IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図1
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図2
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図3
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図4
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図5
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図6
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図7
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図8
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図9A
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図9B
  • 特許-固体酸化物形セルシステム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-26
(45)【発行日】2025-01-10
(54)【発明の名称】固体酸化物形セルシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/00 20160101AFI20241227BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241227BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20241227BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20241227BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20241227BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20241227BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20241227BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20241227BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20241227BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20241227BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20241227BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241227BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20241227BHJP
   C25B 15/021 20210101ALI20241227BHJP
【FI】
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
H01M8/0432
H01M8/04701
H01M8/04858
H01M8/04955
H01M8/0656
H01M8/12 101
H01M8/249
C25B1/042
C25B1/23
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C25B15/00 303
C25B15/021
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024518419
(86)(22)【出願日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2023025990
【審査請求日】2024-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下笠 諒平
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-190649(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0263681(US,A1)
【文献】国際公開第2013/073271(WO,A1)
【文献】特開2019-212525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガスを用いて発電し電力を出力するSOFCモードと電力が入力され第2のガスを電気分解するSOECモードとを切り替え可能な固体酸化物形セルスタックを有し、前記固体酸化物形セルスタックを複数接続してなる固体酸化物形セルモジュールと、
複数の前記固体酸化物形セルスタックの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記SOFCモードと前記SOECモードとを切り替えながら前記固体酸化物形セルスタックの動作を制御する運転期間内のいずれかの期間において、複数の前記固体酸化物形セルスタックのうち少なくとも1つの前記固体酸化物形セルスタックは前記SOFCモードまたは前記SOECモードで動作するように制御し、少なくとも他の1つの前記固体酸化物形セルスタックに対し電力の入出力を停止し、前記SOFCモード及び前記SOECモードのいずれのモードでも動作しない休止状態に制御し、
休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの休止状態の後のモードが休止状態の前のモードと同じ場合、休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの温度を維持し、休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの休止状態の後のモードが休止状態の前のモードと異なる場合、休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの温度を休止状態の後のモードの動作温度に制御する、固体酸化物形セルシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記運転期間のいずれの期間においても、複数の前記固体酸化物形セルスタックのうち少なくとも1つの前記固体酸化物形セルスタックは前記SOFCモードまたは前記SOECモードで動作するように制御し、少なくとも他の1つの前記固体酸化物形セルスタックに対し電力の入出力を停止し、前記SOFCモード及び前記SOECモードのいずれのモードでも動作しない休止状態に制御する請求項1に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項3】
複数の前記固体酸化物形セルスタックは第1の固体酸化物形セルスタックおよび第2の固体酸化物形セルスタックを含み、
前記制御装置は、前記運転期間のいずれかの期間において、前記第1の固体酸化物形セルスタックおよび前記第2の固体酸化物形セルスタックが前記SOFCモードで動作し、かつ、当該期間において、前記第1の固体酸化物形セルスタックの出力電力と前記第2の固体酸化物形セルスタックの出力電力とが互いに異なるように制御する請求項1に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項4】
複数の前記固体酸化物形セルスタックは第1の固体酸化物形セルスタックおよび第2の固体酸化物形セルスタックを含み、
前記制御装置は、前記運転期間のいずれかの期間において、前記第1の固体酸化物形セルスタックおよび前記第2の固体酸化物形セルスタックが前記SOFCモードで動作し、かつ、当該期間において、前記第1の固体酸化物形セルスタックの出力電力と前記第2の固体酸化物形セルスタックの出力電力とが互いに異なるように制御する請求項2に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、
複数の前記固体酸化物形セルスタック毎に、入出力される電力及び温度を制御する、請求項1からのいずれか1項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項6】
前記固体酸化物形セルスタックの温度をそれぞれ調整するスタック用温度調整器を備え、
前記制御装置は、
休止状態にある前記固体酸化物形セルスタックを予め設定された時間内に降温させる場合、
前記固体酸化物形セルスタックの自然放熱、
前記スタック用温度調整器による熱供給の停止、
前記固体酸化物形セルスタック内に滞留するガスの外部への掃気、
前記固体酸化物形セルスタック内で吸熱反応を生じさせる、のうち少なくとも1つの方法を用いて温度制御を行う、請求項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項7】
前記固体酸化物形セルスタックの温度をそれぞれ調整するスタック用温度調整器と、
前記第1のガス及び前記第2のガスの温度を調整する温度調整装置と、を備え、
前記制御装置は、
休止状態にある前記固体酸化物形セルスタックを予め設定された時間内に昇温させる場合、
前記スタック用温度調整器による熱供給、及び前記温度調整装置により昇温したガスの供給、のうち少なくとも1つの方法を用いて温度制御を行う、請求項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、
休止状態にある前記固体酸化物形セルスタックを予め設定された時間内に昇温させる場合、
前記SOFCモードまたは前記SOECモードで動作中の他の前記固体酸化物形セルスタックからの輻射熱を用いて温度制御を行う請求項に記載の固体酸化物形セルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体酸化物形セルシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下、SOFCと称する)は、水素又は炭化水素あるいは一酸化炭素を原料に電力及び熱を出力することができる。またその逆反応である、水蒸気又は二酸化炭素を水素又は一酸化炭素あるいは酸素に電気分解する固体酸化物形電解セル(Solid Oxide Electrolysis Cell:以下、SOECと称する)としても動作できる。このような発電及び電解の機能を有するリバーシブルSOC(固体酸化物形セル:Solid Oxide Cell)を用いた電力貯蔵・供給システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6881007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、電力貯蔵・供給システムにおいては、SOCが複数積層されてなるスタック構造を備えている。従来のリバーシブルSOCを用いたシステムにおいては、それぞれの運転モードで動作温度が異なるため、運転モードを切り替える時にSOCスタックの動作温度を調整するための休止時間が必要である。この休止時間に温度を急変させると、SOCに熱に起因する物理的ダメージを与えて耐久性を低下させるおそれがあった。一方、休止時間を設けるため、要求された入出力に応答するのが遅延するという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、運転モード切り替え時に出力が遅延することなく、SOCの耐久性低下を抑制可能な固体酸化物形セルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の固体酸化物形セルシステムは、
第1のガスを用いて発電し電力を出力するSOFCモードと電力が入力され第2のガスを電気分解するSOECモードとを切り替え可能な固体酸化物形セルスタックを有し、前記固体酸化物形セルスタックを複数接続してなる固体酸化物形セルモジュールと、
複数の前記固体酸化物形セルスタックの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記SOFCモードと前記SOECモードとを切り替えながら前記固体酸化物形セルスタックの動作を制御する運転期間内のいずれかの期間において、複数の前記固体酸化物形セルスタックのうち少なくとも1つの前記固体酸化物形セルスタックは前記SOFCモードまたは前記SOECモードで動作するように制御し、少なくとも他の1つの前記固体酸化物形セルスタックに対し電力の入出力を停止し、前記SOFCモード及び前記SOECモードのいずれのモードでも動作しない休止状態に制御し、
休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの休止状態の後のモードが休止状態の前のモードと同じ場合、休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの温度を維持し、休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの休止状態の後のモードが休止状態の前のモードと異なる場合、休止状態に制御される前記固体酸化物形セルスタックの温度を休止状態の後のモードの動作温度に制御する、ように構成されたものである。

【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、運転モード切り替え時の応答性を向上させるとともに、SOCスタックの耐久性低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの構成を示す図である。
図2】実施の形態1に係るSOCスタックの構成を示す図である。
図3】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムにおいてSOFCモードでの動作を説明するための図である。
図4】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムにおいてSOECモードでの動作を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの入出力制御及び温度制御のパターンを比較例と対比して示した図である。図5Aは比較例における固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの入出力制御パターンを示す図、図5Bは比較例における固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの温度制御パターンを示す図、図5Cは実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時の各SOCスタックの入出力制御パターンを示す図、図5Dは実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時の各SOCスタックの温度制御パターンを示す図である。
図6】実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの制御状態を説明するためのフローチャートである。
図7】実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの入出力制御及び温度制御のパターンを比較例と対比して示した図である。図7Aは比較例における固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの入出力制御パターンを示す図、図7Bは比較例における固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの温度制御パターンを示す図、図7Cは実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時の各SOCスタックの入出力制御パターンを示す図、図7Dは実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時の各SOCスタックの温度制御パターンを示す図である。
図8】実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの制御状態を説明するためのフローチャートである。
図9A】実施の形態3に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの温度制御の方法を説明するためのフローチャートである。
図9B】実施の形態3に係る固体酸化物形セルシステムの具備するSOCスタックの温度制御の方法を説明するためのフローチャートである。
図10】実施の形態1から3に係る固体酸化物形セルシステムの制御装置のハードウエア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による固体酸化物形セルシステムの実施の形態について図を参照して説明する。本開示では、SOFCとSOECの両機能を有するリバーシブルSOCを用いた固体酸化物形セルシステムを対象とする。なお、各図中、同一符号は、同一または相当する部分を示すものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
また、以下において、固体酸化物形セルをSOC、固体酸化物形セルスタックをSOCスタック、固体酸化物形セルモジュールをSOCモジュールと称し、SOCスタックがSOFCとして動作する運転モードをSOFCモード、SOECとして動作する運転モードをSOECモードと称する。
【0010】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムについて図を用いて説明する。
<固体酸化物形セルシステムの構成>
図1は、実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの構成を示す図、図2はSOCスタックの構成を示す図である。図1において固体酸化物形セルシステム1は、SOFCモード時に必要な原料ガスを供給するガス供給部21と、SOECモード時に水蒸気(HO)を供給する水蒸気供給部22、供給されたガス及び水蒸気の温度を調整する温度調整装置20と、温度調整装置20により予め設定された温度に調整されたガスが供給されるSOCモジュール100と、温度調整装置20、SOCモジュール100の運転モード切り替え及びガス配管中に設けられたバルブV1-V6の開閉制御を行う制御装置200と、を備え、これらは図1の点線の領域で示す固体酸化物形セルシステム1の主要構成要件1Aである。SOCモジュール100には、外部装置300が接続される。外部装置300は、SOCモジュール100がSOFCモード時に発生させた電力が供給される負荷またはSOCモジュール100がSOECモード時に電力を供給する電流源である。
【0011】
SOCモジュール100は、複数のSOCスタック10_1-10_n(nは2以上の自然数)を接続した集合体である。各SOCスタック10には、SOCスタック用温度調整器18が設けられている。温度調整器18は例えば、ヒータ等の加熱器である。なお、SOCスタックを総称する場合はSOCスタック10と称する。
【0012】
<SOCスタックの構成>
ここで、図2を用い、SOCモジュール100を構成する、複数のSOCスタック10の構造について説明する。SOCモジュール100は複数のSOCスタック10_1-10_n(nは2以上の自然数)を接続した集合体である。各SOCスタック10は複数のSOC11_1-11_m(mは2以上の自然数)が積層されて構成されている。
【0013】
k番目(1<k≦m;kは自然数)のSOC11_kを例に説明すると、SOC11はそれぞれ空気極12と燃料極14とが電解質13を挟んだ構造を有し、インタコネクタ15により隣接するSOC11と接続されている。空気極12と電解質13との間には、材料劣化を抑制するための拡散防止層が挿入される場合もある。なお、SOCを総称する場合はSOC11と称する。
【0014】
制御装置200は、システム制御部201と、温度制御部202とを具備する。システム制御部201は、SOCモジュール100の運転モード切り替え及びガス配管中に設けられたバルブV1-V6の開閉制御等を行う。温度制御部202は、供給されたガス及び水蒸気が予め設定された温度になるように温度調整装置20を制御するとともに、各SOCスタック10が予め設定された温度になるようにSOCスタック用温度調整器18を制御する。
【0015】
外部装置300は、上述したように負荷または電流源である。SOCモジュール100がSOFCモード時に発生させたエネルギが供給される負荷としては、例えば電力変換器または電力変換器を介して接続されたモータ等である。SOCモジュール100がSOECモード時に供給される電流源としては、電力変換器または系統などの電流源等である。
【0016】
ガス供給部21は、SOFCモード時に必要な燃料極側の原料ガスとして、水素(H)等を供給し、SOECモード時には水素、二酸化炭素(CO)等を供給する。外部にそれぞれガスボンベを有し、ガス供給部21に供給するような形態であってもよい。また、SOFCモード時に空気極に供給されるガスは、例えば酸素(O)、空気(Air)等である。これらはSOECモード時にも用いられ、供給時(上流)と反応後(下流)とでガス種は理論的に同じであるため、ガスを循環させて用いてもよい。
【0017】
温度調整装置20は、SOCモジュール100に供給される(上流)ガス及び水蒸気の配管温度を調整するもので、例えば配管の周囲に設けられたヒータ、加熱器等である。また、SOCモジュール100から生成された下流のガスを熱源として、上流のガスを加熱してもよい。
【0018】
固体酸化物形セルシステム1の任意の構成要件として、改質器30、水蒸気発生器31、貯水部32、凝縮器33、ガス貯蔵部34、貯蔵用ガス調整部35を具備してもよい。
改質器30は、SOFCモード時に、都市ガス(メタンを主成分とするガス)などを用いる場合に用いる。改質時の熱源であるバーナにSOCモジュール100から生成された下流のガスを燃料として供給してもよい。
【0019】
水蒸気発生器31は、貯水部32から供給された水を加熱して水蒸気を生成し、水蒸気供給部22を介してSOCモジュール100に供給する。水蒸気発生器31を用いずに、外部から直接水蒸気を供給してもよい。
【0020】
貯水部32は、水蒸気発生器31に供給する水を貯蔵する。SOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガスの水蒸気を回収し、供給ガスあるいは改質器30の燃料として再利用してもよい。
【0021】
凝縮器33は、SOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガスを脱水する。例えば、SOFCモードにおいて、SOCモジュール100で生成された水蒸気と未反応の水素等を脱水により分離し、SOECモードにおいて、SOCモジュール100で生成された水素等と未反応の水蒸気を脱水により分離する。
【0022】
ガス貯蔵部34は、SOECモードにおいてSOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガス(水素等)を回収し、SOFCモードに必要な燃料極側上流ガスとして、貯蔵する。SOCモジュール100から排出されたガスは直接システム外に供給してもよい。
【0023】
貯蔵用ガス調整部35は、ガス貯蔵部34においてそれぞれのガスを貯蔵するためにガスに適宜処理を施し調整を行う。例えば、圧縮機によりガスを圧縮する、SOECモードにおいてSOCモジュール100から排出された燃料極側下流ガスである、例えば水素と一酸化炭素(CO)等の混合ガスを分離器により分離する、あるいは例えば水素と一酸化炭素(CO)とを用いメタン化反応器によりメタンを合成する等によりガスの形態を調整する。貯蔵用ガス調整部35により調整処理されたガスは、ガス貯蔵部34で貯蔵される。
【0024】
なお、図1及び以降の固体酸化物形セルシステムの構成を示す図において、各線は以下の内容を示すものとする。
実線:反応前ガス流路(上流)
一点鎖線:反応後ガス流路(下流)
破線:燃料電池、水蒸気電解反応以外に使用されるガスの流路
黒矢印:燃料極に供給される、あるいは燃料極から排出されるガス(水素、窒素、一酸化炭素、炭化水素、水蒸気、二酸化炭素など)
白抜き矢印:空気極に供給される、あるいは空気極から排出されるガス(酸素、空気など)
【0025】
<SOFCモードでの動作>
次に、SOFCモードでの固体酸化物形セルシステム1の動作を説明する。図3は、図1においてSOFCモード時のガスの流れを太線で示したものである。SOFCモードにおいては、燃料極14、空気極12それぞれに以下で説明するガスが供給され、発電した電力が出力される。
【0026】
(1)SOCモジュール100へのガスの供給(上流)
燃料極14側へは、水素を主成分とするガスが供給される。水素を主成分とするガスはガス供給部21から温度調整装置20を介してSOCモジュール100へ供給される。ガス貯蔵部34から水素を主成分とするガスを供給してもよい。
燃料極14側へメタンを主成分とするガスを供給してもよい。メタンを主成分とするガスはガス貯蔵部34から温度調整装置20を介してSOCモジュール100へ供給される。あるいは、外部から改質器30を経由して供給されるものであってもよい。また、ガス貯蔵部34から改質器30を経由して供給されるものであってもよい。改質器30では貯水部32から供給された水蒸気を用いて以下の反応により水蒸気改質が行われ、改質されたガスが燃料極14側へ供給される。
CH+HO → CO+3H
なお、以下で説明するが、SOCモジュール100のうちSOFCモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の燃料極14側には、水素と窒素を主成分とするパージガスまたは還元ガスがガス供給部21あるいはガス貯蔵部34から供給される。
【0027】
空気極12側へは酸素または空気がガス供給部21から供給される。SOCモジュール100のうちSOFCモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の空気極12側にも同様に酸素または空気が供給される。
SOCモジュール100へのガス供給においては、バルブV1の開閉方向により燃料極14側へのガスの供給源が決定される。燃料極14側に供給されるガスがメタンを主成分とするガスの場合、バルブV2の開閉方向動作によりガス貯蔵部34からメタンを主成分とするガスを改質器30に供給する。バルブV3の開閉方向は改質器30からガスを供給するか否かで決定する。これらバルブV1-V3は3方向弁であり、開閉方向の動作はシステム制御部201により制御される。
【0028】
(2)SOCモジュール100からのガスの排出(下流)
燃料極14側からは、水素を主成分とするガスが供給された場合は水蒸気および未反応の水素等が排出され、メタンを主成分とするガスが供給された場合は水蒸気および二酸化炭素等が排出される。排出されたガスは外部へそのまま排出してもよいが、図3においては、凝縮器33で水蒸気とその他のガスを分離し、その後貯蔵用ガス調整部35で水素と二酸化炭素等を分離してもよい。水蒸気は貯水部32に貯蔵してもよい。
空気極12側からは、未反応の酸素または空気が排出される。排出されたガスはガス供給部21に戻してシステムを循環する構成としてもよい。
【0029】
SOCモジュール100からのガスの排出においては、バルブV5の開閉により改質器30が動作する場合に、水を貯水部32から供給可能とする。また、バルブV4の開閉方向により排出ガスの一部を、改質器30の熱供給用バーナの燃料として供給することができる。バルブV4は3方向弁、バルブV5は開閉弁であり、開閉方向、開閉の動作はシステム制御部201により制御される。
【0030】
なお、温度調整装置20に熱交換機能をもたせ、排出されるガスとの熱交換により供給ガスを加熱するように構成することができる。
また、運転中の温度調整装置20の温度、SOCスタック用温度調整器18の温度、及び改質器30の温度は温度制御部202によりそれぞれ設定された温度に制御される。
【0031】
<SOECモードでの動作>
次に、SOECモードでの固体酸化物形セルシステム1の動作を説明する。図4は、図1においてSOECモード時のガスの流れを太線で示したものである。SOECモードにおいては、燃料極14、空気極12それぞれに以下で説明するガスが供給され、入力された電力により電気分解反応が生じる。
【0032】
(1)SOCモジュール100へのガスの供給(上流)
燃料極14側へは、水蒸気を主成分とするガスが水蒸気供給部22から供給される。外部から直接水蒸気を導入してもよいが、図4に示すように貯水部32から供給された水を水蒸気発生器31で加熱して水蒸気を発生させてもよい。また、ガス貯蔵部34またはガス供給部21から水素を供給し、温度調整装置20で水蒸気と混合させて燃料極14側へ供給してもよい。
また、燃料極14側へガス供給部21から二酸化炭素を主成分とするガスを供給してもよい。この時、水蒸気と二酸化炭素の混合ガスを燃料極14側へ供給してもよい。
なお、以下で説明するが、SOCモジュール100のうちSOECモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の燃料極14側には、水素と窒素を主成分とするパージガスまたは還元ガスがガス供給部21あるいはガス貯蔵部34から供給される。
【0033】
空気極12側へは酸素または空気がガス供給部21から供給される。SOCモジュール100のうちSOECモードで運転せず、温度調整中あるいは休止中のSOCスタック10の空気極12側にも同様に酸素または空気が供給される。
SOCモジュール100へのガス供給においては、バルブV1の開閉方向及びバルブV6の開閉により燃料極14側へのガスの供給源が決定される。バルブV1は3方向弁、バルブV6は開閉弁であり、開閉方向および開閉動作はシステム制御部201により制御される。
【0034】
(2)SOCモジュール100からのガスの排出(下流)
燃料極14側からは、水蒸気を主成分とするガスが供給された場合は水素及び未反応の水蒸気等が排出され、二酸化炭素を主成分とするガスが供給された場合は一酸化炭素及び未反応の二酸化炭素等が排出される。排出されたガスはシステムの外部へそのまま排出してもよいが、図4においては、凝縮器33で水蒸気とその他のガスを分離し、その後貯蔵用ガス調整部35で水素と一酸化炭素を分離する、あるいはメタン化反応器に水素と一酸化炭素を含む混合ガスのまま導入し、メタンを生成してもよい。貯蔵用ガス調整部35で処理された水素、一酸化炭素、メタン等のガスはガス貯蔵部34で貯蔵される。未反応の水蒸気は貯水部32に貯蔵し、再度燃料極14へ供給してもよい。
空気極12側からは、発生した酸素または酸素濃度が高い状態の空気が排出される。排出されたガスはガス供給部21に戻してシステムを循環する構成としてもよい。
【0035】
なお、温度調整装置20に熱交換機能をもたせ、排出されるガスとの熱交換により供給ガスを加熱するように構成することができる。また、水蒸気発生器31に熱交換機能をもたせ、排出されるガスとの熱交換により水蒸気を発生させるようにしてもよい。
また、SOFCモードと同様に、運転中の温度調整装置20の温度、SOCスタック用温度調整器18の温度は温度制御部202によりそれぞれ設定された温度に制御される。
【0036】
以下に、本実施の形態1に係るSOCモジュール100の動作について説明するが、SOCモジュール100の具備する複数のSOCスタック10は、それぞれ独立にガス供給及び排出ができるように図示しない配管及びバルブが設けられており、それぞれ独立に各運転モードが制御できるように電力入出力が制御され、それぞれ独立に温度制御が可能である。
【0037】
<SOCモジュール100の動作の例>
次に、本実施の形態1に係るSOCモジュール100の動作について図5及び図6を用いて説明する。
図5は、実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの動作制御パターン及び温度制御パターンを比較例と対比して示した図である。図5A図5Bは比較例、図5C図5Dは実施の形態1に係る固体酸化物形セルシステムによるものである。図5A-5Dにおいて横軸は時間で、説明の便宜上それぞれ時間幅を有する時間ブロックt1-t9を用いて説明する。図5A図5Cにおいて、縦軸は電力入出力を任意の単位-3から+3で示している。正方向は発電により外部へ出力するSOFCモードであり、負方向は外部からの入力により電気分解を行うSOECモードである。システムへの入出力の要求をドットのハッチングで示しており、その要求に応じた入出力となるようにSOCスタックは制御される。図5B図5Dにおいて、縦軸はSOCスタックの動作温度を示し、それぞれ図5A図5CのSOCスタックの動作に対応した温度制御パターンを示している。
【0038】
なお、以下で説明する本実施の形態1に係るSOCモジュール100は3個のSOCスタック10を備え、各SOCスタックをスタックA,B,Cとする。また、スタックA,B,Cは同等の機能を具備するものとする。なお、比較例のSOCモジュールも同等な3個のスタックを具備する、すなわち、スタックAを3個具備することに相当する。また、比較例では3個のSOCスタックは一律の動作を行い、実施の形態1に係るSOCスタックA,B,Cは独立した動作を行う。各スタックは±3の電力入出力制御を可能とする。
さらに、各SOCスタックは運転モード切り替え時には最低1時間ブロック分の休止期間を要するものとする。休止期間中のスタックの入出力は0である。また各SOCスタックはSOEC動作温度TECに昇温してSOECモードで動作させ、SOFC動作温度TFCに降温してSOFCモードで動作させる。
【0039】
図5A図5Cにおいて、時間ブロックt1、t2で「3」の入力要求、時間ブロックt3、t4で「3」の出力要求、時間ブロックt5、t6で「3」の入力要求、時間ブロックt7、t8で「3」の出力要求、時間ブロックt9で「3」の入力要求がなされている。
【0040】
比較例の図5A図5Bにおいて、時間ブロックt1、t2では各SOCスタックはそれぞれ「1」の入力に対応して制御し、SOECモードで動作している。すなわち、「1」の入力に対応する3個のSOCスタックにより、計「3」の入力に対応している。この時各SOCスタックはSOECモードのため、各SOCスタックはSOEC動作温度TECに制御される。
【0041】
時間ブロックt3で「3」の出力要求を受けても、全てのSOCスタックは休止期間を要するために対応できず出力は0となる。この時、動作温度をSOEC動作温度TECからSOFC動作温度TFCに低下させる。1時間ブロック経過後の時間ブロックt4に各SOCスタックがSOFCモードとなりそれぞれ出力「1」で制御し、計「3」の出力要求に応じることが可能となる。この時SOCスタックはSOFCモードのため、各SOCスタックはSOFC動作温度TFCに制御される。
【0042】
また、時間ブロックt5で「3」の入力要求を受けても全てのSOCスタックは休止期間を要するために対応できず、動作温度をSOFC動作温度TFCからSOEC動作温度TECに昇温するように制御する。1時間ブロック経過後の時間ブロックt6に各SOCスタックがSOECモードとなり計「3」の入力要求に応じることが可能となる。この時OCスタックはSOECモードのため、各SOCスタックはSOEC動作温度TECに制御される。以降同様に、SOCスタックの入出力制御と動作温度制御が繰り返される。
【0043】
図5C図5Dに示す本実施の形態1のスタックA,B,Cの入出力制御パターン及び動作温度制御パターンにおいて、時間ブロックt1では、SOCスタック10のうちスタックCが「3」の入力要求に対応しSOECモードで動作している。この時、他のスタックA,Bは休止期間であるが、スタックAはSOFC動作温度TFCに維持され、スタックBはSOEC動作温度TECに昇温中である。
時間ブロックt2では、スタックAは休止期間が維持されかつSOFC動作温度TFCに維持され、スタックBは「3」の入力要求に対応しSOECモードで動作し、スタックCは休止期間となり、SOFC動作温度TFCへ降温される。
【0044】
時間ブロックt3では、「3」の出力要求に切り替わり、SOFC動作温度TFCに維持されていたスタックAがSOFCモードで動作し、「3」を出力する。スタックBは休止期間となるがSOEC動作温度TECに維持され、スタックCは休止期間が維持されかつSOFC動作温度TFCへの降温が継続する。
【0045】
時間ブロックt4では、スタックAは休止期間となり、SOEC動作温度TECへ昇温される。スタックBは休止期間が維持されるとともにSOEC動作温度TECに維持され、スタックCはSOFCモードで動作し、「3」を出力する。
【0046】
時間ブロックt5では、「3」の入力要求に切り替わり、スタックAは休止期間が維持され、SOEC動作温度TECへの昇温が継続する。SOEC動作温度TECに維持されていたスタックBが「3」の入力要求に対応しSOECモードで動作し、スタックCは休止期間となり、SOFC動作温度TFCに維持される。
【0047】
時間ブロックt6では、スタックAが「3」の入力要求に対応しSOECモードで動作し、スタックBは休止期間となり、SOFC動作温度TFCに降温され、スタックCは休止期間が維持されるとともにSOFC動作温度TFCに維持される。
【0048】
<SOCスタックの制御パターン>
図6は、本実施の形態1に係るSOCスタックの制御パターンを示す図である。以下、図5C図5Dに示すスタックCを例に説明する。
まずスタックCは、時間ブロックt1においてSOECモードで動作するように制御され(ステップS101)、時間ブロックt2,t3においてSOFC動作温度TFCへ降温するように制御される(ステップS102)。
【0049】
時間ブロックt4においてSOFCモードで動作するように制御され(ステップS103)、時間ブロックt5-t6においてSOFC動作温度TFCが維持されるように制御される(ステップS104)。
時間ブロックt7においてSOFCモードで動作するように制御され(ステップS105)、時間ブロックt8-t9においてSOEC動作温度TECが昇温するように制御される(ステップS106)。ここで、時間ブロックt9における制御は時間ブロックt1におけるスタックBの制御に相当する。従って時間ブロックt10以降のスタックCの制御は図示されていないが、時間ブロックt2に以降のスタックBの制御を参照して説明する。
【0050】
スタックCは、時間ブロックt10においてSOECモードで動作するように制御され(ステップS107)、時間ブロックt11,t12においてSOEC動作温度TECが維持される(ステップS107)。時間ブロックt13は再び時間ブロックt1に戻り、SOECモードで動作するように制御される(ステップS101)。
【0051】
図5C図5Dに示すスタックAは図6のステップS104からスタートし、スタックBは図6のステップS106からスタートして循環する例である。
【0052】
このように、本実施の形態1においては、SOCモジュール100が複数のSOCスタック10を具備し、複数のSOCスタック10はそれぞれ独立に入出力制御及び温度制御がなされるとともに、SOCモジュール100の運転期間において、全てのSOCスタック10が同一の運転モードで動作することがないように制御したので、比較例のように、運転期間において、全てのSOCスタック10が同一の運転モードで動作する場合よりもSOCスタック10の劣化を抑制することが可能となる。
また、各SOCスタック10は、同じモードで動作させ続けると、劣化が進行しやすい。本実施の形態1においては、各SOCスタック10の運転モードを一定時間内で切り替えながら動作させるため、各SOCスタック10の劣化を抑制することができる。
【0053】
また、全てのSOCスタック10が同一の運転モードで動作することがないように制御しているので、全てのSOCスタック10の休止期間も重なることはなく、全てのSOCスタック10が休止期間となることがない、すなわち、少なくとも1つのSOCスタック10はいずれかの運転モードで運転中の状態であり、少なくとも他の1つのSOCスタック10は休止期間であるので、入出力要求に応答できない期間がなくなり、入出力要求への遅延がなく、追従性が向上する。なお、いずれのSOCスタック10も停止しない期間があってもよい。
【0054】
さらに、全てのSOCスタック10が同一の運転モードで動作することがないように制御しているので、1つのSOCスタック10が、比較例よりも大きな入出力になるが、いずれかの運転モードで動作中に他の休止期間中のSOCスタック10を温度調整させることが可能となる。これにより、入出力要求に対し、SOCスタック10の劣化を抑制することが可能な制御を行うことができる。例えば、1つのSOCスタック10を同じ運転モードで複数回動作させることで、温度変更回数を抑制可能となり、温度調整期間を比較例より長く設けることで、温度調整速度を低下することができSOCスタック10への負荷を低減させることができる。
【0055】
以上のように、実施の形態1によれば、第1のガスを用いて発電し電力を出力するSOFCモードと電力が入力され第2のガスを電気分解するSOECモードとを切り替え可能な固体酸化物形セルスタックを有し、この固体酸化物形セルスタックを複数接続してなる固体酸化物形セルモジュールと、複数の固体酸化物形セルスタックの動作を制御する制御装置と、を備えた固体酸化物形セルシステムであって、制御装置は、SOFCモードとSOECモードとを切り替えながら固体酸化物形セルスタックの動作を制御する運転期間内のいずれかの期間において、複数の前記固体酸化物形セルスタックのうち少なくとも1つの前記固体酸化物形セルスタックは休止状態でなくSOFCモードまたはSOECモードで動作するように制御し、少なくとも他の1つの固体酸化物形セルスタックに対しては電力の入出力を停止し、SOFCモード及びSOECモードのいずれのモードでも動作しない休止状態に制御したので、全ての固体酸化物形セルスタックが停止する期間がなくなり、すなわち入出力要求に応答できない期間がないので入出力要求への遅延がなく、追従性が向上する。
なお、第1のガスは、例えば燃料極側に供給される水素を主成分とするガスまたはメタンを主成分とするガス、空気極側に供給される酸素または空気であり、第2のガスは、例えば燃料極側に供給される水蒸気を主成分とするガスまたは二酸化炭素を主成分とするガス、空気極側に供給される酸素または空気である。
【0056】
また、温度変更回数が抑制され、温度調整期間を長く設けることで、温度調整速度を低下することができるので、SOCスタック10の負荷を低減し、SOCスタックの耐久性低下を抑制することが可能となる。
【0057】
実施の形態2.
以下に、実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステムについて図を用いて説明する。
本実施の形態2は実施の形態1とは異なる入出力要求に対するSOCモジュール100の動作について説明する。なお、本実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステム1の構成は実施の形態1と同様であり、SOECモード、SOFCモードでの動作も同様であるので、説明を省略する。
【0058】
<SOCモジュール100の動作>
本実施の形態2に係るSOCモジュール100の動作について図7及び図8を用いて説明する。
図7は、実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステムの運転モード切り替え時のSOCスタックの動作制御パターン及び温度制御パターンを比較例と対比して示した図である。図7A図7Bは比較例、図7C図7Dは実施の形態2に係る固体酸化物形セルシステムによるものである。図の横軸、縦軸、凡例は図5A-5Dと同様である。
【0059】
図7A図7Cにおいて、時間ブロックt1で「3」の入力要求、時間ブロックt2、t3で「3」の出力要求、時間ブロックt4で「3」の入力要求、時間ブロックt5、t6で「3」の出力要求、時間ブロックt7で「3」の入力要求、時間ブロックt8、t9で「3」の出力要求がなされている。すなわち、1時間ブロックの入力要求、2時間ブロックの出力要求が繰り返される例である。
【0060】
比較例の図7A図7Bにおいて、時間ブロックt1では各SOCスタックはそれぞれ「1」の入力に対応して制御され、SOECモードで動作している。すなわち、「1」の入力に対応する3個のSOCスタックにより、計「3」の入力に対応している。この時各SOCスタックはSOECモードのため、各SOCスタックはSOEC動作温度TECに制御される。
【0061】
時間ブロックt2で「3」の出力要求を受けても、全てのSOCスタックは休止期間を要するために対応できず出力は0となる。この時、動作温度をSOEC動作温度TECからSOFC動作温度TFCに低下させる。1時間ブロック経過後の時間ブロックt3に各SOCスタックがSOFCモードとなりそれぞれ出力「1」で制御し、計「3」の出力要求に応じることが可能となる。この時SOCスタックはSOFCモードのため、各SOCスタックはSOFC動作温度TFCに制御される。
【0062】
次の時間ブロックt4で「3」の入力要求を受けても全てのSOCスタックは休止期間を要するために対応できない。さらに、時間ブロックt5で「3」の出力要求を受けるため、時間ブロックt4では各SOCスタックの動作温度はSOFC動作温度TFCに維持される。
時間ブロックt5では「3」の出力要求に対し、各SOCスタックはSOFC動作温度TFCが維持されているので、それぞれ「1」を出力するようにSOFCモードで制御される。
【0063】
時間ブロックt6は「3」の出力要求が維持されるが、次の時間ブロックt7で「3」の入力要求を受けるため、時間ブロックt6では各SOCスタックは休止期間となり、動作温度をSOFC動作温度TFCからSOEC動作温度TECに昇温するように制御する。すなわち、時間ブロックt6の出力要求に対応できない。
時間ブロックt7で「3」の入力要求を受けると、各SOCスタックはSOECモードで制御されそれぞれ「1」の入力要求に対応し、計「3」の入力要求に応じることが可能となる。
【0064】
一方、図7Aとは異なり、時間ブロックt6において「3」の出力要求に対し、時間ブロックt5のまま各SOCスタックがSOFCモードで制御された場合、時間ブロックt7では休止期間を要するため、「3」の入力要求には対応できないことになる。
【0065】
このように、運転モードの切り替え時には温度調整の休止期間が必要なため、比較例では入出力要求に応答できないデッドタイムが発生してしまう。
【0066】
図7C図7Dに示す本実施の形態2のスタックA,B,Cの入出力制御パターン及び動作温度制御パターンにおいて、時間ブロックt1では、SOCスタック10のうちスタックCが「3」の入力要求に対応しSOECモードで動作している。この時、他のスタックA,Bは休止期間であるが、スタックA,BともにSOFC動作温度TFCに維持されている。
【0067】
時間ブロックt2では、「3」の出力要求に切り替わると、スタックA,BともにSOFCモードで制御され、スタックAは「2」を出力し、スタックBは「1」を出力し、計「3」を出力するように制御される。スタックCは休止期間となり、SOFC動作温度TFCへ降温される。
【0068】
時間ブロックt3では、「3」の出力要求が継続され、スタックAは出力が「2」から「1」に制御され、スタックCは出力が「2」になるように制御され、スタックBは休止期間となり、SOEC動作温度TECへ昇温される。
【0069】
次の時間ブロックt4では、「3」の入力要求に対し、スタックBが対応し、SOECモードで運転している。他のスタックA,Cは休止期間であるが、スタックA,CともにSOFC動作温度TFCに維持されている。
【0070】
次の時間ブロックt5で、「3」の出力要求に切り替わると、スタックA,CともにSOFCモードで制御され、スタックAは「1」を出力し、スタックCは「2」を出力し、計「3」を出力するように制御される。スタックBは休止期間となり、SOFC動作温度TFCへ降温される。
【0071】
時間ブロックt6では、「3」の出力要求が継続され、スタックCは出力が「2」から「1」に制御され、スタックBは出力が「2」になるように制御され、スタックAは休止期間となり、SOEC動作温度TECへ昇温される。
以降、入出力要求に対応するように、各SOCスタックは同様の入出力制御パターン及び動作温度制御パターンで制御される。
時間ブロックt2,t3,t5,t6,t8,t9の各々において、SOFCモードで制御される2つのSOCスタックのうち、一方のスタックが第1のSOCスタックの例であり、他方のSOCスタックが第2のSOCスタックの例である。
【0072】
<SOCスタックの制御パターン>
図8は、本実施の形態1に係るSOCスタックの制御パターンを示す図である。以下、図7C図7Dの各制御パターンで示されるスタックCを例に説明する。
まずスタックCは、時間ブロックt1においてSOECモードで動作され、「3」の入力に対応するように制御される(ステップS201)。時間ブロックt2は休止期間であり、SOFC動作温度TFCへ降温するように制御される(ステップS202)。
【0073】
時間ブロックt3においてSOFCモードでかつ「2」を出力するように制御される(ステップS203)。時間ブロックt4は休止期間であるがSOFC動作温度TFCが維持されるように制御される(ステップS204)。
時間ブロックt5においてSOFCモードでかつ「2」を出力するように制御され(ステップS205)、時間ブロックt6においてSOFCモードでかつ「1」を出力するように制御される(ステップS206)。
【0074】
時間ブロックt7は休止期間であるがSOFC動作温度TFCが維持されるように制御される(ステップS207)。
時間ブロックt8においてSOFCモードでかつ「1」を出力するように制御される(ステップS208)。
【0075】
時間ブロックt9は休止期間であり、SOEC動作温度TECへ昇温するように制御される(ステップS209)。
以降、ステップS201に戻って制御が繰り返される。
図7C図7Dに示すスタックAは図8のステップS204からスタートし、スタックBは図8のステップS207からスタートして循環する例である。
【0076】
このように、実施の形態1で示した入出力要求とは異なる要求に対しても、SOCモジュール100が複数のSOCスタック10を具備し、複数のSOCスタック10はそれぞれ独立に入出力制御及び温度制御がなされるとともに、SOCモジュール100の運転期間において、全てのSOCスタック10が同一の運転モードで動作することがないように制御する。そのため、実施の形態1と同様に、入出力要求に応答できない期間がないので入出力要求への遅延がなく、追従性が向上する。
【0077】
以上のように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。
また、実施の形態2においては、制御装置は、運転期間のいずれかの期間において、第1のSOCスタックおよび第2のSOCスタックがSOFCモードで動作し、かつ第1のSOCスタックの出力電力と第2のSOCスタックの出力電力とが互いに異なるように制御したので、固体酸化物形セルシステムの出力電力の調整の自由度が向上する。
【0078】
実施の形態3.
以下に、実施の形態3に係る固体酸化物形セルシステムについて図を用いて説明する。
実施の形態1、2において、SOCモジュール100が複数のSOCスタック10を具備し、複数のSOCスタック10はそれぞれ独立に入出力制御及び温度制御されることを説明した。本実施の形態3では、各SOCスタック10の休止期間における具体的な温度制御の方法について説明する。
【0079】
SOCスタック10の休止期間においては、
(1)SOECモードからSOFCモードの切り替え時はSOCスタック10をSOEC動作温度TECからSOFC動作温度TFCへ降温する(SOCスタックの冷却)、
(2)SOFCモードからSOECモードの切り替え時はSOCスタック10をSOFC動作温度TFCからSOEC動作温度TECへ昇温する(SOCスタックの加熱)、
(3)SOCスタック10の温度をSOEC動作温度TECまたはSOFC動作温度TFCに維持する、
のいずれかである。
以下では、上述の(1)(2)の場合の温度制御の方法について説明する。
【0080】
図9A,9Bは温度制御の手順を示すフローチャートである。適宜、実施の形態1の図4で示したガスの流れを参照して説明する。
【0081】
(1)SOCスタックの冷却
SOCスタック10の温度を低下させる場合(ステップS301でNo)、対象SOCスタック10への電力入出力及び熱供給を中断する(ステップS302)。熱供給の中断はSOCスタック用温度調整器18の加熱器等をオフにすることである。
対象SOCスタック10へガス供給しない場合(ステップS303でNo)、SOCモジュール100の対象スタック10へのガス配管のバルブ(図示せず)を閉にする。これにより、自然放熱させる。
【0082】
対象SOCスタック10へガスを供給する場合(ステップS303でYes)、供給するガス種によって温度の制御方法が異なる(ステップS305)。対象SOCスタック10の燃料極14側にガス貯蔵部34から水素、ガス供給部21から水素または窒素あるいはそれらの混合気体であるパージガス、還元ガスを供給し、空気極12側にガス供給部21から酸素または空気を供給する場合、対象SOCスタック10内に残存する高温の滞留ガスを掃気して対象SOCスタック10を冷却する(ステップS307)。
ここで、対象SOCスタック10へ供給するガスの温度を温度調整装置20において、調整することで、効率よく対象SOCスタック10を冷却することが可能となる。すなわち、対象SOCスタック10の降温速度を調整することが可能となる。温度調整装置20では例えば、SOECモードまたはSOFCモードで運転している時より低く温度設定してもよい。
また、燃料極14側に供給されるパージガス、還元ガスはシステム外から供給してもよい。
【0083】
対象SOCスタック10の燃料極14側にガス貯蔵部34からメタンを供給し、水蒸気供給部22から水蒸気を供給する場合、電極上で水蒸気改質、
CH+HO → CO+3H
が行われる。この反応は内部改質と呼ばれ、吸熱反応であるため、水素を排出しながら対象スタックを冷却することが可能となる(ステップS306)。排出した水素は上述したように、貯蔵用ガス調整部35で分離され、ガス貯蔵部34に貯蔵または外部へ排出される。この時、空気極12側にはガス供給部21から酸素または空気が供給される。
燃料極14側に供給されるメタン、水蒸気はシステム外から供給してもよいし、水蒸気は貯水部32から供給された水から水蒸気発生器31で生成されたものでもよい。
内部改質を利用する場合は、ガス流量を調整することで、降温速度を調整すればよい。
【0084】
SOEC動作温度TECからSOFC動作温度TFCへ降温する場合は、目標温度はSOFC動作温度TFCであり、目標温度に到達すれば終了である(ステップS303でYes)。目標温度に到達しない場合、上述した方法のいずれかを繰り返してもよいし、異なる方法に切り替えても良い。これらの方法から予め設定された時間内に目標温度に到達するように降温速度を調整すればよい。この時、状況に応じて適切な方法を選択あるいは組み合わせてSOCスタック10を降温すればよい。
【0085】
(2)SOCスタックの加熱
SOCスタック10の温度を上昇させる場合(ステップS301でYes)、対象SOCスタック10への電力入出力を中断する(ステップS311)。
対象SOCスタック10へ熱供給を行わない場合(ステップS312でNo)、輻射熱により対象SOCスタック10を加熱することになる(ステップS313)。SOFCモードで動作している他のSOCスタック、または対象SOCスタック10よりも高温のSOCスタックからの輻射熱を利用して昇温する。この時、対象SOCスタック10のガス配管のバルブ(図示せず)を閉にし、ガスを供給しない。あるいは燃料極14側にガス供給部21あるいはシステム外からパージガスまたは還元ガスを供給し、空気極12側にガス供給部21から酸素または空気を供給する。ここで、対象SOCスタック10へ供給するガスの温度を温度調整装置20において、調整することで、効率よく対象SOCスタック10を昇温することが可能となる。すなわち、対象SOCスタック10の昇温速度を調整することが可能となる。
【0086】
対象SOCスタック10へ熱供給を行う場合(ステップS312でYes)、SOCスタック用温度調整器18の加熱器等を用いて温度制御すればよい(ステップS314)。この場合も、燃料極14側にガス供給部21あるいはシステム外からパージガスまたは還元ガスを供給し、空気極12側にガス供給部21から酸素または空気を供給してもよい。対象SOCスタック10へ供給するガスの温度を温度調整装置20において、SOCスタック用温度調整器18と併せて調整することで、効率よく対象SOCスタック10を昇温することが可能となる。すなわち、対象SOCスタック10の昇温速度を調整することが可能となる。
【0087】
SOFC動作温度TFCからSOEC動作温度TECへ昇温する場合は、目標温度はSOEC動作温度TECであり、目標温度に到達すれば終了である(ステップS315でYes)。目標温度に到達しない場合、上述した方法のいずれかを繰り返してもよいし、異なる方法に切り替えても良い。これらの方法から予め設定された時間内に目標温度に到達するように昇温速度を調整すればよい。この時、状況に応じて適切な方法を選択あるいは組み合わせてSOCスタック10を昇温すればよい。
【0088】
以上のように、実施の形態3によれば、休止期間のSOCスタックを予め設定された時間内に、目標温度に到達するように温度制御を行うので、休止期間のSOCスタックに温度の急変を誘引することがなく、目標温度に制御することが可能となり、SOCスタックの熱に起因する劣化を抑制することが可能となる。また、休止期間中に目標温度に到達するように制御するので、入出力要求への遅延がなく、追従性の向上に寄与する。
【0089】
図10は実施の形態1から3に係る固体酸化物形セルシステムの具備する制御装置200のハードウエア構成の一例を示す図である。制御装置200は、プロセッサ1000、記憶装置2000を具備する。プロセッサ1000は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などで構成される。
【0090】
記憶装置2000の主記憶装置はランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置で構成され、補助記憶装置としてフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置またはハードディスクなどを具備する。補助記憶装置には、プロセッサ1000により実行される所定のプログラムが記憶されており、プロセッサ1000は、このプログラムを適宜読み出して実行し、各種演算処理を行う。この際、補助記憶装置から揮発性記憶装置に上記所定のプログラムが一時的に保存され、プロセッサ1000は揮発性記憶装置からプログラムを読み出す。また、プロセッサ1000は、演算結果等のデータを記憶装置2000の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0091】
なお、遠隔制御を可能にするため、外部と通信するための通信モジュールとして、送信装置、受信装置(いずれも図示せず)を具備してもよい。
【0092】
<その他の実施の形態>
実施の形態1及び2において、SOCモジュール100は、独立に制御可能な3個のスタックA,B,Cを備えた例で説明したが、3個に限るものではない。
また、スタックA,B,Cとそれぞれ同様に制御される複数のスタックからなる集合体を設け、スタック群A,B,Cとしてそれぞれ群毎に独立に制御するようにしてもよい。固体酸化物形セルシステム1の運転期間中に全ての群が同一の運転モードにならないように、あるいは同時に休止期間とならないように制御すれば、実施の形態1,2と同様の効果を奏する。
【0093】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、この明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0094】
1:固体酸化物形セルシステム、 10:SOCスタック、 11:SOC、 12:空気極、 13:電解質、 14:燃料極、 15:インタコネクタ、 18:SOCスタック用温度調整器、 20:温度調整装置、 21:ガス供給部、 22:水蒸気供給部、 30:改質器、 31:水蒸気発生器、 32:貯水部、 33:凝縮器、 34:ガス貯蔵部、 35:貯蔵用ガス調整部、 100:SOCモジュール、 200:制御装置、 201:システム制御部、 202:温度制御部、 1000:プロセッサ、 2000:記憶装置。
【要約】
複数の固体酸化物形セルスタック(10)が接続された固体酸化物形セルモジュール(100)を有し、SOFCモードとSOECモードとを切り替え可能な固体酸化物形セルシステム(1)において、運転期間中のいずれかの期間において、少なくとも1つの固体酸化物形セルスタック(10)はSOFCモードまたはSOECモードで動作するように制御し、少なくとも他の1つの固体酸化物形セルスタック(10)に対し入出力を停止し、SOFCモード及びSOECモードのいずれのモードでも動作しない休止状態に制御する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10