(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】空気調和機の室外機
(51)【国際特許分類】
F24F 1/56 20110101AFI20241227BHJP
【FI】
F24F1/56
(21)【出願番号】P 2024514783
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2022017938
(87)【国際公開番号】W WO2023199518
(87)【国際公開日】2023-10-19
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】中野 敬太
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 隆二
(72)【発明者】
【氏名】大塚 喬太
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 健二
(72)【発明者】
【氏名】米田 諭
(72)【発明者】
【氏名】萩原 開人
(72)【発明者】
【氏名】大井 正則
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕人
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-137121(JP,A)
【文献】特開2013-015296(JP,A)
【文献】特開2019-052810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属により形成されている箱状の筐体と、
少なくとも一部が前記第1の金属とは自然電位が異なる第2の金属により形成され、前記筐体内に配置されて非導電性部材を介して前記筐体に固定される熱交換器と、
前記第1の金属または前記第1の金属とは異種金属接触腐食を起こさない第3の金属により形成されて、前記筐体内に配置される容量接続用板金と、を備え、
前記容量接続用板金は、前記筐体に固定されて前記筐体と電気的に接続されるとともに、前記熱交換器と隙間を空けて配置されて前記熱交換器と前記容量接続用板金との間に発生する静電容量を介して前記熱交換器と電気的に接続されている空気調和機の室外機。
【請求項2】
前記筐体は、筐体床面パネルと、前記筐体床面パネルの上方に配置される筐体天面パネルと、前記筐体床面パネルと前記筐体天面パネルとを連結する筐体前面パネル、筐体背面パネルおよび筐体側面パネルと、を有し、
前記容量接続用板金は、前記筐体床面パネル、前記筐体天面パネル、前記筐体前面パネル、前記筐体背面パネルおよび前記筐体側面パネルのうち少なくとも一つに固定されている請求項1に記載の空気調和機の室外機。
【請求項3】
前記熱交換器と前記容量接続用板金との間に形成された前記隙間には、誘電体が挿入されている請求項1または2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項4】
前記第1の金属は、鉄および鉄合金のうちいずれか一方であり、
前記第3の金属は、鉄および鉄合金のうちいずれか他方であり、
前記第2の金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である請求項1または2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項5】
前記熱交換器は、上下方向に延びる平面状の熱交換器側端部を有し、
前記容量接続用板金は、前記熱交換器側端部と前記隙間を空けて配置される板金対面壁を有している請求項1または2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項6】
前記熱交換器は、前記熱交換器側端部のうち上下方向に直交する方向に沿った両方の端部から前記板金対面壁と離れる方向に延びる一対の熱交換器側面部を有し、
前記容量接続用板金は、前記板金対面壁のうち上下方向に直交する方向に沿った一方の端部または両方の端部から前記熱交換器側面部に向かって延びて前記熱交換器側面部と隙間を空けて配置される板金側壁を有し、
前記熱交換器側端部と前記板金対面壁との間に形成される隙間と、前記熱交換器側面部と前記板金側壁との間に形成される隙間とは、互いに連通している請求項5に記載の空気調和機の室外機。
【請求項7】
前記容量接続用板金には、前記容量接続用板金の一部をくり抜いたくり抜き部が形成されている請求項1または2に記載の空気調和機の室外機。
【請求項8】
前記筐体の一部と前記熱交換器の一部とが互いに接触しており、
前記筐体と前記熱交換器との接触箇所は、被覆部材で覆われている請求項1または2に記載の空気調和機の室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筐体と熱交換器とを備える空気調和機の室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機の室外機として、箱状の筐体と筐体内に配置される熱交換器とを備え、熱交換器と筐体とがそれぞれ異種金属により形成されたものが知られている。熱交換器と筐体とは、要求される特性に応じて金属の種類が選択されている。例えば、高い熱伝導率が要求される熱交換器にはアルミニウムが用いられ、強度が要求される筐体には鉄が用いられるのが一般的である。
【0003】
異種金属である熱交換器と筐体とを直接接触させた状態で、接触箇所に水分が付着した場合、自然電位が低い方の金属において異種金属接触腐食が発生する。以下、異種金属接触腐食を単に腐食と称する。腐食を防ぐ手段としては、樹脂などの非導電性部材を介して熱交換器と筐体とを間接的に接続する手段が知られている。
【0004】
しかし、このような手段を用いると、非導電性部材により熱交換器と筐体とが電気的に絶縁されるため、熱交換器と筐体との間に寄生容量が生じる。そして、筐体内に配置される電子基板、圧縮機などから発生する電磁ノイズにより寄生容量に電圧の変化を発生させ、この電圧の変化によりさらに電磁ノイズが発生するという問題がある。なお、筐体の背面には、室外の空気を流入させるための給気口が形成されていて、熱交換器は、室外の空気との間で熱交換を行うために給気口に臨む位置に配置されている。電磁ノイズは、熱交換器と筐体との間から給気口を通じて筐体の外部に放射される。
【0005】
腐食の防止と電磁ノイズの低減という2つの課題を同時に解決するために、特許文献1には、熱交換器と筐体との間に導電性の接続部材を介在させた技術が開示されている。接続部材は、熱交換器に用いられた金属と同種の金属により形成されて熱交換器に直接接触する第1接続部と、筐体に用いられた金属と同種の金属により形成されて筐体に直接接触する第2接続部とを有している。また、第1接続部と第2接続部との間には、第1接続部と第2接続部とを電気的に絶縁する絶縁層が設けられている。
【0006】
特許文献1に開示された技術では、絶縁層の一部を除去して異種金属である第1接続部と第2接続部とを部分的に直接接触させることにより電気的導通を確保して電磁ノイズを低減させる一方で、防水テープなどの被覆部材で第1接続部と第2接続部との接触箇所を被覆することにより接触箇所への水分の浸入を遮断して金属の腐食を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、接続部材に複数種類の金属を用いることおよび絶縁層を設けることにより構造の複雑化を招くため、製造工数の増加、部品点数の増加といった問題がある。
【0009】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構造で、腐食の防止と電磁ノイズの低減との両立を図ることができる空気調和機の室外機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる空気調和機の室外機は、第1の金属により形成されている箱状の筐体と、少なくとも一部が第1の金属とは自然電位が異なる第2の金属により形成され、筐体内に配置されて非導電性部材を介して筐体に固定される熱交換器と、第1の金属または第1の金属とは異種金属接触腐食を起こさない第3の金属により形成されて、筐体内に配置される容量接続用板金と、を備えている。容量接続用板金は、筐体に固定されて筐体と電気的に接続されるとともに、熱交換器と隙間を空けて配置されて熱交換器と容量接続用板金との間に発生する静電容量を介して熱交換器と電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0011】
本開示にかかる空気調和機の室外機は、簡易な構造で、腐食の防止と電磁ノイズの低減との両立を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機を模式的に示した分解斜視図
【
図2】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機を示した正面図であって、筐体の筐体前面パネルを取り外した状態を示した図
【
図3】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機において、容量接続用板金、筐体床面パネルおよび熱交換器を示した斜視図
【
図4】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機において、容量接続用板金、筐体床面パネルおよび熱交換器を示した平面図
【
図5】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機において、容量接続用板金を備えない場合に発生する電磁ノイズの伝達経路を電気回路として示した模式図
【
図6】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機において、容量接続用板金を備えない場合に電磁ノイズとなる電流が伝達する経路を等価回路化した回路図
【
図7】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機の背面図であって、電磁ノイズが発生する箇所を示した図
【
図8】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機において、絶縁部材を介することなく熱交換器と筐体とを直接接触させた場合に電磁ノイズとなる電流が伝達する経路を等価回路化した回路図
【
図9】実施の形態1における容量接続用板金、筐体床面パネルおよび熱交換器を示した平面図に、熱交換器と容量接続用板金との間に発生する寄生容量を模式的に示した図
【
図10】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機において、容量接続用板金を備える場合に発生する電磁ノイズの伝達経路を電気回路として示した模式図
【
図11】実施の形態1にかかる空気調和機の室外機において、容量接続用板金を備える場合に電磁ノイズとなる電流が伝達する経路を等価回路化した回路図
【
図12】実施の形態1の変形例1にかかる空気調和機の室外機において、一部にくり抜き加工を施した場合の容量接続用板金と、筐体床面パネル、熱交換器および絶縁部材を示した斜視図
【
図13】実施の形態1の変形例2にかかる空気調和機の室外機において、容量接続用板金、接触用板金、筐体床面パネル、筐体天面パネル、熱交換器および絶縁部材を示した斜視図
【
図14】実施の形態1の変形例2にかかる空気調和機の室外機において、接触用板金、筐体天面パネル、被覆部材および熱交換器を示した側面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、実施の形態にかかる空気調和機の室外機を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1を模式的に示した分解斜視図である。
図1に示すように、空気調和機の室外機1は、筐体2と、容量接続用板金3と、仕切り板4と、送風機5と、熱交換器6と、2つの絶縁部材7と、圧縮機8と、電子基板箱9とを備えている。以下、空気調和機の室外機1を単に室外機1と称する場合もある。
【0015】
以下、室外機1の各構成要素について方向を説明するときには、室外機1の奥行方向をX軸方向、室外機1の高さ方向をY軸方向、室外機1の幅方向をZ軸方向とする。また、X軸方向の+向きを前方、X軸方向の-向きを後方とする。X軸方向の+向きは、X軸の-側から+側への向きであり、X軸方向の-向きは、X軸の+側から-側への向きである。また、Y軸方向の+向きを上方、Y軸方向の-向きを下方とする。Y軸方向の+向きは、Y軸の-側から+側への向きであり、Y軸方向の-向きは、Y軸の+側から-側への向きである。また、Z軸方向の+向きを右方、Z軸方向の-向きを左方とする。Z軸方向の+向きは、Z軸の-側から+側への向きであり、Z軸方向の-向きは、Z軸の+側から-側への向きである。本実施の形態では、室外機1のうち送風機5によって発生された空気流が外部へ排出されるX軸方向の+向きを正面とし、正面の反対側を背面とする。
【0016】
図2は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1を示した正面図であって、筐体2の筐体前面パネル2eを取り外した状態を示した図である。
図2では、理解の容易化のために、熱交換器6にドットハッチングを付している。
図1および
図2に示すように、筐体2は、室外機1の外殻となる箱状の部材である。筐体2は、第1の金属により形成されている。第1の金属は、強度が高い金属であることが好ましい。第1の金属は、例えば、鉄、鉄合金である。
【0017】
図1に示すように、筐体2は、筐体床面パネル2aと、筐体天面パネル2bと、第1の連結パネル2cと、第2の連結パネル2dとを有している。筐体床面パネル2aは、室外機1の外殻の底面を構成する。筐体床面パネル2aの平面視形状は、四隅が丸みを帯びた矩形である。筐体天面パネル2bは、筐体床面パネル2aの上方に筐体床面パネル2aから離れて配置されている。筐体天面パネル2bは、室外機1の外殻の天井面を構成する。筐体天面パネル2bの平面視形状は、筐体床面パネル2aの平面視形状と同じである。
【0018】
第1の連結パネル2cおよび第2の連結パネル2dは、筐体床面パネル2aと筐体天面パネル2bとを連結する。第1の連結パネル2cの平面視形状は、L字である。第1の連結パネル2cは、Z軸方向に沿って延びる筐体前面パネル2eと、筐体前面パネル2eのZ軸方向に沿った一方の縁部となる左縁部から後方に向かって延びる筐体側面パネル2fとを有している。
【0019】
筐体前面パネル2eは、筐体床面パネル2aの前縁部と筐体天面パネル2bの前縁部とを連結する。筐体前面パネル2eは、室外機1の外殻の正面を構成する。筐体前面パネル2eには、排気口2jが形成されている。排気口2jは、送風機5によって発生された空気流を後記するファン室10の外部へ排出するための開口である。筐体側面パネル2fは、筐体床面パネル2aの左縁部と筐体天面パネル2bの左縁部とを連結する。筐体側面パネル2fは、室外機1の外殻の左側面を構成する。筐体前面パネル2eと筐体側面パネル2fとは本実施の形態では一体に形成されているが、別体で形成されてもよい。
【0020】
第2の連結パネル2dの平面視形状は、L字である。第2の連結パネル2dは、X軸方向に沿って延びる筐体側面パネル2gと、筐体側面パネル2gのX軸方向に沿った一方の縁部となる後縁部から左方に向かって延びる筐体背面パネル2hとを有している。
【0021】
筐体側面パネル2gは、筐体床面パネル2aの右縁部と筐体天面パネル2bの右縁部とを連結する。筐体側面パネル2gは、室外機1の外殻の右側面を構成する。筐体背面パネル2hは、筐体床面パネル2aの後縁部の一部と筐体天面パネル2bの後縁部の一部とを連結する。筐体背面パネル2hは、室外機1の外殻の背面の一部を構成する。筐体側面パネル2gと筐体背面パネル2hとは本実施の形態では一体に形成されているが、別体で形成されてもよい。
【0022】
図1に示される各パネルが組み付けられた状態で、筐体背面パネル2hの左縁部と筐体側面パネル2fの後縁部とは、互いに離れている。筐体背面パネル2hの左縁部と筐体側面パネル2fの後縁部との間には、室外の空気を流入させるための給気口2iが形成される。給気口2iは、筐体2の外部の空気を後記するファン室10に流入させるための開口である。給気口2iは、筐体床面パネル2aと筐体天面パネル2bと筐体背面パネル2hと筐体側面パネル2fとに囲まれて形成されている。
【0023】
容量接続用板金3は、筐体2内で熱交換器6の近くに配置されている金属製部材である。容量接続用板金3は、筐体2に接触するとともに、筐体2に固定されて筐体2と電気的に接続されている。容量接続用板金3は、熱交換器6に接触していない。容量接続用板金3は、熱交換器6と隙間を空けて配置されて熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する静電容量を介して熱交換器6と電気的に接続されている。つまり、容量接続用板金3は、熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する静電容量によって、高周波では熱交換器6と電気的に接続されている。本明細書において、金属製部材同士における「高周波では電気的に接続される」とは、金属製部材同士は接触しないが、金属製部材同士の間に形成された隙間を介したインピーダンスが小さく、金属製部材同士の導通性が高くなっている状態をいう。
【0024】
図2に示すように、容量接続用板金3は、本実施の形態では筐体床面パネル2aのみに接触するとともに固定されているが、筐体床面パネル2a、筐体天面パネル2b、筐体前面パネル2e、筐体背面パネル2hおよび筐体側面パネル2f,2gのうち少なくとも一つに接触するとともに固定されていればよい。容量接続用板金3は、筐体2と同じ第1の金属または筐体2と異種金属接触腐食を起こさない第3の金属により形成されている。例えば、第1の金属が鉄および鉄合金のうちいずれか一方である場合には、第3の金属は鉄および鉄合金のうちいずれか他方となる。第1の金属と第3の金属とは、自然電位が等しい金属であるか、または、第1の金属と第3の金属とが異種金属接触腐食を起こさない程度に自然電位の差が小さい金属であればよい。
【0025】
筐体2と容量接続用板金3とが互いに接触する箇所は、溶接、ネジなどにより接合されている。筐体2の各パネルの表面に塗装などが施されて各パネルの表面の電気抵抗が高い場合には、例えば、予め接合部の一部または全部にマスキングを施したり、セレーションネジを用いてネジ締めの際に塗装を剥がしたりして、各パネルの表面の電気抵抗を下げればよい。
【0026】
図2に示すように、仕切り板4は、筐体2の内部をファン室10と電気室11とに区画する金属製部材である。ファン室10と電気室11とは、Z軸方向に並んで形成されている。仕切り板4は、筐体床面パネル2aから電子基板箱9に亘ってY軸方向に延びている。仕切り板4は、
図1に示される筐体前面パネル2eから筐体背面パネル2hに亘ってX軸方向に延びている。
【0027】
図2に示すように、送風機5は、ファン室10に配置されて、空気流を発生させる機器である。送風機5は、筐体床面パネル2aから立ち上がる支柱5aと、支柱5aに取り付けられたファンモータ5bと、ファンモータ5bの回転軸に取り付けられてファンモータ5bの回転に伴って回転するプロペラファン5cとを有している。支柱5aの上端部は、筐体天面パネル2bに固定されている。支柱5aの下端部は、筐体床面パネル2aに固定されている。ファンモータ5bは、ファン駆動電線12を介して後記する電子基板9aと電気的に接続されている。ファンモータ5bは、ファン駆動電線12を介して電子基板9aから出力される駆動信号を受信したときに回転する。ファンモータ5bが回転してプロペラファン5cが駆動すると、ファン室10が負圧になるため、室外機1の外部の空気は、給気口2iからファン室10に流入する。ファン室10に流入した空気は、熱交換器6を通過して、送風機5によって空気流となり、
図1に示される排気口2jからファン室10の外部へと排出される。
【0028】
熱交換器6は、ファン室10に配置されて、冷媒と室外の空気との熱交換を行うための部材である。熱交換器6には、送風機5に取り込むための室外の空気が通過する。熱交換器6は、例えば、パラレルフロー型の熱交換器である。熱交換器6は、筐体2内に配置されて、非導電性部材である絶縁部材7を介して筐体2に固定されている。熱交換器6の少なくとも一部は、第1の金属とは自然電位が異なる第2の金属により形成されている。第2の金属は、熱伝導率の高い金属であることが好ましい。第2の金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金である。図示は省略するが、熱交換器6は、複数のフィンと冷媒導管とを有している。冷媒導管内には、冷媒が流れている。
【0029】
図1に示すように、熱交換器6の平面視形状は、L字である。熱交換器6は、Z軸方向に沿って延びた後に、X軸方向に沿って前方に延びている。熱交換器6のうちZ軸方向に沿った部分は、送風機5の後方に配置されている。熱交換器6のうちX軸方向に沿った部分は、正面から見て送風機5の左方に配置されている。熱交換器6と送風機5とは、互いに間隔を空けて配置されていて電気的に絶縁されているか、または、図示しない絶縁部材を介して配置されていて電気的に絶縁されている。
【0030】
熱交換器6は、Y軸方向に延びる平面状の熱交換器側端部6aを有している。熱交換器側端部6aは、熱交換器6のうちX軸方向に沿った部分の前端部を構成する。熱交換器側端部6aの形状は、四角形である。熱交換器側端部6aは、X軸方向に直交する平面である。また、熱交換器6は、一対の熱交換器側面部6b,6cを有している。熱交換器側面部6b,6cは、熱交換器側端部6aのうちZ軸方向に沿った両方の端部から後記する板金対面壁3aと離れる方向に延びている。熱交換器側面部6b,6cの形状は、四角形である。本実施の形態では、Z軸方向が上下方向に直交する方向である。
【0031】
熱交換器6と第1の連結パネル2cおよび第2の連結パネル2dとは、互いに間隔を空けて配置されていて電気的に絶縁されているか、または、図示しない絶縁部材を介して配置されていて電気的に絶縁されている。
図2に示すように、熱交換器6の上端部は、絶縁部材7を介して筐体天面パネル2bに固定されている。熱交換器6の下端部は、絶縁部材7を介して筐体床面パネル2aに固定されている。熱交換器6と筐体天面パネル2bおよび筐体床面パネル2aとは、電気的に絶縁されている。熱交換器6は、熱交換器6の周辺に配置される筐体2、送風機5などの金属製部材と電気的に接続されることなく配置されている。ただし、前記したとおり、熱交換器6は、熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する静電容量によって、高周波では容量接続用板金3と電気的に接続されている。
【0032】
図1に示される2つの絶縁部材7の材料には、樹脂などの電気的な絶縁性を有する材料が用いられる。以下、2つの絶縁部材7を区別する場合には、熱交換器6の下端部に設けられた絶縁部材7を第1の絶縁部材7aと称し、熱交換器6の上端部に設けられた絶縁部材7を第2の絶縁部材7bと称する。本実施の形態では、熱交換器6と同じ平面視形状および同じ大きさである第1の絶縁部材7aおよび第2の絶縁部材7bを用いて、熱交換器6の底面および天面の全面を覆うことにより熱交換器6と筐体2とを電気的に絶縁しているが、両部材の電気的な絶縁手段を限定する趣旨ではない。例えば、電気的な絶縁性を有する材料により形成された台を熱交換器6の底面に数箇所設けて、熱交換器6と筐体床面パネル2aとの間に台を介在させる構成にしてもよい。このような構成にすると、熱交換器6と筐体床面パネル2aとが互いにY軸方向に離れるため、熱交換器6と筐体床面パネル2aとを電気的に絶縁することができる。
【0033】
図2に示すように、圧縮機8は、電気室11に配置されて、熱交換器6内を流れる冷媒を圧縮する機器である。圧縮機8は、電気室11のうち下方空間において、筐体床面パネル2aの上に配置されている。圧縮機8は、ネジなどにより筐体床面パネル2aに固定されている。
【0034】
電子基板箱9は、室外機1を運転させるために必要な制御基板などの電子基板9aを収容する部材である。電子基板箱9は、中空の直方体状に形成されている。電子基板箱9は、仕切り板4の上端部に固定されていて、ファン室10と電気室11とに跨って配置されている。電子基板箱9のうちファン室10に配置された部分には、下向きに延びるヒートシンク9bが取り付けられている。ヒートシンク9bは、ファン室10に露出している。ヒートシンク9bは、送風機5が発生させた空気流により冷却される。
【0035】
電子基板箱9のうち電気室11に配置された部分は、圧縮機8の上方に配置されている。電子基板9aのうち電気室11に配置された部分には、圧縮機駆動電線13が接続されている。圧縮機8は、圧縮機駆動電線13を介して電子基板9aと電気的に接続されている。圧縮機8は、圧縮機駆動電線13を介して電子基板9aから出力される駆動信号を受信したときに駆動する。
【0036】
電気室11は、筐体床面パネル2aと仕切り板4と筐体側面パネル2gと電子基板箱9と
図1に示される筐体前面パネル2eと筐体背面パネル2hとに囲われて形成されていて、筐体2の外部からの雨水などの水分の浸入を防げる防水構造となっている。筐体側面パネル2gの外面の下部には、ストップバルブ17が設けられている。ストップバルブ17は、図示しない室内機ユニットと繋がる冷媒配管を接続するためのターミナルとなる。
【0037】
圧縮機8とストップバルブ17とは、複数本の冷媒配管18を介して互いに接続されている。圧縮機8と熱交換器6とは、複数本の冷媒配管18を介して互いに接続されている。熱交換器6と冷媒配管18との接続部19は、防水構造となっている電気室11に配置されている。このように接続部19を電気室11に配置すると、接続部19と水分との接触を防止することができるため、接続部19の腐食を防止できる。なお、接続部19に対する防水効果をさらに高めるため、接続部19に防水テープなどを巻き付けて防水加工を施してもよい。具体的な図示は省略するが、冷媒配管18には、冷媒の流れる方向を切り替える四方弁、冷媒を既定の圧力まで膨張させる膨張弁といった弁装置が接続される。冷媒配管18の接続形態は、図示した例に限定されない。
【0038】
電気室11のうち上方空間には、インターフェースパネル20が設置されている。インターフェースパネル20は、筐体側面パネル2gの内面と電子基板箱9の下面とにそれぞれ固定されている。インターフェースパネル20には、端子台21が設置されている。端子台21には、外部AC電力線14と内部電力線15とが接続されている。外部AC電力線14は、端子台21を介して、内部電力線15と電気的に接続されている。内部電力線15は、電子基板9aと電気的に接続されている。電子基板9aへの電力は、外部AC電力線14、端子台21および内部電力線15を経由して供給される。電子基板9aに供給される電力の電圧は、例えば、単相200Vであるが、この電圧に限定されない。
【0039】
インターフェースパネル20は、筐体側面パネル2gと同じ第1の金属により形成されている。そのため、インターフェースパネル20は、電気抵抗が低い状態で筐体側面パネル2gに接合されている。インターフェースパネル20は、電子基板9aのシグナルグラウンドに接続されている。インターフェースパネル20は、アース線16が接続されるアース接続点20aを有している。インターフェースパネル20は、アース接続点20aおよびアース線16を介して接地されている。インターフェースパネル20に接合される筐体2と筐体2に接合される仕切り板4とは、アース接続点20aおよびアース線16を介して接地されている。熱交換器6は、冷媒配管18との接続部19、圧縮機8などを介してアース接続点20aと電気的に接続されるが、筐体2および仕切り板4と直接的に短絡されない。
【0040】
筐体側面パネル2gには、筐体2の内部と外部とを連通する開口部2kが形成されている。電気室11に設置されたインターフェースパネル20と端子台21とは、開口部2kを通じて視認可能かつ取り扱い可能である。各種電力線の結線作業は、開口部2kを通じて行うことができる。筐体側面パネル2gには、図示しないインターフェースカバーが着脱可能に取り付けられていて、開口部2kは、インターフェースカバーで覆われる。
【0041】
続いて、
図3および
図4を参照して、容量接続用板金3の構成についてさらに説明する。
図3は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1において、容量接続用板金3、筐体床面パネル2aおよび熱交換器6を示した斜視図である。
図4は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1において、容量接続用板金3、筐体床面パネル2aおよび熱交換器6を示した平面図である。
【0042】
容量接続用板金3の配置場所は、熱交換器6の近くであれば特に制限されないが、本実施の形態では熱交換器6の熱交換器側端部6aの近くである。容量接続用板金3は、板金対面壁3aと、一対の板金側壁3b,3cと、複数の板金固定部3dとを有している。板金対面壁3a、板金側壁3b,3cおよび板金固定部3dは、いずれも平坦状の部分である。板金対面壁3aの形状は、四角形である。板金対面壁3aは、熱交換器側端部6aの前方に熱交換器側端部6aと隙間を空けて配置されている。板金対面壁3aは、熱交換器側端部6aに対面している。
【0043】
板金側壁3b,3cの形状は、四角形である。一方の板金側壁3bは、板金対面壁3aのうちZ軸方向に沿った一方の端部から熱交換器側面部6bの方に向かって延びて、熱交換器側面部6bと隙間を空けて配置されている。他方の板金側壁3cは、板金対面壁3aのうちZ軸方向に沿った他方の端部から熱交換器側面部6cの方に向かって延びて、熱交換器側面部6cと隙間を空けて配置されている。板金側壁3bは、熱交換器側面部6bに対面している。板金側壁3cは、熱交換器側面部6cに対面している。板金側壁3b,3cは、板金対面壁3aのうちZ軸方向に沿った端部から後方に向かって直角に折り曲げられている。
【0044】
板金固定部3dは、筐体2に固定される部分である。板金固定部3dの形状は、四角形である。板金固定部3dは、板金対面壁3aの下端部および一対の板金側壁3b,3cの下端部のそれぞれに一つずつ設けられている。板金対面壁3aの下端部に設けられた板金固定部3dは、熱交換器側端部6aから離れる方向に延びている。板金側壁3bの下端部に設けられた板金固定部3dは、熱交換器側面部6bから離れる方向に延びている。板金側壁3cの下端部に設けられた板金固定部3dは、熱交換器側面部6cから離れる方向に延びている。
【0045】
板金固定部3dは、本実施の形態では筐体床面パネル2aのみに接触するとともに固定されているが、
図1に示される筐体床面パネル2a、筐体天面パネル2b、筐体前面パネル2e、筐体背面パネル2hおよび筐体側面パネル2f,2gのうち少なくとも一つに接触するとともに固定されていればよい。板金固定部3dは、筐体床面パネル2aと電気的に接続されている。板金固定部3dと筐体2とが接触する箇所は、溶接、ネジなどにより接合される。筐体2の各パネルの表面に塗装などが施されて各パネルの表面の電気抵抗が高い場合には、例えば、予め接合部の一部または全部にマスキングを施したり、セレーションネジを用いてネジ締めの際に塗装を剥がしたりして、各パネルの表面の電気抵抗を下げればよい。
【0046】
熱交換器側端部6aと板金対面壁3aとの間に形成される隙間と、熱交換器側面部6b,6cと板金側壁3b,3cとの間に形成される隙間とは、互いに連通している。
図4に示すように、熱交換器6と容量接続用板金3との間に形成された隙間には、本実施の形態では誘電体3eが挿入されているが、誘電体3eが挿入されていなくてもよい。
図4では、誘電体3eの位置を明確にするために、誘電体3eにハッチングを付している。誘電体3eは、熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する静電容量の大きさを調整する役割を果たしている。
【0047】
なお、一対の板金側壁3b,3cは、無くてもよいし、一対の板金側壁3b,3cのうち片方を省略してもよい。また、容量接続用板金3は、熱交換器側端部6aおよび熱交換器側面部6bと隙間を空けて配置されているが、熱交換器6のうちのどの面と隙間を空けて配置されていてもよい。
【0048】
次に、実施の形態1にかかる室外機1の動作および効果について説明する。
【0049】
図2に示すように、電力が外部AC電力線14から内部電力線15を経由して電子基板9aに供給されると、電子基板9aが待機状態となる。電子基板9aは、図示しない室内機と室外機1との連絡信号線を介して室内機から運転開始の指令信号を受信すると、室外機1の運転を開始する。具体的には、電子基板9aは、ファン駆動電線12を通じてファンモータ5bに駆動信号を出力し、ファンモータ5bを駆動させる。また、電子基板9aは、圧縮機駆動電線13を通じて圧縮機8に別の駆動信号を出力し、圧縮機8を駆動させる。このとき、電子基板9aが出力する駆動信号には、パワー半導体のスイッチングによる矩形波パルスが一般に用いられる。そのため、駆動信号には、パワー半導体のスイッチングノイズ、矩形波パルスの高調波成分などの、圧縮機8およびファンモータ5bの交流モータを駆動させるのに本来必要ではない高周波成分が含まれる。このような高周波成分が電磁ノイズ源となり、後記する伝達経路を通じて電磁ノイズが筐体2の外部へ放射される一因となる。
【0050】
図5は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1において、容量接続用板金3を備えない場合に発生する電磁ノイズの伝達経路を電気回路として示した模式図である。
図5では、理解の容易化のために、熱交換器6にドットハッチングを付している。例えば、圧縮機8の交流モータに三相モータを用いた場合には、電子基板9aで発生した電磁ノイズは、三相モータ巻線中性点8dを経由して、モータ巻線8aと圧縮機8の筐体との間に存在する寄生容量8bを通じて圧縮機8の筐体へと伝達される。圧縮機8の筐体に伝達された電磁ノイズの一部は、筐体床面パネル2aへと伝達された後に電子基板9aへと還流される。しかし、圧縮機8の筐体と筐体床面パネル2aとの間の接触抵抗8cなどのインピーダンス成分があるため、圧縮機8の筐体に伝達された電磁ノイズの一部は、冷媒配管18を通じて熱交換器6へと伝達される。
【0051】
熱交換器6の寄生インピーダンス成分の特性は、熱交換器6の構造により異なる。ここでは一例として、熱交換器6がコルゲートフィンと扁平冷媒導管とを備えたパラレルフロー型の熱交換器である場合を想定し、熱交換器6が有する寄生インダクタンス23が
図5に示すように組み合わされた等価回路を例として示す。熱交換器6が有する寄生インダクタンス23などの寄生インピーダンス成分は、
図5に示すような分布定数回路として複雑に存在する。第1の絶縁部材7aと第2の絶縁部材7bとによって熱交換器6と筐体2とが電気的に絶縁されているため、熱交換器6と筐体2との間には寄生容量22a,22bが発生する。すなわち、熱交換器6と筐体床面パネル2aとの間には、寄生容量22aが発生し、熱交換器6と筐体天面パネル2bとの間には、寄生容量22bが発生する。寄生容量22a,22bは、電磁ノイズの伝達経路上に発生する。
【0052】
図6は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1において、容量接続用板金3を備えない場合に電磁ノイズとなる電流が伝達する経路を等価回路化した回路図である。電子基板9aから圧縮機8を通じて
図5に示される熱交換器6と筐体2とに伝達された電磁ノイズは、熱交換器6が有する寄生インダクタンス23との間で共振を発生させるとともに寄生容量22a,22bとの間で共振を発生させ、さらには筐体2の各パネルが有する寄生インダクタンス24などの寄生インピーダンス成分との間で共振を発生させる。このとき、寄生容量22a,22bには共振による電圧の変化が発生する。
【0053】
図7は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1の背面図であって、電磁ノイズが発生する箇所を示した図である。
図7では、理解の容易化のために、熱交換器6にドットハッチングを付している。熱交換器6と筐体2の各パネルとの間には、電気的な絶縁性を確保するために隙間G1,G2,G3,G4が形成される。
図7では、隙間G1,G2,G3,G4のそれぞれの位置を破線で囲んでいる。
図7では熱交換器6と筐体2との間の一部に隙間G1,G2,G3,G4がないように図示されているが、実際には熱交換器6の四辺を取り囲むように延びる細長い形状の隙間G1,G2,G3,G4が存在する。隙間G1,G2,G3,G4は、電磁ノイズが発生する箇所となる。熱交換器6と筐体床面パネル2aとの間および熱交換器6と筐体天面パネル2bとの間には、
図5に示される寄生容量22a,22bを通じて電圧の変化が発生する。その結果、隙間G1,G2,G3,G4は、スロットアンテナとして機能し、隙間G1,G2,G3,G4の両端に印加される電圧の変化に応じて電磁ノイズをさらに発生させる。この隙間G1,G2,G3,G4で発生した電磁ノイズは、給気口2iを通じて筐体2の外部へと放射される。
【0054】
図8は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1において、絶縁部材7を介することなく熱交換器6と筐体2とを直接接触させた場合に電磁ノイズとなる電流が伝達する経路を等価回路化した回路図である。
図7に示される第1の絶縁部材7aおよび第2の絶縁部材7bを取り除くことにより、熱交換器6と筐体2の各パネルとが電気的に接続される。つまり、熱交換器6と筐体2の各パネルとが電気的に短絡される。そのため、
図8に示すように、熱交換器6と筐体2の各パネルとの間で発生する寄生容量22a,22bが短絡される。これにより、
図7に示される熱交換器6と筐体床面パネル2aとの間および熱交換器6と筐体天面パネル2bとの間には、
図8に示される寄生容量22a,22bを通じて電圧の変化が発生せず、隙間G1,G2,G3,G4で電磁ノイズが発生しない。
【0055】
図7に示される熱交換器6と筐体2とを異種金属により形成する場合には、熱交換器6と筐体2との間に絶縁部材7を設けないと、隙間G1,G2,G3,G4における電磁ノイズの発生を防止して筐体2の外部への電磁ノイズの放射を低減できるが熱交換器6と筐体2との接触箇所で自然電位が低い熱交換器6に腐食が発生する。一方で、熱交換器6と筐体2との間に絶縁部材7を設けると、熱交換器6と筐体2との接触箇所で自然電位が低い熱交換器6の腐食を防止できるが、隙間G1,G2,G3,G4で電磁ノイズが発生して筐体2の外部への電磁ノイズの放射量が増大する。
【0056】
図9は、実施の形態1における容量接続用板金3、筐体床面パネル2aおよび熱交換器6を示した平面図に、熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する寄生容量22cを模式的に示した図である。
図10は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1において、容量接続用板金3を備える場合に発生する電磁ノイズの伝達経路を電気回路として示した模式図である。
図11は、実施の形態1にかかる空気調和機の室外機1において、容量接続用板金3を備える場合に電磁ノイズとなる電流が伝達する経路を等価回路化した回路図である。
図9および
図10に示すように、室外機1は、第1の金属により形成されている箱状の筐体2と、第1の金属とは自然電位が異なる第2の金属により形成され筐体2内に配置されて絶縁部材7を介して筐体2に固定される熱交換器6と、第1の金属または第1の金属とは腐食を起こさない第3の金属により形成されて筐体2内に配置される容量接続用板金3とを備えている。
図9に示される容量接続用板金3は、筐体2に固定されて筐体2と電気的に接続されるとともに、熱交換器6と隙間を空けて配置されている。これにより、熱交換器6と容量接続用板金3との間には、寄生容量22cが発生する。熱交換器6と容量接続用板金3との離隔距離が熱交換器6と筐体2の各パネルとの離間距離よりも小さいこと、熱交換器6と容量接続用板金3とが対面する面積が比較的大きいことから、寄生容量22cは、寄生容量22a,22bと比較して大きな静電容量を持つ。寄生容量22cは、例えば、数千pF~数万pFの静電容量を持つ。なお、容量接続用板金3と熱交換器6との間で生じる静電容量の大きさは、容量接続用板金3と熱交換器6との離隔距離、容量接続用板金3と熱交換器6とが対面する面積、容量接続用板金3と熱交換器6との間の隙間に誘電体3eが挿入される場合には誘電体3eの透磁率によって決まる。
【0057】
図10に示される熱交換器6と筐体2の各パネルとは、寄生容量22a,22bに加え、寄生容量22a,22bよりも大きな静電容量を持つ寄生容量22cを介して電気的に接続される。つまり、電磁ノイズのような高周波の信号において、熱交換器6と筐体2の各パネルとの導通性が高まる。これにより、熱交換器6と筐体2との間の寄生容量22a,22bを通じて発生する電圧の変化が抑制され、
図7に示される隙間G1,G2,G3,G4から放出される電磁ノイズが抑制される。また、筐体2から発生する30MHz~300MHz程度の電磁ノイズの放射量を寄生容量22cによって低減させることができる。一方で、
図9および
図10に示すように、熱交換器6と、筐体2および容量接続用板金3とは接触しないため、熱交換器6と、筐体2および容量接続用板金3との接触による腐食を防ぐことができる。また、本実施の形態では、容量接続用板金3が筐体2と同じ第1の金属または第1の金属と腐食を起こさない第3の金属により形成されているため、筐体2と容量接続用板金3との接触による腐食を防止することができる。つまり、容量接続用板金3を備えるという簡易な構造で、腐食の防止と電磁ノイズの低減とを両立させることができる。
【0058】
本実施の形態では、
図2に示すように、容量接続用板金3は、筐体床面パネル2aのみに固定されて電気的に接続されているが、
図1に示される筐体床面パネル2a、筐体天面パネル2b、筐体前面パネル2e、筐体背面パネル2hおよび筐体側面パネル2f,2gのうち全部に固定されていてもよい。このようにすると、各パネル同士の電気的な接続が強まり、
図10に示される筐体2が持つ接触抵抗および寄生インダクタンス23を低減させることができる。そのため、電子基板9aと圧縮機8と筐体2の各パネルとに伝わる電磁ノイズ、すなわち雑音端子電圧、妨害電力強度などを低減させることができる。
【0059】
本実施の形態では、
図9に示すように、熱交換器6と容量接続用板金3との間に形成された隙間に誘電体3eが挿入されていることにより、誘電体3eの透磁率を変えることで、熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する静電容量の大きさを容易に調整することができる。
【0060】
本実施の形態では、第1の金属が鉄および鉄合金のうちいずれか一方であり、第3の金属が鉄および鉄合金のうちいずれか他方であることにより、
図9に示される容量接続用板金3が第3の金属で形成された場合でも、第1の金属で形成された筐体2と容量接続用板金3との接触による腐食を防止することができる。また、本実施の形態では、第2の金属がアルミニウムまたはアルミニウム合金であることにより、第2の金属で形成された熱交換器6の熱伝導性を高めることができる。
【0061】
本実施の形態では、
図9に示すように、熱交換器6は、上下方向に延びる平面状の熱交換器側端部6aを有し、容量接続用板金3は、熱交換器側端部6aと隙間を空けて配置される板金対面壁3aを有している。これにより、簡易な構造で熱交換器6と容量接続用板金3との間に寄生容量22cを発生させることができる。
【0062】
本実施の形態では、
図9に示すように、熱交換器6は、熱交換器側端部6aのうちZ軸方向に沿った両方の端部から板金対面壁3aと離れる方向に延びる一対の熱交換器側面部6b,6cを有している。一方、容量接続用板金3は、板金対面壁3aのうちZ軸方向に沿った一方の端部から熱交換器側面部6bに向かって延びて熱交換器側面部6bと隙間を空けて配置される板金側壁3bを有している。また、容量接続用板金3は、板金対面壁3aのうちZ軸方向に沿った他方の端部から熱交換器側面部6cに向かって延びて熱交換器側面部6cと隙間を空けて配置される板金側壁3cを有している。これらの構成により、熱交換器6と容量接続用板金3とが対面する面積を大きくして、熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する寄生容量22cを増やすことができる。
【0063】
本実施の形態では、
図9に示すように、熱交換器側端部6aと板金対面壁3aとの間に形成される隙間と、熱交換器側面部6bと板金側壁3bとの間に形成される隙間とは、互いに連通している。また、熱交換器側端部6aと板金対面壁3aとの間に形成される隙間と、熱交換器側面部6cと板金側壁3cとの間に形成される隙間とは、互いに連通している。これにより、単一の誘電体3eが挿入されるスペースを創出することができる。
【0064】
アルミニウム製のパラレルフロー型の熱交換器では、フィンおよび冷媒導管の材料にアルミニウムが用いられるため、筐体2の材料に鉄を用いた場合には、フィンおよび冷媒導管の両方に腐食が発生する可能性がある。冷媒導管に腐食が発生して孔が開けば、冷媒導管内の冷媒が大気中に漏出する。冷媒の大気中への漏出は、空気調和機としての冷暖房機能が損なわれる。このようにアルミニウム製のパラレルフロー型の熱交換器では、腐食による弊害が大きいことから腐食の防止対策を講じる重要性が高く、腐食の防止対策を講じることにより発生する電磁ノイズの低減対策も併せて講じる必要がある。そのため、本実施の形態のように
図2に示される容量接続用板金3と絶縁部材7とを用いて腐食の防止と電磁ノイズの低減とを両立させることは、アルミニウム製のパラレルフロー型の熱交換器のような腐食による弊害が大きい熱交換器を用いた場合に特に有用である。換言すると、本実施の形態のように容量接続用板金3と絶縁部材7とを用いて腐食の防止と電磁ノイズの低減とを両立させることは、冷媒導管の自然電位が筐体2などの周辺部材の自然電位よりも低い熱交換器を用いた場合に特に有用である。
【0065】
図12は、実施の形態1の変形例1にかかる空気調和機の室外機1において、一部にくり抜き加工を施した場合の容量接続用板金3と、筐体床面パネル2a、熱交換器6および絶縁部材7を示した斜視図である。容量接続用板金3には、
図12に示すように、容量接続用板金3の一部をくり抜いたくり抜き部3fが形成されていてもよい。くり抜き部3fは、容量接続用板金3の一部を容量接続用板金3の厚さ方向に貫通して形成されている。このようなくり抜き部3fを容量接続用板金3に形成すると、容量接続用板金3を設けたことによる通風性の低下を防ぎ、かつ、熱交換器6と容量接続用板金3との間に発生する静電容量の大きさを調整することができる。くり抜き部3fは、容量接続用板金3のうち、板金対面壁3aと板金側壁3bと板金側壁3cとの少なくとも一つに形成される。例えば、くり抜き部3fは、板金対面壁3aと板金側壁3b,3cとのいずれか一方に形成されてもよいし、板金対面壁3aと板金側壁3b,3cとの両方に形成されてもよい。くり抜き部3fは、本実施の形態では板金対面壁3aのみに形成されている。くり抜き部3fの形状は、特に制限されないが、本実施の形態では細長い矩形である。くり抜き部3fの数は、特に制限されないが、本実施の形態では4つである。4つのくり抜き部3fは、板金対面壁3aの外形と平行となるように並んで配置されている。
【0066】
図13は、実施の形態1の変形例2にかかる空気調和機の室外機1において、容量接続用板金3、接触用板金25、筐体床面パネル2a、筐体天面パネル2b、熱交換器6および絶縁部材7を示した斜視図である。
図14は、実施の形態1の変形例2にかかる空気調和機の室外機1において、接触用板金25、筐体天面パネル2b、被覆部材26および熱交換器6を示した側面図である。
図13では、絶縁部材7の範囲を明確にするために、絶縁部材7にハッチングを付している。
図14では、被覆部材26の範囲を明確にするために、被覆部材26にハッチングを付している。前記した実施の形態では、筐体2と熱交換器6とが非導電性部材である絶縁部材7を介して互いに接触しているが、
図13および
図14に示すように、筐体2の一部と熱交換器6の一部とが導電性部材である接触用板金25を介して互いに接触して、筐体2と熱交換器6との接触箇所が防水テープなどの被覆部材26で覆われる構成にしてもよい。これにより、容量接続用板金3による電磁ノイズの低減効果を高めることができる。また、防水テープなどによる被覆箇所が限定されて、防水用の被覆部材26を用いることによる構造の複雑化、製造工数の増加、部品点数の増加といった問題を抑制することができる。
【0067】
図13に示される第2の絶縁部材7bは、熱交換器6の上端部の一部を覆っていて、熱交換器6の上端部の全部を覆っていない。熱交換器6の上端部の残部は、接触用板金25により覆われている。接触用板金25は、熱交換器6のうちZ軸方向に沿った部分の上端部に配置されている。
図14に示すように、接触用板金25は、接触用板金横壁25aと、一対の接触用板金縦壁25b,25cと、一対の接触用板金固定部25d,25eとを有している。接触用板金横壁25a、接触用板金縦壁25b,25cおよび接触用板金固定部25d,25eは、いずれも平坦状の部分である。接触用板金横壁25aの形状は、四角形である。接触用板金横壁25aは、熱交換器6のうちZ軸方向に沿った部分の上端部に配置されている。接触用板金縦壁25b,25cの形状は、四角形である。一方の接触用板金縦壁25bは、接触用板金横壁25aのうちX軸方向に沿った一方の端部から下方に向かって延びて、熱交換器6のうちZ軸方向に沿った部分の前端部に配置されている。接触用板金縦壁25bのうち熱交換器6の方を向く側面は、熱交換器6に直接接触している。他方の接触用板金縦壁25cは、接触用板金横壁25aのうちX軸方向に沿った他方の端部から下方に向かって延びて、熱交換器6のうちZ軸方向に沿った部分の後端部に配置されている。接触用板金縦壁25cのうち熱交換器6の方を向く側面は、熱交換器6に直接接触している。接触用板金縦壁25b,25cは、接触用板金横壁25aのうちX軸方向に沿った端部から下方に向かって直角に折り曲げられている。
【0068】
接触用板金固定部25d,25eは、筐体2に固定される部分である。接触用板金固定部25d,25eの形状は、四角形である。接触用板金固定部25dは、接触用板金横壁25aのX軸方向に沿った一方の端部から接触用板金縦壁25bよりも前方に突出している。接触用板金固定部25eは、接触用板金横壁25aのX軸方向に沿った他方の端部から接触用板金縦壁25cよりも後方に突出している。接触用板金固定部25d,25eは、筐体天面パネル2bに接触するとともに固定される。接触用板金固定部25d,25eは、筐体天面パネル2bにネジなどにより接合される。接触用板金25は、筐体2と同じ第1の金属または筐体2と異種金属接触腐食を起こさない第3の金属により形成されている。第1の金属または第3の金属により形成される接触用板金25と第2の金属により形成される熱交換器6との接触箇所に水分が付着した場合、自然電位が低い熱交換器6に腐食が発生する。本変形例では、接触用板金縦壁25bのうち熱交換器6と反対側を向く側面と下面とは、被覆部材26により覆われている。接触用板金縦壁25cのうち熱交換器6と反対側を向く側面と下面とは、被覆部材26により覆われている。すなわち、接触用板金25と熱交換器6との接触箇所の周囲が防水テープなどの被覆部材26で覆われている。これにより、接触用板金25と熱交換器6との接触箇所への水分の浸入を遮断して熱交換器6の腐食を防いでいる。
【0069】
熱交換器6の全部が第2の金属により形成されている必要はなく、熱交換器6の少なくとも一部が第2の金属により形成されていればよい。例えば、熱交換器6のフィンおよび冷媒導管のうち少なくとも一方が第2の金属により形成されていればよい。
【0070】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 空気調和機の室外機、2 筐体、2a 筐体床面パネル、2b 筐体天面パネル、2c 第1の連結パネル、2d 第2の連結パネル、2e 筐体前面パネル、2f,2g 筐体側面パネル、2h 筐体背面パネル、2i 給気口、2j 排気口、2k 開口部、3 容量接続用板金、3a 板金対面壁、3b,3c 板金側壁、3d 板金固定部、3e 誘電体、3f くり抜き部、4 仕切り板、5 送風機、5a 支柱、5b ファンモータ、5c プロペラファン、6 熱交換器、6a 熱交換器側端部、6b,6c 熱交換器側面部、7 絶縁部材、7a 第1の絶縁部材、7b 第2の絶縁部材、8 圧縮機、8a モータ巻線、8b,22a,22b,22c 寄生容量、8c 接触抵抗、8d 三相モータ巻線中性点、9 電子基板箱、9a 電子基板、9b ヒートシンク、10 ファン室、11 電気室、12 ファン駆動電線、13 圧縮機駆動電線、14 外部AC電力線、15 内部電力線、16 アース線、17 ストップバルブ、18 冷媒配管、19 接続部、20 インターフェースパネル、20a アース接続点、21 端子台、23,24 寄生インダクタンス、25 接触用板金、25a 接触用板金横壁、25b,25c 接触用板金縦壁、25d,25e 接触用板金固定部、26 被覆部材。