(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2023559230
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2021041176
(87)【国際公開番号】W WO2023084598
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 由宇
(72)【発明者】
【氏名】泉 喜久夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 淳一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大貴
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-152687(JP,A)
【文献】特開2020-108196(JP,A)
【文献】特開2016-101089(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111342665(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧変換を実行する電力変換装置であって、
複数の第1レグを有する第1ブリッジと、
複数の第2レグを有する第2ブリッジと、
前記第1ブリッジ及び前記第2ブリッジの間に接続されたトランスとを備え、
前記複数の第1レグの各々は、
中間ノードを介して高電圧側の第1の電力線と低電圧側の第2の電力線との間に直列接続された高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子を有し、
前記複数の第2レグの各々は、
中間ノードを介して高電圧側の第3の電力線と低電圧側の第4の電力線との間に直列接続された高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子を有し、
前記トランスは、
前記複数の第1レグの前記中間ノードと接続された1次巻線と、
前記複数の第2レグの前記中間ノードと接続されて、前記1次巻線と磁気結合される2次巻線とを有し、
前記電力変換装置は、
充電可能な直流電源と前記複数の第1レグの前記中間ノードとの間にそれぞれ接続された複数のリアクトルと、
前記複数の第1レグ及び第2レグの各々の各前記スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記第1ブリッジにおいて、前記第1及び第2の電力線の間の第1の直流電圧を制御するための第1制御指令値に従って、前記複数のリアクトルの各々を流れるリアクトル電流の絶対値を増加するための前記第1レグの各々の前記高電圧側及び低電圧側のスイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子のオン期間を設けるとともに、前記一方のスイッチング素子のオン期間の終了後に、前記リアクトル電流の絶対値がゼロに戻るまでの間、前記高電圧側及び低電圧側のスイッチング素子のうちの他方のスイッチング素子のオン期間を設ける様に、各前記第1レグの各前記スイッチング素子の各スイッチング周期のオンオフを制御し、かつ、
前記第2ブリッジにおいて、前記第3及び第4の電力線の間の第2の直流電圧を制御するための第2制御指令値を反映するとともに、前記複数の第1レグと前記複数の第2レグとの間で前記高電圧側のスイッチング素子同士、及び、前記低電圧側のスイッチング素子同士のオン期間長が同等となる様に、各前記第2レグの各前記スイッチング素子の各スイッチング周期のオンオフを制御する、電力変換装置。
【請求項2】
前記第2の直流電圧を上昇するために前記電力変換装置が動作する場合に、各前記第1レグにおいて、前記一方のスイッチング素子は、前記低電圧側のスイッチング素子であり、前記他方のスイッチング素子は、前記高電圧側のスイッチング素子である、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2の直流電圧を低下するために前記電力変換装置が動作する場合に、各前記第1レグにおいて、前記一方のスイッチング素子は、前記高電圧側のスイッチング素子であり、前記他方のスイッチング素子は、前記低電圧側のスイッチング素子である、請求項1記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第1ブリッジでの各前記スイッチング周期において、前記一方のスイッチング素子のオン期間及び前記他方のスイッチング素子のオン期間の終了後において、前記一方のスイッチング素子及び前記他方のスイッチング素子を交互にオンオフさせる様に、各前記第1レグの各前記スイッチング素子の各スイッチング周期のオンオフを制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記複数の第1レグ及び前記複数の第2レグの各スイッチング素子の前記スイッチング周期の時間長を固定した上で、前記複数の第1レグのスイッチング動作に対する前記複数の第2レグのスイッチング動作の位相差を前記第2制御指令値に従って変化させる様に、各前記第2レグの各前記スイッチング素子の各スイッチング周期のオンオフを制御する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記複数の第1レグのスイッチング動作に対する前記複数の第2レグのスイッチング動作の位相差を固定した上で、前記複数の第1レグ及び前記複数の第2レグの各スイッチング素子の前記スイッチング周期の時間長を前記第2制御指令値に応じて変化させる様に各前記第2レグの各前記スイッチング素子の各スイッチング周期のオンオフを制御する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1レグ及び前記第2レグは、N個(N:2以上の整数)ずつ配置され、
前記第1ブリッジにおいて、前記N個の第1レグのスイッチング動作には、360/N[deg]ずつの位相差が設けられ、
前記第2ブリッジにおいて、前記N個の第2レグのスイッチング動作には、360/N[deg]ずつの位相差が設けられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記複数のリアクトルは、磁性体部品を共通化する様に構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記トランスの前記1次巻線の巻数は、前記2次巻線の巻数よりも多い、請求項1~8のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の蓄電池を利用して電力系統又は負荷等と双方向に電力授受可能な電力変換装置が用いられている。この様な電力変換装置では、上記蓄電池と他の機器間との絶縁を確保した上で、様々な蓄電池に対応するために幅広い入力電圧範囲で低出力から高出力まで、高い電力変換効率にて蓄電池を充放電ができることが望ましい。
【0003】
電力変換装置の一種である双方向絶縁型コンバータによって、幅広い入力電圧範囲で低出力から高出力まで電力変換効率よく蓄電池を充電及び放電するための技術として、多相の昇圧回路と、DAB(Dual Active Bridge)回路とを一体化した回路構成が、"Design Considerations for PPS Controlled Current-Fed DAB Converter to Achieve Full Load Range ZVS with Low Inductor RMS Current"(非特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jing Guo et al.、"Design Considerations for PPS Controlled Current-Fed DAB Converter to Achieve Full Load Range ZVS with Low Inductor RMS Current"、2020 IEEE Energy Conversion Congress and Exposition pp. 5971-5975、2020年10月30日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載される、多相の昇圧回路とDAB回路とを一体化したCF(Current Fed)-DAB回路では、DAB回路の1次側ブリッジと、多相の昇圧回路のブリッジとが一体化されるため、低出力時において、昇圧回路部のリアクトル電流のリプルが正極及び負極を往復することにより導通損失が大きくなることが懸念される。一方、昇圧回路では、低出力時にリアクトル電流のリプルが正極と負極を往復しないように電流不連続モードで動作させることで導通損失を低減できる。
【0006】
しかしながら、非特許文献1のCF-DAB回路では、電流不連続モードを実現するために1次側の蓄電池の放電動作時に昇圧回路部の高電圧側パワーデバイスのスイッチングを停止した場合、DAB回路部の1次側ブリッジの高電圧側パワーデバイスのスイッチングも停止してしまう。これにより、当該スイッチングの停止期間では、蓄電池の放電時の電力伝送動作ができなくなる。
【0007】
同様に、非特許文献1のCF-DAB回路において、電流不連続モードを実現するために1次側の蓄電池の充電動作時に昇圧回路部の低電圧側パワーデバイスのスイッチングを停止した場合、DAB回路部の1次側ブリッジの低電圧側パワーデバイスもスイッチングも停止する。これにより、当該スイッチングの停止期間では、蓄電池の充電時の電力伝送動作ができなくなる。
【0008】
一方で、非特許文献1では、上述した様な、電流不連続モードの導入によって電力伝送動作ができなくなる問題については、考慮されていない。
【0009】
本開示は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、DAB回路の1次側ブリッジと昇圧回路とが共通化された構成を有する電力変換装置において、昇圧のためのリアクトル電流を電流不連続モードで制御し、かつ、DAB回路による電力伝送期間を確保することで、電力変換性能を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のある局面によれば、電力変換装置が提供される。直流電圧変換を実行する電力変換装置は、複数の第1レグを有する第1ブリッジと、複数の第2レグを有する第2ブリッジと、第1ブリッジ及び第2ブリッジの間に接続されたトランスと、複数のリアクトルと、複数のリアクトルと、複数の第1レグ及び第2レグの各々の各スイッチング素子のオンオフを制御する制御回路とを備える。複数の第1レグの各々は、中間ノードを介して高電圧側の第1の電力線と低電圧側の第2の電力線との間に直列接続された高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子を有する。複数の第2レグの各々は、中間ノードを介して高電圧側の第3の電力線と低電圧側の第4の電力線との間に直列接続された高電圧側のスイッチング素子及び低電圧側のスイッチング素子を有する。トランスは、1次巻線及び2次巻線を有する。1次巻線は、複数の第1レグの中間ノードと接続される。2次巻線は、複数の第2レグの中間ノードと接続されるとともに、1次巻線と磁気結合される。複数のリアクトルは、充電可能な直流電源と複数の第1レグの中間ノードとの間にそれぞれ接続される。制御回路は、第1ブリッジにおいて、第1及び第2の電力線の間の第1の直流電圧を制御するための第1制御指令値に従って、複数のリアクトルの各々を流れるリアクトル電流の絶対値を増加するための第1レグの各々の高電圧側及び低電圧側のスイッチング素子のうちの一方のスイッチング素子のオン期間を設けるとともに、一方のスイッチング素子のオン期間の終了後に、リアクトル電流の絶対値がゼロに戻るまでの間、高電圧側及び低電圧側のスイッチング素子のうちの他方のスイッチング素子のオン期間を設ける様に、各第1レグの各スイッチング素子の各スイッチング周期のオンオフを制御する。制御回路は、第2ブリッジにおいて、第3及び第4の電力線の間の第2の直流電圧を制御するための第2制御指令値を反映するとともに、複数の第1レグと複数の第2レグとの間で高電圧側のスイッチング素子同士、及び、低電圧側のスイッチング素子同士のオン期間長が同等となる様に、各第2レグの各スイッチング素子の各スイッチング周期のオンオフを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、DAB回路の1次側ブリッジと昇圧回路とが共通化された構成を有する電力変換装置において、昇圧のためのリアクトル電流を電流不連続モードで制御し、かつ、DAB回路による電力伝送期間を確保することで、電力変換性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る電力変換装置の回路構成を説明する回路図である。
【
図2】実施の形態1に係る電力変換装置の放電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る電力変換装置の放電動作時の動作例を説明するシミュレーション波形図である。
【
図4】実施の形態1に係る電力変換装置の充電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【
図5】実施の形態1に係る電力変換装置の充電動作時の動作例を説明するシミュレーション波形図である。
【
図6】実施の形態1の変形例に係る電力変換装置の放電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【
図7】実施の形態1の変形例に係る電力変換装置の充電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【
図8】実施の形態2に係る電力変換装置の放電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【
図9】実施の形態2に係る電力変換装置の放電動作時の動作例を説明するシミュレーション波形図である。
【
図10】実施の形態3の第1の例に係る電力変換装置の回路構成を説明する回路図である。
【
図11】実施の形態3の第2の例に係る電力変換装置の回路構成を説明する回路図である。
【
図12】
図11に示された電力変換装置の制御動作の一例(放電動作)を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0014】
実施の形態1.
(回路構成)
図1に示される様に、本実施の形態に係る電力変換装置100は、蓄電池1と、負荷2との間に接続されて、トランス30によって蓄電池1及び負荷2を電気的に絶縁した上で、双方向の直流電圧変換を実行する。
【0015】
電力変換装置100は、1次側に配置されるコンデンサC1と、2次側に配置されるコンデンサC2と、昇圧機能のためのリアクトルL1,L2と、リアクトルLTと、第1ブリッジ10と、第2ブリッジ20と、1次巻線30p及び2次巻線30sを有するトランス30と、制御演算部50と、ゲート信号生成部60とを備える。尚、電力変換装置100の主回路構成は、非特許文献1のCF-DAB回路と同様である。
【0016】
第1ブリッジ10は、半導体スイッチング素子(以下、単に、「スイッチング素子」とも称する)Q11H及びQ11Lによって構成されるレグ11と、スイッチング素子Q12H,Q12Lによって構成されるレグ12とを含む。尚、本実施の形態において、各スイッチング素子は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)及びMOSFET(Metal-oxide-Semiconductor Field-effect Transistor)等によって構成することができる。各スイッチング素子は、外付け素子として、或いは、内蔵素子として、還流経路を形成するための逆並列ダイオード(還流ダイオード)を含んでいる。
【0017】
レグ11を構成するスイッチング素子Q11H及びQ11Lは、ノードN11を介して、1次側の高電圧側の電力線PL1及び低電圧側の電力線NL1の間に直列接続される。レグ12を構成するスイッチング素子Q12H及びQ12Lは、ノードN12を介して、電力線PL1及び電力線NL1の間に直列接続される。レグ11及び12は「第1レグ」の一実施例に対応し、ノードN11,N12の各々は「中間ノード」に対応する。又、電力線PL1は「第1の電力線」の一実施例に対応し、電力線NL1は「第2の電力線」の一実施例に対応する。
【0018】
図1の構成例では、コンデンサC1は、電力線PL1及び電力線NL1の間に接続される。即ち、コンデンサC1の電圧は、電力線PL1及びNL1の間の直流電圧と等しい。蓄電池1は、ノードNi及び電力線NL1の間に接続される。リアクトルL1は、ノードNi(即ち、蓄電池1の正極)と、レグ11のノードN11との間に接続される。リアクトルL2は、ノードNiと、レグ12のノードN12との間に接続される。リアクトルLTは、ノードN11及びN12の間に、トランス30の1次巻線30pと直列接続される。リアクトルL1及びL2は、「複数のリアクトル」の一実施例に対応する。
【0019】
尚、リアクトルLTについては、1次巻線30p及び2次巻線30sの磁気結合の漏れインダクタンスによって構成されてもよい。リアクトルL1及びL2は、部品点数削減のために、磁性体部品を共通化する様に構成されてもよい。例えば、共通の磁性体コアに2個のコイルが巻回された、疎結合インダクタによって、リアクトルL1,L2を構成することができる。尚、リアクトルL1及びL2を共通化すると、第1ブリッジ10の出力端電圧に相当する、ノードN11及びN12の間の電圧VTrpから見た、リアクトルL1及びL2のインピーダンス値を大きくする効果も生じる。
【0020】
尚、
図1中の矢印で示される様に、リアクトルL1を流れるリアクトル電流IL1及び、リアクトルL2を流れるリアクトル電流IL2については、蓄電池1の放電方向を正方向(正電流)とし、蓄電池1の充電方向を負方向(負電流)と定義する。
【0021】
第2ブリッジ20は、スイッチング素子Q21H及びQ21Lによって構成されるレグ21と、スイッチング素子Q22H,Q22Lによって構成されるレグ22とを含む。レグ21を構成するスイッチング素子Q21H及びQ21Lは、ノードN21を介して、2次側の高電圧側の電力線PL2及び低電圧側の電力線NL2の間に直列接続される。レグ22を構成するスイッチング素子Q22H及びQ22Lは、ノードN22を介して、電力線PL2及び電力線NL2の間に直列接続される。レグ21及び22は「第2レグ」の一実施例に対応し、ノードN21,N22の各々は「中間ノード」に対応する。又、電力線PL2は「第3の電力線」の一実施例に対応し、電力線NL2は「第4の電力線」の一実施例に対応する。
【0022】
以下では、スイッチング素子Q11L,Q12L,Q21L,Q22Lの各々について、「低電圧側のスイッチング素子」とも称し、スイッチング素子Q11H,Q12H,Q21H,Q22Hの各々について、「高電圧側のスイッチング素子」とも称することとする。
【0023】
負荷2は、電力線PL2及びNL2と接続される。コンデンサC2は、電力線PL2及びNL2の間に、負荷2と並列に接続される。トランス30の2次巻線30sは、ノードN21及びN22の間に接続される。ノードN21及びN22の間の電圧VTrsは、第2ブリッジ20の出力端電圧に相当する。
【0024】
電力変換装置100では、蓄電池1の充電又は放電を伴って、コンデンサC1の直流電圧V1及びコンデンサC2の直流電圧V2を、電圧指令値VREF1及びVREF2に維持する電圧制御が行われる。電圧指令値VREF1は、電力線PL1及びNL1の間の直流電圧を制御するための指令値であり、電圧指令値VREF2は、電力線PL2及びNL2の間の直流電圧を制御するための指令値である。実施の形態1では、直流電圧V1及び直流電圧V2が、「第1の直流電圧」及び「第2の直流電圧」にそれぞれ対応する。
【0025】
尚、蓄電池1の充放電電力は直接指示されないが、負荷2の直流電圧V2が電圧指令値VREF2よりも低い場合には、蓄電池1から負荷2への電力伝送動作(以下、放電動作とも称する)を伴って上記電圧制御が行われることになるので、蓄電池からの放電電力が生じる。一方で、直流電圧V2が電圧指令値VREF2よりも高い場合には、負荷2から蓄電池1への電力伝送動作(以下、充電動作とも称する)を伴って上記電圧制御が行われることになるので、蓄電池1の充電電力が生じる。
【0026】
制御演算部50は、コンデンサC1及びC2に対応して設けられた電圧センサ(図示せず)によって検出された直流電圧V1及びV2を、電圧指令値VREF1及びVREF2にそれぞれ制御するための第1制御指令値REF1及び第2制御指令値REF2を演算する。尚、制御演算部50には、蓄電池1に設けられた電圧センサ(図示せず)によって検出された、蓄電池1の出力電圧(以下、バッテリ電圧と称する)VBATが更に入力される。
【0027】
ゲート信号生成部60は、制御演算部50によって求められた第1制御指令値REF1及び第2制御指令値REF2に基づき、第1ブリッジ10のゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lと、第2ブリッジ20のゲート信号S21H,S21L,S22H,S22Lとを生成する。第1ブリッジ10のスイッチング素子Q11H,Q11L,Q12H,Q12Lは、ゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lにそれぞれ従ってオンオフ制御(スイッチング制御)される。同様に、スイッチング素子Q21H,Q21L,Q22H,Q22Lは、ゲート信号S21H,S21L,S22H,S22Lにそれぞれ従ってオンオフ制御(スイッチング制御)される。具体的には、スイッチング素子Q11L,Q12L,Q21L,Q22L,Q11H,Q12H,Q21H,Q22Hの各々は、ゲート信号S11L,S12L,S21L,S22L,S11H,S12H,S21H,S22Hにそれぞれに従って、対応のゲート信号のHレベル期間にオンされる一方で、Lレベル期間にオフされるものとする。以下に説明する様に、制御演算部50及びゲート信号生成部60によって、「制御回路」の一実施例が構成される。
【0028】
(放電動作時の制御及び回路動作)
まず、電力変換装置100の放電動作時の制御及び動作波形例について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0029】
図2には、実施の形態1に係る電力変換装置の放電動作時の制御動作を説明するブロック図が示される。
【0030】
図2を参照して、制御演算部50は、偏差演算部52,56と、制御器54,58と、リミッタ55とを有する。偏差演算部52は、電圧指令値VREF1に対する直流電圧V1(検出値)の電圧偏差ΔV1を算出する(ΔV1=VREF1-V1)。同様に、偏差演算部52は、電圧指令値VREF2に対する直流電圧V2(検出値)の電圧偏差ΔV2を算出する(ΔV2=VREF2-V2)。
【0031】
制御器54は、電圧偏差ΔV1に対する所定の制御演算によって、第1制御指令値REF1を生成する。例えば、制御器54は、電圧偏差ΔV1に制御ゲインKaを乗算する比例(P)制御によって、第1制御指令値REF1を生成する。第1制御指令値REF1は、リミッタ55によって、最小値が0になる様に制限される。即ち、制御器54の出力値が負値であったときには、VREF1=0に設定される。これにより、電圧指令値VREF1よりも直流電圧V1が高いときには、REF1=0に設定される。
【0032】
制御器58は、電圧偏差ΔV2に対する所定の制御演算によって、第2制御指令値REF2を生成する。例えば、制御器58は、電圧偏差ΔV2に制御ゲインKbを乗算する比例(P)制御によって、第2制御指令値REF2を生成する。尚、制御器54,58については、比例(P)制御に限定されず、比例積分(PI)制御等の任意の制御演算を行う様に構成することができる。
【0033】
ゲート信号生成部60は、キャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22と、コンパレータCMP11,CMP12,CMP21,CMP22と、デューティ比演算部70と、ロジック部LG11,LG12,LG21,LG22とを含む。
【0034】
放電動作時において、ゲート信号生成部60では、制御演算部50からの第1制御指令値REF1を低電圧側のデューティ比DLとして、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lが生成される。低電圧側のデューティ比DLは、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12L,Q21L,Q22Lでの、スイッチング周期に対するオン期間の時間比で定義される。
【0035】
放電動作時における低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lは、キャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22と、コンパレータCMP11,CMP12,CMP21,CMP22とによって生成される。
【0036】
キャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22は、同一周波数のキャリア波CW11,CW12,CW21,CW22を生成する。一般的に、キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22には、三角波又はのこぎり波等の周期的な電圧波形が用いられる。キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22の間には、初期位相の個別設定によって、位相差が設定される。具体的には、キャリア波CW11とキャリア波CW12とは互いに逆位相(位相差180[deg])であり、キャリア波CW21及びキャリア波CW22の間にも180[deg]の位相差が設けられる。
【0037】
この結果、第1ブリッジ10において、レグ11のスイッチング動作と、レグ12のスイッチング動作との間には、180[deg]の位相差が設けられる。同様に、第2ブリッジ20においても、レグ21のスイッチング動作と、レグ22のスイッチング動作との間には、180[deg]の位相差が設けられる。これにより、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20は、DAB回路として動作することができる。
【0038】
更に、第1ブリッジ10に対応するキャリア波CW11及びCW12と、第2ブリッジ20に対応するキャリア波CW21及びCW22との間には、それぞれ位相差φ[deg]が設けられる。又、キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22の各々のピーク・トゥ・ピークは、デューティ比DL,DHの0~1.0に対応する。
【0039】
ゲート信号生成部60では、制御演算部50からの第2制御指令値REF2を、当該位相差φ[deg]として、第2ブリッジ20に対応するキャリア波CW21及びCW22の位相が調整される。
【0040】
公知の様に、DAB回路では、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の間のスイッチング動作の位相差の方向(進み/遅れ)によって、DAB回路としての第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の間の電力伝送の方向が制御される。更に、伝送される電力については、スイッチング周波数及び位相差の量によって制御される。具体的には、同一のスイッチング周波数の下では、位相差の量が大きい程、伝送される電力(絶対値)は大きくなり、同一の位相差の下では、スイッチング周波数が低い程(即ち、スイッチング周期が長い程)、伝送される電力(絶対値)は大きくなることが知られている。
【0041】
直流電圧V2が電圧指令値VREF2より低い場合には、ΔV2>0、及び、REF2>0となることで、位相差φ>0、即ち、第2ブリッジ20のスイッチング動作の位相が、第1ブリッジ10のスイッチング動作の位相よりも遅れることになる。この結果、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20へ電力が伝送されることにより、直流電圧V2は、電圧指令値VREF2へ向けて上昇することができる。この際に、ΔV2の絶対値が大きい程、位相差φによる位相遅れ量も大きく設定されて、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20へ伝送される電力も大きくなる。
【0042】
コンパレータCMP11は、第1制御指令値REF1(低電圧側のデューティ比DL)とキャリア波CW11との電圧比較に従って、ゲート信号S11Lを生成する。具体的には、REF1>CW11の期間では、ゲート信号S11Lはハイレベル(以下「Hレベル)」に設定され、REF1≦CW11の期間では、ゲート信号S11Lはローレベル(以下「Lレベル」に設定される。
【0043】
同様の電圧比較によって、コンパレータCMP12は、低電圧側のデューティ比DLとキャリア波CW12との電圧比較に従って、ゲート信号S12Lを生成する。又、コンパレータCMP21は、低電圧側のデューティ比DLとキャリア波CW21との電圧比較に従って、ゲート信号S21Lを生成し、コンパレータCMP22は、低電圧側のデューティ比DLとキャリア波CW22との電圧比較に従って、ゲート信号S22Lを生成する。
【0044】
これにより、ゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lの各々は、直流電圧V1を電圧指令値VREF1に制御するための第1制御指令値REF1に従った、オン期間長を有する様に生成される。更に、第1ブリッジ10のゲート信号S11L及びS12Lと、第2ブリッジ20のゲート信号S21L及びS22との間には、直流電圧V2を電圧指令値VREF2に制御するための第2制御指令値REF2に従って位相差φが設定される。
【0045】
一方で、放電動作時における高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hは、デューティ比演算部70によって演算された第3制御指令値REF3を高電圧側のデューティ比DHとして生成される。高電圧側のデューティ比DHについても、高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12H,Q21H,Q22Hでの、スイッチング周期に対するオン期間の時間比で定義される。
【0046】
デューティ比演算部70は、放電動作時には、低電圧側のデューティ比DL(第1制御指令値REF1)、直流電圧V1、及び、バッテリ電圧VBATを用いて、リアクトル電流IL1,IL2が電流不連続モードとなる様に高電圧側のデューティ比DHを演算する。ここでは、リアクトルL1,L2が同一のインダクタンス値Lを有するものとして、リアクトル電流IL1,IL2を包括化したリアクトル電流ILの演算によって、高電圧側のデューティ比DHの算出手法を説明する。
【0047】
上述の様に、第1ブリッジ10において、低電圧側のデューティ比DLに従った、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12Lのオン期間では、リアクトルL1,L2の両端にはバッテリ電圧VBATが印加される。低電圧側のスイッチング素子のオン期間では、リアクトルにエネルギが蓄積される。
【0048】
従って、放電動作の当該期間でのリアクトル電流IL(IL>0)は、(VBAT/L)の傾きで上昇することになる。このため、デューティ比DLに従って低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12Lがオフするタイミングにおいて、リアクトル電流ILは、当該スイッチング周期内での最大値(最大電流ILmax)に達する。この最大電流ILmaxは、スイッチング素子Q11L,Q12Lのオン開始タイミングでのIL=0とすると、スイッチング周期長Ts(キャリア波の周波数に相当するスイッチング周波数fsの逆数、即ち、Ts=1/fs)を用いて、下記の式(1)で示される。
【0049】
ILmax=(VBAT/L)×DL×Ts …(1)
次に、第1ブリッジ10において、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12Lのオフ後に設けられる、高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hのオン期間では、リアクトルL1,L2の両端には、負電圧となる(VBAT-V1)が印加される。従って、当該オン期間でのリアクトル電流ILは、IL=ILmaxを初期値として、(VBAT-V1)/Lの傾きで低下することになる。この期間では、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12Lのオン期間にリアクトルL1,L2に蓄積されたエネルギと、蓄電池1からのエネルギとが電力線PL1に供給されることで、V1>VBATとなる昇圧機能が実現される。
【0050】
高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hは、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12Lのオフ後において、リアクトル電流ILがゼロに低下するまでの間オンされる様に、言い換えると、ちょうど、IL=0となったタイミングでオフされるようにスイッチング制御される。このタイミングで高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hをオフすることにより、リアクトルL1,L2に負電流が流れる経路を遮断できるため、電流不連続モードが実現できる。更に、リアクトル電流ILがゼロに低下するまでの間に高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hのオン期間を設けることで、リアクトル電流IL1,IL2が減少する期間中にも、コンデンサC1(電力線PL1)からトランス30への電力伝送経路を確保することができる。
【0051】
高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hのオン期間をこの様に設定するためには、高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hのオン期間終了時点におけるリアクトル電流IL0=0とすることが必要である。まず、IL0は、高電圧側のデューティ比DHを用いて、下記の式(2)で示される。
【0052】
IL0=ILmax+DH×Ts×(VBAT-V1)/L …(2)
式(1),(2)より、IL0=0となるデューティ比DHは、下記の式(3)で与えられることが理解される。
【0053】
DH=DL×VBAT/(V1-VBAT) …(3)
デューティ比演算部70は、上記式(3)に従って、第3制御指令値REF3、即ち、高電圧側のデューティ比DHを算出する。
【0054】
ロジック部LG11は、コンパレータCMP11によって生成された低電圧側のスイッチング素子Q11Lのゲート信号S11Lと、第3制御指令値REF3(REF3=DH)とに従って、高電圧側のスイッチング素子Q11Hのゲート信号S11Hを生成する。具体的には、ロジック部LG11は、ゲート信号S11LがHレベルからLレベルに遷移したタイミングを起点として、デューティ比DHに従った時間長(DH×Ts)のHレベル期間が設けられる様に、ゲート信号S11Hを生成する。
【0055】
同様のロジックで、ロジック部LG12は、コンパレータCMP12によるゲート信号S12Lと、第3制御指令値REF3(REF3=DH)とに従って、ゲート信号S12Hを生成する。又、ロジック部LG21は、コンパレータCMP21によるゲート信号S21Lと、第3制御指令値REF3(REF3=DH)とに従って、ゲート信号S21Hを生成し、ロジック部LG22は、コンパレータCMP22によるゲート信号S22Lと、第3制御指令値REF3(REF3=DH)とに従って、ゲート信号S22Hを生成する。
【0056】
この様に高電圧側のデューティ比DHを設定すると、放電動作時における直流電圧V1の制御によって低電圧側のデューティ比DLが小さい値に設定されても、リアクトル電流IL=0となった時点で、高電圧側のスイッチング素子をターンオフすることができる。即ち、リアクトル電流ILが負値となる前に高電圧側のスイッチング素子をターンオフすることで、リアクトル電流IL=0となる期間が継続される電流不連続モードで、リアクトル電流IL(IL1,IL2)を制御することが可能となる。
【0057】
即ち、放電動作時には、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lが、第1制御指令値REF1に従ってPWM制御される一方で、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hは、電流不連続モードの導入と電力伝送との両立のためにスイッチング制御される。
【0058】
図3には、
図2によって生成されたゲート信号による電力変換装置100の放電動作時の動作例を説明するシミュレーション波形図が示される。
【0059】
図3に示される様に、放電動作時には、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20への伝送電力P12は正値である(P12>0)。又、コンデンサC1の直流電圧V1は、電圧指令値VREF1に従って一定に制御されている。
【0060】
第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20において、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22LのHレベル期間長は、直流電圧V1を制御するためのデューティ比DL(第1制御指令値REF1)に従って設定されている。更に、
図2で説明した、キャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22での初期位相の位相差φ[deg]に第2制御指令値REF2が反映される。
【0061】
放電動作時には、P12>0より、REF2>0(φ>0)であるので、第2ブリッジ20のゲート信号S21L,S22Lの位相は、第1ブリッジ10のゲート信号S11L,S12Lの位相よりも遅れている。
【0062】
高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hは、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22LがHレベルからLレベルに遷移してから、高電圧側のデューティ比DHに従った期間長だけHレベルに設定される。
図3にも示される様に、各レグ11,12,21,22において、低電圧側のゲート信号がLレベルに変化するタイミングから、高電圧側のゲート信号がHレベルに変化するタイミングの間には、両方のゲート信号がLレベルに設定される、所謂、デッドタイムが一般的に設けられる。
【0063】
この様な、ゲート信号S11H,S11L,S12H,S12L,S21H,S21L,S22H,S22Lに従って第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20が動作したときの、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の出力端電圧VTrp,VTrs、トランス30の1次巻線30p及び2次巻線をそれぞれ流れるトランス電流ITrp及びITrs、並びに、リアクトル電流IL1,IL2の波形図が、
図3には更に示される。
【0064】
出力端電圧VTrp,VTrsは、ゲート信号S11H,S11L,S12H,S12L,S21H,S21L,S22H,S22LのH/Lの組み合わせであるスイッチングパターンに従って逐次変化する。又、
図3のシミュレーション波形では、トランス30については、理想トランス(励磁インダクタンスが無限大)、かつ、巻数比=1:1としたので、ほぼITrp=ITrsとなっている。
【0065】
リアクトル電流IL1は、ゲート信号S11LのHレベル期間に上昇(絶対値が増加)し、ゲート信号S11HのHレベル期間に低下(絶対値が減少)する。式(3)に従って、デューティ比DHを設定することにより、ゲート信号S11HがHレベルからLレベルに変化する時点においてIL1=0であり、以降のリアクトル電流IL1に電流不連続期間を設けることができる。
【0066】
同様に、リアクトル電流IL2は、ゲート信号S12LのHレベル期間に上昇(絶対値が増加)し、ゲート信号S12HのHレベル期間に低下(絶対値が減少)する。式(3)に従って、デューティ比DHを設定することにより、ゲート信号S12HがHレベルからLレベルに変化する時点ではIL2=0であり、以降のリアクトル電流IL2に電流不連続期間を設けることができる。
【0067】
この結果、本実施の形態に係る電力変換装置では、放電動作時において、高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12H,Q21H,Q22Hを停止(オフに固定)することなく、オン期間を設けた上で、リアクトル電流IL1,IL2を電流不連続モードで制御することが可能となる。
【0068】
更に高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hのオン期間を設けることで、当該オン期間のうち、対角のスイッチング素子Q12L,Q11L(低電圧側)のオン期間期間においてトランス電流ITrs,ITrpが発生している。これにより、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20への電力伝送、言い換えると、コンデンサC1からトランス30へ経由して負荷2(コンデンサC2)への電力伝送が行われることが理解される。
【0069】
これに対して、高電圧側のスイッチング素子Q11H,Q12Hを停止(オフ固定)することで電流不連続モードを設ける場合には、リアクトル電流IL1,IL2の絶対値が減少する期間において、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20への電力伝送ができなくなる。
【0070】
この様に、本実施の形態に係る電力変換装置によれば、低出力時における導通損失の抑制のための電流不連続モードの導入と、電力伝送動作の確保とを両立することが可能な第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20のスイッチング制御が可能となる。
【0071】
(充電動作時の制御及び回路動作)
次に、電力変換装置100の充電動作時の制御及び動作波形例について、
図4及び
図5を用いて説明する。
【0072】
図4を参照して、制御演算部50は、充電動作時には、制御器54の出力値に「-1」を乗算する乗算器54xが更に設けられた態様で、第1制御指令値REF1を生成する。即ち、充電動作における第1制御指令値REF1は、放電動作時とは反対に、直流電圧V1よりも電圧指令値VREF1が高いときに、REF1=0に制限される様に演算される。
【0073】
一方で、電圧偏差ΔV2は、放電動作時と同様に、ΔV2=VREF2-V2によって算出される。即ち、充電動作においても、第1制御指令値REF1は、直流電圧V1を電圧指令値VREF1に制御するための指令値であり、第2制御指令値REF2は、直流電圧V2を電圧指令値VREF2に制御するための指令値である。
【0074】
直流電圧V2が電圧指令値VREF2より高い場合には、ΔV2<0、及び、REF2<0となることで、位相差φ<0、即ち、第2ブリッジ20のスイッチング動作の位相が、第1ブリッジ10のスイッチング動作の位相よりも進むことになる。この結果、第2ブリッジ20から第1ブリッジ10へ電力が伝送されることにより、直流電圧V2は、電圧指令値VREF2へ向けて低下することができる。この際に、ΔV2の絶対値が大きい程、位相差φによる位相進み量も大きく設定されて、第2ブリッジ20から第1ブリッジ10へ伝送される電力も大きくなる。
【0075】
充電動作時には、ゲート信号生成部60において、制御演算部50からの第1制御指令値REF1を高電圧側のデューティ比DHとして、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hが生成される。尚、第2制御指令値REF2は、放電動作時と同様に、第1ブリッジ10に対応するキャリア波CW11,CW12に対する、第2ブリッジ20に対応するキャリア波CW21,CW22の位相差φ[deg]として、キャリア波生成器CG21,CG22に与えられる。
【0076】
従って、コンパレータCMP11,CMP12,CMP21,CMP22は、第1制御指令値REF1(高電圧側のデューティ比DH)と、
図2と同様のキャリア波CW11,CW12,CW21,CW22のそれぞれとを電圧比較することによって、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hを生成する。
【0077】
充電動作時における低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lは、デューティ比演算部70によって演算された第3制御指令値REF3を低電圧側のデューティ比DLとして生成される。
【0078】
リアクトル電流IL<0である充電動作時には、上述の式(1),(2)は、負電流での最大値となる最小電流ILmin(ILmin<0)を用いて、下記の式(4),(5)に変形されることになる。
【0079】
ILmin=(VBAT-V1)×DH×Ts …(4)
IL0=ILmin+(VBAT/L)×DL×Ts …(5)
式(4),(5)より、IL0=0となるデューティ比DLは、下記の式(6)で与えられることが理解される。
【0080】
DL=DH×(V1-VBAT)/VBAT …(6)
従って、放電動作時には、デューティ比演算部70は、上記式(6)に従って、第3制御指令値REF3、即ち、低電圧側のデューティ比DLを算出する。
【0081】
そして、ロジック部LG11,LG12,LG21,LG22は、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hと、第3制御指令値REF3(低電圧側のデューティ比DL)とに基づいて、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lを生成する。
【0082】
具体的には、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22HのそれぞれのHレベルからLレベルへの遷移タイミングを起点として、デューティ比DLに従った時間長(DL×Ts)のHレベル期間が設けられる様に、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lは生成される。
【0083】
この様に、充電動作時には、放電動作時とは逆に、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hが、第1制御指令値REF1に従ってPWM制御される一方で、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lは、電流不連続モードの導入と電力伝送との両立のためにスイッチング制御される。
【0084】
図5には、
図4によって生成されたゲート信号による電力変換装置100の充電動作時の動作例を説明するシミュレーション波形図が示される。
【0085】
図5に示される様に、充電動作時には、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20への伝送電力P12は負値である(P12<0)。又、コンデンサC1の直流電圧V1は、電圧指令値VREF1に従って一定に制御されている。
【0086】
第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20において、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22HのHレベル期間長は、直流電圧V1を制御するためのデューティ比DH(第1制御指令値REF1)に従って設定されている。
【0087】
充電動作時には、P12<0より、REF2<0(φ<0)であるので、
図4でのキャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22での初期位相の位相差φ[deg]に第2制御指令値REF2が反映されることよって、第2ブリッジ20のゲート信号S21H,S22Hの位相は、第1ブリッジ10のゲート信号S11H,S12Hの位相よりも進んでいる。
【0088】
低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lは、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22HがHレベルからLレベルに遷移してから、低電圧側のデューティ比DLに従った期間長だけHレベルに設定される。充電動作時においても、各レグ11,12,21,22において、高電圧側のゲート信号がLレベルに変化するタイミングから、低電圧側のゲート信号がHレベルに変化するタイミングの間には、デッドタイムが一般的に設けられる。
【0089】
図5においても、
図3(放電動作時)と同様の第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の出力端電圧VTrp,VTrs、トランス30の1次巻線30p及び2次巻線をそれぞれ流れるトランス電流ITrp及びITrs、並びに、リアクトル電流IL1,IL2の波形図が更に示される。
【0090】
リアクトル電流IL1は、ゲート信号S11HのHレベル期間に低下(絶対値が増加)し、ゲート信号S11LのHレベル期間に上昇(絶対値が減少)する。式(6)に従って、デューティ比DLを設定することにより、ゲート信号S11LがHレベルからLレベルに変化する時点においてIL1=0であり、以降のリアクトル電流IL1に電流不連続期間を設けることができる。
【0091】
同様に、リアクトル電流IL2は、ゲート信号S12HのHレベル期間に低下(絶対値が増加)し、ゲート信号S12LのHレベル期間に上昇(絶対値が減少)する。式(6)に従って、デューティ比DLを設定することにより、ゲート信号S12LがHレベルからLレベルに変化する時点ではIL2=0であり、以降のリアクトル電流IL2に電流不連続期間を設けることができる。
【0092】
この結果、本実施の形態に係る電力変換装置では、充電動作時において、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12L,Q21L,Q22Lを停止(オフに固定)することなく、オン期間を設けた上で、リアクトル電流IL1,IL2を電流不連続モードで制御することが可能となる。
【0093】
更に、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12Lのオン期間を設けることで、当該オン期間のうち、対角のスイッチング素子Q12H,Q12H(低電圧側)のオン期間期間においてトランス電流ITrs,ITrpが発生している。これにより、第2ブリッジ20から第1ブリッジ10への電力伝送、言い換えると、負荷2(コンデンサC2)からトランス30へ経由して蓄電池1への電力伝送が行われることが理解される。
【0094】
これに対して、低電圧側のスイッチング素子Q11L,Q12Lを停止することで電流不連続モードを設ける場合には、リアクトル電流IL1,IL2の低下期間において、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20への電力伝送ができなくなる。
【0095】
以上説明した様に、実施の形態1に係る電力変換装置の制御動作によれば、放電動作時及び充電動作時の両方において、低出力時における導通損失の抑制のための電流不連続モードの導入と、電力伝送動作の確保とを両立するための第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20のスイッチング制御の導入によって、電力変換性能を向上することができる。
【0096】
尚、ゲート信号生成部60は、制御演算部50からの第1制御指令値REF1及び第2制御指令値REF2に従って、放電動作時には
図2の制御動作を実行する一方で、
充電動作時には
図4の制御動作を実行するための、制御動作の切替機能を有する様に構成される。例えば、電圧偏差ΔV2の極性(正/負)に応じて、放電動作時(ΔV2≧0)及び充電動作時(ΔV2<0)の制御動作を切り替えることができる。或いは、直流電圧V1及びV2に比較に従って、V1>V2のときには、放電動作時の制御を行う一方で、V1≦V2のときには、充電動作時の制御を行う様に、ゲート信号生成部60を構成することも可能である。
【0097】
実施の形態1の変形例.
実施の形態1では、制御演算部50による第2制御指令値REF2をキャリア波の位相差φ[deg]に反映する制御例を説明したが、第2制御指令値REF2をキャリア波の周波数に反映することも可能である。
【0098】
図6は、実施の形態1の変形例に係る電力変換装置の放電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【0099】
図6を参照して、実施の形態1に係る変形例では、制御演算部50において、直流電圧V2を電圧指令値VREF2に制御するための第2制御指令値REF2は、キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22の周波数変化量dfとして算出される。周波数変化量dfは、放電動作時、即ち、ΔV2>0のときには、正値として得られる(df>0)。一方で、第1制御指令値REF1は、実施の形態1(
図2)と同様に算出される。
【0100】
ゲート信号生成部60は、
図2の構成に加えて、キャリア周波数設定部65を更に含む。キャリア周波数設定部65は、予め定められた基準周波数faから、周波数変化量dfを減算することによって、キャリア周波数fcwを算出する。
【0101】
実施の形態1の変形例では、キャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22の各々は、キャリア周波数設定部65によって設定されたキャリア周波数fcwを有するキャリア波CW11,CW12,CW21,CW22を生成する。即ち、キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22の周期(1/fcw)は、第2制御指令値REF2に従って可変となる。
【0102】
これに対して、実施の形態1の変形例では、キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22の互いの位相差は固定される。具体的には、第2ブリッジ20に対応するキャリア波CW21及びCW22の位相は、第1ブリッジ10に対応するキャリア波CW11及びCW12の位相に対して、基準位相φaだけ遅れる様に固定される。即ち、実施の形態1の変形例では、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の間の位相差φ[deg]は、第2制御指令値REF2に依存しない一定値に固定される(放電動作時には、φ=+φa)。
【0103】
コンパレータCMP11,CMP12,CMP21,CMP22は、
図2と同様に動作して、第1制御指令値REF1(低電圧側のデューティ比DL)と、上述の様に、周波数が可変であるキャリア波CW11,CW12,CW21,CW22のそれぞれとの電圧比較によって、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lを生成する。
【0104】
更に、
図2と同様に、デューティ比演算部70は、上述の式(3)に従って、高電圧側のデューティ比DHを算出し、ロジック部LG11,LG12,LG21,LG22によって、電流不連続モードの導入と電力伝送とを両立する様に、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hが生成される。
【0105】
放電動作、即ち、電圧偏差ΔV2>0(VREF2>V2)の場合には、電圧偏差ΔV2の絶対値が大きい程、キャリア周波数fcwの低下量が大きくなるため、スイッチング周期長Tsが大きくなる。スイッチング周期長Ts(Ts=1/fcw)に比例して、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20への伝送電力が大きくなるので、直流電圧V2を制御するための第2制御指令値REF2をキャリア周波数fcwに反映する制御によっても、
図2で説明したのと同様の放電動作時の制御動作を実行することが可能である。
【0106】
図7には、実施の形態1の変形例に係る電力変換装置の充電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【0107】
図7を参照して、実施の形態1に係る変形例において、充電動作における制御演算部50は、直流電圧V2を電圧指令値VREF2に制御するための第2制御指令値REF2を、放電動作時(
図6)と同様に、キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22の周波数変化量dfとして算出する。一方で、充電動作時における第1制御指令値REF1については、実施の形態1(
図4)と同様に算出される。
【0108】
ゲート信号生成部60において、キャリア周波数設定部65は、充電動作時には、負値に設定されている電圧偏差ΔV2(ΔV2<0)から求められた周波数変化量df(第2制御指令値REF2)を、基準周波数faに加算することによって、キャリア周波数fcwを算出する。
【0109】
キャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22の各々は、放電動作時(
図6)と同様に、キャリア周波数設定部65によって設定されたキャリア周波数fcwに従って、キャリア波CW11,CW12,CW21,CW22の周波数を変化させる。一方で、充電動作時には、放電動作時とは異なり、第2ブリッジ20に対応するキャリア波CW21及びCW22の位相は、第1ブリッジ10に対応するキャリア波CW11及びCW12の位相に対して、基準位相φaだけ進む様に固定される(充電動作時には、φ=-φa)。
【0110】
この様に、実施の形態1の変形例では、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の間の位相差φ[deg]が、放電動作時及び充電動作時の間で遅れ方向及び進み方向に切り替えられるとともに、第2制御指令値REF2が反映されたスイッチング周期長Tsの変化に応じて、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20でのスイッチング周期長Tsが変化される。
【0111】
コンパレータCMP11,CMP12,CMP21,CMP22は、
図4と同様に動作して、第1制御指令値REF1(高電圧側のデューティ比DH)と、上述の様に生成されるキャリア波CW11,CW12,CW21,CW22のそれぞれとの電圧比較によって、高電圧側のゲート信号S11H,S12H,S21H,S22Hを生成する。
【0112】
更に、
図4と同様に、デューティ比演算部70は、上述の式(6)に従って、低電圧側のデューティ比DLを算出し、ロジック部LG11,LG12,LG21,LG22によって、電流不連続モードの導入と電力伝送とを両立する様に、低電圧側のゲート信号S11L,S12L,S21L,S22Lが生成される。
【0113】
充電動作、即ち、電圧偏差ΔV2<0(V2>VREF2)の場合には、電圧偏差ΔV2の絶対値が大きい程、キャリア周波数fcwの低下量が大きくなるため、スイッチング周期長Tsが大きくなる。スイッチング周期長Tsに比例して、第2ブリッジ20から第1ブリッジ10への伝送電力が大きくなるので、直流電圧V2を制御するための第2制御指令値REF2をキャリア周波数fcwに反映する制御によっても、
図4で説明したのと同様の充電動作時の制御動作を実行することが可能である。
【0114】
この様に、実施の形態1の変形例に係る電力変換装置の制御動作によれば、直流電圧V2を制御するための第2制御指令値REF2を、キャリア波の周波数、即ち、スイッチング周期長に反映する制御としても、実施の形態1と同様の電力変換装置の制御を提供することができる。
【0115】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る電力変換装置の放電動作時の制御動作を説明するブロック図である。
【0116】
図8を、実施の形態1に係る放電動作時の制御動作を示す
図2と比較して、実施の形態2では、ゲート信号生成部60は、追加パルス付与部75を更に有する点で異なる。制御演算部50及びゲート信号生成部60のその他の構成は、
図2と同様である。
【0117】
第2ブリッジ20のゲート信号S21L,S21H,S2
2L,S22Hは、
図2と同様に生成される。一方で、
図2の制御演算部50及びゲート信号生成部60によって生成される、第1ブリッジ10のゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lについては、基準となるゲート信号S11H*,S11L*,S12H*,S12L*として、追加パルス付与部75に入力される。
【0118】
追加パルス付与部75は、第1ブリッジ10のゲート信号について、上述のゲート信号S11H*,S11L*,S12H*,S12L*に対して、リアクトル電流IL1,IL2の電流不連続期間(IL1=0,IL2=0)において、高電圧側及び低電圧側のスイッチング素子を交互にオンオフをするためのオンパルスを追加する態様で、ゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lを生成する。
【0119】
図9には、
図8によって生成されたゲート信号による電力変換装置100の放電動作時の動作例を説明するシミュレーション波形図が示される。
【0120】
図9に示される様に、第2ブリッジ20のゲート信号S21H,S21L,S22H,S22Lは、追加パルスが付与されることなく、
図3と同様の波形となる。
【0121】
これに対して、第1ブリッジ10のゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lに対しては、追加パルス76,77が付与される。具体的には、レグ11に対応するゲート信号S11L及びS11Hに対しては、次のスイッチング周期が始まるまでのリアクトル電流IL1=0の期間(電流不連続期間)において、追加パルス76が付与される。これにより、
図3でのゲート信号S11H(
図8でのゲート信号S11H*に相当)のHレベルからLレベルへの遷移タイミング以降において、ゲート信号S11L及びS11Hが交互にHレベル及びLレベルに設定される。
【0122】
同様に、追加パルス付与部75は、レグ12に対応するゲート信号S12L及びS12Hに対しては、次のスイッチング周期が始まるまでのリアクトル電流IL2=0の期間(電流不連続期間)において、追加パルス77を付与する。これにより、
図3でのゲート信号S12H(
図8でのゲート信号S12H*に相当)のHレベルからLレベルへの遷移タイミング以降において、ゲート信号S12L及びS12Hが交互にHレベル及びLレベルに設定される。
【0123】
この様な追加パルス76,77の付与により、
図3の動作波形例と比較すると、
図9中に点線で囲む個所に、トランス電流ITrp,ITrsの発生期間を追加して設けることができる。この結果、
図3と同等の伝送電力の下では、
図3と同様のタイミングで生じるトランス電流ITrp,ITrsの振幅が抑制される。これにより、トランス30、並びに、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20を構成する各スイッチング素子の最大電流を抑制することが可能となる。これにより、各スイッチング素子及びトランス30での電力損失を軽減することができるので、電力変換効率を向上させて、同一の回路構成(素子スペック)下での伝送電力を高めることができる。
【0124】
ここで、追加パルス76.77の各パルス幅は、リアクトルL1,L2での導通損失が増加しない範囲で、予め定めることができる。或いは、送電側の各スイッチング素子において、ゼロ電圧スイッチングによってオンオフ可能な期間長が確保される様に、上記パルス幅を決定することも可能である。
【0125】
再び
図8を参照して、追加パルス付与部75には、演算された高電圧側のデューティ比DH、低電圧側のデューティ比DL、スイッチング周期長Ts、及び、パルス幅PWが入力される。リアクトル電流IL1,IL2の電流不連続期間の時間長は、デューティ比を用いて、Ts×(1-DL-DH)で求められる。従って、上述の様に電力損失面から設定されるパルス幅PWと、算出されたゼロ電流期間の時間長とを用いることで、
図9に示された追加パルス76,77に含まれるパルス数を設定することができる。
【0126】
この様に、追加パルス付与部75は、上述の演算によって求められた、リアクトル電流IL1,IL2=0の期間内に追加可能なパルス数に従って、与えられたパルス幅PWのオンパルスを追加パルス76,77として付与する論理演算を行って、第1ブリッジ10のゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lを生成する。
【0127】
尚、追加パルス付与部75は、充電動作時の制御にも同様に適用できる。即ち、
図4の構成に対して、上記追加パルス付与部75を更に配置することができる。この場合には、
図4の制御演算部50及びゲート信号生成部60によって生成される、第1ブリッジ10のゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lを、基準となるゲート信号S11H*,S11L*,S12H*,S12L*として、追加パルス付与部75に入力することができる。これにより、第1ブリッジ10のゲート信号S11H,S11L,S12H,S12Lに、
図9と同様の追加パルス76,77を付与することができる。
【0128】
又、
図6及び
図7の構成においても、追加パルス付与部75を追加することで、実施の形態1の変形例と、実施の形態2とを組み合わせることが可能である。
【0129】
この様に、実施の形態2に係る電力変換装置の制御動作によれば、追加パルス76,77の付与により、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の間での電力伝送期間を更に設けることができる。これにより、同一の電力を伝送する際の最大電流を抑制できるので、電力損失の低減による電力変換効率の向上、及び、実際に伝送できる電力の増大によって、電力変換性能を更に向上することができる。
【0130】
実施の形態3.
実施の形態3では、電力変換装置の主回路構成の変形例について説明する。
【0131】
図10は、実施の形態3の第1の例に係る電力変換装置101の回路構成を説明する回路図である。
【0132】
図10を参照して、電力変換装置101は、
図1に示された電力変換装置100と比較して、コンデンサC1の接続位置が異なる。具体的には、コンデンサC1は、電力線PL1及びNL1の間(
図1)ではなく、電力線PL1及びノードNiの間に接続される。従って、電力変換装置101では、コンデンサC1及び蓄電池1が、電力線PL1及びNL1の間に直列接続されることになる。
【0133】
このため、電力変換装置101では、電圧指令値VREF1については、電力線PL1及びNL1の間の直流電圧の指令値(実施の形態1及び2でのVREF1相当)から、バッテリ電圧VBATを減算することで求められる。従って、実施の形態3においても、第1制御指令値REF1を算出するための電圧偏差ΔV1についてΔV1=VREF1-V1にて算出することができる。即ち、実施の形態3においても、電圧指令値VREF1は、電力線PL1及びNL1の間の直流電圧を制御するための指令値である。尚、電圧指令値VREF2は、実施の形態1及び2と同様である。実施の形態3では、直流電圧V1及びバッテリ電圧VBATの和が「第1の直流電圧」に対応する。一方で、実施の形態1及び2と同様に、直流電圧V2は「第2の直流電圧」に対応する。
【0134】
電力変換装置101では、電力変換装置100と比較すると、第1ブリッジ10の高電圧側のスイッチング素子Q11H及びQ21Hのオン期間に、リアクトルL1,L2の両端に印加される電圧が異なる。これにより、当該期間におけるリアクトル電流IL1,IL2の傾きも変化するので、デューティ比演算部70による、電流不連続モードを適切に導入するための、放電動作時における高電圧側のデューティ比DHの演算式、及び、充電動作時における低電圧側のデューティ比DLの演算式に変更が必要となる。
【0135】
具体的には、高電圧側のスイッチング素子Q11H及びQ21Hのオン期間に、リアクトルL1,L2の両端に印加される電圧は、
図1では(VBAT-V1)であったのに対して、
図10では、-V1となる。
【0136】
従って、放電動作時には、上述の式(3)において、(V1-VBAT)をV1に置換した下記の式(7)によって、高電圧側のデューティ比DHを算出することができる。
【0137】
DH=DL×VBAT/V1 …(7)
同様に、充電動作時には、上述の式(6)において、(V1-VBAT)をV1に置換した下記の式(8)によって、低電圧側のデューティ比DLを算出することができる。
【0138】
DL=DH×V1/VBAT …(8)
電力変換装置101に対しては、上述の実施の形態1及びその変形例、並びに、実施の形態2において、電圧偏差ΔV1の算出式を変えるとともに、デューティ比演算部70で用いられる演算式を上述の式(7)及び(8)とすることによって、電力変換装置100に対するのと同様の制御動作を適用することができる。この結果、実施の形態3の第1の例に係る電力変換装置101についても、上述の実施の形態1及びその変形例、並びに、実施の形態2による効果を得ることができる。
【0139】
図11は、実施の形態3の第2の例に係る電力変換装置102の回路構成を説明する回路図である。
【0140】
図11を参照して、電力変換装置102は、電力変換装置100において、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の各々を、三相で構成したものである。これにより、
図1でのトランス30に代えて、三相分の1次巻線31p,32p,33p及び2次巻線31s,32s,33sを有するトランス31(三相トランス)が、第1ブリッジ10及び第2ブリッジの間に接続される。1次巻線31p及び2次巻線31s、1次巻線32p及び2次巻線32s、並びに、1次巻線33p及び2次巻線33sの各々は、磁気結合される。
【0141】
第1ブリッジ10は、
図1と同様のレグ11,12に加えてレグ13を更に有する。レグ13は、ノードN13を介して電力線PL1及びNL1の間に直列接続される、高電圧側のスイッチング素子Q13H及び低電圧側のスイッチング素子Q13Lにより構成される。スイッチング素子Q13H及びQ13Lは、ゲート信号S13H及びS13Lにそれぞれ従ってオンオフ制御される。レグ13のノードN13と、ノードNi(蓄電池1の正極)との間には、リアクトルL3が接続される。
【0142】
同様に、第2ブリッジ20は、
図1と同様のレグ21,22に加えてレグ23を更に有する。レグ23は、ノードN23を介して電力線PL1及びNL1の間に直列接続される、高電圧側のスイッチング素子Q23H及び低電圧側のスイッチング素子Q23Lにより構成される。スイッチング素子Q23H及びQ23Lは、ゲート信号S23H及びS23Lにそれぞれ従ってオンオフ制御される。
【0143】
三相のトランス31は、YY結線、即ち、1次側及び2次側ともスター結線されている。具体的には、1次巻線31p、32p及び33pの一方端が相互接続されるとともに、1次巻線31p、32p及び33pの他方端は、ノードN11、N12及びN13とそれぞれ接続される。同様に、2次巻線31s、32s及び33sの一方端が相互接続されるとともの、1次巻線31p、32p及び33pの他方端は、ノードN11、N12及びN13とそれぞれ接続される。尚、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20と、トランス31との間は、YΔ結線、ΔY結線、又は、ΔΔ結線の態様で接続することも可能である。
【0144】
リアクトルLT1~LT3は、1次巻線31p~33pのそれぞれに対して直列接続される。リアクトルLT1~LT3は、1次巻線31p及び2次巻線31s、1次巻線32p及び2次巻線32s、並びに、1次巻線33p及び2次巻線33sのそれぞれの磁気結合の漏れインダクタンスによって構成することも可能である。
【0145】
図12は、
図11に示された電力変換装置102の制御動作の一例を説明するブロック図である。
図12には、放電動作時の制御動作のためのブロック図が示される。
【0146】
図12に示される様に、電力変換装置102においても、制御演算部50は、
図2と同様に、即ち、電力変換装置100の制御と同様に構成される。一方で、3個のレグのスイッチング素子のゲート信号を生成するために、
図2のゲート信号生成部60に代えて、ゲート信号生成部61が配置される。
【0147】
ゲート信号生成部61は、ゲート信号生成部60と同様の、キャリア波生成器CG11,CG12,CG21,CG22、コンパレータCMP11,CMP12,CMP21,CMP22、デューティ比演算部70、及び、ロジック部LG11,LG12,LG21,LG22に加えて、レグ13,23に対応する、キャリア波生成器CG13,CG23、コンパレータCMP13,CMP23、及び、ロジック部LG13,LG23を更に含む。
【0148】
ゲート信号生成部60が、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の各々の2個のレグを180[deg]の位相差でスイッチング動作させたのに対して、ゲート信号生成部61は、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の各々の3個のレグを120[deg]ずつの位相差でスイッチング動作させる。これにより、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20がDAB回路として動作することができる。
【0149】
従って、第1ブリッジ10に対応するキャリア波生成器CG11,CG12,CG13では、キャリア波CW11~CW13に120[deg]の位相差が生じる様に、初期位相がそれぞれ0[deg]、120[deg]、及び240[deg]に設定される。第2ブリッジ20に対応するキャリア波生成器CG21,CG22,CG23の初期位相は、第1ブリッジ10に対応するキャリア波生成器CG11,CG12,CG13の初期位相に対して、位相差φ[deg]を有する様に設定される。これにより、放電動作時には、レグ21~23のスイッチング動作が、レグ11~13のスイッチング動作に対して遅れ方向の位相差φ[deg]を有することで、第1ブリッジ10から第2ブリッジ20への電力が伝送される。
【0150】
コンパレータCMP11~CMP13は、低電圧側のデューティ比DL(第1制御指令値REF1)とキャリア波CW11~CW13との電圧比較(
図2と同様)によって、ゲート信号S11L~S13Lを生成する。同様に、コンパレータCMP21~CMP23は、低電圧側のデューティ比DL(第1制御指令値REF1)とキャリア波CW21~CW23との電圧比較(
図2と同様)によって、ゲート信号S21L~S23Lを生成する。
【0151】
ロジック部LG11~LG13は、ゲート信号S11L~S13Lと、
図2と同様のデューティ比演算部70で算出された高電圧側のデューティ比DHとに基づいて、ゲート信号S11H~S13Hを生成する。実施の形態1で説明したのと同様に、ゲート信号S21H~S23Hは、ゲート信号S11L~S13LがHレベルからLレベルに遷移してから、高電圧側のデューティ比DHに従った期間長だけHレベル期間が設けられる様に生成される。同様に、ロジック部LG21~LG23は、ゲート信号S21L~S23Lと、
図2と同様のデューティ比演算部70で算出された高電圧側のデューティ比DHとに基づいて、ゲート信号S21H~S23Hを生成する。
【0152】
この様に生成されたゲート信号S11L~S13L,S11H~S13H,S21L~S23L,S21H~S23Hに従って、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の各スイッチング素子をオンオフ制御することによって、
図11に示された電力変換装置102についても、実施の形態1で説明した電力変換装置100の放電時動作と同様に、電流不連続モードの導入と、電力伝送動作の確保とを両立することが可能な第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20のスイッチング制御が実現される。
【0153】
電力変換装置102に対しては、
図4(充電動作時)、
図7(キャリア周波数可変の放電動作)、及び、
図8(キャリア周波数可変の充電動作時)において、
図12と同様に、3個のレグ分のキャリア波生成器CG11~CG13,CG21~CG23、コンパレータCMP11~CMP13,CMP21~CMP23、及び、ロジック部LG11~LG13,LG21~LG23を配置する様に変形することで、同様の制御を実現することができる。
【0154】
又、電力変換装置102においても、
図11の構成において、コンデンサC1を
図9と同様に電力線PL1とノードNi(蓄電池1の正極)との間に接続する構成とすることも可能である。この場合には、
図9で説明した様に、電圧偏差ΔV1の算出を変更するとともに、電流不連続モードを導入するためのデューティ比演算部70におけるデューティ比の演算式を変更することが必要である。
【0155】
この様に、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の各々が3個のレグを有する電力変換装置102についても、電力変換装置100,101と同様に、放電動作時及び充電動作時の両方において、低出力時における導通損失の抑制のための電流不連続モードの導入と、電力伝送動作の確保とを両立するための第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20のスイッチング制御の導入によって、電力変換性能を向上することができる。
【0156】
尚、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20の各々が有するレグの数は任意の複数個(N個:N≧2)とすることができる。この場合、第1ブリッジ10及び第2ブリッジ20のN個のレグの間で、スイッチング動作には(360/N)[deg]ずつの位相差を設けることになる。Nを大きくすると、リアクトル及びスイッチング素子の通過電流を小さくすることが可能である一方で、回路規模は増大する。
【0157】
尚、トランス30,31での1次巻線及び2次巻線の巻数比は1:1でなくても同様の回路動作が実現される。特に、1次巻線の巻数を2次巻線の巻数よりも多くして、巻数比n:1(n>1)とすると、2次巻線のn倍の電圧が1次巻線に現れるようにトランス30,31を構成することができる。これにより、1次側の昇圧機能を活用して、VBAT>V2の場合にも放電動作が行えるようになるため、電力伝送可能条件を緩和することができる。
【0158】
又、
図2を始めとする、制御動作を説明するブロック図に記載された各回路要素及び各ブロックの機能は、ソフトウェア処理及びハードウェア処理の少なくとも一方によって実現することができる。即ち、制御演算部50及びゲート信号生成部60は、図示しないCPU(Central Processing Unit)がメモリに予め格納されたプログラムを実行するコンピュータベースの構成、又は、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、電子回路(アナログ回路)等による構成とすることが可能であり、これらの組み合わせによって構成することも可能である。
【0159】
尚、本実施の形態に係る電力変換装置では、上述した電流不連続モードが導入されるスイッチング制御を負荷条件等に依らず常時適用する必要は無いことを確認的に記載する。即ち、負荷条件に応じて(例えば、伝送される電力が小さい場合)において、実施の形態1~3で説明した電流不連続モードが導入されたスイッチング制御が行われるモードが存在する限り、他の負荷条件(例えば、伝送される電力が大きい場合)では当該電流不連続モードが存在しないスイッチング制御が行われてもよい。
【0160】
本開示には、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組合せで実施の形態に適用可能である。
【0161】
従って、例示されていない無数の変形例が、本開示での技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組合せる場合が含まれるものとする。
【0162】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
1 蓄電池、2 負荷、10 第1ブリッジ、11~13,21~23 レグ、N11~N13,N21~N23,Ni ノード、20 第2ブリッジ、30,31 トランス、30p,31p,32p,33p 1次巻線、30s,31s,32s,33s 2次巻線、50 制御演算部、52,56 偏差演算部、54,58 制御器、60,61 ゲート信号生成部、65 キャリア周波数設定部、70 デューティ比演算部、75 追加パルス付与部、76,77 追加パルス、100~102 電力変換装置、C1,C2 コンデンサ、CG11~CG13,CG21~CG23 キャリア波生成器、CMP11~CMP13,CMP21~CMP23 コンパレータ、CW11~CW13,CW21~CW23 キャリア波、DH,DL デューティ比、ITrp,ITrs トランス電流、L1~L3,LT,LT1~LT3 リアクトル、LG11~LG13,LG21~LG23 ロジック部、NL1,NL2,PL1,PL2 電力線、PW パルス幅、Q11H,Q11L,Q12H,Q12L,Q13H,Q13L,Q21L,Q21H,Q22H,Q22L,Q23H,Q23L スイッチング素子、REF1 第1制御指令値、REF2 第2制御指令値、REF3 第3制御指令値、S11H,S11L,S12H,S12L,S13H,S13L,S21H,S21L,S22H,S22L,S23L,S23H ゲート信号、Ts スイッチング周期長、V1,V2 直流電圧、VBAT バッテリ電圧、VREF1,VREF2 電圧指令値、df 周波数変化量、fa 基準周波数、fcw キャリア周波数。