(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】自動顕微鏡血球分析
(51)【国際特許分類】
G01N 33/49 20060101AFI20241227BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20241227BHJP
G01N 15/01 20240101ALI20241227BHJP
G01N 15/00 20240101ALI20241227BHJP
G01N 1/38 20060101ALI20241227BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20241227BHJP
G01N 35/08 20060101ALI20241227BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20241227BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20241227BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20241227BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241227BHJP
【FI】
G01N33/49 A
G01N33/49 X
G01N33/483 C
G01N15/01
G01N15/00 A
G01N1/38
G01N37/00 101
G01N35/08 D
G01N21/01 B
G01N21/27 A
G06T7/60 110
G06T7/00 630
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023108204
(22)【出願日】2023-06-30
(62)【分割の表示】P 2019520938の分割
【原出願日】2017-07-08
【審査請求日】2023-06-30
(32)【優先日】2016-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519005174
【氏名又は名称】メディカ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】グロッパー,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハゴピアン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィテラ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コート,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】バリー,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】オスターロー,ダーク
(72)【発明者】
【氏名】イー,チェン
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511424(JP,A)
【文献】特表2013-525763(JP,A)
【文献】特表2008-530539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0215072(US,A1)
【文献】登録実用新案第3203413(JP,U)
【文献】国際公開第2015/001553(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169863(US,A1)
【文献】国際公開第2015/173774(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
G01N 35/00~35/10
G01N 37/00
G01N 15/00~15/1492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化された顕微鏡と、希釈剤および/または染色剤と、
蛇行形状の結像チャンバを有する単回使用のテストカートリッジを使用して、血球および血小板を含む全血中の生体粒子を計数し分析する方法であって、
a)
既知の量の前記希釈剤および/または染色剤で全血の
既知の体積のテストサンプルを希釈するステップと、
b)前記テストサンプルと前記希釈剤および/または染色剤とを混合し、実質的に均一の混合物とするステップと、
c)前記テストカートリッジの
単一の結像チャンバ内に前記混合物の一部を投入するステップ
であって、前記単一の結像チャンバは平面視において蛇行形状であるステップと、
d)前記混合物の入った前記テストカートリッジを自動化された顕微鏡に導入するステップと、
e)前記結像チャンバ内の前記混合物内の生体粒子の数と分布を統計的に代表するように選択される、前記結像チャンバ内の
前記混合物の
前記一部の一以上のデジタル画像を獲得するステップと、
f)前記獲得したデジタル画像に基づいた結像チャンバ内の前記生体粒子の分布の少なくとも1つの側面の定量的特性を導出するステップと
を有する、方法。
【請求項2】
定量的特性を導出する前記ステップは、
パターン認識ソフトウェアで前記獲得したデジタル画像内の前記生体粒子を分析するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量的特性を導出するステップは、結像処理ソフトウェアを使用して、前記画像における少なくとも1つのタイプの生体粒子の全てを計数し、前記テストサンプルにおける1つのタイプの生体粒子の単位体積当たりの粒子数を計算するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デジタル画像の獲得が、明視野および蛍光画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物を前記結像チャンバ内へと移送する前記ステップ後に、前記混合物中の前記粒子が前記結像チャンバの底に堆積することを待つステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記結像チャンバの幾何学形状が、前記粒子が前記結像チャンバ
の底に堆積したときに、前記血球が重なり合ったり、密集したり、または流れ出たりしないような形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記デジタル画像を獲得する前記ステップが、前記結像チャンバ内の全ての粒子を含む画像を獲得することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
サンプルの量が1μLから50μLであり、希釈剤の量が10μLから500μLである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
希釈剤とサンプルの前記混合物における希釈剤対サンプルの比が10:1から250:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
希釈剤とサンプルの前記混合物を移送する速度が、前記混合物が実質的に均一のままであるような速度である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記結像チャンバの幾何学形状が、前記混合物を前記結像チャンバ内へと移送したときに、前記混合物の粒子の分布が実質的に均質なままであるような形状である、請求項1に記載の方法
。
【請求項12】
前記蛇行状の結像チャンバが複数の凸湾曲を含み、前記凸湾曲の各々が回転内径と回転外径とを有し、前記凸湾曲の各々の回転外径が前記蛇行状の結像チャンバの前記凸湾曲の内径の約2倍である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記結像チャンバの長さに亘って前記結像チャンバの深さが均一であり、前記深さが10μmから200μmである、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記結像チャンバの幅と深さは前記結像チャンバの長さに亘って均一であり、前記結像チャンバの
長さ対幅の比が2:1より大きい、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
1μLから500μLの希釈剤および/または染色剤の量における全血のテストサンプルの量が0.1μLから5μLである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプル内で白血球の3分類鑑別を実施するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプル内
で白血球の5分類鑑別を実施するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記希釈するステップが、前記テストサンプルを前記希釈剤および/または染色剤で希釈し、所定の希釈比を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記導出するステップは、前記単一の結像チャンバから獲得した前記デジタル画像に基づいて全血球計算(CBC)を導出する、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月7日付けの米国出願第11/616,327号、2016年7月27日付けの米国出願第15/221,285号、2016年2月5日付けの米国出願第15/017,498号、2015年11月20日付けの米国出願第14/947,971号、2015年3月25日付けの米国仮出願第62/138,359号、2015年2月6日付けの米国仮出願第62/113,360号、および2014年11月26日付けの米国仮出願第62/084,760号に関連する。本出願はまた、2016年7月8日付けの米国仮出願第62/360,236号、および2016年9月14日付けの米国仮出願第62/394,702号の優先権を主張する。上記に列挙した出願全てを参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、生体サンプル中の血球の計数などの顕微鏡血球分析作業を自動で実施する、分析器および方法に関する。より詳細には、本開示は、赤血球、白血球、および血小板を計数するのに使用される、単回使用向けデバイス、装置、および方法、ならびにそれらの粒子に関連する測定に関する。
【背景技術】
【0003】
生体サンプル中の血球などの粒子を数え上げる多種多様な方法がある。サンプル中の単位体積当たりの血球の数を判定することで、医師は重要な診断情報を得る。血球を計数する最も基礎的な方法は、希釈した生体サンプルを血球計に導入し、顕微鏡を用いてそれを検査することから成る。血球計は、既知の深さ、一般的には100ミクロンの深さを有し、一般的には.01μLの単位容積を規定する目盛り付きの印を有する、光学的に透明なチャンバを備えたデバイスである。例えば、希釈した全血の均一な混合物を、毛管作用によって血球計に導入して、単層を形成することができる。顕微鏡を使用して希釈サンプルを視覚化して、異なるタイプの血球を、限定された数の印付きの範囲において手動で計数することができる。計数を合計して、単位体積当たりの血球数を計算することができる。この手動方法には手間と時間がかかり、また顕微鏡を操作し、様々なタイプの血球を認識するのに熟練の技術者を必要とし、エラーが生じやすい。その精度は、計数される血球の数と、希釈サンプルの導入によって形成される単層の均一性とによって限定される。
【0004】
結果的に、5分類鑑別(five part differential)を用いた全血球計算(CBC)と呼ばれることがある、CBCなどの診断的試験のため、比較的多数の血球の迅速な計数、サイズ分け、および分類を行う、インピーダンス法(コールター原理、米国特許第2,656,508号)およびフローサイトメトリーなどの自動方法が開発されてきた。これらの自動方法には欠点もある。分析器は比較的大型で高価であり、使用と保守管理には熟練のオペレータを必要とする。かかる分析器は一般的に集中型の実験室でしか利用できない。血液サンプルは、実験室に搬送される間に血液が凝固しないように、抗凝固剤を有する特別なコンテナに収集される。このプロセスによって、搬送、取扱い、ラベリング、および転写によるコストと、結果に誤りが生じるリスクとが付加されると共に、結果を得るのに時間の遅延が生じる。これらの分析器はまた、手動鑑別による更なる調査のために試験されるサンプルの20%超にフラグを付すかまたは拒絶する。非常に熟練した技術者のみが手動鑑別を実施することができる。フラグは、一般に、血球の集団のインピーダンスまたは拡散プロファイルが曖昧なために、インピーダンスまたはフローサイトメトリーカウンタによって生成される。顕微鏡結像分析は、インピーダンス法およびフローサイトメトリーと同じ曖昧さには影響を受けないので、参照方法として使用される。同様に、自動結像分析ははるかに低いフラグ率を有する。
【0005】
CBCは、一般に、単位体積当たりの白血球(WBC)、単位体積当たりの赤血球(RBC)、単位体積当たりの血小板(PLT)、ヘマトクリット(HCT)または血中血球容積(PCV)、ヘモグロビン(HGB)の測定、ならびに平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン含量(MCHC)、および赤血球分布幅(RDW)を含む赤血球に関する測定値を含む。「鑑別を用いたCBC」または「5分類鑑別を用いたCBC」と呼ばれる場合がある診断試験は、更に、単位体積当たりの、または白血球(WBC)のパーセンテージとしての、好中球顆粒血球(NEU)、リンパ球(LYM)、単球(MON)、好酸球(EO)、および好塩基球(BASO)を含む。鑑別を用いたCBCはまた、血液サンプルの単位体積当たりの未熟血球(IC)、異型リンパ球、有核赤血球(nRBC)、および網状赤血球(RETIC)を含んでもよい。
【0006】
CBCは、貧血もしくは感染などの多種多様な異常状態を診断するのに使用するか、または化学療法などの患者の治療をモニタリングするのに使用することができる、血球測定値パネルを提供する。CBC分析は、その有用性により、医学分野で最もよく実施される診断試験の1つであるが、患者は一般的に、結果を得るのに1日または数日待つ。顕微鏡血球分析が患者に近い可搬型の簡単に使用できる分析器で実施することができれば、結果をより直接的に、患者のケアを改善するのに反映させることができる。診療所もしくは病床で、または特別集中治療室(CCU)もしくは集中治療室(ICU)で、または病院の緊急治療室で、数分以内で指先からの一滴の血液を使用して、CBCを提供することができる単純なシステムは、ヘルスケアの提供および対応可能性に多大な影響を及ぼし得る。
【0007】
近年の特許文書は、血液サンプルの血球分析を実施する、集中実験室の血液学分析器よりも単純なデバイスについて記載している。Larsenに発行された米国特許第7,771,658号では、出願人は、単回使用の使い捨てカートリッジで血球のフローセル分析を実施する技術を提供している。Larsenは、正確な量の血液サンプルを取り、血液量を精密な体積の希釈剤で希釈し、血液を希釈剤と混合して均質な溶液を得る手段について記載している。Larsenは、単回使用のカートリッジを利用して、サンプルと希釈剤の混合物の測定される量を、毎秒数千粒子の速度でオリフィスに流し、コールター原理に従って分析するため、粒子を計数し、サイズ分けし、分類する。Larsenの開示は、全血の少量サンプルの分析を対象としているので、様々な体積の計量、または混合もしくはサンプリングのステップにおける誤差が、結果の精度に著しく影響する恐れがある。
【0008】
Ozcanらに発行されたPCT特許出願公開WO2014099629は、カメラを有する移動式電子デバイスを用いて血液サンプルを分析するシステムについて記載している。各試験のサンプル調製プロセスには、全血10μLを精密に測定し、リン酸緩衝生理食塩水85μLおよび核酸染色剤5μLと混合する必要がある。次に、この希釈した混合サンプル10μLを、100μmの正確なチャネル高さを有する血球計数チャンバに装填し、デジタルカメラによって撮像する。赤血球、白血球、およびヘモグロビンの分析には別個の血球計数チャンバが必要であり、各試験を別個に実施しなければならない。最終結果の精度は、サンプルおよび希釈剤の正確な計量を含む、様々なサンプル調製ステップの精密な測定だけではなく、計数チャンバの正確な加工にも依存する。使い捨てカートリッジ内におけるチャンバ高さの寸法100μmを均一に一貫して維持することは、低コストのデバイスにおいて達成するには困難である。
【0009】
Wangらの米国特許第8,837,803号は、実質的に希釈していない全血のサンプルを分析することによって、希釈、混合、およびサンプリングと関連する誤差を回避することを目的とした、赤血球の血球体積を判定する方法について記載している。理論上、
この方策は魅力的であるが、希釈していない全血の取扱いは困難である。血球は非常に多数(例えば、1μL中に赤血球5,000,000個)なので、使い捨てカートリッジの表面と接触することによってそれらの分布が影響を受ける可能性がある。それに加えて、この過密な環境で血球を撮像するために、結像チャンバは、血球が重なり合わないようにわずか数ミクロンの深さでなければならず、また分析される血液サンプルの体積が決定されるので、精密に加工しなければならない。
【0010】
したがって、希釈剤量の精密な測定を要しない、または結像チャンバの精密もしくは正確な寸法を要しない、希釈サンプルのデジタルカメラ撮像を使用して顕微鏡血球分析を実施する、コンパクトで精密な方法が非常に望ましい。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、専門知識または専門技能を有するオペレータを要することなく、単位体積当たりの生体サンプルの血球または他の粒子の計数を提供することができる装置を提供することである。本発明の別の目的は、数分でCBCの測定を全て実施することができる、簡単に使用できる分析器を提供することである。本発明の別の目的は、小さなフィンガースティックサンプルに対してCBCを実施する分析器を提供することである。本発明の別の目的は、サンプルと混合する希釈剤または試薬の体積を精密に測定することを要しない、希釈した生体サンプル中の粒子の濃度を判定する方法を提供することである。本発明の別の目的は、ユーザによる調製、混合、または測定を要しない、生体サンプルの顕微鏡分析を実施するのに使用される、すぐ使用できる試薬および希釈剤を提供することができる。本発明の別の目的は、単回使用の使い捨てデバイス内に希釈したサンプルの血球の実質的に均質な単層を作成し、数分でCBC分析を実施することである。別の目的は、分析用の生体サンプルを得るためにユーザが簡単に操作することができる、サンプル収集デバイスを提供することである。更に別の目的は、サンプル間の相互汚染を防ぎ、分析器の流体構成要素を清浄に洗浄する必要がなくなるように、単回使用のデバイス内にCBC分析器の全ての流体構成要素を提供することである。本発明の別の目的は、潜在的な誤った結果にフラグを付すことができるように、血球を計数する重要なプロセスステップの内部モニタリングを提供することである。更に別の目的は、サンプルの収集直後にサンプルに対してCBCを実施する方法を提供し、実験室へのサンプルの搬送またはサンプルの保管を排除することである。これらおよび/または他の目的または利点の一部もしくは全ては、添付の特許請求の範囲に提供されるような本発明の実施形態によって遂行されてもよい。
【0012】
本発明の更なる目的は、フローサイトメトリーのコールター原理の代わりに結像技術を使用してCBCを実施する血液学分析器を提供することである。本発明の別の目的は、単回使用の使い捨て結像チャンバを利用する血液学分析器を提供することである。本発明の別の目的は、機械的に変形もしくは歪曲もしくは扁平化した、ガラススライド上に塗沫または噴霧した血球、あるいはガラススライド上に噴霧または堆積し固定した血球とは対照的に、無拘束の状態の希釈全血における血球および血小板の実質的に均質な単層を提供することである。本発明の別の目的は、インピーダンス法またはフローサイトメトリーを使用する血液学分析器よりも低い率でサンプルにフラグを付す、結像に基づく血液学分析器を提供することである。
【0013】
本開示は、生体サンプル中の粒子の計数および測定を実施する、改善された方法、システム、およびデバイスを提供する。本開示の態様は、生体サンプルにおける1つまたは複数のタイプの粒子の濃度を判定し、数分以内で単位体積当たりのかかる粒子の数として結果を提供することを目的とする。粒子は、当該分野で良く知られている自動顕微鏡および画像分析技術を使用して、光学検査によって認識することができる、液体中に懸濁した任意の質量であってもよい。粒子の例としては、血球、血小板、精子、細菌、胞子、および
無機粒子が挙げられるが、それらに限定されない。
【0014】
本発明の実施形態は、液体中に懸濁した粒子を計数する多くの用途で使用することができるが、本開示は、上記に定義したような、ヒトもしくは動物の血液サンプルに対する全血球計算(CBC)または鑑別を用いたCBCの実施における本発明の利益を実証する。本開示は、生体サンプル中の血球を分析するための、自動顕微鏡を含む装置と共に使用される単回使用の試験カートリッジについて記載する。試験カートリッジは生体サンプルを収集するのに使用される。例えば、ユーザは、患者の指を刺し、全血サンプルを取得し、試験カートリッジ内の結果として得られる血液滴を収集することができる。ユーザは、患者の指から垂れている液滴の下で試験カートリッジを保持し、次に液滴が試験カートリッジの入力ポートまたはサンプルカップに接触するまで近づけることによって、これを遂行することができる。代替実施形態では、ユーザは、静脈内で血液サンプルを取り、プラスチックのバルブピペットを使用してそれを試験カートリッジに移してもよい。一例では、単回使用の試験カートリッジは、直接サンプル、毛細管、またはトランスファーピペットを含む、様々な生体サンプル源を受け入れるように適合された入力ポートを含む。別の例では、試験カートリッジは毛管作用によってサンプルを中に引き込むことができる。試験カートリッジはまた、サンプルを試験カートリッジ内に収集した後にユーザが適用して入力ポートを覆う、クロージャを含んでもよい。クロージャは、試験カートリッジの一部であるか、または別個のデバイスであってもよい。ユーザがクロージャを手動で適用してもよく、または装置が、試験カートリッジが装置にドッキングされると、クロージャを自動的に移動して入力ポートを覆ってもよい。クロージャは、物理的障壁を提供して、その後、試験カートリッジの表面上にある余分なサンプルと接触することを回避する。クロージャは、後述するように、真空が適用された場合、液体サンプルが試験カートリッジ内で移動できるように、入力ポートへの空気路を提供するベントを有する。
【0015】
試験カートリッジ内で、入力ポートは入力チャネルによって、少量のサンプルを未測定サンプルから正確に分離することができる計量チャンバに接続される。一例として、収集サンプル量は5~20μLであってもよく、そのうち0.1~5μLを計量チャンバが測定のために分離するかまたは隔離する。フィンガースティックサンプルが利用される場合、10μL未満のサンプル量によって、溶血のリスクと間質液による希釈のリスクが最小限に抑えられる。計量チャンバは、流路、キャビティ、もしくは弁内の貫通導管、または0.1~5μLの範囲の所定量の生体サンプルを含有するように再現可能に作製することができる別の三次元形状の一区画であることができる。射出成形、圧縮成形、エッチング、またはラボ・オン・チップもしくはマイクロ流体デバイスの作成における当業者には知られている他のプロセスを利用して、計量チャンバを製造することができる。
【0016】
一例では、計量チャンバは、回転弁の円筒状の軸に貫通導管を成型することによって、回転弁構造と組み合わされる。一例として、直径0.5mmおよび長さ5mmの円筒状断面を有する貫通導管は、約1μLの内容積を有する。貫通導管には、最初に、入力ポートと入力チャネル、貫通導管、および真空チャネルとの間に流体連通経路を設けることによって、生体サンプルが充填される。真空チャネルに適用される真空によって、サンプルが貫通導管に引き込まれる。あるいは、毛管作用によって生体サンプルを貫通導管に引き込むことができる。生体サンプルが貫通導管に完全に充填されると、貫通導管が入力チャネルまたは真空チャネルに接続されなくなるまで回転弁の円筒状の軸が回転し、それによって、貫通導管が含有しているサンプル量が分離または隔離される。あるいは、回転する面シール弁、スライド弁、または試験カートリッジ内の固定容積を使用して、少量のサンプルを隔離することができる。
【0017】
更に、試験カートリッジの要素は事前にパッケージングされた液体試薬を含み、あるいは液体試薬を格納するチャンバを、混合チャンバ、結像チャンバ、ならびにサンプルおよ
び液体試薬がそこを通って移動してもよい流体チャネルと共に含む。一例では、生体サンプルが貫通導管を満たした後、貫通導管が液体試薬および混合チャンバの両方と流体連通して配置されるようにして、回転弁が位置決めされる。実証研究により、貫通導管の体積の3倍を超える体積の液体試薬または希釈剤または染色剤(以下、「希釈剤/試薬」)が、隔離されたサンプル全体を洗い流すのに十分であると判断されている。一例では、希釈剤/試薬は、希釈剤と染色剤の組み合わせであり、約40:1の希釈比となる体積で供給される。したがって、計量チャンバの40倍の体積を使用して、隔離されたサンプルを貫通導管から押し出し、混合チャンバに入れることができ、そこでサンプルが希釈剤/試薬と均一に混合され、次に結像チャンバへと移される。
【0018】
単回使用の試験カートリッジは結像チャンバを収容し、それを通して自動顕微鏡が、希釈剤/試薬およびサンプルの混合物中の血球の画像を獲得することができる。本発明の一実施形態では、隔離されたサンプル量は既知の量の希釈剤/試薬で希釈され、それによって希釈比が確立される。希釈剤/試薬の量は、それを測定することによって、例えば、既知の寸法の流体チャネル内におけるそのフローを、カメラまたは光反射/透過もしくは超音波などの他の流体センサを用いてモニタリングすることによって、あるいは一時的に既知の体積のチャンバ内に入るものを計量し、次にその既知の体積のみをサンプル希釈に使用することによって、判定されてもよい。この実施形態によれば、希釈サンプルの既知の体積中の血球が計数され、希釈比は分かっているので、血液サンプルの単位体積当たりの血球計数を判定することができる。希釈サンプルの体積は、既知の容積の結像チャンバに希釈サンプルを充填することによって判定することができる。結像チャンバの容積は、高度に再現可能な製造プロセスを使用することによって、または製造時に各試験カートリッジを測定し、サイズ分けパラメータをパッケージのラベリングに符号化することによって知られてもよい。あるいは、希釈サンプルの測定量を、未知の容積の結像チャンバへと移すことができ、チャンバ内の全ての血球が計数される。希釈サンプルの測定量は、混合チャンバから既知の寸法の流体チャネルへのそのフローを、カメラによってモニタリングし、セグメントを隔離することによって判定することができる。セグメントは、次いで、結像チャンバへと移動される。
【0019】
好ましい実施形態では、隔離されたサンプル体積は混合チャンバに、次に結像チャンバに移される。この実施形態によれば、希釈剤の希釈比も体積も分かっている必要はない。結像チャンバのサイズは、隔離されたサンプルおよび希釈剤/試薬の全量を結像チャンバ内に収容できることが担保されるように選ばれるが、チャンバの正確な寸法または容積が分かっている必要はない。結像チャンバの深さは、血球が底に沈殿したときに、選ばれた希釈比で血球が重なり合わないように十分に浅いものでなければならない。この深さは、好ましくは約10μm~200μmである。一実施形態では、結像チャンバの深さは100μmであり、希釈剤/試薬と隔離されたサンプルの比は40対1である。結像チャンバの幅は、異なる血球サイズによって均一に充填され、空隙が形成されたり血球が密集したりすることなく滑らかなフローをもたらすように選ばれる。結像チャンバの長さは、深さおよび幅のパラメータに基づいて、選ばれた希釈比で隔離されたサンプル全体を受容するのに必要な容積を提供し、安全マージンを提供するように計算される。結像チャンバの形状は、更に、デジタルカメラの視野に合致するように、または複数の画像の獲得を容易にするように、もしくは血球の均一な分布を維持するように選ばれてもよい。
【0020】
本発明者らは、結像チャンバの形状が正方形か、または2:1の長さ対幅比を有する長方形である場合、血球は結像チャンバを均一に充填しないことを見出している。サンプルおよび希釈剤/試薬の混合物が、結像チャンバに入るときに均一である場合、血球は、特に側部もしくは縁部の付近で集中し群がる傾向となり、沈殿したとき、結像チャンバの底にある層は均質ではなくなる。結像チャンバ内に実質的に均質な血球の単層によって、全ての血球の計数が容易になるので、これを得ることが重要である。本発明者らは、結像チ
ャンバの幅および深さが長さと比べて短い場合、血球は実質的に均一に分布したままであることを見出している。望ましくは、結像チャンバの長さ対幅比は10:1より大きい。本発明の様々な実施形態では、結像チャンバの形状は、試験カートリッジの形状因子に応じて、蛇行状、螺旋状、または胸壁のように凹凸状であってもよい。これらの場合全てにおいて、幅および深さは長さと比べて短いので、血球は結像チャンバの辺または角に凝集せず、結像チャンバの底に沈殿する血球の層は実質的に均質である。当業者であれば、サンプルと希釈剤/試薬の混合溶液が結像チャンバに移されたときに血球の分布を維持する、結像チャンバの他の幾何学形状も利用されてもよいことを認識するであろう。
【0021】
結像チャンバの設計目標は、元の計量チャンバからの血球全てと希釈剤/試薬を均一な形で、また血球が結像チャンバの底に沈殿したときに血球が顕著に重なり合うことなく収容することである。希釈比を、結像チャンバの深さと組み合わせて、重なり合いを最小限に抑えるように選ぶことができる。実例として、結像チャンバは、.5mm~2.5mmの幅、10~200μmの深さを有してもよく、希釈比は10:1~100:1であってもよい。
【0022】
結像チャンバ外の血球に接触する材料は、血球の付着を最小限に抑える表面の性質を有するように選ばれてもよい。液体試薬は、血球分析を容易にする界面活性剤または血球球状化剤を含んでもよく、また有利には、赤血球が移送中に失われるのを、または結像チャンバ内で重なり合うのを最小限に抑えてもよい。液体試薬の量および流速も、全ての血球を計量または混合チャンバから結像チャンバに移し、血球の分布が均一なままであることを確保する可能性を改善するように選ばれてもよい。Yeh-Chan Ahnは、変化する曲率を有する蛇行状のマイクロチャネル内で作られる、複雑な対流拡散現象について説明している(光コヒーレンス断層撮影法および光学ドップラー断層撮影法を用いた層流分散の研究(Investigation of laminar dispersion with optical coherence tomography and optical Doppler tomography)、Yeh-Chan Ahn、Woonggyu
Jung、Jun Zhang、およびZhongping Chen、OPTICS EXPRESS 8164、第13巻、第20号、2005年10月3日を参照)。懸濁液状であって、かかるマイクロチャネルを通って移動している粒子、または本発明の場合は血球は、それらのサイズ、密度、チャネル形状、および流速に従って分離する傾向がある。蛇行状の幾何学形状からの二次流れは、チャネルが湾曲する際に渦を作り出して、血球を特定の充填速度でフローの中心へと再混合させることができる。この再混合は、流体がマイクロチャネルを充填する際に血球のほぼ均一な分布を維持する助けとなる。一実施形態では、本発明者らは、幅1.25mm、回転内径1.25mm、回転外径2.5mm、深さ0.125mm、長さ500mm、および有効充填速度約2μL/秒の蛇行経路が、血球のフローが均一なままであることを確保することを見出している。
【0023】
全ての血球を計数する時間は計量チャンバの容積に直接関連し、これによって全体性能のトレードオフが生じることに留意されたい。高度に再現可能な計量チャンバの製造は、非常に小さい容積の場合は困難である。しかしながら、容積1μLのものよりも容積5μLの計量チャンバを製造する方が簡単で再現可能性が高いことがあるが、5μLのサンプル体積中の全ての血球を計数し、それらを分析するのに、1μLのサンプル体積の5倍の時間がかかる可能性がある。本発明の実施形態は、この難題に対する解決策を提供することができる。サンプルおよび希釈剤/試薬が良好に混合され、適切な希釈比が選ばれることを担保することによって、また長さが幅および深さに比べて長い蛇行状の結像チャンバを利用することによって、結像チャンバにわたる血球のパターンは比較的均一で再現可能である。これらの条件下で、結像チャンバの底に沈殿する血球の層は実質的に均質な単層となる。結果として、層全体を撮像し、全ての血球を計数する代わりに、全ての血球を精密に説明するように統計的に導き出される、代表的な画像またはフレームを得ることができる。したがって、最終結果に関する許容誤差内で、実際の画像によるかまたは統計的表
現によるかにかかわらず、全ての血球が分析に含まれる。実例として、カメラは、結像チャンバ全体をスキャンするために、20倍で最大20,000枚の画像を撮ってもよい。あるいは、10フレーム毎に統計的表現を得ることができる。別の選択肢は、結像チャンバをセグメントに分割し、1つおきまたは2つおきなどのセグメントの血球を計数するというものである。撮像時間を減少させる別の代替例は、結像チャンバ全体を10x/0.25の開口数(NA)または4x/0.1NAでスキャンして、WBCおよびRBCの総計数を取得し、次により高倍率(20X .04NA以上)で画像を撮って、血小板、網状赤血球を計数し、WBC鑑別を実施するのに必要な、より高解像度の詳細を取得するというものであろう。
【0024】
本発明の実施形態は、従来技術の結果の精度に影響していた多くの因子とは無関係に、精密な結果を達成することができる。例えば、計量されたサンプル体積からの血球が全て結像チャンバに移され、重なり合ったり群がったりせず、分析のために提示される限り、希釈剤/試薬の体積および希釈比は結果に影響を及ぼさない。同様に、サンプルおよび試薬の混合物の選択部分の代表性、ならびにその部分の均質性は、従来技術の方法による結果の精度には直接影響するが、本発明の実施形態に対しては影響を及ぼさない必要がある。より重要なこととして、結像チャンバの深さおよび均一性は、他の従来技術の試みでは制御が困難であるかまたは高価であったが、本発明の実施形態による結果の精度には影響を及ぼさない必要がある。
【0025】
本開示は更に、小型で使いやすい血球分析器について記載する。血球分析器は、試験カートリッジを受け入れ、ユーザからの更なる入力なしで血球分析の全てのステップを実施する。一実施形態では、試験カートリッジは、中に入れられた患者サンプルのCBC分析を実施するのに必要な全ての希釈剤および試薬を収容する。この実施形態では、血球分析器は、試験カートリッジが分析器に入れられたときにそれとインターフェース接続する陽圧源および陰圧源を含む、流体ハンドリング構成要素を有する。これらの圧力源をカートリッジ内のチャネルと流体連通させて、カートリッジ内の液体を移動させる輸送力を提供するため、1つまたは複数の接続が分析器とカートリッジとの間に作られる。血球分析器はまた、試験カートリッジ内の流体の移動を制御する、試験カートリッジ内の弁を動作させる機械弁ドライバを有する。試験カートリッジが分析器に入れられると、機械弁ドライバが弁の割送り装置に接続されて、試験カートリッジ内の弁を動作させる手段がもたらされる。血球分析器は、試験カートリッジに搭載されて格納された希釈剤/試薬を放出するメカニズムを含む。血球分析器は更に、陽圧源および陰圧源または変位源を活性化し、予めプログラミングされたシーケンスに従って機械弁ドライバを動作させることによって、試験カートリッジ内の流体の移動を自動制御する、流体制御論理を含む。血球分析器は、カートリッジ内における流体の移動のデジタル画像を獲得するように位置決めされた、プロセスモニタリングカメラを含んでもよい。プロセスモニタリングカメラからの情報を使用して、流体制御論理に関する、またはモニタリングの重要なステップに関するフィードバックを提供することができる。
【0026】
本開示はまた、精密な結果を担保するため、サンプル収集および調製プロセスを管理および/またはモニタリングする、デバイスおよび方法を提供する。CBC分析を実施するのに本発明が使用される適用例では、血液サンプルの取得と試験カートリッジ内におけるサンプルの希釈と染色の完了との間に長すぎる時間が経過してしまった場合、血液が凝固することがあり、または血球が沈殿することがあり、それによって誤った結果がもたらされる。このリスクを軽減する本発明の一実施形態では、試験カートリッジは引出しトレイに入れて分析器上に置かれ、それによって分析器内におけるプロセスモニタリングが開始される。血液サンプルは、自由に垂れる液滴を分配することによって、または試験カートリッジに挿入された毛細管を使用することによって、またはサンプルを移し、ピペットを用いて置くことによって、カートリッジに添加される。サンプルがカートリッジに添加さ
れた直後に、ユーザは、「サンプル運転(Run Sample)」を押して、試験シーケンスを開始する。カートリッジは分析器によって制御されるので、サンプルを収集する時間は分かっており、抗凝固剤のコーティングまたは血液サンプルの混合の必要性を回避するのに十分な短さであり得る。
【0027】
サンプルを処理の数分前に収集することが可能な代替実施形態では、K2またはK3 EDTAなどの抗凝固剤が提供される。これは、サンプル入力カップを抗凝固剤でコーティングすることによって、フィンガースティックサンプルのために抗凝固剤でコーティングされた毛細管を使用することによって、または抗凝固剤を含有するBecton Dickenson Vacutainer(登録商標)などの真空排気血液収集チューブからサンプリングすることによって達成されてもよい。血球の沈殿を管理するため、この実施形態による試験カートリッジは、入力ポートが開かれたときまたは血液サンプルが導入されたときに起動される、タイミングインジケータを有する。タイミングインジケータは、変色化学反応、時間遅延熱反応、アナログもしくはデジタルタイマー、または当該分野で知られている他の手段であることができる。ユーザが試験カートリッジを分析器に装填すると、タイミングインジケータが読まれ、必要な場合、進行前にサンプルが混合される。時間が経過しすぎた場合、誤差がある結果が生み出されるのを回避するため、サンプルを拒絶することができる。
【0028】
遠隔サンプル収集を容易にする更に別の実施形態では、試験カートリッジはキャリアシステムにドッキングされる。キャリアシステムは、サンプル調製ステップの一部分または全てを容易にするために使用される、手持ち式または可搬型のデバイスである。上述の方法のいずれかを使用して血液が試験カートリッジに添加された後、この実施形態によるキャリアシステムは、血液をカートリッジに引き込み、サンプルを計量し、品質チェックを実施し、サンプル調製を完了して、血球を画像分析に対して提示する。次に、キャリアシステムは、試験カートリッジを排出してユーザが撮像分析器に移すようにするか、またはキャリアシステムを、自動ハンドオフのために撮像分析器にドッキングさせることができる。この実施形態では、抗凝固剤コーティングは必須ではなく、サンプルが試験カートリッジに入れられると重要なステップが開始されるので、血球沈殿のリスクがない。
【0029】
ワークフローデバイスおよび方法の組み合わせも、本開示において想起される。例として、単純なキャリアシステムは、デジタルタイマーと、サンプルを計量することができるメカニズムとを組み込むことができるが、品質チェックまたは完全なサンプル調製は実施しない。これらの追加ステップは血球分析器によって行われるであろう。
【0030】
血球分析器は、対物レンズ、焦点調節メカニズム、明視野および/もしくは蛍光光源または両方、フィルタ、ダイクロイックミラー、ならびにデジタルカメラを含む、自動顕微鏡を包含する。いくつかの実施形態では、血球分析器は更に、サンプル中の検体の濃度を測定するため、1つまたは複数の波長での光透過を測定する、照明源および光度検出器を含んでもよい。例えば、試験カートリッジは、流体チャネルによって入力ポートと流体連通している測光チャンバを含むことができ、そこを通してサンプルを、ヘモグロビン測定などの光度分析のために移すことができる。
【0031】
例として、ヘモグロビンを測定するため、血球分析器は、502nmおよび880nmの波長で励起する2つの発光ダイオード(LED)から成る照明源を有してもよい。LEDおよび光度検出器の光路は直径約0.08cm(約0.030インチ)である。オキシヘモグロビン(O2Hb)およびデオキシヘモグロビン(RHb)の等吸収点により、502nmのLEDが吸光度測定用に選択されてもよい。また、502nmでは、O2HbおよびRHb曲線の傾きは非常に緩いので、酸素飽和(sO2)レベルの変動による変化は最小限となる。更に、カルボキシヘモグロビン(COHb)曲線もこの等吸収点に近い
ので、COHbによる影響は非常に小さくなる。880nmのLEDは、RBC、WBC、脂質などによる背景散乱効果を測定することができる。これは、全血に対する測定を行うときに特に重要である。この測定はまた、ヘモグロビンを、還元ヘモグロビン、メトヘモグロビン、アジ化メトヘモグロビン、またはシアノメトヘモグロビンなどの単一の形態に変換する試薬を用いるかまたは用いずに、溶血に対して実施されてもよい。ヘモグロビンの単一形態へと変換される場合、540nmまたは555nmなど、吸収の測定に対して異なるピーク波長が使用されてもよい。
【0032】
開示する態様および想起される態様としては、試薬が予め装填されるのではなく、その代わりに、血球分析器に搭載されて収容された試薬供給モジュールに連結される、試験カートリッジの例も挙げられる。ユーザは、試薬供給モジュールを血球分析器に装填し、そこでモジュールが複数の試験カートリッジに対して利用される。試薬供給モジュールが使い尽くされるかまたは期限切れになると、血球分析器は、ユーザに警告を発し、試薬供給モジュールが交換されるまで、それ以上の試験は実施しない。試薬供給モジュールは、試験カートリッジを受け入れるクレードル、液体希釈剤/試薬を保持する容器、容器と流体連通している希釈剤送達ポンプ、および試験カートリッジがクレードル内にあるときにカートリッジとインターフェース接続するように構築された希釈剤/試薬出力ポートを含む。一例では、容器のサイズは、複数のサンプル(50~100)を10:1~約250:1の試薬対サンプル比で希釈する、希釈剤/試薬を提供するのに十分な容量である。希釈剤/試薬供給モジュールは、液体試薬をプライミングし、気泡を排除する、自己プライミングメカニズムを含んでもよい。試薬供給モジュールは、プライミングプロセスから廃棄する希釈剤/試薬を収集するチャンバを更に含んでもよい。
【0033】
本開示で想起される別の実施形態では、測定された少量の全血が、サンプル調製デバイス内の不正確な量の希釈剤/試薬と手動で混合されることがある。例えば、既知の量のサンプルおよび不正確な希釈剤/試薬が、サンプルチューブに入れられ、数回前後に優しく揺らされることがある。次に、混合された全量が、トランスファーピペットまたは同様のデバイスを使用することによって、混合された全量を収容するのに十分な大きさの結像チャンバを有する試験カートリッジに移される。本発明の実施形態によれば、結像チャンバ内の全ての血球が(直接もしくは統計的サンプリングによって)計数された場合、希釈剤/試薬の体積、希釈比、または結像チャンバ内の混合サンプルの体積、または混合物が占める結像チャンバの容積を知る必要なく、単位体積当たりの血球濃度を判定することができる。この実施形態の1つの欠点は、少量のサンプル、例えば1μLを測定するのが実際には困難なことである。10μLなど、多量のサンプルが選ばれた場合、全ての血球を計数するのにより長い時間がかかり、比較的大型の結像チャンバが必要になる。サンプルサイズ10μLおよび希釈比50:1の場合、500μLの結像チャンバが必要であろう。代替実施形態は、10μLのサンプルを取り、正確な量の希釈剤と混合し、次に混合物の一部分を取って、その混合物の一部分を収容するのに十分な大きさの結像チャンバに移すというものであろう。混合物の全ての血球が計数された場合、希釈比が分かっているので、単位体積当たりの血球数を簡単に判定することができる。
【0034】
試験カートリッジに予め装填されるか、または別個のサンプル調製デバイスに提供されるか、または供給モジュールによって提供される希釈剤/試薬は、すぐ使用できる形式のものである。CBC分析の場合、試薬は、全血中の血球のDNAおよびRNAを鑑別して染色する、Acridine Orangeなどの膜透過性染料を含んでもよい。シアニン染料など、当業者には知られている他の染色剤も、血球を染色するのに使用することができる。代替の構成では、染色剤は、乾燥試薬の形態で、必要に応じて乾燥試薬と混合される希釈剤と共に提供されてもよい。複数の染色剤を組み合わせ試薬に含めることができる。一実施形態では、試薬は、特定の血球または血球と関連付けられた特定の抗原を標的にする、検出可能なラベルに接合された抗体を含んでもよい。検出可能なラベルは、染料
、蛍光染料、量子ドット、金、銀、もしくはプラチナなどのコロイド状金属、または当該分野で知られている他の検出可能な作成物であってもよい。検出可能なラベルは、CD3、CD4、CD14、CD16、CD19、CD34、CD45、CD56などの血球に特異的な抗体、または他のあらゆる列挙される分化抗原群マーカーを検出するのに使用することもできる。検出可能なラベルは、細菌もしくは寄生病原体、血小板、循環腫瘍細胞、白血球細胞、幹細胞、またはそれらの任意の組み合わせを検出するのに使用することもできる。
【0035】
他の実施形態では、液体試薬は、赤血球を等容的に再整形して、血球サイズ測定および平均赤血球容積(MCV)の計算を容易にするため、ポリソルベートもしくはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤、EDTAなどの抗凝固剤、および/または両性イオン界面活性剤などの球状化剤を含有してもよい。
【0036】
本発明によるシステムは、サンプル調製のばらつきおよび限定された計数統計によって制限される傾向がある、手動血球計または類似のデバイスを使用する手動顕微鏡分析よりも、良好な定量的精度を呈することができる。本発明の実施形態では、サンプル調製は、重要なオペレータによる流体取扱いステップを除去することによって、また全ての希釈ステップを自動化することによって改善される。全ての血球および血小板が計量された全サンプル量において計数されるので、サンプル希釈のあらゆる誤差は無関係である。
【0037】
本発明によるシステムはまた、他の方法では、分析することができる血液サンプル数を限定する可能性がある、手動血球計のスライド調製、設定時間、および顕微鏡の焦点合わせに割り当てられるであろう、時間を節約することができる。自動化によって、画像獲得および分析速度を大幅に向上して、より多くの血球を分析し計数できるようにすることができる。これにより、システムの計数統計および全体精度を改善することができる。
【0038】
本発明によるシステムはまた、CBCの臨床現場即時検査、即ち患者の近くで行う試験を可能にして、即時の臨床判断を行えるようにすることによって、血球計数方法の可能性を拡張することができる。比較的スキルが低い従事者がシステムを操作することができる。分析器は、患者の病床、診療所、および救急の現場など、臨床現場でより簡単に配備することが可能になるように、安価に製造され簡単に点検修理されるように設計することができる。
【0039】
本特許または出願のファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公報のコピーは、要求および必要な手数料の支払いに応じて、特許庁によって提供される。
【0040】
図面中、類似の参照符号は、一般に、異なる図面を通して同じ部品を指す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに、本発明の原理を例証するにあたって強調がなされている。以下の説明では、本発明の様々な実施形態について以下の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】患者の指から一滴の血液を収集するように位置決めされている、例示の試験カートリッジを示す斜視図である。
【
図2】
図2Aは、生体サンプルを受け入れる開位置でカバーが示されている、例示の試験カートリッジを示す斜視図である。
図2Bは、分析できる状態の閉位置でカバーが示されている、
図2Aに示される試験カートリッジの斜視図である。
【
図3】試験カートリッジが挿入されている内部構成要素を示す、血球分析器の切欠図である。
【
図4】試験を実施するための試薬を含むタイプの例示の試験カートリッジを示す平面図である。
【
図5】試薬を含まないタイプの例示の試験カートリッジを示す平面図である。
【
図6】モジュールと接合できる状態の試験カートリッジを示す、例示の試薬供給モジュールの斜視図である。
【
図7】
図7Aは、回転弁の弁軸の面に形成された計量チャンバを示す下面斜視図である。
図7Bは、計量チャンバとして役立つ貫通導管を備え、計量チャンバを備えた、回転弁の弁軸を示す側面図である。
【
図8A】入力ポート領域に置かれた全血のサンプルを示す、例示の試験カートリッジの平面図である。
【
図8B】回転弁が第1の開位置にある、サンプルおよび試薬の最初の移動を示す
図8Aの試験カートリッジの平面図である。
【
図8C】弁が第2の開位置にある、
図8Bの試験カートリッジの平面図である。
【
図8D】結像チャンバ内のサンプルおよび試薬を示す、
図8Cの試験カートリッジの平面図である。
【
図8E】混合チャンバ内に位置付けられたサンプルと試薬の大部分とを示す、
図8Dの試験カートリッジの平面図である。
【
図8F】結像チャンバ内に位置付けられた全てのサンプルおよび試薬と、最終の閉位置にある弁とを示す、
図8Eの試験カートリッジの平面図である。
【
図9】
図8Eの線9-9’で取った受動混合チャンバの断面を示す側面図である。
【
図10】サンプル入力ポートおよび結像チャンバを含む代替の試験カートリッジを示す平面図である。
【
図11】血球分析器の動作を示すフローチャートである。
【
図12】サンプルカップおよび蛇行状の結像チャンバを含む試験カートリッジを示す平面図である。
【
図13】蛇行状の結像チャンバを含む試験カートリッジを示す平面図である。
【
図14】
図15に示される単一試験の使い捨て試験カートリッジを使用する血液学分析器を示す平面図である。
【
図15】混合ボウル、サンプルカップ、および蛇行状の結像チャンバを示す試験カートリッジの平面図である。
【
図16A】本発明に従って収集された同じ血球を示す明視野図および蛍光画像である。
【
図16B】本発明に従って収集された同じ血球を示す明視野図および蛍光画像である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、患者の指から一滴の血液120を収集するように位置決めされている、試験カートリッジ100を示している。試験カートリッジは、垂れている液滴120が、試験カートリッジ100の入力ポート130に接触するようにして、液滴120の下で保持される。入力ポート130は、抗凝固剤でコーティングされてもよく、血液サンプルを収集し保持する表面保定を向上する小さいカラムなどの表面処理または特徴を有しても良い、陥凹領域または開口部を含む。代替実施形態では、血液サンプル120は、静脈内で収集され、トランスファーピペットまたは毛細管によって入力ポート130に導入されてもよい。トランスファーピペットまたは毛管は、所望のワークフローにしたがった抗凝固剤コーティングを含んでもよい。入力ポート130に入れられる血液または他の生体サンプルの量は、陥凹サンプル範囲を視覚的に満たすのに十分な量であるが、測定されない。
【0043】
図2Aは、入力ポート130へのアクセスを提供する、クロージャ135が開位置で示されている試験カートリッジ100を示している。クロージャ135は、試験カートリッジ100に対して摺動するように適合され、異なる位置で配置するのを容易にする、移動
止めまたは他の位置決め機構を有してもよい。生体サンプルが入力ポート130内に収集された後、クロージャ135は、
図2Bに示される位置へと移動されて、入力ポート130を被覆してもよい。クロージャ135は、
図3に示されるように、分析器に挿入される前に、ユーザによって移動させられてもよい。あるいは、クロージャ135は、血球分析器内の操作によって移動させられてもよい。クロージャ135の代替実施形態は、図形、識別情報、またはユーザに対する使用説明を含んでもよい。クロージャ135は摺動する構成要素として示されているが、蝶番式で上向きに動くカップ、入力ポート130から離れる方向に旋回し、また戻って入力ポート130を被覆する小さい表面カバー、あるいは入力ポート130またはそれを取り囲む領域に粘着する接着構成要素を含む、入力ポート130を閉止する他の手段が想起される。全ての場合において、クロージャ135は、血液サンプルが試験カートリッジ100内へと移動するのを可能にする、入力ポートへのベントまたは空気路を含む。
【0044】
図3は、オペレータが分析器に導入できるように試験カートリッジ100が位置決めされている、例示の血球分析器200の切欠図である。血球分析器200の外側から、ハウジング206、ユーザインターフェース画面208、プリンタ212、およびカートリッジ装填ドア217を見ることができる。カートリッジ装填ドア217が開いているとき、試験カートリッジ100をユーザから受け取るように構成された、x-yステージ225のクレードル220に、試験カートリッジ100を載せることができる。クレードル220は、カートリッジを機械的に位置合わせして、分析器とカートリッジとの間の接続を容易にする。例えば、機械プレッサフット230が、試験カートリッジの可撓性表面と接触して配置されて、パッケージングされ搭載された試薬に機械的圧力を提供してもよい。血球分析器200のいくつかの実施形態は、
図6を参照して更に記載するような、試薬供給モジュール470を利用してもよい。試薬供給モジュール470は、x-yステージ225上に設置されてもよく、試験カートリッジ402と試薬モジュール470とを位置合わせする、受入れ領域473(
図6を参照)を有する。
【0045】
弁ドライバ235は、回転弁を試験カートリッジ上で動作させるように位置決めすることができる。真空/圧力ポンプ240は、後述するように、試験カートリッジ100が血球分析器に入れられたとき、試験カートリッジ100とインターフェース接続するマニホルド245に、陰圧または陽圧を供給する。血球分析器200は、予めプログラミングされたシーケンスに従って、真空/圧力ポンプ240を活性化することによって、機械プレッサフット230を移動させることによって、または弁ドライバ235を動作させることによって、試験カートリッジ内における流体の移動を制御するシステムコントローラ250を更に含む。カートリッジ内の流体のデジタル画像を獲得するように位置決めされる、モニタリングカメラ255は、システムコントローラ250にフィードバックを提供する。モニタリング光源256は、モニタリングカメラ255のレンズを取り囲むリング照明器であってもよい。モニタリングカメラ255からの情報は、液体の移動を制御するため、回転弁を位置決めするため、および重要なステップを確認するためのフィードバックを提供するのに使用される。
【0046】
図3には、血球分析器200の自動顕微鏡を含む構成要素も示されている。分析器の基部において、明視野光源260は、試験カートリッジを通って、焦点調節メカニズムに動作可能に連結された対物レンズ265に至る、照明を提供する。分析器の頂部において、蛍光光源270は、ダイクロイックミラー277を通ってサンプルを蛍光励起する、照明を提供する。分析器の後方において、デジタルカメラ280は、試験カートリッジ100の画像を捕捉し、それらを画像プロセッサ/コンピュータ290に伝送する。いくつかの実施形態では、血球分析器は、更に後述するように、ヘモグロビンの測定など、試験カートリッジ100のチャンバ内における1つまたは複数の波長での光透過を測定する、測光光源293および光度検出器295を更に含んでもよい。
【0047】
図4は、試験を実施するためのブリスタパック417に格納された液体試薬を含むタイプの例示の試験カートリッジ401を示している。試験カートリッジ401は、サンプルを受け入れる入力ポート407と、サンプルを希釈剤/試薬と混合する受動混合チャンバ405と、分析のためにサンプルおよび希釈剤/試薬の混合物中の血球の画像を獲得する結像チャンバ403とを有する。この実施形態では、吸光測定を行って、ヘモグロビンなど、サンプル中の特定の検体の濃度を判定するため、測光チャンバ409には全血が充填されてもよい。回転弁415は、
図8A~8Fに記載されるような、サンプルドライバポート411、ベント423、および混合物ドライバポート429など、様々な流体チャネル、ベント、およびポートの間に、流体接続を提供する。
【0048】
図5は、希釈剤/試薬が搭載されないタイプの例示の試験カートリッジ402を示している。機能的構成要素の多くは、試験カートリッジ401を参照して例示したものと同一であるが、希釈剤/試薬が搭載される代わりに、試験カートリッジ402は、外部の希釈剤/試薬源に接続されるように適合された試薬入力ポート460を有する。試験カートリッジ402は、分析に必要な希釈剤/試薬が個別にパッケージングするにはコストがかかりすぎることがあるか、または冷蔵貯蔵を要することがある、実施形態で使用されてもよい。かかる実施形態では、希釈剤/試薬は、血球分析器200内の供給源から、または試薬供給モジュールから提供されてもよい。
【0049】
図6は、試験カートリッジ402を受け入れるように位置決めされた例示の試薬供給モジュール470を示している。試薬供給モジュール470は、試験カートリッジ402をドッキングする受入れ領域473を含み、希釈剤/試薬を保持する容器と、希釈剤/試薬を給送するように適合された試薬計量ポンプと、試薬出力ポート475とを収容する。試薬出力ポート475は、試験カートリッジが試薬供給モジュール470にドッキングされたときの、試験カートリッジ402の試薬入力ポート460に対する液密接続を確保する、適切な形状および/またはエラストマー性材料で構築される。試薬供給モジュール470は、モニタリングカメラ255(
図3)が回転弁415を撮像するのを可能にするように適切にサイズ決めされた、開口部477を有する。それに加えて、試薬供給モジュール470の窓478は、試験カートリッジの測光チャンバ409と位置合わせされるように構築される。窓478によって、測光光源293および光度検出器295(
図3)が、測光チャンバ409内の流体に対して吸光測定を行うことが可能になる。
【0050】
一実施形態では、試薬供給モジュール470内の容器のサイズは、10:1~約250:1の希釈剤/試薬対サンプル比で、10~約100のサンプルから希釈および/または染色する、希釈剤/試薬を提供するのに十分な容量である。試薬供給モジュール470は、液体試薬をプライミングし、気泡を排除する、自己プライミングメカニズムを更に含むことができる。かかる実施形態では、試薬供給モジュール470は、プライミングプロセスから廃棄する試薬を収集するチャンバを含んでもよい。試験カートリッジ402が試薬供給モジュール470とドッキングされると、組み合わされた部品は、試薬供給モジュール470がブリスタパック417に代わることを除いて、試験カートリッジ401と同じ機能を実施する。血球分析器200の内部で、真空/圧力ポンプ240は、マニホルド245を通して、サンプルドライバポート411および混合物ドライバポート429に接続する。マニホルド245とこれらのポートとのインターフェース接続は、システムコントローラ250が試験カートリッジ内の流体の移動を制御できるように(
図3を参照)、気密接続を担保する適切な形状および/またはエラストマー性材料で構築される。かかる実施形態では、プレッサフット230は不要である。
【0051】
正確に測定される体積は、元の生体サンプルの計量体積のみである。少量の液体を計量する様々な手段が当該分野において良く知られている。本発明による、低コストで単回使
用の用途に良く適した2つのデバイスが、
図7Aおよび
図7Bに示されている。
図7Aは、回転フェース弁の円筒状弁軸485の面を示している。計量チャンバ483は、射出成形などの非常に正確な製造プロセスによって面に形成される。チャンバ483は、幅が狭く管状の形状であって、円筒状の軸485の面で心出しされる。軸485の頂部にあるスロット487は、弁軸485の位置を示す弁の割送り装置として作用する。弁軸485の面には、円形を有する補助コネクタ421も形成される。回転弁415(
図4および5)に組み込まれると、計量チャンバ483は、180度離間した弁のポート間を接続することができ、補助コネクタ421は60度離間した他のポート間を接続する。
図8A~8Fを参照して説明するように、システムコントローラ250は、弁軸485を回転させることによって、また予めプログラミングされたシーケンスに従って弁の割送り装置487によって弁を位置決めすることによって、流体の移動を制御することができる。そのため、第1の位置では、計量チャンバ483を入力ポート407(
図4および
図5)に接続し、生体サンプルで充填することができ、次に弁軸485を回転させることによって、計量チャンバ483内に収容された体積を隔離し、分析のために移すことができる。
【0052】
図7Bは、計量チャンバが弁軸485’の先細になったシートに貫通導管413として形成された、弁軸485’の側面図である。貫通導管413は、180度離間した回転弁415の流体チャネルと接続することができる。
図7Bには、60度離間した隣接する流体チャネルに接続する、補助流体コネクタ421’も示されている。
【0053】
弁軸485’を受け入れる先細になったシートを有する回転弁415(
図4および
図5)に組み込まれると、貫通導管413を、入力ポート407(
図4および
図5)に接続し、生体サンプルで充填し、次に弁軸485’を回転させることによって、貫通導管413内に収容されたサンプルの体積を隔離し、分析のために移すことができる。
図7Bはまた、弁の割送り装置487’の位置に従って、試験カートリッジの隣接する流体チャネルに流体接続する、補助流体コネクタ421’を示している。
図7Aの回転フェース弁、および
図7Bの先細になったシート弁は、サンプルを隔離し、流体経路を制御するための代替実施形態であることが認識されるであろう。したがって、以下の説明では、回転フェース弁の計量チャンバ483に対する言及は、先細になったシート弁の貫通導管413に等しく適用可能であろう。
【0054】
次に、
図8A~8Fに注目し、
図3を参照すると、血球分析器200が、熟練したオペレータの相互作用なしに、生体サンプルに対して自動顕微鏡血球分析を実施できるようにする、一連の操作が示される。
図8Aでは、サンプルは、回転弁415と流体連通している、入力ポート407内に堆積されて示されている。
図8Aに示されるように、回転弁415の軸485(
図7A)は、計量チャンバ483(
図7A)がサンプル入力ポート407およびサンプルドライバポート411と位置合わせされる、第1の位置にある。分析器によってサンプルドライバポート411に供給される真空は、サンプルを入力ポート407から計量チャンバ483内へ、また測光チャンバ409内へと引き込む。測光チャンバ409にサンプルが充填されていると、システムコントローラ250(
図3)は、測光光源293(
図3)および光度検出器295(
図3)を使用して、希釈していないサンプルからの吸収データを収集する。当業者には理解されるように、光波長、およびチャンバの幾何学形状、および生体サンプルを通過する光の分析の適切な選択を使用して、ヘモグロビンなど、サンプル中の特定の検体の濃度を判定することができる。
【0055】
例示により、また
図8Bを参照すると、希釈剤/試薬がブリスタパック417に収容されている、カートリッジ401が示される。計量チャンバ483が入力ポート407および測光チャンバ409と位置合わせされるようにして、回転弁415が位置決めされると、補助コネクタ421は、ブリスタパック417とベント423との間に流体連通経路を提供する。プレッサフット230(
図3)によってブリスタパック417に圧力が加えら
れると、希釈剤/試薬が放出され、補助コネクタ421を通って洗い流されることによって、チャネルがプライミングされ、気泡がベント423を通して除去される。
【0056】
図8Cは、計量チャンバ483内で所定量のサンプルを隔離する、第2の位置まで反時計方向に60度回された回転弁415を示している。この第2の位置では、回転弁415の軸485は、計量チャンバ483がブリスタパック417および蛇行状の結像チャンバ403と流体連通しているように位置決めされる。
【0057】
図8Dでは、回転弁415は、
図8Cと同じ位置で示されているが、圧力をブリスタパック417に加えるプレッサフット230の動作に追随している。陰付きの範囲によって示されるように、ブリスタパック417からの希釈剤/試薬、および計量チャンバ483からの隔離されたサンプル493は、結像チャンバ403内に移される。貫通導管413の容積の3倍である試薬の最低量が、サンプル全体を回転弁415から洗い流すのに必要である。行われる分析に従って、十分な量の試薬が回転弁415に押し通されて、隔離されたサンプルが完全に洗い出され、望ましい近似の希釈比が達成される。
【0058】
図8Eでは、回転弁415は、
図8Dに示される前の位置から第3の位置まで反時計方向に120度回されて示されており、補助コネクタ421は、混合物ドライバポート429および結像チャンバ403と位置合わせされている。血球分析器200の真空/圧力ポンプ240(
図3)は、圧力を混合物ドライバポート429に供給し、サンプルおよび希釈剤/試薬の混合物全てを結像チャンバ403から押し出して、受動混合チャンバ405に入れる。混合物が受動混合チャンバ405に入る際、チャンバ内の空気がベントポート433を通して通気される。サンプルおよび希釈剤/試薬の混合物全てが受動混合チャンバ405に移されると、真空/圧力ポンプ240は、制御された真空を混合物ドライバポート429に加えるので、混合物が結像チャンバ403内に引き戻される。混合物を受動混合チャンバ405に押し入れ、結像チャンバ403に引き戻す、予めプログラミングされたシーケンスが繰り返されて、血球が結像チャンバ403の底に沈殿した後は血球の凝集および重なりがない、最終混合物495が達成される。混合物495の最終移動において、
図8Fに示されるように、結像チャンバ403内に全体が位置決めされる。ほとんどの場合、サンプルおよび希釈剤/試薬を混合チャンバ405に押し入れ、また引き出すことが、均一な混合物を得るのには十分であることを、本発明者らは見出している。更に、混合物は、蛇行状の結像チャンバ403内へと移されたとき、実質的に均一なままである。また、混合チャンバ405は結像チャンバ403の開始位置に配置できることが注目されるべきである。
【0059】
図8Fは、サンプル調製シーケンスの最終ステップを示している。予めプログラミングされたシーケンスのこの時点では、最終混合物495の全体が受動混合チャンバ405から抜き出されており、結像チャンバ403内に位置決めされている。この位置が達成されると、回転弁415は、
図8Fに示される位置まで反時計方向に約30度回転させられて、回転弁415のいずれの流体チャネルとも流体連通しなくなり、それによって、結像チャンバ403との更なる流体連通が阻害されるので、最終混合物495はそれ以上移動することができなくなる。
【0060】
図9は、受動混合チャンバ405の断面を示している。チャンバは、図示されるように、ビーズまたはスピンバーなどの能動混合要素を何ら含まないので、「受動」と呼ばれる。かかるデバイスは、いくつかの実施形態で使用されてもよいが、
図9に示されるような適切にサイズ決めされたチャンバが、より単純であり、サンプルと試薬の優れた混合をもたらすことを、本発明者らは見出している。動作の際、希釈剤/試薬およびサンプル493は、真空/圧力ポンプ240(
図3)によって駆動され、混合チャンバ開口部497を通ってチャンバを出入りする。液体がチャンバに入る際、チャンバ内の空気がベントポー
ト433を通して逃げる。受動混合チャンバ405の断面は、下方から入る混合物がより大きい体積へと拡張するように、底部から頂部までサイズが滑らかに増加する、壁の幾何学形状を示している。チャンバ405は、サンプルと試薬の混合を促進するように、また泡を混合物から除去するため、非対称の傾斜した壁484および491を有してもよい。混合物が全てチャンバに入った後、真空/圧力ポンプ240によって、混合チャンバ開口部497を通して、気泡がチャンバに導入されることがある。これらの気泡は更に混合を促進し、その後、ベントポート433を通して逃げる。受動混合チャンバ405を製作するのに使用される材料の選択は、試験カートリッジ401で利用されている特定の1つの希釈剤/試薬の湿潤性を考慮に入れるべきである。材料の性質は、他の用件の中でも特に、真空/圧力ポンプ240が混合チャンバ開口部497を通してチャンバを空にしたとき、液体の表面張力がチャンバの側壁と接触している液体全てを引き戻すことを確保すべきである。
【0061】
図10は、一端にサンプル入力ポート950を、反対側の端部にベント953を有する結像チャンバ903を備える、試験カートリッジ900を示している。試験カートリッジ900のユーザは、分かっている少量の全血を収集し、別個の単回使用のサンプル調製デバイス(図示なし)内で、手動で希釈剤/試薬と混合する。混合されると、血球が結像チャンバを均一に充填するようにして、混合された量全体が、制御された速度でサンプル入力ポート950に注入される。空気はベント953を通って逃げて、サンプルおよび希釈剤/試薬の混合物が結像チャンバ903を充填することが可能になる。結像チャンバの形態は、結像チャンバの容積がサンプルおよび希釈剤/試薬の混合物全てを含むのに十分でなければならないことを除いて、上述され
図8A~8Fに示されるような結像チャンバと本質的に同じである。試験カートリッジ900を分析器200(
図3)に入れて、サンプルおよび希釈剤/試薬の混合物中の全ての血球を計数し、後述するように、
図11のステップ560で分析を開始することができる。
【0062】
図11に注目して、次に、
図8A~8Fに示される試験カートリッジ401および
図3に示される血球分析器200を参照して、「鑑別を用いたCBC」分析を提供するように構成された、血球分析器200の全体操作について記載する。ボックス500で提示される患者から血液サンプルを得るため、ユーザは最初に、ボックス505で新しい試験カートリッジ401を取得し、それを開いて入力ポート407に対して露出させる。指刺しからの血液は、ボックス510で
図1に示されるように適用され、入力ポート407は被覆される。ユーザは、ボックス515で、試験カートリッジを血球分析器200に挿入する。試験カートリッジは分析器内へと移動され、そこで、
図3を参照して上述したように、分析器とカートリッジとの間に機械的および流体接続が作られる。分析の第1のステップで、サンプルは、測光チャンバ409を通る計量チャンバに引き込まれ、測光チャンバ409に引き込まれる(
図8A)。ボックス520で、血液の吸光度が測定される。吸光度測定からのデータは、ヘモグロビン濃度を判定するのに使用される。ボックス530で、計量チャンバ483内のサンプルは、モニタリングカメラ255を使用して撮像され、ボックス535で、分析されて計量チャンバが適切に充填されたことが確認される。エラーが検出された場合、ボックス537で分析は終了され、ユーザは、エラーを警告され、カートリッジを除去し試験を拒絶するように指示される。
【0063】
貫通導管413が適正に充填された場合、ボックス540で、
図8Bを参照して上述したように、希釈剤/試薬チャネルがプライミングされる。次に、回転弁415が、
図8Cに示される位置まで回されて、サンプルが隔離され、ボックス545で、モニタリングカメラ255で撮像しながら、希釈剤/試薬が計量された血液量を貫通導管413から洗い出すことが可能になる。モニタリングカメラ255が、
図8Dに示されるように、希釈剤/試薬およびサンプルが結像チャンバをほぼ充填していることが確認されるまで、移送は継続する。
【0064】
十分な量の希釈剤/試薬が移されると、回転弁415は、
図8Eに示されるように位置決めされ、ボックス550で、サンプルおよび希釈剤/試薬の全体積が混合される。ボックス555で、全量495が結像チャンバに移され、回転弁415は
図8Fに示されるように位置決めされる。混合されたサンプルの全量495を移すことによって、元のサンプルからの血液の計量された量に、希釈剤/試薬の計量されていない量を加えた全てが、ボックス555で、結像チャンバ内に位置決めされることに留意されたい。
【0065】
試験カートリッジ400が使用された場合、ステップ560で、血球分析器200に挿入され、分析が始まる。試験カートリッジ401または402の分析はステップ560で継続し、その際、x-yステージ225は試験カートリッジ401を移動させて、ボックス560で、結像チャンバ403全体の明視野および蛍光画像を得る。代替実施形態では、対物レンズ265および/またはデジタルカメラ280が移動され、試験カートリッジ401は静止したままである。更に別の実施形態では、対物レンズ265は、移動なしで結像チャンバ403全体を獲得するのに十分な視野を有する。結像チャンバの各物理的フレームの2つのデジタル画像は、ボックス565で、画像プロセッサ/コンピュータ290に移送される。明視野光学部品を用いて得た一方の画像を、蛍光光学部品を用いて得た他方の画像と比較して、赤血球、白血球、および血小板を特定することができる。白血球のサイズおよび内部構造を更に分析することによって、パターン認識を用いて白血球のサブタイプを特定することができる。
【0066】
ボックス570で、明視野および蛍光画像の比較によって、成熟赤血球を網状赤血球および有核赤血球から鑑別することができる。各血球の計数を分かっている計量チャンバ483の容積で割ることによって、濃度(単位体積当たりの血球)を判定することができる。球状化剤を使用することによって、赤血球の平面サイズを平均赤血球容積(MCV)に転換することができる。赤血球の計数をMCVおよび計量チャンバ483の容積と組み合わせることで、ヘマトクリット(HCT)および赤血球分布幅(RDW)の計算が可能になる。ボックス525からの別個に測定したHGBをRBC計数と組み合わせて使用して、更に計算することによって、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)および平均赤血球ヘモグロビン含量(MCHC)が得られる。
【0067】
ボックス575で、測定結果を、特定の患者集合に関して以前に規定した限界および範囲と比較し、その結果が正常予測範囲内にあるかまたは範囲外かを判定する。この判定に従って、ボックス580で、正常範囲内の結果が報告され、ボックス585で、正常範囲外の結果が報告される。
【0068】
上述したように、本発明の別の実施形態は、希釈サンプルの分かっている体積または測定された体積に対してCBCを実施するものである。この実施形態では、希釈サンプルの分かっている体積の中にある全ての血球および血小板が計数される。希釈サンプルの体積および希釈比が分かっている場合、サンプルの単位体積当たりの血球および血小板の数を判定することができる。血液学分析器を提供して、単回使用の使い捨て試験カートリッジを使用して、希釈サンプルの分かっている体積に対してCBCを実施することができる。結像チャンバの長さおよび深さは、分かっている希釈サンプルの希釈比および体積に応じて決まる。例えば、20μLの全血サンプルを50:1で希釈して、1000μLの希釈サンプルを生成してもよい。次に、希釈サンプル20μLを取り出して分析してもよい。希釈サンプル中の全ての血球および血小板は、直接または統計的表現によって計数される。分かっている希釈体積20μLは全血.4μLに相当する。希釈サンプルの分かっている体積全てを収容するため、結像チャンバの容積は少なくとも20μLでなければならない。
【0069】
希釈比は、血球が結像チャンバの底に沈殿したときの密集または重なりを防ぐのに十分でなければならない。希釈比はまた、上述したような結像チャンバの深さに応じて決まる。希釈された血液の体積は、全血サンプルを有意に代表するのに十分な白血球を含有するのに十分でなければならない。例えば、健康な患者の全血中の平均白血球数は、1マイクロリットル当たり約5000であろう。.4μLの全血中、約2000の白血球が存在するであろう。しかしながら、病気の患者、または化学療法で治療中の患者では、白血球数は1マイクロリットル当たり500程度と少ない場合がある。この場合、.4μLの希釈サンプル中の白血球数は約200であり、臨床的に有意とするには不適切な白血球数であろう。この場合、より多量の希釈サンプルが望ましいことがある。しかしながら、希釈サンプルの体積が増加するに従って、希釈サンプルの分かっている体積中の全ての血球を撮像し計数する時間が増大する。
【0070】
分かっている希釈体積のサンプルに対してCBCを実施するのに利用される血液学分析器は、プレッサフットおよび弁ドライバを有する必要がない点を除いて、上述し
図3に示したものと類似した、試験カートリッジの結像チャンバ内の血球を撮像する自動顕微鏡を備える。一実施形態では、希釈ステップは、ピペットおよび混合チューブまたはビーカーを用いて、また分析器外で手動で実施されてもよく、その場合、希釈比は分かっている比になる。混合物の分かっている体積は、蛇行状の結像チャンバ709を有する試験カートリッジ703上で、
図12のサンプルカップ701内に置かれてもよい。サンプルカップは、結像チャンバ709の一端にあるチャネル704によって、結像チャンバ709に流体連通されていてもよい。蛇行状チャンバ709の反対側の端部には、ベント穴707がある。試験カートリッジが分析器に挿入されると、ベント穴707は、分析器の真空/圧力源とインターフェース接続される。真空がベント穴707に適用されると、希釈サンプルが結像チャンバ709に引き込まれ、その中で位置決めされて、その全体積が結像チャンバ内に位置するようになる。希釈サンプルはまた、
図8Eの混合チャンバ405を参照して上述した手法と同様に、希釈サンプルを混合する目的で、ベント穴に加えられる圧力によってサンプルカップ内に押し戻され、次に結像チャンバ内に押し戻され、その中で位置決めされる。サンプルカップは、必要な場合に混合を容易にするため、
図8Eの混合チャンバ405と同じ形状および形式のものであってもよい。例えば、分かっている体積の希釈サンプルがサンプルカップ内に置かれ、血球分析を即時に行うために試験カートリッジが分析器に挿入されない場合、希釈サンプル中の血球はサンプルカップの底に堆積することがある。この場合、混合が必要なことがある。希釈サンプルが結像チャンバ内に位置決めされると、分析器は、上述したように、希釈サンプルに対してCBCを実施してもよい。
【0071】
あるいは、測定された体積のサンプルと測定された体積の希釈剤/試薬とが手動で混合されてもよく、分かっている体積を有する混合物の一部分は、血球の密集を防ぐと共に均一な分布を確保する制御された流量で、
図13に示されるような蛇行状の結像チャンバを有する試験カートリッジに挿入されてもよい。蛇行経路の寸法は、希釈比、混合物の分かっている体積、および上記に説明したガイドラインに従って選ばれる。分かっている体積の混合物中の各血球は、上記に説明したように計数され分析されてもよい。
【0072】
別の実施形態では、希釈およびサンプル調製ステップは、全血サンプルを吸引するプローブと、所定量のサンプルを隔離するシヤー弁またはフェース弁と、希釈剤/染色剤の供給源、サンプルおよび希釈剤/染色剤を混合する混合ボウル内にある分かっている量の希釈剤/染色剤を計量し分配するシリンジポンプと、流体の移動を制御するソレノイドロッカー弁またはピンチ弁と、真空および圧力源と、使い捨ての単回使用の試験カートリッジとを利用して、分析器によって実施されてもよい。シヤー弁は、血液サンプルを吸引する分析器プローブと流体連通している。サンプルは、プローブを通してシヤー弁に引き込まれ、シヤー弁を回して所定量のサンプルを捕えてもよい。シヤー弁は更に、圧力源および
混合ボウルと流体連通する位置まで回される。隔離された血液サンプルは、圧力源によって混合ボウルに押し込まれる。シリンジポンプは、希釈剤/染色剤供給源および混合ボウルと流体連通している。シリンジポンプは、所定量の希釈剤/染色剤を混合ボウルに分配する。血液サンプルおよび希釈剤/染色剤は、プローブを通して空気を押し込み、混合物を通して空気を泡立てることによって、ボウル内で混合することができる。混合されると、混合物の一部分が、容積が分かっていて混合ボウルと流体連通している計量チャンバに引き込まれてもよい。光学エッジ検出センサが、計量チャンバに入る混合物のフローを制御するのに使用される。
図13に示される試験カートリッジは、血液学分析器と共に単回使用の使い捨てカートリッジとして使用される。分析器に挿入されることによって、蛇行状の結像チャンバ951の一端にある
図13のチャネル950が、計量チャンバとインターフェース接続し、流体連通するようになる。真空が
図13のベント穴953を通る蛇行経路の反対側の端部に加えられ、上述したようなCBC分析のため、血球の密集を防ぐと共に均一な分布を確保する制御された速度で、計量チャンバ内にある希釈サンプルの部分が、結像チャンバに引き込まれ、その中に位置決めされる。蛇行経路の寸法は、希釈比、混合物の部分の体積、および上記ガイドラインに応じて決まる。この構成の1つの欠点は、シヤー弁、計量チャンバ、混合ボウル、計量チャンバ、および接続流体チャネルを、サンプル毎に洗い流さなければならないことである。かかる分析器はまた、頻繁な校正と保守点検を要する。
【0073】
別の実施形態では、希釈ステップおよび計量ステップは、混合ボウルを有する試験カートリッジを用いて、また試験カートリッジ上の希釈サンプルカップを用いて実施されてもよい。分析器は、サンプリングプローブと、希釈剤/染色剤リザーバと、精密希釈器シリンジポンプと、洗浄ステーションとを含む。この場合、プローブは、
図3のステージ225に対してz方向で垂直に移動することができる、
図3の血球分析器200の基部に装備された移送アームに取り付けられてもよい。移送アームは、洗浄ステーション、または希釈剤/試薬リザーバ、またはサンプルコンテナと垂直に位置合わせすることができるように、直線軸に沿って水平に移動することができる。分析器の概要は
図14に示されている。希釈ステップは次の通りである。
図14のプローブ801が、希釈剤/染色剤リザーバ805と垂直に位置合わせされるまで、直線軸803に沿って移動する。次に、プローブの先端が希釈剤/染色剤805に浸かるまで、垂直方向で下向きに移動する。次に、分かっている量の希釈剤/染色剤、例えば1000μLを吸引する。プローブは、サンプルコンテナ807と位置合わせされるまで、上向きに、また軸803に沿って水平に移動する。3μLの空気を吸引した後、プローブの先端がサンプルコンテナ807内のサンプルに十分に浸かるまで、垂直方向で下向きに移動する。次に、分析器は、全血などのサンプル20μLをサンプルコンテナから吸引し、その後、プローブを上向きにサンプルコンテナの上方で移動させ、そこで別の空気の塊3μLを吸引する。次に、プローブは、試験カートリッジ723上の
図15の混合ボウル721と垂直方向で位置合わせされるまで、直線軸803に沿って移動する。次に、プローブは、プローブの先端が混合ボウル721の底の直上に来るまで、垂直方向で下に下げられる。次に、分析器は、血液サンプルおよび希釈剤/染色剤を、試験カートリッジ723上の混合ボウル721に分配する。この一連のステップによって、吸引された血液サンプル全体が、希釈剤/染色剤試薬によってプローブから洗い出され、混合ボウルに入ることが確保される。分析器は、軸803に沿って前後に移動することによって、または混合物を通して空気を泡立てることによって、または混合物を吸引し、それを混合ボウルに再分配することによって、または他の方法などによって、血液と希釈剤を機械的に混合してもよい。サンプルおよび希釈剤/染色剤が混合された後、分析器は混合物20μLを吸引する。これは希釈していないサンプル.4μLに相当する。次に、プローブが
図15の希釈サンプルリザーバ728と位置合わせされるまで、プローブを、上向きに移動させ、
図14の直線軸803に沿って移動させる。プローブが下に下げられ、サンプルと希釈剤/染色剤との混合物20μLが、チャネル731を通して蛇行経路719の一端と流体連通している、
図15のサンプルカップ728に分配
される。混合物は、結像チャンバのサンプルカップ728とは反対側の端部にあるベント穴717とインターフェース接続している、分析器の真空源によって、制御された速度で結像チャンバ719の蛇行経路に通されてもよい。あるいは、サンプルが分配された後、プローブが、封止用Oリングを含んでもよいベント穴717内に位置決めされてもよく、分析器は、毎秒2μLなどの制御された速度でプローブを通して空気を吸引して、血球の密集を防ぐと共に均一な分布を確保する。分析器は、結像チャンバ719内に、サンプルおよび希釈剤/染色剤の混合物全体を位置決めする。蛇行経路の寸法は、希釈比、混合物の体積、および上記考慮点に応じて決まる。別の変形例は、サンプルカップを含まない試験カートリッジを利用するものであり、その場合、プローブは、20μLの希釈サンプルを吸引した後、流体チャネル731と直接インターフェース接続し、混合物を制御された速度で結像チャンバ719の蛇行経路に直接分配してもよい。
【0074】
プローブは、血液または希釈剤/染色剤、またはサンプルと希釈剤/染色剤の混合物を吸引もしくは分配した後、プローブの側面に付着している溶液があればそれを排除するため、
図14の洗浄ステーション809で洗われてもよい。このプロセスは上述していないが、化学分析器またはX-Y分配流体メカニズムに関連する分野の当業者であれば、それを行う実務および手順を理解するであろう。
【0075】
この実施形態の1つの利点は、シヤー弁および流体管材とそれらの洗浄が排除されると共に、サンプルからサンプルへの流体チャネルの相互接続が排除されることである。ピンチ弁および/またはソレノイド弁の必要性も低減され、また排除されてもよい。
【0076】
分析器は、1つの試験カートリッジの結像チャンバ内にある分かっている希釈サンプルに対するCBC撮像分析を実施すると同時に、分析器が別のサンプルを希釈し、第2の試験カートリッジの結像チャンバ内にそれを置くことによって、サンプルを並行して処理してもよい。これは、分析器のスループットを向上するために行うことができる。
【実施例】
【0077】
【実施例1】
【0078】
明視野および蛍光光学部品からの情報
図16は、本発明による試験デバイスを使用して収集された画像を示している。蛍光染色剤Acridine Orange(AO)を使用して、全血サンプル中の血球のDNAおよびRNAを鑑別して染色した。
図16の視覚的画像は、Olympus 20X×0.4NA対物レンズ265と、Basler 5 MPデジタルカメラ280とを使用して得たものである。
【0079】
二列目の明視野画像の励起は、白色光明視野光源260によって提供した。三列目の蛍光画像の励起は、455nm青色蛍光光源270であった。
白血球は、顕著なRNAおよびDNAを有し、したがって緑色およびオレンジ色の構造を有する蛍光画像で見ることができる。緑色の核構造のサイズと形状、および白血球の全体サイズを使用して、それらを一列目の名称によって特定される部分群に鑑別することができる。特に、白血球の好塩基球および好酸球の部分群は、細胞質中に大型顆粒が存在することによる、明視野画像に特徴的性質を有する。したがって、本発明の実施形態は、白血球の部分群を鑑別するのに、明視野および蛍光画像両方の分析を利用する。
【0080】
血小板もAO染色剤を吸収するが、血小板のサイズはいずれの白血球よりも大幅に小さく、したがって鑑別することができる。赤血球は成熟するにつれて核を失うので、AO染色剤を吸収する核物質を有さない。結果的に、明視野には現れるが蛍光視野では見えない
物体として、赤血球を特定することができる。網状赤血球および有核赤血球(nRBC)と呼ばれる未熟赤血球は、赤血球の属性を有するが、低レベルの蛍光も示す。本発明の実施形態は、赤血球を特定し部分群に分けるのに、これらの組み合わされた属性を利用する。
【実施例2】
【0081】
結像チャンバの統計的サンプリング
表1は、本発明に従って得られたものと、自動血液学分析器から得られたものとの、CBCパラメータの比較を示している。
【0082】
【0083】
サンプル: 低WBC数-約2000/μL(通常は3,000~10,000/μL
)
倍率:20倍
画像数:明視野画像約10,000、蛍光画像約10,000
変数:列1-計算に使用する全血球の割合
ペア数の列-画像ペアの数(明視野および蛍光)
RBCの列-計数した赤血球の総数
WBCの列-計数した白血球の総数
ROIの列-関心領域全体。これは、実際のサンプルが占める画像フレームの「有効」数である。サンプル/血球で完全に充填されたフレームは「1」である。部分フレーム(蛇行形状の縁部または湾曲した端部による)は、1フレームの分数である(例えば、0.567)。
【0084】
RBC/fの列-1フレーム当たりの平均赤血球数(RBCの列を列5のROIで割ったもの)
RBC/f(%)の列-これは、特定のサンプリング率におけるRBC/フレーム値を、サンプリング率100%の場合のRBC/フレームで割ったものである(最上行)。これは、100%の血球計数と比較した、特定のサンプリング率の精度の概算である。
【0085】
WBC/fの列-1フレーム当たりの平均白血球数(WBCの列をROIの列で割ったもの)
列9のWBC/f(%)-これは、列7と類似しているが、白血球に関するサンプリング率の精度を概算したものである。
【0086】
RBC/WBCの列-これは、特定のサンプリング率に関するRBC/WBCの比である。
結果:全フレームの少ない割合で精密な結果を提供することができる。全フレームのうち少数が計数されるので、赤血球に関しては1%、白血球に関しては5%まで精度が維持される。
【0087】
考察:これらの実験では、画像ペアを獲得するのに約1秒を要した。この実験の場合、サンプルの100%を獲得するのにほぼ10,000の画像ペアが必要だったので、これは、画像分析には10,000秒、約2.8時間を要することを意味する。実験は、結像チャンバにわたる血球の分布の均一性が、フレームの5%のみで血球を計数することによって精密な結果を得るのに十分に良好だったことを示している。サンプルサイズ全体(関心領域ROI)が測定されるので、「全ての血球を計数する」という目標は達成されるが、精密な結果を得るのに、画像のわずか5%を分析すればよい。これによって画像分析時間が約8分間まで低減される。カメラおよびコンピュータ処理技術の発展によって、この時間は更に低減されることが予期される。
【0088】
本発明について、多数の特定の実施形態に関連して記載してきた。しかしながら、本発明の範囲内にあると考えられる多数の修正が、当業者には明白となっているはずである。したがって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。それに加えて、特許請求の範囲の提示順序は、特許請求の範囲におけるいかなる特定の用語の範囲をも限定するものと解釈すべきでない。