(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】挿入支援システム、内視鏡システム及び挿入支援システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
A61B1/00 552
A61B1/00 600
(21)【出願番号】P 2023506468
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2021010727
(87)【国際公開番号】W WO2022195746
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】深津 尚希
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩正
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-288822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351608(US,A1)
【文献】特開平06-277178(JP,A)
【文献】特開2019-005038(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016428(WO,A1)
【文献】特開2017-111605(JP,A)
【文献】特開2021-061911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを含み、
前記プロセッサは、
内視鏡を用いた内視鏡検査における、内視鏡画像、内視鏡挿入部の形状の情報である挿入部形状情報、又は、前記内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の変化の情報である操作認識情報のうち少なくとも一つを含む内視鏡状況情報を取得し、
リアルタイムに患者又は医療従事者から取得される前記患者の痛みに関する情報である入力痛み情報、又は、前記内視鏡状況情報のうち少なくとも一方の情報が入力され、前記内視鏡検査において前記患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識して痛み状況情報を取得し、
前記内視鏡検査に用いられる前記内視鏡挿入部の種類の情報である内視鏡種類情報、前記患者の属性に関する情報である患者情報、又は過去の内視鏡検査に関する情報である過去検査情報のうち少なくとも1つ含む検査条件情報を、取得し、
前記痛み状況情報、前記内視鏡状況情報及び前記検査条件情報に応じた挿入支援情報を生成することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記入力痛み情報と前記内視鏡状況情報との両方が入力されたとき、前記入力痛み情報に基づいて前記痛み状況を認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記プロセッサは、
前記内視鏡状況情報が入力されたと共に前記入力痛み情報が入力されていないとき、前記内視鏡状況情報に基づいて前記痛み状況を認識し、前記内視鏡状況情報に基づいて認識された前記痛み状況に応じた前記挿入支援情報を生成し、
前記内視鏡状況情報に加えて前記入力痛み情報が入力されたとき、前記入力痛み情報に基づいて前記痛み状況を認識し、前記入力痛み情報に基づいて認識された前記痛み状況に応じた前記挿入支援情報を生成することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記プロセッサは、
前記内視鏡画像、前記挿入部形状情報、又は前記操作認識情報のうち少なくとも一つに基づいて前記内視鏡の挿入状況を分類し、分類結果を含む前記内視鏡状況情報を出力し、
前記分類結果が示す前記挿入状況が、前記痛みの発生する状況に該当するか否かを認識することで、前記痛み状況を認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項5】
請求項4において、
前記操作認識情報は、前記内視鏡挿入部の形状変位の情報である挿入部形状変位情報を含み、
前記プロセッサは、前記挿入部形状情報と前記挿入部形状変位情報に基づいて、前記分類を行うことを特徴とする挿入支援システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記挿入部形状変位情報は、前記形状変位の大きさの情報である形状変位量情報を含み、
前記プロセッサは、前記挿入部形状情報と前記形状変位量情報とに基づいて、前記分類を行うことを特徴とする挿入支援システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づく前記内視鏡の挿入状況に対応した前記挿入支援情報を生成するとき、前記痛みの発生する状況でないことを示す前記痛み状況情報が入力された場合には前記挿入支援情報として第1挿入支援情報を生成し、前記痛みの発生する状況であることを示す前記痛み状況情報が入力された場合には前記挿入支援情報として、前記第1挿入支援情報とは異なる第2挿入支援情報を生成することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、大腸の腸壁が伸展することで前記痛みが発生する状況、腸間膜が引っ張られることで痛みが発生する状況、前記内視鏡挿入部が前記腸壁を押すことで前記痛みが発生する状況、又は前記大腸の固定結腸と前記内視鏡挿入部の関係により前記痛みが発生する状況を認識することで、前記痛み状況を認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、前記内視鏡のアングル操作によりSDJ付近において脇腹側又は頭側への押し上げ操作が行われた状況を認識したとき、前記痛みが発生している状況であると認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、前記内視鏡のトルク操作とアングル操作によりSDJ付近において頭側への押し上げ操作が行われた状況を認識したとき、前記痛みが発生している状況であると認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項11】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、SDJ付近において前記内視鏡挿入部が屈曲した状態で操作が行われた状況を認識したとき、前記痛みが発生している状況であると認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項12】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、前記内視鏡のループ時において引き操作が行われた状況を認識したとき、前記痛みが発生している状況であると認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項13】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、前記内視鏡挿入部の先端が脾彎曲、横行結腸又は肝彎曲のいずれかに存在し且つS状結腸における再ループが形成されているときに押し操作が行われた状況を認識したとき、前記痛みが発生している状況であると認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項14】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、前記内視鏡挿入部の先端が脾彎曲、横行結腸又は肝彎曲のいずれかに存在し且つS状結腸における再ループ対処時に引き操作が行われた状況を認識したとき、前記痛みが発生している状況であると認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項15】
請求項1において、
前記プロセッサは、前記内視鏡状況情報に基づいて、前記内視鏡の押し操作により脾彎曲から左結腸部が押し上げられた状況を認識したとき、前記痛みが発生している状況であると認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項16】
請求項1において、
前記入力痛み情報は、前記内視鏡検査における前記患者の表情に関する情報である患者表情情報、又は、前記患者又は医療従事者が操作する発信装置からの情報である痛み発信情報のうち少なくとも1つであることを特徴とする挿入支援システム。
【請求項17】
請求項1において、
前記プロセッサは、痛みレベルの異なる状況、痛みの頻度の異なる状況、又は痛みの避けやすさの異なる状況を区別して認識することで、前記痛み状況を認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項18】
請求項1において、
前記プロセッサは、
前記内視鏡検査に用いられる前記内視鏡挿入部の種類の情報である内視鏡種類情報、前記患者の属性に関する情報である患者情報、又は過去の内視鏡検査に関する情報である過去検査情報のうち少なくとも1つ含む検査条件情報を取得し、
前記検査条件情報に基づいて前記痛み状況を認識することを特徴とする挿入支援システム。
【請求項19】
内視鏡検査に用いられる内視鏡と、
プロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
前記内視鏡を用いた前記内視鏡検査における、内視鏡画像、内視鏡挿入部の形状である挿入部形状情報、又は、前記内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の変化の情報である操作認識情報のうち少なくとも一つを含む内視鏡状況情報を取得し、
リアルタイムに患者又は医療従事者から取得される前記患者の痛みに関する情報である入力痛み情報、又は、前記内視鏡状況情報のうち少なくとも一方の情報が入力され、前記内視鏡検査において前記患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識して痛み状況情報を取得し、
前記内視鏡検査に用いられる前記内視鏡挿入部の種類の情報である内視鏡種類情報、前記患者の属性に関する情報である患者情報、又は過去の内視鏡検査に関する情報である過去検査情報のうち少なくとも1つ含む検査条件情報を、取得し、
前記痛み状況情報、前記内視鏡状況情報及び前記検査条件情報に応じた挿入支援情報を生成することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項20】
プロセッサを含む挿入支援システムの作動方法であって、
前記プロセッサが、内視鏡を用いた内視鏡検査における、内視鏡画像、内視鏡挿入部の形状である挿入部形状情報、又は、前記内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の変化の情報である操作認識情報のうち少なくとも一つを含む内視鏡状況情報を取得することと、
前記プロセッサが、リアルタイムに患者又は医療従事者から取得される前記患者の痛みに関する情報である入力痛み情報、又は、前記内視鏡状況情報のうち少なくとも一方の情報が入力され、前記内視鏡検査において前記患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識して痛み状況情報を取得することと、
前記プロセッサが、前記内視鏡検査に用いられる前記内視鏡挿入部の種類の情報である内視鏡種類情報、前記患者の属性に関する情報である患者情報、又は過去の内視鏡検査に関する情報である過去検査情報のうち少なくとも1つ含む検査条件情報を、取得することと、
前記プロセッサが、前記痛み状況情報、前記内視鏡状況情報及び前記検査条件情報に応じた挿入支援情報を生成することと、
を含むことを特徴とする
挿入支援システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入支援システム、内視鏡システム及び挿入支援システムの作動方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内視鏡を用いた大腸検査において操作ガイドを行う技術が開示されている。この技術において、挿入形状観測装置が、大腸に挿入された内視鏡挿入部の形状を観測し、内視鏡が大腸の内視鏡画像を撮影し、挿入支援装置が、内視鏡挿入部の形状と内視鏡画像に基づいて内視鏡挿入部の挿入状況を判定し、その判定結果に基づいて内視鏡の操作ガイドを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡検査において、内視鏡挿入部の操作に応じて患者に痛みが発生する場合がある。特許文献1では、検査を受ける患者の痛みを考慮した操作ガイドが行われていないため、患者に痛みが発生する操作か否かに関わらず操作ガイドが行われ、その操作ガイドに従った操作により患者に痛みが発生する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、内視鏡を用いた内視鏡検査における、内視鏡画像、内視鏡挿入部の形状の情報である挿入部形状情報、又は、前記内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の変化の情報である操作認識情報のうち少なくとも一つを含む内視鏡状況情報を取得する内視鏡状況情報取得部と、リアルタイムに患者又は医療従事者から取得される前記患者の痛みに関する情報である入力痛み情報、又は、前記内視鏡状況情報のうち少なくとも一方の情報が入力され、前記内視鏡検査において前記患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識して痛み状況情報を取得する痛み状況認識部と、前記痛み状況情報と前記内視鏡状況情報とに応じた挿入支援情報を生成する挿入支援情報生成部と、を含む挿入支援システムに関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、内視鏡検査に用いられる内視鏡と、前記内視鏡を用いた前記内視鏡検査における、内視鏡画像、内視鏡挿入部の形状である挿入部形状情報、又は、前記内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の変化の情報である操作認識情報のうち少なくとも一つを含む内視鏡状況情報を取得する内視鏡状況情報取得部と、リアルタイムに患者又は医療従事者から取得される前記患者の痛みに関する情報である入力痛み情報、又は、前記内視鏡状況情報のうち少なくとも一方の情報が入力され、前記内視鏡検査において前記患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識して痛み状況情報を取得する痛み状況認識部と、前記痛み状況情報と前記内視鏡状況情報とに応じた挿入支援情報を生成する挿入支援情報生成部と、を含む内視鏡システムに関係する。
【0007】
本開示の更に他の態様は、内視鏡を用いた内視鏡検査における、内視鏡画像、内視鏡挿入部の形状である挿入部形状情報、又は、前記内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の変化の情報である操作認識情報のうち少なくとも一つを含む内視鏡状況情報を取得することと、リアルタイムに患者又は医療従事者から取得される前記患者の痛みに関する情報である入力痛み情報、又は、前記内視鏡状況情報のうち少なくとも一方の情報が入力され、前記内視鏡検査において前記患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識して痛み状況情報を取得することと、前記痛み状況情報と前記内視鏡状況情報とに応じた挿入支援情報を生成することと、を含む挿入支援方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図15】第1詳細構成例における挿入支援システムが行う処理のフローチャート。
【
図16】痛み状況の認識と、その認識結果に応じた挿入支援情報の生成の具体例を示すフローチャート。
【
図17】痛み状況の認識の具体例を示すフローチャート。
【
図19】第2詳細構成例における挿入支援システムが行う処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.構成例
ここでは、本実施形態における挿入支援システムの基本的な構成例について説明する。挿入支援システムの詳細構成例、及び詳細構成例と基本的な構成例との対応については、後述する。
【0011】
図1は、挿入支援システム100の第1構成例である。挿入支援システム100は、内視鏡状況情報取得部110と痛み状況認識部130と挿入支援情報生成部150とを含む。
【0012】
内視鏡状況情報取得部110は、内視鏡を用いた内視鏡検査における内視鏡状況情報を取得する。内視鏡状況情報は、内視鏡画像、挿入部形状情報又は内視鏡状況情報の少なくとも1つを含む。なお、「内視鏡画像、挿入部形状情報又は内視鏡状況情報の少なくとも1つ」とは、内視鏡画像、挿入部形状情報、内視鏡状況情報、又は、それらのうち任意の2以上の情報の組み合わせである。
【0013】
内視鏡画像は、内視鏡により撮影された画像である。具体的には、内視鏡画像は、内視鏡により撮影された動画の各フレーム画像である。挿入部形状情報は、内視鏡挿入部の形状の情報であり、例えば、後述する挿入部形状観測装置により取得される。内視鏡挿入部は、内視鏡のうち体内に挿入される部分であり、本実施形態においては消化管等に用いられる軟性鏡の挿入部である。操作認識情報は、内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の変化の情報である。即ち、操作認識情報は、内視鏡が操作されたことで生じた、内視鏡挿入部の形状又は位置の少なくとも一方の時間的な変化である。例えば、挿入部形状観測装置が挿入部形状を時々刻々に観測することで、時系列的に挿入部形状情報を出力し、その時系列的に出力された挿入部形状情報の時間変化から操作認識情報が取得される。
【0014】
内視鏡状況情報取得部110は、内視鏡状況情報ESIを出力する。この内視鏡状況情報ESIは、上記において内視鏡状況情報取得部110が取得した内視鏡状況情報そのものであってもよいし、或いは、その取得した内視鏡状況情報に対して処理を施すことで得られる情報であってもよいし、或いは、それらの組み合わせであってもよい。
【0015】
痛み状況認識部130には、入力痛み情報INPN又は内視鏡状況情報ESIの少なくとも一方の情報が入力される。
図1には、痛み状況認識部130に入力痛み情報INPNと内視鏡状況情報ESIの両方が入力される例を図示しているが、痛み状況認識部130に対して、入力痛み情報INPN又は内視鏡状況情報ESIのうち一方が入力されなくてもよい。
【0016】
入力痛み情報INPNは、リアルタイムに患者又は医療従事者から取得される、患者の痛みに関する情報である。患者は、内視鏡を用いた内視鏡検査を受けている患者である。医療従事者は、内視鏡検査を行う医師、又はその補助者など、患者の声又は表情等を認識できる者である。入力痛み情報INPNは、後述するように、例えばスイッチ、表情の画像認識結果、又は音声の認識結果等により取得される。
【0017】
痛み状況認識部130は、内視鏡検査において患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識して痛み状況情報PSIを取得する。痛み状況情報PSIは、痛み状況の認識結果であり、例えば痛み状況の有無、痛みの推定レベル、又は、それらの組み合わせである。「患者に痛みが発生している状況」は、実際に痛みが発生した場合に限らず、痛みの発生が推定される状況であればよい。より具体的には、痛みが発生しやすい状況が予め決められており、内視鏡状況情報ESIに基づいて認識される状況が、その予め決められた状況に合致したとき、「患者に痛みが発生している状況」であると認識される。或いは、入力痛み情報INPNに基づいて痛み状況が認識される場合には、痛みの発生を示す入力痛み情報INPNが入力されたとき、「患者に痛みが発生している状況」であると認識される。この場合においても、入力痛み情報INPNは、痛みの発生が推定される情報であればよい。例えば、患者の表情に基づいて入力痛み情報INPNが入力される場合には、その表情から痛みの発生が推定されていればよい。
【0018】
挿入支援情報生成部150は、痛み状況情報PSIと内視鏡状況情報ESIとに応じた挿入支援情報を生成する。挿入支援情報は、患者への内視鏡の挿入を支援する情報である。具体的には、挿入支援情報は、患者に内視鏡を挿入する操作を行う医療従事者又は挿抜装置に対して提示又は通知される情報であって、現在の挿入状況に対して次にどのような操作を行うべきかを示す情報である。挿入支援システム100は、例えば挿入支援情報に応じた文字、記号又は画像等を内視鏡システムの表示装置に表示させてもよいし、或いは、挿入支援情報が示す動作又は処理を行わせる制御信号を挿抜装置に出力してもよい。
【0019】
本実施形態によれば、内視鏡検査において患者に痛みが発生している状況を考慮した挿入支援情報を生成できる。即ち、本実施形態の挿入支援情報に基づいて医療従事者又は挿抜装置が操作を行うことで、患者に痛みが発生したとき、或いは患者に痛みが発生する前に、患者の痛みが緩和される操作、又は痛みの発生を未然に回避する操作を行うことができる。
【0020】
痛み状況認識部130は、入力痛み情報INPNと内視鏡状況情報ESIとの両方が入力されたとき、入力痛み情報INPNに基づいて痛み状況を認識する。ここでの「入力痛み情報INPNが入力されたとき」は、患者に痛みが発生したことを示す入力痛み情報INPNが入力されたとき、即ち、入力痛み情報INPNに基づいて患者に痛みが発生している状況が認識されたとき、を意味する。
【0021】
具体的には、痛み状況認識部130は、入力痛み情報INPNと内視鏡状況情報ESIとの両方が入力されたとき、内視鏡状況情報ESIに基づく痛み状況の認識結果よりも、入力痛み情報INPNに基づく痛み状況の認識結果を優先する。即ち、痛み状況認識部130は、内視鏡状況情報ESIに基づいて痛みが発生している状況ではないと認識した場合であっても、入力痛み情報INPNに基づいて痛みが発生している状況であると認識した場合には、痛みが発生している状況であることを示す痛み状況情報PSIを出力する。
【0022】
より具体的には、痛み状況認識部130に内視鏡状況情報ESIが入力されたと共に入力痛み情報INPNが入力されていないとき、痛み状況認識部130は、内視鏡状況情報ESIに基づいて痛み状況を認識し、挿入支援情報生成部150は、内視鏡状況情報ESIに基づいて認識された痛み状況に応じた挿入支援情報を生成する。痛み状況認識部130に内視鏡状況情報ESIに加えて入力痛み情報INPNが入力されたとき、痛み状況認識部130は、入力痛み情報INPNに基づいて痛み状況を認識し、挿入支援情報生成部150は、入力痛み情報INPNに基づいて認識された痛み状況に応じた挿入支援情報を生成する。
【0023】
本実施形態によれば、患者又は医療従事者が発した入力痛み情報INPNに基づいて、痛み状況を認識できる。これにより、内視鏡状況情報ESIに基づいて痛み状況が認識されなかった場合であっても、患者又は医療従事者が発した入力痛み情報INPNを優先して痛み状況を認識し、その痛み状況情報PSIを出力できる。例えば、患者の個人差による痛み状況、或いは患者に固有の痛み状況がある場合には、内視鏡状況情報ESIに基づいて痛み状況が認識されない可能性があるが、本実施形態によれば、入力痛み情報INPNを優先することで、それらの痛み状況を認識できる。
【0024】
内視鏡状況情報取得部110は、内視鏡画像、挿入部形状情報又は操作認識情報のうち少なくとも一つに基づいて内視鏡の挿入状況を分類し、その分類結果を含む内視鏡状況情報ESIを出力する。痛み状況認識部130は、分類結果が示す挿入状況が、痛みの発生する状況に該当するか否かを認識することで、痛み状況を認識する。
【0025】
内視鏡の挿入状況とは、内視鏡検査を進める手順において現れる所定の挿入状況であり、例えば所定の挿入部位置、所定の挿入部位置の変化、所定の挿入部形状、所定の挿入部形状の変化、所定の内視鏡操作、又は、それらのうち任意の2以上の組み合わせによって特定される。例えば、大腸内視鏡検査においてループ法及び軸保持短縮法等の挿入方法があるが、各々の挿入方法において挿入手順を進めるときに現れる挿入部形状又は操作等の挿入状況がある。その各挿入状況において次に行うべき操作が決まっており、また、それらの挿入状況のうち特定の挿入状況において、痛みが発生しやすい。
【0026】
内視鏡状況情報取得部110は、内視鏡画像、挿入部形状情報又は操作認識情報のうち少なくとも一つに基づいて、複数の挿入状況のうちいずれの挿入状況に該当するかを判定する。複数の挿入状況は、例えば、挿入支援情報を提示すべき複数の挿入状況と、痛みの発生する複数の挿入状況とを含んでいる。痛み状況認識部130は、判定された挿入状況が、痛みの発生する挿入状況に該当する場合に、痛みが発生している状況であると認識する。挿入支援情報生成部150は、判定された挿入状況において次に行うべき操作を示す挿入支援情報を生成し、その際に、痛み状況が認識されたか否かに応じて挿入支援情報を変更する。
【0027】
本実施形態によれば、内視鏡がどのような挿入状況なのかが分類されるので、痛み状況認識部130は、その挿入状況が、痛みの発生する挿入状況であるか否かを認識することで、痛み状況を認識できる。また、上述のように内視鏡検査において痛みが発生しやすい挿入状況が決まっていることから、その挿入状況を分類の候補としておくことで、痛みの発生する挿入状況であるか否かを判定できるようになる。
【0028】
挿入支援情報生成部150は、内視鏡状況情報ESIに基づく内視鏡の挿入状況に対応した挿入支援情報を生成する。このとき、挿入支援情報生成部150は、痛みの発生する状況でないことを示す痛み状況情報PSIが入力された場合には挿入支援情報として第1挿入支援情報を生成し、痛みの発生する状況であることを示す痛み状況情報PSIが入力された場合には挿入支援情報として第2挿入支援情報を生成する。第2挿入支援情報は、第1挿入支援情報とは異なる。
【0029】
具体的には、第2挿入支援情報が提示する操作は、第1挿入支援情報が提示する操作とは異なる。第1挿入支援情報は、痛み状況でないときの操作、即ち挿入手順における通常の操作を示す。第2挿入支援情報は、痛み状況であるときの操作、即ち上記通常の手順とは異なる痛み緩和操作又は痛み回避操作である。なお、痛み状況の有無だけではなく痛みレベルに応じて異なる挿入支援情報が生成されてもよい。即ち、挿入支援情報生成部150は、痛み状況認識部130が第1痛みレベルの痛み状況を認識したとき、第2挿入支援情報を生成し、痛み状況認識部130が第2痛みレベルの痛み状況を認識したとき、第3挿入支援情報を生成してもよい。第2痛みレベルは第1痛みレベルより高い又は低いレベルであり、第3挿入支援情報は、第1挿入支援情報及び第2挿入支援情報とは異なる。
【0030】
本実施形態によれば、痛みの発生する状況であるか否かに応じて異なる挿入支援情報を生成できる。即ち、痛みの発生していない状況、及び痛みの発生する状況の各々に対して、適切な挿入支援情報を提示することが可能となる。
【0031】
上述した操作認識情報は、内視鏡挿入部の形状変位の情報である挿入部形状変位情報を含んでもよい。この場合において、内視鏡状況情報取得部110は、挿入部形状情報と挿入部形状変位情報に基づいて、上記分類を行う。形状変位は、内視鏡挿入部の形状変化において、その変化前の形状と変化後の形状の変位である。形状変位の情報は、変位方向の情報、変位の大きさの情報、又はそれら両方を含んでもよい。
【0032】
内視鏡が操作されることで内視鏡挿入部の形状が変化するが、このときの形状変位に応じて痛みが発生する場合がある。本実施形態によれば、挿入部形状変位情報に基づいて分類が行われることで、内視鏡挿入部の形状変位に応じて発生した痛み状況を、認識できる。
【0033】
上記のように、挿入部形状変位情報は、形状変位の大きさの情報である形状変位量情報を含んでもよい。内視鏡状況情報取得部110は、挿入部形状情報と形状変位量情報とに基づいて、上記分類を行う。
【0034】
ある挿入状況において、形状変位の大きさが所定値を超えた場合に痛みが発生する場合がある。本実施形態によれば、形状変位量情報に基づいて分類が行われることで、形状変位の大きさが所定値を超えたことに応じて発生した痛み状況を、認識できる。
【0035】
上述した入力痛み情報INPNは、患者表情情報又は痛み発信情報のうち少なくとも1つである。患者表情情報は、内視鏡検査における患者の表情に関する情報である。具体的には、カメラが患者の表情を撮影し、表情認識部が、画像に写る患者の表情が、痛みを感じている表情であるか否かを認識し、その結果を痛み発信情報として出力する。痛み発信情報は、患者又は医療従事者が操作する発信装置からの情報である。具体的には、発信装置は、患者の痛み状況に応じて患者又は医療従事者が操作可能な装置であり、例えばスイッチ又はタッチパネル等である。カメラ、表情認識部及び発信装置の各々は、挿入支援システム100に含まれてもよいし、挿入支援システム100の外部に設けられてもよい。
【0036】
本実施形態によれば、患者の表情、患者の発信、医療従事者の発信、又はそれらのうち任意の2以上の組み合わせに基づいて入力痛み情報INPNを取得でき、上述したように、入力痛み情報INPNに基づいて、痛み状況情報PSIの認識と挿入支援情報の生成とを行うことが可能となる。
【0037】
上述した痛み状況は、痛みの有無だけに限らない。具体的には、痛み状況認識部130は、痛みレベルの異なる状況、痛みの頻度の異なる状況、又は痛みの避けやすさの異なる状況を区別して認識することで、痛み状況を認識してもよい。
【0038】
痛みレベルは、患者に痛みが発生している状況が認識されたとき、その痛み状況において患者が感じる痛みのレベルである。例えば、ある挿入状況における内視鏡挿入部の変位量に応じて痛みレベルが変化する。この場合、変位量に基づいて痛みレベルが判定される。或いは、挿入状況に応じて痛みレベルが変化する場合には、各挿入状況に痛みレベルが対応付けられており、ある挿入状況が検出されたとき、その挿入状況に対応付けられた痛みレベルが出力される。
【0039】
痛みの頻度は、患者が痛みを感じている状況が認識された頻度であり、例えば単位時間当たりに痛み状況が認識された回数である。この頻度は、同じ挿入状況が繰り返される場合の頻度、又は、複数の挿入状況が混在している場合の頻度のいずれであってもよい。例えば、挿入支援システム100が不図示のメモリを含み、痛み状況認識部130が痛み状況情報PSIをメモリに記憶させ、そのメモリに記憶された痛み状況情報PSIを参照することで痛みの頻度を検出する。
【0040】
痛みの避けやすさは、各痛み状況において、痛みを緩和する操作又は痛みを回避する操作が存在するか否かに応じて決まる。例えば、ある挿入状況において、痛みを緩和する操作又は痛みを回避する操作が存在しない場合には、痛みの避けやすさの程度は低い。また、ある挿入状況において、痛みを回避する操作が存在する場合には、痛みの避けやすさの程度は高い。また、ある挿入状況において、痛みを緩和する操作が存在するが、痛みを回避する操作が存在しない場合には、痛みの避けやすさは中程度である。痛み状況認識部130は、例えば、ある痛み状況を認識したとき、その痛み状況に対応付けられた挿入支援情報を参照することで、その痛み状況において選択可能な操作を知ることができる。
【0041】
図2は、挿入支援システム100の第2構成例である。
図2では、挿入支援システム100は検査条件情報取得部160を更に含む。なお、既に説明した構成要素と同じ構成要素については、その説明を適宜に省略する。
【0042】
検査条件情報取得部160は、内視鏡種類情報、患者情報又は過去検査情報のうち少なくとも1つを含む検査条件情報を取得する。内視鏡種類情報は、内視鏡検査に用いられる内視鏡挿入部の種類の情報である。患者情報は、患者の属性に関する情報である。過去検査情報は、過去の内視鏡検査に関する情報である。挿入支援情報生成部150は、検査条件情報に基づいて挿入支援情報を生成する。また、痛み状況認識部130は、検査条件情報に基づいて痛み状況を認識する。
【0043】
内視鏡挿入部は、内視鏡の種類に応じて太さ又は固さ等の物理的な特性が異なる。例えば、内視鏡は、その型式を示すIDを記憶しており、そのIDを取得することで内視鏡種類情報を取得できる。内視鏡挿入部の太さ又は固さ等の物理的な特性に応じて、痛み状況の発生のしやすさ又は痛みレベル等が変化する。内視鏡種類情報が取得されることで、痛み状況認識部130が、内視鏡挿入部の太さ又は固さ等の物理的な特性に応じて、適切に痛み状況を認識できるようになる。
【0044】
患者情報は、例えば患者の性別、体格、体型又は病歴等の情報である。例えば、後述するように、電子カルテに保存された情報から患者情報を取得できる。或いは、医療従事者が挿入支援システム100に患者情報を入力してもよい。患者の性別、体格、体型又は病歴等に応じて、痛み状況の発生のしやすさ又は痛みレベル等が変化する。患者情報が取得されることで、痛み状況認識部130が、患者の性別、体格、体型又は病歴等に応じて、適切に痛み状況を認識できるようになる。
【0045】
過去検査情報は、今回の検査対象である部位と同じ部位に関する過去の検査情報であり、例えば、発生した痛み状況、そのとき提示した挿入支援情報、又はそれら両方の情報である。過去検査情報は、今回検査される患者と同じ患者から過去に取得された検査情報であってもよいし、複数の患者から過去に取得された検査情報であってもよい。例えば、痛み状況認識部130が出力した痛み状況情報PSIと、挿入支援情報生成部150が生成した挿入支援情報とを、ログとして不図示のメモリに記録しておき、その過去に記録されたログを参照することで、過去検査情報を取得できる。
【0046】
なお、以上に説明した挿入支援システム100の処理は、以下のように挿入支援方法として実施されてもよい。挿入支援方法の実施主体は挿入支援システム100に限らず、後述する内視鏡システム等、様々なシステム又は装置であってよい。挿入支援方法は、内視鏡状況情報ESIを取得することと、入力痛み情報INPN又は内視鏡状況情報ESIのうち少なくとも一方の情報が入力され、痛み状況を認識して痛み状況情報PSIを取得することと、痛み状況情報PSIと内視鏡状況情報ESIとに応じた挿入支援情報を生成することと、を含む。
【0047】
また、以上に説明した挿入支援システム100の処理の一部又は全部が、プログラムによって実現されてもよい。その場合、挿入支援システム100は下記のように構成されてもよい。
【0048】
挿入支援システム100は、情報を記憶するメモリと、メモリに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プログラムには、内視鏡状況情報取得部110、痛み状況認識部130、挿入支援情報生成部150及び検査条件情報取得部160の一部又は全部の機能が記述される。プロセッサは、そのプログラムを実行することで、内視鏡状況情報取得部110、痛み状況認識部130、挿入支援情報生成部150及び検査条件情報取得部160の一部又は全部の機能を実現する。
【0049】
プロセッサはハードウェアを含み、そのハードウェアは、デジタル信号を処理する回路及びアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、プロセッサは、回路基板に実装された1又は複数の回路装置や、1又は複数の回路素子で構成することができる。1又は複数の回路装置は例えばIC等である。1又は複数の回路素子は例えば抵抗、キャパシター等である。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)であってもよい。ただし、プロセッサはCPUに限定されるものではなく、GPU(Graphics Processing Unit)、或いはDSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサを用いることが可能である。またプロセッサはASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路装置でもよい。またプロセッサは、アナログ信号を処理するアンプ回路やフィルタ回路等を含んでもよい。メモリは、SRAM、DRAMなどの半導体メモリであってもよいし、レジスターであってもよいし、ハードディスク装置等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサにより実行されることで、挿入支援システム100の各部の機能が処理として実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0050】
また、上記プログラムは、例えばコンピュータにより読み取り可能な媒体である非一時的な情報記憶媒体に格納できる。情報記憶媒体は、例えば光ディスク、メモリカード、HDD、或いは半導体メモリなどにより実現できる。半導体メモリは例えばROM又は不揮発性メモリである。
【0051】
2.内視鏡システム
以下、詳細構成例を説明する。
図3は、挿入支援システム100を含む内視鏡システム400の構成例である。内視鏡システム400は、内視鏡装置300と挿入形状観測装置200とを含む。
【0052】
内視鏡装置300は、内視鏡10と光源装置330と信号処理装置310と表示装置320とを含む。内視鏡10はスコープとも呼ばれ、患者の体内に挿入され、患者の体内を撮影する。光源装置330は照明光の発生と制御を行い、その照明光が内視鏡10の先端までライトガイドにより導光され、内視鏡10の先端から出射される。信号処理装置310は、内視鏡10が出力する画像信号を処理することで内視鏡画像を生成する。また信号処理装置310は、内視鏡10のID等を内視鏡種類情報として取得する。表示装置320は、信号処理装置310が生成した内視鏡画像を表示する。
【0053】
挿入形状観測装置200は、内視鏡形状取得センサ20と本体装置210と表示装置220とを含む。内視鏡形状取得センサ20は、内視鏡挿入部に設けられたソースコイルの磁界を検出する。本体装置210は、内視鏡形状取得センサ20からの検出信号に基づいて内視鏡挿入部の位置と形状を取得し、内視鏡挿入部の位置と形状を示す画像を表示装置220に出力する。表示装置220は、本体装置210が出力した画像を表示する。表示装置220と表示装置320はモニターとも呼ばれ、液晶表示装置等である。なお、内視鏡システム400に1つの表示装置が設けられ、内視鏡装置300と挿入形状観測装置200が、その1つの表示装置を共有してもよい。
【0054】
挿入支援システム100は、本体装置210に設けられる。挿入支援システム100には、信号処理装置310からの内視鏡画像と内視鏡種類情報、及び本体装置210が取得した内視鏡挿入部の位置と形状の情報等が入力される。なお、挿入支援システム100は内視鏡システム400内のどこに設けられてもよい。
【0055】
図4は、内視鏡10と内視鏡形状取得センサ20の構成例である。
図4に示すように、内視鏡10は、操作部12と内視鏡挿入部14とソースコイル18とを含む。
【0056】
内視鏡挿入部14は可撓性のある細長い形状を有しており、その先端に設けられる硬質部16と、アングル操作可能な湾曲部15とを含む。硬質部16には撮像装置、照明レンズ、送水口、送気口及び鉗子口等が設けられる。
【0057】
操作部12は、ユーザが内視鏡10を操作するための装置であり、例えば把持部、アングル操作ダイヤル、及び送気送水ボタン等を含む。
図5に、内視鏡操作の説明図を示す。A1に示すように、ユーザが把持部を内視鏡挿入部14の長手方向に押すことで、内視鏡挿入部14が挿入される。これを、押し操作と呼ぶ。また、ユーザが把持部を内視鏡挿入部14の長手方向に引くことで、内視鏡挿入部14が引き抜かれる。これを、引き操作と呼ぶ。A2に示すように、ユーザが把持部を内視鏡挿入部14の円周方向に回すことで、内視鏡挿入部14が円周方向に回転する。これを、トルク操作と呼ぶ。把持部から内視鏡挿入部14の方向に見たとき、時計回りのトルク操作を右トルク操作と呼び、反時計回りのトルク操作を左トルク操作と呼ぶ。A3とA4に示すように、ユーザがアングル操作ダイヤルを操作することで、内視鏡挿入部14の湾曲部15が上下左右に屈曲する。これを、アングル操作と呼ぶ。上下方向のアングル操作と、左右方向のアングル操作は、各々独立に操作可能である。
【0058】
ソースコイル18は、磁界を発生する。例えば、複数のソースコイル18が所定間隔で内視鏡挿入部14に設けられる。内視鏡形状取得センサ20は、各ソースコイル18からの磁界を検出し、挿入形状観測装置200の本体装置210が、その検出信号に基づいて各ソースコイル18の位置を検出することで、内視鏡挿入部14の各部の位置を検出する。また本体装置210は、検出された複数のソースコイル18の位置に基づいて、内視鏡挿入部14の形状を検出する。なお、挿入形状観測のセンシング方式は、磁界を用いた方式に限定されず、例えば電磁波、超音波又は光等を用いた方式であってもよい。
【0059】
3.挿入支援システムの第1詳細構成例
図6は、挿入支援システム100の第1詳細構成例である。挿入支援システム100は、情報取得部140と状況認識部
120と挿入支援情報生成部150とを含む。本構成例において、例えば、情報取得部140の一部と直近状況判定部121が、
図1と
図2の内視鏡状況情報取得部110に対応し、情報取得部140の一部と時系列状況判定部122が、
図2の検査条件情報取得部160に対応する。なお、既に説明した構成要素と同じ構成要素については、その説明を適宜に省略する。
【0060】
情報取得部140は、痛み状況の認識に用いられる様々な情報IFINを取得する。情報IFINは、例えば、内視鏡画像、挿入部形状情報、入力痛み情報、内視鏡種類情報、患者情報、過去検査情報、又はそれらのうち任意の2以上の組み合わせである。
【0061】
状況認識部120は、情報IFINから直近状況、時系列状況及び痛み状況を認識し、直近状況情報TYK、時系列状況情報JIK及び痛み状況情報PSIを出力する。状況認識部120は、直近状況判定部121と時系列状況判定部122と痛み状況認識部130とを含む。
【0062】
直近状況判定部121は、内視鏡画像又は挿入部形状情報等の情報から現在の内視鏡の挿入状況を認識し、その結果を直近状況情報TYKとして出力する。「現在」は、現在の瞬間だけでなく、現在を含む直近の時間を含む。直近の時間は、例えば、現在行われている操作又は操作手順が、一連の挿入部の動きによって特定されるとき、その一連の挿入部の動きを認識できる程度の長さであればよい。
【0063】
時系列状況判定部122は、過去検査情報等の情報から、過去の状況認識結果も含めて時系列的に挿入状況を認識し、その結果を時系列状況情報JIKとして出力する。「過去」は、上記「直近の時間」よりも前であり、今回の内視鏡検査内、又は前回以前の内視鏡検査のいずれであってもよい。
【0064】
痛み状況認識部130は、直近状況情報TYKと時系列状況情報JIKから、痛みが発生しやすい状況又は痛みが発生した状況を認識し、その結果を痛み状況情報PSIとして出力する。痛み状況認識部130は、直近状況情報TYKだけでなく時系列状況情報JIKを用いることで、過去の認識結果に基づく現在の痛み状況も判定する。
【0065】
挿入支援情報生成部150は、直近状況情報TYK、時系列状況情報JIK及び痛み状況情報PSIに基づいて、それらの情報が示す状況に適した挿入支援情報を生成する。状況に適したガイドが提示されることで、痛みの少ない内視鏡挿入の支援が実現される。
【0066】
状況認識部120は、一例としては、ニューラルネットワーク等を用いた機械学習により実現される。具体的には、不図示のメモリは、推論アルゴリズムが記述されたプログラムと、その推論アルゴリズムに用いられるパラメータと、を学習済みモデルの情報として記憶する。そして、プロセッサは、学習済みモデルの情報に基づく処理を行う。即ち、プロセッサは、メモリに記憶されたパラメータを用いて、プログラムを実行することで、状況認識部120の処理を実行する。なお、状況認識部120の全体が1つの学習済みモデルにより実現されてもよいし、直近状況判定部121、時系列状況判定部122及び痛み状況認識部130の各々が、個別の学習済みモデルにより実現されてもよい。また、直近状況判定部121、時系列状況判定部122及び痛み状況認識部130のうち一部のみが学習済みモデルにより実現されてもよい。
【0067】
推論アルゴリズムとしては、例えばニューラルネットワークを採用できる。ニューラルネットワークにおけるノード間接続の重み係数がパラメータである。ニューラルネットワークは、入力データが入力される入力層と、入力層を通じて入力されたデータに対し演算処理を行う中間層と、中間層から出力される演算結果に基づいて認識結果を出力する出力層と、を含む。推論アルゴリズムはニューラルネットワークに限らず、認識処理に用いられる様々な機械学習技術を採用できる。状況認識部120の全体が1つの学習済みモデルにより実現される場合を例に、学習処理について説明する。この場合、入力データは情報IFINであり、認識結果は、直近状況情報TYK、時系列状況情報JIK及び痛み状況情報PSIである。学習処理を実行する学習装置は例えばPC等の情報処理装置である。学習装置は、教師データを学習モデルに入力し、その認識結果に基づいて学習モデルにフィードバックを行うことで、学習済みモデルを生成する。教師データは、複数セットのデータを含み、各セットは、入力データと正解データとを含む。正解データは、入力データに対して得られるべき認識結果であり、予め医療従事者等により用意される。
【0068】
以下、挿入支援システム100を大腸内視鏡に適用する例を説明するが、挿入支援システム100の適用対象は大腸内視鏡に限定されない。
【0069】
直近状況情報TYKの例(a)~(c)と、時系列状況情報JIKの例(d)を示す。
【0070】
(a)直近状況判定部121は、内視鏡画像に対する画像認識処理を行うことで、下記の情報を取得する。
【0071】
a1:内視鏡挿入部が存在する部位。
図7は、大腸の部位の説明図である。大腸の部位は、盲腸から肛門までの間に、上行結腸、肝彎曲、横行結腸、脾彎曲、下行結腸、SDJ、S状結腸、及び直腸がある。肝彎曲付近は右結腸部とも呼ばれ、脾彎曲付近は左結腸部とも呼ばれる。SDJは、Sigmoid Descending colon Junctionの略であり、S状結腸と下行結腸の境界部分である。部位に応じて画像の特徴が異なることを利用して、部位が画像から認識される。なお、内視鏡挿入部のうち患者に挿入されている部分の長さを、挿入部形状情報から取得可能であるが、この挿入長からも部位を推定可能である。
【0072】
a2:至適距離、土管状、赤玉、又は残渣。至適距離と土管状は、軸保持短縮法における挿入部先端と腸壁との距離である。至適距離は、吸気、押し操作又は引き操作によって作り出すことができ、アングル操作、トルク操作、又はそれら両方でヒダをめくることができる最適な挿入部と腸壁との距離である。至適距離が実現されることで、ヒダを超える際に押し操作が不要となり、押し操作による痛みの発生を抑えることができる。土管状とは、至適距離ではない状態であり、挿入部先端と腸壁が遠い状態である。赤玉は、挿入部先端が腸壁粘膜に接触している状態であり、その接触により画像が粘膜の赤色になった状態である。残渣は、腸壁に水等が残った状態である。
【0073】
a3:腸の動き。腸の動きは、進退、平行移動、回転、又は蠕動運動である。進退は、内視鏡挿入部と腸管が相対的に光軸方向に動くことである。並行移動は、内視鏡挿入部と腸管が相対的に、光軸方向に直交する方向に動くことである。回転は、内視鏡挿入部と腸管が相対的に、光軸方向を中心軸として回転することである。蠕動運動は、大腸が内容物を移送するために行う運動である。
【0074】
a4:吸引、又は送気。吸引は、大腸内の気体を吸引することである。吸引により挿入部先端に腸壁が引き寄せられる。送気は、大腸内に気体を送ることである。送気により大腸が膨らみ、挿入部先端から腸壁が離れる。
【0075】
(b)直近状況判定部121は、挿入部形状情報に対する認識処理を行うことで、下記の情報を取得する。
【0076】
b1:内視鏡挿入部の形状。ここでの「形状」は、現在等の、ある瞬間における形状である。
【0077】
b2:ループ法におけるループの種類。また、ループ法実施中、実施前及び実施後における内視鏡挿入部の形状遷移。ループの種類は、Nループ、αループ、逆αループ又はγループであり、内視鏡挿入部が形成するループ形状により識別される。
図8は、内視鏡挿入部の形状遷移の例である。ここではNループ解除時の形状遷移を例に説明する。ループ法は、内視鏡挿入部を、S状結腸を通過させる際に用いられる。Nループが形成されているとき、内視鏡挿入部は略N字形をしている。引き操作が行われることでNループが徐々に解除されていき、解除されると内視鏡挿入部が略直線状になる。解除途中においては、内視鏡挿入部は、略N字型と略直線状の中間の形状になる。この形状遷移を認識することで、Nループが適切に解除されたことを認識できる。
【0078】
b3:軸保持短縮法実施中、実施前及び実施後における内視鏡挿入部の形状遷移。軸保持短縮法は、内視鏡挿入部を、S状結腸を通過させる際に用いられる。軸保持短縮法は、アングル操作により腸壁のヒダを乗り越え、トルク操作によりヒダを折りたたみ、それらを繰り返すことでS状結腸を通過する。これらの操作により生じた形状遷移が検出される。
【0079】
b4:横行結腸操作実施中における内視鏡挿入部の形状遷移。横行結腸操作は横行結腸ミットトランスのショートニングである。ループ法等と同様に、横行結腸操作の操作により生じた形状遷移が検出される。
【0080】
b5:内視鏡挿入部のたわみ、又は内視鏡挿入部による腸壁の伸展。内視鏡挿入部のたわみは、押し操作が行われたとき、挿入部先端が動かずに挿入部途中がたわむことである。内視鏡挿入部による腸壁の伸展は、大腸の自由結腸を内視鏡挿入部が押すことで、その押された部分と大腸の固定結腸との間の腸壁が伸展することである。
図7において、自由結腸はS状結腸及び横行結腸であり、固定結腸は直腸、上行結腸及び下行結腸である。
【0081】
(c)直近状況判定部121は、内視鏡挿入部の形状変位に基づいて、下記の操作認識情報を取得する。
【0082】
c1:軸保持短縮法、ループ法又はショートニングの実施時において、押し操作、引き操作、トルク操作又はアングル操作の実施可否。内視鏡挿入部の変位方向、変位量又はそれら両方に基づいて、その操作が実施されたとき又は継続されたときに痛みが発生するか否かが判定される。
【0083】
(d)時系列状況判定部122は、過去検査情報に基づいて、下記の情報を取得する。
【0084】
d1:過去に生成された、挿入支援情報、画像認識結果、形状認識結果又は操作認識情報。記憶装置に蓄積された過去検査情報を取得することで、これらの情報が取得される。
【0085】
次に、上記の直近状況情報TYKと時系列状況情報JIKに基づいて認識される痛み状況について説明する。
【0086】
痛み状況認識部130は、内視鏡状況情報ESIに基づいて、大腸の腸壁が伸展することで痛みが発生する状況、腸間膜が引っ張られることで痛みが発生する状況、内視鏡挿入部が腸壁を押すことで痛みが発生する状況、又は大腸の固定結腸と内視鏡挿入部の関係により痛みが発生する状況を認識することで、痛み状況を認識する。「大腸の固定結腸と内視鏡挿入部の関係」とは、内視鏡操作によって内視鏡挿入部が固定結腸を押す又は引っ張る関係となっていることである。なお、この関係は、力の見積もりではなく内視鏡挿入部の位置、形状、位置変位、又は形状変位等から推定される。
【0087】
上記4つの状況は、大腸内視鏡検査において患者に痛みが発生する主な挿入状況である。痛み状況認識部130が、これらの挿入状況を認識することで、患者に痛みが発生している状況である痛み状況を認識できる。
【0088】
痛み状況の具体的な例(1)~(23)を示す。
【0089】
(1)ループでないときに押し操作が行われた状況。本痛み状況は、ループが形成されていないときに、押し操作により腸壁が伸展する挿入状況である。
【0090】
(2)逆αループ時に右トルク操作が行われた状況。逆αループは左トルク操作により解除されるが、逆に右トルク操作が行われた場合にはループが解除されず、痛みが発生する可能性がある。この右トルク操作により逆αループが解除されない挿入状況が、本痛み状況である。
【0091】
(3)ループ時において押し操作が行われた状況。本痛み状況は、Nループが形成されているときに、押し操作により腸壁が伸展する挿入状況である。
【0092】
(4)内視鏡のアングル操作によりSDJ付近において脇腹側又は頭側への押し上げ操作が行われた状況。
図9に、本痛み状況の説明図を示す。SDJはS状結腸と下行結腸の境界付近であるため、SDJ付近において押し上げが発生したとき、固定結腸である下行結腸が押されるため、痛みが発生する可能性がある。内視鏡挿入部14に設けられたソースコイル18の位置は、内視鏡形状取得センサ20の位置を基準として検出される。このため、患者と内視鏡形状取得センサ20との相対的な位置関係に基づいて、検出された挿入部形状における脇腹側の方向と頭側の方向を決定できる。
【0093】
(5)内視鏡のトルク操作とアングル操作によりSDJ付近において頭側への押し上げ操作が行われた状況。(4)と同様に、固定結腸である下行結腸が押されるため、痛みが発生する可能性がある。
【0094】
(6)SDJ付近において内視鏡挿入部が屈曲した状態で操作が行われた状況。本痛み状況は、固定結腸の近くであるSDJ付近において操作が行われたことで、固定結腸が押される挿入状況である。例えば、Nループ形成時等において、アングルがついた状態で操作が行われた状況等である。
【0095】
(7)内視鏡のループ時において引き操作が行われた状況。
図10に、本痛み状況の説明図を示す。ここではαループを例に説明するが、他のループであってもよい。αループは右トルク操作により解除される。αループ形成時に引き操作が行われたとき、ループは解除されず、痛みが発生する可能性がある。
【0096】
(8)ループではないときに引き操作が行われた状況。本痛み状況は、ループが形成されていないときの引き操作において、引きすぎ又は誤った方向に引いた挿入状況である。
【0097】
(9)癒着があるときに操作が行われた状況。本痛み状況は、引き操作において内視鏡挿入部の一部が腸壁に引っかかり、動かない挿入状況である。その引っかかった腸壁の部分において癒着が疑われる。例えば内視鏡挿入部の先端が癒着部分に引っかかる。このとき、引き操作において先端が動かず、他の部分の形状が変化する。或いは、内視鏡画像が変化しない。これらを認識することで、本痛み状況を認識できる。
【0098】
(10)押し操作又は引き操作により、固定結腸と自由結腸の境界付近に対して押し上げ操作が行われた状況。固定結腸と自由結腸の境界は、SDJ又は脾彎曲である。(4)と同様に固定結腸が押されるため、痛みが発生する可能性がある。
【0099】
(11)脾彎曲の押し操作が行われた状況。脾彎曲の頭側に横隔膜があるため、押し操作により脾彎曲が横隔膜に押し当てられることで、痛みが発生する可能性がある。
【0100】
(12)内視鏡挿入部の先端が脾彎曲、横行結腸又は肝彎曲のいずれかに存在し、且つS状結腸における再ループが形成されているときに押し操作が行われた状況。
図11に、本痛み状況の説明図を示す。ここでは、内視鏡挿入部の先端が脾彎曲に存在する例を示す。脾彎曲を通過させるために押し操作を行ったとき、脾彎曲に挿入部先端が引っかかった状態で、S状結腸付近の挿入部がたわむ場合がある。このS状結腸付近において挿入部がたわんだ部分を再ループと呼ぶ。この状況において一定以上の押し操作を行うと再ループがふくらむことで腸壁の伸展が生じる。内視鏡挿入部の先端が動かず、且つ再ループが一定以上変位したことを認識することで、本痛み状況を認識できる。
【0101】
(13)内視鏡挿入部の先端が脾彎曲、横行結腸又は肝彎曲のいずれかに存在し、且つS状結腸における再ループ対処時に引き操作が行われた状況。
図12に、本痛み状況の説明図を示す。ここでは、内視鏡挿入部の先端が脾彎曲に存在する例を示す。再ループは引き操作により解除されるが、挿入部先端の屈曲が下行結腸上端に引っかかった状態で引き操作が行われた場合、痛みが発生する可能性がある。(12)と同様に挿入部先端の動きと、その他の部分の動きとの差によって、本痛み状況を認識できる。
【0102】
(14)内視鏡の押し操作により脾彎曲から左結腸部が押し上げられた状況。
図13に、本痛み状況の説明図を示す。内視鏡挿入部が脾彎曲に当たった状態で押し操作が行われることで、脾彎曲が押し上げられる。これにより、左結腸部の伸展又は横隔膜への押し当てが生じる可能性がある。
【0103】
(15)ショートニング操作により、下行結腸から脾彎曲の肛門側への引き下げ、又は右結腸部の頭側への跳ね上げが生じた状況。ミットトランスのショートニングにおいて引き操作が行われたとき、右結腸部の挿入部先端が頭側に上がり、脾彎曲付近の挿入部が肛門側に下がる。これにより、固定結腸である上行結腸が引っ張られる、又は固定結腸である下行結腸が押されることで、痛みが発生する可能性がある。
【0104】
(16)ミットトランス挿入時において、押し操作により脾彎曲が頭側に押し上げられる状況。横行結腸の垂れ下がったところに内視鏡挿入部があるとき、押し操作により脾彎曲付近の挿入部が頭側にたわみ、脾彎曲が押し上げられる可能性がある。
【0105】
(17)ショートニング操作中において、アングル操作により右結腸部が左脇腹側に引っ張られる状況。
【0106】
(18)アングル操作により肝彎曲が押し上げられる状況。
【0107】
(19)押し操作により肝彎曲が押し上げられる状況。
【0108】
(20)内視鏡挿入部の先端が肝彎曲にある時に、押し操作により脾彎曲が押し上げられる状況。
【0109】
(21)肝彎曲到達後において、引き操作により脾彎曲が肛門側へ引っ張られる状況。
【0110】
(22)脾彎曲における引き操作により脾彎曲が肛門側へ引っ張られる状況。
【0111】
(23)送気により腸管が膨張する状況。
【0112】
なお、痛み状況認識部130は、各状況において、変位量が所定値を超えたときに痛み状況であると認識してもよい。
図14に示すように、上記(3)の状況において、Nループが検出され、且つループ凸部分の変位量が所定値以上であるとき、痛み状況であると判定してもよい。変位量に応じて伸展の度合いが変化することから、一定以上の伸展が生じる変位量となったときに、痛み状況が認識される。
【0113】
また、痛み状況認識部130は、各状況において、変位量に基づいて痛みレベルを判定してもよい。例えば
図14において、ループ凸部分の変位量が第1所定値以上であるとき、第1痛みレベルであると判定し、ループ凸部分の変位量が第2所定値であるとき、第2痛みレベルであると判定してもよい。第2所定値が第1所定値より大きいとき、第2痛みレベルは第1痛みレベルより痛みが強いことを示す。
【0114】
図15は、第1詳細構成例における挿入支援システム100が行う処理のフローチャートである。なお、本フローチャートにおいて、ステップS7で生成される挿入支援情報が、
図1で説明した、痛み状況でないときに生成される第1挿入支援情報に対応する。また、ステップS8で生成される挿入支援情報が、
図1で説明した、痛み状況であるときに生成される第2挿入支援情報に対応する。
【0115】
ステップS1において、情報取得部140が情報IFINを取得する。ステップS2において、直近状況判定部121と時系列状況判定部122が、情報IFINに基づいて内視鏡の挿入状況を判定する。ステップS3とS4において、痛み状況認識部130は、直近状況情報TYKと時系列状況情報JIKに基づいて、痛み状況の有無を判定する。
【0116】
ステップS4において、痛み状況認識部130が痛み状況有りと判定したとき、ステップS5において、痛み状況認識部130が、ステップS2で判定された挿入状況に基づいて、痛みの種類と痛みレベルを判定する。また痛み状況認識部130は、ステップS2で判定された挿入状況に基づいて、痛みの頻度と痛み発生時間を判定する。またステップS6において、ステップS2で判定された挿入状況に基づいて、過去に発生した痛み状況を取得する。ステップS7において、挿入支援情報生成部150は、ステップS5とS6で痛み状況認識部130が認識した痛み状況に基づいて、挿入支援情報を生成する。ここでの挿入支援情報は、痛みを低減する操作、又は痛みを回避する操作を示す情報である。ステップS8において、挿入支援情報生成部150は、生成した挿入支援情報を表示装置等に出力することで、挿入支援情報を提示する。
【0117】
痛みの種類は、上述した痛み状況(1)~(23)である。痛みを低減する操作、又は痛みを回避する操作は、例えば、痛みが発生した条件又は痛みが発生しそうな条件に当てはまる操作とは逆の操作、又は、操作支援者による用手圧迫、又は、患者の体位変換等である。一例として、上述した(3)において、Nループ時の押し操作により痛み状況となったとき、引き操作又は用手圧迫を提示する。
【0118】
ステップS7において、挿入支援情報生成部150は、発生した痛みの種類又は痛みレベルに応じて、提示する操作の内容を変える。また、挿入支援情報生成部150は、過去に同じ痛みが何回発生したか、過去に同じ痛みがどのくらいの時間発生したか、過去に違う痛みが発生しているかに応じて、提示する操作の内容を変える。また、挿入支援情報生成部150は、痛みの回数が多い場合には、スコープの変更、術者の変更、又は検査の中止を提示してもよい。また、これらの痛みの情報は電子カルテに記録されてもよい。
【0119】
ステップS4において、痛み状況認識部130が痛み状況無しと判定したとき、ステップS9において、ステップS2で判定された挿入状況に基づいて、過去に発生した痛み状況を取得する。ステップS10において、挿入支援情報生成部150は、ステップS9で痛み状況認識部130が認識した痛み状況に基づいて、挿入支援情報を生成する。ここでの挿入支援情報は、通常操作、痛みが発生しにくい操作、又は痛みの発生を未然に回避する操作を示す情報である。ステップS11において、挿入支援情報生成部150は、生成した挿入支援情報を表示装置等に出力することで、挿入支援情報を提示する。
【0120】
痛みが発生しにくい操作、又は痛みの発生を未然に回避する操作は、例えば、軸保持短縮法といった腸を伸ばさない手法である。
【0121】
ステップS9において、挿入支援情報生成部150は、現在痛みがない状況であっても、その挿入状況において過去に痛みがあった場合には、その痛みが起きないような操作の挿入支援情報に変更する。
【0122】
図16は、痛み状況の認識と、その認識結果に応じた挿入支援情報の生成の具体例を示すフローチャートである。ここでは、軸保持短縮法を例に説明するが、各挿入法又は上述した痛み状況(1)~(23)の各々に対応した処理フローを設定しておく。
【0123】
ステップS61において、直近状況判定部121は情報IFINに基づいて至適距離であるか否かを判定する。
【0124】
ステップS61において、直近状況判定部121が至適距離であると判定したとき、ステップS62において、痛み状況認識部130は、直近状況判定部121と時系列状況判定部122が認識した挿入状況に基づいて、痛み状況であるか否かを判定する。ステップS62において、痛み状況認識部130が痛み状況でないと判定したとき、ステップS63において、挿入支援情報生成部150は、右トルク操作を示す挿入支援情報を生成する。ステップS62において、痛み状況認識部130が痛み状況であると判定したとき、ステップS64において、挿入支援情報生成部150は、痛みの種類又は過去の痛み状況等に応じた内容の挿入支援情報を生成する。
【0125】
ステップS61において、直近状況判定部121が至適距離でないと判定したとき、ステップS65において、痛み状況認識部130は、直近状況判定部121と時系列状況判定部122が認識した挿入状況に基づいて、痛み状況であるか否かを判定する。ステップS65において、痛み状況認識部130が痛み状況でないと判定したとき、ステップS66において、挿入支援情報生成部150は、引き操作を示す挿入支援情報を生成する。ステップS65とS67において、痛み状況認識部130が、ループではないときに引き操作が行われた痛み状況であると判定したとき、ステップS68とS69において、痛み状況認識部130は、引き操作では至適距離にできないと判断すると共に、押し操作で至適距離にできるが押し操作では痛みが発生する可能性があると判断する。ステップS70において、挿入支援情報生成部150は、用手圧迫と押し操作の併用を示す挿入支援情報を生成する。
【0126】
図17は、痛み状況の認識の具体例を示すフローチャートである。ここでは、
図23に示すように、S状結腸において伸展が生じる痛み状況を例に説明する。
【0127】
ステップS31において、直近状況判定部121は、内視鏡画像と挿入部形状情報に基づいて、内視鏡挿入部が存在する部位を判定する。具体的には、直近状況判定部121は、内視鏡画像に対する画像認識と、挿入部形状情報に対する形状認識とを行い、画像認識結果と形状認識結果とに基づいて、内視鏡挿入部が存在する部位を判定する。
【0128】
ステップS31において、直近状況判定部121が、内視鏡挿入部がS状結腸以外に存在すると判定したとき、ステップS32において、痛み状況認識部130は他部位の痛み状況であると判断する。
【0129】
ステップS31において、直近状況判定部121が、内視鏡挿入部がS状結腸に存在すると判定したとき、ステップS33において、直近状況判定部121は、内視鏡挿入部が伸展形状であるか否かを判定する。ここでの伸展形状は、
図23に示すように、頭側に凸で且つ左脇腹側に屈曲したステッキ形状である。
【0130】
ステップS33において、直近状況判定部121が伸展形状でないと判定したとき、ステップS34において、痛み状況認識部130は、他種の痛み状況であると判断する。
【0131】
ステップS33において、直近状況判定部121が伸展形状であると判定したとき、ステップS35において、直近状況判定部121は、伸展が発生したか否かを判定する。具体的には、直近状況判定部121は、内視鏡挿入部が伸展形状を保ったまま頭側に変位していること、直近の認識情報から伸展を認識した区間において内視鏡画像が停止又は後退していること、又は、それらの両方に基づいて、伸展を判定する。
【0132】
ステップS35において、直近状況判定部121が、伸展が発生していないと判定したとき、ステップS36において、痛み状況認識部130は、伸展による痛み状況が発生していないと判断する。
【0133】
ステップS35において、直近状況判定部121が、伸展が発生したと判定したとき、ステップS37において、痛み状況認識部130は、伸展が閾値を超えたか否かを判定する。具体的には、痛み状況認識部130は、
図23に示すように、内視鏡挿入部の凸部分の変位量が閾値を超えたか否かを判定する。
【0134】
ステップS37において、痛み状況認識部130が、伸展が閾値を超えていないと判定したとき、ステップS36において、痛み状況認識部130は、伸展による痛み状況が発生していないと判断する。
【0135】
ステップS37において、痛み状況認識部130が、伸展が閾値を超えたと判定したとき、ステップS38において、伸展による痛み状況が発生したと判断する。
【0136】
4.挿入支援システムの第2詳細構成例
図18は、挿入支援システム100の第2詳細構成例である。挿入支援システム100は、画像取得部141と内視鏡形状取得部142と状況認識部
120と挿入支援情報生成部150とを含む。本構成例において、例えば、画像取得部141と内視鏡形状取得部142と直近状況判定部121が、
図1と
図2の内視鏡状況情報取得部110に対応し、時系列状況判定部122が、
図2の検査条件情報取得部160に対応する。なお、既に説明した構成要素と同じ構成要素については、その説明を適宜に省略する。
【0137】
痛み情報取得部500は、内視鏡システム400に含まれる。例えば、挿入支援システム100が挿入形状観測装置200に含まれる場合、痛み情報取得部500は挿入形状観測装置200に含まれてもよい。
【0138】
痛み情報取得部500は、患者の痛み状況に応じて患者又は医療従事者が操作可能な発信装置510を含む。発信装置510は、例えばスイッチ又はタッチパネル等である。患者がスイッチを操作する場合を例にとると、患者にスイッチを持たせ、痛みが発生した場合に患者にスイッチを押してもらう。痛み状況認識部130は、そのスイッチからの情報により痛みの発生を認識し、その認識結果に基づいて挿入支援情報生成部150が挿入支援情報を呈示する。スイッチは、1段階式のスイッチでもよいし、強弱が分かるように2段式のスイッチでもよい。スイッチは、痛みの有無だけを発信できるものであってもよいし、強弱又は痛みの時間等、痛みの有無以外の情報を発信できるものであってもよい。スイッチを看護師等の補助者に持たせ、患者が痛みを訴えた時に補助者が代わりにスイッチを押してもよい。
【0139】
また、痛み情報取得部500は、患者の表情を撮影するカメラを含んでもよく、撮影された画像が苦痛の表情であることを認識することで、痛みを認識してもよい。また、痛み情報取得部500は、患者が発する音声を取得するマイクを含んでもよく、患者が痛みを訴えたことを音声から認識することで、痛みを認識してもよい。発信装置510の出力信号、表情認識結果、又は音声認識結果が、入力痛み情報INPNとして状況認識部120に入力される。
【0140】
画像取得部141は、内視鏡装置300の信号処理装置310が送信した内視鏡画像を受信することで、内視鏡画像を取得する。内視鏡形状取得部142は、内視鏡形状取得センサ20からの検出信号に基づいて内視鏡挿入部の位置と形状を取得する。内視鏡画像、及び内視鏡挿入部の位置と形状の情報は、情報IFINとして状況認識部120に入力される。
【0141】
図19は、第2詳細構成例における挿入支援システム100が行う処理のフローチャートである。なお、本フローチャートにおいて、ステップS13とS17で生成される挿入支援情報が、
図1で説明した、入力痛み情報INPNが入力されていないときに生成される挿入支援情報に対応する。また、ステップS15で生成される挿入支援情報が、
図1で説明した、入力痛み情報INPNが入力されたときに生成される挿入支援情報に対応する。
【0142】
ステップS11において、挿入支援情報生成部150は、痛み状況認識部130が内部情報に基づいて痛み状況を検出したか否かを判定する。内部情報は、患者又は医療従事者が発信した入力痛み情報INPNではない情報であり、
図18の例では、画像取得部141が取得した内視鏡画像、内視鏡形状取得部142が取得した挿入部形状情報、直近状況判定部121が出力する直近状況情報TYK、時系列状況判定部122が出力する時系列状況情報JIK、又はそれらのうち任意の2以上の組み合わせである。
【0143】
ステップS11において、痛み状況認識部130が内部情報に基づいて痛み状況を検出したとき、ステップS16において、挿入支援情報生成部150は、痛み状況認識部130が外部情報に基づいて痛み状況を検出したか否かを判定する。外部情報は、患者又は医療従事者が発信した入力痛み情報INPNである。
【0144】
ステップS16において、痛み状況認識部130が外部情報に基づいて痛み状況を検出しなかったとき、挿入支援情報生成部150は、痛み対応ガイドAの挿入支援情報を生成する。痛み対応ガイドAは、上述した痛み状況(1)~(23)の各々に対応した操作をガイドする。
【0145】
ステップS16において、痛み状況認識部130が外部情報に基づいて痛み状況を検出したとき、ステップS18において、痛み状況認識部130は、検出した痛み状況をログとしてメモリに記録する。ステップS19において、痛み状況認識部130は、検出した痛み状況が、上述した所定の痛み状況(1)~(23)のいずれかに該当するとき、その該当した痛み状況の判定条件を更新する。例えば、変位量が閾値判定されることで痛み状況が検出される場合、その閾値が更新される。ステップS15において、挿入支援情報生成部150は、痛み対応ガイドBの挿入支援情報を生成する。痛み対応ガイドBは、上述した痛み状況(1)~(23)の各々に対応し、且つ患者特有の痛みを考慮した操作を、ガイドする。患者特有の痛みは、痛み状況(1)~(23)とは異なる挿入状況で発生した痛みである。患者特有の痛みを考慮した操作は、患者特有の痛み状況を回避する操作である。ステップS14において、挿入支援情報生成部150は、生成した挿入支援情報を表示装置220に表示させる。
【0146】
ステップS11において、痛み状況認識部130が内部情報に基づいて痛み状況を検出しなかったとき、ステップS12において、挿入支援情報生成部150は、痛み状況認識部130が外部情報に基づいて痛み状況を検出したか否かを判定する。
【0147】
ステップS12において、痛み状況認識部130が外部情報に基づいて痛み状況を検出しなかったとき、ステップS13において、挿入支援情報生成部150は、現在の挿入状況に対する通常ガイドの挿入支援情報を生成する。通常ガイドは、痛みが発生していないときの操作をガイドする。ステップS14において、挿入支援情報生成部150は、生成した挿入支援情報を表示装置220に表示させる。
【0148】
ステップS12において、痛み状況認識部130が外部情報に基づいて痛み状況を検出したとき、ステップS20において痛み状況を記録する。例えば、痛み状況は電子カルテ等に記録される。痛み状況認識部130が、上述した痛みの状況(1)~(23)に当てはまらない痛み状況を、外部情報に基づいて認識したとき、その痛み状況を患者特有の痛みとみなして記録することで、同様な痛み状況が現検査内又は次回以降の別検査において再度発生した場合に、その患者特有の痛み状況を認識できる。次に、ステップS15において、挿入支援情報生成部150は、痛み対応ガイドBの挿入支援情報を生成する。ステップS14において、挿入支援情報生成部150は、生成した挿入支援情報を表示装置220に表示させる。
【0149】
5.挿入支援システムの第3詳細構成例と第4詳細構成例
図20は、挿入支援システム100の第3詳細構成例である。挿入支援システム100は、画像取得部141と内視鏡形状取得部142と患者情報取得部143と内視鏡情報取得部144と状況認識部
120と挿入支援情報生成部150とを含む。
図21は、挿入支援システム100の第4詳細構成例である。第4詳細構成例は、第3詳細構成例に更に痛み情報取得部500を加えたものである。第3詳細構成例と第4詳細構成例において、例えば、画像取得部141と内視鏡形状取得部142と直近状況判定部121が、
図1と
図2の内視鏡状況情報取得部110に対応し、患者情報取得部143と内視鏡情報取得部144と時系列状況判定部122が、
図2の検査条件情報取得部160に対応する。なお、既に説明した構成要素と同じ構成要素については、その説明を適宜に省略する。
【0150】
電子カルテ600は、患者の属性に関する情報である患者情報を蓄積する。電子カルテ600は、例えば内視鏡システム400の外部に設けられた記憶装置に格納されており、患者情報取得部143は、その記憶装置から電子カルテ600を取得する。
【0151】
患者情報は、例えば、患者の体格、性別、年齢、既往歴、体脂肪率又はそれらのうち任意の2以上の組み合わせである。体格は、BMI、身長、体重又はそれらのうち任意の2以上の組み合わせである。これらの患者の属性に応じて、発生しやすい痛み状況、又は痛みの閾値が異なる可能性がある。一例としては、痩せ型の女性は痛みやすい、或いは、男性においてNループで50mm頭方向に伸展させると痛い、という状況がある。患者情報に基づいて痛み状況が認識されることで、患者固有の痛み状況が適切に認識されるので、適切な挿入支援が実現される。
【0152】
また、患者情報は、過去の検査情報を含んでもよい。過去の検査情報は、どの挿入法が用いられたか、挿入までに何分かかったか、痛みが発生したか、挿入の軌跡、どのスコープが使用されたか、鎮静剤が用いられたか、又はそれらのうち任意の2以上の組み合わせである。これらの過去の検査情報に基づいて痛み状況が認識されることで、患者固有の痛み状況が適切に認識されるので、適切な挿入支援が実現される。
【0153】
内視鏡情報取得部144は、内視鏡装置300の信号処理装置310から内視鏡種類情報を取得する。内視鏡挿入部の太さは、内視鏡の種類に応じて異なる。そのため、内視鏡の種類に応じて、発生しやすい痛みが異なる可能性がある。そこで,内視鏡種類情報に基づいて痛み状況が認識されることで、内視鏡の種類に応じて異なる痛み状況が適切に認識されるので、適切な挿入支援が実現される。
【0154】
6.挿入支援システムの第5詳細構成例
図22は、挿入支援システム100の第5詳細構成例である。挿入支援システム100は、画像取得部141と内視鏡形状取得部142と患者情報取得部143と内視鏡情報取得部144と状況認識部
120と挿入支援情報生成部150とを含む。なお、既に説明した構成要素と同じ構成要素については、その説明を適宜に省略する。
【0155】
挿入支援情報生成部150は、自動挿抜装置700の制御装置710に支援情報ASTを出力することで、自動挿抜装置700を制御してもよい。自動挿抜装置700は、自動又は半自動で内視鏡を挿抜するロボットであり、制御装置710は、そのロボットを制御する装置である。支援情報ASTは、制御装置710に対する制御信号として出力される。挿入支援情報生成部150は、痛み状況認識部130が痛み状況を認識したとき、例えば自動挿抜装置700の動作を停止させる制御信号を出力してもよいし、或いは、痛み状況が認識されていないときの操作とは異なる操作に変更する制御信号を出力してもよい。
【0156】
以上、本実施形態およびその変形例について説明したが、本開示は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0157】
10 内視鏡、12 操作部、14 内視鏡挿入部、15 湾曲部、16 硬質部、18 ソースコイル、20 内視鏡形状取得センサ、100 挿入支援システム、110 内視鏡状況情報取得部、120 状況認識部、121 直近状況判定部、122 時系列状況判定部、130 状況認識部、140 情報取得部、141 画像取得部、142 内視鏡形状取得部、143 患者情報取得部、144 内視鏡情報取得部、150 挿入支援情報生成部、160 検査条件情報取得部、200 挿入形状観測装置、210 本体装置、220 表示装置、300 内視鏡装置、310 信号処理装置、320 表示装置、330 光源装置、400 内視鏡システム、500 情報取得部、510 発信装置、600 電子カルテ、700 自動挿抜装置、710 制御装置、AST 支援情報、ESI 内視鏡状況情報、INPN 入力痛み情報、JIK 時系列状況情報、PSI 痛み状況情報、TYK 直近状況情報