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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】ガス発生パッチ
(51)【国際特許分類】
   A61M 35/00 20060101AFI20241227BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20241227BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20241227BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20241227BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20241227BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
A61M35/00 Z
A61L15/42 300
A61L15/24
A61L15/26
A61L15/18
A61L15/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024018678
(22)【出願日】2024-02-09
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】112145996
(32)【優先日】2023-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】524055919
【氏名又は名称】何文▲ツォン▼
【氏名又は名称原語表記】HO, Wen-Tsung
【住所又は居所原語表記】No. 571, Sec. 2, Zhonghua Rd., East Dist., Hsinchu City 30060, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】524055920
【氏名又は名称】潘順義
【氏名又は名称原語表記】PAN, Shun-I
【住所又は居所原語表記】No. 571, Sec. 2, Zhonghua Rd., East Dist., Hsinchu City 30060, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】何文▲ツォン▼
(72)【発明者】
【氏名】潘順義
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205663(JP,A)
【文献】特開2010-132618(JP,A)
【文献】特許第7592207(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A61L 15/42
A61L 15/24
A61L 15/26
A61L 15/18
A61L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の水分(ambient water)と反応してガスを発生するガス発生パッチであって、第1層と、複数の多孔質担体と、反応剤とを含み、
前記第1層は、第1高分子ポリマーで作製されたものであり、前記第1高分子ポリマーは、ポリエチレン(polyethylene)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)及びポリプロピレン(polypropylene)からなる群より選択され、
前記複数の多孔質担体は、前記第1層の表面に分散して設けられ、各前記多孔質担体は、複数の細孔を有し、
前記反応剤は、それぞれ各前記細孔に設けられ、前記反応剤は、金属過酸化物及び金属水酸化物を含み、
前記反応剤が前記周囲の水分と反応して発生した前記ガスは、前記第1層と反対方向に拡散する、ガス発生パッチ。
【請求項2】
前記ガスは、水素ガス及び酸素ガスである、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【請求項3】
各前記細孔は、孔径が1,200-6,000nmである、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【請求項4】
前記複数の多孔質担体は、珪藻土(diatomaceous earth)、ポリエチレン(polyethylene)、酢酸ビニル共重合体(ethylene-vinyl acetate)又はそれらの組み合わせで作製されたものである、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【請求項5】
各前記多孔質担体の表面に酸性触媒が塗布される、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【請求項6】
前記酸性触媒は、クエン酸、乳酸、フィチン酸、シュウ酸、塩酸及びケイ酸からなる群より選択される、請求項5に記載のガス発生パッチ。
【請求項7】
第2層をさらに含み、前記第2層は、前記第1層に対して前記複数の多孔質担体に設けられ、前記第2層は、複数の通気孔を有し、前記ガス発生パッチにおいて前記複数の多孔質担体が前記第1層と前記第2層との間に設けられる、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【請求項8】
前記第2層は、第2高分子ポリマーで作製されたものであり、前記第2高分子ポリマーは、それぞれポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート及ポリプロピレンからなる群より選択される、請求項7に記載のガス発生パッチ。
【請求項9】
前記第1層の前記表面に設けられるとともに前記複数の多孔質担体を覆うコロイドをさらに含み、前記複数の多孔質担体は、前記コロイド内に均一に分散する、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【請求項10】
前記複数の多孔質担体は、重量百分率5wt%-70wt%の量で前記コロイドに存在する、請求項9に記載のガス発生パッチ。
【請求項11】
前記コロイドは、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)、ニトロセルロース(nitrocellulose)、シリカゲル(silica gel)、コラーゲン繊維(collagen fiber)及びアルギン(algin)からなる群より選択される、請求項9に記載のガス発生パッチ。
【請求項12】
前記金属過酸化物は、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム及び過酸化バリウムからなる群より選択され、前記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウムからなる群より選択される、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【請求項13】
前記金属過酸化物は、過酸化カルシウムであり、前記金属水酸化物は、水酸化カルシウムである、請求項12に記載のガス発生パッチ。
【請求項14】
前記反応剤は、炭酸塩、亜硝酸塩及びそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載のガス発生パッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用パッチに関し、特に、医療用ガスを徐放可能なガス発生パッチに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを用いて様々な疾患及び症状を治療することは、広く使われている医療技術である。一般的な医療用ガスは、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素、一酸化窒素、笑気ガス、窒素酸化物などを含み、呼吸マスク、鼻挿管、気管挿管、人工呼吸器などの医療機器を介して患者に適切なガス治療を提供することができる。
【0003】
しかし、これらの医療機器は、サイズが大きくエネルギー消耗が多いだけでなく、高圧ガスシリンダーによる医療用ガスの提供では、潜在的な安全リスクがあり、これらの医療機器の使用には訓練を受けた医療専門家の操作と監督が必要であり、その結果、ガス療法の実際の適用には大きな制限がある。
【0004】
このような事情に鑑み、当該技術分野では、操作が簡単かつ安全で、いつでもどこでもガス治療を安定して提供できる医療製品が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
この概要は、読者に本開示の基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化した概要を提供することを目的としている。この概要は、本開示の広範な概要ではなく、本発明の実施形態の重要/肝心な要素を特定したり、本発明の範囲を描写したりすることを意図したものではない。
【0006】
本発明では、周囲の水分(ambient water)と反応してガスを発生するガス発生パッチが提供される。本発明の一実施形態によれば、前記ガス発生パッチは、第1層と、複数の多孔質担体と、反応剤とを含む。前記第1層は、第1高分子ポリマーで作製されたものである。第1高分子ポリマーは、ポリエチレン(polyethylene,PE)、ポリウレタン(polyurethane,PU)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)及びポリプロピレン(polypropylene,PP)からなる群より選択される。前記複数の多孔質担体は、第1層の表面に分散して設けられる。各多孔質担体は、複数の細孔を有する。前記反応剤は、それぞれ多孔質担体の各細孔に設けられ、金属過酸化物及び金属水酸化物を含む。反応剤が周囲の水分と反応して発生した前記ガスは、第1層と反対方向に拡散する。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記ガスは、水素ガス及び酸素ガスである。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記多孔質担体は、珪藻土(diatomaceous earth)、PE、酢酸ビニル共重合体(ethylene-vinyl acetate)又はそれらの組み合わせで作製されたものである。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、各細孔は、孔径が1,200-6,000nmである。
【0010】
本発明のいくつかの好ましい実施形態によれば、前記多孔質担体の表面には酸性触媒が塗布されている。本発明の一実施形態において、前記酸性触媒は、クエン酸、乳酸、フィチン酸(phytic acid)、シュウ酸、塩酸及びケイ酸(silicic acid)からなる群より選択される。
【0011】
本発明の代替的な実施形態によれば、前記ガス発生パッチは、第1層に対して複数の多孔質担体に設けられる第2層をさらに含む。第2層は、複数の通気孔を有する。本発明の例示的な実施形態において、前記第2層は、第2高分子ポリマーで作製されたものである。第2高分子ポリマーは、それぞれポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート及ポリプロピレンからなる群より選択される。
【0012】
本発明の別の代替的な実施形態において、前記ガス発生パッチは、第1層の前記表面に設けられるとともに複数の多孔質担体を覆うコロイドをさらに含む。複数の多孔質担体は、コロイド内に均一に分散する。本発明の一実施形態において、前記複数の多孔質担体は、重量百分率5wt%-70wt%の量でコロイドに存在する。
【0013】
選択的には、前記コロイドは、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid, PAA)、ニトロセルロース(nitrocellulose)、シリカゲル(silica gel)、コラーゲン繊維(collagen fiber)及アルギン(algin)からなる群より選択される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属過酸化物は、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム及過酸化バリウムからなる群より選択される。前記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及水酸化バリウムからなる群より選択される。本発明の実施例によれば、前記金属過酸化物は、過酸化カルシウムであり、前記金属水酸化物は、水酸化カルシウムである。
【0015】
本発明の非必要な実施形態において、前記反応剤は、炭酸塩(carbonate)、亜硝酸塩(dioxidonitrate)及びそれらの組み合わせをさらに含む。
【0016】
以下の実施形態を参照すれば、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の基本的精神及びその他の目的、並びに本発明が採用する技術的手段及び実施形態を容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の上記内容及びその他の目的、特徴、利点及び実施形態をより分かりやすくするために、以下、添付する図面を説明する。
図1A】本発明の一実施形態に係るガス発生パッチ100の配置模式図である。
図1B図1Aのガス発生パッチ100の断面図である。
図2図1Aのガス発生パッチ100における多孔質担体120の拡大模式図である。
図3図3A及び図3Bは、それぞれ本発明の異なる実施形態に係るガス発生パッチ300a及び300bの配置模式図である。
図4図4A及び図4Bは、それぞれ本発明に係るガス発生パッチの4時間及び12時間のガス発生曲線図である。
【0018】
一般的な慣例に従って、図中の様々な特徴及び構成要素は一定の縮尺で描かれたものではなく、本発明に関連する特定の特徴及び構成要素を最もよく示すことを意図した方法で描かれている。さらに、異なる図面において同じ又は類似の符号で類似の部材/構成要素を示す。
【発明の実施するための形態】
【0019】
本発明の説明をより詳しく完全にするために、以下、本発明の実施形態及び具体的な実施例により例示的に説明するが、これは、本発明の具体的な実施例を実施又は使用する唯一の形式ではない。実施形態には、多くの具体的な実施例の特徴、並びにこれらの具体的な実施例を構築及び操作するためのステップ及び順序が含まれる。しかし、他の実施例により同じ又は均等の機能及びステップを達成することもできる。
【0020】
I定義
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに集中して記載する。本明細書で別途定義しない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解され慣用されているものと同じ意味を有する。なお、本明細書において使用される単数名詞には、文脈に矛盾がない限り、その名詞の複数形も含まれるものとし、使用される複数名詞には、名詞の単数形も含まれるものとする。具体的には、本明細書及び特許請求の範囲において、文脈上別段の指示がない限り、単数形a及びanは複数の参照値を含む。また、本明細書及び特許出願の範囲において、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という表現は同義であり、いずれも1つ、2つ、3つ以上、又は多数を表す。
【0021】
本発明のより広い範囲を定義するために使用される数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例における関連数値は可能な限り正確に示されている。しかし、あらゆる数値には、使用される個々のテスト方法から生じる標準偏差が本質的に含まれる。ここで、「約」とは通常、実際の値が指定された値又は範囲のプラス又はマイナス10%、5%、1%、又は5%以内であることを意味する。或いは、「約」という用語は、実際の値が、本発明が属する技術分野の当業者によって決定される平均値の許容可能な標準誤差内に収まることを意味する。実験例を除き、又は特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての範囲、量、数値及びパーセンテージ(材料の量、時間の長さ、温度、操作条件、量的比率及びその他の類似のものを説明するためなど)は、すべて「約」で修飾される。したがって、特に反対の記載がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に開示される数値パラメータは近似値であり、必要に応じて変更することができる。少なくとも、これらの数値パラメータは、表示される有効桁数と通常の四捨五入を適用して得られる値を意味すると理解する必要がある。ここでの数値範囲は、一方の端点から他方の端点まで、又は両端点の間を表すが、特に断りのない限り、ここでいう数値範囲は端点も含むものとする。
【0022】
本明細書において、「周囲の水分」(ambient water)とは、環境中に気体として存在する水を指し、空気中に存在する水蒸気又は生物が放出する水蒸気であってもよい。例えば、暑い環境や活動後に人体から発せられる汗が蒸発して生じる水蒸気を指してもよい。本明細書において、「周囲の水分」とは、ガス発生パッチが使用者の皮膚表面に貼り付けられたか又は特定の部位に包まれた後に形成した密閉空間(例えば、パッチと皮膚との間の微小空間、又はマスクと口の間の空間)において生体が発生した水分を指す。
【0023】
本明細書において、「通気孔」(venthole)とは、開放した又は通過性を有する孔構造を指し、孔のサイズ、形状、密度及び分布方式により、気体及び/又は液体を選択的に通過させることができる。一般的には、織物、包装、医療用品(例えば、包帯及びマスク)、建築資材(例えば、通気性のあるレンガ)などによく使用される。本発明のガス発生パッチには、ガスのみが通過可能な通気孔が設けられ、これによって、ガス発生パッチ内の湿度が制御されることでガスの発生速度が制御される。
【0024】
II具体的な実施形態
現在のガス治療領域における生産に対する治療装置の時間及び空間的な制限を解決するために、本発明は、患者が簡単な指導を受けた後、医師の処方箋に従って医療機関以外の場所で自分で操作することができ、生活や仕事のスケジュールに影響を与えることなく、長期間安定してガス治療を受けることができ、最良の結果を得ることができるガス発生パッチを提供する。
【0025】
本発明において、使用者の皮膚又は呼吸器系に貼り付け、密閉空間の周囲の水分と反応して治療効果を有する特定のガスを発生し、必要なガス治療を提供するガス発生パッチを提供することを目的とする。例えば、使用者は、使用需要に応じてガス発生パッチを腕、胴体、顔又は脚に貼って密閉空間を形成し、汗が蒸発して生じる水蒸気と反応することでこの密閉空間内で特定のガスを発生し、生理学的反応に十分な体内分圧を確立し、経皮薬物送達システム(transdermal drug delivery system)によりガスが皮膚又は呼吸器系を透過して局所又は全身治療の目的を達成することができる。
【0026】
図1Aは、本発明の一実施形に係るガス発生パッチ100の模式図である。図1Bは、図1Aのガス発生パッチ100の断面図である。図2は、図1Aのガス発生パッチ100上の多孔質担体120の拡大模式図である。図1A、1B及び2に示すように、ガス発生パッチ100は、構造的には、表面111及び112を有する第1高分子ポリマーで作製された第1層110と、複数の細孔121を有する第1層110の表面111に分散して設けられる複数の多孔質担体120と、これらの細孔121に設けられる反応剤130を含む。
【0027】
ガス発生パッチ100が使用者の皮膚表面に貼り付けられる場合、具体的には、多孔質担体120が使用者の皮膚に接触し、第1層110がこの多孔質担体120及び一部の皮膚を被覆し、これによって、患部において密閉空間が形成される。ガス発生パッチ100が発生したガスは、前記密閉空間に蓄積して所定のガス濃度まで徐々に達し、ガス分圧動力によりガスが組織内に拡散する。上記の目的を達成するために、第1層110は、通気性も防水性もない材質(即ち、第1高分子ポリマー)で作製され、これによって、密閉空間が形成される。また、本発明のガス発生パッチ100は、周囲の水分と反応剤130との反応により目的ガスを発生するので、反応速度を制御し、過剰な水分が表面112から進入して反応剤130と接触することを回避するために、前記第1層110は、防水特性も備える必要がある。これによって、防水かつ気密の需要を満たすために、本発明の実施形態において、前記第1高分子ポリマーは、PE、PU、PET及びPPからなる群より選択される。本発明の具体的な実施例において、第1高分子ポリマーはPUである。別の実施例において、第1高分子ポリマーはPEである。選択的に、第1層110は、ラミネート不織布で作製されてもよい。それは、第1高分子ポリマーを接着又はホットプレスなどの方法により不織布と結合して形成された防水性及びガスバリア性を有する布層である。例えば、PPラミネート不織布又はPEラミネート不織布が挙げられる。
【0028】
好ましい実施形態において、複数の多孔質担体120は、実際に前記第1層110の中心部分(例えば、図1に示すように)に設けられ、これによって、第1層110の表面111の縁は皮膚に直接貼り付けることができ、発生した治療用ガスがガス発生パッチ100の縁から空気に漏れないことが保証される。
【0029】
図2に示すように、ガス発生反応がスムーズに進行できるようにするために、多孔質材料が多くの細孔121を有しかつ細孔121同士に連通するとの特性を利用し、天然又は人工多孔質材料を本発明のガス発生パッチ100の担体(即ち、多孔質担体120)としてガス発生用の反応物質(即ち、反応剤130)を担持し、又はこの反応剤130を多孔質担体120に塗布することにより、異なる反応剤130を凝集させる。このようにして、それぞれの多孔質担体120は、独立した反応システムを形成することができる。多孔質担体120の細孔121の構造は、水分を反応剤130に接触させにくいことで反応速度を制御する効果を奏することができる。
【0030】
前記多孔質担体120は、当該技術分野で既知であるとともに本発明の反応剤130と反応しない天然又は人工多孔質材料から任意に選択されてもよい。本発明の実施形態において、前記多孔質担体120は、珪藻土、PE、酢酸ビニル共重合体又はそれらの組み合わせにより作製される。
【0031】
本発明のガス発生パッチ100により産生可能であるとともに、医療分野に適用して特定の治療効果を奏するガスは、酸素ガス、二酸化炭素、水素ガス、一酸化窒素、亜酸化窒素、ヘリウム、二酸化窒素などを含むが、これらに限定されない。本発明の一実施形態によれば、本発明のガス発生パッチ100は、水素ガス及び酸素ガスを発生することができる。本発明の別の実施形態において、反応剤130は、水素ガス及び酸素ガスに加え、二酸化炭素及び/又は一酸化窒素を発生することもできる。当業者は、実際の必要(例えば、治療しようとする疾患の種類及び個体の状況)に応じて、ガス発生パッチ100が所望なガスを発生できるように、反応剤130を選択し、適切な触媒及び反応条件(例えば、水素イオン指数)を提供することができる。
【0032】
本発明の実施形態によれば、前記反応剤130は、それぞれ周囲の水分と反応して酸素ガス及び水素ガスを発生するための金属過酸化物及び金属水酸化物を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記金属過酸化物は、過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム及過酸化バリウムからなる群より選択され、前記金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及び水酸化バリウムからなる群より選択される。当業者は、実際の必要に応じて具体的な金属過酸化物及び金属水酸化物を選択することができる。例えば、比較的大量の酸素ガス及び/又は水素ガスを生成しようとする場合、活性が比較的高い金属(例えば、ナトリウム又はカリウム)を含む過酸化物又は水酸化物を反応物として使用することができる。
【0033】
さらに、前記金属過酸化物及び金属水酸化物は、同じ又は異なる金属を含む過酸化物及び水酸化物であってもよく、例えば、過酸化マグネシウムを金属過酸化物、水酸化カルシウムを金属水酸化物としてもよい。本発明の一実施例において、前記金属過酸化物及び金属水酸化物は、同じ金属(即ち、カルシウム)を含み、それぞれ過酸化カルシウム及び水酸化カルシウムである。
【0034】
本発明の具体的な実施例によれば、反応剤130から酸素ガスを発生する反応メカニズムは、式I又は式IIに示される。水素ガスを発生する反応メカニズムは、式III又は式IVに示される。式中、Xはカルシウム、マグネシウムなどの二価金属であり、Yはナトリウム、カリウムなどの一価金属である。式I又は式IIに示すように、金属過酸化物は、水分と反応して酸素ガスを発生する。式III又は式IVに示すように、金属水酸化物は、水分及びアルミニウム粉末と反応性て水素ガスを発生する。
2XO2+2H2O→2X(OH)2+O2 (式I)
2Y2O2+2H2O→4Y(OH)+O2 (式II)
X(OH)2+2Al+6H2O→X(Al(OH)4)2+3H2 (式III)
2Y(OH)+2Al+2H2O→2YAlO2+3H2 (式IV)
【0035】
式I-IVに示すように、金属過酸化物は、水分と反応することにより酸素ガス及び金属水酸化物を生成することができる。金属水酸化物は、水と反応することにより水素ガスを発生することができる。そのため、適切な金属過酸化物及び金属水酸化物を選択することにより、水素発生及び酸素発生プロセスは一連の反応となり、化反応剤130のガス発生効率が最適化され得る。
【0036】
本発明の別の実施例において、式III及びIVの反応原理をもとに、アルミニウムの代わりにシリコン、マグネシウム、鉄を用いて式III及びIVの反応を行い、水素ガスを発生することができる。
【0037】
選択的に、本発明の前記反応剤130は、二酸化炭素及び/一酸化窒素を発生するために、炭酸塩、亜硝酸塩及びそれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0038】
上記のように、本発明のガス発生パッチ100は、様々なガス発生反応により様々な治療用ガスを提供することができる。異なる反応物及び生成物間の不要の反応を回避するために、それぞれの多孔質担体120が独立したガス発生システムとなるように、異なる反応剤130を異なる多孔質担体120に設ける。例えば、各多孔質担体120は、それぞれ酸素発生システム(即ち、金属過酸化物を含む多孔質担体)、水素発生システム(即ち、金属水酸化物を含む多孔質担体)、二酸化炭素発生システム(即ち、炭酸塩を含む多孔質担体)及び一酸化窒素発生システム(即ち、亜硝酸塩を含む多孔質担体)であってもよい。しかし、上記のような酸素発生及び水素発生の反応メカニズム(即ち、式I-IV)に基づいて、前記酸素発生システムと水素発生システムとを組み合わせ、即ち、金属過酸化物及び金属水酸化物を同一の多孔質担体に設けることができ、これによって、ガス発生パッチ100のガス発生効率は最適化され得る。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態において、多孔質担体120上の細孔121は、反応剤130を担持するために1,200-6,000nmの孔径を有することが好ましい。多孔質担体120は、シート状、粒状、不定形状、又は反応の発生に影響を与えないか若しくは水分の進入を阻害しない任意の構造であってもよい。
【0040】
選択的に、多孔質担体120の表面には、多孔質担体120内の反応環境のpHを調整するために、酸性触媒がされに塗布されている。pHは、4-9の間に維持されてもよい。本発明の多孔質担体120に適用される酸性触媒は、クエン酸、乳酸、フィチン酸、シュウ酸、塩酸及びケイ酸を含むが、これらに限定されない。本発明の一実施例によれば、前記酸性触媒は、クエン酸である。
【0041】
本発明の代替的な実施形態において、反応剤130に固体酸を添加することによりpHを維持する目的を達成してもよい。前記固体酸は、固体クエン酸、固体乳酸、固体フィチン酸、固体シュウ酸、固体塩酸、固体ケイ酸などを含む。
【0042】
本発明のガス発生パッチ100を保存するときに、空気中の水分と反応剤130との接触を防止するために気密材料で包装することができる。使用時に気密包装を取り外してガス発生パッチ100を患部に貼るだけで、ガス発生パッチ100が体表から蒸発した水蒸気と反応し、特定の方向で皮膚(即ち、第1層110と反対方向)にガスを供給する。
【0043】
図3A及び図3Bは、それぞれ本発明の2つの異なる実施形態に係るガス発生パッチ300a及び300bの層状構造の配置模式図である。
【0044】
図3Aに示すように、ガス発生パッチ300aは、ガス発生パッチ100の各素子の配置関係と大体同じである。具体的には、ガス発生パッチ300aは、防水通気の第1層310aと、第1層310aの表面311aに設けられる複数の多孔質担体320aとを含む。多孔質担体320aの細孔内には、ガスを発生する反応剤330aが含まれる。ガス発生パッチ300aは、コロイド340をさらに含み、コロイド340が複数の多孔質担体320aと第1層310aの同じ表面に設けられ、この場合、前記複数の多孔質担体320aがコロイド340内に均一に分散する点でガス発生パッチ100と相違する。
【0045】
由於コロイド340は、連続媒体中に浮遊する粒子であり、相互作用して孔を有する特別な物質状態を形成するため、多孔質担体320aをコロイド340中に包み込み、コロイド340の孔により水分と反応剤330aの接触速度を制御することでガスの発生速度を制御し、ガスを徐放する目的を達成することができる。
【0046】
当該技術分野の通常知識に応じてコロイド340の材料を選択することができる。前記コロイド340は、有機又は無機ポリマーで形成される油性又は水性コロイドであってもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、前記コロイド340は、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ニトロセルロース、シリカゲル、コラーゲン繊維及びアルギンからなる群より選択される。反応剤330aとコロイド340内の水との反応を回避するために、油性コロイドで多孔質担体320a、例えば、ニトロセルロース又はシリカゲル及びグリセリンを被覆して形成したコロイドであることが好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態において、前記多孔質担体320aは、重量百分率5wt%-70wt%の量でコロイド340に存在する。例えば、多孔質担体320aは、重量百分率5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65又は70%の量でコロイド340に存在する。
【0048】
図3Bは、本発明の別の実施形態に係るガス発生パッチ300bの層状構造の配置模式図である。図3Bに示すように、ガス発生パッチ300bは、第1層310bと、第1層310bの表面311bに設けられる複数の多孔質担体320bと、多孔質担体320bの細孔内に設けられる反応剤330bとを含む。ガス発生パッチ300bは、第1層310bに対して複数の多孔質担体320bに設けられる第2層350をさらに含む点で上記のガス発生パッチ100又は300aと異なる。言い換えれば、ガス発生パッチ300bにおいて複数の多孔質担体320bが第1層310bと第2層350との間に設けられる。
【0049】
ガス発生パッチ300bの第2層350(図3B)及びガス発生パッチ300aのコロイド340(図3A)は、いずれも水蒸気と反応剤の接触速度を制御するためのものである。したがって、第2層350は、水蒸気が進入可能かつ発生したガスが使用者の体表まで拡散可能な複数の通気孔351を有する。
【0050】
液体の水が第2層350を通して反応剤330bと接触することでガス反応が迅速に発生することを回避するために、前記第2層350は、防水特性を有する第2高分子ポリマーで作製されるとともに、当該技術分野の通常知識に従って微視的スケールでは複数の通気孔351の構造を有することが好ましい。本発明の第2層350に適用される第2高分子ポリマーは、PE、PU、PET又はPPを含むが、これらに限定されない。当業者であれば、いくつかの適切な高分子ポリマーを例示的に列挙するだけで、第2層350を製造する材料を制限するわけではないことを理解できるべきである。さらに、第2層350の1つの表面は使用者の皮膚に接触するために、第2層350は、防水通気性を有する肌に優しい材料で作製されてもよい。
【0051】
実施例
実施例1:本発明のガス発生パッチの製造
複数の独立したガス発生システムによるガス発生効率を測定するために、PUを第1高分子ポリマー(即ち、第1層の材料)として選択し、珪藻土で多孔質担体を作製し、それぞれ過酸化カリウム及び水酸化カルシウムを水素発生及び酸素発生のための反応剤とし、多孔質担体にクエン酸を塗布し、これによって本発明のガス発生パッチを製造した。
【0052】
実施例2:本発明のガス発生パッチのガス発生効率の分析
【0053】
実施例1で製造された本発明のガス発生パッチ及び5ml水が入ったスポイトを密閉容器に入れ、負圧-0.2kg/cmまで真空引きすることにより、スポイト内の水が流出して水蒸気になり、ガス発生パッチは水蒸気が反応してガスを発生した。
【0054】
2.1総ガス発生量
水上置換法により本発明のガス発生パッチの総ガス発生量を測定した。結果を表1に示す。
表1:密閉容器内の酸素ガスの濃度変化
【表1】
【0055】
表1の結果から分かるように、本発明のガス発生パッチは40分間内の総ガス発生量は4mlであった。
【0056】
2.2ガス発生効率
実施例1のガス発生パッチに対してそれぞれ4時間及び12時間のガス発生試験を行った。試験中、10分間ごとにハンドヘルド酸素ガス分析計及びハンドヘルド水素ガス分析計を用いて容器内の酸素ガス及び水素ガスの濃度をそれぞれ測定して記録した。結果を図4A及び図4Bに示す。
【0057】
図4Aは、容器内における4時間の酸素ガス及び水素ガスの濃度変化曲線である。図4Aから分かるように、容器内の初期酸素含有量は16.23%であり、反応終了後の酸素含有量は17.72%であり、換算した後の総酸素発生量は約16,400ppmであり、平均酸素発生速度は68.3ppm/分間であり、総水素発生量は約70.7ppmであり、平均水素発生速度は0.3ppm/分間であった。
【0058】
容器内の酸素ガス及び水素ガスの濃度は、いずれも4時間内でゆっくりと増大しており、本発明のガス発生パッチが4時間内で長時間にわたって酸素ガス及び水素ガスを安定して放出できることを示している。
【0059】
図4Bは、容器内における12時間の酸素ガス及び水素ガスの濃度変化曲線である。図4Bから分かるように、容器内の初期酸素含有量は13.61%であり、反応終了後の酸素含有量は17.72%であり、換算した後の総酸素発生量は約49,200ppmであり、平均酸素発生速度は68.3ppm/分間であり、総水素発生量は約165.6ppmであり、平均水素発生速度は0.23ppm/分間であった。
【0060】
容器内の酸素ガス及び水素ガスの濃度は、いずれも12時間内で徐々に増大しており、本発明のガス発生パッチが12時間内で長時間にわたって酸素ガス及び水素ガスを安定して放出できることを示している。
【0061】
以上のことから、本発明は、患者が時間と空間によって制限されずに医療現場以外の場所でガス治療を行うことができ、使用者の必要に応じて異なる部位に貼り付けることができ、コロイド又は通気孔を有するフィルムにより反応剤と水分の接触速度を制限することで必要な治療用ガスを徐放する目的が達成されることから、有効な治療効果が得られるガス発生パッチを提供する。
【0062】
実施形態の前述の説明は単なる例として示されており、当業者であれば様々な変更を加えることができることを理解されたい。以上の明細書、実施例及び実験結果は、本発明の例示的な実施形態の構造及び用途の完全な説明を提供する。上記の実施形態において本発明の様々な実施例が開示されたが、本発明を限定するものではない。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の原理及び精神から逸脱することなく、様々な変更及び修正が可能であり、したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許出願によって定められるものとする。
【0063】
符号の説明
100、300a、300b ガス発生パッチ
110、310a、310b 第1層
111、112、311a、311b 表面
120、320a、320b 多孔質担体
121 細孔
130、330a、330b 反応剤
340 コロイド
350 第2層
351 通気孔
【要約】      (修正有)
【課題】医療用ガスを徐放可能なガス発生パッチを提供する。
【解決手段】第1層110と、複数の多孔質担体120と、反応剤130とを含むガス発生パッチ100。本発明の一実施形態によれば、反応剤130は、複数の多孔質担体120の細孔に設けられ、複数の多孔質担体120は、第1層110の表面に設けられる。本発明の別の実施形態において、ガス発生パッチは、第1層の表面に設けられるコロイドをさらに含み、複数の多孔質担体がコロイド内に均一に分散する。本発明の別の実施形態において、ガス発生パッチは、第1層に対して複数の多孔質担体に設けられる第2層をさらに含む。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図2
図3
図4