(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】近赤外線放射線及び局所熱伝達を使用した中核体温の体温調節のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20241227BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A61F7/00 310F
A61N5/06 A
(21)【出願番号】P 2022553051
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(86)【国際出願番号】 US2021019187
(87)【国際公開番号】W WO2021178160
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2024-02-01
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522349993
【氏名又は名称】ジェーガー, エリック, マシュー
【氏名又は名称原語表記】JAEGER, Eric, Matthew
【住所又は居所原語表記】1408 Cambridge Crossing, Southlake, TX 76092, US
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】ジェーガー, エリック, マシュー
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0367833(US,A1)
【文献】国際公開第2005/077459(WO,A1)
【文献】特表2013-505068(JP,A)
【文献】特表2005-501658(JP,A)
【文献】特開2012-196542(JP,A)
【文献】特開平09-187522(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1516356(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0271414(US,A1)
【文献】特開2011-152243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0099290(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0060662(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の中核温度を変更するための装置であって、
550~950nmの中心波長を有する第1の単色赤外線放射を放出することができる第1の赤外線エネルギー源と、
熱伝達のための第1の半透明の流体ブラダと、
前記第1の半透明の流体ブラダと接触する第1の表面と、中核温度を有する哺乳動物の
動静脈吻合血管を含む第1の開放皮膚領域と接触するように構成された第2の表面とを有する第1の半透明基材と、
前記第1の半透明の流体ブラダを通って第1の流体を循環させることができる第1の流体灌流ユニットであって、前記第1の流体は、前記哺乳動物の前記中核温度よりも高い温度又は低い温度に設定される、第1の流体灌流ユニットと、を備え、
前記第1の赤外線エネルギー源からの前記第1の単色赤外線放射は、前記第1の半透明の流体ブラダ及び前記第1の半透明基材を通って導かれることができる、装置。
【請求項2】
前記第1の半透明基材は、前記流体ブラダと一体である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
550~950nmの中心波長を有する第2の単色赤外線放射を放出することができる第2の赤外線エネルギー源と、
熱伝達のための第2の半透明の流体ブラダと、
前記第2の半透明熱流体ブラダと接触する第3の表面と、前記中核温度を有する前記哺乳動物の
動静脈吻合血管を含む第2の開放皮膚領域と接触するように構成された第4の表面とを有する第2の半透明基材と、
前記第2の半透明の流体ブラダを通って第2の流体を循環させることができる第2の流体灌流ユニットであって、前記第2の流体は、前記哺乳動物の前記中核温度よりも高い温度又は低い温度に設定される、第2の流体灌流ユニットと、を更に備え、
前記第2の赤外線エネルギー源からの前記第2の単色赤外線放射は、前記第2の半透明の流体ブラダ及び前記第2の半透明基材を通って導かれることができる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の単色赤外線放射及び前記第2の単色赤外線放射は、複数の発光ダイオードによって供給される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の単色赤外線放射及び前記第2の単色赤外線放射は各々、670nmの中心波長を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の単色赤外線放射及び前記第2の単色赤外線放射は、レーザによって供給される、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の半透明基材は剛性であり、非可撓性である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の半透明基材は可撓性であり、前記哺乳動物の前記第1の開放皮膚領域に適合するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
熱エネルギーの付加又は除去を通じて哺乳動物
(ただし、ヒトを除く。)の中核体温を調節するための方法であって、前記方法は、
前記哺乳動物の前記中核体温を監視することと、
前記哺乳動物の
動静脈吻合血管を含む開放皮膚領域を第1の半透明基材の第1の表面と接触させることと、
550~950nmの中心波長を有する単色赤外線放射エネルギーを放出する第1の赤外線エネルギー源を、前記第1の半透明基材の第2の表面と接触している第1の半透明熱伝達流体ブラダを通して、前記哺乳動物の前記開放皮膚領域内に導くことと、
前記哺乳動物の前記中核温度を上昇又は低下させるために、前記哺乳動物の前記監視された中核体温よりも高い又は低い温度に設定された第1の流体を第1の流体灌流ユニットを通して循環させることと、
を含む、方法。
【請求項10】
前記開放皮膚領域は、動静脈吻合血管が皮膚の表面の下にある部位に位置する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
熱エネルギーの付加又は除去を通じて哺乳動物
(ただし、ヒトを除く。)の中核体温を調節するための方法であって、前記方法は、
前記哺乳動物の中核体温を監視することと、
前記哺乳動物の
動静脈吻合血管を含む開放皮膚領域を第1の半透明基材の第1の表面と接触させることと、
550nm~950nmの中心波長を有する単色赤外線放射エネルギーを放出する第1の赤外線エネルギー源を、前記第1の半透明基材の第2の表面を通して、前記哺乳動物の前記開放皮膚領域に導くことと、
前記哺乳動物の前記中核温度を上昇又は低下させるために、前記第1の半透明基材の第2の表面と接触して配置されたヒートポンプの温度を、前記哺乳動物の前記監視された中核体温より上又は下の温度に設定することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生体の体温調節のための方法及び装置に関し、より具体的には、熱伝達機構との直接皮膚接触に関する。本発明の方法及び装置は、ヒト及び動物の両方に適用され得る。
【背景技術】
【0002】
人体は、その中核体温、すなわち心臓、肺、肝臓及び腎臓などの重要な器官の温度を調節するための複雑な機構を有する。このプロセスは体温調節として知られている。体温調節は、ヒト及び他の哺乳動物の健康及び生存にとって不可欠である。一般的に知られているヒト体温調節機構には、低体温中の震え及び高体温中の発汗が含まれる。
【0003】
正常な中核体温を上回る状態として定義される高体温は、多くの異なる治療法によって治療されてきた。冷却ベスト、冷却ブランケット、冷水バス、アイスパック及びミストシステムは、皮膚表面での典型的な導電性熱伝達によって身体を冷却することを意図した多くの装置のうちのいくつかである。これらの装置は、冷たい実体との皮膚接触に対する典型的なヒトの体温調節反応を無効にしたり操作したりしようとするものではない。それらのいくつかは、望ましい効果と反対を引き起こす可能性があり、冷たい表面との皮膚接触は、局所的に皮膚血流を減少させ、熱交換速度を低下させ、冷却機構を悪化させる可能性がある。他のモダリティは、皮膚温度を効果的に低下させるが、かさばり、携帯不可能であり、高いエネルギー入力を必要とし、身体の中核温度を冷却するためにかなりの時間を必要とする。全身冷水浸漬のみが、身体の中核温度を急速に冷却することが示されている。
【0004】
低体温は、標準以下の中核体温として定義され、加熱ブランケット、加熱衣類及び熱交換ブランケットなどの同様の皮膚伝導熱伝達を利用する装置を用いて治療されてきた。これらの装置は、かさばり、重く、高いエネルギー入力を必要とする可能性がある。低体温に対する典型的な生理学的反応は、皮膚血流の減少であり、身体の中核への熱伝達率を低下させる。
【0005】
ヒトの熱恒常性は、35.0℃~37.5℃の範囲の中核体温として定義することができる。この範囲の中核温度は、正常温度であると呼ばれる。
【0006】
例えば、熱恒常性を維持するために、中核体温を改変するように設計された侵襲的治療は、生理食塩水などの冷たい又は温かい流体の静脈内注射、外部血液熱交換器、及び静脈内薬理学的体温調節阻害剤の注射を含み得る。Daeらの米国特許第6,572,638(B)号を参照されたい。これらの治療は、一般に、中核体温の急速な冷却又は加温に有効であり、人の中核体温をその正常体温域に戻すために首尾よく使用されている。それらはまた、冠動脈バイパス、脳動脈瘤修復、脳損傷外傷及び心停止後などの外科的処置中に神経保護のための低体温を誘導するために利用することができる。しかしながら、侵襲的治療は、高度な機器及び専門知識を必要とし、病院の場所を必要とし、高い費用をもたらし、患者を感染及び出血などの深刻な医学的リスクにさらす。
【0007】
ヒトの主な非侵襲的体温調節機構は、皮膚への血流の増加又は減少であり、これは脈管構造と外部環境との間の熱交換を直接調節する。皮膚血流は、中核体温が正常体温の範囲内にあるとき、約250ml/分である。皮膚血流は、極端な高体温中に8,000ml/分に増加する可能性があり、低体温又は寒冷環境若しくは低温表面への曝露中に25ml/分に減少する可能性がある。
【0008】
同時の加熱又は冷却と組み合わせて、手又は足への負圧を利用して局所的な血管拡張を誘導する方法及び装置が記載され、特許を受けている。Dennis A Grahnの米国特許第5,683,438号、Grahnらの米国特許第8,177,826号、Grahnらの米国特許第6,656,208号、Hamiltonらの米国特許第8,066,752号を参照されたい。公開された結果は、これらが中核体温を冷却又は加温するのに有効であり、おそらく身体の体温調節機構を無効にして、毛細血管を迂回して細動脈から細静脈へ直接高流量を可能にする低抵抗血管である動静脈吻合(「AVA」)を開くことが示されている。しかしながら、これらの装置は、四肢上で真空を引き込み、包囲体内の熱交換装置との密接な接触を維持しながら、人の四肢の周りに気密シールを形成しなければならない面倒でかさばる包囲体を必要とする。これらのシステムは本質的にかさばり、熱交換システムに加えて高価な真空ポンプシステム及びシールシステムを必要とし、動けない又は意識のない個人に対しては十分に機能せず、携帯性は制限されることがある。
【0009】
熱交換は任意の皮膚表面で実施され得るが、無毛の皮膚領域は、熱交換が大幅に最大化される身体の特定の領域である。ヒトでは、これらの領域には、手の手のひら及び足の裏が含まれるが、これらに限定されない。AVAは、無毛の皮膚部位の真下に位置する。AVAは、身体の体温調節機構に応じて開閉することができ、皮膚血流の実質的な変化を引き起こす。環境との熱交換が中核体温に最も大きな影響を及ぼすのはこれらの領域である。
【0010】
当業者であれば、これらの無毛の皮膚部位での熱エネルギーの付加又は除去によって中核体温を操作及び制御できることを認識するであろう。しかしながら、これらの努力中の哺乳動物の生来の体温調節応答は、多くの場合、AVAの閉鎖をもたらし、熱交換の実施を低減又は阻止する。例えば、高体温を経験している人の典型的な治療法は、冷たい物体を皮膚の表面に適用することである。しかしながら、皮膚に対して配置された冷たい物体に対する生来の体温調節応答は、局所的な血管収縮、局所的な血管の狭窄及び/又は閉塞をもたらし、局所的な皮膚血流を著しく減少させる。これは、循環系から熱を除去する能力を大幅に低下させ、ひいては、中核体温を低下させる能力を低下させる。
【0011】
更に、特定の疾患状態及び薬理学的副作用は、適切な体温調節制御の喪失をもたらす。したがって、局所的な体温調節機構を操作及び/又は無効にして、AVAを強制的に開いたままにする方法及び装置を開発する必要がある。強制的に開くと、これらの操作された皮膚位置のAVAで高速の熱交換が起こり、中核体温を急速に加熱、冷却、又は維持することができる。
【発明の概要】
【0012】
開示される本発明は、個人の中核体温を制御及び改変するための非侵襲的方法及び装置を提示する。
【0013】
本発明は、皮膚表面を介して、循環脈管構造に熱を伝達するか、又は循環脈管構造から熱を除去することを提供する。本発明はまた、皮膚を横断する熱伝達の減少をもたらす外部熱要素に対する生来のヒト及び哺乳動物の体温調節応答を無効にすることを提供する。
【0014】
開示される本発明は、例示的な実施形態では循環流体又は熱電ヒートポンプ(ペルチェ素子)などの熱伝達機構との直接皮膚接触を介して循環脈管構造に熱エネルギーを伝達するか、又は循環脈管構造から熱を除去することを提供する。熱は、皮膚接触位置の真下の血管系に伝達されるか、又は血管系から除去される。実施形態では、ヒートポンプの表面は1℃~50℃の範囲内であり、循環流体は同様に1℃~50℃の範囲であり得る。次いで、ヒトの循環系は、熱エネルギーの増加又は減少を身体の中核器官に運ぶ。皮膚接触の位置は、赤色及び近赤外周波数で動作する放射線発光装置を使用して、550nm~950nmの範囲内の電磁放射線に浸される。
【0015】
従来、赤外線電磁放射線装置は、植物の成長を向上させ、創傷治癒の改善、疼痛の軽減、慢性及び急性の損傷の回復の分野でヒトを治療するために開発され、商品化されてきた。これらの装置は、レーザ及び発光ダイオードエネルギー源を利用して、多色及び単色装置として開発されてきた。陽極システム(Anodyne Systems)及び量子装置(Quantum Devices)によって供給される装置などの、発光ダイオード(LED)アレイエネルギー源を利用する単色赤外線エネルギー(MIRE)装置で商業的成功が見出されている。
【0016】
本発明によれば、複雑な光生化学応答により、この電磁放射線に皮膚を曝露すると、皮膚接触領域の下の領域で持続的な血管拡張及び血流の増加が生じ、皮膚接触部位の温度に対する身体の体温調節応答が、熱、寒さ又は湿度などの外部環境要因にかかわらず無効になることが発見された。本明細書に記載の生理学的試験は、動静脈吻合(AVA)脈管構造の真上に位置する手のひらを550nm~950nmの範囲内の単色電磁放射線に曝露すると、それ自体が血管収縮を引き起こす、手を取り囲む氷及び手のひらの皮膚上を循環する冷水の存在にもかかわらず、AVA脈管構造に血管拡張及び血流の増加をもたらすことを示した。試験はまた、印加された単色電磁放射線の存在下で身体から熱が除去され、単色電磁放射線が印加されていない場合には熱が除去されないことを実証した。以下は、電磁放射線への曝露によって開始され、血流の局所的増加をもたらす光生化学応答機構の説明である。
【0017】
1.実質的に局所的な脈管構造を有する皮膚組織は、近赤外から赤外スペクトルで、好ましくは550nm~950nmの波長範囲内でMIREから放射される電磁放射線に曝露される。実施形態において、ピーク波長は、好ましくは670nm~890nmの範囲内で選択される。放射線は、レーザ又はLEDを介して送達することができる。典型的な方法は、LEDアレイを介して放射されるMIREを含む。
2.皮膚、組織及び水は、上記範囲のMIREの吸収が最小限である。したがって、MIREは、皮膚を横断して体内に容易に浸透する。皮膚の下の血管内の赤血球内に位置するヘモグロビンタンパク質は、体内に浸透したMIREを最大限に吸収する。
3.ヘモグロビンタンパク質は、かなりの量の一酸化窒素を貯蔵することが知られている。
4.MIREに曝露されると、ヘモグロビンタンパク質は一酸化窒素を血流に放出する。
5.一酸化窒素は、周囲の脈管構造の平滑筋細胞に拡散し、そこで酵素グアニリルシクラーゼに結合してそれを活性化する。
6.グアニリルシクラーゼは、周囲の脈管構造の平滑筋細胞内でGTP(グアノシン三リン酸)のcGMP(環状グアノシン一リン酸)への変換を触媒する。
7.cGMPは、複数の機構を介して、特に平滑筋細胞内に位置する収縮タンパク質の弛緩を介して平滑筋弛緩を誘導する。
8.脈管構造内の平滑筋弛緩は、局所血管の血管拡張をもたらす。
9.局所血管の血管拡張は、この場合には皮膚の表面付近で局所血流の増加を直接引き起こす。
【0018】
一酸化窒素は強力な血管拡張剤であることが実証されており、血流の有意な増加を引き起こすのに必要な量はわずかである。皮膚血流のレベルの上昇が、皮膚表面を横断する高い熱伝達率を維持するために不可欠であることは、当業者に周知である。研究は、正常と比較して、皮膚血流速度のわずか8%の増加が、皮膚を横断する熱伝達速度の最大2倍をもたらし得ることを示している。
【0019】
無毛の皮膚の位置に方法が実施されるか又は装置が適用される実施形態では、熱エネルギー伝達の速度が有意に増加し、選択的赤外線放射が局所的な体温調節応答を無効にし、AVA脈管構造を開いたままにし、その結果、中核体温の急速な加熱若しくは冷却、又は有害な環境要因若しくは極端な活動への曝露中の正常体温の維持がもたらされる。しかしながら、実施形態では、本発明は、任意の適切な開放皮膚領域で実施することができることが理解される。
【0020】
本発明の例示的な実施形態によれば、哺乳動物の中核温度を変更するための装置であって、550~950nmの中心波長を有する第1の単色赤外線放射を放出することができる第1の赤外線エネルギー源と、熱伝達のための第1の半透明な流体ブラダと、第1の半透明の流体ブラダと接触する第1の表面と、中核温度を有する哺乳動物の第1の開放皮膚領域と接触するように構成された第2の表面とを有する第1の半透明基材と、第1の半透明の流体ブラダを通って第1の流体を循環させることができる第1の流体灌流ユニットと、哺乳動物の中核温度よりも高い温度又は低い温度に設定される第1の流体と、を備える装置が提供される。この例示的な実施形態では、第1の赤外線エネルギー源からの第1の単色赤外線放射は、第1の半透明の流体ブラダ及び第1の半透明基材を通って導かれることができる。実施形態では、第1の半透明基材は、第1の半透明の流体ブラダと一体である。実施形態では、装置は、ヒトの手に適合し、ヒトの手のひら、又はヒトの手のひら及び手の指表面のいずれかを覆うように構成される。
【0021】
別の例示的な実施形態では、装置は、両手の手のひらなどの2つの皮膚外面にわたる熱伝達を介して哺乳動物の中核温度を変更するように構成される。この例示的な実施形態では、装置は、550~950nmの中心波長を有する第2の単色赤外線放射を放出することができる第2の赤外線エネルギー源と、熱伝達のための第2の半透明の流体ブラダと、第2の半透明熱流体ブラダと接触する第3の表面と、中核温度を有する哺乳動物の第2の開放皮膚領域と接触するように構成された第4の表面とを有する第2の半透明基材と、第2の半透明の流体ブラダを通って第2の流体を循環させることができる第2の流体灌流ユニットと、哺乳動物の中核温度よりも高い又は低い温度に設定された第2の流体とを更に含む。この例示的な実施形態では、第2の赤外線エネルギー源からの第2の単色赤外線放射は、第2の半透明の流体ブラダ及び第2の半透明基材を通って導かれることができる。
【0022】
本発明に従って実施される例示的な方法によれば、熱エネルギーの付加又は除去によって哺乳動物の中核体温を調節するための方法は、哺乳動物の中核体温を監視することと、哺乳動物の開放皮膚領域を第1の半透明基材の第1の表面と接触させることと、550~950nmの中心波長を有する単色赤外線放射エネルギーを放出する第1の赤外線エネルギー源を、第1の半透明基材の第2の表面と接触している第1の半透明熱伝達流体ブラダを通して、哺乳動物の開放皮膚領域内に導くことと、哺乳動物の中核温度を上昇又は低下させるために、哺乳動物の監視された中核体温よりも高い又は低い温度に設定された第1の流体を第1の流体灌流ユニットを通して循環させることと、を含む。当業者であれば、「監視」は、第1の応答者、又は生理学的徴候に基づいて上昇又は下降した中核温度に留意する人として解釈することができ、何らかの種類の温度計を必要とする「測定」とは異なることを理解するであろう。好ましい実施形態では、監視は、温度計の有無にかかわらず実行される。一実施形態では、第1の半透明基材の第1の表面と接触する開放皮膚領域は、AVA血管が皮膚の表面の下にある部位である。
【0023】
本発明に従って実施される例示的な方法によれば、熱エネルギーの付加又は除去によって哺乳動物の中核体温を調節するための方法は、哺乳動物の中核体温を監視することと、哺乳動物の開放皮膚領域を第1の半透明基材の第1の表面と接触させることと、550~950nmの中心波長を有する単色赤外線放射エネルギーを放出する第1の赤外線エネルギー源を、第1の半透明基材の第2の表面を通して、哺乳動物の開放皮膚領域内に導くことと、哺乳動物の中核温度を上昇又は低下させるために、第1の半透明基材の第2の表面と接触して配置されたヒートポンプの温度を、哺乳動物の監視された中核体温より上又は下の温度に設定することと、を含む。
【0024】
熱エネルギーが哺乳動物の体内に排他的に伝達されて中核温度を上昇させる実施形態では、熱エネルギー伝達は、抵抗性電気素子又は電磁放射線放出を介して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を参照して説明される。
【
図1】皮膚血流の局所的な増加のための光生化学機構を示す。
【
図2】特許請求される発明の好ましい実施形態を示す。
【
図3】特許請求される発明の好ましい実施形態の分解図である。
【
図4】特許請求される発明の例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【
図5】ヒトの手のひらと接触している
図4に開示された本発明の実施形態を示す。
【
図6】本発明による、半透明の熱伝達流体ブラダを通り、皮膚の表面を通る、被験者の動静脈吻合脈管構造内への赤外線放射の放出方法を示す。
【
図7】本発明に従って作製された半透明の熱伝達流体ブラダ内の流体経路を示す。
【
図8】本発明において呼ばれる単色赤外線エネルギーを送達するために使用される複数の発光ダイオードの例示的なアレイを示す。
【
図9】本発明に従って作製された半透明の熱伝達流体ブラダの代替実施形態内の流体経路を示す。
【
図10】本発明の代替実施形態に従って作製された円形の半透明の熱伝達流体ブラダを示す。
【
図11】本発明の代替実施形態に従って作製された単色赤外線エネルギーを送達するために使用される複数の発光ダイオードの円形アレイを示す。
【
図12】本発明の第2の代替実施形態の概略断面図を示す。
【
図13】
図12に示される代替実施形態の垂直軸に沿った概略図を示す。
【
図14a】本発明の第3の代替実施形態の概略断面図を示す。
【
図14b】
図14aに示される代替実施形態の垂直軸に沿った概略図を示す。
【
図15】本発明の第4の代替実施形態の概略断面図を示す。
【
図16】本発明の第5の代替実施形態の概略断面図を示す。
【
図17】本発明の第6の代替実施形態の概略断面図を示す。
【
図18】本発明の第7の代替実施形態の概略断面図を示す。
【
図19】開示された方法の例示的な実施形態のブロック図を示す。
【
図20】特許請求される方法の実現可能性を調査するために使用される試験方法中の下部腕及び手の位置付けを示す。
【
図21】
図20に記載の試験方法中の右手位置決めの拡大図を示す。
【
図22】特許請求される方法の実現可能性を調査するために使用される第2の試験方法の制御試験中の下部腕及び手の位置付けを示す。
【
図23】
図22に記載の試験方法の制御試験中の右手位置決めの拡大図を示す。
【
図24】特許請求される方法の実現可能性を調査するために使用される第2の試験方法の処置試験中の下部腕及び手の位置付けを示す。
【
図25】
図24に記載の第2の試験方法の処置試験中の右手位置決めの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
最初に
図1を参照して、本発明の使用による皮膚血流の局所的増加のための正確な光生化学機構を説明する。
図1は、放出された赤外線放射142で始まり、動静脈吻合血管の内膜内に位置する平滑筋細胞150の細胞弛緩155をもたらす原因反応の概略図を示す。血管内の血液144の流れは、血管の内面に沿って並ぶ内皮細胞148に対して方向的に接線方向である。具体的には、MIRE光源141は、皮膚(図示せず)の表面を横断して、ヒト組織(図示せず)を通って、動静脈吻合血管を通って流れる血流の中に浸透する赤外線放射142を放出する。そのような赤外線放射142は、典型的には赤血球(図示せず)内に位置するヘモグロビンタンパク質143によって容易に吸収される。
【0027】
この赤外線放射142の吸収により、一酸化窒素分子146がヘモグロビンタンパク質143から動静脈吻合血管内の血液の流れの中に放出147される。一酸化窒素分子は、血管内膜の内皮細胞148層を通過し、平滑筋細胞150に拡散149し、そこでグアニリルシクラーゼ酵素151に結合してこれを活性化する。次いで、活性化グアニリルシクラーゼ酵素151は、平滑筋細胞150内でグアノシン三リン酸153の環状グアノシン一リン酸154への変換152を触媒する。環状グアノシン一リン酸154は、複数の機構を介して、特に平滑筋細胞150内に位置する収縮タンパク質156の弛緩155を介して平滑筋弛緩を誘導する。複数の平滑筋弛緩事象は、動静脈吻合血管の血管拡張を引き起こし、局所血流の持続的増加をもたらす。血流の持続的な増加は、対象装置とヒト心血管系との間の迅速な熱交換を可能にし、対象装置と接触している人の中核温度の調節を可能にする。
【0028】
図3は近赤外熱交換モジュール219の分解図を示し、
図2はその組立図を示す。
【0029】
実施形態(図示せず)では、近赤外熱交換モジュール219は、流体灌流ユニット及び熱制御ユニットを含む。そのようなユニットは、高温、低温、又はその両方の水などの媒体の流れをモジュール219に供給するように適合させることができる。当業者には明らかであるように、任意の種類の流体灌流及び熱調節ユニットの組み合わせをモジュール219と共に使用することができる。そのようなシステムは、中核体温を上昇させることが望まれる場合には高温を提供し、中核体温を冷却することが望まれる場合には低温を提供し、又は恒常性が望まれる場合には約37℃の設定温度を提供する。
【0030】
図3に示すように、モジュール219は、モジュール219の最下部32を構成する半透明の熱伝達流体ブラダ33を含む。流体ブラダ33は、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、又は近赤外光の適切な透過率を提供し、上面34と底部の皮膚接触面35との間の周囲に沿って水密シール39を含むように適合させることができる任意の化合物で作ることができる。流体ブラダ33はまた、流体灌流ユニット(図示せず)に接続された流体流入部36と、同じく流体灌流ユニットに接続された流体流出部37とを含む。流入部36を通って入る流体は、流体経路38をたどって、流体流出部37を通ってブラダ33を出る前に、長いシール部39bによって画定された長い流体チャネル310に入る。
【0031】
近赤外熱交換モジュール219の中央部311は、必要な電気回路(図示せず)を含む取付パネル314に固定された複数の近赤外光源装置312を含む。好ましい実施形態では、光源装置312は近赤外発光ダイオードからなるが、他の方法を使用してもよい。電子回路は、当業者には明らかであろう任意の構成からなることができる。
【0032】
モジュール219の最上部315は、好ましくはプラスチック又は金属製の外側ケーシング316と、赤外線光源装置312を制御してそれに電力を供給するために必要な追加の電子回路(図示せず)を含むことができるハウジングモジュール317と、光源装置312に適した電力調節の有無にかかわらず共通の交流又はバッテリ供給された直流からなることができる外部電源(図示せず)に接続された導電電気ケーブル318とからなり、これは当業者には明らかであろう。
【0033】
図4は、
図2に示す近赤外熱交換モジュール219の例示的な実施形態の概略断面
図420を示す。この例示的な実施形態では、近赤外熱交換モジュールは、モジュールの外側底面422に湾曲面421を有する。底面422は、半透明の熱伝達流体ブラダ423の底面であるモジュールの皮膚接触面を表す。複数の近赤外発光ダイオード424は、ハウジングモジュール417に取り付けられ、導電電気ケーブル418を介して外部電源(図示せず)に接続される。流体ブラダ423は、流体灌流ユニット(図示せず)に接続された流体流入部46と、同じく流体灌流ユニットに接続された流体流出部47とを含む。
【0034】
図5は、
図4に開示された本発明の実施形態をヒトの手のひらに載せた状態を示す図である。指527及び親指528を含むヒトの手526の代表的な図である。当業者は、ヒトの手が
図5に示されているが、本発明が、任意の哺乳動物の任意の開放皮膚領域と組み合わせて、より好ましくはAVA血管を有する皮膚部位で使用される場合に機能することを認識するであろう。参照を容易にするために、本開示全体を通して、哺乳動物はヒトとして記載され、参照される開放皮膚領域はヒトの手のものである。
【0035】
本発明の一実施形態による使用中、熱伝達の位置は、皮膚530の表面とモジュール420の表面531との間の界面で生じる。動静脈吻合529は、皮膚530の外面の下に位置する。
【0036】
図6を参照すると、手のひらに位置するようなヒトの解剖学的構造及び脈管構造634の代表的な図が示されている。図は、以下の解剖学的特徴を含み、内部皮膚層635、皮下組織636、動脈血供給部637、静脈血供給部638、及び動静脈吻合血管639である。赤外光が半透明の流体ブラダを通ってモジュール420を出て、動静脈吻合血管639を覆うときの赤外光633の経路の代表的な図が示されている。高体温治療のために治療する場合、血液は、身体の所望の恒常性値より高い温度で動脈供給から出て、動静脈吻合血管639に入る。血液と、ユーザの現在の中核温度よりも著しく低い温度になるように調整される
図2及び
図3に示す熱伝達ブラダ33内の流体との間の温度差に起因して、
図5に示す皮膚-モジュール表面界面531で熱交換が起こる。
【0037】
一実施形態(図示せず)では、半透明基材が半透明の流体ブラダと皮膚表面との間に配置される。実施形態では、半透明基材は剛性であり、非可撓性である。実施形態では、半透明基材は可撓性であり、ヒト又は他の哺乳動物の手のひら又は他の開放皮膚領域に適合するように構成される。
【0038】
血液が動静脈吻合血管639を通過するとき、血液は熱エネルギーを失い、それによって冷却され、動脈血供給638から出たときよりも低い温度で静脈血供給637に入る。赤外光633は、動静脈吻合血管639を最大限に血管拡張し、そうでなければ動静脈吻合の閉鎖をもたらす身体の局所的な体温調節機構を無効にし、したがって身体からの熱伝達を最大限にする。このシステムを通る血液の連続的な流れは、経時的に、熱恒常性の状態に戻るまで、ヒトのユーザの中核温度を低下させる。
【0039】
図7は、
図2及び
図3に示す熱交換モジュール219の半透明の熱伝達流体ブラダ33部分の皮膚接触面75を示す、本発明の好ましい実施形態の垂直軸に沿った概略図である。高体温治療中などに身体の中核温度を低下させるために使用される場合、熱伝達流体72、好ましくは精製水は、ユーザの現在の中核温度よりも実質的に低い温度でブラダの流体流入部76を通って入る。流体は、流体ブラダの上面と底面との間にシールされた外側部分79によって境界を定められた流体経路78を通り、流体ブラダの上面と底面との間にシールされた長い部分73によって画定された長い流体チャネル710に入る。流体が長い流体チャネル710を横断する間に、前述のように、
図6に示す動静脈吻合血管639を通って流れる血液との熱相互作用を介して、身体と熱交換が起こる。流体は、流体が流体流入部76を通ってブラダに入ったときよりも高い温度で流体流出部77を通ってブラダを出て、ユーザの身体から熱を吸収する。前述のように、流体温度は、流体流出部と流体流入部との間の流体ループ内に存在する図示しない熱調節ユニットを介して、より低い温度に調整される。
【0040】
図8は、
図3に示すように、熱交換モジュール219の中央部311の好ましい実施形態の垂直軸に沿った概略図である。複数の近赤外発光ダイオード813は、必要な電気回路(図示せず)を含む取付パネル814に固定されている。ダイオード813は近赤外光を放出し、これは実質的に
図2及び
図3に示す半透明の熱伝達流体ブラダ33を通って進み、熱交換モジュール219を出る。近赤外光633(
図6に代表的に示されている)は、動静脈吻合血管639を覆う。
【0041】
図9は、
図2に示す近赤外熱交換モジュール219の半透明の熱伝達流体ブラダ960部分の代替実施形態の皮膚接触面の垂直軸に沿った概略図である。構成要素は、流体ブラダの上面と底面との間のシールされた外側部分961と、流体流入部962を流体流出部963から分離し、長い流体経路964を画定するシールされた内側部961bと、流体ブラダ960の上面と底面との間のシールされたポスト部968とを含む。使用中、熱伝達流体965、好ましくは精製水は、流体流入部962を通って入り、長い流体経路964を通り、流体ブラダの主チャンバ967への入口点966に遭遇し、主チャンバ出口点969に到達して流体流出部963を通ってブラダを出るまで、ポスト部968の閉塞に起因して、ここでは表示のみによって示されているランダム化撹拌経路959をたどる。前述のように、熱伝達流体965は、流体流出部と流体流入部との間の流体ループ内に存在する熱調節ユニット(図示せず)によって調節される。前述のように、流体965が撹拌経路959に沿ってチャンバ967を横断して移動している間に、身体との熱交換が起こる。撹拌経路は、
図7に記載された長い流体チャネル710と比較して、代替的な流体流れ機構を提供する。
【0042】
図10は、実質的に円形でもある近赤外熱交換モジュール(図示せず)の円形の半透明の熱伝達流体ブラダ1070部分の代替的な実施形態の皮膚接触面の垂直軸に沿った概略図である。
図9に示す実施形態と同様に、構成要素は、流体ブラダの上面と底面との間のシールされた外側部分1021と、流体流入部1022を流体流出部1023から分離し、湾曲した長い流体経路1024を画定するシールされた内側部1021bと、流体ブラダ1070の上面と底面との間のシールされたポスト部1028とを含む。使用中、熱伝達流体1025、好ましくは精製水は、流体流入部1022を通って入り、湾曲した長い流体経路1024を通り、流体ブラダの主チャンバ1027への入口点1026に遭遇し、主チャンバ出口点1029に到達して流体流出部分1023を通ってブラダを出るまで、ポスト部1028の閉塞に起因して、ここでは表示のみによって示されているランダム化撹拌経路1019を通る。熱調節及び熱交換は、実質的に
図9について前述したように行われる。
【0043】
図11は、実質的に円形でもある近赤外熱交換モジュール(図示せず)の円形の中央部分1121の代替的な実施形態の垂直軸に沿った概略図である。
図8に示す実施形態と同様に、複数の近赤外発光ダイオード1113は、図示されていない必要な電気回路を含む取付パネル1114に固定される。ダイオードは近赤外光を放出し、近赤外光は、
図10に示すような円形の半透明の熱伝達流体ブラダ1070を実質的に通過し、円形の熱交換モジュールを出る。近赤外光633(
図6に代表的に示されている)は、動静脈吻合血管639を覆う。
【0044】
図12は、近赤外熱交換モジュール1272の代替の実施形態の概略断面図であり、モジュール1272とユーザとの間の熱伝達機構は、先の実施形態で説明した熱伝達流体ブラダとは対照的に、主に熱電ヒートポンプ1274によって提供される。この実施形態では、熱電ヒートポンプ1274は、熱交換モジュール1272の外側ケーシング1273内に収容される。ヒートポンプは、図示されていないユーザの中核温度とは実質的に異なる温度を維持する下面1276を有する。下面1276の温度は、モジュールの皮膚接触面1275に配置された構成要素の温度の適用可能な調整を通じて、モジュールとユーザとの間の熱伝達を駆動する。図示されていない適用可能な制御電子機器、及び図示されていない電源は、両方とも当業者には明らかであるが、外側ケーシング1273内に収容されてもよい。あるいは、制御電子機器及び電源は、図示されていない十分な電子ケーブルを介して接続された外側ケーシング1273の外部に収容されてもよく、これは当業者には明らかであろう。この代替構成では、複数の近赤外発光ダイオード1213が、図示されていない必要な電気回路を含む取付パネル1214に固定される。ダイオード及び取付パネルは、熱交換モジュール1272の皮膚接触面1275に配置される。ダイオードは近赤外光を放出し、前述のように、動静脈吻合血管内の血流を増加させる。熱交換は、熱交換モジュールの血液と皮膚接触面との間の温度差に起因して、皮膚-モジュール表面界面(図示せず)で生じる。
【0045】
図13は、
図12に示す近赤外熱交換モジュールの代替的な実施形態1272の垂直軸に沿った概略図である。外側ケーシング1373は、図示されていない熱電ヒートポンプを収容する。複数の近赤外発光ダイオード1313は、図示されていない必要な電気回路を含む取付パネル1314に固定されている。ダイオード及び取付パネルは、熱交換モジュール1272の皮膚接触面1375に配置される。モジュールの外形はほぼ長方形であるように示されているが、モジュールの外形は円形、六角形、正方形などの様々な形状をとることができることは当業者には明らかであろう。
【0046】
モジュールとユーザとの間の熱伝達機構が主に熱電ヒートポンプによって提供される近赤外熱交換モジュール1477の代替実施形態が
図14a及び
図14bに示されている。
図14aは、近赤外熱交換モジュールの概略断面図である。
図14bは、モジュールの垂直軸に沿った概略図であり、皮膚接触面1483の図を提示する。モジュールは、ほぼ円形の形状であり、複数の近赤外発光ダイオード1413の内側円形位置1479と、複数のダイオード1413の外側リング状位置1478とを含む。ダイオードは、ガラス、プラスチック、石英、又は近赤外光の透過を可能にする当業者に利用可能な任意の材料で作ることができるほぼ半透明のケース1484内に収容される。この構成では、環状形状の熱電ヒートポンプ1481は、熱伝達界面1482において、ユーザとの皮膚接触面1483(図示せず)に沿って、ユーザとの間で熱の伝達を生成する。モジュール1477は外側ケーシング1480内に収容されており、これはまた、電子機器、システム、及び電源を含み、これらはまとめて図示されておらず、当業者には明らかであろう。
【0047】
図4に記載の近赤外熱交換モジュールの代替実施形態では、
図15に示す近赤外熱交換モジュール1520の概略断面図に示すように、近赤外光源は皮膚接触面に配置され、熱伝達ブラダは近赤外光源の背後に配置される。この実施形態では、モジュールの皮膚接触面1586は、電子機器ハウジングモジュール1517によって画定される好ましい湾曲面1521を含み、その上に複数の近赤外発光ダイオード1524が取り付けられる。ダイオードは、導電電気ケーブル1518を介して外部電源(図示せず)に接続されている。この概略図では、半透明である必要はない熱伝達流体ブラダ1523は、ハウジングモジュール1517の上に配置されている。この代替的な実施形態では、流体ブラダ1523とハウジングモジュール1517との間、及び皮膚接触面1586において、ハウジングモジュール1517とユーザの皮膚(図示せず)との間で熱交換が生じる。したがって、ハウジングモジュール1517は、流体ブラダ1523とユーザの皮膚との間の熱伝達導管として機能する。
【0048】
図16は、モジュール式電源1690及び熱調節流体チャンバ1693の両方が熱交換モジュール1687のハウジング1692内に封入されている近赤外熱交換モジュール1687の代替実施形態の概略断面図である。この実施形態では、複数の近赤外発光ダイオード1624が電気部品ハウジングモジュール1691に取り付けられ、電気接続部1689を介して電源1690に接続され、電源及び電気接続部の両方が電気部品ハウジングモジュール1691内に含まれる。半透明の熱伝達流体ブラダ1623は、流体チャンバ流入接続部1694を介して熱調節流体チャンバ1693に流体(図示せず)を伝達する。流体は、流体ブラダ1623に戻る前に、概略的な形態で示される流体流ポンプ機構1696からの力を介して引き込まれる流体チャンバ流出接続1695を介して熱調節後に流体チャンバ1693を出る。流体ブラダ1623は、好ましい湾曲面1621に沿って外部皮膚接触面1688を有する。
【0049】
図17の概略断面図に示す代替的な実施形態では、近赤外熱交換モジュール1797は、2つの皮膚接触面1798a及び1798bを含む。そのような実施形態では、ユーザとモジュール1797との間の熱交換は、2つの表面、例えば左手の手のひら及び右手の手のひらで同時に行うことができ、単一の皮膚接触面を有する近赤外熱交換モジュールと比較して、ユーザが経験する熱交換の速度はほぼ倍増する。この代替的な実施形態では、複数の近赤外発光ダイオード1724aが、モジュール1797上に内側に配置された電子ハウジング要素1799に取り付けられている。ダイオード1724aは、導電電気ケーブル1701aを介して外部電源(図示せず)に接続されている。同様に、複数の近赤外発光ダイオード1724bの2次群が電子ハウジング要素1799に取り付けられる。ダイオードは、導電電気ケーブル1701bを介して外部電源(図示せず)に接続され、それらの放出光が対向して取り付けられた発光ダイオード1724aからの放出光と方向的に反対になるように配向される。更に、半透明の熱伝達流体ブラダ1702aは、流体流入部1703a及び流体流出部1704aを介して外部流体調節ユニット(図示せず)に接続されている。流体ブラダ1702aは、好ましい湾曲面1798aに沿って、皮膚接触面1721aと一致する外部皮膚接触面を有する。同様に、2次半透明の熱伝達流体ブラダ1702bは、流体流入部1703b及び流体流出部1704bを介して外部流体調節ユニット(図示せず)に接続されている。2次流体ブラダ1702bは、2次好ましい湾曲面1721bに沿って、皮膚接触面1798bと一致する外部皮膚接触面を有する。一実施形態では、流体ブラダ1702a及び流体ブラダ1702bには、同じ流体調節ユニットによって流体が供給される。
【0050】
図18は、2つの皮膚接触面1806a及び1806bを有する近赤外熱交換モジュール1805の代替実施形態を示す。この例示的な実施形態では、概略断面
図1810に示す熱伝達流体ブラダは、上部1811a及び下部1811bの熱伝達流体チャネルを含む。流体ブラダ1810は、流体流入部1812及び流体流出部1813を介して外部流体調節ユニット(図示せず)に接続されている。更に、複数の近赤外発光ダイオード1824aが、ハウジング要素1807に取り付けられている。ダイオード1824aは、導電電気ケーブル1809aを介して外部電源(図示せず)に接続されている。同様に、複数の近赤外発光ダイオード1824bが、ハウジング要素1807に取り付けられている。ダイオード1824bは、導電電気ケーブル1809bを介して外部電源(図示せず)に接続され、それらの放出光が対向して取り付けられた発光ダイオード1824aからの放出光と方向的に反対になるように配向される。この実施形態では、熱伝達流体ブラダ1810はハウジング要素1807内に収容され、流体ブラダ1810とハウジング要素1807との間、及び皮膚接触面1806a及び1806bにおいて、ハウジング要素1807とユーザの皮膚(図示せず)との間で熱交換が生じる。したがって、ハウジング要素1807は、流体ブラダ1810とユーザの皮膚との間の熱伝達導管として機能する。この実施形態の利点は、2つの皮膚接触面と、複雑さを低減することができる1つの熱伝達流体ブラダのみを必要とすることとを含む。
【0051】
本発明に従って行われる方法の例示的な実施形態では、
図19に示される略図の形態で示されるように、熱エネルギーがヒト循環脈管構造から、具体的には動静脈吻合(AVA)1901の位置で除去される。これは、手のひらの皮膚層1902と、薄い半透明のブラダ1903内に封入された循環流体1908からなる熱伝達機構との間の直接接触を利用して達成され、流体は、外部流体冷却装置1905によって冷却された37℃(98.6°F)よりも著しく低い設定温度で流体1904で外部から絶えず補充される。この例示的な実施形態では、流体冷却装置の温度設定点は5℃である。
【0052】
ヒトの循環系は、到着したときよりもAVA構造を離れるときの方が低い温度である血液1907を利用することによって、身体の中核内臓1906に熱エネルギーの減少を伝え、したがって急速に中核体温を低下させる。手のひらは、この実施形態では670nmの中心波長を有するMIRE発光ダイオードアレイ1910によって提供される電磁放射線1909に覆われ、これは手のひらの表面の下で半透明の流体ブラダ1903を貫通して手のAVA脈管構造1901に入る。この赤外線エネルギー曝露は、局所的な体温調節応答を無効にし、AVA弁1911を強制的に開いた状態のままにし、AVA脈管構造、特に動脈1912及び静脈1913において持続的な血管拡張及び血流の増加を生じさせ、熱伝達機構の温められた流体1914を介して、中核器官から離れて人体から出る熱の伝達を増幅及び持続させ、次いで外部流体冷却装置1905で冷却された後、熱伝達機構に戻り、サイクルを再び開始する。
【0053】
本発明に従って実施される方法の代替実施形態(図示せず)では、手のひらが単色赤外線エネルギー光源にさらされている間に、手全体又は手の一部が冷水浴、氷浴、又は冷水ジャケット装置に浸漬されて、AVA脈管構造から熱エネルギーを除去する。
【0054】
試験結果の要約
本発明の方法を実行する際の物理的運動後の中核温度の低下を示すために、ヒト被験者に対して2つの生理学的試験を行った。
【0055】
1つの被験者に対して実行される最初の試験は、制御試験及び処置試験からなり、約24時間間を置いた。各試験は、運動及び回復の2つの段階からなった。運動段階及び回復段階の間、被験者を、直腸で測定された中核温度について監視した。
【0056】
制御試験の運動段階は、身体運動の上昇から構成され、その間に、被験者は、熱的に上昇した包囲体内で20分間、静止サイクルエルゴメータに乗った。約38.0℃(100.4°F)の持続的な中核温度が達成された。制御試験の回復段階は、治療を施さずに、約23℃(73.4°F)及び相対湿度50%の環境制御室で20分間座位で安静にすることから構成された。
【0057】
処置試験の運動段階は、同じレベルの身体運動の上昇からなり、その間、被験者は、熱上昇した包囲体内で20分間静止サイクルエルゴメータに乗り、約38.0℃(100.4°F)の持続的な中核温度が達成された。処置試験の回復段階は、約23℃(73.4°F)及び相対湿度50%の環境制御室で20分間座位で安静にすることから構成された。回復段階の間、
図20に示すように、被験者の左手2002a及び右手2002bはそれぞれ、砕いた氷で満たされたポリエチレン袋2001a及び2001bの上に載置し、手の甲及び側面は氷の袋に直接接触していた。装置2003a及び2003bを各手のひらに置いた。各装置は、620nm~720nmの幅及び670nmのピーク中心波長、50mw/cm
2の光強度、及び7.5cm
2の放射面積(WARP 10A、Quantum Devices、Barneveld、Wisconsin州から供給)を有する単色赤外線エネルギーを提供する発光ダイオードアレイを含んでいた。
図21に示すように、右手2002bの手のひら2101のほぼ中央に放射赤外線エネルギーを向けた。この方法論を利用して、
図1に示すように、単色赤外線エネルギーが手のひらを貫通し、血液ヘモグロビン及び動静脈吻合脈管構造と相互作用した。赤外線曝露は、処置試験の回復段階の20分間を通して一定であった。
【0058】
第1の試験の結果は、以下の表1に見られるように、制御試験と処置試験の両方の間の回復段階の開始時に中核温度の急速な上昇を示した。これは、一般的な運動後の現象である。処置試験中、制御試験と比較して、被験者は-0.2~-0.3℃(-0.4~-0.5°F)の中核温度の相対差を経験した。この相対差は、処置試験の最初の4分以内に達成され、回復段階の残りの期間にわたって維持された。
【0059】
【0060】
3人の被験者に対して行われた第2の生理学的試験中、
図2及び
図3に示す装置の構成要素を利用して、処置試験の回復段階間中に中核体温を冷却した。第2の試験では、制御試験と処置試験の両方の回復段階に、手の甲及び手のひらを低温に曝露することによって手を低温に曝露した。回復段階中に皮膚表面温度測定も行った。
【0061】
第2の試験は、制御試験と処置試験との間の唯一の違いが赤外線エネルギーへの手のひらの曝露であるように設計された。
【0062】
第2の試験は、約4時間間を置いた制御試験及び処置試験から構成された。各試験は、運動及び回復の2つの段階からなった。運動段階及び回復段階の間、被験者を、直腸で測定された中核温度について監視した。
【0063】
制御試験の運動段階は高められた身体運動から構成され、各被験者は、0.5℃(0.9°F)の中核温度の上昇を経験するのにちょうど十分な長さ、約3~5分の間、熱上昇した包囲体内で静止サイクルエルゴメータに乗っていた。
【0064】
制御試験の回復段階の開始時に、
図22に示すように、1つの温度センサ2201が、左手2202aの手のひら側に配置され、ほぼ母指球2203に位置した。第2の度センサ2204は、左手首2205のほぼ中央、手のひら側に設置した。これらの位置における皮膚温度を、制御試験の回復段階の間に監視した。
【0065】
制御試験の回復段階は、約23℃(73.4°F)及び相対湿度50%の環境制御室で18分間座位で安静にすることから構成された。回復段階の間、各手の甲を、砕氷で満たされたポリエチレン袋2206a及び2206bの上に置いた。更に、左手2202a及び右手2202bの手のひらを各々、ほぼ2℃(35.6°F)の水が連続的に循環される半透明の流体ブラダ2207a及び2207bとの直接接触によって冷却し、図示されていない流体灌流及び熱制御装置(Therma-Zone Continuous Thermal Therapy Device,Innovative Medical Equipment、クリーブランド、オハイオ州)に接続された流体移送チューブセット2208a及び2208bを介して送達した。発光ダイオードアレイを各々有する装置2209a及び2209bを、左手2202a及び右手2202bの手のひらに位置する半透明の流体ブラダ2207a及び2207bに直接接触させて配置した。装置2209a及び2209bの発光ダイオードアレイは各々、670nmの中心波長、50mw/cm
2の光強度、及び7.5cm
2の放射面積(WARP 10A、Quantum Devices、Barneveld、Wisconsin州から供給)を有する単色赤外線エネルギーを提供した。制御試験中、
図23にも示すように、放射赤外線エネルギーを手から離し、金属キャップ2210a及び2210bを介して装置から出るのを阻止した。したがって、制御試験中に手に赤外線エネルギーは入らなかった。
【0066】
処置試験の運動段階は高められた身体運動から構成され、各被験者は、0.5℃(0.9°F)の中核温度の上昇を経験するのにちょうど十分な長さ、約3~5分の間、熱上昇した包囲体内で静止サイクルエルゴメータに乗っていた。
【0067】
処置試験の回復段階の開始時に、
図24に示すように、1つの温度センサ2401が、左手2402aの手のひら側に配置され、ほぼ母指球2403に位置した。第2の温度センサ2404は、左手首2405のほぼ中央、手のひら側に設置した。これらの位置での皮膚温度を処置試験の回復段階中に監視した。
【0068】
約23℃(73.4°F)及び相対湿度50%の環境制御室で18分間座位で安静にすることから構成される処置試験の回復段階は、特許請求された方法を利用して、2人の被験者の中核体温を冷却することに成功した。回復段階の間、各手の甲を、砕氷で満たされたポリエチレン袋2406a及び2406bの上に置いた。更に、左手2402a及び右手2402bの手のひらを各々、ほぼ2℃(35.6°F)の水が連続的に循環される半透明の流体ブラダ2407a及び2407bとの直接接触によって冷却し、図示されていない流体灌流及び熱制御装置(Therma-Zone Continuous Thermal Therapy Device,Innovative Medical Equipment、クリーブランド、オハイオ州)に接続された流体移送チューブセット2408a及び2408bを介して送達した。発光ダイオードアレイを各々有する装置2409a及び2409bを、左手2402a及び右手2402bの手のひらに位置する半透明の流体ブラダ2407a及び2407bに直接接触させて配置した。装置2409a及び2409bの発光ダイオードアレイは、670nmの中心波長、50mw/cm
2の光強度、及び7.5cm
2の放射面積(WARP 10A、Quantum Devices、Barneveld、Wisconsin州から供給)を有する単色赤外線エネルギーを提供した。処置試験中、放射赤外線エネルギーは、
図25にも示すように、半透明の流体ブラダを通って各手の手のひらに向けられた。
【0069】
したがって、670nmの中心波長を有する赤外線放射エネルギーは、処置試験の回復段階の間は各手の手のひらを覆ったが、制御試験の回復段階の間はそうではなかった。低温への手全体の曝露を含む他のすべての変数は、制御試験と処置試験との間で一定に保たれた。
【0070】
3人の被験者のうち2人が特許請求の範囲に記載の冷却方法に応答し、制御試験の回復段階と処置試験の回復段階との間の中核温度の有意差を記録した。以下のデータは、特許請求された冷却方法に応答した2人の被験者を代表するものである。
【0071】
各被験者の手首及び手のひらで記録された平均皮膚温度は、それぞれ表2及び表3に示されるように、制御試験の回復段階と比較して、処置試験の回復段階の間、より高かった。このデータは、制御試験の回復段階と比較して、処置試験の回復段階中に動静脈吻合脈管構造血管拡張の増加があったことを示唆している。
【0072】
【0073】
【0074】
以下の表4に見られるように、平均中核温度データは、制御試験と処置試験の両方の間に回復段階の開始時に中核温度の急速な上昇を示した。処置試験中、本発明の冷却方法を利用して、回復段階の終わりまでに、被験者は制御試験と比較して-0.2℃(-0.4°F)の中核温度の相対差を経験した。
【0075】
【0076】
開示された装置及び方法が様々な用途で効果的に使用され得ることが予想され、本発明の範囲内である。開示された装置は、固定システム、ポータブルシステム、又はウェアラブルシステムとして構成することができる。これは、熱を身体に伝達するか、身体から熱を除去するか、又はその両方を行うように構成することができる。それは、医療、外来又は家庭の健康環境において低体温及び高体温を治療するために使用することができる。
【0077】
本発明の範囲内で、身体からの熱除去のために構成される場合、開示された発明は、以下の目的のために使用することができることが予想され、それは、身体運動中又は直後の内部熱蓄積を除去することができる。したがって、それは運動選手の身体能力を高めるために使用することができる。これを運動器具に組み込んで、トレーニングの長さ、質及び能力を高めることができる。これは、高温にさらされる兵士又は労働者のスタミナを増加させるために使用することができる。これは、身体運動の有無にかかわらず、高温にさらされた人に対する熱ストレスの影響を防止又は低減するために利用することができる。
【0078】
医療又は家庭の健康環境では、本発明は、発熱、糖尿病、高血圧又はパーキンソン病などの体温調節系に影響を及ぼす疾患の治療のための単独療法又は補助療法として使用することができる。新生児及び早産の子供は、多くの場合、体温調節系が損なわれている。これらの場合、本発明は、必要に応じて本体から熱エネルギーを追加又は除去することによって、正常温度の中核温度を維持するために使用することができる。中核温度測定及びフィードバック制御機構を組み込んで、子供又は大人の正常体温の中核温度を維持する閉ループシステムを形成することができる。当業者は、これが他の哺乳動物にも適用され得ることを認識するであろう。
【0079】
病院環境に配置され、体内に熱を伝達するように構成された本発明は、すべての手術の60%及びすべての心胸郭手術の90%で発生する術後低体温に対抗するために使用することができる。これは、患者が冷却された手術室にいるときに体内に熱を導入することによって、手術中に正常中核温度を維持するために使用することができる。これにより、生命を脅かす感染症の発生を減少させることが証明されている冷たい手術環境が可能になる。手術中の正常体温の中核体温も麻酔剤の有効性を高め、手術中に投与する必要がある用量をより少なくすることを可能にする。更に、手術中の正常体温の中核温度は、術後の回復時間を有意に減少させるであろう術後低体温症を排除することができる。あるいは、身体からの熱除去のために構成された本発明は、特定の高リスク外科処置中の神経保護を強化するために不可欠な外科低体温を誘導するために使用することができる。
【0080】
熱を体内に伝達するように構成されているため、本発明は、寒冷環境への人間の曝露を拡大するために使用することができ、例えば、要素に曝露される作業者、又はスキー、ハイキング、ハンチング、釣り、キャンプ、登山、スノーモービル、オーシャンスイミングなどの活動に従事するスポーツを好む人のために使用することができる。本発明は、著しい身体の損傷及び生命の喪失を引き起こす可能性がある重度の低体温を有する人々の中核温度を急速に加熱するために使用することができる。これは、身体活動の前のウォームアップ準備を支援するために使用することができる。それは、長時間の低温療法組織治療中に筋肉及び器官を保温するために理学療法に使用することができる。
【0081】
本発明は、循環脈管構造からの熱の持続的な持続的除去をもたらすことによって、体重減少の補助として使用することができることが予想され、本発明の範囲内である。これは、身体に一定の副熱負荷をかける中核器官からの持続的で適度な熱の除去が、代謝活性の増強、したがってカロリーの燃焼によって打ち消されなければならないことが研究によって示されているからである。
【0082】
本発明の実施形態を詳細に示し説明してきたため、当業者には様々な修正及び改良が容易に明らかになるであろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、限定ではなく例示を意図している。本発明の精神及び範囲は広く解釈されるべきである。