(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】固体酸化物形セルシステム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/00 20160101AFI20241227BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20241227BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241227BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241227BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20241227BHJP
H01M 8/0656 20160101ALI20241227BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20241227BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20241227BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20241227BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241227BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20241227BHJP
C25B 15/021 20210101ALI20241227BHJP
【FI】
H01M8/00 Z
H01M8/04701
H01M8/04746
H01M8/04858
H01M8/04955
H01M8/0656
H01M8/12 101
C25B1/042
C25B1/23
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C25B15/00 303
C25B15/021
(21)【出願番号】P 2024518416
(86)(22)【出願日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2023027581
【審査請求日】2024-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下笠 諒平
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0263681(US,A1)
【文献】特開2021-158076(JP,A)
【文献】特表2018-513915(JP,A)
【文献】特開2020-041202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガスを用いて発電し電力を出力するSOFCモードと電力が入力され第2のガスを電気分解するSOECモードとを切り替え可能な少なくとも1つの固体酸化物形セルスタックを有する固体酸化物形セルモジュールと、
前記固体酸化物形セルスタックの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記SOECモード及び前記SOFCモードのうちの一方のモードから他方のモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、継続して前記一方のモードで動作させ、前記一方のモードの動作による前記固体酸化物形セルスタックの熱反応により前記固体酸化物形セルスタックの温度を予め設定された前記他方のモードの動作温度に
達するように制御した後、前記固体酸化物形セルスタックを前記一方のモードから前記他方のモードに切り替える、固体酸化物形セルシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記一方のモードとしての前記SOECモードから前記他方のモードとしての前記SOFCモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、継続して前記SOECモードで動作させるとともに、前記固体酸化物形セルスタックの電圧を、電気分解による吸熱量と前記固体酸化物形セルスタックからの発熱量とがバランスする熱中立時の電圧より小さく設定して前記固体酸化物形セルスタックの温度を
前記SOFCモードでの動作温度に達するように制御した後、前記SOECモードから前記SOFCモードに切り替える、請求項1に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記固体酸化物形セルスタックの温度が前記SOFCモードでの動作温度に達した時、前記固体酸化物形セルスタックへの電力の入力を停止するとともに、前記第2のガスの供給を停止して、前記SOFCモードに切り替える、請求項2に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記一方のモードとしてのSOFCモードから前記他方のモードとしての前記SOECモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、継続して前記SOFCモードで動作させるとともに、前記SOFCモードの動作により予め設定された前記SOECモードでの動作温度に達するか判定し、予め設定された前記SOECモードでの動作温度に達しない場合は、前記固体酸化物形セルスタックを加熱して前記固体酸化物形セルスタックの温度を昇温させるように制御する、請求項1に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記固体酸化物形セルスタックの温度が予め設定された前記SOECモードでの動作温度に達した時、前記固体酸化物形セルスタックからの電力の出力を停止するとともに前記第1のガスの供給を停止して、前記SOECモードに切り替える、請求項4に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項6】
前記固体酸化物形セルスタックの温度を調整する温度調整器及び前記第1のガス及び前記第2のガスの温度を調整する温度調整装置を備え、
前記制御装置は、
前記SOECモードから前記SOFCモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、前記温度調整器による熱供給を停止し、継続して前記SOECモードで動作させるとともに、予め設定された時間内に予め設定された前記SOFCモードでの動作温度に達するように、前記第2のガスの流量を増加させる、前記温度調整装置により前記第2のガスの温度を低下させる、の少なくとも1つの方法により、前記固体酸化物形セルスタックの温度を制御する、請求項1から3のいずれか1項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項7】
前記固体酸化物形セルスタックの温度を調整する温度調整器及び前記第1のガス及び前記第2のガスの温度を調整する温度調整装置を備え、
前記制御装置は、
前記SOFCモードから前記SOECモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、継続して前記SOFCモードで動作させるとともに、予め設定された時間内に予め設定された前記SOFCモードでの動作温度に達するように、前記SOFCモードでの出力電力を制御する、前記温度調整器により前記固体酸化物形セルスタックに熱供給する、の少なくとも1つの方法により、前記固体酸化物形セルスタックの温度を制御する、請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記SOECモードから前記SOFCモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、予め設定された前記SOFCモードでの動作温度に達した時、前記固体酸化物形セルスタックへの電力の入力を停止するとともに前記第2のガスの供給を停止して予め設定された温度静定時間経過したのち、前記SOFCモードに切り替える、請求項
1から3のいずれか1項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記SOFCモードから前記SOECモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、予め設定された前記SOECモードでの動作温度に達した時、前記固体酸化物形セルスタックへの電力の出力を停止するとともに前記第1のガスの供給を停止して予め設定された温度静定時間経過したのち、前記SOECモードに切り替える、請求項
1、4及び5のいずれか1項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項10】
前記制御装置は、
前記固体酸化物形セルモジュールは複数の前記固体酸化物形セルスタックを備え、前記固体酸化物形セルスタック毎に、入出力される電力及び温度を制御する、請求項
1から5のいずれか1項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記固体酸化物形セルモジュールは複数の前記固体酸化物形セルスタックを備え、前記固体酸化物形セルモジュールの具備する複数の前記固体酸化物形セルスタックに入出力される電力及び温度を一律に制御する、請求項
1から5のいずれか1項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体酸化物形セルシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下、SOFCと称する)は、水素又は炭化水素あるいは一酸化炭素を原料に電力及び熱を出力することができる。またその逆反応である、水蒸気又は二酸化炭素を水素又は一酸化炭素あるいは酸素に電気分解する固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:以下、SOECと称する)としても動作できる。このような発電及び電解の機能を有するリバーシブルSOC(固体酸化物形セル:Solid Oxide Cell)を用いた電力貯蔵・供給システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、電力貯蔵・供給システムにおいては、SOCが複数積層されてなるスタック構造を備えている。従来のリバーシブルSOCを用いたシステムにおいては、それぞれの運転モードで動作温度が異なるため、運転モードを切り替える時には温度変化が伴う。しかし、SOCは温度が急変すると、SOCに熱に起因する物理的ダメージが与えられ、耐久性を低下させるおそれがあった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、運転モード切り替え時にSOCスタックの温度変化が急変しないように制御することで、SOCの耐久性低下を抑制可能な固体酸化物形セルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の固体酸化物形セルシステムは、
第1のガスを用いて発電し電力を出力するSOFCモードと電力が入力され第2のガスを電気分解するSOECモードとを切り替え可能な少なくとも1つの固体酸化物形セルスタックを有する固体酸化物形セルモジュールと、
前記固体酸化物形セルスタックの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記SOECモード及び前記SOFCモードのうちの一方のモードから他方のモードに切り替える前記固体酸化物形セルスタックに対し、継続して前記一方のモードで動作させ、前記一方のモードの動作による前記固体酸化物形セルスタックの熱反応により前記固体酸化物形セルスタックの温度を予め設定された前記他方のモードの動作温度に達するように制御した後、前記固体酸化物形セルスタックを前記一方のモードから前記他方のモードに切り替える、
ように構成されたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の固体酸化物形セルシステムによれば、運転モード切り替え時のSOCスタックの温度変化を急変させず緩やかにするとともに、SOCスタックの耐久性低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係るSOCスタックの構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムにおいてSOFCモードでの動作を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムにおいてSOECモードでの動作を説明するための図である。
【
図5】運転モードに対応したSOCスタックの発熱量と吸熱量との差及び印加される電圧との関係を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの入出力制御及び温度制御のパターンを示す図である。
【
図7A】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの運転モード切り替え時の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7B】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの運転モード切り替え時の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの入出力制御及び温度制御のパターンを示す図である。
【
図9A】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの運転モード切り替え時の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図9B】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの運転モード切り替え時の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの制御装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による固体酸化物形セルシステムの実施の形態について図を参照して説明する。本開示では、SOFCとSOECの両機能を有するリバーシブルSOCを用いた固体酸化物形セルシステムを対象とする。なお、各図中、同一符号は、同一または相当する部分を示すものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
また、以下において固体酸化物形セルをSOC、固体酸化物形セルスタックをSOCスタック、固体酸化物形セルモジュールをSOCモジュールと称し、SOCスタックがSOFCとして動作する運転モードをSOFCモード、SOECとして動作する運転モードをSOECモードと称する。
【0010】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムについて図を用いて説明する。
<固体酸化物形セルシステムの構成>
図1は、実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの構成を示す図、
図2はSOCスタックの構成を示す図である。
図1において固体酸化物形セルシステム1は、SOFCモード時に必要な原料ガスを供給するガス供給部21と、SOECモード時に水蒸気(H
2O)を供給する水蒸気供給部22、供給されたガス及び水蒸気の温度を調整する温度調整装置20と、温度調整装置20により予め設定された温度に調整されたガスが供給されるSOCモジュール100と、温度調整装置20、SOCモジュール100の運転モード切り替え及びガス配管中に設けられたバルブV1-V6の開閉制御を行う制御装置200と、を備え、これらは
図1の点線の領域で示す固体酸化物形セルシステム1の主要構成要件1Aである。SOCモジュール100には、外部装置300が接続される。外部装置300は、SOCモジュール100がSOFCモード時に発生させた電力が供給される負荷またはSOCモジュール100がSOECモード時に電力を供給する電流源である。
【0011】
SOCモジュール100は、複数のSOCスタック10_1-10_n(nは2以上の自然数)を接続した集合体である。各SOCスタック10には、SOCスタック用温度調整器18が設けられている。温度調整器18は例えば、ヒータ等の加熱器である。なお、SOCスタックを総称する場合はSOCスタック10と称する。
【0012】
<SOCスタックの構成>
ここで、
図2を用い、SOCモジュール100を構成する、複数のSOCスタック10の構造について説明する。SOCモジュール100は複数のSOCスタック10_1-10_n(nは2以上の自然数)を接続した集合体である。各SOCスタック10は複数のSOC11_1-11_m(mは2以上の自然数)が積層されて構成されている。
【0013】
k番目(1<k≦m;kは自然数)のSOC11_kを例に説明すると、SOC11はそれぞれ空気極12と燃料極14とが電解質13を挟んだ構造を有し、インタコネクタ15により隣接するSOC11と接続されている。空気極12と電解質13との間には、材料劣化を抑制するための拡散防止層が挿入される場合もある。なお、SOCを総称する場合はSOC11と称する。
【0014】
制御装置200は、システム制御部201と、温度制御部202とを具備する。システム制御部201は、SOCモジュール100の運転モード切り替え及びガス配管中に設けられたバルブV1-V6の開閉制御等を行う。温度制御部202は、供給されたガス及び水蒸気が予め設定された温度になるように温度調整装置20を制御するとともに、各SOCスタック10が予め設定された温度になるようにSOCスタック用温度調整器18を制御する。
【0015】
外部装置300は、上述したように負荷または電流源である。SOCモジュール100がSOFCモード時に発生させた電力が供給される負荷としては、例えば電力変換器または電力変換器を介して接続されたモータ等である。SOCモジュール100がSOECモード時に供給される電流源としては、電力変換器または系統などの電流源等である。制御装置200は、外部装置300を制御することにより、各SOCスタックの電圧を制御する。
【0016】
ガス供給部21は、SOFCモード時に必要な燃料極側の原料ガスとして、水素(H2)等を供給し、SOECモード時には水素、二酸化炭素(CO2)等を供給する。外部にそれぞれガスボンベを有し、ガス供給部21に供給するような形態であってもよい。また、SOFCモード時に空気極に供給されるガスは、例えば酸素(O2)、空気(Air)等である。これらはSOECモード時にも用いられ、供給時(上流)と反応後(下流)とでガス種は理論的に同じであるため、ガスを循環させて用いてもよい。
【0017】
温度調整装置20は、SOCモジュール100に供給される(上流)ガス及び水蒸気の配管温度を調整するもので、例えば配管の周囲に設けられたヒータ、加熱器等である。また、SOCモジュール100から生成された下流のガスを熱源として、上流のガスを加熱してもよい。
【0018】
固体酸化物形セルシステム1の任意の構成要件として、改質器30、水蒸気発生器31、貯水部32、凝縮器33、ガス貯蔵部34、貯蔵用ガス調整部35を具備してもよい。
改質器30は、SOFCモード時に、都市ガス(メタンを主成分とするガス)などを用いる場合に用いる。改質時の熱源であるバーナにSOCモジュール100から生成された下流のガスを燃料として供給してもよい。
【0019】
水蒸気発生器31は、貯水部32から供給された水を加熱して水蒸気を生成し、水蒸気供給部22を介してSOCモジュール100に供給する。水蒸気発生器31を用いずに、外部から直接水蒸気を供給してもよい。
【0020】
貯水部32は、水蒸気発生器31に供給する水を貯蔵する。SOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガスの水蒸気を回収し、供給ガスあるいは改質器30の燃料として再利用してもよい。
【0021】
凝縮器33は、SOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガスを脱水する。例えば、SOFCモードにおいて、SOCモジュール100で生成された水蒸気と未反応の水素等を脱水により分離し、SOECモードにおいて、SOCモジュール100で生成された水素等と未反応の水蒸気を脱水により分離する。
【0022】
ガス貯蔵部34は、SOECモードにおいてSOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガス(水素等)を回収し、SOFCモードに必要な燃料極側上流ガスとして、貯蔵する。SOCモジュール100から排出されたガスは直接システム外に供給してもよい。
【0023】
貯蔵用ガス調整部35は、ガス貯蔵部34においてそれぞれのガスを貯蔵するためにガスに適宜処理を施し調整を行う。例えば、圧縮機によりガスを圧縮する、SOECモードにおいてSOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガスである、例えば水素と一酸化炭素(CO)等の混合ガスを分離器により分離する、あるいは例えば水素と一酸化炭素(CO)とを用いメタン化反応器によりメタンを合成する等によりガスの形態を調整する。貯蔵用ガス調整部35により調整処理されたガスは、ガス貯蔵部34で貯蔵される。
【0024】
なお、
図1及び以降の固体酸化物形セルシステムの構成を示す図において、各線は以下の内容を示すものとする。
実線:反応前ガス流路(上流)
一点鎖線:反応後ガス流路(下流)
破線:燃料電池、水蒸気電解反応以外に使用されるガスの流路
黒矢印:燃料極に供給される、あるいは燃料極から排出されるガス(水素、窒素、一酸化炭素、炭化水素、水蒸気、二酸化炭素など)
白抜き矢印:空気極に供給される、あるいは空気極から排出されるガス(酸素、空気など)
【0025】
<SOFCモードでの動作>
次に、SOFCモードでの固体酸化物形セルシステム1の動作を説明する。
図3は、
図1においてSOFCモード時のガスの流れを太線で示したものである。SOFCモードにおいては、燃料極14、空気極12それぞれに以下で説明するガスが供給され、発電した電力が出力される。
【0026】
(1)SOCモジュール100へのガスの供給(上流)
燃料極14側へは、水素を主成分とするガスが供給される。水素を主成分とするガスはガス供給部21から温度調整装置20を介してSOCモジュール100へ供給される。ガス貯蔵部34から水素を主成分とするガスを供給してもよい。
燃料極14側へメタンを主成分とするガスを供給してもよい。メタンを主成分とするガスはガス貯蔵部34から温度調整装置20を介してSOCモジュール100へ供給される。あるいは、外部から改質器30を経由して供給されるものであってもよい。また、ガス貯蔵部34から改質器30を経由して供給されるものであってもよい。改質器30では貯水部32から供給された水蒸気を用いて以下の反応により水蒸気改質が行われ、改質されたガスが燃料極14側へ供給される。
CH4+H2O → CO+3H2
なお、以下で説明するが、SOCモジュール100のうちSOFCモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の燃料極14側には、水素と窒素を主成分とするパージガスまたは還元ガスがガス供給部21あるいはガス貯蔵部34から供給される。
【0027】
空気極12側へは酸素または空気がガス供給部21から供給される。SOCモジュール100のうちSOFCモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の空気極12側にも同様に酸素または空気が供給される。
SOCモジュール100へのガス供給においては、バルブV1の開閉方向により燃料極14側へのガスの供給源が決定される。燃料極14側に供給されるガスがメタンを主成分とするガスの場合、バルブV2の開閉方向動作によりガス貯蔵部34からメタンを主成分とするガスを改質器30に供給する。バルブV3の開閉方向は改質器30からガスを供給するか否かで決定する。これらバルブV1-V3は3方向弁であり、開閉方向の動作はシステム制御部201により制御される。
【0028】
(2)SOCモジュール100からのガスの排出(下流)
燃料極14側からは、水素を主成分とするガスが供給された場合は水蒸気及び未反応の水素等が排出され、メタンを主成分とするガスが供給された場合は水蒸気及び二酸化炭素等が排出される。排出されたガスは外部へそのまま排出してもよいが、
図3においては、凝縮器33で水蒸気とその他のガスを分離し、その後貯蔵用ガス調整部35で水素と二酸化炭素等を分離してもよい。水蒸気は貯水部32に貯蔵してもよい。
空気極12側からは、未反応の酸素または空気が排出される。排出されたガスはガス供給部21に戻してシステムを循環する構成としてもよい。
【0029】
SOCモジュール100からのガスの排出においては、バルブV5の開閉により改質器30が動作する場合に、水を貯水部32から供給可能とする。また、バルブV4の開閉方向により排出ガスの一部を、改質器30の熱供給用バーナの燃料として供給することができる。バルブV4は3方向弁、バルブV5は開閉弁であり、開閉方向、開閉の動作はシステム制御部201により制御される。
【0030】
なお、温度調整装置20に熱交換機能をもたせ、排出されるガスとの熱交換により供給ガスを加熱するように構成することができる。
また、運転中の温度調整装置20の温度、SOCスタック用温度調整器18の温度、及び改質器30の温度は温度制御部202によりそれぞれ設定された温度に制御される。
【0031】
<SOECモードでの動作>
次に、SOECモードでの固体酸化物形セルシステム1の動作を説明する。
図4は、
図1においてSOECモード時のガスの流れを太線で示したものである。SOECモードにおいては、燃料極14、空気極12それぞれに以下で説明するガスが供給され、入力された電力により電気分解反応が生じる。
【0032】
(1)SOCモジュール100へのガスの供給(上流)
燃料極14側へは、水蒸気を主成分とするガスが水蒸気供給部22から供給される。外部から直接水蒸気を導入してもよいが、
図4に示すように貯水部32から供給された水を水蒸気発生器31で加熱して水蒸気を発生させてもよい。また、ガス貯蔵部34またはガス供給部21から水素を供給し、温度調整装置20で水蒸気と混合させて燃料極14側へ供給してもよい。
また、燃料極14側へガス供給部21から二酸化炭素を主成分とするガスを供給してもよい。この時、水蒸気と二酸化炭素の混合ガスを燃料極14側へ供給してもよい。
なお、以下で説明するが、SOCモジュール100のうちSOECモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の燃料極14側には、水素と窒素を主成分とするパージガスまたは還元ガスがガス供給部21あるいはガス貯蔵部34から供給される。
【0033】
空気極12側へは酸素または空気がガス供給部21から供給される。SOCモジュール100のうちSOECモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の空気極12側にも同様に酸素または空気が供給される。
SOCモジュール100へのガス供給においては、バルブV1の開閉方向及びバルブV6の開閉により燃料極14側へのガスの供給源が決定される。バルブV1は3方向弁、バルブV6は開閉弁であり、開閉方向及び開閉動作はシステム制御部201により制御される。
【0034】
(2)SOCモジュール100からのガスの排出(下流)
燃料極14側からは、水蒸気を主成分とするガスが供給された場合は水素及び未反応の水蒸気等が排出され、二酸化炭素を主成分とするガスが供給された場合は一酸化炭素及び未反応の二酸化炭素等が排出される。排出されたガスはシステムの外部へそのまま排出してもよいが、
図4においては、凝縮器33で水蒸気とその他のガスを分離し、その後貯蔵用ガス調整部35で水素と一酸化炭素を分離する、あるいはメタン化反応器に水素と一酸化炭素を含む混合ガスのまま導入し、メタンを生成してもよい。貯蔵用ガス調整部35で処理された水素、一酸化炭素、メタン等のガスはガス貯蔵部34で貯蔵される。未反応の水蒸気は貯水部32に貯蔵し、再度燃料極14へ供給してもよい。
空気極12側からは、発生した酸素または酸素濃度が高い状態の空気が排出される。排出されたガスはガス供給部21に戻してシステムを循環する構成としてもよい。
【0035】
なお、温度調整装置20に熱交換機能をもたせ、排出されるガスとの熱交換により供給ガスを加熱するように構成することができる。また、水蒸気発生器31に熱交換機能をもたせ、排出されるガスとの熱交換により水蒸気を発生させるようにしてもよい。
また、SOFCモードと同様に、運転中の温度調整装置20の温度、SOCスタック用温度調整器18の温度は温度制御部202によりそれぞれ設定された温度に制御される。
【0036】
<運転モードとSOCスタックの発熱量及び吸熱量との関係>
図5は、ある温度におけるSOCスタックの入出力電流密度に対する、SOCスタック電圧及びSOCスタックで発生する発熱量と吸熱量との差との関係の一例を示した図である。図中実線はSOCスタック電圧、一点鎖線はSOCスタックで発生する発熱量と吸熱量との差を示している。なお、図中の電圧OCV(Open Circuit Voltage)は開回路電圧である。
【0037】
電流密度が正側は、SOCスタックがSOFCモードで発電する、すなわち電流の出力側である。発電時の水素の燃焼反応(酸化反応)は発熱反応であり、SOCスタックの出力電流密度が増加するほど発熱量は増加する。そのため、SOCスタックから外部への放熱がなければSOCスタック温度は上昇することになる。
【0038】
電流密度が負側は、SOCスタックへ電流が入力されSOECモードで電気分解を行う入力側である。電気分解時は吸熱反応であるが、SOC及びインタコネクタ等のSOC周辺部材の電気抵抗等によるジュール熱(RI2)も発生する。SOCスタックへの入力電流密度が増加すると、SOCスタック電圧が熱中立電圧Vthに達するまでは、吸熱量が発熱量を上回る。そのため、SOCスタック外部からの熱供給がなければ、SOCスタックの温度は低下する。
以下、SOCスタックにおける発熱反応と吸熱反応とを総称して熱反応と呼ぶ。
【0039】
SOCスタックへの入力電流密度がさらに増加し、SOCスタック電圧が熱中立電圧Vthを超え、発熱量が吸熱量を上回り、SOCスタックから外部への放熱がなければSOCスタック温度は上昇することになる。
【0040】
<SOECモードからSOFCモードへの運転モード切り替え時の制御方法>
次に、本実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステム1において、SOECモードからSOFCモードへの運転モード切り替え時の制御方法について
図6,7A,7Bを用いて説明する。
図6は、SOECモードからSOFCモードへの運転モード切り替え時のSOCスタック10の入出力の大きさとSOCスタック10の動作温度の時間推移を示したものである。SOCスタック10の入出力電流密度は、任意の単位-3から+3で示しており、正方向は発電により外部へ出力するSOFCモードであり、負方向は外部からの入力により電気分解を行うSOECモードである。また、一般的に、SOEC動作温度T
ECはSOFC動作温度T
FCより高く設定されるので、SOCスタック10はSOEC動作温度T
ECで動作しているSOECモードから、SOFC動作温度T
FCに降温してSOFCモードで動作させることになる。
【0041】
図6において、まず、SOCスタック10は、SOECモードで動作し、「2以上」の入力に対応しているものとする。この時、ガスの供給は
図4を用いて説明した通りである。
SOCスタック10がSOECモードからSOFCモードへ運転モードを切り替える時、システム制御部201は、まず、SOCスタック10の電圧が熱中立電圧V
th未満となるように入力を制御する。ここで、熱中立電圧V
thに相当する入力の大きさは「2」とする。スタック電圧が熱中立電圧V
th未満となるように入力を制御すると、スタック電圧が熱中立電圧V
thに到達するまでは、発熱量が吸熱量を上回っているため、SOCスタック10の温度はSOEC動作温度T
ECを維持している。スタック電圧が熱中立電圧V
th未満になると、吸熱量が発熱量を上回り、SOCスタック10の動作温度が低下し始める。時刻t
SWでSOCスタック10の温度がSOFC動作温度T
FCに達すると、システム制御部201はSOCスタック10を出力制御に切り替えるとともに、ガス供給は
図3を用いて説明した発電用のガス供給に切り替え、SOFCモードで動作させる。
【0042】
SOCスタック10の温度が低下するほど、抵抗増加により、同じ入力に対して電気抵抗などに起因する発熱量が増加する。したがってシステム制御部201は、温度低下に応じてスタック入力量を調整する。例えば
図6に示すように、熱中立電圧V
thになるまでは入力を徐々に、緩やかに低下させることで、発熱量の増加を抑制して発熱量と吸熱量との差が最大となるようにして、温度低下が進むように制御を行う。その後、入力を「0」とする。
【0043】
なお、破線で示すように、時刻tSWに達する前の時刻trestにSOCスタック10の温度がSOFC動作温度TFCに達するように制御し、時刻trestと時刻tSWとの間に温度を安定させる温度静定時間を設けて、入出力を中断する入出力休止期間を設定してもよい。
【0044】
<SOCスタックの冷却>
次に、SOCスタック10をSOECモードからSOFCモードへ運転モードを切り替える時の具体的なシステム制御及び温度制御の手順について
図7A,7Bを用いて説明する。
SOECモードからSOFCモードへ運転モードを切り替える時、まずSOEC動作温度T
ECに維持するようにSOCスタック10へ熱供給されていた場合、温度制御部202は熱供給を停止する。熱供給は、例えばSOCスタック10設けられた、SOCスタック用温度調整器18の加熱器等のことであり、またそれ以外の熱供給源があれば、それらも含む(ステップS101)。
【0045】
次に、SOCスタック10の温度がSOFC動作温度TFCに達するように、システム制御部201はスタック電圧を熱中立電圧Vth未満の範囲で制御する(ステップS102)。
次に、運転モード切り替え時に温度を安定化させる温度静定時間を設けるか判定する(ステップS103)。
【0046】
温度静定時間を設定する場合(ステップS103でYes)、スタック電圧を熱中立電圧Vth未満の範囲で制御した時の吸熱のみでSOCスタック10の温度がSOFC動作温度TFCに達するか判定する(ステップS104)。これは、予め設定された運転モード切り替え時間内にSOFC動作温度TFCに達するかを判定するものである。
【0047】
SOFC動作温度T
FCに達しないと判定された場合は(ステップS104でNo)、SOCスタック10の温度を冷却する手段を追加し、温度低下と低下速度の促進を図る(ステップS105)。この状態では、SOCスタック10へは
図4を用いて説明したガスの供給が行われているので、例えば温度調整装置20により供給するガスの温度を低下させる、あるいは供給するガスの流量を増加させ、SOCスタック10のガス利用率を低下させて吸熱反応を促進する、またはガスの循環により降温する等の方法を用いればよい。これらの方法は単独でもよいし、組み合わせて実行してもよい。
【0048】
SOFC動作温度TFCに達すると判定された場合は(ステップS104でYes)、SOCスタック10の温度がSOFC動作温度TFCに達するまで、スタック電圧の制御を継続する(ステップS106)。
【0049】
SOCスタック10の温度がSOFC動作温度T
FCに達した場合(ステップS107でYes)、SOCスタック10への入力を0とするとともに、ガス供給を停止し、温度静定時間とする(ステップS108)。
温度静定時間を経過し、時刻t
SWに達すると、システム制御部201及び温度制御部202はSOCスタック10に対し、は出力要求に対応した出力制御、
図3を用いて説明したガス供給及びSOCスタック10の温度制御等を行い、SOFCモードで動作するように制御する(ステップS109)。
【0050】
温度静定時間を設定しない場合(ステップS103でNo)、スタック電圧を熱中立電圧Vth未満の範囲で制御した時の吸熱のみでSOCスタック10の温度がSOFC動作温度TFCに達するか判定する(ステップS110)。
ステップS110からステップS113は上述したステップS104からステップS107と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
ステップS113でSOCスタック10の温度がSOFC動作温度T
FCに達した場合(ステップS113でYes)、運転モードは切り替わる。そして、システム制御部201及び温度制御部202はSOCスタック10がSOFCモードで動作するように、出力要求に対応した出力制御、
図3を用いて説明したガス供給及びSOCスタック10の温度制御等を行う(ステップS114)。
【0052】
<SOFCモードからSOECモードへの運転モード切り替え時の制御方法>
次に、SOCスタック10をSOFCモードからSOECモードへ運転モードを切り替える時の具体的なシステム制御及び温度制御の方法について
図8,9A,9Bを用いて説明する。
図8は、SOFCモードからSOECモードへの運転モード切り替え時のSOCスタック10の入出力の大きさとSOCスタック10の動作温度の時間推移を示したものである。SOCスタック10の入出力電流密度は、任意の単位-3から+3で示しており、正方向は発電により外部へ出力するSOFCモードであり、負方向は外部からの入力により電気分解を行うSOECモードである。また、一般的に、SOEC動作温度T
ECはSOFC動作温度T
FCより高く設定されるので、SOCスタック10はSOFC動作温度T
FCで動作しているSOFCモードからSOEC動作温度T
ECに昇温してSOECモードで動作させることになる。
【0053】
図8において、まず、SOCスタック10は、SOFCモードで動作し、「2」の出力要求に対応しているものとする。この時、ガスの供給は
図3を用いて説明した通りである。
SOCスタック10がSOFCモードからSOECモードへ運転モードを切り替える時、システム制御部201は、SOCスタック10の温度がSOEC動作温度T
ECに昇温するように出力を調整する。
【0054】
システム制御部201は、温度上昇に応じてSOCスタック10の出力を調整する。具体的には出力を低下させないようにSOFCモードのまま運転するとSOCスタック10の温度は上昇する。温度上昇が足りない場合あるいは上昇速度が小さい場合は、出力を「3」に増加させ、あるいはSOCスタック10に熱供給し、SOCスタック10を昇温する。昇温不足は、例えば、SOCスタック10外への放熱ロスなどが原因として考えられる。
また、SOCスタック10の温度がSOEC動作温度TECを超えることが予測される場合は出力を減少させて制御する。
【0055】
予め設定された時刻t
SWに達するまでに、SOCスタック10の温度がSOEC動作温度T
ECに達するように、システム制御部201は出力制御を行う。
なお、
図8中破線で示したように、時刻t
SWに達する前の時刻t
restにSOCスタック10の温度がSOEC動作温度T
ECに達するように制御し、時刻t
restと時刻t
SWとの間に温度を安定させる温度静定時間を設けて、入出力を中断する入出力休止期間を設定してもよい。
【0056】
<SOCスタックの加熱>
次に、SOCスタック10をSOFCモードからSOECモードへ運転モードを切り替える時の具体的なシステム制御及び温度制御の手順について
図9A,9Bを用いて説明する。
SOFCモードからSOECモードへ運転モードを切り替える時、まずSOCスタック10の温度がSOEC動作温度T
ECに達するように、システム制御部201はSOCスタック10の出力を制御する(ステップS201)。
【0057】
次に、運転モード切り替え時に温度を安定化させる温度静定時間を設けるか決定する(ステップS202)。
温度静定時間を設定する場合(ステップS202でYes)、SOCスタック10の出力による発熱のみでSOCスタック10の温度がSOEC動作温度TECに達するか判定する(ステップS203)。これは、予め設定された運転モード切り替え時刻tSWまでにSOEC動作温度TECに達するかを判定するものである。
【0058】
SOEC動作温度TECに達しないと判定された場合は(ステップS203でNo)、SOCスタック10に熱を供給し、温度上昇と上昇速度の促進を図る(ステップS204)。具体的には、出力を増加させ、あるいはSOCスタック10に熱供給し、SOCスタック10を昇温する。熱供給はSOCスタック用温度調整器18による加熱等により行えばよい。出力の増加とSOCスタック10への熱供給のいずれかの方法を選択しても良いし、両方を組み合わせてもよい。
【0059】
SOCスタック10の出力による発熱のみでSOEC動作温度TECに達すると判定された場合は(ステップS203でYes)、システム制御部201はSOCスタック10の出力制御を継続する(ステップS205)。
【0060】
SOCスタック10の温度がSOEC動作温度T
ECに達した場合(ステップS206でYes)、出力を0にするとともに、ガス供給を停止し、温度静定時間とする(ステップS207)。
温度静定時間を経過し、時刻t
SWに達すると、システム制御部201及び温度制御部202はSOCスタック10がSOECモードで動作するように、入力要求に対応した入力制御、
図4を用いて説明したガス供給及びSOCスタック10の温度制御等を行う(ステップS208)。
【0061】
温度静定時間を設定しない場合(ステップS202でNo)、SOCスタック10の出力による発熱のみでSOCスタック10の温度がSOEC動作温度TECに達するか判定する(ステップS210)。
ステップS210からステップS213は上述したステップS203からステップS206と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
ステップS213でSOCスタック10の温度がSOEC動作温度T
ECに達した場合(ステップS213でYes)、運転モードは切り替わる。そして、システム制御部201及び温度制御部202はSOCスタック10がSOECモードで動作するように、出力要求に対応した入力制御、
図4を用いて説明したガス供給及びSOCスタック10の温度制御等を行う(ステップS214)。
【0063】
図10は実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備する制御装置200のハードウエア構成の一例を示す図である。制御装置200は、プロセッサ1000、記憶装置2000を具備する。プロセッサ1000は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成される。
【0064】
記憶装置2000の主記憶装置はランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置で構成され、補助記憶装置としてフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置またはハードディスクなどを具備する。補助記憶装置には、プロセッサ1000により実行される所定のプログラムが記憶されており、プロセッサ1000は、このプログラムを適宜読み出して実行し、各種演算処理を行う。この際、補助記憶装置から揮発性記憶装置に上記所定のプログラムが一時的に保存され、プロセッサ1000は揮発性記憶装置からプログラムを読み出す。また、プロセッサ1000は、演算結果等のデータを記憶装置2000の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0065】
なお、遠隔制御を可能にするため、外部と通信するための通信モジュールとして、送信装置、受信装置(いずれも図示せず)を具備してもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態1によれば、固体酸化物形セルシステムは、第1のガスを用いて発電し電力を出力するSOFCモードと電力が入力され第2のガスを電気分解するSOECモードとを切り替え可能な少なくとも1つの固体酸化物形セルスタックを有する固体酸化物形セルモジュールと、固体酸化物形セルスタックの動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、SOECモード及びSOFCモードのうちの一方のモードから他方のモードに切り替える固体酸化物形セルスタックに対し、継続して一方のモードで動作させ、一方のモードの動作による固体酸化物形セルスタックの熱反応により固体酸化物形セルスタックの温度を予め設定された他方のモードの動作温度に近づける、ようにした。この構成により、運転モード切り替え時のSOCスタックの温度変化を急変させず緩やかにすることが可能となり、SOCスタックの耐久性低下を抑制することが可能となる。
なお、第1のガスは、例えば燃料極側に供給される水素を主成分とするガスまたはメタンを主成分とするガス、空気極側に供給される酸素または空気であり、第2のガスは、例えば燃料極側に供給される水蒸気を主成分とするガスまたは二酸化炭素を主成分とするガス、空気極側に供給される酸素または空気である。
【0067】
また、制御装置は、SOECモードからSOFCモードに切り替えるSOCスタックに対し、継続してSOECモードで動作させるとともに、固体酸化物形セルスタックの電圧を、吸熱量と発熱量とがバランスする熱中立電圧より小さく設定してSOCスタックの温度を低下させるように制御し、予め設定されたSOFCモードでの動作温度に達した時、SOCスタックへの電力の入力を停止するとともに、第2のガスの供給を停止して、SOFCモードに切り替え、SOFCモードからSOECモードに切り替えるSOCスタックに対し、継続してSOFCモードで動作させるとともに、SOFCモードの動作により予め設定されたSOECモードでの動作温度に達するか判定し、SOECモードでの動作温度に達しない場合は、SOCスタックを加熱してSOCスタックの温度を昇温させるように制御し、予め設定されたSOECモードでの動作温度に達した時、前記固体酸化物形セルスタックからの電力の出力を停止するとともに第1のガスの供給を停止して、SOECモードに切り替えるようにした。この構成により、運転モード切り替え時に細やかな温度制御が可能となる。
【0068】
すなわち、SOECモードの吸熱反応、SOFCモードの発熱反応及び、SOCスタックの発熱要因に応じて、また、SOCスタックの入出力電力(電流密度)とスタック電圧との関係等を考慮し、現状の運転モード内で温度変化を制御するようにしたので、SOCスタックの温度変化を急変させず緩やかにすることが可能となる。また、温度制御のための熱媒体を流通させる構成が不要な簡素な手段でその効果が得られる。
【0069】
なお、上述したSOCモジュール100の具備する複数のSOCスタック10は、それぞれ独立にガス供給及び排出ができるように図示しない配管及びバルブが設けられており、制御装置により、それぞれ独立に各運転モードが制御できるように電力入出力が制御され、それぞれ独立に温度制御が可能であってもよい。
実施の形態1の効果に加え、運転パターンの裕度が拡大し、入出力要求への追従性の向上など、SOCモジュール100の運転効率の向上が見込める。
【0070】
また、上述したSOCモジュール100の具備する複数のSOCスタック10は、制御装置により、SOCモジュール100単位で一律に運転モードを制御するように電力入出力及び温度制御を行うようにしてもよい。
実施の形態1の効果に加え、単純な運転パターンでSOCモジュール100を制御することが可能となる。
【0071】
さらに、上述したSOCモジュール100では複数のSOCスタック10を具備する例を示したが、SOCスタック10が1つであっても同様の効果を奏する。
【0072】
本開示には、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、この明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0073】
1:固体酸化物形セルシステム、 10:SOCスタック、 11:SOC、 12:空気極、 13:電解質、 14:燃料極、 15:インタコネクタ、 18:SOCスタック用温度調整器、 20:温度調整装置、 21:ガス供給部、 22:水蒸気供給部、 30:改質器、 31:水蒸気発生器、 32:貯水部、 33:凝縮器、 34:ガス貯蔵部、 35:貯蔵用ガス調整部、 100:SOCモジュール、 200:制御装置、 201:システム制御部、 202:温度制御部、 1000:プロセッサ、 2000:記憶装置。
【要約】
少なくとも1つの固体酸化物形セルスタック(10)を備えた固体酸化物形セルモジュール(100)を有し、SOFCモードとSOECモードとを切り替え可能な固体酸化物形セルシステム(1)において、SOECモード及びSOFCモードのうちの一方のモードから他方のモードに切り替える固体酸化物形セルスタック(10)に対し、継続して前記一方のモードで動作させ、一方のモードの動作による固体酸化物形セルスタック(10)の熱反応により固体酸化物形セルスタック(10)の温度を予め設定された他方のモードの動作温度に近づけるように制御する。