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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】アルミニウム含有粒子
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20241227BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20241227BHJP
   B22F 1/065 20220101ALI20241227BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20241227BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20241227BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241227BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20241227BHJP
【FI】
B22F1/00 N
B22F1/05
B22F1/065
B22F1/17
B22F10/00
B33Y70/00
C22C21/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024055795
(22)【出願日】2024-03-29
【審査請求日】2024-07-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392021920
【氏名又は名称】山石金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】松原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】住田 行常
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亜佐子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 勝利
(72)【発明者】
【氏名】阿部 励
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-160203(JP,A)
【文献】特表2021-532255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/90
B33Y 70/00
C22C 1/04-1/059,21/02,33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)と、
サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と、を含み、
前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)を含み、
下記<方法1>により算出される、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率が26個%以上90個%以下であり、
下記<方法2>により算出される、前記粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の含有率が5個%以上60個%以下であり、
JIS Z2502:2020に準拠し測定されるホールフロー試験による流動性が5.0sec/50g以上15.0sec/50g以下である、アルミニウム含有粒子。
<方法1>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の数の割合を、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率とする。
<方法2>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の数の割合を前記粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の含有率とする。
【請求項2】
前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)をさらに含み、
下記<方法3>により算出される、前記粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)の含有率が25個%以下である、請求項1に記載のアルミニウム含有粒子。
<方法3>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)の数の割合を前記粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)の含有率とする。
【請求項3】
前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)をさらに含み、
下記<方法4>により算出される、前記粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)の含有率が25個%以下である、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
<方法4>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)の数の割合を前記粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)の含有率とする。
【請求項4】
下記<粒子径測定>により算出されるD50粒子径が30.0μm以上60.0μm以下である、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
<粒子径測定>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとし、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置を用いて、前記アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得る。
【請求項5】
下記<粒子径測定>により算出されるD10粒子径が20.0μm以上40.0μm以下である、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
<粒子径測定>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとし、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置を用いて、前記アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得る。
【請求項6】
下記<粒子径測定>により算出されるD90粒子径が50.0μm以上100.0μm以下である、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
<粒子径測定>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとし、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置を用いて、前記アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得る。
【請求項7】
真球度が0.8以上である、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
【請求項8】
注入法による安息角が50.0°以下である、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
【請求項9】
前記アルミニウム含有粒子が、純アルミニウム粒子およびアルミニウム系合金粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
【請求項10】
前記アルミニウム系合金粒子が、Cu、Mn、Si、Mg、Zn、および、Niからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む、請求項に記載のアルミニウム含有粒子。
【請求項11】
前記アルミニウム系合金粒子が、Al-Si系合金、Al-Cu系合金、Al-Mn系合金、Al-Mg系合金、Al-Si-Mg系合金、Al-Si-Cu系合金、Al-Zn-Mg系合金、Al-Si-Mg-Cu系合金、Al-Cu-Ni-Mg系合金、および、Al-Zn-Mg-Cu系合金からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載のアルミニウム含有粒子。
【請求項12】
前記アルミニウム系合金粒子が、AlSi10MgおよびAlSi12からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載のアルミニウム含有粒子。
【請求項13】
3Dプリンタの造形物用原料粉末に用いることが可能である、請求項1または2に記載のアルミニウム含有粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウム含有粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム含有粒子に関する技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、アルミニウム合金を含む粒子であって、一次粒子の状態で、略球状であり、組成MAlで表される相、およびMAlで表される相の混合相を有し、ここで、Mは、Al以外の金属であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1であり、x/y≧1、z/w<1であり、x+y=1、z+w=1であり、アルミニウムの含有量が8質量%~50質量%の範囲である、粒子が記載されている。
特許文献1に記載の粒子によれば、一次粒子の形態で、二種類のアルミニウム合金の混合相を有する粒子を提供することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-89673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、流動性が向上したアルミニウム含有粒子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示すアルミニウム含有粒子が提供される。
【0007】
[1]
サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)と、
サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と、を含み、
前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)を含み、
下記<方法1>により算出される、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率が26個%以上であり、
下記<方法2>により算出される、前記粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の含有率が60個%以下である、アルミニウム含有粒子。
<方法1>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の数の割合を、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率とする。
<方法2>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の数の割合を前記粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の含有率とする。
[2]
前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)をさらに含み、
下記<方法3>により算出される、前記粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)の含有率が25個%以下である、前記[1]に記載のアルミニウム含有粒子。
<方法3>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)の数の割合を前記粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)の含有率とする。
[3]
前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)をさらに含み、
下記<方法4>により算出される、前記粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)の含有率が25個%以下である、前記[1]または[2]に記載のアルミニウム含有粒子。
<方法4>
走査型電子顕微鏡を用いて前記アルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する、前記粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)の数の割合を前記粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)の含有率とする。
[4]
前記<方法1>により算出される、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率は90個%以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
[5]
下記<粒子径測定>により算出されるD50粒子径が30.0μm以上60.0μm以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
<粒子径測定>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとし、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置を用いて、前記アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得る。
[6]
下記<粒子径測定>により算出されるD10粒子径が20.0μm以上40.0μm以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
<粒子径測定>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとし、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置を用いて、前記アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得る。
[7]
下記<粒子径測定>により算出されるD90粒子径が50.0μm以上100.0μm以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
<粒子径測定>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとし、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置を用いて、前記アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得る。
[8]
真球度が0.8以上である、前記[1]~[7]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
[9]
注入法による安息角が50.0°以下である、前記[1]~[8]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
[10]
JIS Z2502:2020に準拠してホールフロー試験による流動性が15.0sec/50g以下である、前記[1]~[9]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
[11]
前記アルミニウム含有粒子が、純アルミニウム粒子およびアルミニウム系合金粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[1]~[10]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
[12]
前記アルミニウム系合金粒子が、Cu、Mn、Si、Mg、Zn、および、Niからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む、前記[11]に記載のアルミニウム含有粒子。
[13]
前記アルミニウム系合金粒子が、Al-Si系合金、Al-Cu系合金、Al-Mn系合金、Al-Mg系合金、Al-Si-Mg系合金、Al-Si-Cu系合金、Al-Zn-Mg系合金、Al-Si-Mg-Cu系合金、Al-Cu-Ni-Mg系合金、および、Al-Zn-Mg-Cu系合金からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[11]または[12]に記載のアルミニウム含有粒子。
[14]
前記アルミニウム系合金粒子が、AlSi10MgおよびAlSi12からなる群から選択される少なくとも一種を含む、前記[11]~[13]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
[15]
3Dプリンタの造形物用原料粉末に用いることが可能である、前記[1]~[14]のいずれかに記載のアルミニウム含有粒子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、流動性が向上したアルミニウム含有粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の断面の一例を模式的に示した図である。
図2】各粒子の判断方法を説明するためのアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
図3】各粒子の判断方法を説明するためのアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
図4】各粒子の判断方法を説明するためのアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
図5】各粒子の判断方法を説明するためのアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
図6】実施例1のアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
図7図6に符号を付した図である。
図8】実施例1のアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
図9図8に符号を付した図である。
図10】実施例1のアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
図11図10に符号を付した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図面は簡略図で、実際の寸法比率とは一致していない。数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
本明細書において、「サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)」を「粒子(A)」と省略する場合がある。また、「サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)」等も同様に省略する場合がある。
【0011】
[アルミニウム含有粒子]
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)と、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と、を含み、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)を含み、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率が26個%以上であり、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の含有率60個%以下である。
【0012】
アルミニウム含有粒子は、例えば、3Dプリンタの造形物用原料粉末、ろう付用ペースト粉末等に用いられる。
3Dプリンタの造形物用原料粉末としては、得られる造形物の機械的強度および造形精度を向上させることが求められている。
【0013】
本発明者らは、粉末の流動性が低下すると、3Dプリンタによる造形の際に、粉末が密にならず、得られる造形物の機械的強度が低下する懸念があることを見出した。また、本発明者らは、粉末の流動性が低下すると、得られる造形物の内部における欠陥の発生、得られる造形物の表面における凹凸の顕在化等により、造形精度が低下する懸念があることを見出した。
すなわち、本発明者らは、粉末の流動性を向上させることにより、造形物の機械的強度および造形精度を向上させることができると考えた。
【0014】
本発明者らは、流動性が向上したアルミニウム含有粒子を得るために鋭意検討した。その結果、本発明者らは、サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)と、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と、を含むアルミニウム含有粒子において、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率および粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の含有率を特定の数値範囲とすることにより、アルミニウム含有粒子の流動性が向上することを見出した。すなわち、本発明は、粒子(B)の含有率および粒子(B1)の含有率という尺度が、アルミニウム含有粒子の流動性を向上させるための設計指標として有効であるということを見出したものである。
すなわち、本発明のアルミニウム含有粒子は流動性が向上したものである。より具体的には、本発明のアルミニウム含有粒子は動的流動性が向上したものである。
そして、本発明のアルミニウム含有粒子によれば、3Dプリンタによる造形物の機械的強度および造形精度を向上させることが可能である。
【0015】
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)を含む。
粒子(A)の含有率は、好ましくは10個%以上74個%以下、より好ましくは20個%以上72個%以下、さらに好ましくは30個%以上70個%以下、さらに好ましくは40個%以上69個%以下、さらに好ましくは44個%以上68個%以下である。
粒子(A)の含有率は<方法5>により算出される値を意味する。
【0016】
<方法5>
走査型電子顕微鏡を用いてアルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する粒子(A)の数の割合を、粒子(A)の含有率とする。
【0017】
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)を含む。
図1は、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の断面の一例を模式的に示した図である。粒子(B)100は、主粒子10にサテライト粒子20が付着している粒子を意味する。ここで、本明細書において、主粒子10とは、粒子(B)に含まれる粒子径が一番大きい粒子を意味し、粒子(B)に含まれる主粒子10以外の粒子をサテライト粒子20とする。なお、粒子(A)は、主粒子10のみからなる粒子であるともいえる。
粒子(B)は、サテライト粒子を複数含んでいてもよい。
【0018】
粒子(B)の含有率は、26個%以上である。
粒子(B)の含有率は、好ましくは26個%以上90個%以下、より好ましくは28個%以上80個%以下、さらに好ましくは30個%以上70個%以下、さらに好ましくは31個%以上60個%以下、さらに好ましくは32個%以上56個%以下である。
粒子(B)の含有率は<方法1>により算出される値を意味する。
【0019】
<方法1>
走査型電子顕微鏡を用いてアルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する粒子(B)の数の割合を、粒子(B)の含有率とする。
【0020】
粒子(B)の含有率は、例えば、アルミニウム含有粒子をディスクアトマイズ法により製造する際の製造条件を調整すること、具体的には、回転ディスクの回転数を調整すること;雰囲気中の酸素濃度を調整すること;等によって所望の値に調整できる。
【0021】
本実施形態のアルミニウム粒子は、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)を含む。
粒子(B1)は、サテライト粒子20の粒子径が5.0μm以下であればよく、主粒子10の粒子径は特に限定されない。
粒子(B1)のサテライト粒子20の粒子径は、例えば、1.0μm以上である。
【0022】
粒子(B1)の含有率は、60個%以下である。
粒子(B1)の含有率は、好ましくは5個%以上55個%以下、より好ましくは10個%以上50個%以下、さらに好ましくは12個%以上45個%以下である。
粒子(B1)の含有率は<方法2>により算出される値を意味する。
【0023】
<方法2>
走査型電子顕微鏡を用いてアルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する粒子(B1)の数の割合を粒子(B1)の含有率とする。
【0024】
粒子(B1)の含有率は、例えば、アルミニウム含有粒子をディスクアトマイズ法により製造する際の製造条件を調整すること、具体的には、回転ディスクの回転数を調整すること;雰囲気中の酸素濃度を調整すること;等によって所望の値に調整できる。
【0025】
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、好ましくは粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)をさらに含む。
粒子(B2)は、サテライト粒子20の粒子径が10.0μm以上であればよく、主粒子10の粒子径は特に限定されない。
粒子(B2)のサテライト粒子20の粒子径は、例えば、50.0μm以下であってよく、30.0μm以下であってもよい。
【0026】
粒子(B2)の含有率は、好ましくは1個%以上25個%以下、より好ましくは3個%以上20個%以下、さらに好ましくは5個%以上15個%以下である。
粒子(B2)の含有率は<方法3>により算出される値を意味する。
【0027】
<方法3>
走査型電子顕微鏡を用いてアルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する粒子(B2)の数の割合を粒子(B2)の含有率とする。
【0028】
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、好ましくは粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)をさらに含む。
粒子(B3)は、サテライト粒子20の粒子径が5.0μm超え10.0μm未満であればよく、主粒子10の粒子径は特に限定されない。
【0029】
粒子(B3)の含有率は、好ましくは1個%以上25個%以下、より好ましくは2個%以上23個%以下、さらに好ましくは3個%以上20個%以下である。
粒子(B3)の含有率は<方法4>により算出される値を意味する。
【0030】
<方法4>
走査型電子顕微鏡を用いてアルミニウム含有粒子を観察し、観察対象としたアルミニウム含有粒子の全ての数に対する粒子(B3)の数の割合を粒子(B3)の含有率とする。
【0031】
以下、<方法1>~<方法5>における走査型電子顕微鏡を用いたアルミニウム含有粒子の観察方法について具体的に説明する。
【0032】
まず、走査型電子顕微鏡を用いて観察するための観察用サンプルを作製する方法について説明する。
観察用サンプルは、100個以上のアルミニウム含有粒子が互いに重ならないように分散させたサンプルである。観察用サンプルの作製方法は特に限定されないが、例えば、台座の表面に両面テープを配置し、露出する両面テープの面上にアルミニウム含有粒子を落下させ、余分なアルミニウム含有粒子をエアー等で除去することにより作製できる。
【0033】
次に、観察用サンプルを走査型電子顕微鏡により撮像し、SEM画像を得る。このとき、1つの水準について、撮像位置をずらしながら、例えば、20枚以上のSEM画像を得る。拡大倍率は、サテライト粒子を確認することができる拡大倍率であれば特に限定されないが、例えば、500倍である。
走査型電子顕微鏡は、例えば、SU8200((株)日立ハイテク製)を用いることができる。
【0034】
以下、粒子(A)、粒子(B)、および、粒子(B1)~(B3)の判断方法について具体的に説明する。
【0035】
図2~5は、各粒子の判断方法を説明するためのアルミニウム含有粒子のSEM画像である。
【0036】
まず、得られたSEM画像を用いて、100個以上のアルミニウム含有粒子を観察し、アルミニウム含有粒子中にサテライト粒子を有するか否かを目視で判断する。サテライト粒子を有しておらず、明確に1つの粒子からなると判断できるアルミニウム含有粒子は、サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)とする。サテライト粒子を明確に有していると判断できるアルミニウム含有粒子は、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)とする。
【0037】
ここで、図2および図3のアルミニウム含有粒子は、主粒子10の少なくとも一部に被覆体30が付着している粒子(以下、「被覆粒子」ともいう)である。
このような被覆粒子であっても、図2のように、サテライト粒子20を有することが明確に判断できるアルミニウム含有粒子は、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と判断する。一方、図3のように、サテライト粒子20が確認できない粒子は、サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)であると判断する。
【0038】
SEM画像において、アルミニウム含有粒子の一部のみが撮像されており、粒子の全体が把握できないアルミニウム含有粒子は、サテライト粒子の有無を明確に判断できないため、観察対象としない。アルミニウム含有粒子の一部のみが撮像されている粒子とは、具体的には、実施例における符号Cの粒子である。
【0039】
また、観察用サンプルは、アルミニウム含有粒子が互いに重ならないように分散させて作製するが、アルミニウム含有粒子の一部が互いに重なることが避けられない場合もある。
図4は、アルミニウム含有粒子の最外面の一部が互いに重なっているSEM画像である。図4のように、それぞれのアルミニウム含有粒子の全体が把握でき、サテライト粒子の有無を判断できる場合には、それぞれのアルミニウム含有粒子を観察対象としてよい。図4は、サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)が1個、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)が1個と判断する。
また、アルミニウム含有粒子の大部分が互いに重なりあっており、それぞれのアルミニウム含有粒子の全体が把握できない場合にも観察対象とし、その粒子の一群を、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と判断する。なお、後述のサテライト粒子の粒子径の算出では、SEM画像において、その粒子の一群の中で最も粒子径が大きいと判断できる粒子を主粒子、その他の粒子をサテライト粒子として取り扱う。
【0040】
次いで、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と判断した粒子に対して、サテライト粒子の粒子径の測定を行い、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)、粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)、および、粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)を判断する。
サテライト粒子の粒子径は、サテライト粒子の長軸径を意味する。
サテライト粒子の粒子径は、例えば、画像解析ソフトを用いて測定することができる。画像解析ソフトとしては、例えば、ImageJを用いることができる。
【0041】
図5のように、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、主粒子10に複数のサテライト粒子20が付着している場合もある。
図5のような粒子の場合、粒子径が一番大きいサテライト粒子の粒子径の値を用いて、粒子(B1)~粒子(B3)のいずれかであるかを判断する。例えば、粒子径12.0μmのサテライト粒子と、粒子径2.5μmのサテライト粒子とを有するアルミニウム含有粒子は、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)ではなく、粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)であると判断する。
【0042】
ここで、粒子(B)は、粒子(B1)~(B3)のいずれかに分類することができる。そのため、粒子(B)の個数は、粒子(B1)~(B3)の個数の合計と一致する。ただし、粒子(B)の含有率は、有効数字の関係により、粒子(B1)~(B3)の含有率の合計とは一致しない場合もある。
【0043】
本実施形態のアルミニウム含有粒子のD50粒子径は、好ましくは30.0μm以上60.0μm以下、より好ましくは32.0μm以上55.0μm以下、さらに好ましくは35.0μm以上53.0μm以下である。
【0044】
本実施形態のアルミニウム含有粒子のD10粒子径は、好ましくは20.0μm以上40.0μm以下、より好ましくは22.0μm以上38.0μm以下、さらに好ましくは25.0μm以上36.0μm以下である。
【0045】
本実施形態のアルミニウム含有粒子のD90粒子径は、好ましくは50.0μm以上100.0μm以下、より好ましくは52.0μm以上95.0μm以下、さらに好ましくは55.0μm以上90.0μm以下、さらに好ましくは56.0μm以上85.0μm以下である。
【0046】
ここで、アルミニウム含有粒子のD10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径は、下記<粒子径測定>により算出される値をそれぞれ意味する。
【0047】
<粒子径測定>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとし、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置を用いて、アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得る。
ここで、1.3%濃度の界面活性剤としては、例えば、フルーツ酸配合フレッシュ グリーンアップルの原液(ロケット石鹸(株)製)を11倍に希釈した水溶液を用いることができる。また、界面活性剤は、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。
【0048】
本実施形態のアルミニウム含有粒子の真球度は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.9以上である。
アルミニウム含有粒子の真球度は、走査電子顕微鏡により得られる画像を画像解析することで算出される値を意味し、具体的には、アルミニウム含有粒子の短軸長と長軸長を測定し、真球度=短軸長/長軸長の計算式により、1個のアルミニウム含有粒子の真球度を求め、100個以上のアルミニウム含有粒子の真球度を算術平均することにより算出される値を意味する。
【0049】
本実施形態のアルミニウム含有粒子の注入法による安息角は、流動性をより向上させる観点から、好ましくは50.0°以下、より好ましくは45.0°以下、さらに好ましくは40.0°以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、25.0°以上であってよく、30.0°以上であってよい。また、本実施形態のアルミニウム含有粒子の注入法による安息角は、流動性をより向上させる観点から、好ましくは25.0°以上50.0°以下、より好ましくは25.0°以上45.0°以下、さらに好ましくは30.0°以上40.0°以下である。
ここで、アルミニウム含有粒子の注入法による安息角は、18~23℃、20~50%RHの環境下で、アルミニウム含有粒子を水平面上に落下させて堆積させることにより得られる円錐の母線と水平面とのなす角を測定し、左右の円錐の母線と水平面とのなす角を平均化した角度を意味する。アルミニウム含有粒子の注入法による安息角は、具体的には、漏斗(排出孔径8mm)を通してアルミニウム含有粒子を水平面上に一定の速度(2g/sec)で堆積させて、堆積している粉末と水平面との角度を測定することにより求めることができる。漏斗の排出孔から水平面までの距離は、例えば、45mmとする。
アルミニウム含有粒子の注入法による安息角は、例えば、堆積している粉末を水平角度から写真撮影し、画像処理ソフト(例えば、Paint.NET)を用いて測定することができる。
【0050】
本実施形態のアルミニウム含有粒子のJIS Z2502:2020に準拠し測定されるホールフロー試験による流動性は、流動性をより向上させる観点から、好ましくは15.0sec/50g以下、より好ましくは13.0sec/50g以下、さらに好ましくは12.0sec/50g以下であり、そして、下限値は特に限定されないが、例えば、5.0sec/50g以上であってよく、7.0sec/50g以上であってもよい。
アルミニウム含有粒子のホールフロー試験による流動性は、JIS Z2502:2020に準拠し測定される、規定する寸法で校正された漏斗のオリフィスを通過して50gのアルミニウム含有粒子が流れる時間を意味する。
本明細書において、アルミニウム含有粒子のホールフロー試験による流動性は、アルミニウム含有粒子が流れる時間の測定を2回おこない、2回の測定値を平均化した値とすることができる。また、2回測定をおこなったうち、一方で測定値が得られ、もう一方で測定値が得られなかった場合には、アルミニウム含有粒子のホールフロー試験による流動性は得られた測定値としてもよい。
【0051】
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、アルミニウム(Al)元素を含む粒子であれば特に限定されないが、好ましくは純アルミニウム粒子およびアルミニウム系合金粒子からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはアルミニウム系合金粒子を含む。
ここで、純アルミニウム粒子とは、純度99.00%以上のアルミニウム(いわゆる1000系アルミニウム)からなる粒子を意味する。また、アルミニウム系合金粒子とは、Alを主成分とするアルミニウム合金を意味する。
【0052】
本実施形態のアルミニウム系合金粒子は、好ましくはCu、Mn、Si、Mg、Zn、および、Niからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含み、より好ましくはSiおよびMgからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む。
本実施形態のアルミニウム系合金粒子がSiを含む場合、アルミニウム系合金粒子中のSiの含有量は、アルミニウム系合金粒子を100.00質量%としたとき、好ましくは7.00質量%以上15.00質量%以下、より好ましくは8.00質量%以上14.00質量%以下、さらに好ましくは9.00質量%以上11.00質量%以下である。
本実施形態のアルミニウム系合金粒子がMgを含む場合、アルミニウム系合金粒子中のMgの含有量は、アルミニウム系合金粒子を100.00質量%としたとき、好ましくは0.10質量%以上0.60質量%以下、より好ましくは0.20質量%以上0.45質量%以下である。
その他の元素の含有量は特に限定されず、適宜量とすればよい。
各元素の含有量は、例えば、固体発光分析法による元素分析により求めることができる。
【0053】
本実施形態のアルミニウム系合金粒子は、好ましくは、Al-Si系合金、Al-Cu系合金、Al-Mn系合金、Al-Mg系合金、Al-Si-Mg系合金、Al-Si-Cu系合金、Al-Zn-Mg系合金、Al-Si-Mg-Cu系合金、Al-Cu-Ni-Mg系合金、および、Al-Zn-Mg-Cu系合金からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはAl-Si系合金およびAl-Si-Mg系合金からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0054】
本実施形態のアルミニウム系合金粒子の組成は特に限定されず、例えば、圧延用アルミニウム合金、鋳物用アルミニウム合金、および、ダイカスト用アルミニウム合金からなる群から選択されるいずれの組成でもよいが、好ましくは鋳物用アルミニウム合金の組成である。
鋳物用アルミニウム合金の組成は、例えば、JIS H2211:2010に規定される組成である。
【0055】
本実施形態のアルミニウム系合金粒子は、好ましくはAlSi10MgおよびAlSi12からなる群から選択される少なくとも一種を含み、より好ましくはAlSi10Mgを含む。
ここで、AlSi10MgおよびAlSi12は、JIS H2211:2010に規定される組成を満たす合金を意味する。
【0056】
[アルミニウム含有粒子の用途]
本実施形態のアルミニウム含有粒子の用途は特に限定されない。
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、例えば、3Dプリンタの造形物用原料粉末、および、ろう付用ペースト粉末等からなる群から選択される少なくとも一種に用いることが可能なアルミニウム含有粒子であり、好ましくはアルミニウム含有粒子に用いることが可能なアルミニウム含有粒子である。
【0057】
[アルミニウム含有粒子の製造方法]
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法の好ましい態様について説明する。
【0058】
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、好ましくは、ディスクアトマイズ法によりアルミニウム含有粒子(a)を得る工程(A)と、アルミニウム含有粒子(a)を分級し、アルミニウム含有粒子(b)を得る工程(B)と、を備える。本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、工程(B)よりも後に、アルミニウム含有粒子(b)を分級する工程(C)をさらに備えていてもよい。
【0059】
以下、本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法における各工程を説明する。
【0060】
<溶湯準備工程>
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、好ましくは、工程(A)の前に、アルミニウム含有粒子の原料となる溶湯を準備する工程を含む。
【0061】
溶湯を準備する方法は特に限定されないが、例えば、一次炉にアルミニウム合金地金を投入し、加熱する方法;目的のアルミニウム含有粒子の組成となるように、一次炉にアルミニウム地金および各元素を投入し、加熱する方法;等が挙げられる。
また、本実施形態の溶湯は、フラックスを含んでいてもよい。
フラックスとしては、例えば、塩素化合物(NaCl・KCl)と、弗素化合物(NaF・NaSiF)と、の混合塩等を用いることができる。また、本実施形態の溶湯中のフラックスの含有量は、アルミニウム合金地金(もしくは、アルミニウム地金および各元素の合計)を100質量部としたとき、例えば、0.1質量部以上1質量部以下であってよく、0.2質量部以上0.3質量部以下であってもよい。
【0062】
溶湯を準備するときの加熱温度は特に限定されず、アルミニウムの融点、または、アルミニウム系合金の融点(もしくは、目的のアルミニウム含有粒子の組成から導かれるアルミニウム系合金の融点)を考慮して適宜調整すればよい。
本実施形態のアルミニウム含有粒子がAlSi10Mgを含む場合、加熱温度は、好ましくは700℃以上900℃以下、より好ましくは800℃以上850℃以下である。
【0063】
一次炉で得られた溶湯を二次炉に移動させ、二次炉において溶湯を保持してもよい。
溶湯を保持する温度は特に限定されず、アルミニウムの融点、または、アルミニウム系合金の融点(もしくは、目的のアルミニウム含有粒子の組成から導かれるアルミニウム系合金の融点)を考慮して適宜調整すればよい。
本実施形態のアルミニウム含有粒子がAlSi10Mgを含む場合、保持温度は、好ましくは600℃以上900℃以下、より好ましくは650℃以上800℃以下である。
【0064】
一次炉および二次炉は、溶湯を製造するときに用いることが可能な溶解炉であれば特に限定されず、例えば、電気炉、高周波誘導炉等を用いることができる。
【0065】
<工程(A)>
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、好ましくは、ディスクアトマイズ法によりアルミニウム含有粒子(a)を得る工程(A)を含む。
【0066】
工程(A)において、回転ディスクの径は特に限定されないが、好ましくはφ30mm以上φ40mm以下である。
工程(A)において、回転ディスクの回転数は、粒子(B)および粒子(B1)の含有率を適切な範囲に調整する観点から、好ましくは70,000rpm以上90,000rpm以下、より好ましくは75,000rpm以上88,000rpm以下、さらに好ましくは78,000rpm以上85,000rpm以下である。
【0067】
工程(A)において、溶湯の出湯量は、好ましくは25kg/h以上55kg/h以下、より好ましくは30kg/h以上50kg/h以下である。
溶湯の出湯量が上記下限値以上であると、単位時間あたりの生産量を向上させることができる。また、溶湯の出湯量が上記上限値以下であると、アルミニウム含有粒子(a)中の粗粒の割合を減少させることができるため、分級収率を向上させることができる。
溶湯の出湯量は、例えば、二次炉のノズル口径の大きさを調整することにより、調整できる。
【0068】
工程(A)における雰囲気中の酸素濃度は、粒子(B)および粒子(B1)の含有率を適切な範囲に調整する観点から、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。
【0069】
工程(A)において使用するディスクアトマイズ装置の種類は特に限定されないが、例えば、球状粉末製造装置(ミネルバ機器(株)製)を使用することができる。
【0070】
<工程(B)>
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、好ましくは、アルミニウム含有粒子(a)を分級し、アルミニウム含有粒子(b)を得る工程(B)を備える。
工程(B)は、工程(A)よりも後に行われる工程である。工程(A)と、工程(B)との間に任意の工程を備えていてもよい。
【0071】
工程(B)は、好ましくは、アルミニウム含有粒子(a)から粗粒を除去し、アルミニウム含有粒子(b)を得る工程であり、具体的には、好ましくは、ふるい網を用いて、アルミニウム含有粒子(a)をふるい分けし、ふるい網を通過したアルミニウム含有粒子(a)を回収し、アルミニウム含有粒子(b)を得る工程である。ここで、ふるい網の開口径は、例えば、200μm以上300μm以下であり、好ましくは250μmである。
【0072】
工程(B)において使用する分級機は特に限定されないが、例えば、超音波発振器付き振動篩(晃栄産業(株)製)を使用することができる。
【0073】
<攪拌工程>
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、好ましくは、工程(B)と工程(C)との間に、アルミニウム含有粒子(b)を攪拌する工程を備える。
【0074】
アルミニウム含有粒子(b)を攪拌する方法は特に限定されないが、例えば、混合機を用いて、アルミニウム含有粒子(b)を攪拌する方法が挙げられる。混合機としては、例えば、無限ミキサー((株)徳寿工業所製)を使用することができる。
【0075】
<工程(C)>
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、好ましくは、アルミニウム含有粒子(b)を分級する工程(C)を備える。
工程(C)は、工程(B)よりも後に行われる工程である。工程(B)と、工程(C)との間に任意の工程を備えていてもよい。
【0076】
工程(C)において、アルミニウム含有粒子(b)を分級する方法は特に限定されない。
工程(C)は、例えば、アルミニウム含有粒子(b)から粗粒および微粉を除去する工程であってよく、アルミニウム含有粒子(b)から粗粒のみを除去する工程であってよく、アルミニウム含有粒子(b)から微粉のみを除去する工程であってもよい。
【0077】
工程(C)は、例えば、ふるい網として上網と下網を用いて、アルミニウム含有粒子(b)をふるい分けし、上網を通過し、下網を通過しなかったアルミニウム含有粒子(b)を回収することにより、アルミニウム含有粒子(b)を分級する工程である。
また、工程(C)は、例えば、ふるい網として上網のみを用いて、アルミニウム含有粒子(b)をふるい分けし、上網を通過したアルミニウム含有粒子(b)を回収することにより、アルミニウム含有粒子(b)を分級する工程としてもよく、ふるい網として下網のみを用いて、アルミニウム含有粒子(b)をふるい分けし、下網を通過しなかったアルミニウム含有粒子(b)を回収することにより、アルミニウム含有粒子(b)を分級する工程としてもよい。
【0078】
上網の開口径は、例えば、40μm以上180μm以下、好ましくは45μm以上170μm以下、より好ましくは50μm以上70μm以下である。また、下網の開口径は、例えば、5μm以上30μm以下、好ましくは10μm以上20μm以下である。
上網の開口径および下網の開口径を適宜調整することにより、アルミニウム含有粒子の粒子径(D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径)を所望の値に調整することができる。
【0079】
工程(C)において使用する分級機は特に限定されないが、例えば、ハイボルター(東洋ハイテック(株)製、ブロースルー式分級機)を使用することができる。
【0080】
<その他の工程>
本実施形態のアルミニウム含有粒子の製造方法は、上記工程以外にも、その他の工程を適宜備えていてもよい。
【0081】
本実施形態のアルミニウム含有粒子は、アルミニウム含有粒子の製造方法における工程(C)の後に得られるアルミニウム含有粒子であってよく、アルミニウム含有粒子(a)であってよく、工程(C)よりも前のアルミニウム含有粒子(b)であってもよい。
【0082】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、前記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0083】
以下、本実施形態を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
<溶湯準備工程>
一次炉((株)デュコル製、電気炉)に対して、アルミニウム合金地金(AlSi10Mg)を投入し、さらに、フラックス(東京モーレクッス坩堝(株)製、製品名:ツバサフラックススモークレス)を、アルミニウム合金地金を100質量部としたときに0.2質量部となるように添加したのちに、830℃で加熱し、溶湯を準備した。
得られた溶湯を、一次炉から二次炉((有)高周波システム製、高周波誘導炉)に移動させた。二次炉において、700℃の温度で溶湯を保持した。
【0085】
<アトマイズ工程(工程(A))>
二次炉内の溶湯を原料として、下記条件に基づき、ディスクアトマイズ法により、アルミニウム含有粒子(a)を得た。
ディスクアトマイズ装置:球状粉末製造装置(ミネルバ機器(株)製)
回転ディスク径:φ35mm
回転数:82,000rpm
溶湯の出湯量:45kg/h
二次炉ノズル口径:φ2mm
酸素濃度:1000±200ppm
【0086】
ここで、酸素濃度は噴霧チャンバー内の酸素濃度を意味し、酸素濃度計(東レエンジニアリング(株)製、製品名:ジルコニア式酸素濃度計RF-30)により測定した値を意味する。酸素濃度は、圧縮空気または窒素ガスを適宜噴霧チャンバー内に注入することにより目的の酸素濃度になるよう調整した。
【0087】
<第1分級工程(工程(B))>
振動ふるい機(晃栄産業(株)製、製品名:超音波発振器付き振動篩UB70UR-3S、ふるい網の開口径:250μm)により、アルミニウム含有粒子(a)を分級し、アルミニウム含有粒子(b)を得た。ここで、ふるい網を通過したアルミニウム含有粒子(a)を回収し、アルミニウム含有粒子(b)とした。
【0088】
<攪拌工程>
アルミニウム含有粒子(b)を、混合機((株)徳寿工業所製、製品名:無限ミキサーMM-220)を用いて、29rpm、5分間の条件で、攪拌した。
【0089】
<第2分級工程(工程(C))>
ブロースルー式分級機(東洋ハイテック(株)製、製品名:ハイボルターNR-600SD型(二段式))を用いて、アルミニウム含有粒子(b)を分級し、実施例1のアルミニウム含有粒子を得た。ここで、実施例1において、上網(開口径:縦58μm、横60μm)を通過し、下網(開口径:縦20μm、横20μm)を通過しなかったアルミニウム含有粒子(b)を回収し、アルミニウム含有粒子とした。
【0090】
[実施例2~5]
各条件を表1に記載の条件とし、実施例1における<溶湯準備工程>~<第1分級工程(工程(B))>と同様の方法により、アルミニウム含有粒子(b)をそれぞれ作製し、得られたアルミニウム含有粒子(b)を実施例2~5のアルミニウム含有粒子とした。
すなわち、実施例2~5では、実施例1における<攪拌工程>および<第2分級工程(工程(C))>はおこなわなかった。
【0091】
[比較例1]
各条件を表1に記載の条件とした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1のアルミニウム含有粒子を得た。
【0092】
表1中、「フラックス」は、溶湯準備工程において、フラックスを添加したか否かを示す。
また、表1中、「上網」および「下網」に記載の数値は、第2分級工程における分級機の網の開口径を意味する。
【0093】
[測定]
実施例1~5および比較例1のアルミニウム含有粒子に対して、下記測定をおこなった。
【0094】
<元素分析>
固体発光分析装置(Thermo Fischer SCIENTIFIC社製、製品名:ARL-3460)を用いて、実施例1~5および比較例1のアルミニウム含有粒子に対して、固体発光分析法による元素分析をおこなった。元素分析の結果、アルミニウム含有粒子の組成はいずれもAlSi10Mgで表記される合金であった。
【0095】
<粒子(B)等の含有率>
まず、100個以上のアルミニウム含有粒子が、台座の表面に固定された観察用サンプルを作製した。ここで、観察用サンプルは、アルミニウム含有粒子が互いに重ならないように分散させた。具体的には、台座の表面に両面テープを配置し、露出する両面テープの面上にアルミニウム含有粒子を落下させ、余分なアルミニウム含有粒子をエアーで除去することにより、観察用サンプルを作製した。
走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテク製、製品名:SU8200)を用いて、観察用サンプルを500倍に拡大したSEM画像を得た。1つの水準について、撮像位置をずらしながら20枚以上を得た。
【0096】
まず、得られたSEM画像を用いて、100個以上のアルミニウム含有粒子を観察し、サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)の数およびサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の数を求めた。そして、観察対象とした全粒子の数に対する、粒子(A)の数および粒子(B)の数の割合をそれぞれ算出し、粒子(A)の含有率および粒子(B)の含有率をそれぞれ求めた。
【0097】
次に、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)に対して、サテライト粒子の粒子径を測定し、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の数、粒子径10.0μm以上のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B2)の数、および、粒子径5.0μm超え10.0μm未満のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B3)の数をそれぞれ求めた。そして、観察対象とした全粒子の数に対する、粒子(B1)、粒子(B2)および粒子(B3)の数の割合をそれぞれ算出し、粒子(B1)、粒子(B2)および粒子(B3)の含有率をそれぞれ求めた。
【0098】
なお、発明を実施する形態に記載した粒子(A)、粒子(B)および粒子(B1)~(B3)の判断方法に基づき、粒子(A)、粒子(B)および粒子(B1)~(B3)を判断した。
【0099】
実施例1~5および比較例1の各粒子の数および含有率を表2にそれぞれ示す。なお、比較例1の粒子(B1)~(B3)の数および含有率は未測定である。
【0100】
図6、8および10は、実施例1のアルミニウム含有粒子のSEM画像である。図7は、図6に符号を付した図である。図9は、図8に符号を付した図である。図11は、図10に符号を付した図である。
図7、9および11における符号A、B、および、B1~B3は、それぞれ粒子(A)、粒子(B)、および、粒子(B1)~(B3)に対応する。符号Cはアルミニウム含有粒子の一部のみが撮像されている粒子である。符号Cの粒子は、観察対象としなかった。
【0101】
<粒子径>
アルミニウム含有粒子3.0gを水40mLおよび1.3%濃度の界面活性剤10mLと混合し、超音波浴で300秒間分散させた混合液を測定サンプルとした。ここで、1.3%濃度の界面活性剤としては、フルーツ酸配合フレッシュ グリーンアップルの原液(ロケット石鹸(株)製、界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)14%)を11倍に希釈した水溶液を用いた。具体的には、フルーツ酸配合フレッシュ グリーンアップルの原液50mLを、水500mLで希釈することにより、1.3%濃度の界面活性剤を調製した。
測定サンプルに対して、レーザー回折・散乱式粒子径測定装置(マイクロトラック社製、製品名:MT-3300EX II)を用いて、アルミニウム含有粒子の体積基準の粒度分布を測定し、D10粒子径、D50粒子径、および、D90粒子径の値をそれぞれ得た。
【0102】
<真球度>
上記<粒子(B)等の含有率>で得られたSEM画像を、ImageJにより画像解析することで、アルミニウム含有粒子の真球度を求めた。具体的には、アルミニウム含有粒子の短軸長と長軸長を測定し、真球度=短軸長/長軸長の計算式により、1個のアルミニウム含有粒子の真球度を求め、100個以上のアルミニウム含有粒子の真球度を算術平均することにより算出される値をアルミニウム含有粒子の真球度とした。
【0103】
<安息角>
18~23℃、20~50%RHの環境下で、漏斗((株)エンテック製、製品名:201N、排出孔径:8mm)を通して80gのアルミニウム含有粒子を土台(φ83mm)の水平面上に一定の速度(2g/sec)で堆積させて、堆積している粉末と水平面との角度を測定した。堆積している粉末と水平面との角度は、堆積している粉末を水平角度から写真撮影し、画像処理ソフト(Paint.NET)を用いて測定した。なお、漏斗の排出孔から水平面までの距離は45mmとした。
左右の円錐の母線と水平面とのなす角を平均化した角度をアルミニウム含有粒子の安息角とした。
【0104】
<流動性>
JIS Z2502:2020に準拠し、ホールフロー試験による流動性を測定した。すなわち、規定する寸法で校正された漏斗のオリフィスを通過して50gのアルミニウム含有粒子が流れる時間[sec/50g]を測定した。
表3中、「N.D.」とは、オリフィスを開けても粉末が流れ出ない場合、または、測定中に流れが止まった場合を意味し、すなわち、測定値が得られなかった場合を意味する。
【0105】
実施例1~5および比較例1のアルミニウム含有粒子の粒子径、真球度、安息角、および、流動性の測定結果を表3にそれぞれ示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
実施例のアルミニウム含有粒子は、比較例のアルミニウム含有粒子よりも、ホールフロー試験による流動性の評価が良好であった。すなわち、本実施形態のアルミニウム含有粒子によれば、動的流動性を向上できる。
【0110】
実施例のアルミニウム含有粒子を用いた3Dプリンタの造形物は、比較例のアルミニウム含有粒子を用いた3Dプリンタの造形物よりも、機械的強度が良好であった。さらに、実施例のアルミニウム含有粒子を用いた3Dプリンタの造形物は、比較例のアルミニウム含有粒子を用いた3Dプリンタの造形物よりも、内部における欠陥の発生や造形物の表面における凹凸の顕在化が少なく、造形精度に優れているものであった。
【符号の説明】
【0111】
10 主粒子
20 サテライト粒子
30 被覆体
100 粒子(B)
A 粒子(A)
B 粒子(B)
B1 粒子(B1)
B2 粒子(B2)
B3 粒子(B3)
C アルミニウム含有粒子の一部のみが撮像されている粒子
【要約】
【課題】流動性が向上したアルミニウム含有粒子を提供する。
【解決手段】サテライト粒子を有さないアルミニウム含有粒子(A)と、サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)と、を含み、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)は、粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)を含み、前記サテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B)の含有率が26個%以上であり、前記粒子径5.0μm以下のサテライト粒子を有するアルミニウム含有粒子(B1)の含有率が60個%以下である、アルミニウム含有粒子。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11