上に配置された接着剤などの、接着剤および/または非金属層)が配置される。他の実施形態においては、メタライゼーションを、例えば超音波技術を用いてFR-4層内に埋込むことができる。
【0061】
「メタライゼーション」なる用語は典型的には、基板の外部表面上のコーティングを意味するものとして理解され得るものの、本出願全体を通して使用されている通り、この用語は、あらゆるタイプの金属構造を意味し、ブースタアンテナ構造に言及する場合、エッチングされたフィルム、コーティング、被着、印刷、埋込み型ワイヤなどを用いて創出される構造を非限定的に含めた、形態の如何に関わらないアンテナの金属構成体を意味する。
【0062】
例えば接着剤層991によって接着された状態で上部FR-4層982の上方に配置されているのは、任意のRFフレンドリ金属箔990(好ましくはメタリックな外観を伴って構成されている)であり、その上に、プラスチック層994が接着される(接着剤993により取付けられる)。とりわけ、接着剤層は、複合材料として箔と共に予備形成され、箔複合材料は、FR-4上にホットスタンピングされるか、またはFR-4上に圧延される。箔が上に圧延される実施形態において、箔複合材料は、その後次の層を取付ける前に除去される剥離層を含む。印刷コンテンツ995がプラスチック層994上に配置される。他の実施形態において、印刷コンテンツは、箔990上に直接印刷され、プラスチック層994/接着剤993は省略される。他の印刷コンテンツ996および/または磁気ストライプ(図示せず)を、下部FR-4層986上に配置することができる。スタック内の層994および990の位置が互いに逆転されている(例えば層900がスタック内で層994よりも相対的に高い位置に設定されるように交換された位置にある)実施形態も同様に提供され得る。
【0063】
図9Cに描かれた実施形態においては、開口部912は、トランスポンダ910の接触表面911がカードの頂部表面からアクセス可能であるような形で、複合カードの上部層全てを通って延在する。このような構成は、トランスポンダがデュアルインタフェース(DI)モジュールなどのようにカードリーダによって物理的に接触されるように構成された接点を有している実施形態において好ましい。しかしながら、開口部912がカードの頂部表面まで延在していない、非接触専用モジュールを組込んでいる構成を提供することも可能である。開口部912には、トランスポンダを金属層から絶縁する非金属プラグ913が充填され得る。プラグ913は、モジュールの最大幅部分の周縁部よりも相対的に小さい周縁部を有するトランスポンダの下向きに突出した領域914を収容するために底部内に孔915を有することができる。金属層内のプラグの構成は、参照により本明細書に組込まれている、「デュアルインタフェース能力を有する金属スマートカード」なる名称の米国特許第9,390,366号および/または「ブースタアンテナを伴うデュアルインタフェース金属スマートカード」なる名称の米国特許第10,318,859号、またはそれらの関連出願の中の教示にしたがったものであり得る。
【0064】
いずれかの特定の寸法に限定されるわけではないものの、
図9Cに描かれた本発明の態様の例示的実施形態には、下表1に記載されている例示的厚みおよび組成が含まれ得る:
【0065】
【0066】
図9Cに描かれているものの、層間の界面の多くにおいて、接着剤は任意であってよい(あるいは上または下の層との関係において個別の層でなくてもよい)ということを理解すべきである。例えば、本明細書中に記載されているように、FR-4層を金属層上に直接注型することができる。層の材料が接着剤を用いてまたは接着剤無しで隣接する層に固着するような形で、非金属層を共に積層することができる。アンテナ層は、個別の自立層であってよく、あるいは本明細書中でさらに説明するように、例えばエッチングされた金属箔を介した、FR-4上に直接配置された金属インクで印刷された、またはFR-4層内に(例えば超音波によって)ワイヤが埋込まれた、メタライゼーションを含むことができる。箔990が「転写箔」である実施形態においては、接着剤層991は任意であるか、または下位層に直接固着する転写箔990のマトリックスに一体化した接着剤層を表わし得る。スタック内におけるアンテナ層942およびFR-4層984の位置は、互いとの関係において逆転してよく、その場合、プラスチック層997は省略し、インク層996を直接FR-4層984上に印刷することができる。特に、以上では一つの実施形態が示されているにすぎず、他の実施形態では、より多くのまたは少ない層が含まれていてよい。
【0067】
図9A~9Cに描かれている実施形態において、ブースタアンテナ942は、トランスポンダ910に対する誘導結合を容易にするため、誘導を集中させる複数のネスティングされた半円形メタライゼーション944を含む。誘導結合を伴って示されているものの、他の配設では、ブースタアンテナは、トランスポンダに対する物理的接続を有することができる。
【0068】
底部FR-4層984全体にわたり、磁気ストライプ930を配置することができる。カードデザインには、典型的には底部FR-4層全体にわたってかまたは頂部プラスチック層上に配置された、ホログラム、印刷、2Dコード(例えばバーコードまたはQRコード(登録商標))などの他のカード特徴部を組込むことも可能である。
【0069】
ここで
図10を参照すると、例えば
図9A~9Bで描かれている実施形態などの本明細書中に記載のカードを製作するための例示的プロセスには、第1に、本明細書中で例示されているような断面内の金属層950として役立つ金属シート1000を提供するステップが含まれ得る。シートは、ライン1002、1004、1006、1008に沿って複数のカードにカットされるようにサイズ決定されている。
図10は4枚のカードしか有していないシートの一部分のみを描いているものの、シートを任意の数のカードへとカットするようにサイズ決定することが可能であるということを理解すべきである。重要なのは、一枚のシートあたりのカードの数の如何に関わらず、シートのサイズが好ましくは、シートからカットすべき単数または複数カードのサイズより大きく、こうして所望の不連続部を形成するためにシートに切込むときに、シートが無傷の状態にとどまることである。
【0070】
シートは、繊維ガラスまたはプラスチックのメッシュ層が金属層全体にわたって配置されている状態で、金型内に挿入されてよく、その後、エポキシを金型に充填して、金属シートの頂部および/または底部表面全体にわたりエポキシを注型して、
図9Eに描かれている実施形態の場合のように金属層に対し直接固着されたFR-4層982、984を形成することができる。他の実施形態では、予備成形されたFR-4層982、984を、
図9Fに描かれた実施形態の場合のように、金属シートの頂部および/または底部表面に対して接着式に固着することができる。
【0071】
本明細書中の他の実施形態に関連して記述されている層を非限定的に含めて、
図9Eおよび
図9F中に示されているものよりも多いかまたは少ない層を具備することが可能である。同様に、本開示のいずれかの節において論述されている他の実施形態のいずれかについて、より多くのまたはより少ない層を具備することも可能である。
図9Eおよび9Fに示されているさまざまな層についての類似の要素番号は、他の図面中で同じ番号により参照指示されているものと同じ機能および/または構成を有する層を参照指示するように意図されているが、描かれている実施形態のいずれかの中の機能、層および場所は、図示された配設に限定されない。当業者であれば、多数の異なる配設が可能であるものの、本明細書中に論述されている実施形態の一部がコスト、耐久性、美観、厚み最小化などの考慮事項に関して特に有利であり得るということを認識するものである。図のいずれかに描かれている層の厚みは、一部の特徴部が例示のみを目的として図中で強調または増強されている可能性があることから、実際の構成における層の相対的厚みの標示として解釈されるべきではない。
【0072】
ブースタアンテナ用のメタライゼーション940を、
図9Cおよび9Dに描かれているように個別層(例えば942)の一部としてスタック内に内含してよく、あるいは、
図9Eおよび9F内に描かれているように、FR-4層の表面の1つの上に直接配置するかまたはその下に埋込むこともできる(図示せず)。エッチングされたブースタアンテナ層を作製するための1つの方法は、FR-4層の1つの表面に金属(例えば銅)箔層を接着剤で取付けるステップ、そして次に、箔の不要な部分をエッチングによって除去して所望のアンテナパターンを残すステップを含む。FR-4の上または中に直接アンテナを配置する他の方法としては、パターン蒸着、導電性インクでの印刷、およびFR-4内への銅線の埋込み(例えば当該技術分野において公知の超音波方法を用いるもの)が含まれる。
【0073】
FR-4の予備形成層が金属層に対して接着式に固着される実施形態においては、
図9Fに描かれているように、直接配置型アンテナを、FR-4の内部表面上に配置し、金属層950からメタライゼーション940を絶縁するべく充分な接着剤層を用いて(例えば、非金属基板966の対向表面上に配置された接着剤層962、964を含む層960を用いて)金属層に取付けることができる。アンテナ用のメタライゼーションがFR-4内に埋込まれたワイヤを含んでいる実施形態においては、このような絶縁層は、省略され得る。例えば
図9Eに描かれた実施形態のように、FR-4層が金属層上に直接注型される実施形態を含めた他の実施形態において、アンテナ用のメタライゼーション940はFR-4層984の外側表面上に形成され、別の非金属層997eで覆われ得る。一方のFR-4層が直接注型され、他方のFR-4層が後で取付けられる実施形態も同様に提供可能である。メタライズされたFR-4層が、金属に直接注型するのではなく個別層として金属に付加されている実施形態は、(任意にはFR-4層を貫通するビアで接続された)FR-4の両側面上のメタライゼーションを有することができ、この場合、
図9Fに描かれている構成は、
図9Eに描かれているように、層984の外側表面上に追加の層997eを含むことができる。被覆層997eは典型的に、不透明なプラスチック層、例えばFR-4層に対し積層された(
図9Fに描かれている通り)またはこの層に接着式に固着された(図示せず)プラスチックであるが、外側層は、非限定的にセラミック、木材、皮革の装飾層さらには陽極酸化金属などの別の金属層を含め、特にFR-4に接着式に固着された場合にあらゆる構成を有し得る。アンテナ用メタライゼーションが、FR-4内に埋込まれたワイヤを含んでいる実施形態においては、追加の非金属層997を省略することができる。絶縁は省略することができる。
【0074】
(他の図中で示されている開口部912に対応する)トランスポンダを収容するための開口部1010を、部分的または全体的に、組立てプロセスの間の任意の時点で
図10に描かれた金属シート内にフライス加工することができる。例えば、FR-4を形成するためにエポキシ内に金属層を直接注型するステップに先立って金属を予めカットして、エポキシが金属内の開口部を充填するようにすることができる。このような構成において、金属内の開口部は、エポキシがトランスポンダと金属の間に配置され(かつ接着剤がトランスポンダとエポキシの間に配置され)た状態で、モジュールを収容するために後のステップにおいてフライス加工され得るプラグを形成するのに充分な程度にトランスポンダより大きいものであり得る。予め形成されたFR-4層が金属に接着させられている実施形態においては、金属は、不連続部と同時にカットされてよく、残りの層は金属内の孔と見当合わせされた予めカットされた孔を有していてよく、あるいは、金属内の開口部1010は、残りの層が付加された後にフライス加工されてもよく、あるいは、開口部は、金属内に予めカットされ、その後のステップにおいて他の層内でフライス加工されてもよい。
【0075】
開口部内にトランスポンダを挿入するステップは、トランスポンダを取り囲む非金属材料のプラグを開口部内に挿入するステップを含む。非金属材料プラグは、接着剤を含むかあるいは接着剤と別の非金属物質の組合せを含み得る。一実施形態において、プラグおよびトランスポンダは、予め組立てられ、開口部内で接着式に固着されてよい。別の実施形態において、プラグは、まず開口部内に設置され、その後トランスポンダを収容するためにフライス加工されてよい。開口部とトランスポンダの界面およびそれを創出するためのプロセスは、いずれかの特定の構成に限定されない。
【0076】
層スタックが組立てられ、トランスポンダが挿入された後、次にカードシートを複数の個別のカードブランクにカットすることができ、必要に応じて、カスタム化を含め、個別のカードブランクをさらに加工することができる。本明細書中で論述されている実施形態のうちのどの実施形態のトランザクションカードも、
図8A~8Bに関連して本明細書中で説明されているようなキーフォブ構成の場合を含め、任意の形状およびサイズを有することができるということを理解すべきである。
【0077】
具体的な例示的実施形態を用いてさまざまな概念が例示されてきたが、各々の実施形態の特徴部は当業者によって、所望通りに混合および整合され得る。例えば、
図9A~9Cに関連して説明されているFR-4および多重不連続部のアーキテクチャを、
図6A~8A中で例示されているものなどのキーチェーン実施形態に適用することができる。同様にして、繊維強化エポキシ実施形態において
図9A~9Cに関連して本明細書中で説明されているような該構成の態様(特に支払い回路からの金属層の欠如)を、単独でまたは組合せた形で、他のタイプのオーバーモールディング材料または積層された層を用いた構成を非限定的に含めて、当該技術分野において公知の他の構成において非限定的に特徴とすることも可能である。
【0078】
以上の実施形態は、単なる例示的実施形態にすぎず、他の実施形態では、異なる順序で積重ねられ、接着剤による連結に限定されず当該技術分野において公知のあらゆる手法により互いに取付けられた、より少ないまたはより多くの層が含まれていてよい。機能層の1つ以上は、接着剤でコーティングされたシートと剥取り式の剥離層で形成され得る。他の実施形態においては、糊着層は、剥離層が両方の糊着層全体にわたって配置されている状態で、ポリエステルの非常に薄いシートの両側に配置された糊着剤を含み得る。このような実施形態においては、カードを形成するためのプロセスにおける関連ステップは、第1の剥離層を除去するステップ、露呈した糊着層を隣接する層に取り付けるステップそして、その後、後続する層の取付けのために第2の剥離層を除去するステップを含む。
【0079】
図9Dに描かれている例示的実施形態においては、両方の表面に上部FR-4層982と下部FR-4層984が取付けられている金属層950を含む予め作られた積層体材料から、例示的カードを形成することができ、例えば、金属層全体にわたり設置された構造的メッシュの周りにエポキシを注型することによって形成可能である。カードを組立てるための1つの方法において、上述のような予め作られた積層体は、カードの底部から不連続部924、926および928ならびに開口部912を創出するように加工される。例えば、上部FR-4層に貫入することなく下部FR-4層984から金属層950を通ってカットするためにレーザを使用することができ、これにより、対応する不連続部を伴うカードに対して強化を提供するのに充分な無欠性が上部FR-4層982に残ることになる。
図9Dで描かれているスタックに限定されることなく、本明細書中で任意の実施形態において説明されている通りの追加の層を付加することができる。例えば、RFフレンドリ箔990を、本明細書中で上述したように、圧延またはホットスタンピングプロセスによって、予め作られた積層体全体にわたり配置し、残りの非インク層(例えばブースタアンテナ層942、任意の下部プラスチック層997および隣接する層間の任意の接着剤層983、985)を付加し、その後スタックを積層することができる。積層されたスタックの外側表面上にグラフィクス層995または996が印刷される。トランスポンダモジュールは、開口部912のフライス加工、開口部912内のプラグ913挿入、プラグ内の開口部のフライス加工およびプラグ内のモジュール910の挿入を含めて、印刷の前または後に付加されてよい。プラグおよびモジュールは、予め作られたアセンブリを含んでいてよく、あるいは、その場で組立てられてもよい。組合せ、スタック内の層の順序および層を互いに取付ける方法(例えば層の組成に応じて、接着剤によるか、一定の隣接する層間での接着剤無しの積層による)は、当該技術分野における公知のあらゆる形で変動し得るということを理解すべきである。
【0080】
本明細書中で開示されている実施形態において描かれている1つの層組立て方法には、トランスポンダを収容するための開口部および不連続部を伴う金属層を創出し、メタライゼーション無しのFR-4層およびエッチングされメタライズされたアンテナを伴うFR-4層を別個に調製するステップ、およびFR-4層の間に金属層を挟置して、
図9Fで描かれた層982、960、950、960、940、984を含む構造を結果としてもたらすステップが含まれ得る。金属の頂部表面上に配置されたFR-4層は、トランスポンダのための金属層内の開口部と整列する予めカットされた開口部を有することができ、あるいはFR-4層は、FR-4層の頂部表面まで開口部を延在させるべく金属層への取付けの後でフライス加工され得る。その後、開口部内にプラグが配置され、他の非インク層(例えばFR-4層の一方または両方全体にわたるプラスチック層)が付加され、カードが共に積層される。
【0081】
別の実施形態において該方法には、金属の両側上の予め作られたFR-4積層体(例えば、
図9Eに描かれている層982、950、984)を提供するステップ、そして次に、予め作られた積層体内に開口部912および1つ以上の不連続部(例えば920、922、924、926、および928)を創出するステップが含まれ得る。所望される場合、不連続部は、層984および950だけを貫通し層982を貫通しない(
図9Dに示されているように)ような形で形成され得る。さらに別の実施形態では、該方法には、金属本体950を提供するステップ、開口部912および1つ以上の不連続部(例えば920、922、924、926および928)を創出するステップ、金属層の対向表面上にメッシュ層を設置するステップ、そして次にメッシュ層全体にわたりエポキシを注型して、金属層950に固着されたFR-4層982、984を形成するステップを含むことができる。上述のプロセスのいずれかによって形成される、結果として得られた層982、950、984は、次に、例えばFR-4の一方の側に銅箔を設置することなどによってさらに加工され、不要な部分はエッチングにより除去されてメタライゼーション940を形成する。特に、1つのFR-4層と金属層だけを貫通している不連続部を伴う予め作られた積層体から出発する場合(
図9Dに描かれているように)、箔は好ましくは、不連続部を有していないFR-4層上に配置される。変形形態においては、メタライゼーションの形成に先立ち、不連続部に(例えばコーティングまたは別の非金属層を)充填することができる。上述の選好は、比較的少ない技術的課題でいずれかのFR-4層内に配置され得る埋込みワイヤメタライゼーションのケースよりも、メタライゼーションの無欠性を最適化する上では、エッチングされたまたは印刷されたメタライゼーション用としてより望ましいものであり得る。(特にFR-4の外部でメタライゼーションが露出されている実施形態において)メタライゼーションを覆うために、層997eが付加され、結果として
図9Eに描かれている層982、950、940、984、997eの組成が得られる。非限定的に層995および996を含む追加層を、本明細書中でさらに説明されている通り、任意に内含させることができる。
【0082】
本明細書では、本発明について具体的実施形態に関連して例示され、説明されているものの、本発明は、示されている詳細に限定されるように意図されていない。むしろ、クレームの等価物範囲内でかつ本発明から逸脱することなく、細部においてさまざまな修正を行なうことが可能である。