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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】リール
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/38 20060101AFI20241227BHJP
【FI】
B65H75/38 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024115468
(22)【出願日】2024-07-19
【審査請求日】2024-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014395
【氏名又は名称】株式会社三協リール
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】大野 喜孝
(72)【発明者】
【氏名】木内 隆博
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-143543(JP,U)
【文献】実開平02-128516(JP,U)
【文献】特開2015-018507(JP,A)
【文献】特開2006-168916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺物を巻回して収容するリールであって、
回転可能に配置され、前記長尺物が巻回されるドラムと、
前記ドラムを覆って配置される筐体と、
前記ドラムの回転中心に交差する前記筐体の前面又は後面の少なくとも一方に固定された磁石と、
前記ドラムの回転中心に沿った方向において前記磁石及び前記筐体よりも突出して設けられ、弾性体により構成された複数の支持部と、
を備えるリール。
【請求項2】
請求項1に記載のリールにおいて、
前記ドラムの回転中心に沿った方向の一方から見たときに、
前記磁石は、仮想の直線である磁石配置線上で複数が離間して配置されており、
前記支持部は、前記磁石配置線に沿った仮想の直線である支持部配置線上で複数が離間して配置されており、
前記支持部配置線は、前記磁石配置線を挟んで複数あること、
を特徴とするリール。
【請求項3】
請求項2に記載のリールにおいて、
前記筐体は、前記ドラムに巻回された前記長尺物が引き出されるときに通過する開口部を有し、
前記ドラムの回転中心に沿った方向の一方から見たときに、前記ドラムの回転中心から前記開口部の開口中心へ延ばした仮想の直線が延在する向きを前記長尺物の基準引き出し方向と定義すると、
前記磁石配置線及び前記支持部配置線は、前記基準引き出し方向に沿っていること、
を特徴とするリール。
【請求項4】
請求項3に記載のリールにおいて、
前記ドラムの回転中心に沿った方向の一方から見たときに、前記磁石配置線は、前記ドラムの回転中心から前記開口部の開口中心へ延ばした仮想の直線と重なること、
を特徴とするリール。
【請求項5】
請求項4に記載のリールにおいて、
前記ドラムの回転中心に沿った方向の一方から見たときに、前記磁石は、前記ドラムの回転中心を挟んで2つ配置されており、
前記支持部は、1つの前記支持部配置線上に2つ離間して前記磁石配置線を対称軸として線対称に配置されていること、
を特徴とするリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホースやコード等の長尺物を収容するリールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種工作機械を取り扱う工場等において、コンプレッサーや高圧タンク等から供給される圧縮エアーを噴出するエアブローガンが用いられている。このエアブローガンは、作業員が手で掴んで作業することから、可撓性を備えたホースに接続されている。従来、エアブローガンは、螺旋ホースに吊り下げる形態で接続されて使用されることが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。螺旋ホースは、利用するために特別な取付作業等が不要であることから簡単に利用することができる。また、螺旋ホース自体が伸縮性を有していることから、使用者が手を離せば元の位置に戻る構成とすることができ、利便性が高く、かつ、簡易な構成であることから広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-225586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、螺旋ホースは、繰り返しの使用、及び、長期間に亘ってエアブローガンを吊り下げること等によって螺旋ホース自体の弾性が弱くなって塑性変形が進み、螺旋ホースが伸びた状態となってしまう。また、螺旋ホースに接続されたエアブローガンから手を離したときに、勢いよくエアブローガンが引き上げられて周囲の物体や人に衝突するおそれもあった。このように、螺旋ホースは耐久性及び安全性の面において改善すべき課題があった。
【0005】
一方、従来から、ホースやコード等を自動的に巻き取ることができる構成を備えたリールが知られている。このようなリールを用いれば、利便性が高く、螺旋ホースを用いるよりも耐久性が高く、安全性も高い。
【0006】
しかし、リールは、作業者によってホース等が引き出されたときに、リール自体が移動してしまうおそれがあることから、適切に固定された状態で使用されることが必要である。従来のリールは、ビス等を用いて壁面300等に固定することは可能であるものの、より簡単に取り付けたり取り外したりできるリールが要望されていた。
【0007】
本開示の課題は、耐久性及び安全性が良好であって、簡単に固定することができ、かつ、取り外しも容易なリールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本開示の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0009】
第1の開示は、可撓性を有する長尺物(200)を巻回して収容するリール(1)であって、回転可能に配置され、前記長尺物(200)が巻回されるドラム(30)と、前記ドラム(30)を覆って配置される筐体(10、20)と、前記ドラム(30)の回転中心(O)に交差する前記筐体(10、20)の前面又は後面の少なくとも一方に固定された磁石(90)と、前記ドラム(30)の回転中心(O)に沿った方向において前記磁石(90)及び前記筐体(10、20)よりも突出して設けられた複数の支持部(100)と、を備えるリール(1)である。
【0010】
第2の開示は、第1の開示に記載のリール(1)において、前記ドラム(30)の回転中心(O)に沿った方向の一方から見たときに、前記磁石(90)は、仮想の直線である磁石配置線(L1)上で複数が離間して配置されており、前記支持部(100)は、前記磁石配置線(L1)に沿った仮想の直線である支持部配置線(L2、L3)上で複数が離間して配置されており、前記支持部配置線(L2、L3)は、前記磁石配置線(L1)を挟んで複数あること、を特徴とするリール(1)である。
【0011】
第3の開示は、第2の開示に記載のリール(1)において、前記筐体(10、20)は、前記ドラム(30)に巻回された前記長尺物(200)が引き出されるときに通過する開口部(23)を有し、前記ドラム(30)の回転中心(O)に沿った方向の一方から見たときに、前記ドラム(30)の回転中心(O)から前記開口部(23)の開口中心へ延ばした仮想の直線(L1)が延在する向きを前記長尺物(200)の基準引き出し方向と定義すると、前記磁石配置線(L1)及び前記支持部配置線(L2、L3)は、前記基準引き出し方向に沿っていること、を特徴とするリール(1)である。
【0012】
第4の開示は、第3の開示に記載のリール(1)において、前記ドラム(30)の回転中心(O)に沿った方向の一方から見たときに、前記磁石配置線(L1)は、前記ドラム(30)の回転中心(O)から前記開口部(23)の開口中心へ延ばした仮想の直線(L1)と重なること、を特徴とするリール(1)である。
【0013】
第5の開示は、第4の開示に記載のリール(1)において、前記ドラム(30)の回転中心(O)に沿った方向の一方から見たときに、前記磁石(90)は、前記ドラム(30)の回転中心(O)を挟んで2つ配置されており、前記支持部(100)は、1つの前記支持部配置線(L2、L3)上に2つ離間して前記磁石配置線(L1)を対称軸として線対称に配置されていること、を特徴とするリール(1)である。
【0014】
第6の開示は、第1の開示から第5の開示までのいずれかに記載のリール(1)において、前記支持部(100)は、弾性体により構成されていること、を特徴とするリール(1)である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、耐久性及び安全性が良好であって、簡単に固定することができ、かつ、取り外しも容易なリールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示によるリールの前面図である。
図2】本開示によるリールの後面図である。
図3】本開示によるリールの下面図である。
図4】本開示によるリールを図1及び図2中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。
図5】本開示によるリールを図3及び図4中の矢印B-Bの位置で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示を実施するための一形態について図面等を参照して説明する。
【0018】
(実施形態)
図1は、本開示によるリールの前面図である。図2は、本開示によるリールの後面図である。図3は、本開示によるリールの下面図である。図4は、本開示によるリールを図1及び図2中の矢印A-Aの位置で切断した断面図である。図5は、本開示によるリールを図3及び図4中の矢印B-Bの位置で切断した断面図である。また、図中には、説明の便宜のため、U-D(上-下)、L-R(左-右)、F-B(前-後)の直交座標を設け、以下の説明ではこの座標に対応した上下、左右、前後の各向きを用いて各部の向きを、例えば、前側、後側等の文言と共に説明を行う。なお、上記U-D(上-下)、L-R(左-右)、F-B(前-後)の直交座標の表現は、便宜上設定したものであり、リールの使用形態をこの向きに限定するものではない。
【0019】
本実施形態のリール1では、長尺物200は、一例として、気体や水等を送達するホースである場合を例に挙げて説明する。なお、本開示の磁石を用いた構造を備えるリールは、ホースに限らず、電気コード、ワイヤー等の他の長尺物を巻回して収容するリールであってもよい。なお、長尺物200については、図示を適宜省略している。
【0020】
本実施形態のリール1は、壁面300等の取り付け対象物に固定されて使用されることを想定した構造を有している。ここで、取り付け対象物とは、建築物の壁面だけでなく、工作機械の外装面(壁面)や、棚やロッカー等の側面(壁面)等であってもよく、以下、これらを単に「壁面」又は「壁面等」とも呼称することとする。
【0021】
本実施形態のリール1は、可撓性を有する長尺物200を巻回して収容するリールである。リール1は、第1筐体10と、第2筐体20と、ドラム30と、ドラムプレート40と、ゼンマイ押さえ50と、ゼンマイ60と、ジョイント70と、シャフト80と、磁石90と、支持部100とを備えている。
【0022】
第1筐体10は、リール1の後面(背面)側に配置され、樹脂成形により、巨視的にみて略平板状に形成されている。第1筐体10は、ベース部11と、引掛け孔12と、ビス孔13と、磁石取付部14と、支持部取付部15と、リブ16と、フック17と、係合部18と、ゼンマイ支持部19とを備えている。第1筐体10を含めて、以下で説明する第2筐体20、ドラム30、ドラムプレート40、ゼンマイ押さえ50、ジョイント70、シャフト80は、いずれも樹脂成型品である。なお、これらの部品は、樹脂成形品に限らず、金属により構成してもよい。
【0023】
ベース部11は、上下方向及び左右方向に略平行に形成された平板状の部分であり、前面側及び後面側から見た形状が、略正方形の形状であって各辺及び各角は丸みを帯びた形状に膨らましたような形状となっている。
【0024】
引掛け孔12は、ベース部11の上方において、後述の磁石配置線L1を挟んで左右均等な位置に開口した貫通孔であり、円形の開口の上方に細長く延在する開口が繋がった略丸フラスコ型の形状に開口している。引掛け孔12は、壁面300(図3及び図4参照)等に予め取り付けられたビスやフック等を利用してリール1を壁面300等に固定するために用いられる。この引掛け孔12を用いたリール1の固定方法は、複数選択的に用いることができる本実施形態のリール1の固定方法の内の1つである。
【0025】
ビス孔13は、ベース部11の上方において、後述の磁石配置線L1を挟んで左右均等な位置に開口した貫通孔であり、本実施形態では、引掛け孔12よりも左右外側に配置されている。なお、ビス孔13と引掛け孔12とは、上下方向において重なっていなくてもよい。ビス孔13は、後述する第2筐体20のビス受21の貫通孔21aと連通している。後述する第2筐体20のビス受21に不図示の取付用ビスを通して壁面300等に設けられた取付用ビスが螺合するビス孔やナット等を用いてリール1を取り付けることが可能となる。また、取付用ビスをタップ付きビスとして、壁面300等に直接取り付けてもよい。さらに、ビス孔13を利用してリール1を不図示のL字型の取付用ブラケット等に取り付け、この取付用ブラケット等を介して、天井面等にリール1を固定することもできる。このビス孔13を用いたリール1の固定方法は、複数選択的に用いることができる本実施形態のリール1の固定方法の内の1つである。
【0026】
磁石取付部14は、後述する磁石90が取り付けられる部位であり、磁石取付ビス91が螺合するビス孔14aを有している。磁石取付部14の配置、すなわち、磁石90の配置については、後述する。
【0027】
支持部取付部15は、後述する支持部100が取り付けられる部位である。支持部取付部15は、後側から見た形状が後述する支持部100の外径形状よりも僅かに大きい円形状であって、第1筐体10の後面よりも前側へ凹んだ平面として構成されている。支持部取付部15の配置、すなわち、磁石90の配置については、後述する。
【0028】
リブ16は、第1筐体10を補強するリブであり、ベース部11の後面よりも後方へ凸となって円環状及び放射状に配置されている。
【0029】
フック17は、ベース部11の下方において、ドラム30の回転中心Oを挟んで左右均等な位置であって、下方からみたときに、後述する第2筐体20の開口部23を通して見える位置に配置されている。フック17は、ベース部11から前方に突出した略円柱形状の突起である。開口部23を通して引き出される長尺物200は、使用者が手を離す等して拘束力が解除されると、後述するゼンマイ60の作用によってドラム30に巻回されて第1筐体10及び第2筐体20内へ引き込まれる。しかし、図5に示すように長尺物200を左側のフック17に引掛けておくことにより、長尺物200を所望の長さだけ引き出した状態を維持することができる。なお、右側のフック17にも上記と同様に長尺物200を引掛けておくことができる。
【0030】
係合部18は、ベース部11の周囲に複数個所設けられており、後述する第2筐体20の係合凸部25と係合するための係合形状(孔形状)を有している。
【0031】
ゼンマイ支持部19は、ベース部11の中央から前方へ略円筒状に突出している。ゼンマイ支持部19の円筒壁面には、溝19aが設けられており、この溝19aに後述するゼンマイ60の中心側端部が係合している。また、ゼンマイ支持部19の円筒壁面の外周の根元(後端)には、後述するドラム30が回転可能に嵌合する。
【0032】
第2筐体20は、ビス受21と、シャフト支持部22と、開口部23と、スリット24とを備えている。第1筐体10と第2筐体20により、後述するドラム30を覆って配置される筐体を構成している。なお、本実施形態では、ドラム30を覆う筐体を第1筐体10と第2筐体20との2部品により構成したが、筐体は3部品以上で構成してもよいし、1部品であってもよい。
【0033】
ビス受21は、ビス孔13と対応する位置、すなわち、第2筐体20の上方において、後述の磁石配置線L1を挟んで左右均等な位置に設けられている。ビス受21は、第2筐体20の後面側に突出した略円筒形状に構成されており、貫通孔21aと、円筒壁部21bと、前面ビス頭逃げ部21cとを有している。ビス受21は、第2筐体20の後面側では、円筒壁部21bと、円筒壁部21bの内部を貫通する貫通孔21aが第1筐体10のベース部11の前面と接触する位置まで突出して延在している。また、ビス受21は、第2筐体20の前面側に、貫通孔21aよりもひと回り大きい内径の前面ビス頭逃げ部21cが設けられており、円筒壁部21bの前端側は、第2筐体20の前面よりも凹んだ平面となっている。ビス孔13に不図示のビスを通してリール1の固定を行う場合には、ビス頭が前面ビス頭逃げ部21c内に収まって、第2筐体20の前面からビス頭が露出しない。
【0034】
シャフト支持部22は、後述するシャフト80の前端側を支持する貫通孔である。本実施形態のシャフト支持部22は、前面側から見た形状が正六角形形状の貫通孔となっており、シャフト80の前端側の嵌合凸部81の六角形形状が嵌合する。
【0035】
開口部23は、後述するドラム30に巻回された長尺物200が引き出されるときに通過する開口である。本実施形態では、開口部23は、第2筐体20の下面側に設けられている。開口部23は、開口の前後方向の幅が、開口部23の左端側において、開口部の右側よりも広く構成されている。開口部23の左端側において前後方向の幅を右側よりも広くしたのは、上述した左側のフック17へ長尺物200を引掛ける作業をやりやすくするための形状である。また、右側の開口部23の前後方向の幅を狭く形成していることにより、引き出された長尺物200の位置を案内することができる。
【0036】
スリット24は、第2筐体20の外周壁面において、係合部18と対応する位置に複数設けられている。第2筐体20の内周面において、このスリット24に隣接して係合凸部25(図4参照)が第2筐体20の内側へ向けて突出して設けられている。スリット24は、上記係合凸部25を成形するための金型が挿入されるための形状である。係合凸部25と係合部18とが係合することにより、第1筐体10へ第2筐体20が装着される。また、スリット24の近傍で第2筐体20を外側へ広げることにより両者の係合を簡単に解除することができ、第2筐体20を簡単に取り外すことができる。使用方法が不適切な場合等には、長尺物200が第2筐体20内で絡むような事態が生じるおそれがある。そのような場合でも、第1筐体10に対して第2筐体20が着脱自在であって、装着も取り外しも容易であることから、メンテナンス性が良好である。
【0037】
ドラム30は、回転可能に配置されており、長尺物200が巻回される。より具体的には、ドラム30は、ゼンマイ支持部19の円筒壁面の外周の根元(後端)側に、ドラム後端34が回転可能に嵌合する。ドラム30の回転中心Oの方向は、各図中の前後方向の軸と同一方向となっている。ドラム30は、前方側に開口した空洞を有する円筒部31と、円筒部31の後端において円周方向に略円盤状に延在するフランジ部32とを有している。円筒部31の外周側には、長尺物200が巻回される。円筒部31には、挿通孔33が開口しており、円筒部31に巻回される長尺物200の一端側がこの挿通孔33を通って円筒部31の内部へ長尺物200が挿入され、後述するジョイント70の接続部72に長尺物200の一端側が接続される。
【0038】
ドラムプレート40は、ドラム30の前端側に取り付けられており、ドラム30と共に回転可能である。ドラムプレート40は、ドラム30の円筒部31の内部空洞に対応した開口部41が中央に設けられており、この開口の周りにフランジ部42が鍔状に延在している。ドラム30のフランジ部32とドラムプレート40のフランジ部42との間に、長尺物200が収容される。
【0039】
ゼンマイ押さえ50は、ゼンマイ支持部19の前端の位置に配置された略板状の部材である。ゼンマイ押さえ50は、ゼンマイ60が取り付けられた後に、ゼンマイ押さえ50の両端部が円筒部31に対して固定され、ドラム30と共に回転する。また、ゼンマイ押さえ50の中央には、ゼンマイ押さえ50の回転と共に後述のジョイント70が回転可能なように、ジョイント70の係合突起71が係合する係合孔51が設けられている。
【0040】
ゼンマイ60は、弾性のある帯状の金属板を渦巻き状に構成したものであり、ドラム後端34とゼンマイ押さえ50との間に配置されている。ゼンマイ60の中心側端部はゼンマイ支持部19の溝19aに係合している。また、ゼンマイ60の外側端部は、ドラム30の円筒部31に設けられた不図示の係合部に係合している。この構成によって、ゼンマイ60は、ドラム30から長尺物200が引き出されると弾性力によってドラム30を長尺物200が巻き戻される向きへ付勢する付勢力が増大、すなわち、弾性力がチャージされる状態となり、長尺物200が移動を規制されていなければ、ドラム30に自動的に巻回される。
【0041】
ジョイント70は、前端側が開口し後端側が閉じた略円筒形状に構成されており、内部はシャフト80が挿入されていない場合には空隙となっている。ジョイント70の後端には、係合突起71が後ろ向きに突出している。係合突起71は、ゼンマイ押さえ50の係合孔51と係合しており、ジョイント70は、ゼンマイ押さえ50及びドラム30と一体となって回転可能である。また、ジョイント70の円筒面には、円筒面から外側に突出した接続部72が設けられている。接続部72は、略円筒状に形成されており、接続部72の内部空隙は、ジョイント70の円筒形状の内部の空隙と連通している。接続部72には、挿通孔33を通って円筒部31の内部へ挿入された長尺物200の端部が接続される。
【0042】
シャフト80は、前端側が開口し後端側が閉じた略円筒形状に構成されており、内部は空隙となっている。シャフト80の前側端部は、シャフト支持部22の六角形形状に嵌合する六角形形状に突出した嵌合凸部81が設けられている。シャフト支持部22と嵌合凸部81とが嵌合していることから、シャフト80は回転が規制されており、第2筐体20に対して回転しない。また、シャフト80の内部の空隙の前端側の内面には、雌ねじ部82が設けられている。この雌ねじ部82を用いて配管コネクタ等を接続することにより、外部からの圧縮エアーの供給ホース等が接続可能である。シャフト80の前後方向の略中央付近は、その前後よりも外径が小さく構成されており、この外径が細い部分には、シャフト80の延在方向(前後方向)に直交する向きに貫通孔83が貫通して設けられている。
【0043】
また、シャフト80の外径が細い部位の前後に設けられた外径が太い部位のそれぞれには、Oリング84が配置されており、気密性を確保している。これらの構成によって、雌ねじ部82に接続された外部からの圧縮エアーの供給ホース等から供給される圧縮エアーは、貫通孔83を通って接続部72に到達し、接続部72に接続された長尺物200内へ供給される。また、シャフト80は固定されていることから雌ねじ部82に接続された外部からの圧縮エアーの供給ホース等がねじれてしまうこともない。さらに、ジョイント70はドラム30の回転と共に回転するが、エアーの供給路はジョイント70が回転してもエアー供給可能な状態を継続できる。
【0044】
磁石90は、ドラム30の回転中心Oに交差する第2筐体20の後面に磁石取付ビス91によって固定されている。本実施形態では、磁石90は、直径20mmで厚さ4mmのネオジム磁石を用いているが、リール1を金属製の壁面300等へ固定可能な磁力が得られれば、フェライト磁石等の他の種類の磁石を用いてもよい。また、磁石90の直径は16mm以上25mm以下が望ましく、厚さは4mm以上6mm以下が望ましい。磁石90の後側の表面の位置は、第2筐体20の後面の中で最も後側へ突出した位置よりも後側となっている。よって、支持部100を設けない状態であれば、平面の取付面(壁面300等)へ取り付けた場合に磁石90の表面(後面)が取付面と接触する。
【0045】
支持部100は、ドラム30の回転中心Oに沿った方向(前後方向)において磁石90及び第2筐体20よりも後方へ突出して複数設けられている。したがって、平面の取付面(壁面300等)へ取り付けた場合に磁石90の表面(後面)は取付面(壁面300等)と接触せずに、支持部100が取付面(壁面300等)と接触する。本実施形態では、支持部100の表面(後面)が磁石90の表面(後面)よりも突出する突出量H(図3参照)は、0.5mmとした。本実施形態では、突出量Hを0.5mmとしたことにより、磁石90の磁力によって第2筐体20が撓んだり、成形後の収縮やその他の外力によって第2筐体20が反ったりした場合であっても取付面(壁面300等)には支持部100のみが接触して、磁石90は接触しない状態とすることができる。なお、この突出量Hは、磁石90の磁力や第2筐体20の剛性、磁石90と支持部100の相対的な位置関係等により適宜変更することができる。
【0046】
また、支持部100は、弾性体により構成されていることが望ましい。本実施形態では、支持部100は、ポリウレタン製ゴム(例えば、硬さ:ショアA70)の直径13mmで厚さ4mmの円盤状の支持部100を接着剤によって第2筐体20へ固定している。なお、支持部100としては、上記ポリウレタン製ゴムに限らず、例えば、シリコンゴムなどの滑り止めに優れたゴム等(例えば、硬さ:ショアA70前後)を用いてもよい。また、支持部100の直径は、磁石90の磁力や支持部100の厚さにもよるが、例えば、10mm以上14mm以下が望ましい。また、支持部100の厚さは、3.5mm以上6.0mm以下が望ましい。支持部100を弾性体とすることにより、取付面(壁面300等)に支持部100が接触した場合に、支持部100が僅かに弾性変形して、複数の支持部100の全てが適切に取付面(壁面300等)と接触できるという効果が得られる。また、支持部100の表面は、粗面化する等して摩擦係数を高めるようにしてもよい。後述する長尺物200の引き出し力によってリール1が移動しないようする効果を高めるためである。
【0047】
上記のように、本実施形態のリール1は、取付面(壁面300等)には支持部100のみが接触して、磁石90は接触しない構成としたことにより、少ない数(本実施形態では2つ)の磁石90によって、取付面(壁面300等)への適切な固定を実現可能である。より具体的には、本実施形態のリール1は、使用中に長尺物200を引き出しても固定された位置を維持でき、かつ、リール1を取り外したい場合には、容易に取り外しが可能である。
【0048】
本実施形態のリール1と同様な構成のリールにおいて、支持部100を設けない形態とした試作品(比較例)のリールを作製した。しかし、試作品では、壁面300への取付は可能であったものの、実際に長尺物200として高圧ホースをドラム30へ巻回して使用してみたところ、高圧ホースの引き出し時にドラム30や第2筐体20等に作用する力によってリールが壁面300上を移動してしまった。支持部100を設けず、磁石を多数設ければ上記のようなリールが壁面300上を移動する事態を防ぐことが可能である。しかし、その構成では、磁石を多数配置するため製造工程が多くなり、また、部品コストも上昇してしまい、さらに、壁面300からのリールの取り外しに大きな力が必要となってしまう。
【0049】
壁面への固定と取り外しとを容易とし、さらに、使用中の固定状態を維持することを少数の磁石で可能とするため、本実施形態のリール1は、磁石90及び支持部100の配置を特徴的な配置としている。以下、磁石90及び支持部100の配置について説明する。
【0050】
(配置特徴1)
図2に示すように、磁石90は、仮想の直線である磁石配置線L1上で複数が離間して配置されている。また、支持部100は、磁石配置線L1に沿った仮想の直線である支持部配置線L2、L3のそれぞれの上で複数が離間して配置されており、この支持部配置線L2、L3は、磁石配置線L1を挟んで複数ある。ここで、「磁石配置線L1に沿った」とは磁石配置線L1と平行であることを含むが、厳密に平行であることまでは要さず平行とみなせる程度に沿っていることを指している。したがって、例えば、支持部配置線L2、L3は、磁石配置線L1と平行であってもよいし、磁石配置線L1との成す角度が5°以内程度の角度を持った配置となっていてもよい。なお、「沿った」、「沿って」等の文言の意味するところは、以下の記載も含めて本明細書中において上記「磁石配置線L1に沿った」の意味するところと同様である。
【0051】
より具体的には、本実施形態では、磁石仮想線L1上に2つの磁石90が離間して配置されている。また、支持部配置線L2上には2つの支持部100が離間して配置され、支持部配置線L3上には2つの支持部100が離間して配置されている。そして、支持部配置線L2と支持部配置線L3は、磁石仮想線L1と平行であって、支持部配置線L2と支持部配置線L3との間に磁石仮想線L1が挟まれている。この構成によって、磁力による吸引力が磁石仮想線L1上に略均等に作用し、支持部配置線L2と支持部配置線L3との上に配置された各支持部100が壁面300等に略均等に接触することができ、安定した固定が可能である。
【0052】
(配置特徴2)
また、ドラム30の回転中心Oに沿った方向の一方(例えば、後方)から見たときに、ドラム30の回転中心Oから開口部23の開口中心へ延ばした仮想の直線L4(本実施形態では磁石仮想線L1と一致)が延在する向きを前記長尺物の基準引き出し方向(直線L4に沿った方向)と定義する。なお、本実施形態では、開口部23の開口中心は、前方から見たときの開口部23の幅方向の中心である。そして、上記配置特徴1を満たした上で、磁石配置線L1及び支持部配置線L2、L3は、基準引き出し方向に沿っている。
【0053】
長尺物200を引き出す時には、ドラム30を引き出し方向に引く力と、ドラム30が回転することにより作用する回転トルクとが第1筐体10に作用する。これらの力によって長尺物200を引き出す時に磁石90を用いて固定されたリール1の位置が移動してしまうおそれがある。しかし、上述した配置特徴2の構成を満たしていれば、長尺物200を引き出す時に作用する力に対する抵抗力が高くなり、リール1の移動を効果的に抑制できる。
【0054】
(配置特徴3)
ドラム30の回転中心Oに沿った方向の一方(例えば、後方)から見たときに、磁石配置線L1は、ドラム30の回転中心Oから開口部23の開口中心へ延ばした仮想の直線と重なる。これにより上記配置特徴2により得られるリール1の移動を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0055】
(配置特徴4)
ドラム30の回転中心Oに沿った方向の一方(例えば、後方)から見たときに、磁石90は、ドラムの回転中心Oを挟んで2つ配置されている。そして、支持部100は、1つの支持部配置線L2、L3のそれぞれの上に2つ離間して磁石配置線L1を対称軸として線対称に配置されている。これにより最小限の磁石90及び支持部100を用いて、ドラム30の回転中心Oの周りにバランスよく磁石90及び支持部100を配置することができ、安定した固定を実現できる。
【0056】
(配置特徴5)
ドラム30の回転中心Oに沿った方向の一方(例えば、後方)から見たときに、磁石90がドラム30の最外径よりも外側に配置されている(図5のビス孔14aとドラム30との位置関係を参照)。これにより、磁石90がドラム30の回転中心Oから離れた位置に配置されることとなり、長尺物200を引き出す時に第1筐体10に作用する回転トルクに対抗するトルクが高くなり、リール1の移動を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0057】
リール1の構成は、磁石90及び支持部100を除く他の構成、すなわち、長尺物200を自動的に巻き取って収容する構成は、基本的には従来から用いられているリールと同様な構成を備えている。したがって、本実施形態のリール1は、耐久性及び安全性が良好である。そして、磁石90及び支持部100を適切に配置したことにより、簡単に固定することができ、かつ、取り外しも容易である。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のリール1は、磁石90よりも突出した支持部100を備えている。これにより本実施形態のリール1は、耐久性及び安全性が良好であって、簡単に固定することができ、かつ、取り外しも容易であり、さらに、長尺物200を引き出す時に磁石により固定された位置が移動し難いリールを実現可能である。また、上述した複数の配置特徴を備えることにより、固定された位置が移動し難いという効果をさらに高めることができる。さらに、支持部100が弾性体により構成されていることから、固定された位置が移動し難いという効果をさらに高めることができる。
【0059】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の範囲内である。
【0060】
(1)実施形態において、磁石90が2つ、支持部100が4つ設けられ、それぞれの配置を具体的に例示して説明した。これに限らず、例えば、磁石の数を増減したり、支持部の数を増減したりしてもよい。その場合において、配置特徴1~4についても4つ全てを満たす構成とする必要はなく、利用形態に応じて適宜選択的に採用することができる。
【0061】
(2)実施形態において、磁石90及び支持部100は、後側の第1筐体10のみに設けられている形態を例示した。これに限らず、例えば、ドラムの回転中心に交差する両面、すなわち、前面と後面の両面に磁石及び支持部を配置してもよい。これにより、長尺物の巻かれる向きを逆にして固定することができ、利用場所によって使いやすい向きで簡単に固定できる。この場合、外部からのエアー供給可能な雌ねじ部82に相当する構成を後面側にも設け、適宜蓋部材を取り付けることができる構成とするとよい。
【0062】
(3)実施形態において、磁石90を用いた固定方法の他に、引掛け孔12を用いたリール1の固定方法、ビス孔13を用いたリール1の固定方法を利用可能な形態を例示して説明した。これに限らず、例えば、引掛け孔12を用いたリール1の固定方法、ビス孔13を用いたリール1の固定方法を利用できない形態してもよい。すなわち、引掛け孔12、ビス孔13等のような第1筐体10及び第2筐体20を前後方向(ドラム30の回転中心Oに沿った方向)で貫通する構成を備えない構成としてもよい。これにより、固定方法は磁石を用いた方法に限定されるものの、第1筐体10及び第2筐体20の外形形状をドラム30の外径形状に近い大きさまで小型化することができる。
【0063】
(4)実施形態において、支持部100は第1筐体10に対し取り付けられる別部品として設けた例を挙げて説明した。これに限らず、例えば、支持部100の一部、又は、全部を第1筐体10と一体に構成してもよい。この場合において、支持部100と第1筐体10とを同一の樹脂材料により形成することとして一体成型してもよい。また、支持部100を別部材として用意しておき、第1筐体10の成形時にインサート成形や二色成形によって一体化してもよい。
【0064】
なお、各実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本開示は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0065】
1 リール
10 第1筐体
11 ベース部
12 引掛け孔
13 ビス孔
14 磁石取付部
14a ビス孔
15 支持部取付部
16 リブ
17 フック
18 係合部
19 ゼンマイ支持部
19a 溝
20 第2筐体
21 ビス受
21a 貫通孔
21b 円筒壁部
21c 前面ビス頭逃げ部
22 シャフト支持部
23 開口部
24 スリット
25 係合凸部
30 ドラム
31 円筒部
32 フランジ部
33 挿通孔
34 ドラム後端
40 ドラムプレート
41 開口部
42 フランジ部
50 ゼンマイ押さえ
51 係合孔
60 ゼンマイ
70 ジョイント
71 係合突起
72 接続部
80 シャフト
81 嵌合凸部
82 雌ねじ部
83 貫通孔
84 Oリング
90 磁石
91 磁石取付ビス
100 支持部
200 長尺物
300 壁面
【要約】
【課題】耐久性及び安全性が良好であって、簡単に固定することができ、かつ、取り外しも容易なリールを提供する。
【解決手段】リール1は、可撓性を有する長尺物200を巻回して収容するリールであって、回転可能に配置され、長尺物200が巻回されるドラム30と、ドラム30を覆って配置される第1筐体10及び第2筐体20と、ドラム30の回転中心に交差する第1筐体10の後面に固定された磁石90と、ドラム30の回転中心Oに沿った方向において磁石90及び第1筐体10よりも突出して設けられた複数の支持部100とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5