(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20241227BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20241227BHJP
【FI】
H02K1/32 Z
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2023193204
(22)【出願日】2023-11-13
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523429519
【氏名又は名称】MCF Electric Drive株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】板坂 直樹
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177706(JP,A)
【文献】特開2016-054608(JP,A)
【文献】特開2015-023652(JP,A)
【文献】特開2019-047644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/32
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機であって、
永久磁石を有するロータと、
前記ロータを回転自在に支持するシャフトと、
前記シャフトの内部に設けられたシャフト内通路と、
前記ロータの内周面に開口する流入口を介して前記シャフト内通路から液体冷媒が流入するロータ内通路と、を備え、
前記ロータ内通路は、前記流入口から径方向外側に延びる上流側通路と、前記上流側通路に接続されるとともに軸方向に延びる下流側通路と、を有し、
前記上流側通路は、前記ロータの周方向に並べられた第1上流側通路及び第2上流側通路を備え
、
前記流入口は、前記ロータの軸方向中央部分に設けられており、
前記下流側通路は、前記上流側通路の軸方向一方側に設けられた第1下流側通路と、前記上流側通路の軸方向他方側に設けられた第2下流側通路と、を有し、
前記第1上流側通路の外周端の径方向位置は、前記第2上流側通路の外周端の径方向位置よりも径方向内側の位置に設定され、
前記第1上流側通路の径方向外側には、軸方向に延び、かつ、前記第1下流側通路と前記第2下流側通路とを接続する接続通路が設けられている回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第1上流側通路は、q軸方向に沿って延びており、
前記第2上流側通路は、d軸方向に沿って延びている回転電機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記第1上流側通路及び前記第2上流側通路は、前記ロータの周方向において交互に備えられている回転電機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記上流側通路の外周部分は、軸方向断面が楕円形状に構成されている回転電機。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記ロータの径方向外側に備えられたステータと、
前記ステータの軸方向端部に備えられたコイルエンドと、
前記ロータの軸方向端部に備えられたエンドプレートと、
前記エンドプレートに設けられ、かつ、径方向に延びる流出通路と、を更に有し、
前記流出通路は、その内周部分が前記下流側通路に接続され、かつ、外周端に設けられた流出口が前記コイルエンドに向いている回転電機。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の回転電機において、
前記ロータと前記シャフトとは、焼嵌めにより固定されている回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車の走行駆動源に用いることが可能な回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転電機に備えられた永久磁石の冷却技術が提案されている。例えば、特許文献1では、シャフトの内部に設けられた冷媒通路を介して、冷却油がロータの内部に設けられた冷媒流路に供給されている。そして、冷媒流路を流通する冷却油により、永久磁石が冷却されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータは、例えば、周方向位置に応じて存在する媒質(例えば、電磁鋼板、永久磁石、空隙など)が異なっていると、周方向位置に応じて機械的特性に差異が生じる場合がある。この周方向位置に応じた機械的特性の差異を考慮せずに、ロータに特許文献1のような冷媒流路を設けてしまうと、ロータにおける所定の周方向位置において機械的特性が比較的低い部分が生まれてしまうことがある。そして、この機械的特性が比較的低い部分において、ロータ回転時に遠心力による局所的な応力集中が発生すると、ロータの信頼性に影響を与えてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、永久磁石を冷却しつつ従来よりもロータの信頼性を高めることが可能な回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、回転電機であって、永久磁石を有するロータと、前記ロータを回転自在に支持するシャフトと、前記シャフトの内部に設けられたシャフト内通路と、前記ロータの内周面に開口する流入口を介して前記シャフト内通路から液体冷媒が流入するロータ内通路と、を備え、前記ロータ内通路は、前記流入口から径方向外側に延びる上流側通路と、前記上流側通路に接続されるとともに軸方向に延びる下流側通路と、を有し、前記上流側通路は、前記ロータの周方向に並べられた第1上流側通路及び第2上流側通路を備え、前記流入口は、前記ロータの軸方向中央部分に設けられており、前記下流側通路は、前記上流側通路の軸方向一方側に設けられた第1下流側通路と、前記上流側通路の軸方向他方側に設けられた第2下流側通路と、を有し、前記第1上流側通路の外周端の径方向位置は、前記第2上流側通路の外周端の径方向位置よりも径方向内側の位置に設定され、前記第1上流側通路の径方向外側には、軸方向に延び、かつ、前記第1下流側通路と前記第2下流側通路とを接続する接続通路が設けられている。
【0007】
このように構成された本発明によれば、シャフト内通路からロータ内通路に流入した液体冷媒により、永久磁石を冷却することができる。また、第1上流側通路の外周端の径方向位置と第2上流側通路の外周端の径方向位置とを異ならせることで、周方向位置に応じて異なるロータの機械的特性の差異を従来よりも小さくすることが可能となる。これにより、ロータ回転時に遠心力による局所的な応力集中が発生した場合であっても、ロータの信頼性に影響を与えてしまうのを抑制することができる。さらに、流入口がロータの軸方向中央部分に設けられているので、シャフト内通路から上流側通路に流入する液体冷媒を用いて、永久磁石における最も温度が高くなり易い軸方向中央部分を他の部分に優先して冷却することが可能となる。これにより、永久磁石の軸方向中央部分が高温になるのを抑制することができる。また、接続通路の径方向内側に備えられている第1上流側通路の外周端の径方向位置が第2上流側通路の外周端の径方向位置よりも径方向内側に設定されることで、第1上流側通路及び接続通路が設けられた周方向位置と第2上流側通路が設けられた周方向位置とで生じる機械的特性の差異を小さくすることが可能となる。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記第1上流側通路は、q軸方向に沿って延びており、前記第2上流側通路は、d軸方向に沿って延びている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、q軸方向に沿って延びる第1上流側通路の外周端の径方向位置とd軸方向に沿って延びる第2上流側通路の外周端の径方向位置とを異ならせることで、q軸方向に対応する周方向位置とd軸方向に対応する周方向位置とで生じるロータの機械的特性の差異を従来よりも小さくすることが可能となる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記第1上流側通路及び前記第2上流側通路は、前記ロータの周方向において交互に備えられている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、第1上流側通路及び第2上流側通路は、ロータの周方向において交互に備えられるようになる。これにより、周方向位置に応じて異なるロータの機械的特性の差異を従来よりも更に小さくすることが可能となる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記上流側通路の外周部分は、軸方向断面が楕円形状に構成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、上流側通路の外周部分の軸方向断面が楕円形状とされている。これにより、上流側通路の外周端部のRが円形状の場合に比べて大きくなるため、例えば、ロータ回転時に上流側通路の外周端部に作用する応力を分散させることが可能となる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記ロータの径方向外側に備えられたステータと、前記ステータの軸方向端部に備えられたコイルエンドと、前記ロータの軸方向端部に備えられたエンドプレートと、前記エンドプレートに設けられ、かつ、径方向に延びる流出通路と、を更に有し、前記流出通路は、その内周部分が前記下流側通路に接続され、かつ、外周端に設けられた流出口が前記コイルエンドに向いている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、下流側通路を通過する際に永久磁石の冷却に用いられた液体冷媒が、流出口から流出してコイルエンドに供給されるようになる。これにより、永久磁石を冷却後の液体冷媒をコイルエンドの冷却にも用いることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記ロータと前記シャフトとは、焼嵌めにより固定されている。
【0019】
このように構成された本発明によれば、ロータとシャフトとが焼嵌めにより固定されるようになるので、ロータとシャフトとを確実に固定することができる。また、ロータの内周面に開口する流入口から径方向外側に延びている上流側通路により、ロータに作用する焼嵌め応力を緩和することができる。これにより、ロータの信頼性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
永久磁石を冷却しつつ従来よりもロータの信頼性を高めることが可能な回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る回転電機を示す概略断面図である。
【
図4】
図1のIV-IVにおける概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機1を示す。回転電機1は、例えば、電気自動車の走行駆動源に用いることが可能な埋込磁石型の電気モータである。
【0024】
回転電機1は、シャフト2と、シャフト2の外周面に固定されたロータ3と、ロータ3の径方向外側にロータ3と径方向に所定の間隔を空けて配設されたステータ4とを備えている。シャフト2は、ロータ3を回転自在に支持している。ステータ4の軸方向端部には、コイルエンド4aが備えられている。
【0025】
シャフト2は、軸状をなし、かつ、軸受(不図示)を介して回転電機1のケース(不図示)に回転自在に支持されている。また、シャフト2の内部には、シャフト内通路5が設けられている。
【0026】
シャフト内通路5は、シャフト2の内部を軸方向に延びる第1シャフト内通路5aと、シャフト2の内部を径方向に延びる複数の第2シャフト内通路5bとが設けられている。
【0027】
第1シャフト内通路5aの軸方向一方端は、閉塞されている。また、第1シャフト内通路5aの軸方向他方端には、第1流入口5cが設けられている。そして、第1流入口5cを介してオイルポンプ6から冷却油(液体冷媒)が第1シャフト内通路5aに供給されるようになっている。本実施形態では、オイルポンプ6は、シャフト2又はシャフト2と車輪(不図示)との間の動力伝達軸により駆動されるようになっている。
【0028】
回転電機1が生成するトルクは、減速機(不図示)を介して車輪(不図示)に伝達されるようになっている。そして、オイルポンプ6から第1シャフト内通路5aに供給される冷却油は、減速機(不図示)の潤滑油としても用いることが可能となっている。換言すると、回転電機1の冷却油と減速機(不図示)の潤滑油とが共用されている。本実施形態では、冷却油は、オートマチックトランスミッションフルード(Automatic transmission fluid)が用いられている。
【0029】
複数の第2シャフト内通路5bは、シャフト2の周方向に互いに所定の間隔を空けて並設されている。各第2シャフト内通路5bの内周端は、第1シャフト内通路5aの軸方向中央部分に接続されている。また、各第2シャフト内通路5bの外周端には、第1流出口5dが設けられている。本実施形態では、第1流出口5dがシャフト2の外周面において周方向で22.5度毎に設けられている。
【0030】
ロータ3は、略円筒状をなし、かつ、中央部分に貫通形成された貫通孔3aにシャフト2が挿入された状態において該シャフト2に固定されるようになっている。本実施形態では、シャフト2とロータ3とは、焼嵌めにより固定されている。焼嵌めは、例えば、ロータ3を加熱して、ロータ3の貫通孔3aを拡げた後、該貫通孔3aにシャフト2を挿入し、しかる後、ロータ3を冷却して貫通孔3aを狭めることにより、ロータ3とシャフト2とが固定されるようになっている。
【0031】
また、ロータ3は、ロータコア7と、複数の永久磁石8(例えば、ネオジム等の希土類磁石)と、一対のエンドプレート9とを備えている。エンドプレート9は、略円盤状をなし、かつ、ロータコア7の軸方向両側にそれぞれ配設されている。換言すると、一対のエンドプレート9は、ロータコア7を軸方向に挟持するようにロータ3の軸方向端部に備えられている。
【0032】
また、ロータコア7には、略円盤状をなす第1電磁鋼板20及び第2電磁鋼板30がそれぞれ複数備えられている。そして、第1電磁鋼板20及び第2電磁鋼板30が軸方向に積層されることにより、ロータコア7が構成されるようになっている。本実施形態では、第1電磁鋼板20が軸方向中央部分に位置しており、第1電磁鋼板20の軸方向両側に第2電磁鋼板30がそれぞれ位置している。
【0033】
図2に示すように、第1電磁鋼板20には、その内周面から径方向外側に延びる複数の第1スリット21及び第2スリット22が設けられている。複数の第1スリット21及び第2スリット22は、周方向に互いに所定の間隔を空けて並設されている。本実施形態では、第1スリット21及び第2スリット22は、第1電磁鋼板20の内周部において周方向で22.5度毎に交互に設けられている。
【0034】
また、第1電磁鋼板20における複数の第1スリット21及び第2スリット22の径方向外側の位置には、周方向に延びる複数の第3スリット23が設けられている。複数の第3スリット23は、周方向に互いに所定の間隔を空けて並設されている。本実施形態では、第3スリット23は、第1電磁鋼板20の径方向中途部において周方向で45度毎に設けられている。
【0035】
また、第1電磁鋼板20における複数の第3スリット23の径方向外側の位置には、径方向に交差する方向に延びる複数の第4スリット24が設けられている。
【0036】
図3に示すように、第2電磁鋼板30には、軸方向視で略台形状をなす複数の第5スリット31が設けられている。複数の第5スリット31は、周方向に互いに所定の間隔を空けて並設されている。本実施形態では、第5スリット31は、第2電磁鋼板30の内周部及び径方向中途部において周方向で45度毎に設けられている。
【0037】
また、第2電磁鋼板30における複数の第5スリット31の径方向外側の位置には、径方向に交差する方向に延びる複数の第6スリット32が設けられている。
【0038】
本実施形態では、各電磁鋼板(第1電磁鋼板20及び第2電磁鋼板30)の各スリット(第1スリット21~第6スリット32)が軸方向に連通するように各電磁鋼板の周方向位置を位置合わせした状態において、ロータコア7を構成する全ての電磁鋼板(第1電磁鋼板20及び第2電磁鋼板30)を軸方向に積層することにより、上流側通路40、下流側通路50、接続通路60及び収容部70が形成されるようになっている(
図1、
図4及び
図5を参照)。より詳細に説明すると、ロータコア7を構成する全ての第1電磁鋼板20に設けられた第1スリット21及び第2スリット22を軸方向に連通させることにより、上流側通路40が形成されるようになっている。また、ロータコア7を構成する全ての第2電磁鋼板30に設けられた第5スリット31を軸方向に連通させることにより、下流側通路50が形成されるようになっている。また、ロータコア7を構成する全ての第1電磁鋼板20に設けられた第3スリット23を軸方向に連通させることにより、接続通路60が形成されるようになっている。また、ロータコア7を構成する全ての第1電磁鋼板20に設けられた第4スリット24と第2電磁鋼板に設けられた第6スリット32とを軸方向に連通させることにより、収容部70が形成されるようになっている。
【0039】
上流側通路40は、第1上流側通路41及び第2上流側通路42をそれぞれ複数備えている(
図4を参照)。第1上流側通路41は、複数の第1電磁鋼板20に設けられた第1スリット21により構成されている。第2上流側通路42は、複数の第1電磁鋼板20に設けられた第2スリット22により構成されている。
【0040】
ロータコア7には、ロータコア7の内周面に開口する第2流入口43が複数設けられている。第2流入口43は、シャフト2の第1流出口5dに対向する位置に設けられている。本実施形態では、第2流入口43は、16箇所設けられており、ロータコア7の内周面において周方向で22.5度毎に設けられている。
【0041】
複数の第1上流側通路41及び第2上流側通路42は、それぞれが対応する第2流入口43から径方向外側に延びるように設けられている。
【0042】
第1上流側通路41と第2上流側通路42とは、周方向に交互に1つずつ設けられている。本実施形態では、第1上流側通路41は、q軸方向に沿って延びている。第2上流側通路42は、d軸方向に沿って延びている。本実施形態において、d軸方向は永久磁石8の磁極の中心軸方向であり、q軸方向はロータ3の周方向で隣り合う永久磁石8の磁極間の中心軸方向である。
【0043】
また、複数の第1上流側通路41及び第2上流側通路42は、軸方向断面が略茸状に構成されている。換言すると、複数の第1上流側通路41及び第2上流側通路42の外周部分は、それぞれの内周部分よりも周方向寸法が大きくなっている。本実施形態では、複数の第1上流側通路41及び第2上流側通路42の外周部分は、軸方向断面が楕円形状に構成されている。
【0044】
図4において、シャフト2からd軸方向とq軸方向とをみたとき、それぞれの方向に対応する周方向位置に存在する媒質が異なっている。d軸方向に対応する周方向位置では、径方向内側から径方向外側に向かって順に空隙(第2上流側通路42)の領域、電磁鋼板(第1電磁鋼板20)の領域が存在している。一方、q軸方向に対応する周方向位置では、径方向内側から径方向外側に向かって順に空隙(第1上流側通路41)の領域、電磁鋼板(第1電磁鋼板20)の領域、空隙(接続通路60)の領域、電磁鋼板(第1電磁鋼板20)の領域が存在している。したがって、q軸方向に対応する周方向位置では、d軸方向に対応する周方向位置に比べて電磁鋼板の占める割合が少なくなる。該電磁鋼板の占める割合が少ないほど、換言すると、空隙の占める割合が多いほど、径方向に対する機械的特性(例えば、ロータ3の回転時に発生する遠心力に対する機械的強度)が低くなり易い。また、
図4において、ロータ3におけるd軸と直近の空隙(収容部70)との周方向距離が、q軸と直近の空隙(収容部70)との周方向距離よりも短くなっている。ここで、各軸(d軸、q軸)から直近の空隙(収容部70)までの周方向距離が短いほど、径方向に対する機械的特性が低くなり易い。なお、
図4に示す本実施形態では、ロータ3におけるd軸方向に対応する周方向位置が、q軸方向に対応する周方向位置よりも径方向に対する機械的特性が低くなっている例を示している。
【0045】
また、
図4に示すように、ロータ3においてq軸方向に略対応する周方向位置における第1上流側通路41と接続通路60との径方向距離が、d軸方向に略対応する周方向位置における第2上流側通路42と収容部70との径方向距離よりも短くなっている。これにより、ロータ3の径方向において第1上流側通路41と接続通路60との間の部分が、第2上流側通路42と収容部70との間の部分よりもロータ3の周方向に対する機械的特性が低くなっている。
【0046】
ロータ3の回転時には、該ロータ3の回転により発生する遠心力により、ロータ3における径方向に対する機械的特性が比較的低い周方向位置の部分がその他の部分に比べて径方向外側に向けて伸びるように変形し易くなる。本実施形態では、ロータ3におけるd軸方向に対応する周方向位置がq軸方向に対応する周方向位置よりも径方向に対する機械的特性が低くなっているため、ロータ3におけるd軸方向に対応する周方向位置の部分がロータ3におけるq軸方向に対応する周方向位置の部分に比べて、径方向外側に向けて伸びるように変形する。この変形に伴って、ロータ3の中途部分(第1上流側通路41と接続通路60との間の部分及び第2上流側通路42と収容部70との間の部分)において周方向側への応力が発生する。これに対して、本実施形態では、第1上流側通路41の外周端の第1径方向位置R1は、第2上流側通路42の外周端の第2径方向位置R2よりも径方向内側に設定されている。このようにすることで、第1径方向位置R1が第2径方向位置R2と同じ径方向位置に設定される場合に比べて、第1上流側通路41と接続通路60との径方向距離が長くなる。これにより、第1上流側通路41と接続通路60との間の部分は、ロータ3の周方向に対する機械的特性が高くなるので、周方向に延びるように変形し難くなる。つまり、ロータ3の周方向位置に応じて異なるロータ3の周方向に対する機械的特性の差異(例えば、ロータ3におけるd軸方向に略対応する周方向位置とq軸方向に略対応する周方向位置との間の周方向に対する機械的特性の差異)を従来よりも小さくすることが可能となる。その結果、ロータ3における周方向に対する機械的特性が比較的低い部分が発生するのを抑制することができる。これにより、この周方向に対する機械的特性が比較的低い部分において、ロータ3回転時の遠心力による局所的な応力集中が発生してしまい、ロータ3の信頼性に影響を与えてしまうのを抑制することができる。
【0047】
さらに、第1上流側通路41の外周端の第1径方向位置R1を第2上流側通路42の外周端の第2径方向位置R2よりも径方向内側に設定することにより、第1上流側通路41の外周端のRを大きくし易くなる。これにより、例えば、ロータ3の回転時に第1上流側通路41の外周部分に作用する応力を分散させることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、第2上流側通路42の外周端の第2径方向位置R2は、第1上流側通路41の外周端の第1径方向位置R1よりも径方向外側に設定されている。このようにすることで、第2径方向位置R2が第1径方向位置R1と同じ径方向位置に設定される場合に比べて、d軸方向に略対応する周方向位置における第2上流側通路42と収容部70との径方向距離が短くなる。これにより、第2上流側通路42と収容部70との間の部分は、ロータ3の周方向に対する機械的特性が低くなるので、第1上流側通路41と接続通路60との間の部分に作用する応力を緩和することが可能となる。
【0049】
図1に示すように、下流側通路50は、上流側通路40の軸方向一方側に設けられた第1下流側通路51と、上流側通路40の軸方向他方側に設けられた第2下流側通路52とを備えている。
【0050】
第1下流側通路51は、第1電磁鋼板20の軸方向一方側に位置する全ての第2電磁鋼板30の第5スリット31が軸方向に連通するように、上記第2電磁鋼板30を軸方向に積層することにより形成されている。
【0051】
第2下流側通路52は、第1電磁鋼板20の軸方向他方側に位置する全ての第2電磁鋼板30の第5スリット31が軸方向に連通するように、上記第2電磁鋼板30を軸方向に積層することにより形成されている。
【0052】
第1下流側通路51の軸方向他方端部及び第2下流側通路52の軸方向一方端部は、上流側通路40(第1上流側通路41及び第2上流側通路42)の外周部分に接続されている。換言すると、上流側通路40の外周部分は、その軸方向一方側の部分において第1下流側通路51と接続され、かつ、軸方向他方側の部分において第2下流側通路52と接続されている。
【0053】
本実施形態では、ロータコア7は、第5スリット31の径方向位置が異なる2種類の第2電磁鋼板30が備えている。そして、第5スリット31が比較的径方向内側に設けられた第2電磁鋼板30は、第1電磁鋼板20側(軸方向中央側)に配置される一方、第5スリット31が比較的径方向外側に設けられた第2電磁鋼板30は、エンドプレート9側(軸方向端部側)に配置されている。これにより、第1下流側通路51及び第2下流側通路52は、縦方向断面が段差形状に構成されている。換言すると、第1下流側通路51及び第2下流側通路52のそれぞれの下流側の部分(エンドプレート9側の部分)がそれぞれの上流側の部分(第1電磁鋼板20側の部分)よりも径方向外側に位置している。
【0054】
また、第1下流側通路51の軸方向他方端部及び第2下流側通路52の軸方向一方端部は、上流側通路40の径方向外側に設けられた接続通路60を介して接続されている。換言すると、接続通路60は、その軸方向一方側の部分において第1下流側通路51と接続され、かつ、軸方向他方側の部分において第2下流側通路52と接続されている。本実施形態では、第1下流側通路51、第2下流側通路52及び接続通路60は、ロータ3とステータ4とが発生させる磁束の主要な経路(不図示)よりも径方向内側に設けられている。これにより、主要な磁束成分(不図示)と第1下流側通路51、第2下流側通路52及び接続通路60とが干渉するのを抑制可能となるので、第1下流側通路51などの通路の設置に伴う回転電機1の出力低下を防ぐことができる。
【0055】
図5に示すように、本実施形態では、1つの下流側通路50(
図5では、第1下流側通路51の例を図示)は、1つの第1上流側通路41と、該第1上流側通路41の周方向両側にそれぞれ隣接して形成されている2つの第2上流側通路42と接続されている。これにより、1つの下流側通路50には、3つの上流側通路40からの冷却油が流入するようになっている。
【0056】
図1に示すように、第1下流側通路51の軸方向一方端部及び第2下流側通路52の軸方向他方端部には、第2流出口7bがそれぞれ設けられている。
【0057】
エンドプレート9には、径方向に延びる複数の流出通路9aが周方向に互いに所定の間隔を空けて並設されている。本実施形態では、流出通路9aは、エンドプレート9におけるロータコア7と対向する面がロータコア7から軸方向で遠ざかる方向に凹設されている。
【0058】
流出通路9aの内周端部における第2流出口7bと対向する位置には、第3流入口9bが設けられている。換言すると、下流側通路50の第2流出口7bと流出通路9aの第3流入口9bとは接続されている。
【0059】
また、流出通路9aの外周端部には、第3流出口9cが設けられている。第3流出口9cの径方向外側には、該第3流出口9cと径方向に所定の間隔を空けてステータ4のコイルエンド4aが配設されている。換言すると、第3流出口9cは、コイルエンド4aを向いている。本実施形態では、第3流出口9cは、ロータコア7の外周面において周方向で45度毎に設けられている。
【0060】
収容部70は、ロータコア7を構成する全ての第1電磁鋼板20に設けられた第4スリット24及び第2電磁鋼板30に設けられた第6スリット32が軸方向に連通することにより形成されている。
【0061】
また、収容部70には、軸方向に延びる永久磁石8が収容されている。本実施形態では、収容部70に収容された永久磁石8は、軸方向視で2層のV字状の配置となっている(
図4及び
図5を参照)。
【0062】
次に、
図1を用いて、回転電機1(シャフト2及びロータ3)の回転時(例えば、力行時又は回生時)における冷却油の流れについて説明する。
【0063】
まず、オイル貯留部(不図示)に貯められた冷却油は、オイルポンプ6によりシャフト2の第1シャフト内通路5aに供給される。その後、第1シャフト内通路5a内の冷却油は、シャフト2及びロータ3の回転による遠心力により、第2シャフト内通路5bを介してロータコア7の上流側通路40(第1上流側通路41及び第2上流側通路42)に流入する(
図4を参照)。
【0064】
次に、上流側通路40内に流入した冷却油は、シャフト2及びロータ3の回転による遠心力により、上流側通路40内をその外周部分まで径方向外側に向けて流れる。その後、上流側通路40の外周部分に到達した冷却油は、上流側通路40の外周部分に接続されている下流側通路50に流入する。
【0065】
本実施形態では、上流側通路40内の冷却油は、上流側通路40の軸方向一方側に設けられた第1下流側通路51及び上流側通路40の軸方向他方側に設けられた第2下流側通路52に流入する。ここで、第1下流側通路51と第2下流側通路52とが、接続通路60を介して接続されている。これにより、第1下流側通路51内の冷却油を接続通路60を介して第2下流側通路52に流入させること、及び、第2下流側通路52内の冷却油を接続通路60を介して第1下流側通路51に流入させることができる。したがって、接続通路60により、第1下流側通路51を流れる冷却油の量と第2下流側通路52を流れる冷却油の量とをバランスさせることが可能となっている。
【0066】
下流側通路50内に流入した冷却油は、下流側通路50内を軸方向に流れた後、流出通路9aに流入する。ここで、下流側通路50は、収容部70の径方向内側において該収容部70に沿って軸方向に延びるように設けられている。これにより、下流側通路50内を冷却油が流れると、ロータコア7における収容部70の径方向内側部分が冷却されるようになる。この径方向内側部分が冷却されると、収容部70に収容された永久磁石8が径方向内側から冷却されるようになるので、例えば、不可逆減磁が発生し得る温度まで永久磁石8が昇温されるのを抑制することが可能となる。
【0067】
流出通路9a内に流入した冷却油は、シャフト2及びロータ3の回転による遠心力により、流出通路9a内を径方向外側に流れた後、第3流出口9cから径方向外側に向けて流出する。ここで、第3流出口9cは、コイルエンド4aに向いているので、第3流出口9cから流出した冷却油はコイルエンド4aにかけられる(供給される)ようになる。これにより、永久磁石8の冷却に用いられた冷却油をコイルエンド4aの冷却にも利用することができる。また、第3流出口9cは、周方向において所定間隔毎に設けられているので(本実施形態では、45度毎に計8箇所設けられているので)、コイルエンド4a全体に亘って第3流出口9cから流出した冷却油をかけることが可能になる。これにより、冷却油のかかり方がコイルエンド4aの周方向位置によって異なる、つまり、周方向において温度分布が発生するのを抑制することが可能となる。
【0068】
以上より、本実施形態によれば、シャフト内通路5からロータ内通路(上流側通路40及び下流側通路50)に流入した冷却油により、永久磁石8を冷却することができる。また、第1上流側通路41の外周端の第1径方向位置R1と第2上流側通路42の外周端の第2径方向位置R2とを異ならせることで、周方向位置に応じて異なるロータ3の機械的特性の差異を従来よりも小さくすることが可能となる。これにより、ロータ3回転時に遠心力による局所的な応力集中が発生した場合であっても、ロータ3の信頼性に影響を与えてしまうのを抑制することができる。
【0069】
また、q軸方向に沿って延びる第1上流側通路41の外周端の第1径方向位置R1とd軸方向に沿って延びる第2上流側通路42の外周端の第2径方向位置R2とを異ならせることで、q軸方向に対応する周方向位置とd軸方向に対応する周方向位置とで生じるロータ3の機械的特性の差異を従来よりも小さくすることが可能となる。
【0070】
また、第1上流側通路41及び第2上流側通路42は、ロータ3の周方向において交互に備えられるようになる。これにより、周方向位置に応じて異なるロータ3の機械的特性の差異を従来よりも更に小さくすることが可能となる。
【0071】
また、上流側通路40の外周部分の軸方向断面が楕円形状とされている。これにより、上流側通路40の外周部分のRが円形状の場合に比べて大きくなるため、例えば、ロータ3回転時に上流側通路40の外周部分に作用する応力を分散させることが可能となる。
【0072】
また、第2流入口43がロータ3の軸方向中央部分に設けられているので、シャフト内通路5から上流側通路40に流入する冷却油を用いて、永久磁石8における最も温度が高くなり易い軸方向中央部分を他の部分に優先して冷却することが可能となる。これにより、永久磁石8の軸方向中央部分が高温になるのを抑制することができる。また、接続通路60の径方向内側に備えられている第1上流側通路41の外周端の径方向位置が第2上流側通路42の外周端の径方向位置よりも径方向内側に設定されるようになる。これにより、接続通路60が設けられた周方向位置における第1上流側通路41(空隙)の占める割合を相対的に減らすことができるので、第1上流側通路41及び接続通路60が設けられた周方向位置と第2上流側通路42が設けられた周方向位置とで生じるロータ3の機械的特性の差異を小さくすることが可能となる。
【0073】
また、下流側通路50を通過する際に永久磁石8の冷却に用いられた冷却油が、第3流出口9cから流出してコイルエンド4aに供給されるようになる。これにより、永久磁石8を冷却後の冷却油をコイルエンド4aの冷却にも用いることができる。
【0074】
また、ロータ3とシャフト2とが焼嵌めにより固定されるようになるので、ロータ3とシャフト2とを確実に固定することができる。また、ロータ3の内周面に開口する第2流入口43から径方向外側に延びている上流側通路40により、ロータ3に作用する焼嵌め応力を緩和することができる。これにより、ロータ3の信頼性を更に高めることができる。
【0075】
また、第1下流側通路51及び第2下流側通路52の上流側部分をそれぞれの下流側部分よりも径方向内側に位置させることで、第1下流側通路51及び第2下流側通路52と接続される上流側通路の外周端の位置を径方向内側に位置させることが可能となる。これにより、上流側通路40が径方向に長くなることによって、ロータ3の機械的特性が低下するのを抑制することができる。さらに、第1下流側通路51及び第2下流側通路52の下流側部分をそれぞれの上流側部分よりも径方向外側に位置させることで、該下流側部分が永久磁石8と径方向に近接するようになるので、第1下流側通路51及び第2下流側通路52を流れる冷却油による永久磁石8の冷却性能を更に高めることが可能となる。
【0076】
また、接続通路60により第1下流側通路51と第2下流側通路52とが接続されるようになるので、第1下流側通路51を流れる冷却油の量及び第2下流側通路52を流れる冷却油の量との差異を小さくすることが可能となる。
【0077】
なお、本実施形態では、回転電機1として電気モータの例を用いて説明したが、発電機に用いてもよい。また、回転電機1を電気自動車の走行駆動源以外に用いてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、回転電機1として埋込磁石型の例を用いて説明したが、表面磁石型であってもよい。
【0079】
また、本実施形態では、ロータコア7は、複数の電磁鋼板を積層することにより構成されていたが、鋳物等の単一の部品により構成してもよい。
【0080】
また、本実施形態では、永久磁石8は、軸方向視でV字状に配置されていたが、V字状以外(例えば、∇字状)の配置であってもよい。
【0081】
また、本実施形態では、第2上流側通路42の外周端の径方向位置が、第1上流側通路41の外周端の径方向位置よりも径方向外側の位置に設定されている例について説明したが、第2上流側通路42の外周端の径方向位置を第1上流側通路41の外周端の径方向位置よりも径方向内側の位置に設定してもよい。このようにすることで、例えば、周方向位置に応じて異なるロータ3の径方向に対する機械的特性の差異を従来よりも小さくすることが可能となる。より詳細に説明すると、上流側通路40の外周端が径方向外側に位置しているほど、ロータコア7の周方向位置における上流側通路40が占める割合が多くなるので、該周方向位置の径方向に対する機械的特性が比較的低くなる。一方、上流側通路40の外周端が径方向内側に位置しているほど、ロータコア7の周方向位置における上流側通路40が占める割合が少なくなるので、該周方向位置の径方向に対する機械的特性が比較的高くなる。そこで、ロータコア7における径方向に対する機械的特性が比較的低い周方向位置では、第2上流側通路42の外周端の径方向位置を比較的内周側(径方向内側)に設定して第2上流側通路42(空隙)が占める割合を減らす、つまり、電磁鋼板の占める割合を増やすことで、該周方向位置の径方向に対する機械的特性を高くする。一方、ロータコア7における径方向に対する機械的特性が比較的高い周方向位置では、第1上流側通路41の外周端の径方向位置を比較的外周側(径方向外側)に設定して第2上流側通路42(空隙)が占める割合を増やす、つまり、電磁鋼板が占める割合を減らすことで、該周方向位置の径方向に対する機械的特性を低くすることが可能となる。このように、第1上流側通路41及び第2上流側通路42の外周端の径方向位置を調整することで、ロータコア7の周方向位置間で径方向に対する機械的特性にバラつきが発生するのを抑えることが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、第1上流側通路41は、q軸方向に沿って延びており、かつ、第2上流側通路42は、d軸方向に沿って延びていたが、第1上流側通路41は、d軸方向に沿って延びており、かつ、第2上流側通路42は、q軸方向に沿って延びていてもよい。
【0083】
また、本実施形態では、例えば、ロータ3の周方向位置に応じた周方向に対する機械的特性の差異を考慮して第1上流側通路41の外周端の径方向位置を、第2上流側通路42の外周端の径方向位置よりも径方向内側に設定していたが、ロータ3の周方向位置に応じた径方向に対する機械的特性及び周方向に対する機械的特性の少なくとも一方の差異が生じる種々の要因を考慮して、上記周方向位置に応じた径方向に対する機械的特性及び周方向に対する機械的特性の少なくとも一方の差異が小さくなるように各上流側通路40の外周端の径方向位置を設定してもよい。なお、上記要因は、例えば、ロータ3における空隙の領域、電磁鋼板の領域及び永久磁石8の領域の有無、大きさ、材質、形状、並びに、各軸(d軸、q軸)と空隙との間の径方向距離、隣接する複数の空隙間の周方向距離及び隣接する複数の空隙間の径方向距離等であるが、これらには限定されない。
【0084】
また、本実施形態では、第1上流側通路41と第2上流側通路42とがロータ3の周方向において交互に備えられていたが、交互に備えられていなくてもよく、例えば、第1上流側通路41が周方向に連続して並ぶように備えられていてもよい。
【0085】
また、本実施形態では、上流側通路40(第1上流側通路41及び第2上流側通路42)の外周部分は、軸方向断面が楕円形状に構成されていたが、軸方向断面が楕円形状以外の形状(例えば、円形状)であってもよい。
【0086】
また、本実施形態では、第2流入口43は、ロータ3の軸方向において中央部分に設けられていたが、該中央部分以外の部分に設けられていてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、第1下流側通路51及び第2下流側通路52が設けられていたが、いずれか一方のみ設けられていてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、第1下流側通路51及び第2下流側通路52は、それぞれの下流側の部分がそれぞれの上流側の部分よりも径方向外側に位置するように径方向断面が段差状に構成されていたが、第1下流側通路51及び第2下流側通路52が下流側に行くに従って径方向外側に位置するように構成してもよく、第1下流側通路51及び第2下流側通路52が下流側に行くに従って径方向内側に位置するように構成してもよく、又は、第1下流側通路51及び第2下流側通路52が下流側に行くに従って径方向位置が変わらないように構成してもよい。
【0089】
また、本実施形態では、第1上流側通路41と第2上流側通路42とを接続する接続通路60が設けられていたが、接続通路60を設けなくてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、流出通路9aから流出した冷却油がコイルエンド4aにかかるように構成されていたが、冷却油がコイルエンド4a以外の冷却又は潤滑が必要な箇所にかかるように流出通路9aを構成してもよい。
【0091】
また、本実施形態では、流出通路9aが設けられていたが、流出通路9aを設けなくてもよい。この場合、例えば、エンドプレート9を厚み方向(軸方向)に貫通するように形成された孔(不図示)を介して、第1下流側通路51及び第2下流側通路52内の冷却油を軸方向に流出させてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、シャフト2とロータ3とは、焼嵌めにより固定されていたが、シャフト2とロータ3との相対回転を規制可能であれば、焼嵌め以外の手段を用いてシャフト2とロータ3とを固定するようにしてもよく、又は、シャフト2とロータ3とを一体形成してもよい。
【0093】
また、本実施形態では、液体冷媒として冷却油を用いた例について説明したが、冷却油以外の液体冷媒(例えば、冷却水)を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、例えば、電気自動車の走行駆動源に用いることが可能な回転電機に適している。
【符号の説明】
【0095】
1 回転電機
2 シャフト
3 ロータ
4 ステータ
4a コイルエンド
5 シャフト内通路
8 永久磁石
9 エンドプレート
9a 流出通路
9c 第3流出口(流出口)
40 上流側通路(ロータ内通路)
41 第1上流側通路
42 第2上流側通路
43 第2流入口(流入口)
50 下流側通路(ロータ内通路)
【要約】
【課題】永久磁石を冷却しつつ従来よりもロータの信頼性を高めることが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機1は、永久磁石8を有するロータ3と、ロータ3を回転自在に支持するシャフト2と、シャフト2の内部に設けられたシャフト内通路5から冷却油が流入するロータ内通路と、を備えている。ロータ内通路は、ロータ3の内周面に開口する第2流入口43と、第2流入口43から径方向外側に延びる上流側通路40と、上流側通路40に接続されるとともに軸方向に延びる下流側通路50と、を有し、上流側通路40は、ロータ3の周方向に並べられた第1上流側通路41及び第2上流側通路42を備え、第1上流側通路41の外周端の第1径方向位置R1は、第2上流側通路42の外周端の第2径方向位置R2よりも径方向内側の位置に設定されている。
【選択図】
図4