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特許7612016非機能性転写体を用いたPARP阻害剤またはDNA損傷薬物感受性判定方法 {Method for Determining Sensitivity to PARP inhibitor or genotoxic drugs based on non-functional transcripts}
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】非機能性転写体を用いたPARP阻害剤またはDNA損傷薬物感受性判定方法 {Method for Determining Sensitivity to PARP inhibitor or genotoxic drugs based on non-functional transcripts}
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20241227BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20241227BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20241227BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12M1/34
C12Q1/6876 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023527969
(86)(22)【出願日】2021-11-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 KR2021015800
(87)【国際公開番号】W WO2022098086
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0145901
(32)【優先日】2020-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】523165307
【氏名又は名称】ジーシー ゲノム コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】GC GENOME CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】チェ ジョンギュン
(72)【発明者】
【氏名】カン ヒョング
(72)【発明者】
【氏名】チョ ウンヘ
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/168008(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0148792(US,A1)
【文献】国際公開第2020/137076(WO,A1)
【文献】特表2013-537045(JP,A)
【文献】国際公開第2012/037378(WO,A2)
【文献】特開2012-165736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体(transcript)別発現量を取得するステップ;
b) 取得した発現量に基づいて遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算するステップ; 及び
c) 計算されたTU値を分析して得られた値が基準値以上の場合、PARP(Poly ADP Ribose Polymerase)阻害剤またはDNA損傷薬物(genotoxic drugs)に対する感受性(susceptibility)があると判定するステップを含む、乳がん又は卵巣がんのためのPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対するインビトロ感受性判定方法であって、
工程a)における前記非機能性転写体は、タンパク質の正常な翻訳が行われないか、または機能が失われたタンパク質に翻訳されると推定される転写体またはタンパク質翻訳に利用されない転写体を含むマイナーアイソフォームであり;
前記DNA修復関連遺伝子は、ABL1、ALKBH1、APEX1、APTX、ASF1A、ATM、ATP23、ATR、ATRX、ATXN3、BLM、BRCA1、BRCA2、BTG2、CCNO、CDKN2D、CEBPG、CIB1、CSNK1D、CSNK1E、DDB1、DDB2、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERCC6、ERCC8、EXO1、FANCA、FANCC、FANCG、FEN1、GADD45A、GADD45G、GTF2H1、GTF2H4、HMGB1、HMGB1P10、HMGB2、HUS1、IGHMBP2、KAT5、LIG1、LIG3、LIG4、MLH1、MMS19、MNAT1、MPG、MRE11、MSH2、MSH3、MSH5、MSH6、MUTYH、NBN、NHEJ1、NTHL1、OGG1、PARP1、PARP3、PMS1、PMS2、PMS2P1、PNKP、POLA1、POLD1、POLE、POLE2、POLG、POLH、POLI、POLL、POLQ、PRKCG、RAD1、RAD17、RAD21、RAD23A、RAD23B、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD52、RAD54B、RAD54L、RAD9A、RBBP8、RECQL、RECQL4、RECQL5、REV1、RFC3、RPA1、RPAIN、RUVBL2、SETX、SMC1A、SMUG1、SOD1、SUMO1、TDG、TNP1、TP53、TP73、TREX2、UBE2A、UBE2B、UBE2N、UBE2V1、UBE2V2、UNG、UPF1、UVRAG、VCP、WRNIP1、XAB2、XPC、XRCC2、XRCC3、XRCC4、XRCC6、BABAM2、BRIP1、CDCA5、CHEK1、DCLRE1C、FANCB、FANCI、MGME1、MND1、MUS81、NEIL1、PARP9、RAD51AP1、RFC4、SMARCB1、TICRR、TRIP13、UBE2T、USP47、ABRAXAS1、ASCC1、CHEK2、NSMCE4A、PARP2、RAD51AP1、RHNO1、RMI2、RPS3、TNKS1BP1、UBB、UIMC1及びUSP45からなる群から選択される10以上の遺伝子であり;
前記TU値は、一つの遺伝子で発生する全ての転写体のTPM値の合計を分母として、それぞれの転写体のTPMを分子とする比率として計算され;
工程c)における計算されたTUを分析することによって値を得ることは、K-近傍(k-Nearest Neighbors)、線形回帰(Linear Regression)、ロジスティック回帰(Logistic Regression)、サポートベクターマシン(SVM、Support Vector Machine)、決定木分析(Decision Tree)、ランダムフォレスト(Random Forest)及びニューラルネットワーク(Neural Network)からなる群から選択される人工知能モデルを利用して行われ;
前記PARP阻害剤は、AZD2281(オラパリブ、Olaparib)、ABT888(ベリパリブ、Veliparib)、AG014699(ルカパリブ、Rucaparib)、MK-4827(ニラパリブ、Niraparib)、BMN-673(タラゾパリブ、Talazoparib)、BSI201(イニパリブ、Iniparib)、BGP15(O-(3-piperidino-2-hydroxy-1-propyl)nicotinicamidoxime)、INO1001(3-Aminobenzamide)、ONO2231、ニコチンアミド(nicotinamide)、3-アミノベンズアミド(3-aminobenzamide)、3,4-ジヒドロ-5-[4-(1-ピペリジニル)ブトキシ]-1(2H)-イソキノロン(3,4-dihydro-5-[4-(1-piperidinyl)butoxy]-1(2H)-isoquinolone)、ベンズアミド(benzamide)、キノロン(quinolone)、イソキノロン(isoquinolone)、ベンゾピロン(benzopyrone)、環状ベンズアミド(cyclic benzamide)、ベンゾイミダゾール(benzimidazole)、インドール(indole)及びフェナントリジノン(phenanthridinone)からなる群から選択され;そして
前記DNA損傷薬物は、ブレオマイシン(Bleomycin)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ネダプラチン(Nedaplatin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エトポシド(Etoposide)及びSN38からなる群から選択される、
感受性判定方法
【請求項2】
前記核酸がRNAであることを特徴とする、請求項1に記載のPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法。
【請求項3】
前記a) ステップは、以下のステップを含む方法で行われることを特徴とする、請求項1に記載のPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法:
a-i) 血液、精液、膣細胞、毛髪、唾液、尿、口腔細胞、がん組織細胞、FFPEサンプル及びこれらの混合物から核酸を得るステップ;
a-ii) 採取した核酸から、塩析法(salting-out method)、カラムクロマトグラフィー法(column chromatography method)またはビーズ法(beads method)を使用して、タンパク質、脂肪、及びその他の残留物を除去し、精製された核酸を得るステップ;
a-iii) 精製された核酸に対して、DNA修復関連遺伝子を濃縮(enrichment)してライブラリ(library)を製作するステップ;
a-iv) 製作されたライブラリを次世代遺伝子シークエンサー(next-generation sequencer)に反応させるステップ;及び
a-v) 次世代遺伝子シークエンサーで核酸の配列情報(reads)を取得するステップ。
【請求項4】
前記b) ステップの遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算するステップは、下記式1で計算することを特徴とする、請求項1に記載のPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法:
【数1】
ここでTPMはtranscripts per millionを意味する。
【請求項5】
前記基準値が0.5~1であることを特徴とする、請求項1に記載のPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法。
【請求項6】
請求項1に記載の乳がん又は卵巣がんのためのPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対するインビトロ感受性判定方法に利用されるPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定装置であって、前記装置は、
(1) 生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体(transcript)別の発現量を取得する情報取得部;
(2) 取得した発現量に基づいて遺伝子別に非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算する計算部; 及び
(3) 計算されたTU値を分析して得られた値が基準値以上の場合、PARP(Poly ADP Ribose Polymerase)阻害剤またはDNA損傷薬物(genotoxic drugs)に対する感受性(susceptibility)があると判定する感受性判定部;
を含むことを特徴とする感受性判定装置であって、
前記非機能性転写体は、タンパク質の正常な翻訳が行われないか、または機能が失われたタンパク質に翻訳されると推定される転写体またはタンパク質翻訳に利用されない転写体を含むマイナーアイソフォームであり;
前記DNA修復関連遺伝子は、ABL1、ALKBH1、APEX1、APTX、ASF1A、ATM、ATP23、ATR、ATRX、ATXN3、BLM、BRCA1、BRCA2、BTG2、CCNO、CDKN2D、CEBPG、CIB1、CSNK1D、CSNK1E、DDB1、DDB2、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERCC6、ERCC8、EXO1、FANCA、FANCC、FANCG、FEN1、GADD45A、GADD45G、GTF2H1、GTF2H4、HMGB1、HMGB1P10、HMGB2、HUS1、IGHMBP2、KAT5、LIG1、LIG3、LIG4、MLH1、MMS19、MNAT1、MPG、MRE11、MSH2、MSH3、MSH5、MSH6、MUTYH、NBN、NHEJ1、NTHL1、OGG1、PARP1、PARP3、PMS1、PMS2、PMS2P1、PNKP、POLA1、POLD1、POLE、POLE2、POLG、POLH、POLI、POLL、POLQ、PRKCG、RAD1、RAD17、RAD21、RAD23A、RAD23B、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD52、RAD54B、RAD54L、RAD9A、RBBP8、RECQL、RECQL4、RECQL5、REV1、RFC3、RPA1、RPAIN、RUVBL2、SETX、SMC1A、SMUG1、SOD1、SUMO1、TDG、TNP1、TP53、TP73、TREX2、UBE2A、UBE2B、UBE2N、UBE2V1、UBE2V2、UNG、UPF1、UVRAG、VCP、WRNIP1、XAB2、XPC、XRCC2、XRCC3、XRCC4、XRCC6、BABAM2、BRIP1、CDCA5、CHEK1、DCLRE1C、FANCB、FANCI、MGME1、MND1、MUS81、NEIL1、PARP9、RAD51AP1、RFC4、SMARCB1、TICRR、TRIP13、UBE2T、USP47、ABRAXAS1、ASCC1、CHEK2、NSMCE4A、PARP2、RAD51AP1、RHNO1、RMI2、RPS3、TNKS1BP1、UBB、UIMC1及びUSP45からなる群から選択される10以上の遺伝子であり;
前記TU値は、一つの遺伝子で発生する全ての転写体のTPM値の合計を分母として、それぞれの転写体のTPMを分子とする比率として計算され;
計算されたTUを分析することによって値を得ることは、K-近傍(k-Nearest Neighbors)、線形回帰(Linear Regression)、ロジスティック回帰(Logistic Regression)、サポートベクターマシン(SVM、Support Vector Machine)、決定木分析(Decision Tree)、ランダムフォレスト(Random Forest)及びニューラルネットワーク(Neural Network)からなる群から選択される人工知能モデルを利用して行われ;
前記PARP阻害剤は、AZD2281(オラパリブ、Olaparib)、ABT888(ベリパリブ、Veliparib)、AG014699(ルカパリブ、Rucaparib)、MK-4827(ニラパリブ、Niraparib)、BMN-673(タラゾパリブ、Talazoparib)、BSI201(イニパリブ、Iniparib)、BGP15(O-(3-piperidino-2-hydroxy-1-propyl)nicotinicamidoxime)、INO1001(3-Aminobenzamide)、ONO2231、ニコチンアミド(nicotinamide)、3-アミノベンズアミド(3-aminobenzamide)、3,4-ジヒドロ-5-[4-(1-ピペリジニル)ブトキシ]-1(2H)-イソキノロン(3,4-dihydro-5-[4-(1-piperidinyl)butoxy]-1(2H)-isoquinolone)、ベンズアミド(benzamide)、キノロン(quinolone)、イソキノロン(isoquinolone)、ベンゾピロン(benzopyrone)、環状ベンズアミド(cyclic benzamide)、ベンゾイミダゾール(benzimidazole)、インドール(indole)及びフェナントリジノン(phenanthridinone)からなる群から選択され;そして
前記DNA損傷薬物は、ブレオマイシン(Bleomycin)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ネダプラチン(Nedaplatin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エトポシド(Etoposide)及びSN38からなる群から選択される、
感受性判定装置
【請求項7】
請求項1に記載の乳がん又は卵巣がんのためのPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対するインビトロ感受性判定方法に利用されるコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記媒体は、PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性を判定するプロセッサによって実行されるように構成される命令を含み、
a) 生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体(transcript)別の発現量を取得するステップ;
b) 取得した発現量に基づいて遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算するステップ; 及び
c) 計算されたTU値を分析して得られた値が基準値以上の場合、PARP(Poly ADP Ribose Polymerase)阻害剤またはDNA損傷薬物(genotoxic drugs)に対する感受性(susceptibility)があると判定するステップを含むプロセッサによって実行されるように構成される命令を含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
工程a)における前記非機能性転写体は、タンパク質の正常な翻訳が行われないか、または機能が失われたタンパク質に翻訳されると推定される転写体またはタンパク質翻訳に利用されない転写体を含むマイナーアイソフォームであり;
前記DNA修復関連遺伝子は、ABL1、ALKBH1、APEX1、APTX、ASF1A、ATM、ATP23、ATR、ATRX、ATXN3、BLM、BRCA1、BRCA2、BTG2、CCNO、CDKN2D、CEBPG、CIB1、CSNK1D、CSNK1E、DDB1、DDB2、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERCC6、ERCC8、EXO1、FANCA、FANCC、FANCG、FEN1、GADD45A、GADD45G、GTF2H1、GTF2H4、HMGB1、HMGB1P10、HMGB2、HUS1、IGHMBP2、KAT5、LIG1、LIG3、LIG4、MLH1、MMS19、MNAT1、MPG、MRE11、MSH2、MSH3、MSH5、MSH6、MUTYH、NBN、NHEJ1、NTHL1、OGG1、PARP1、PARP3、PMS1、PMS2、PMS2P1、PNKP、POLA1、POLD1、POLE、POLE2、POLG、POLH、POLI、POLL、POLQ、PRKCG、RAD1、RAD17、RAD21、RAD23A、RAD23B、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD52、RAD54B、RAD54L、RAD9A、RBBP8、RECQL、RECQL4、RECQL5、REV1、RFC3、RPA1、RPAIN、RUVBL2、SETX、SMC1A、SMUG1、SOD1、SUMO1、TDG、TNP1、TP53、TP73、TREX2、UBE2A、UBE2B、UBE2N、UBE2V1、UBE2V2、UNG、UPF1、UVRAG、VCP、WRNIP1、XAB2、XPC、XRCC2、XRCC3、XRCC4、XRCC6、BABAM2、BRIP1、CDCA5、CHEK1、DCLRE1C、FANCB、FANCI、MGME1、MND1、MUS81、NEIL1、PARP9、RAD51AP1、RFC4、SMARCB1、TICRR、TRIP13、UBE2T、USP47、ABRAXAS1、ASCC1、CHEK2、NSMCE4A、PARP2、RAD51AP1、RHNO1、RMI2、RPS3、TNKS1BP1、UBB、UIMC1及びUSP45からなる群から選択される10以上の遺伝子であり;
前記TU値は、一つの遺伝子で発生する全ての転写体のTPM値の合計を分母として、それぞれの転写体のTPMを分子とする比率として計算され;
工程c)における計算されたTUを分析することによって値を得ることは、K-近傍(k-Nearest Neighbors)、線形回帰(Linear Regression)、ロジスティック回帰(Logistic Regression)、サポートベクターマシン(SVM、Support Vector Machine)、決定木分析(Decision Tree)、ランダムフォレスト(Random Forest)及びニューラルネットワーク(Neural Network)からなる群から選択される人工知能モデルを利用して行われ;
前記PARP阻害剤は、AZD2281(オラパリブ、Olaparib)、ABT888(ベリパリブ、Veliparib)、AG014699(ルカパリブ、Rucaparib)、MK-4827(ニラパリブ、Niraparib)、BMN-673(タラゾパリブ、Talazoparib)、BSI201(イニパリブ、Iniparib)、BGP15(O-(3-piperidino-2-hydroxy-1-propyl)nicotinicamidoxime)、INO1001(3-Aminobenzamide)、ONO2231、ニコチンアミド(nicotinamide)、3-アミノベンズアミド(3-aminobenzamide)、3,4-ジヒドロ-5-[4-(1-ピペリジニル)ブトキシ]-1(2H)-イソキノロン(3,4-dihydro-5-[4-(1-piperidinyl)butoxy]-1(2H)-isoquinolone)、ベンズアミド(benzamide)、キノロン(quinolone)、イソキノロン(isoquinolone)、ベンゾピロン(benzopyrone)、環状ベンズアミド(cyclic benzamide)、ベンゾイミダゾール(benzimidazole)、インドール(indole)及びフェナントリジノン(phenanthridinone)からなる群から選択され;そして
前記DNA損傷薬物は、ブレオマイシン(Bleomycin)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ネダプラチン(Nedaplatin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エトポシド(Etoposide)及びSN38からなる群から選択される、
記録媒体
【請求項8】
請求項1に記載の乳がん又は卵巣がんのためのPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対するインビトロ感受性判定方法に利用される標的化RNA配列分析(Targeted RNA-Seq)キットであって、前記キットは、
DNA修復関連遺伝子の転写体を捕捉するプローブ;及び捕捉した転写体を増幅するプライマーを含むことを特徴とする標的化RNA配列分析キットであって、
前記DNA修復関連遺伝子は、ABL1、ALKBH1、APEX1、APTX、ASF1A、ATM、ATP23、ATR、ATRX、ATXN3、BLM、BRCA1、BRCA2、BTG2、CCNO、CDKN2D、CEBPG、CIB1、CSNK1D、CSNK1E、DDB1、DDB2、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERCC6、ERCC8、EXO1、FANCA、FANCC、FANCG、FEN1、GADD45A、GADD45G、GTF2H1、GTF2H4、HMGB1、HMGB1P10、HMGB2、HUS1、IGHMBP2、KAT5、LIG1、LIG3、LIG4、MLH1、MMS19、MNAT1、MPG、MRE11、MSH2、MSH3、MSH5、MSH6、MUTYH、NBN、NHEJ1、NTHL1、OGG1、PARP1、PARP3、PMS1、PMS2、PMS2P1、PNKP、POLA1、POLD1、POLE、POLE2、POLG、POLH、POLI、POLL、POLQ、PRKCG、RAD1、RAD17、RAD21、RAD23A、RAD23B、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD52、RAD54B、RAD54L、RAD9A、RBBP8、RECQL、RECQL4、RECQL5、REV1、RFC3、RPA1、RPAIN、RUVBL2、SETX、SMC1A、SMUG1、SOD1、SUMO1、TDG、TNP1、TP53、TP73、TREX2、UBE2A、UBE2B、UBE2N、UBE2V1、UBE2V2、UNG、UPF1、UVRAG、VCP、WRNIP1、XAB2、XPC、XRCC2、XRCC3、XRCC4、XRCC6、BABAM2、BRIP1、CDCA5、CHEK1、DCLRE1C、FANCB、FANCI、MGME1、MND1、MUS81、NEIL1、PARP9、RAD51AP1、RFC4、SMARCB1、TICRR、TRIP13、UBE2T、USP47、ABRAXAS1、ASCC1、CHEK2、NSMCE4A、PARP2、RAD51AP1、RHNO1、RMI2、RPS3、TNKS1BP1、UBB、UIMC1及びUSP45からなる群から選択される10以上の遺伝子である、
キット
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、非機能性転写体を用いたPARP阻害剤またはDNA損傷薬物(DNA damaging agent)に対する感受性の判定方法に関するものであって、より具体的には、生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体別発現量を取得した後、取得した発現量に基づいて遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(TU)を分析し、PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性を判定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオマーカーとは、「正常な生物学的過程、病気の進行状況、そして治療方法に対する薬物の感受性を客観的に測定し、評価できる指標」と定義している。最近、遺伝子分析技術の発達により、特定の遺伝子の変異と特定の疾患との関連性に関する研究が増加し、バイオマーカーは遺伝子と遺伝的変異、それによるRNA、タンパク質、代謝物質の発現の違いをすべて網羅する分子的、生物学的指標として再定義されている。
【0003】
また、より効果的な治療のために、医薬品の治療効果を最大化させたり、副作用を最小限に抑えることができる患者群を分類するために、バイオマーカーの感受性有無を判断できるコンパニオン診断剤(Companion Dignostics Device、CDx)の開発が行われている。
【0004】
コンパニオン診断(Companion Diagnosis)とは、患者の特定の薬物治療に対する感受性を事前に予測するための診断技法である。がん細胞と正常細胞の両方に作用して副作用が大きい既存のほとんどの抗がん剤の欠点を克服するために、特定の標的タンパク質を選択的に攻撃するようにする標的抗がん剤が開発された。
【0005】
しかし、標的抗がん剤は、同じ種類のがんでも特定の標的タンパク質を持つがん患者にのみ効果を示すため、標的分子を持つ患者を選別しなければ治療効率が非常に低い。
【0006】
また、標的抗がん剤は細胞死よりも細胞成長と増殖抑制に依存するため、長期間にわたって継続的な薬物投与による耐性発生の可能性が高い。したがって、薬物を投与する前に抗がん剤の標的に対して分析し、薬物に効果を示す患者群を選別することが必要である。
【0007】
多国籍製薬会社の一つであるRocheは、最初の乳がん標的抗がん剤である「Herceptin」とそのコンパニオン診断キットである「Herceptest」を開発したGenentechを買収し、コンパニオン診断ベースの標的抗がん剤治療を開始することになった。コンパニオン診断キットは、DAKO、HercepTestのような免疫組織化学検査を通じて特定のタンパク質の過剰発現を確認する方法、Ventana Medical Systems、INFORM HER-2/NEUのような特定の遺伝子の遺伝子増幅を、DNAプローブを利用したFISHまたはCISH検査を通じて確認する方法、また、Roche Diagnostics、cobas EGFR mutation testのようなq-PCRなどのゲノム学的な技法を利用してバイオマーカー遺伝子の変異の有無を検査して確認する方法などがある。
【0008】
一方、オラパリブ(Olaparib、AZD2281)は、がん細胞の異常な増殖を抑制する機能を持つ抗がん剤で、「PARPタンパク質」の阻害剤である。PARPは、細胞内のDNAが損傷した場合、これを修復(repair)する機能を持つタンパク質であって、細胞がDNAの修復を終え、継続的に増殖できるように寄与するのに大きな役割を果たす。オラパリブは、このPARPの機能を阻害することにより、がん細胞の増殖を阻害する。このようなオラパリブは、卵巣がん、乳がんの標的治療剤としてよく知られており、特に、BRCA1、BRCA2の突然変異を遺伝的に持っているがん患者に効果的な抗がん剤として知られている。
【0009】
すなわち、抗がん剤の効果は、DNA修復(repair)能力に大きく影響され、また、抗がん剤は耐性と毒性に関して個人差が異なるため、適切な治療感受性マーカーを用いたスクリーニングは抗がん剤治療の画期的な進歩をもたらすことができる。特定の遺伝子による個別抗がん剤の治療感受性に関する研究が最近継続的に活発に展開されている。しかし、特定の薬剤に対する生体反応関連要素の複合的な作用、治療薬及び投与方式の多様性と膨大な試料確保の難しさから、目覚ましい成果は未だ見られないのが現実である。
【0010】
Myriad genetics社では、PARP阻害剤(olaparib)、タラゾパリブ(talazoparib)及びルカパリブ(rucaparib)のコンパニオン診断のために、germline BRCA1及びBRCA2の変異の有無を診断する製品を発売した。しかし、この製品は、BRCA1/2遺伝子の対立遺伝子に関係なく変異の有無のみを判定する製品であり、PARP阻害剤に対する全体反応率(ORR、overall response rat)が34%しかなく、単純なBRCA1/2のgermline mutation検出だけではPARP阻害剤に対するコンパニオン診断が十分にできないことを意味する。
【0011】
Foundation medicine社のFoundationFocusCDxBRCA製品も同様に、BRCA1及びBRCA2の変異とPARP阻害剤であるルカパリブ(rucaparib)の関連性を診断するコンパニオン診断製品であるが、全体反応率(ORR、overall response rate)が53.8%しかなく、依然として反応率が低い状態である。
【0012】
このようにBRCA1/2遺伝子の変異だけではHRD関連薬物の感受性を一部しか予測できない状況である。そこで、HRDを引き起こす原因ではなく、HRDによって発生した結果を検出して薬物感受性を予測しようとする試みが行われている。HRDは、遺伝体に加えられたダメージの修復に失敗することにより、様々な痕跡を残す。特に、genomic scarとsignature 3はHRDのよく知られた標識である(Gulhan、D. C. et al.、Nat. Genet. Vol. 51、pp. 912-919、2019)。Mutational signatureは、単一塩基変異の遺伝体的パターンを特定のbackground factorと関連付けるために使用される(Alexandrov、L. B. et al.,Nature. Vol. 500、pp. 415-421、2013)。このような意味で、signature 3はHRDとよくマッチする。Genomic scarは3つの染色体異常で検出され、それぞれテロメア対立遺伝子の不均衡(telomeric allelic imbalances、NtAI)、大規模状態遷移(large-scale state transition、LST)及びヘテロ接合性の喪失(loss of heterozygosity、LOH)を意味する(Abkevich、V. et al.、Br. J. Cancer. Vol. 107、pp. 1776-1782、2012; Popova、T. et al.、Cancer Res.Vol. 72、pp. 5454-5462、2012; Nicolai J. Birkbak. CANCER Discov. Vol. 2、367、2012)。
【0013】
ゲノム上のHRD(genomic HRD、gHRD)解析は、HRの機能回復によって影響を受けざるを得ない。すなわち、BRCA1/2の機能を回復する別の変異の発生は、卵巣がんで発生するプラチナ薬物抵抗性ケースの約半数の原因である(Norquist、B. et al.、J. Clin. Oncol. Vol. 29、pp. 3008-3015、2011)。また、PARP阻害剤耐性に関連して、BRCA1/2に依存しないメカニズムが知られている(Chaudhuri、A. R. et al.、Nature. Vol. 535、pp. 382-387、2016)。前記のように、HR機能が回復した状況でも、最初に発生したgenomic scarは依然として検出されるという問題がある。さらに、mutational signatureを計算する技術的な問題点により、さらに偽陽性が高くなると知られている(Maura、F. et al.、Nat. Commun. Vol. 10、2019)。
【0014】
前記問題のため、DNA損傷薬物やPARP阻害剤に反応すると予想された患者のかなりの数が実際に反応しないのである(Watkins、J. A. et al.、Breast Cancer Research. Vol. 16、pp. 1-11、2014)。
【0015】
したがって、HRDの機能的状態を測定するバイオマーカーを利用してgHRD予測結果から薬物抵抗性のあるケースを除去する方法など、患者のHRD状態をリアルタイムで把握できる新しい技術が必要な状況である。
【0016】
そこで、本発明者らは、PARP阻害剤またはプラチナをはじめとするDNA損傷薬物に対する精度の高い感受性判定方法を開発するために鋭意努力した結果、DNA修復関連遺伝子の転写体(transcript)構造情報を利用して、遺伝子ごとにタンパク質の正常な翻訳が行われない、または機能が失われたタンパク質に翻訳されると推定される非機能性転写体を抽出した後、これらの発現量を分析する場合、PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性を遺伝子変異レベルのHRD検出方法よりも低い偽陽性と高い精度で決定できることを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、非機能性転写体を利用したPARP阻害剤及びDNA損傷薬物感受性判定方法を提供することである。
本発明の他の目的は、非機能性転写体を用いたPARP阻害剤及びDNA損傷薬物に対する感受性を判定する装置を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、前記方法でPARP阻害剤及びDNA損傷薬感受性を判定するプロセッサによって実行されるように構成される命令を含むコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することである。
本発明の他の目的は、前記方法を用いた標的RNA配列分析キットを提供することである。
【0019】
前記目的を達成するために、本発明は、a) 生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体(transcript)別の発現量を取得するステップ; b) 取得した発現量に基づいて遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算するステップ;及びc) 計算されたTU値を分析して得られた値が基準値以上の場合、PARP(Poly ADP Ribose Polymerase)阻害剤またはDNA損傷薬物(genotoxic drugs)に対する感受性(susceptibility)があると判定するステップを含むPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、前記PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法に利用されるPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定装置および前記判定方法を実行するための命令を含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【0021】
本発明はまた、前記PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法に利用される標的化RNA配列分析(Targeted RNA-Seq)キットを提供する。
【0022】
本発明はまた、前記PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法に従って、感受性があると判定された患者にPARP阻害剤またはDNA損傷薬物を投与するステップを含むがん治療方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1は、本発明のPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性(susceptibility)を判定するための全体フローチャートである。
【0024】
図2は、本発明の転写体別使用率(transcript usage、TU)を算出する方法に関する概念図である。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態によるgHRD(+)サンプルで過剰発現されたマイナーアイソフォームが統計的に有意にタンパク質機能の喪失につながることを示す結果である。
【0026】
図4は、本発明の一実施形態によるgHRD(+)サンプルで特定のマイナーアイソフォームが過剰発現される遺伝子が統計的に有意にDNA修復機能と関連していることを示す結果である。
【0027】
図5は、本発明の一実施形態によるgHRD(+)サンプルでマイナーアイソフォームが過剰発現される遺伝子が統計的に有意に様々なDNA修復のサブ機能と関連していることを示す結果である。
【0028】
図6は、本発明の一実施形態で乳がん細胞株の薬物感受性をgHRDで予測した結果と、乳がん関連36個の遺伝子の104個の転写体に基づいて導き出したtHRDで予測した結果と比較したものである。gHRD及びtHRDが陽性と予測した細胞株と陰性と判定した細胞株間の薬物感受性をIC50値で表示した。
【0029】
図7は、本発明の一実施形態で乳がん細胞株の薬物感受性をgHRDで予測した結果と、乳がん関連36個の遺伝子の104個の転写体に基づいて導き出したtHRDで予測した結果を、精度-再現率(Precision and recall)の面で比較した結果であり、青色の点線はgHRD(signature3)補正前、実線は補正後の性能であり、赤色はtHRD性能である。
【0030】
図8は、本発明の一実施形態で発掘した乳がん関連の104個の転写体のうち、主要転写体20個でtHRDを計算した結果をgHRD薬物反応性予測と比較した結果である。
【0031】
図9は、本発明の一実施形態で発掘した乳がん関連の104個の転写体のうち、主要転写体10個でtHRDを計算した結果をgHRD薬物反応性予測と比較した結果である。
【0032】
図10の(A)と(C)は卵巣がん患者のプラチナ反応性をgHRDで予測した結果であり、(B)と(D)は、本発明の一実施形態で発掘した卵巣がん関連の25個の遺伝子の89個の転写体基盤のtHRDで、卵巣がん患者のプラチナ反応性を予測した結果である。(A)と(B)は、gHRD及びtHRDで陽性に分類された患者と陰性に分類された患者の生存率を比較した結果であり、(C)と(D)は前記二つの方法に対する精度-再現率(Precision and recall)及び受信者操作特性(Receiver operating characteristics)を分析した結果であり、青色の点線はgHRD(scar)、青色の実線はgHRD(signature3)。赤色はtHRD性能を意味する。
【0033】
図11の(A)と(C)は、卵巣がん患者のプラチナ反応性をgHRDで予測した結果であり、(B)と(D)は、本発明の一実施形態で発掘した卵巣がん関連の25個の遺伝子の89個の転写体のうち、主要10個を基盤としたtHRDで卵巣がん患者のプラチナ反応性を予測した結果である。(A)と(B)は、gHRD及びtHRDで陽性に分類された患者と陰性に分類された患者の生存率を比較した結果であり、(C)と(D)は、前記二つの方法に対する精度-再現率(Precision and recall)及び受信機操作特性(Receiver operating characteristics)を分析した結果であり、青色の点線はgHRD(scar)、青色の実線はgHRD(signature3)、赤色はtHRD性能を意味する。
【0034】
図12は、gHRD基準ではなくプラチナ反応性を基準に学習したtHRDモデルの性能とgHRDでプラチナ反応性を予測した性能を比較したものである。(A)と(B)は、それぞれgHRDとtHRDで学習したモデルで陽性に分類された患者と陰性に分類された患者のプラチナ治療後の生存率を比較した結果であり、(C)と(D)は、前記二つの方法に対する精度-再現率(Precision and recall)及び受信者操作特性(Receiver operating characteristics)を分析した結果であり、青色の点線はgHRD(scar)、青色の実線はgHRD(signature3)、そして赤色はtHRDの性能を意味する。
【0035】
図13は、本発明の一実施形態で構築したtHRDモデルで実際の卵巣がん患者を分類してプラチナ薬物治療後、がん転移期間を利用して生存分析を行った結果であり、(A)は12ヶ月、(B)は24ヶ月、(C)は全体の期間を意味する。
【発明の詳細な説明】
【0036】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法及び以下に記載する実験方法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0037】
第1、第2、A、Bなどの用語は、様々な構成要素を説明するために使用することができるが、それらの構成要素は、前記用語によって限定されるものではなく、単に1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的で使用されるだけである。例えば、以下に説明する技術の権利範囲を逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名することができる。及び/またはという用語は、複数の関連する記載項目の組み合わせ、または複数の関連する記載項目のいずれかを含む。
【0038】
本明細書で使用される用語において、単数の表現は、文脈上明らかに異なって解釈されない限り、複数の表現を含むものと理解されるべきであり、「含む」などの用語は、記載された特徴、個数、ステップ、動作、構成要素、部分品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や、個数、ステップ、動作、構成要素、部分品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を排除しないものと理解されるべきである。
【0039】
図面に対する詳細な説明をする前に、本明細書における構成部に対する区分は、各構成部が担当する主機能別に区分したものに過ぎないことを明確にしたい。すなわち、以下で説明する2つ以上の構成部が1つの構成部に合わされてもよく、または1つの構成部がより細分化された機能別に2つ以上に分化されて具備されてもよい。また、以下で説明する構成部のそれぞれは、自分が担当する主機能以外にも、他の構成部が担当する機能の一部または全ての機能を追加的に遂行されてもよく、構成部のそれぞれが担当する主機能の一部機能が他の構成部によって専担されて遂行されてもよい。
【0040】
また、方法または動作方法を実行するにあたり、前記方法を構成する各工程は、文脈上明らかに特定の順序を記載しない限り、記載された順序と異なる順序で行われることがある。つまり、各工程は、記載された順序と同じ順序で行われることも、実質的に同時に行われることも、逆の順序で行われることもある。
【0041】
本発明では、サンプルから取得した遺伝子の非機能性転写体の転写体別の発現量情報を基に、各非機能性転写体の使用率(TU値)を計算した後、TU値を分析して得られた値を基準値と比較してPARP阻害剤またはDNA損傷薬物の感受性を判定する場合、遺伝子に現れた痕跡で感受性を予測する方法よりも高い精度でPARP阻害剤、または、DNA損傷薬物の感受性を判定できることを確認しようとした。
【0042】
すなわち、本発明の一実施形態では、乳がん/卵巣がん患者データからgenomic HRDを算出し、gHRD(+)グループとgHRD(-)グループに分類した後、転写体構造データベースに基づいて遺伝子別major isoform及び複数のマイナーアイソフォームを区別した後、各major isoform別転写体の転写体使用率(transcripts usage、TU)値を算出した後、gHRD(+)でmajor isoformが過剰発現される、すなわち、aberrant TU(aTU)を示す遺伝子を発掘した結果、これらが主にDNA修復に関連する遺伝子であることを見つけ、それで各がん種別に薬物感受性判定を最適化するために使用する遺伝子及びそれらのマイナーアイソフォームを選別し、これらのマイナーアイソフォームのTU値をrandom forest modelの入力データとして活用してHRDの有無を決定するようにする人工知能モデルを学習させ、tHRDが陽性の場合、PARP阻害剤またはDNA損傷薬物の感受性が高いと判定する方法を開発した(図1)。
【0043】
したがって、本発明は、ある観点から、
a) 生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体(transcript)別の発現量を取得するステップ;
b) 取得した発現量に基づいて遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算するステップ;及び、
c) 計算されたTU値を分析して得られた値が基準値以上の場合、PARP(Poly ADP Ribose Polymerase)阻害剤またはDNA損傷薬物(genotoxic drugs)に対する感受性(susceptibility)があると判定するステップを含むPARP阻害剤、または、DNA損傷薬物に対する感受性判定方法に関するものである。
【0044】
本発明において、前記核酸は、RNAであることを特徴とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明において、前記a) ステップは、次のステップを含む方法で行われることを特徴とすることができる:
a-i) 血液、精液、膣細胞、毛髪、唾液、尿、口腔細胞、がん組織細胞、FFPEサンプル及びこれらの混合物から核酸を得るステップ;
a-ii) 採取した核酸から、塩析法(salting-out method)、カラムクロマトグラフィー法(column chromatography method)またはビーズ法(beads method)を使用して、タンパク質、脂肪、及びその他の残留物を除去し、精製された核酸を得るステップ;
a-iii) 精製された核酸に対して、DNA修復関連遺伝子を濃縮(enrichment)してライブラリ(library)を製作するステップ;
a-iv) 製作されたライブラリを次世代遺伝子シークエンサー(next-generation sequencer)に反応させるステップ;及び
a-v) 次世代遺伝子シークエンサーで核酸の配列情報(reads)を取得するステップ。
【0046】
本発明で前記DNA修復関連遺伝子を濃縮する方法は、通常の技術者に公知の技術であれば全ての方法が使用可能であり、プローブベースの捕獲(capture)、プライマーベースの増幅(amplification)方法があるが、これに限定されない。
【0047】
本発明において、前記ライブラリはcDNAで構成することができるが、これに限定されない。
【0048】
本発明において、前記次世代遺伝子シーケンサー(next-generation sequencer)は、当業界に公知の任意のシーケンス方法で使用することができる。選択方法によって分離された核酸のシーケンシングは、典型的には次世代シーケンシング(NGS)を使用して行われる。次世代シーケンシングは、個々の核酸分子または非常に類似した方法で個々の核酸分子に対してクローン化されたプロキシの1つのヌクレオチド配列を決定する任意のシーケンシング方法を含む(例えば、105以上の分子が同時にシーケンシングされる)。一実施形態では、ライブラリ内の核酸種の相対的な存在比は、シーケンシング実験によって作成されたデータにおけるその同族配列の相対的な発生数を計測することによって推定することができる。次世代シーケンシング方法は当業界に公知であり、例えば、本明細書に参照として含まれる文献(Metzker、M. (2010) Nature Biotechnology Reviews 11:31-46)に記載されている。
【0049】
一実施形態では、次世代シーケンシングは、個々の核酸分子のヌクレオチド配列を決定するために行われる(例えば、Helicos BioSciencesのヘリスコープ遺伝子シーケンシングシステム(HeliScope Gene Sequencing system)及びPacific BiosciencesのPacBio RS system)。他の実施形態では、シーケンシング、例えば、より少ないがより長いリードを生成する他のシーケンシング方法よりも、シーケンシング単位あたりの配列のより多くの塩基を生成するマスパラレルのショートリードシーケンシング(例えば、カリフォルニア州サンディエゴに所在したIllumina Inc.のソレクサシーケンサー(Solexa sequencer)方法は、個々の核酸分子に対してクローンに拡張されたプロキシのヌクレオチド配列を決定する(例えば、カリフォルニア州サンディエゴのIllumina Inc.のSolexa sequencer); 454 Life Sciences(コネチカット州ブランフォードに所在)及びIon Torrent)。次世代シーケンシングのための他の方法または機械は、以下に限定されないが、454 Life Sciences(コネチカット州ブランフォードに所在)、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティに所在、SOLiDシーケンサー)、Helicos Biosciences Corporation(マサチューセッツ州ケンブリッジに所在)、及びエマルジョン及びマイクロフローシーケンス技術ナノ点滴(例えば、GnuBio点滴)によって提供される。
【0050】
次世代シーケンシングのためのプラットフォームは、以下に限定されないが、ロシュ(Roche)/454のゲノムシーケンサー(Genome Sequencer:GS)FLXシステム、イルミナ(Illumina)/ソレクサ(Solexa)のゲノムアナライザー(Genome Analyzer:GA)、ライフ(Life)/APGのサポートオリゴ(Support Oligonucleotide Ligation Detection: SOLiD)システム、ポロネーター(Polonator)のG.007システム、Helicos BioSciencesのヘリスコープ遺伝子シーケンシングシステム(HeliScope Gene Sequencing system)及びPacific BiosciencesのPacBio RSシステムを含む。
【0051】
本発明において、「サンプル」、「組織サンプル」、「患者サンプル」、「患者細胞または組織サンプル」、「がん組織細胞」、「FFPEサンプル」または「標本」は、それぞれ、被験者または患者の組織または循環細胞から得られた同様の細胞の収集を指す。組織サンプルの供給源は、新鮮な、凍結及び/または保存された機関、組織サンプル、生検または吸引からの固形組織、血液または任意の血液構成要素、体液、例えば、脳脊髄液、羊水、腹膜液または細胞間質液、または被験者の妊娠または発生のある時点からの細胞であってもよい。組織サンプルは、自然において組織と自然に相互混合されない化合物、例えば、保存剤、抗凝固剤、緩衝剤、定着剤、栄養剤、抗生剤などを含有することもある。一実施形態において、サンプルは冷凍サンプルとして、またはホルムアルデヒド-またはパラホルムアルデヒド-固定パラフィン-包埋(paraformaldehyde-fixed paraffin-embedded:FFPE)組織製造物として製造される。例えば、サンプルはマトリックス、例えばFFPEブロックまたは冷凍サンプルで包埋することもある。
【0052】
一実施形態では、サンプルは腫瘍サンプルであり、例えば、1つ以上の前がん性または悪性細胞を含む。特定の実施形態では、サンプル、例えば腫瘍サンプルは、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、または転移性病変から得られる。別の実施形態では、サンプル、例えば腫瘍サンプルは、外科的切除面からの組織または細胞を含む。別の実施形態では、サンプル、例えば腫瘍サンプルは、1つ以上の血中腫瘍細胞(CTC)(例えば、血液サンプルから得られたCTC)を含む。
【0053】
本発明において、前記遺伝子別の非機能性転写体の発現量を取得するステップは、通常の技術者に公知のNGSベースのRNA-seqデータ分析方法であれば、制限なく利用可能である。
【0054】
本発明において、前記DNA修復関連遺伝子は、DNA修復に関連することが知られている遺伝子であれば制限なく含むことができ、好ましくは、ABL1、ALKBH1、APEX1、APTX、ASF1A、ATM、ATP23、ATR、ATRX、ATXN3、BLM、BRCA1、BRCA2、BTG2、CCNO、CDKN2D、CEBPG、CIB1、CSNK1D、CSNK1E、DDB1、DDB2、ERCC1、ERCC2、ERCC3、ERCC4、ERCC5、ERCC6、ERCC8、EXO1、FANCA、FANCC、FANCG、FEN1、GADD45A、GADD45G、GTF2H1、GTF2H4、HMGB1、HMGB1P10、HMGB2、HUS1、IGHMBP2、KAT5、LIG1、LIG3、LIG4、MLH1、MMS19、MNAT1、MPG、MRE11、MSH2、MSH3、MSH5、MSH6、MUTYH、NBN、NHEJ1、NTHL1、OGG1、PARP1、PARP3、PMS1、PMS2、PMS2P1、PNKP、POLA1、POLD1、POLE、POLE2、POLG、POLH、POLI、POLL、POLQ、PRKCG、RAD1、RAD17、RAD21、RAD23A、RAD23B、RAD50、RAD51、RAD51B、RAD51C、RAD52、RAD54B、RAD54L、RAD9A、RBBP8、RECQL、RECQL4、RECQL5、REV1、RFC3、RPA1、RPAIN、RUVBL2、SETX、SMC1A、SMUG1、SOD1、SUMO1、TDG、TNP1、TP53、TP73、TREX2、UBE2A、UBE2B、UBE2N、UBE2V1、UBE2V2、UNG、UPF1、UVRAG、VCP、WRNIP1、XAB2、XPC、XRCC2、XRCC3、XRCC4、XRCC6、BABAM2、BRIP1、CDCA5、CHEK1、DCLRE1C、FANCB、FANCI、MGME1、MND1、MUS81、NEIL1、PARP9、RAD51AP1、RFC4、SMARCB1、TICRR、TRIP13、UBE2T、USP47、ABRAXAS1、ASCC1、CHEK2、NSMCE4A、PARP2、RAD51AP1、RHNO1、RMI2、RPS3、TNKS1BP1、UBB、UIMC1及びUSP45からなる群から選択される10以上の遺伝子であることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明において、前記PARP阻害剤またはDNA損傷薬物が乳がんに適用される場合、前記DNA修復関連遺伝子は、ALKBH2、ATXN3、BABAM2、BRIP1、CDCA5、CHEK1、DCLRE1C、DDB2、ERCC1、EXO1、FANCB、FANCC、FANCI、FEN1、KAT5、MGME1、MND1、MSH5、MUS81、NEIL1、PARP3、PARP9、POLD1、RAD51、RAD51AP1、RAD54L、RFC4、RPAIN、SMARCB1、SMC1A、TICRR、TRIP13、UBE2T、UBE2V2及びUSP47からなる群から選択される10以上の遺伝子であることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明において、前記PARP阻害剤またはDNA損傷薬物が卵巣がんに適用される場合、前記DNA修復関連遺伝子は、ABRAXAS1、ASCC1、BLM、CHEK2、ERCC1、EXO1、GADD45A、MUTYH、NSMCE4A、PARP2、POLE2、RAD51AP1、RAD51B、RECQL4、RHNO1、RMI2、RPS3、SUMO1、TNKS1BP1、UBB、UBE2A、UIMC1、USP45、VCP及びXPCからなる群から選択される10以上の遺伝子であることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明において、前記a)ステップの非機能性転写体は、マイナーアイソフォーム(minor isoform)であることを特徴とすることができ、前記マイナーアイソフォームは、タンパク質の正常な翻訳が行われないか、または機能が失われたタンパク質に翻訳されると推定される転写体またはタンパク質翻訳に利用されない転写体を含むことができるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明において、前記a) ステップの非機能性転写体は、公知のデータベース(例えば、APRISデータベース)から遺伝子ごとによく保存されたタンパク質をコードする転写体(例えば、APRISデータベースではprincipal(1~5)に該当する転写体)を除去して残った転写体であることを特徴とすることができる。
【0059】
本発明において、前記非機能性転写体は、今後の分析の精度を向上させるために、遺伝子別平均Count per million(CPM)値が1以上の遺伝子に由来する非機能性転写体を選別するステップをさらに含むことができる。
【0060】
本発明において、前記b) ステップの遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算するステップで、前記TU値は、一つの遺伝子で発生する全ての転写体のTPM値の合計を分母として、それぞれの転写体のTPMを分子とする比率形式の単位であることを特徴とすることができ、好ましくは下記式1で計算されることを特徴とすることができる:
【数1】
ここでTPMは100万あたりのトランスクリプト(transcripts per million)を意味する。
【0061】
本発明において、前記遺伝子別の非機能性転写体の発現量を取得した後、後日分析の精度を向上させるために、選別した遺伝子から特定の転写体のTU値が1~5%以上、好ましくは3%以上の転写体を選別するステップをさらに含むことができる。
【0062】
本発明において、前記c) ステップの計算されたTU値を分析して値を得るステップは、遺伝子相同性組換え欠乏(genomic Homologous Recombinant Deficiency、gHRD)陽性または薬物反応性があることが知られているサンプルで過剰発現される非機能性転写体のTU値に特定の加重値を乗じて合算して、特定の範囲の判定値を導出したり、各非機能性転写体のTU値が特定の基準値を超える態様に応じて最終判定をする意思決定手順を使用することを特徴とすることができる。
【0063】
本発明において、前記特定の加重値は、特定の範囲の判定値を導出するための値であれば制限なく利用可能であり、遺伝子相同性組換え欠乏(genomic Homologous Recombinant Deficiency、gHRD)陽性または薬物反応性があることが知られているサンプルで過剰発現される非機能性転写体のTU値が大きいほど大きな値を持つことを特徴とすることができる。
【0064】
本発明において前記特定の範囲の判定値は、PARP阻害剤またはDNA損傷薬物の感受性の陽性と陰性を判定できる値であれば制限なく利用可能であり、好ましくは0~1の間の値で正規化できる値であるが、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明において、前記特定の基準値は、遺伝体相同性組換え欠乏(genomic Homologous Recombinant Deficiency、gHRD)陽性または薬物反応性があることが知られているサンプルから得られた非機能性転写体、好ましくは過剰発現する非機能性転写体のTU値に基づいて決定することができるが、これに限定されない。
【0066】
例えば、本発明で前記c) ステップの計算されたTU値を分析して値を得るステップは、遺伝体相同性組換え欠乏(genomic Homologous Recombinant Deficiency、gHRD)陽性または薬物反応性があることが知られているサンプルで過剰発現される非機能性転写体に該当する非機能性転写体のTU値に加重値を乗じた後、合計して0~1の間で正規化して導出するステップを含む方法で行われることを特徴とすることができる。
【0067】
本発明において前記加重値は、合算した値が0~1の間の値になるように付与する値であれば制限なく利用可能であり、遺伝体相同性組換え欠乏(genomic Homologous Recombinant Deficiency、gHRD)陽性または薬物反応性があることが知られているサンプルで過剰発現される非機能性転写体のTU値が大きいほど大きな値を持つことを特徴とすることができる。
【0068】
例えば、本発明において、前記c) ステップの計算されたTU値を分析して値を得るステップは、得られた各非機能性転写体のTU値を、遺伝体相同性組換え欠乏(genomic Homologous Recombinant Deficiency、gHRD)陽性または薬物反応性があることが知られているサンプルから得られた非機能性転写体のTU値に基づいて判定する意思決定手順を使用して行うことができる。
【0069】
本発明において、前記c) ステップの計算されたTU値を分析して値を取得するステップは、人工知能モデルを利用して行うことを特徴とすることができる。
【0070】
本発明において、前記人工知能モデルは、既に知られている遺伝体相同性組換え欠乏(genomic Homologous Recombinant Deficiency、gHRD)陽性サンプルまたは薬物反応性陽性サンプルから導出した遺伝子別の非機能性転写体のTU値に対する加重値及びそれから導出された判定値の基準値、あるいは意思決定のための各TU値の基準値及び意思決定手順構造を機械学習して、gHRDまたは薬物反応性と遺伝子別の非機能性転写体発現量の関係に対する予測モデルを構築することを特徴とすることができる。
【0071】
すなわち、本発明の人工知能モデルは、gHRD陽性または薬物反応性陽性サンプルで過剰発現される遺伝子別の非機能性転写体のTU値に課すことができる加重値の組み合わせと、その加重化されたTU値の合計で構成される判定値の基準値を様々な患者別転写体発現態様を反映できるように機械学習して予測モデルを構築したり、gHRD陽性または薬物反応性陽性サンプルで過剰発現される遺伝子別の非機能性転写体のTU値をそれぞれの基準値と比較する意思決定過程を様々な患者別転写体発現態様を反映できるように構造化し、機械学習を通じて予測モデルを構築することである。
【0072】
例えば、本発明の人工知能モデルは、gHRD陽性または薬物反応性陽性サンプルで過剰発現される遺伝子別の非機能性転写体のTU値に加重値を掛けて合計した値が1に近づくように学習し、予測モデルを構築することである。
【0073】
本発明において、前記様々な患者別転写体発現態様は、患者によって過剰発現される転写体の種類と様式を意味することができる。
【0074】
したがって、入力データとして特定のTU値の組み合わせが入力されたとき、gHRD陽性または薬物反応性陽性サンプルと類似した組み合わせであるほど陽性に近い意思決定値や判定値が出力されるので、これを基準値と比較して基準値以上の場合は、PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に感受性があると判定するものである。
【0075】
本発明において、前記基準値は、サンプルのPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性を判定できる値であれば制限なく使用することができ、好ましくは0.5~1、さらに好ましくは0.5~0.8、最も好ましくは0.5であることができるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明において、前記機械学習は、指導学習であれば制限なく利用可能であるが、好ましくは、K-近傍(k-Nearest Neighbors)、線形回帰(Linear Regression)、ロジスティック回帰(Logistic Regression)、サポートベクターマシン(SVM、Support Vector Machine)、決定木分析(Decision Tree)、ランダムフォレスト(Random Forest)及びニューラルネットワーク(Neural Network)からなる群から選択されるいずれか一つ以上の方法で行われることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0077】
本発明において、前記機械学習をランダムフォレストとして使用する場合、下位決定木分析は下記式2で計算されるジニ不純度を最小化する方向に学習される:
【数2】
ここで、iはi番目のノード、nは結果値クラスの数、kは結果値のk番目のクラスを意味し、pi,kはi番目のノードにあるトレーニングサンプルのうち、クラスkに属するサンプルの割合を意味する。
【0078】
本発明において、前記ランダムフォレストは、一つの訓練データに基づいて重複を許容する複数の訓練データを作成した後、これに基づいて複数の下位決定木分析を訓練した後、これらのモデル予測の平均を計算して最終予測値を導出することになる。
【0079】
本発明において、前記機械学習がgHRDを基準に学習される場合、DNA修復に関連する遺伝子のマイナーアイソフォームらのTU値を入力データとして利用してHRD状態を予測するように学習されたが、この時、HRD状態はgHRDを基準に分類した。
【0080】
gHRD法は、すでにBRCA1/2の追加変異などでHR機能が回復された場合でも陽性を示したり、技術的なartifactsによりHR機能と全く関係なく陽性を示すfalse positiveが多いことが知られており、実際にgHRD(+)で予測されたサンプルのPARP阻害剤やプラチナ薬物に対する感受性は50%もないことが報告された。したがって、gHRD(+)グループ内でもマイナーアイソフォームのTUが統計的に有意に高い転写体があるサンプルだけが機能的にHRDを有しており、実際にPARP阻害剤やDNA損傷薬物に感受性があると決定できるように学習が可能なものである。また、このような低い精度の問題により、gHRDの基準値が高くなるにつれて、実際に機能的にHRDがあり、薬物感受性があるにもかかわらず、基準値を通過できないfalse negativeが発生することにより、再現率も低くなる。したがって、実際に機能的なaTUの態様を示す場合のみを判別することで、精度と再現率の両方が向上できるため、全体的な精度が高くなることになる。
【0081】
本発明において、前記機械学習が薬物反応性を基準に学習される場合、DNA修復に関連する遺伝子のマイナーアイソフォーム(minor isoform)のTU値を入力データとして利用してPARP阻害剤やプラチナなどのDNA損傷薬物に対する反応性を予測するように学習されたが、この時、薬物に対する反応性は通常の方法として薬物治療後6ヶ月以内のがん進行の有無を基準とした。これにより、6ヶ月以内にがんが進行した場合を耐抵抗性患者に、進行しなかった場合を反応性患者に区分した。
【0082】
本発明では、前記人工知能モデルによってHRD陽性あるいは薬物反応性と判定されるサンプルは「転写体ベースの相同性組換え欠乏(transcriptional homologous recombination deficiency、tHRD)」を有すると定義した。
【0083】
本発明では、「genomic scar」及び「signature3」を基準に、遺伝子レベルでHRDを示すグループ(gHRD(+))とHRDを示さないグループ(gHRD(-))の間のTU値の差を統計的に分析し、特定のマイナーアイソフォームが相対的に過剰発現される場合をaberrant TU(aTU)と定義し、gHRD(+)グループで過剰発現する場合を「aTU in gHRD(+)」、gHRD(-)グループで過剰発現する場合を「aTU in gHRD(-)」と決定した。
【0084】
理論的には同じ遺伝子からaTU in gHRD(+)に該当するアイソフォームとaTU in gHRD(-)に該当するアイソフォームの両方が出ることがあるが、実際にはDNA修復に関連する遺伝子ではaTU in gHRD(+)がはるかに頻繁に現れることを確認した。
【0085】
本発明における「genomic scar」及び「signature 3」という用語は、相同性組換えの機能が喪失された細胞で現れる染色体再配列又は突然変異の態様を意味するものであって、相同性組換え経路(pathway)のどの部分が消失されたかとは関係なく、全遺伝子レベルで発生する染色体再配列又は突然変異の態様を意味し、アレイベースの比較ゲノムハイブリダイゼーション(aCGH)、一塩基多型(SNP)ジェノタイピング及び次世代シーケンシング(NGS)で確認することができる。
【0086】
本発明において、前記PARP阻害剤は、PARPタンパク質の活性を阻害できる物質であれば制限なく利用可能であるが、好ましくは、PARPタンパク質の活性を阻害する天然化合物、合成化合物、DNA、RNA、ペプチド、酵素、リガンド、細胞抽出物または哺乳動物の分泌物であってもよく、より好ましくは、AZD2281(オラパリブ、Olaparib)、ABT888(ベリパリブ、Veliparib)、AG014699(ルカパリブ、Rucaparib)、MK-4827(ニラパリブ、Niraparib)、BMN-673(タラゾパリブ、Talazoparib)、BSI201(イニパリブ、Iniparib)、BGP15(O-(3-piperidino-2-hydroxy-1-propyl)nicotinicamidoxime)、INO1001(3-Aminobenzamide)、ONO2231、ニコチンアミド(nicotinamide)、3-アミノベンズアミド(3-aminobenzamide)、4-ジヒドロ-5-[4-(1-ピペリジニル)ブトキシ]-1(2H)-イソキノロン(3,4-dihydro-5-[4-(1-piperidinyl)butoxy]-1(2H)-isoquinolone)、ベンズアミド(benzamide)、キノロン(quinolone)、イソキノロン(isoquinolone)、ベンゾピロン(benzopyrone)、環状ベンズアミド(cyclic benzamide)、ベンゾイミダゾール(benzimidazole)、インドール(indole)及びフェナントリジノン(phenanthridinone)からなる群から選択されることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0087】
本発明におけるPARP阻害剤の標的がん疾患は、ACTH生成腫瘍、急性リンパ球性またはリンパ芽球性白血病、急性または慢性のリンパ芽球性白血病、急性非リンパ球性白血病、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、頸管がん、慢性骨髄性白血病、リンパ腫、子宮内膜症、食道がん、膀胱がん、エウィングス肉腫(Ewing's sarcoma)、舌がん、ホプキンスリンパ腫、カポジス肉腫、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、非ホプキンリンパ腫、骨肉腫、卵巣がん、乳腺がん、前立腺がん、膵臓がん、大腸がん、陰茎がん、レチノブラストーマ、皮膚がん、胃がん、甲状腺圧、子宮がん、精巣がん、ウィルムズ腫瘍及びトロポブラストーマからなる群から選択されることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明において、前記DNA損傷薬物は、細胞内DNAの架橋、二本鎖切断、インターカレーションを誘導するなど、DNAに変態を引き起こす薬物であれば制限なく利用可能であり、好ましくは、ブレオマイシン(Bleomycin)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ネダプラチン(Nedaplatin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エトポシド(Etoposide)及びSN38からなる群から選択されることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明によるPARP阻害剤またはDNA損傷薬物感受性判定方法は、一つの具体化された形態として、以下のステップを含めて行うことができるが、これらに限定されない(図1)。
(1) 生体試料から大規模並列配列分析(massive parallel sequencing)方法でRNA断片(reads)データを確保
(2) 前記RNA断片データをヒューマン参照遺伝体に整列
(3) 前記整列されたデータから品質に応じたフィルタリングを実行
(4) 判定に使用するDNA修復関連遺伝子の非機能性転写体の選別
(5) 遺伝子別の非機能性転写体の発現量の取得
(6) 遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(TU)を計算
(7) 薬物感受性判定人工知能モデルにTU値を入力して出力値を導出
(8) 出力値と基準値を比較して薬物感受性を判定
【0090】
本発明は別の観点から、本発明によるPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法に用いられるPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定装置であって、前記装置は、
(1) 生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体(transcript)別の発現量を取得する情報取得部;
(2) 取得した発現量に基づいて遺伝子別に非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算する計算部; 及び
(3) 計算されたTU値を分析して得られた値が基準値以上の場合、PARP(Poly ADP Ribose Polymerase)阻害剤またはDNA損傷薬物(genotoxic drugs)に対する感受性(susceptibility)があると判定する感受性判定部;
を含むことを特徴とする感受性判定装置に関するものである。
【0091】
本発明において、前記情報取得部は、独立して生産された生体試料から大規模並列配列解析方法で得られたRNA断片(reads)データを受信するデータ受信部;受信したデータを参照遺伝子に整列するデータ整列部;データ品質に応じてフィルタリングを行うフィルタリング部;及びDNA修復関連遺伝子の非機能性転写体を選別してこれらの発現量を取得する発現量取得部を含むことができるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明は、別の観点から、本発明によるPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法に用いられるコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記媒体は、PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性を判定するプロセッサによって実行されるように構成される命令を含み、
a) 生体試料から核酸を抽出し、DNA修復(repair)関連遺伝子の非機能性転写体の転写体(transcript)別の発現量を取得するステップ;
b) 取得した発現量に基づいて遺伝子別の非機能性転写体の転写体別使用率(Transcript Usage、TU)を計算するステップ; 及び
c) 計算されたTU値を分析して得られた値が基準値以上の場合、PARP(Poly ADP Ribose Polymerase)阻害剤またはDNA損傷薬物(genotoxic drugs)に対する感受性(susceptibility)があると判定するステップを含むプロセッサによって実行されるように構成される命令を含むコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【0093】
別の態様では、本発明による方法は、コンピュータを用いて具現することができる。一実施形態では、コンピュータは、チップセットに連結された1つ以上のプロセッサを含む。また、チップセットには、メモリ、記憶装置、キーボード、グラフィックスアダプタ(Graphics Adapter)、ポインティングデバイス(Pointing Device)及びネットワークアダプタ(Network Adapter)などが連結されている。一実施形態において、前記チップセットの性能は、メモリコントローラハブ(Memory Controller Hub)及びI/Oコントローラハブによって可能である。他の実施形態では、前記メモリは、チップセットの代わりにプロセッサに直接連結されて使用することができる。記憶装置は、ハードドライブ、CD-ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD、またはその他のメモリ装置を含む、データを保持できる任意の装置である。メモリは、プロセッサによって使用されるデータ及び命令に関与する。前記ポインティングデバイスは、マウス、トラックボール(Track Ball)または他のタイプのポインティングデバイスであってもよく、キーボードと組み合わせて入力データをコンピュータシステムに送信するために使用される。前記グラフィックアダプタは、ディスプレイ上に画像及びその他の情報を表示す。前記ネットワークアダプタは、近距離または長距離通信網でコンピュータシステムと接続される。本願に使用されるコンピュータは、しかしながら、前記のような構成に限定されず、一部の構成がないか、または追加の構成を含むことができ、また、記憶装置領域ネットワーク(Storage Area Network、SAN)の一部であってもよく、本願のコンピュータは、本願による方法の実行のためのプログラムにモジュールの実行に適合するように構成することができる。
【0094】
本願におけるモジュールとは、本願による技術的思想を実行するためのハードウェア及び前記ハードウェアを駆動するためのソフトウェアの機能的、構造的結合を意味することができる。例えば、前記モジュールは所定のコードと前記所定のコードが実行されるためのハードウェアリソース(Resource)の論理的な単位を意味することがあり、必ずしも物理的に接続されたコードを意味したり、一種類のハードウェアを意味するものではないことは当業者に自明なことである。
【0095】
本願による方法は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェア、またはこれらの組み合わせで具現することができる。ソフトウェアで具現される場合、記憶媒体は、コンピュータのような装置によって読み取り可能な形で保存または送信する任意の媒体を含む。例えば、コンピュータ読み取り可能な媒体は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置及びその他の電気的、光学的又は音響的信号伝達媒体などを含む。
【0096】
このような観点から、本願はまた、上述の本願によるステップを含む動作を行うようにするプロセッサを実行させる実行モジュールを含むコンピュータ読み取り可能な媒体に関するものである。
【0097】
本発明は、別の観点から、本発明にPARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法に利用される標的化RNA配列分析(Targeted RNA-Seq)キットであって、前記キットは、DNA修復関連遺伝子の転写体を捕捉するプローブ;及び捕捉した転写体を増幅するプライマーを含むことを特徴とする標的化RNA配列分析キットに関するものである。本発明において、前記転写体は非機能性転写体であることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0098】
本発明において、前記キットは、バッファ(buffer)、DNAポリメラーゼ(DNA polymerase)、DNAポリメラーゼコファクター(DNA polymerase cofactor)及びデオキシリボヌクレオチド-5-三リン酸(dNTP)のような核酸増幅反応(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)を実施するのに必要な試薬を選択的に含むことができる。選択的に、本発明のキットは、様々なオリゴヌクレオチド分子、逆転写酵素(reverse transcriptase)、様々なバッファ及び試薬、及びDNAポリメラーゼ活性を抑制する抗体を含むことができる。また、前記キットの特定の反応で使用される試薬の最適量は、本明細書の開示事項を習得した当業者によって容易に決定されることができる。典型的に、本発明の装備は、前述の構成成分を含む別途のパッケージまたはコンパートメント(compartment)で製作されることができる。
【0099】
一実施形態では、前記キットは、サンプルを入れる区画されたキャリア手段、試薬を含む容器、プローブまたはプライマーを含む容器、及び増幅産物を検出するためのプローブを含む容器を含むことができる。
【0100】
前記キャリア手段は、ボトル、チューブなどの1つ以上の容器を含むのに適しており、各容器は、本発明の方法で使用される独立した構成要素を含む。本発明の明細書において、当該分野の通常の知識を有する者は、容器内の必要な製剤を容易に分配することができる。
【0101】
本発明はまた、前記PARP阻害剤またはDNA損傷薬物に対する感受性判定方法に従って、感受性があると判定された患者にPARP阻害剤またはDNA損傷薬物を投与するステップを含むがん治療方法に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0102】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、もっぱら本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0103】
実施例1. 乳がん、卵巣がん患者の遺伝子データ及び転写体データの取得
TCGAデータベースから全エクソームシーケンシング(whole-exome sequencing, WES)、ジェノタイピングデータ(Affymetrix SNP chip)、RNAシークエンシング(RNA-seq)データが利用可能な乳がん645人のサンプル及びプラチナ治療反応データが利用可能な卵巣がん315人のサンプルに関するデータを収集した(https://portal.gdc.cancer.gov/)。乳がん細胞株の場合、CCLEデータベースからWES及びRNA-seqデータを取得した(https://portals.broadinstitute.org/ccle)。
【0104】
実施例2. ゲノムHRD(gHRD)の算出
実施例1で収集したサンプルのgenomic scarは、Affymetrix SNPデータに基づいて既存のソフトウェア(https://github.com/GerkeLab/TCGAhrd)を使用して算出し、WESデータに基づいているmutational signature 3は、TCGAでmSignatureDB(Po-Jung Huang. et al. mSignatureDB a database for deciphering mutational signatures in human cancers)でdeconstructSigsを使用して算出された値を使用した。
【0105】
gHRD(+)とgHRD(-)を区別するために、genomic scarとmutational signature 3のmedian値を基準に使用した。インデックス(genomic scarとmutational signature 3のmedian値)間の不一致によるエラーを除去するために、両方のインデックスのmedianを超える場合はgHRD(+)に分類し、median以下である場合はgHRD(-)に分類した。
【0106】
実施例3. トランスクリプトの使用(Transcript Usage, TU)の算出
TCGA、CCLEそれぞれにおいてRNA-seq bamファイルをインプットとしてストリングタイ2パス方式を使用して新規トランスクリプトのTPM(transcripts per million)を算出した。当該過程は、参考文献(Mihaela Peratea. et al. Nat Protoc. Vol. 11(9)、pp.1650-1667、2016.)を参考にした。
【0107】
レファレンスは、gencode v29 gtf(CCLEの場合は、gencode v19 gtfを利用)を使用して組み立てステップを行い、そこから出てきた個々のサンプルのgtfをマージして製造したmerged.gtfを新しいレファレンス注釈(annotation)として使用して2回目のトランスクリプトの定量化ステップを行った。
【0108】
既存のフォームでアノテーションが不可能なde novo/novelトランスクリプトの場合、遺伝子アノテーションのためにgffcompareを使用して最も類似したアノテーショントランスクリプトの遺伝子を当該フォームに割り当てた。
【0109】
その結果、各サンプルで発現するほとんどのトランスクリプトのTPM値が得られ、これを基に下記式1で各トランスクリプト別のTUを算出した(図2)。
【数3】
ここでTPMは100万あたりのトランスクリプト(transcripts per million)を意味する。
【0110】
実施例4. マイナーアイソフォームの選別
Isoformの分類のためには、APPRISデータベース(Jose Manuel Rodriguez. et al. Nucleic Acids Res.Vol. 46(D1):D213-D217、2018.)が提供するトランスクリプトのアノテーションを使用し、当該アノテーションのバージョンは2019.02.v29である。
【0111】
マイナーアイソフォーム(alternative transcript)を定義するために、APPRISが提供する基準をそのまま使用し、機能的にも進化的によく保存されたタンパク質をコードするトランスクリプトであるプリンシパル(1~5)をメジャーフォームと判断して全て除去し、結果としてalternativeあるいはnot-reportで構成されたマイナートランスクリプトセットを選別した。
【0112】
発現量が低い遺伝子をフィルタリングするために、遺伝子別のHTSeqリード回数データを通じて遺伝子別のカウントパーミリオン(CPM)正規化を行った後、全サンプルの平均CPM>1である遺伝子のみを選別し、この遺伝子に対してトランスクリプト使用(TU)が3%以上(TU>=0.03)である場合のみ最終TUセットとして選定した。
【0113】
実施例5. gHRD関連異常なTU(aTU)発掘及び機能分析
5-1. aTUの発掘
図2に示すように、gHRD(+)、gHRD(-)グループ間の比較を通じてaTUを発掘した。より精密な分類のために、gHRD(+)内でgenomic scar値が上位50%であるサンプルとgHRD(-)内でgenomic scar値が下位50%であるサンプルを追加選別した。
【0114】
この二つのグループ間のTU値の差の統計的有意性は、マン・ホイットニーのU検定を使用し、Benjanimi-Hochberg補正(BH correction)を使用して補正を行った。
【0115】
gHRD(+)で特定のマイナーアイソフォームのTUが有意に(FDR<1%)高い場合をaTU in gHRD(+)と定義し、逆にgHRD(-)で特定のマイナーアイソフォームのTUが有意に(FDR<1%)高い場合をaTU in gHRD(-)と定義した。
【0116】
5-2. 機能分析結果
乳がん患者サンプルを対象にDNA修復、複製、組換えの3つのGene ontology parent termsをマージしてHR-related term(1,033個の遺伝子)と定義し、これを利用してGSEA(prerank)分析した結果、図3に示すように、DNA修復に関連する遺伝子が統計的に密集していることを確認した。
【0117】
5-1の方法でマン・ホイットニーのU検定(FDR<5%)のU値を基準にトランスクリプトソーティングして、当該マトリックスにHR-related termをオーバーラップした。この時、U値はその値が大きいほど、そのgeneのマイナーアイソフォームがgHRD(+)サンプルでより多く発現されることを意味する。
【0118】
5-1の方法を卵巣がんにも適用してaTUを発掘した。卵巣がんの場合、遺伝子数の不足によりBH補正は適用せず、マン・ホイットニーのU検定のP<0.05を適用し、gene別に最も重要なaTUを選定した。その後、遺伝子別の方向性によってaTU in gHRD(+)、aTU in gHRD(+)に区分した結果、図3(B)に示すように、DNA修復に関連する遺伝子が統計的に密集していることを確認した。
【0119】
実施例6. 転写HRD(tHRD)モデルの構築
6-1. モデル構築のための入力データの準備
実施例5-1の方法で導出した遺伝子のうち、DNA修復に該当する遺伝子を選別した結果、乳がんでは総36個の遺伝子(104個のマイナーランスクリプト)、卵巣がんでは25個の遺伝子(89個のマイナーランスクリプト)を選別した。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
乳がんの場合、115個のトランスクリプトsのうち、薬物反応テストに使用したCCLEデータセットでも利用可能な104個を最終的なモデルのインプットとして準備し、卵巣がんの場合は全てのトランスクリプトをインプットとして準備した。
【0123】
6-2.モデルの構築
tHRD予測モデルとしてランダムフォレストを使用した。
【0124】
乳がんと卵巣がんは共通してgHRDを基準に陽性と陰性に分けて予測モデルを構築し、卵巣がんの場合はプラチナ反応性を基準に反応性と抵抗性に分けて予測モデルをさらに生成した。
【0125】
トレーニングセットとテストセットの比率は、7:3でスプリットし、ランダム検索CVパッケージを利用してハイパーパラメータ調整を100回行い、それぞれ3分割交差検証を通じて平均検証精度を測定して最適のハイパーパラメータを選定した。
【0126】
sklearn.ensembleモジュールのRandomForestClassifierを通じてランダム検索CVで見つけたハイパーパラメータでモデルを学習し、予測モデルを構築した。
【0127】
実施例7. 薬物反応分析
7-1. 乳がん
CCLE細胞株の体細胞変異データをインプットとして使用し、Rpackage deconstrucSigsを通じて96 class typeに分類した後、Sgenome.Hsapiens.UCSC.hg19 をreferenceとし、既に定義されたCosmic signatureに対してNMF(Non-negative matrix factorization)を用いてそれぞれのsignature値を算出した。
【0128】
この時、フィッティング方法で生じる誤った署名の割り当てを補正するために、参考文献(Francesco Maura. et al. Nat. cummunications、Vol. 10:2069, 2019.)を参照して、乳がん特有のCosmic signature setでフィッティングしたsignature 3を算出した。これを基に、signature 3の値上位25%に属するcell lineをgHRD(+)、残りをgHRD(-)と定義した。
【0129】
また、比較のために、乳がん特異的なものではなく、Cosmic signature全体に対してフィッティングしたsignature 3を算出した。
【0130】
GDSC(Genomics of Drug Sensitivity in Cancer)データが使用可能な36個の乳がん細胞株に対する104個のTUデータを通じて前記乳がんランダムフォレストモデルから予測されたtHRD(+)とtHRD(-)間の薬物反応差を測定し、薬物感受性としてはGDSCが提供する2020.02更新されたデータのPARP阻害剤(Olaparib、Rucaparib、Veliparib、Talazoparib)及び他のDNA-損傷剤(Bleomycin、Cisplatin、Doxorubicin、Etoposide、SN-38)に対するIC50値を使用した。両群間のIC50の比較はマン・ホイットニーのU検定を使用した。
【0131】
精度リコールのためには、signature 3の値とtHRD予測値を変化させながら、IC50の中央値を基準に真陽性、偽陽性、真陰性、偽陰性数を測定した。
【0132】
その結果、図6及び図7に示すように、gHRD方法と比べてtHRD方法の精度が格段に優れていることを確認した。
【0133】
また、104個のトランスクリプトのうち、下記の表3のように主要なトランスクリプト20個だけを利用して前記のような方法で乳がん細胞株の薬物反応を予測した結果、図8に示すように、gHRD方法よりも依然として性能が優れていることを確認した。
【0134】
【表3】
【0135】
それだけでなく、104個のトランスクリプトのうち、下記の表4のように主要なトランスクリプト10個だけを利用して前記のような方法で乳がん細胞株の薬物反応を予測した結果、図9に示すように、gHRD方法よりも依然として性能が優れていることを確認した。
【0136】
【表4】
【0137】
7-2. 卵巣がん
7-1と同じ方法を使用するが、TCGA卵巣がん患者のプラチナレスポンスを分類するために、参考文献(Victor M. Villalobos. et al. JCO Clinical Cancer Informatics, Vol.2、pp.1-16、2018.)で提示するfirst-line therapyを受けた患者のうち、6ヶ月以内に進行が生じた場合はプラチナ抵抗性として分類し、そうでない場合の患者はプラチナ反応性として分類した。参考文献で提供する全体450人の患者のうち、RNA-seq、genomic scar、signature 3が全て利用可能な162人を用いて卵巣がん予測モデルに使用した。
【0138】
その結果、図10に示すように、gHRD方法に比べtHRDベースの方法の精度が優れており、tHRDに分類された場合の患者生存率も同様にgHRDに分類された場合よりも明らかな差を示すことを確認した。
【0139】
また、89個のトランスクリプトのうち、下記の表5のように主要なトランスクリプト10個だけを利用して前記のような方法で卵巣がん患者の薬物反応を予測した結果、図11に示すように、gHRD方法と同等か、または依然として性能が優れていることを確認した。
【0140】
【表5】
【0141】
さらに、実施例7-1のようにgHRDを基準に予測モデルを学習する代わりに、前記文献で提示されたように6ヶ月以内の進行の有無によるプラチナ反応性を基準に追加の予測モデルを構築して性能を確認した。
【0142】
その結果、図12に記載されているように、gHRD方法に比べtHRDベースの方法の予測性能が優れており、tHRDに分類された場合の患者生存率もgHRDに分類された場合と同様に顕著な差を示すことを確認した。
【0143】
7-3. 実際の卵巣がん患者でのモデル性能検証
実施例6で構築したモデル(TCGA-OVサンプルのDNA修復関連遺伝子アイソフォームのTU値をランダムフォレストモデルの入力データとして活用してゲノムHRDの有無を決定するように学習させた人工知能モデル)をプラチナ化学療法処置した卵巣がん患者(n=27)のRNA-seqデータに適用して得られた最適基準点(0.4841)を検証するために、独立したプラチナ化学療法処置した卵巣がん(n=20)サンプルのMGI DNBプラットホームベースのRNAシーケンシングデータで反応性を予測してHRDクラスを区分した。
【0144】
その結果、薬物治療後6ヶ月以内のがん転移を基準にした場合、モデルの予測結果は高い特異性(1.0)を示し、12ヶ月以内のがん転移を基準にした場合、モデルの予測結果は特異性(0.78)、感度(0.63)であることを確認した(表6)。
【0145】
【表6】
【0146】
また、がん転移期間(PFS)を通じて生存分析を行った結果、以前に得られた最適な基準値(0.4841)で分類した場合、HRD陽性(Positive)に分類された患者が2年未満の期間でがん転移が統計的に有意に低いことを確認した(図13)。
【0147】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に説明したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、これらの具体的な技術は単なる好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が限定されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明によるPARP阻害剤またはDNA損傷薬物感受性判定方法は、従来の遺伝子変異情報を基にPARP阻害剤またはDNA損傷薬物感受性を判定する方法とは異なり、遺伝子から転写された転写体の情報を利用するため、リアルタイムで感受性を判定できるだけでなく、精度が高く有用である。
図1
図2
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図4
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図12
図13