(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】改良地盤構築方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2024010030
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】399035386
【氏名又は名称】株式会社本久
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】小布施 栄
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275369(JP,A)
【文献】特開2023-074387(JP,A)
【文献】特開2009-167651(JP,A)
【文献】特開2022-043628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/00~3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性の大きな粘性土、土塊状あるいは固結状の硬い粘性土、土砂化した風化岩または強風化岩、火山灰質土や有機質土のいずれかを含む地盤における改良地盤構築方法であって、
設定した区画を掘削して基礎工穴を形成し、
前記基礎工穴に、土砂
を投入し、埋め戻した土砂の上に砕石、砂利、礫や、砂礫、河床砂礫、砂礫土砂、礫質土砂等の良質土のいずれかを含む改質材
を敷設し、前記改質材を敷設した後にセメントミルク又はセメントおよび水と、を投入して、
土砂と改質材とセメントミルク又はセメントおよび水とを撹拌、混錬して土塊を破砕しながら泥状の改良土を生成し、泥状の改良土を固化して固化体を形成することによりブロック状改良地盤を形成する、
ことを特徴とする改良地盤構築方法。
【請求項2】
泥状の改良土を複数の層に分けて生成、集積することで泥状の改良土の集合体を形成して固化させる、
ことを特徴とする
請求項1に記載の改良地盤構築方法。
【請求項3】
前記基礎工穴を形成する際に、露出した岩石または固結土砂を削って細片化しながら掘削する、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の改良地盤構築方法。
【請求項4】
前記ブロック状改良地盤を形成する区画を設定する際に、
前記基礎工穴の深さに応じて、前記基礎工穴の外に設置した掘削装置、撹拌手段が、前記基礎工穴の外から前記基礎工穴の中にある土砂と改質材とセメントミルク又はセメントおよび水とを撹拌、混錬することが可能な範囲で区画の周縁形状を設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の改良地盤構築方法。
【請求項5】
改良地盤が複数のブロック状改良地盤を備えている場合に、
固化していないブロック状改良地盤と離間する区画に、次のブロック状改良地盤を形成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の改良地盤構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粘性の大きな粘性土、土塊状あるいは固結状の硬い粘性土、土砂化した風化岩または強風化岩、火山灰質土や有機質土など固まりにくい土砂における改良地盤構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、砂防堰堤のような重量構造物の基礎地盤が弱い場合、地盤改良を行い基礎地盤の構築をする。その際、一般的には攪拌機構を伴う装置を地盤内に挿入して、セメントミルクを吐出または噴射し、攪拌機構により混合しながら改良地盤を構築することが一般的である。
【0003】
また、砂防堰堤は重量構造物であり、基礎地盤にはおよそ100~600kN/m2の荷重が作用する。これまでに多くの砂防堰堤が構築されてきたが、新たに新設される砂防堰堤は必ずしも基礎地盤に岩盤が露出するような適地ではなく軟弱な地盤に計画されることも多い。
さらに、砂防堰堤が重量構造物であるがために、地盤が必ずしも軟弱ではなく、相対的に軟弱という場合には硬い地盤も地盤改良の対象となる場合がある。
【0004】
例えば、砂防堰堤を計画する地盤には、土砂が移動して形成された地盤であることも多く、堆積状況によっては特に軟弱な土砂が堆積している場合もある。
また、火山地域では降灰火山灰を起源とする地盤に砂防堰堤が計画された場合には、火山灰の成分によっては対象とする土質が粘土などの組成要因や固化阻害物質(例えば、有機物に含まれるフミン酸や火山灰に含まれるアロフェン)の混入によりセメントあるいはセメント系固化材によって生成する改良土が極度に固まりにくく所定の品質の確保が困難な場合がある。
さらに、砂防堰堤の建設地には強風化泥岩のように岩の性質としては著しく強度が小さく砂防堰堤の基礎地盤としては不適切な地盤が分布している場合もある。また、粘性土も洪積世以前に形成されたものには硬質な地盤を形成している場合もある。この場合、地盤としては硬質であり、掘削しても塊状となるため、軟弱地盤を対象とした攪拌機構では攪拌できないこともあるほか均質な改良地盤を構築できない場合がある。
【0005】
こうした場合、土をセメントやセメント系固化材で固めて所定の強度を得ようとすると、セメントやセメント系固化材を多量に添加するか、特殊なセメントを用いる必要に迫られるほか、現地発生土砂の全てをコンクリートや置換材により置換する構築方法を選択せざるを得ないこともある。
【0006】
そうした場合、多量なセメント添加や特殊な材料選定は不経済になるだけでなく、置換工法を選定する場合では、置換に伴う大規模な掘削を行う場合がある(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】https://hobbystyle-kadoya.jp/blog-7/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、堰堤基礎地盤を構築するために大規模な掘削を行うと、大量の現地土砂が発生して広い掘削土置き場が必要となり、さらに掘削穴内に建機等の掘削装置を配置する必要があるため掘削穴の崩落等に対する安全対策が必要となり非合理的な面が大きい。
【0009】
本発明はかかる技術的背景に基づいて創案されたものであって、固まりにくい土砂や硬質な地盤に砂防堰堤基礎地盤を構築する際に、広範囲にわたって大掛かりで深い掘削や大きな土砂仮置きヤードを必要とせずに、効率的に改良地盤を構築することが可能な改良地盤構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
粘性の大きな粘性土、土塊状あるいは固結状の硬い粘性土、土砂化した風化岩または強風化岩、火山灰質土や有機質土のいずれかを含む地盤における改良地盤構築方法であって、
設定した区画を掘削して基礎工穴を形成し、
前記基礎工穴に、土砂を投入し、埋め戻した土砂の上に砕石、砂利、礫や、砂礫、河床砂礫、砂礫土砂、礫質土砂等の良質土のいずれかを含む改質材を敷設し、前記改質材を敷設した後にセメントミルク又はセメントおよび水と、を投入して、土砂と改質材とセメントミルク又はセメントおよび水とを撹拌、混錬して土塊を破砕しながら泥状の改良土を生成し、泥状の改良土を固化して固化体を形成することによりブロック状改良地盤を形成する、
ことを特徴とし、
または、
泥状の改良土を複数の層に分けて生成、集積することで泥状の改良土の集合体を形成して固化させる、
ことを特徴とし、
または、
前記基礎工穴を形成する際に、露出した岩石または固結土砂を削って細片化しながら掘削する、
ことを特徴とし、
または、
前記ブロック状改良地盤を形成する区画を設定する際に、
前記基礎工穴の深さに応じて、前記基礎工穴の外に設置した掘削装置、撹拌手段が、前記基礎工穴の外から前記基礎工穴にある土砂と改質材とセメントミルク又はセメントおよび水とを撹拌、混錬することが可能な範囲で区画の周縁形状を設定する、
ことを特徴とし、
または、
改良地盤が複数のブロック状改良地盤を備えている場合に、
固化していないブロック状改良地盤と離間する区画に、次のブロック状改良地盤を形成する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る改良地盤構築方法によれば、粘性の大きな粘性土、土塊状の硬い粘性土、土砂化した風化岩または強風化岩、火山灰質土や有機質土など固まりにくい土砂でも多量のセメントや高価な材料を用いずに所定の品質の基礎地盤を構築することができる。また、複数のブロック状地盤改良とすることで大掛かりな掘削を伴わずに施工が可能となる。また、全部を置換しないため土砂処分量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る砂防堰堤基礎地盤の概略構成を説明する平面図である。
【
図2】一実施形態に係る砂防堰堤基礎地盤の概略構成を説明する
図1に矢視IIで示す正面図である。
【
図3】一実施形態に係る砂防堰堤基礎地盤を構成する改良基礎地盤の概略構成を説明する概念図であり、(A)は平面図を、(B)は(A)に矢視IIIB-IIIBで示す図である。
【
図4】一実施形態に係る改良地盤構築方法の効果を説明する図であり、土砂における単位セメント量と材齢28日軸圧縮強度の関係をセメント系固化材ごとに示した図である。
【
図5】一実施形態に係る改良地盤構築方法の効果を説明する図であり、砕石量と材齢28日軸圧縮強度の関係を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る改良地盤構築方法の効果を説明する図であり、単位セメント量と材齢28日軸圧縮強度の関係を砕石量ごとに示す図である。
【
図7】一実施形態に係る改良地盤構築方法によるブロック状改良地盤構築の概略を説明する概念図である。
【
図8】一実施形態に係る改良地盤構築方法により複数のブロック状改良地盤構築の概略を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態に係る砂防堰堤基礎地盤および改良基礎地盤について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る砂防堰堤基礎地盤の概略構成を説明する平面図であり、
図2は砂防堰堤基礎地盤の概略構成を説明する
図1に矢視IIで示す正面図である。また、
図3は一実施形態に係る砂防堰堤基礎地盤を構成する改良基礎地盤の概略構成を説明する概念図であり、
図3(A)は平面図を、
図3(B)は
図3(A)に矢視IIIB-IIIBで示す図である。また、
図4~
図6は一実施形態に係る改良地盤構築方法の効果を説明する図である。
図において、符号100は砂防堰堤基礎地盤(改良基礎地盤)を、符号10、11、12、13、14は改良基礎地盤を、符号10A、10B、10C、10D、10E、10Fはブロック状改良地盤を示している。
【0014】
一実施形態に係る改良地盤構築方法は、現地発生土砂の土砂の一部または全部を砕石や良質土等の改質材で置換することにより砂防堰堤に求められる強度を確保する技術である。
【0015】
砂防堰堤基礎地盤100は、例えば土塊状の粘性土(75μm未満の細粒分50%以上)を含み、固結していることに加えて粘性が大きく、練り混ぜの際に土塊が残りやすく配合目標強度(例えば3000kN/m2)の達成が困難な土質の地盤に構築されている。具体的には、例えば細粒分90%以上の土塊状の粘性土からなる地盤に構築されている。
なお、土塊状粘性土からなる地盤のほか、火山灰質土を含み固化阻害物質(例えば、有機物に含まれるフミン酸や火山灰に含まれるアロフェン)の混入によりセメントあるいはセメント系固化材によって生成する改良土が極度に固まりにくく所定の品質の確保が困難な土質の地盤に構築してもよい。
【0016】
また、砂防堰堤基礎地盤100は、
図1に示すように、例えば砂防堰堤(不図示)の幅方向に略直線状に配置された5つの改良基礎地盤10、11、12、13、14を備え、改良基礎地盤10、11、12、13、14は、それぞれ平面視して
図1に破線で示す区画(設定区画)と対応する複数のブロック状改良地盤を備えている。
なお、改良基礎地盤10、11、12、13、14を構成するブロック状改良地盤の数及び配置は任意に設定してもよく、例えば改良基礎地盤をひとつのブロック状改良地盤により構成してもよい。
【0017】
また、砂防堰堤基礎地盤100は、
図1、
図2に示すように、例えば中央に改良基礎地盤10が配置され、図に向かって改良基礎地盤10の左側に改良基礎地盤11、12がこの順に、右側に改良基礎地盤13、14がこの順に配置されている。
また、改良基礎地盤10、11、12、13、14は、
図2に示すように、それぞれ異なる高さ(標高)に形成されていて、それぞれの改良基礎地盤10、11、12、13、14は上面(改良地盤面)が略水平に形成されている。
【0018】
例えば改良基礎地盤10は、
図3(A)に示すように、6つ(複数)の区画(設定区画)と対応するブロック状改良地盤10A、10B、10C、10D、10E、10Fを備えている。
また、ブロック状改良地盤10A、10B、10C、10D、10E、10Fは、それぞれ矩形の一辺が1.0~5.0m(1.0m以上、5.0m以下)に設定されていて、隣接するブロック状改良地盤と相補的に形成されている。
【0019】
また、ブロック状改良地盤10は、
図3(B)に示すように、設定された区画を掘削して形成した基礎工穴M内に、土砂と、砕石(改質材)と、セメントミルク(又はセメントミルクおよび水)を投入して、これらを基礎工穴M内で撹拌、混合して生成した泥状の改良土を集積した集合体を固化させた固化体20により構成されている。なお、泥状の改良土の集合体を形成する際には、土砂、改質材、セメントミルク(又はセメントミルクおよび水)の投入、撹拌、混合を所定量毎に複数の層に分けて行ってもよい。
また、泥状の改良土は、撹拌、混合する際に、土砂に含まれる土塊が砕石により粉砕されていて50mm以上の土塊の含有が少ない(例えば、土塊の50mmふるい通過率が70%以上、より好適には80%以上)構成とされている。
【0020】
泥状の改良土を生成するための土砂、改質材、セメントミルク(又はセメントミルクおよび水)の混合比については目標とする強度が確保可能な範囲で任意に設定してもよい。
土砂としては、例えば現地発生土砂、運搬してきた土砂(例えば購入土砂)、現地発生土砂と運搬してきた土砂を混合した土砂を任意に適用してもよい。
また、改質材としては、砕石、砂利、良質土(礫、砂礫からなる礫質土)のいずれかひとつ又は複数を用いる。礫質土は、河床等から採取される河床砂礫や地山掘削で採取される礫、あるいは砂礫である。
【0021】
砕石は、道路用砕石としてJIS規格に示されるクラッシャラン(例えばC-40)が好適であり、礫質土では細粒分含有率が15%未満の礫や砂礫が好適であり、砂利は生コンクリート材料の粗骨材として分類される5mmから5cmの粒径のものを用いることが好適である。なお、2mm以上の粒径の粗骨材からなる礫分が0.075~2mmの粒径からなる砂分以上に含有していれば上記粒径に該当しないものであってもよい。
【0022】
また、礫質土は、2mm以上の粒径の粗骨材からなる礫分の含有量が0.075~2mmの粒径からなる砂分よりも多い土砂を指し、扱いやすく締固めしやすい土砂であることから良質土と言い換えることもできる。改質材はこの礫質土を用いることもできる。
この礫質土は、現地あるいはその流域で発生した山の崩壊や渓岸浸食、土石流の流下等によって堆積した土砂で、砂分よりも礫分の含有量が多く、細粒分の含有率が15%以下のもので最大粒径を80mm以下に粒径処理を施したもの用いることが好適である。
また、礫質土のうち、現地の沢や現地の近傍の河川を流下して堆積した土砂は河床砂礫または河床堆積物と呼ぶことができ、これらの土砂は細粒分が洗い流され、丸みを帯びている点に特徴がある。河床砂礫や河床堆積物についても、砂分よりも礫分の含有量が多く、細粒分の含有率が15%以下のもので最大粒径を80mm以下に粒径処理したものを用いることが好適である。
なお、セメントミルクと、セメントミルクおよび水のいずれを用いるかは任意に設定してもよい。また、改質材として製鋼スラグ等を添加して用いてもよい。
【0023】
以下、
図4~
図6を参照して、一実施形態に係る改良地盤構築方法の効果について説明する。
図4~
図6は、一実施形態に係る改良地盤構築方法の効果を説明する図であり、
図4は土砂(砕石量0%)における単位セメント量と材齢28日軸圧縮強度の関係をセメント系固化材ごとに示した図であり、
図5は砕石量と材齢28日軸圧縮強度の関係を示す図であり、
図6は単位セメント量と材齢28日軸圧縮強度の関係を砕石量ごとに示す図である。
図5、
図6における土砂(砕石量0%)、砕石量10%、20%は特殊土用セメント系固化材を、砕石量30%、40%は有機質土用セメント系固化材を用いた数値である。また、砕石量(%)は、砕石の重量を密度で割って得られる絶対容積に基づく比率を示している。
【0024】
(1)単位セメント量(kg/m
3)と材齢28日軸圧縮強度(N/m
2)の関係を特殊土用セメント系固化材、有機質土用セメント系固化材について、土砂(砕石0%)を用いて確認した結果、
図4に示すように、特殊土用セメント系固化材、有機質土用セメント系固化材ともに、単位セメント量が増加すると材齢28日軸圧縮強度はほぼ直線的に増加し、材齢28日軸圧縮強度は単位セメント量350(kg/m
3)で単位セメント量250(kg/m
3)に対して特殊土用セメント系固化材で約1.37倍、有機質土用セメント系固化材で約1.59倍であった。
【0025】
(2)次に、単位セメント量250(kg/m
3)における砕石量と材齢28日軸圧縮強度(N/m
2)の関係を確認すると、
図5に示すように、砕石量(%)が増加すると材齢28日軸圧縮強度(N/m
2)が増加することが確認できた。
図5によると、材齢28日軸圧縮強度は、土砂に比較して、砕石量10%で1.14倍、砕石量20%で1.23倍、砕石量30%で2.35倍、砕石量40%で2.83倍であり、砕石量10%でも効果が認められるが砕石量が増加するにつれてより効果が増大することが確認された。
【0026】
(3)また、砕石量0%、砕石量30%、40%について、単位セメント量200~350(kg/m
3)における材齢28日軸圧縮強度の変化を調べると、
図6に示すように、砕石量に応じて材齢28日軸圧縮強度はほぼ直線的に増加することが確認できた。
一方、砕石量30%に比較して砕石量40%の方が勾配が大きく、特に単位セメント量200~350(kg/m
3)でその差が大きくなる点については、砕石量が増加することで土塊の細片化が進んで均質な改良土が生成されるからであると推測される。
【0027】
次に、
図7、
図8を参照して、一実施形態に係る改良基礎地盤構築方法について説明する。
図7は一実施形態に係る改良地盤構築方法によるブロック状改良地盤構築の概略を説明する概念図であり、
図8は複数のブロック状改良地盤構築の概略を説明する概念図である。図において、符号Mは基礎工穴を、符号Bは改質材を、符号Gは(砂防堰堤を建設する予定地の)地盤を、符号Cはセメントミルクを、符号Sは土砂を、符号Mは基礎工穴を、符号Tはバックホウを示している。
【0028】
まず、
図7を参照して、設定した区画にブロック状改良地盤を形成するための改良基礎地盤構築方法について説明する。
(1)基礎工穴の形成
まず、土塊状粘性土Gにブロック状改良地盤を形成する区画を設定する。
ブロック状改良地盤の区画を設定する際には、ブロック状改良地盤を形成する基礎工穴Mの深さとの関りで、掘削、混錬に用いるバックホウT等の装置を基礎工穴Mの外に設置して施工することが可能な周縁形状の区画を設定する。区画は、例えば矩形である場合には平面寸法およそ1.0~5.0m四方に設定する。
次に、
図7(A)に示すように、バックホウTにより設定した区画を掘削して所定の深さまで掘り下げて基礎工穴Mを形成する。掘削の際に表れた土塊や岩石または固結土砂は可能な限り削って細片化する。
具体的には、施工箇所平面に区画割りしたブロックの区画(範囲)を、所定の深さまで掘り上げる。
ここで、露出した岩石とはバックホウで削れる程度の軟岩(例えば、強風化または風化して岩級区分においてD級に区分される泥岩や砂岩、凝灰岩、礫岩といった堆積岩、マサした花崗岩)をいい、固結土砂とは、例えば洪積世以前に形成されたN値10以上の硬い粘性土や強風化または風化した泥岩等である。
【0029】
(2)基礎工穴への土砂、砕石、セメントミルクの投入
次に、
図7(B)に示すように、バックホウT又はミキシングバケットを装着したバックホウTにより、バケット計量した所定量の土砂S、砕石(改質材)B、セメントミルクCをこの順で順次投入する。すなわち、まず、土砂を投入し、その上に砕石(改質材)B、セメントミルクCの順に投入する。
投入する土砂S、砕石(改質材)B、セメントミルクCの量は、あらかじめ配合試験によって定めた量の砕石または良質土の量に基づいて設定する。
また、投入する土砂等の厚さは任意に設定してもよいが、土砂S、砕石(改質材)B、セメントミルクCは、例えば約1.0m~1.5mの厚さで投入する。
砕石(改質材)Bまたは良質土の現場における計量方法はあらかじめバケットに入る土砂Sの質量を計量しておけば、土の密度から投入体積を換算できるため、バケットの杯数にて所定の割合にすることが可能となる。
なお、セメントミルクの供給は、近傍に設けたスラリープラントからグラウトポンプで供給してもよい。また、セメントと水を投入する場合は、バックホウTで袋入りセメントを現場に運搬し、近傍に設置した水タンクからポンプアップして供給してもよい。
また、現地発生土砂を用いる場合、土砂が有機物(樹木等)や転石等の障害を含んでいる場合にはこれらを取り除く。
【0030】
(3)基礎工穴内において泥状の改良土を生成
次いで、
図7(C)に示すように、投入した土砂S、砕石(改質材)B、セメントミルクC(又はセメントと水)をミキシングバケットを装着したバックホウTにより基礎工穴Mで撹拌、混合して、砕石(改質材)Bにより土砂が含む土塊を破砕して細片化しながら50mm以上の土塊の含有が少ない均質な泥状の改良土20Aを生成する。一回で生成する泥状の改良土の層は0.5~1.5mの範囲であることが好適である。
【0031】
(4)泥状改良土の集合体の形成
上記(2)、(3)を繰り返して、
図7(D)に示すように、基礎工穴Mに泥状改良土の集合体20Bを形成する。
【0032】
(5)ブロック状改良地盤の形成
次いで、
図7(E)に示すように、泥状の改良土の集合体20Bを固化させて固化体20とすることで改良地盤10Aを形成する。
【0033】
次に、
図8を参照して、複数のブロック状改良地盤を備えた砂防堰堤基礎地盤を構築する際の改良地盤構築方法の概略について説明する。
図8は、
図3(A)に示すブロック状改良地盤10Aに続いて隣接するブロック状改良地盤10Bを構築する場合の例を示している。なお、次の区画にブロック状基礎地盤を施工する際は固化前のブロックの隣接ブロックを避けて施工することで乱れのない改良地盤を形成することが可能となる。
図8においては、説明の便宜にため、ブロック状基礎地盤10Aが固化したものとして、隣接した区画にブロック状基礎地盤10Bを構築する場合について説明する。
【0034】
(1)まず、
図8(A)に示すように、ブロック状改良地盤10Bの区画をバックホウTにより掘削して基礎工穴Mを形成する。
既に構築したブロック状改良地盤10Aに隣接して基礎工穴Mを形成する場合には、ブロック状改良地盤10Aの仕上がり状態を確認する。
図8(A)はブロック状改良地盤10Aに続いて隣接するブロック状改良地盤10Bを構築する場合を示しているが、ブロック状改良地盤10Aに続いて構築するブロック状改良地盤は任意に設定してもよく、
図3(A)に示すブロック状改良地盤10C~10Fのいずれを構築してもよい。例えば、ブロック状基礎地盤10Aと接していないブロック状改良地盤10C~10Eを構築する場合にはブロック状改良地盤10Aが固化する前でも基礎工穴Mを掘削することが可能である。
新たに構築するブロック状改良地盤を既設のブロック状改良地盤に隣接させるかどうかは任意に設定してもよい。
なお、既設のブロック状基礎地盤に隣接する基礎工穴Mを形成する場合には既設のブロック状基礎地盤10の状況を確認する。
【0035】
(2)次に、
図8(B)に示すように、基礎工穴M内に土砂S、砕石(改質材)B、セメントミルクCを投入する。
【0036】
(3)次いで、
図8(C)に示すように、ミキシングバケットを装着したバックホウTにより基礎工穴Mで撹拌、混合して、砕石(改質材)Bにより土砂が含む土塊を破砕して細片化しながら50mm以上の土塊の含有が少ない均質な泥状の改良土20Aを生成する。
【0037】
(4)次に、
図8(D)に示すように、上記(2)、(3)に示す手順で泥状の改良土20Aの生成を繰り返し、ブロック状改良地盤を造成するための泥状の改良土の集合体20Bを形成する。
【0038】
(5)次いで、泥状の改良土の集合体20Bを固化させて改良土(固化体)20とすることにより、
図8(E)に示すようにブロック状改良地盤10Bが構築される。
上記(2)~(5)については、
図7で説明した事項と同様であるので説明を省略する。
【0039】
一実施形態に係る砂防堰堤基礎地盤100、ブロック状改良地盤10A、10B、砂防堰堤基礎地盤構築方法によれば、土塊粘性土を含む土質の地盤Gに、多量のセメントや高価な材料を用いずに所定の強度を備えた改良基礎地盤を効率的に構築することができる。
また、大掛かりな掘削が必要とされないので広い掘削土置き場が必要とされず、残土処理量を削減することができる。
また、掘削穴の内部に建設機械や人を配置する必要がないので安全上の問題が生じる可能性が低い。また、設定した区画ごとに基礎工穴Mを形成してブロック状改良地盤10A・・・10Fを構築するので必要最小限の深さの掘削で対応することが可能となる。
【0040】
また、基礎穴Mを掘削して土砂を排出する過程で現地土砂を目視確認できるので、土砂に含まれる有機物等(例えば樹木)の障害を除去しやすく、不良土砂の一部または全部を置換して固化阻害物質を除去して改質材と置換することで目標とする品質の改良地盤を形成することができる。
その結果、固化しにくい地盤の土砂であっても効率的に所定の強度を得ることができる。
【0041】
また、掘削した土砂が粘性土の土塊を含んでいる場合でも、土砂、改質材、セメントミルク又はセメントおよび水を混錬する際に、粘性土の土塊を改質材で粉砕しながら均質な泥状の改良土を生成するので現地発生土砂を固化し易い性状の改良土とすることができる。
また、基礎工穴の形成に際して土塊や岩石または固結土砂が出た場合は、必要に応じて削って細片化しながら掘削する。現地で取得する砕石の増量、および処分残土を減量することができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、砂防堰堤基礎地盤100が細粒分90%の土塊状粘性土の地盤に構築される場合について説明したが細粒分50%以上の土塊状粘性土の地盤に適用してもよい。
また、土塊状粘性土の地盤に代えて、例えば火山灰質土など固化阻害物質(例えば、有機物に含まれるフミン酸や火山灰に含まれるアロフェン)を含むことでセメントあるいはセメント系固化材によって生成する改良土が固化しにくい土質の地盤のほか、現地発生土砂により所定の品質の確保が困難な土質の地盤に適用してもよい。
また、土塊状の硬い粘性土や土砂化した風化岩または強風化岩からなる、一般的な軟弱地盤対策工法では施工不可能な硬質の地盤に適用してもよい。
また、固化阻害物質を含む土質に適用する場合には、基礎工穴を掘削して掘り出した現地発生土砂については一部または全部を良質土砂等で置換することが好適である。
【0043】
また、上記実施形態においては、砂防堰堤基礎地盤100が5つ(複数)の改良基礎地盤10・・14を備える場合について説明したが、砂防堰堤基礎地盤100を構成する改良基礎地盤の数については任意に設定してもよく、例えば一つの改良基礎地盤により砂防堰堤基礎地盤を構成してもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、例えば改良基礎地盤10が平面視矩形の6つ(複数)の区画に形成したブロック状改良地盤10A・・・10Fにより構築される場合について説明したが、改良基礎地盤の形態については任意に設定することが可能である。例えば、ひとつのブロック状改良地盤により改良基礎地盤を構成してもよいし、平面視矩形に限定されず三角形、台形、不等辺四角形等、任意の形状に設定された区画を含んで構成されてもよい。また、ブロック状改良地盤の一辺の寸法や基礎工穴Mの深さを同寸法とするか異なる寸法とするかは任意に設定してもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、改質材として砕石を用いる場合について説明したが、改質材についてはは砕石に限定されず任意に設定することが可能であり、砕石、砂利、砂礫、河床砂礫、砂礫土砂、礫質土砂等の良質土のなかから選択したいずれかを含んでいればよく、改質材の一部として製鋼スラグ等を含んでいてもよい。
また、上記実施形態においては、土砂と、改質材と、セメントミルクとを撹拌して、泥状の改良土を生成する場合について説明したが、セメントミルクに代えてセメントと水を用いてもよい。
【0046】
また、複数のブロック状改良地盤(固化体)により改良基礎地盤を構築する場合に、すべてのブロック状改良地盤(固化体)の土砂、改質材、セメントミルク又はセメントと水の混合比を同一に設定する必要はなく、それぞれのブロック状改良地盤(固化体)毎に任意の混合比(構成)としてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、ブロック状改良地盤が、例えば土砂と、砕石(改質材)と、セメントミルクと、を混錬して生成した改良土により形成される場合について説明したが、砕石に加えて又は代えて、砂利、礫、砂礫、河床砂礫や、砂礫土砂、礫質土砂などの良質土砂の少なくともいずれかを含む構成としてもよいし、これらに製鋼スラグ等の改質材を混合して用いてもよい。また、セメントミルクに代えて、セメントと水を用いてもよい。
また、土砂については、基礎工穴Mから掘り出した現地発生土砂に加えて又は現地発生土砂に代えて、改良地盤構築予定地以外の土砂(例えば購入土砂)や現地発生土砂から樹木等の有機物や転石等を取り除いた土砂を用いてもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、バックホウTを用いて基礎工穴の掘削、泥状改良土を生成する場合について説明したが、バックホウTは掘削手段は一例であり、その他の掘削手段により基礎工穴Mを掘削し、または他の撹拌手段等により泥状の改良土20Aを生成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、例えば基礎工穴Mの一辺が1.0~5.0mである場合について説明したが、ブロック状改良地盤の大きさ、基礎工穴Mの深さについては任意に設定してもよく、地盤Gに設置した掘削装置や撹拌・撹拌手段に応じて、基礎工穴Mの外から掘削および土砂、改質材、セメントミルクの混錬が可能な範囲で、ブロック状改良地盤(基礎工穴M)の平面視周縁形状(例えば、三角形、矩形、台形、多角形等)、寸法を設定してもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、ブロック状基礎地盤10Aに続いて、隣接するブロック状基礎地盤10Bを形成する場合について説明したが、ブロック状基礎地盤10Aに続いて隣接していないブロック状基礎地盤10C、10D、10Eを形成してもよく、その場合ブロック状基礎地盤10Aが固化するのを待たずにブロック状基礎地盤10C、10D、10Eを掘削穴周囲の縁部から施工することができる。
【符号の説明】
【0051】
G 地盤
B 砕石(改質材)
C セメントミルク
S 土砂
M 基礎工穴
T バックホウ
100 砂防堰堤基礎地盤(改良基礎地盤)
10、11、12、13、14 改良基礎地盤
10A、10B、10C、10D、10E、10F ブロック状改良地盤
20 改良土(固化体)
20A 泥状の改良土
20B (泥状の改良土の)集合体
【要約】
【課題】本発明は、固まりにくい土砂に砂防堰堤基礎地盤を構築する際に、広範囲にわたって大掛かりで深い掘削や大きな土砂仮置きヤードを必要とせずに、効率的に改良地盤を構築することが可能な改良地盤構築方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、粘性の大きな粘性土、土塊状の硬い粘性土、土砂化した風化岩または強風化岩、火山灰質土や有機質土を含む地盤Gに区画を設定し、設定した区画を掘削して基礎工穴Mを形成し、前記基礎工穴Mに、土砂Sと、砕石、砂利、礫、砂礫、河床砂礫、砂礫土砂、礫質土砂の少なくともいずれかを含む砕石Bと、セメントミルクCと、を投入、撹拌、混錬して泥状の改良土20Aを生成し、泥状の改良土20Aを所定量周集積した泥状改良土の集合体20Bを固化した固化体20を形成することによりブロック状改良地盤10Aを形成する、ことを特徴とする改良地盤構築方法である。
【選択図】
図7