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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】監視システムおよび監視方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241227BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023543517
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2021030955
(87)【国際公開番号】W WO2023026356
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】田畠 広泰
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】橋口 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 理子
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 仁
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024856(JP,A)
【文献】特開2005-122707(JP,A)
【文献】特開2007-034712(JP,A)
【文献】特開2019-028556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機の保守サービスの提供を監視する監視システムであって、
前記保守サービスを開始してから前記保守サービスの実施結果の顧客に対する報告が完了するまでの複数の作業に要する作業期間の遅延状態を予測する予測モデルと、前記複数の作業の各々の基準期間に対する実績期間とを記憶する記憶部と、
前記予測モデルおよび前記複数の作業の各々の実績期間に基づき前記遅延状態を予測する予測部と、
前記予測部が予測した前記遅延状態を表示する表示部とを備え、
前記顧客は、前記昇降機の保守会社と前記保守サービスの契約を行っており、
前記複数の作業は、前記保守サービスと、前記保守サービスの結果を入力する事務作業と、前記保守サービスの報告書を前記顧客が閲覧可能な状態にする報告作業とを含み、
前記予測モデルは、前記複数の作業の各々の基準期間と当該基準期間に対する実績期間との差分を用いて前記遅延状態を予測するモデルである、監視システム。
【請求項2】
前記複数の作業の各々の基準期間を用いて前記予測モデルを生成する生成部をさらに備える、請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記保守サービスを行ったときに前記昇降機が発報する発報データをさらに記憶し、
前記予測部は、前記発報データが発報されていないときは、前記発報データが発報されているときよりも、遅延していると評価されるように前記遅延状態を予測する、請求項1または請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記記憶部は、過去の前記保守サービスの結果をさらに記憶し、
前記監視システムは、過去の前記保守サービスの結果に基づき、前記予測モデルを更新する第1更新部をさらに備える、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項5】
前記予測モデルは、前記保守サービス中にトラブルが発生しなかった場合において前記遅延状態を予測する第1予測モデルと、前記保守サービス中にトラブルが発生した場合において前記遅延状態を予測する第2予測モデルとを含み、
前記予測部は、
前記保守サービス中にトラブルが発生しなかった場合は、前記第1予測モデルを用いて前記遅延状態を予測し、
前記保守サービス中にトラブルが発生した場合は、前記第2予測モデルを用いて前記遅延状態を予測する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の監視システム。
【請求項6】
前記保守サービス中にトラブルが発生した場合における、過去の前記保守サービスの結果に基づき前記第2予測モデルを更新する第2更新部をさらに備える、請求項5に記載の監視システム。
【請求項7】
コンピュータが実行する、昇降機の保守サービスの提供を監視する監視方法であって、
前記保守サービスを開始してから前記保守サービスの実施結果の顧客に対する報告が完了するまでの複数の作業に要する作業期間の遅延状態を予測する予測モデルを記憶するステップと、
前記複数の作業の各々の基準期間に対する実績期間を記憶するステップと、
前記予測モデルおよび前記複数の作業の各々の実績期間に基づき前記遅延状態を予測するステップと、
前記予測するステップが予測した前記遅延状態を表示するステップとを備え、
前記顧客は、前記昇降機の保守会社と前記保守サービスの契約を行っており、
前記複数の作業は、前記保守サービスと、前記保守サービスの結果を入力する事務作業と、前記保守サービスの報告書を前記顧客が閲覧可能な状態にする報告作業とを含み、
前記予測モデルは、前記複数の作業の各々の基準期間と当該基準期間に対する実績期間との差分を用いて前記遅延状態を予測するモデルである、監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降機の保守サービスの提供を監視する監視システムおよび監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、昇降機の保守サービスの提供にあたり、SLA(Service Level Agreement)が規定されるようになっている。たとえば、特開2019-191662号公報(特許文献1)に記載された設備遠隔監視システムにおいては、提供する保守サービスごとに評価項目を定め、評価項目ごとに提供する品質レベルの目標値をSLA契約として予め定めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-191662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の設備遠隔監視システムにおいては、SLAの対象範囲として、保守サービスの開始から完了までを対象としている。しかしながら、保守サービス全体(保守サービスを開始してから保守結果を顧客に届けるまでの期限管理)を対象として、品質レベルを向上させることについては何ら考慮されていなかった。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る監視システムは、昇降機の保守サービスの提供を監視する。監視システムは、記憶部と、予測部と、表示部とを備える。記憶部は、保守サービスを開始してから保守サービスの実施結果の顧客に対する報告が完了するまでの複数の作業に要する作業期間の遅延状態を予測する予測モデルと、複数の作業の各々の基準期間に対する実績期間とを記憶する。予測部は、予測モデルおよび複数の作業の各々の実績期間に基づき遅延状態を予測する。表示部は、予測部が予測した遅延状態を表示する。予測モデルは、複数の作業の各々の基準期間と当該基準期間に対する実績期間との差分を用いて遅延状態を予測するモデルである。
【0007】
本開示に係る監視方法は、昇降機の保守サービスの提供を監視する方法である。監視方法は、保守サービスを開始してから保守サービスの実施結果の顧客に対する報告が完了するまでの複数の作業に要する作業期間の遅延状態を予測する予測モデルを記憶するステップと、複数の作業の各々の基準期間に対する実績期間を記憶するステップと、予測モデルおよび複数の作業の各々の実績期間に基づき遅延状態を予測するステップと、予測するステップが予測した遅延状態を表示するステップとを備える。予測モデルは、複数の作業の各々の基準期間と当該基準期間に対する実績期間との差分を用いて遅延状態を予測するモデルである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る監視システムの概要を説明する図である。
図2】第1実施形態に係る監視システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る監視システムの機能ブロック図の一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る監視システムが実行する処理のフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る作業期間の遅延状態を説明するための図である。
図6】第1実施形態に係る作業期間の遅延状態を説明するための図である。
図7】第1実施形態に係る作業期間の遅延状態を説明するための図である。
図8】第1実施形態に係る作業期間の遅延状態を説明するための図である。
図9】第1実施形態に係る作業期間の遅延状態を説明するための図である。
図10】第2実施形態に係る監視システムの機能ブロック図の一例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る監視システムが実行する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0011】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る監視システム1について説明する。図1は、第1実施形態に係る監視システム1の概要を説明する図である。図2は、第1実施形態に係る監視システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0012】
監視システム1は、昇降機の保守サービスの提供を監視するシステムである。以下では、昇降機の一例としてエレベーターを例示し、エレベーターの保守サービスについて説明する。監視システム1は、監視装置200と、保守会社端末400と、エレベーター制御装置100とを含む。
【0013】
本実施の形態においては、顧客と保守会社との契約において、昇降機の保守サービス全体をSLAの評価項目として定めているものとする。監視装置200は、昇降機の保守サービス全体を対象として、その遅延状態を管理する。ここで、「保守サービス全体」とは、保守サービス(「保守作業」とも称する)を開始してから保守サービスの実施結果の顧客に対する報告(「保守結果報告」とも称する)が完了するまでを指す。
【0014】
SLAの契約として、保守サービスの開始から保守結果報告の完了まで期間の目標値(後述する「目標日数X」)が定められている。本実施の形態では、監視装置200が保守サービス全体の遅延状態を管理することで作業遅延に対する注意喚起を行い、保守結果報告の期限を遵守するよう行動を促す。これにより、SLAの遵守率を向上させることができる。
【0015】
ここでは、保守会社は、ビル10のオーナーである顧客とビル10のエレベーターを定期的に点検する契約(保守サービスの契約)を行っているものとする。たとえば、目標日数X=28日としてSLA契約を行っている場合、監視装置200は、28日以内に点検結果を報告できるように、作業の遅延状態を管理する。その具体的方法については、以下で説明する。
【0016】
本例において、ビル10は、顧客が所有する4階建てのビルである。ビル10には、エレベーターが設置されている。エレベーターのかご341は、昇降路351内を移動する。かご341は、各階に停止可能であり、1階の乗場331~4階の334からかご341に乗車可能である。ビル10の機械室には、エレベーター制御装置100が設置されている。エレベーター制御装置100は、かご341を制御する。
【0017】
本実施の形態において、エレベーター制御装置100は、ネットワークを介して監視装置200と接続可能である。監視装置200は、昇降機の保守サービスの提供を監視する装置である。監視装置200は、たとえば、保守会社の情報センター20に設置されている。
【0018】
保守会社端末400は、ネットワークを介して監視装置200と接続可能である。保守会社端末400は、たとえば、保守会社の支店40に設置されている。保守会社端末400は、昇降機の保守サービスに関する情報を入力するための端末である。
【0019】
本例においては、顧客はビル10におり、顧客が所有する顧客端末300にアクセス可能であるとする。顧客端末300は、ネットワークを介して監視装置200と接続可能である。
【0020】
図2に示すように、監視装置200は、CPU(Central Processing Unit)211と、ROM(Read Only Memory)212と、RAM(Random Access Memory)213と、記憶部214と、通信インターフェイス215と、I/Oインターフェイス216とを有する。これらは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0021】
CPU211は、監視装置200全体を総括的に制御する。CPU211は、ROM212に格納されているプログラムをRAM213に展開して実行する。ROM212は、監視装置200が行う処理の処理手順が記されたプログラムを格納する。
【0022】
RAM213は、CPU211がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。また、記憶部214は、不揮発性の記憶装置であり、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。
【0023】
通信インターフェイス215は、エレベーター制御装置100、保守会社端末400および顧客端末300との通信を制御する。監視装置200は、通信インターフェイス115を介してこれらの装置またはシステムと通信を行うことができる。
【0024】
I/Oインターフェイス216は、CPU211が外部機器と接続するためのインターフェイスである。たとえば、CPU211は、I/Oインターフェイス216を介してディスプレイなどの表示装置、あるいはキーボードやマウスなどの入力装置と接続可能である。
【0025】
図示しないが、顧客端末300および保守会社端末400も、監視装置と同様に、CPUと、ROMと、RAMと、記憶部と、通信インターフェイスと、I/Oインターフェイスとを有するものとする。
【0026】
エレベーター制御装置100は、CPU111と、ROM112と、RAM113と、通信インターフェイス115とを有する。これらは、バスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0027】
CPU111は、エレベーター制御装置100全体を総括的に制御する。CPU111は、ROM112に格納されているプログラムをRAM113に展開して実行する。ROM112は、エレベーター制御装置100が行う処理の処理手順が記されたプログラムを格納する。
【0028】
RAM113は、CPU111がプログラムを実行する際の作業領域となるものであり、プログラムやプログラムを実行する際のデータ等を一時的に記憶する。
【0029】
通信インターフェイス115は、かご341、各階の乗場に設置された装置(呼び釦を含む乗場装置)、監視装置200との通信を制御する。エレベーター制御装置100は、通信インターフェイス115を介してこれらの装置等と通信を行うことができる。
【0030】
エレベーター制御装置100は、保守員21が所持するメンテナンスコンピュータ30と接続可能である。メンテナンスコンピュータ30は、保守作業の際に使用する端末(たとえば、タブレット端末)であって、エレベーター制御装置100と接続可能である。
【0031】
メンテナンスコンピュータ30は、エレベーター制御装置100と接続することで、エレベーター制御装置100が保持する各種情報(信号)の取得、エレベーター制御装置100の設定変更等を行うことができる。
【0032】
図1に戻り、保守員21は、保守作業を開始する際に、メンテナンスコンピュータ30をエレベーター制御装置100に接続する。
【0033】
エレベーター制御装置100は、メンテナンスコンピュータ30との接続により、保守作業を開始したことを示す発報データを発報する。監視装置200は、ネットワークを介して、この発報データを受信および記録する(詳細は後述する)。その後、本例では、保守員21は、3階の乗場333において、点検作業を行っている。
【0034】
保守サービスの開始から保守結果報告の完了までには、複数の作業を行う必要がある。本実施の形態においては、複数の作業として、N個(たとえば、10個)の作業を行う必要がある。N個の作業の各名称は、フロー1、フロー2、フロー3、・・・フローNであるとする。
【0035】
詳しくは、図4図6を用いて後述するが、フロー1は、保守員が行う保守作業である。フロー2は、事務員が行う事務作業である。フロー3は、確認者が行う確認作業である。そして、最後のフローNは、報告者が行う報告作業である。報告者が報告作業を行うと、顧客は、ビル10の顧客端末300において、保守作業の報告書を閲覧することができる。
【0036】
フロー1~Nの入力作業は、保守会社端末400を用いて行われる。保守会社端末400は、複数の作業者がそれぞれ所持する複数の端末であってもよい。保守会社端末400において入力されたデータは、ネットワークを介して監視装置200の記憶部214に記憶される。
【0037】
監視装置200は、フロー1~Nに関する遅延状況を予測する。予測した遅延状況は、保守会社端末400に接続された表示装置、あるいは、監視装置200に接続された表示装置で確認することができる。なお、監視装置200および保守会社端末400は、1台の装置によって構成するようにしてもよい。
【0038】
次に、監視システム1が実行する各種処理について説明する。図3は、第1実施形態に係る監視システム1の機能ブロック図の一例を示す図である。
【0039】
図3に示すように、監視システム1は、予測部130、表示部131、および生成部132を備える。記憶部214は、第1予測モデル191、実施履歴情報192、発報データ193、および過去履歴情報194などの情報を記憶する。なお、記憶部214が記憶する情報の一部または全部は、保守会社端末400が備える記憶装置に記憶してもよいし、その他の外部装置(データベースサーバ等)が備える記憶装置に記憶するようにしてもよい。
【0040】
監視システム1が実行する各種処理は、たとえば、保守会社端末400あるいは監視装置200に接続された入力装置をユーザーが操作することで実行するようにしてもよい。監視システム1が実行する各種処理は、監視装置200および保守会社端末400のいずれかが実行してもよいし、一部を監視装置200が実行し、残りを保守会社端末400が実行してもよい。
【0041】
監視装置200は、所定のURLにアクセスすることで保守会社端末400から接続可能なWEBサーバを備える装置であってもよい。所定のURLにアクセスすることで、フロー1~Nの入力画面と監視装置200が予測した遅延状況とを、保守会社端末400が起動するブラウザ上で表示させる構成にしてもよい。あるいは、保守会社端末400に専用のソフトウェアをインストールして、フロー1~Nの入力画面および遅延状況を、保守会社端末400の表示装置に表示させるようにしてもよい。
【0042】
第1実施形態において、予測部130は、予測モデルとして第1予測モデル191を用いて作業期間の遅延状態を予測する。ここで、「作業期間」は、保守サービスを開始してから保守結果報告が完了するまでの複数の作業(フロー1~N)に要する期間、つまり、保守サービス全体が完了するまでの期間を指す。
【0043】
予測モデル(第1予測モデル191)は、複数の作業(フロー1~N)の各々の基準期間と当該基準期間に対する実績期間との差分を用いて遅延状態を予測するモデルである。「基準期間」(「基準日数」とも称する)は、各作業(フロー)に要すると想定される日数を規定したものである。「実績期間」(「実績日数」とも称する)は、実際に各作業(フロー)に要した日数である。
【0044】
実績期間は、作業担当者に作業が割当てられて(フローの開始)から、作業担当者が作業を完了(フローの終了)するまでの期間を指す。たとえば、フロー1において、保守員が現場での点検作業に着手したタイミングがフローの開始とは限らない。保守員に作業が割当てられてから、実際に現場に赴くまでの期間も実績期間に含まれる。また、基準期間は、過去の実績期間の平均値から算出するようにしてもよいが、作業担当者の作業効率、あるいは月間の勤務時間などを加味して基準期間を補正してもよい。
【0045】
以下、フロー1の基準期間を「基準日数1」、フロー1の実績期間を「実績日数1」とそれぞれ称する。フロー2の基準期間を「基準日数2」、フロー2の実績期間を「実績日数2」とそれぞれ称する。以下同様であり、フローNの基準期間を「基準日数N」、フローNの実績期間を「実績日数N」とそれぞれ称する。たとえば、予測モデルは、以下の式で表すことができる。
【0046】
予測モデル=-1×[X-(基準日数1+基準日数2・・・+基準日数N)+{(基準日数1-実績日数1)×m1+(基準日数2-実績日数2)×m2・・・+(基準日数N-実績日数N)×mN}]+Y
本予測モデルを用いた場合、出力される予測結果が大きければ大きいほど、保守作業結果の報告完了までに大きな遅延が発生することが示される。
【0047】
ここで、Xは、保守作業を開始してから保守結果報告が完了するまでの目標日数である。m1,m2・・・mNは、各フローを実施済みの場合に「1」を設定し、各フローが未実施の場合は「0」を設定する。未実施のフローには実績日数に「0」が設定される。実施済みのフローには、実績日数にデータがセットされる。
【0048】
Yは、後述の、発報データが発報されていないとき(この状態を「未発報状態」とも称する)に100を設定し、発報データが発報されているとき(この状態を「発報済状態」とも称する)に「0」を設定する。なお、予測モデルに発報データを使用しなくてもよい。この場合、常にY=0となる。
【0049】
生成部132は、複数の作業(フロー1~N)の各々の基準期間を用いて第1予測モデル191を生成する。具体的には、生成部132は、過去履歴情報194に基づき基準日数1~Nをそれぞれ決定する。そして、生成部132は、決定した基準日数1~Nを設定することで、第1予測モデル191を生成している。
【0050】
過去履歴情報194は、保守会社が管理する全ビルについての保守サービス全体の履歴情報である。生成部132は、ビルごと、ビル内の昇降機ごと、あるいは昇降機の機種ごとに、過去履歴情報194から実績日数1~Nのセットを取得可能である。
【0051】
たとえば、取得した複数の実績日数1の平均値を基準日数1として決定する。同様に、取得した複数の実績日数2の平均値を基準日数2として決定し、取得した複数の実績日数Nの平均値を基準日数Nとして決定する。
【0052】
ビル10に関する全ての実績日数1~Nを取得して、基準日数1~Nを算出する場合は、ビル10固有の事情に応じた予測モデルを構築することができる。ビルが大規模であれば作業時間が長くなるといった事情等を加味することができる。
【0053】
ビル10に設置されたエレベーターのA号機に関する全ての実績日数1~Nを取得して、基準日数1~Nを算出する場合は、A号機固有の事情に応じた予測モデルを構築することができる。エレベーターの機種Xに関する全ての実績日数1~Nを取得して、基準日数1~Nを算出する場合は、機種X固有の事情に応じた予測モデルを構築することができる。このようにすることで、昇降機ごとあるいは現場ごとなど、状況に応じた予測モデルを構築することができる。
【0054】
監視装置200の記憶部214は、保守サービスを行ったときに昇降機が発報する発報データ193を記憶する。上述のように、エレベーター制御装置100は、メンテナンスコンピュータ30との接続を検出すると、保守サービスを開始したことを示す発報データを発報する。
【0055】
監視装置200は、ネットワークを介して、発報された発報データを受信する。受信した発報データは、記憶部214に記憶される。予測部130は、遅延状態を予測する際に、記憶部214から発報データを取得する。
【0056】
予測部130は、未発報状態のときは発報済状態のときよりも遅延していると評価されるように遅延状態を予測する。具体的には、未発報状態においてY=100を設定し、発報済状態においてY=0を設定している。このようにすることで、発報データにより保守作業が行われたことを確実に把握できるとともに、保守作業の実施に対する注意喚起(保守作業の実施の促進)を行うことができる。
【0057】
なお、予測モデルは、以下のように重みW1,W2を付加したものであってもよい。W1は、対象となる案件における過去のトラブル発生回数、あるいはエレベーター自体の故障履歴に基づき値を設定する(たとえば、トラブルが発生しやすい案件においては、W1の値を大きくする)。W2は、顧客のレスポンスの速さに基づき値を設定する(たとえば、顧客のレスポンスが早い案件においては、W2の値を小さく(負の値に)設定する)。
【0058】
予測モデル=-1×[X-(基準日数1+基準日数2・・・+基準日数N)+{(基準日数1-実績日数1)×m1+(基準日数2-実績日数2)×m2・・・+(基準日数N-実績日数N)×mN}]+Y+W1+W2
図4は、第1実施形態に係る監視システム1が実行する処理のフローチャートである。図4のフローチャートは、予測部130および表示部131が実行する処理を示す。以下、「ステップ」を単に「S」とも称する。
【0059】
図4に示すように、上記処理が開始すると、S1において、監視システム1の予測部130は、記憶部214が記憶する予測モデルと、複数の作業(フロー1~N)の各々の基準期間に対する実績期間とを取得し、処理をS2に進める。具体的に、予測部130は、第1予測モデル191と、実施履歴情報192から実績日数1~Nとを取得する。
【0060】
S2において、監視システム1の予測部130は、第1予測モデル191および複数の作業(フロー1~N)の各々の実績期間に基づき遅延状態を予測し、処理をS2に進める。具体的に、予測部130は、第1予測モデル191および実績日数1~Nに基づき遅延状態を予測する。
【0061】
S3において、監視システム1の表示部131は、予測部130が予測した遅延状態を表示し、処理を終了する。以下、図5図9を用いて具体例を説明する。図5図9は、第1実施形態に係る作業期間の遅延状態を説明するための図である。
【0062】
まず、図5図6を用いて、遅延状態の算出イメージを説明する。ここでは、簡単のため、フローはフロー1~3で構成されるものとする。また、本例では、遅延状態の予測に発報データを使用しないものとする(常にY=0)。
【0063】
まず、図5を用いて、遅延なく保守結果報告が完了した例を示す。ここでは、目標日数X=28日と設定されているものとする。「フロー1基準」は、フロー1の基準日数1を示し、基準日数1=7日であるとする。「フロー2基準」は、フロー2の基準日数2を示し、基準日数2=7日であるとする。「フロー3基準」は、フロー3の基準日数3を示し、基準日数3=7日であるとする。
【0064】
計画通りに進行すると、21日(=7+7+7)で保守結果報告が完了する予定である。この日数を「完了予定日数」と表記する。図中の「予備」(「予備日数」とも称する)=目標日数X-完了予定日数である。この場合、予備=7日(=28-21)である。言い換えると、この場合、目標日数Xからの遅延日数=-7日である。遅延日数は、予測部130による遅延状態の予測結果である。
【0065】
ここで、フロー1を実施し、フロー1の実績日数1(フロー1実績)=4、つまり、計画よりも3日(=7-4)早くフロー1の作業が完了したとする。これにより、予備日数は3日増えて、10日(=7+3)になる(遅延日数=-10日)。
【0066】
さらに、フロー2を実施し、フロー2の実績日数2(フロー2実績)=4、つまり、計画よりも3日(=7-4)早くフロー2の作業が完了したとする。これにより、予備日数は3日増えて、13日(=10+3)になる(遅延日数=-13日)。
【0067】
最後に、フロー3を実施し、フロー3の実績日数3(フロー3実績)=4、つまり、計画よりも3日(=7-4)早くフロー3の作業が完了したとする。これにより、予備日数は3日増えて、16日(=16+3)になる(遅延日数=-16日)。
【0068】
予測部130は、遅延状態として遅延日数を算出する。遅延状態には、実績期間(実績日数1~3)を含めてもよい。表示部131は、遅延日数を表示する。併せて、表示部131は、実績期間を表示してもよいし、図5に示されたような、全体の遅延状況が把握しやすくなるような図を表示してもよい。このようにすることで、フロー開始前、フロー1実施後、フロー2実施後の遅延状態(遅延予想)を把握することができる。
【0069】
次に、図6を用いて最終的に遅延が発生した例を示す。図5と同様に、目標日数X=28日、基準日数1=7日、基準日数2=7日、基準日数3=7日であるとする。完了予定日数=21日であり、予備(予備日数)=7日である(遅延日数=-7日)。
【0070】
ここで、フロー1を実施し、フロー1の実績日数1(フロー1実績)=10、つまり、フロー1の作業が計画よりも3日遅延(=10-7)したとする。これにより、予備日数は3日減って、4日(=7-3)になる(遅延日数=-4日)。
【0071】
さらに、フロー2を実施し、フロー2の実績日数1(フロー1実績)=12、つまり、フロー1の作業が計画よりも5日遅延(=12-7)したとする。これにより、予備日数は5日減って、-1日(=4-5)になる(遅延日数=1日)。このように、遅延日数>0となった場合は、目標日数Xからの遅延が発生することが予想される。つまり、SLA契約を遵守できない可能性がある。
【0072】
最後に、フロー3を実施し、フロー3の実績日数3(フロー3実績)=9、つまり、フロー3の作業が計画よりも2日遅延(=9-7)したとする。これにより、予備日数は2日減って、-3日(=-1-2)になる。すなわち、目標日数Xからの遅延日数=3日となっている。
【0073】
本例では、最終作業工程であるフロー3の実施前の、フロー2の実施時点で、目標日数Xからの遅延が1日発生することが予想される。このため、目標日数X内で作業を完了させるためには、フロー3の作業を1日短縮させて、実績日数3=6日(=7-1)となるよう、作業計画を立てる必要がある。
【0074】
このように、本実施の形態では、保守サービス全体に関する作業の遅延状態を常に把握することができる。これにより、途中段階において遅延に対する注意喚起を行うことができ、作業の遅延を抑制することができる。
【0075】
次に、図7図9を用いて、具体例について説明する。ここでは、フローはフロー1~Nで構成されるとする。また、本例では、遅延状態の予測に発報データを使用するものとする。
【0076】
図7は、全てのフローが実施されていない状態である。各フローには、「作業内容」、「担当」、「基準日数」および「実績日数」といった情報が設定される。この状態においては、あらかじめ「作業内容」、「担当」および「基準日数」が設定されているが、「実績日数」は設定されていない。
【0077】
フロー1は、保守員が行うエレベーターの保守作業である。フロー1の「作業内容」として「エレベーター保守」、「担当」として「保守員」、「基準日数(基準日数1)」として「3日」がそれぞれ設定されている。ただし、全てのフローが未実施であるため、現状「実績日数(実績日数1)」は設定されていない。
【0078】
フロー2は、事務員が行う事務作業である。具体的には、保守員が行った保守作業の結果を入力する。フロー2の「作業内容」として「保守結果入力」、「担当」として「事務員」、「基準日数(基準日数2)」として「1日」がそれぞれ設定されている。「実績日数(実績日数2)」は設定されていない。
【0079】
フロー3は、確認者が行う確認作業である。具体的には、保守員および事務員の上長が、入力された保守結果の内容を確認および検認する作業である。フロー3の「作業内容」として「確認作業」、「担当」として「確認者(上長)」、「基準日数(基準日数3)」として「3日」がそれぞれ設定されている。「実績日数(実績日数3)」は設定されていない。
【0080】
最後のフローNは、報告者が行う報告作業である。具体的には、報告書を顧客端末300から閲覧可能な状態にする作業である。フローNの「作業内容」として「報告作業」、「担当」として「報告者」、「基準日数」として「3日」がそれぞれ設定されている。「実績日数」は設定されていない。
【0081】
上記例は、フローの一例であるが、これに限らない。確認者として、複数のフローにより複数の人物が検認するようにしてもよいし、作業工程をさらに細分化してもよい。報告作業は、サーバへの報告書のアップロード作業、アップロードに対する承認作業、アップロードした報告書の公開作業(この時点で顧客端末300から閲覧可能になる)にフローを分割してもよい。
【0082】
図5の状態において、基準日数1=3、基準日数2=1・・・基準日数N=3、m1=0、m2=0・・・、mN=0、Y=100(未発報状態)である。このため、予測モデル=-1×[28-(3+1・・・+3)+{(3-実績日数1)×0+(1-実績日数2)×0・・・+(3-実績日数N)×0}]+100となる。
【0083】
ここで、基準日数1~Nの総和が28(つまり、Xと一致する)とする。この場合、予測モデル(第1予測モデル191)=100となる。つまり、第1予測モデル191による推定結果として、遅延=100が得られる。
【0084】
上述のように、未発報状態ではY=100が設定され、発報済状態ではY=0が設定される。このように、未発報状態において大きな数値を設定することで、保守作業(フロー1)の実施の促進を行うことができる。
【0085】
ここで、フロー1(保守作業)が実施され、その実績日数が2日であったとする。これにより、図8に示すように、フロー1の「実績日数(実績日数1)」として「2日」が設定される。また、保守作業の実行により、発報データが発報される。これにより、発報状態による遅延評価は、Y=-100からY=0に変化する。
【0086】
予測モデル=-1×[0+{(3-実績日数1)×1+(1-実績日数2)×0・・・+(3-実績日数N)×0}]+0=-(3-実績日数1)となる。実績日数1=2である。このため、第1予測モデル191による推定結果として、遅延=-(3-2)=-1が得られる。
【0087】
次に、フロー2(保守結果入力)が実施され、その実績日数が3日であったとする。これにより、図7に示すように、フロー2の「実績日数(実績日数2)」として「3日」が設定される。
【0088】
予測モデル=-(3-実績日数1)-(1-実績日数2)となる。実績日数1=2、実績日数2=3である。このため、第1予測モデル191による推定結果として、遅延=-(3-2)-(1-3)=1が得られる。図示しないが、フロー3~Nが実施された場合も、上記同様に推定結果が更新される。
【0089】
表示部131は、遅延(遅延日数)を表示する。併せて、表示部131は、実績期間を表示してもよいし、図7図9に示されたような、全体の遅延状況が把握しやすくなるような図を表示してもよい。このようにすることで、フロー開始前、各フロー実施後の遅延状態(遅延予想)を把握することができる。
【0090】
以上説明したように、保守サービス全体に関する作業の遅延状態を表示させることで、保守サービス全体についての作業の遅延に対する注意喚起を行うことができ、作業の遅延を抑制することができる。また、遅延状態として、フローごとの基準日数、実績日数および遅延日数を表示することで、保守を実施してから顧客に対して保守結果を報告するまでの流れを可視化して、監視することができる。以上のように構成することで、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【0091】
[第2実施形態]
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明においては、第1実施形態と異なる点について説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0092】
図10は、第2実施形態に係る監視システム1の機能ブロック図の一例を示す図である。第1実施形態においては、監視システム1は、予測部130、表示部131、および生成部132を備え、記憶部214は、第1予測モデル191、実施履歴情報192、発報データ193、および過去履歴情報194を記憶するように構成した。
【0093】
これに対して、第2実施形態においては、図10に示すように、監視システム1は、第1更新部134および第2更新部135をさらに備える。記憶部214は、第2予測モデル197、点検情報195、および全社点検情報196をさらに記憶する。
【0094】
第2実施形態においては、予測モデルとして、第2予測モデル197をさらに含む。ここで、第1予測モデル191は、保守サービス中にトラブルが発生しなかった場合において遅延状態を予測するモデルである。第2予測モデル197は、保守サービス中にトラブルが発生した場合において遅延状態を予測するモデルである。トラブルが発生した場合は、点検情報195にトラブル情報が記録される。
【0095】
なお、第1実施形態における第1予測モデル191は、保守サービス中にトラブルが発生しなかった場合において遅延状態を予測するモデルであってもよいし、作業期間中にトラブルが発生しなかった場合も発生した場合も含んで遅延状態を予測するモデルであってもよい。
【0096】
以下、フローチャートに基づき処理の流れを説明する。図11は、第2実施形態に係る監視システム1が実行する処理のフローチャートである。図11に示すように、エレベーター制御装置100が実行する処理が開始すると、S21の処理を実行する。
【0097】
監視システム1の予測部130は、S21において、保守サービス中にトラブルが発生したか否かを判定する。トラブルが発生したか否かは、点検情報195に記録されたトラブル情報に基づき判断される。点検情報195には、トラブル情報を含む定期点検の結果が蓄積されている。
【0098】
予測部130は、保守サービス中にトラブルが発生したと判定した場合(S21でYES)、処理をS23に進める。予測部130は、保守サービス中にトラブルが発生したと判定しなかった場合(S21でNO)、処理をS22に進める。
【0099】
S22において、予測部130は、予測モデルとして第1予測モデル191を選択し、処理をS23に進める。監視システム1の第1更新部134は、S23において、第1予測モデル191の更新が要求されたか否かを判定する。
【0100】
第1予測モデル191の更新は、入力装置によるユーザーからの入力により要求が行われるように構成してもよいし、所定期間(たとえば、4ヶ月)ごとに要求が行われるようにしてもよい。また、常に更新要求を行うようにしてもよい。このようにした場合、常に第1予測モデル191が更新されることになる。
【0101】
第1更新部134は、第1予測モデル191の更新が要求されたと判定した場合(S23でYES)、処理をS24に進める。第1更新部134は、第1予測モデル191の更新が要求されたと判定しなかった場合(S23でNO)、処理をS28に進める。
【0102】
S24において、第1更新部134は、過去の保守サービスの結果に基づき、第1予測モデル191を更新し、処理をS28に進める。第1更新部134の処理内容は、生成部132の処理内容と同じであり、過去履歴情報194に基づき基準日数1~Nをそれぞれ決定する。そして、第1更新部134は、決定した基準日数1~Nを設定することで、第1予測モデル191を更新している。このようにすることで、過去の保守サービスの実施状況に応じて予測モデルを更新することができる。
【0103】
S25において、予測部130は、予測モデルとして第2予測モデル197を選択し、処理をS26に進める。監視システム1の第2更新部135は、S26において、第2予測モデル197の更新が要求されたか否かを判定する。
【0104】
第2予測モデル197の更新は、入力装置によるユーザーからの入力により要求が行われるように構成してもよいし、所定期間(たとえば、4ヶ月)ごとに要求が行われるようにしてもよい。また、常に更新要求を行うようにしてもよい。このようにした場合、トラブル発生時は常に第2予測モデル197が更新されることになる。
【0105】
第2更新部135は、第2予測モデル197の更新が要求されたと判定した場合(S26でYES)、処理をS27に進める。第2更新部135は、第2予測モデル197の更新が要求されたと判定しなかった場合(S26でNO)、処理をS28に進める。
【0106】
S27において、第2更新部は、保守サービス中にトラブルが発生した場合における、過去の保守サービスの結果に基づき第2予測モデル197を更新し、処理をS28に進める。
【0107】
具体的には、第2更新部は、全社点検情報196に基づき、第2予測モデル197を更新する。全社点検情報196は、各ビルのエレベーターに関して、トラブルが発生した場合における過去の保守サービスの結果を蓄積した情報である。このようにすることで、トラブル発生時の過去の保守サービスの実施状況に応じて予測モデルを更新することができる。
【0108】
トラブルが発生した場合は、フロー1の保守作業に時間がかかるだけでなく、後工程の作業も時間がかかる可能性が高い。上記のように、予測モデルを切り替えることで、全体としてどの程度の遅延が発生するか把握することができるため、トラブル発生状況下における遅延に対処しやすくなる。
【0109】
S28において、予測部130は、選択された予測モデルを用いて遅延状態を予測し、処理をS29に進める。具体的には、予測モデルとして第1予測モデル191が選択された場合は、第1予測モデル191および実績日数1~Nに基づき遅延状態を予測する。一方で、予測モデルとして第2予測モデル197が選択された場合は、第2予測モデル197および実績日数1~Nに基づき遅延状態を予測する。S29において、表示部131は、予測部130が予測した遅延状態を表示し、処理を終了する。
【0110】
以上説明したように、予測部130は、保守サービス中にトラブルが発生しなかった場合は、第1予測モデル191を用いて遅延状態を予測する。予測部130は、保守サービス中にトラブルが発生した場合は、第2予測モデル197を用いて遅延状態を予測する。このようにすることで、トラブル発生状況に適合した遅延状態を把握することができ、トラブル発生状況下における作業の遅延を抑制することができる。以上説明したように構成することで、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて、より顧客満足度を高めることができる。
【0111】
[主な構成および効果]
以下、前述した実施の形態の主な構成および効果を説明する。
【0112】
(1) 監視システム1は、昇降機の保守サービスの提供を監視する。監視システム1は、記憶部214と、予測部130と、表示部131とを備える。記憶部214は、保守サービスを開始してから保守サービスの実施結果の顧客に対する報告が完了するまでの複数の作業に要する作業期間の遅延状態を予測する第1予測モデル191(第2予測モデル197)と、複数の作業の各々の基準期間に対する実績期間とを記憶する。予測部130は、第1予測モデル191および複数の作業の各々の実績期間に基づき遅延状態を予測する。表示部131は、予測部130が予測した遅延状態を表示する。第1予測モデル191は、複数の作業の各々の基準期間と当該基準期間に対する実績期間との差分を用いて遅延状態を予測するモデルである。このように、保守サービス全体に関する作業の遅延状態を表示させることで、保守サービス全体についての作業の遅延に対する注意喚起を行うことができ、作業の遅延を抑制することができる。これにより、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【0113】
(2) 監視システム1は、生成部132をさらに備える。生成部132は、複数の作業の各々の基準期間を用いて第1予測モデル191を生成する。これにより、昇降機ごとあるいは現場ごとなど、状況に応じた予測モデルを構築することができる。
【0114】
(3) 記憶部214は、保守サービスを行ったときに昇降機が発報する発報データをさらに記憶する。予測部130は、発報データが発報されていないときは、発報データが発報されているときよりも、遅延していると評価されるように遅延状態を予測する。このようにすることで、発報データにより保守作業が行われたことを確実に把握できるとともに、保守作業の実施に対する注意喚起を行うことができる。これにより、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【0115】
(4) 記憶部214は、過去の保守サービスの結果をさらに記憶する。監視システム1は、過去の保守サービスの結果に基づき、第1予測モデル191を更新する第1更新部をさらに備える。このようにすることで、過去の保守サービスの実施状況に応じて予測モデルを更新することができる。これにより、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【0116】
(5) 予測モデルは、保守サービス中にトラブルが発生しなかった場合において遅延状態を予測する第1予測モデル191と、保守サービス中にトラブルが発生した場合において遅延状態を予測する第2予測モデル197とを含む。予測部130は、保守サービス中にトラブルが発生しなかった場合は、第1予測モデル191を用いて遅延状態を予測する。予測部130は、保守サービス中にトラブルが発生した場合は、第2予測モデル197を用いて遅延状態を予測する。このようにすることで、トラブル発生状況に適合した遅延状態を把握することができ、トラブル発生状況下における作業の遅延を抑制することができる。これにより、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【0117】
(6) 監視システム1は、第2更新部をさらに備える。第2更新部は、保守サービス中にトラブルが発生した場合における、過去の保守サービスの結果に基づき第2予測モデル197を更新する。このようにすることで、トラブル発生時の過去の保守サービスの実施状況に応じて予測モデルを更新することができる。これにより、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【0118】
(7) 監視方法は、昇降機の保守サービスの提供を監視する方法である。監視方法は、保守サービスを開始してから保守サービスの実施結果の顧客に対する報告が完了するまでの複数の作業に要する作業期間の遅延状態を予測する第1予測モデル191(第2予測モデル197)を記憶するステップと、複数の作業の各々の基準期間に対する実績期間を記憶するステップと、第1予測モデル191および複数の作業の各々の実績期間に基づき遅延状態を予測するステップと、予測するステップが予測した遅延状態を表示するステップとを備える。第1予測モデル191は、複数の作業の各々の基準期間と当該基準期間に対する実績期間との差分を用いて遅延状態を予測するモデルである。このように、保守サービス全体に関する作業の遅延状態を表示させることで、保守サービス全体についての作業の遅延に対する注意喚起を行うことができ、作業の遅延を抑制することができる。これにより、SLAを規定した保守サービスにおいて、保守サービス全体を対象としたSLAの順守率を向上させて顧客満足度を高めることができる。
【0119】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0120】
1,1a 監視システム、10 ビル、20 情報センター(保守会社)、21 保守員、30 メンテナンスコンピュータ、40 支店(保守会社)、100 エレベーター制御装置、111,211 CPU、112,212 ROM、113,213 RAM、214 記憶部、115,215 通信インターフェイス、116,216 I/Oインターフェイス、130 予測部、131 表示部、132 生成部、134 第1更新部、135 第2更新部、190 予測モデル、191 第1予測モデル、192 実施履歴情報、193 発報データ、194 過去履歴情報、195 点検情報、196 全社点検情報、197 第2予測モデル、200 監視装置、300 顧客端末、341 かご、351 昇降路、331~334 乗場、400 保守会社端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11